ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

31 / 76
三章
Battle27 「新たな思惑」


 世界大会を制したマシロはフィンランドに戻っていた。

 フィンランドにはチームネメシスの拠点が湖のど真ん中の小島に建てられている。

 この小島はチームネメシスのオーナーのヨセフ・カンカーンシュルヤの所有物となっていた。

 拠点にはネメシスに所属するファイターの宿舎や訓練場などの設備が整えられている。

 マシロの部屋は宿舎の中でも世界レベルのファイター用の特別室が与えられている。

 今日もマシロはバトルルームで適当な相手を見つけてバトルして来た。

 マシロが拠点に戻ってから今日まで一月、毎日のように相手を見つけてはバトルをしていた。

 そのせいでマシロに負けたファイターは自信を喪失し、チームを去っていた。

 一時期はヨセフが世界中からファイターを集めて1000人近くいたファイターも数日の内に100人を切っていた。

 だが、ヨセフからすればマシロに負けた程度でチームを去るファイターなど必要としていない為、マシロの行動を咎める事は無い。

 

「マシロ様。会長がお呼びですよ」

「めんどくさい」

「至急来るようにと」

 

 シオンはマシロにそう言うが、マシロは乗り気ではない。

 世界大会が終わってからもマシロはいつもこうだった。

 手当り次第にバトルを挑んではつまらなそうにしていた。

 

「ちっ……」

 

 マシロは渋々、ヨセフの元に向かった。

 ヨセフのオーナールームにマシロはノックもなしに入る。

 

「ノックくらいしたらどうなんだ?」

「んな事よりも何の用? 俺も暇じゃないんだけど……てか、誰?」

 

 オーナールームにはヨセフ以外に二人の人物がいるが、マシロは見覚えがない。

 尤も、マシロはチームの中でも顔と名前を憶えている相手など皆無に近い。

 

「始めました。君がマシロ君だね。私はフラナ機関から来たナイン・バルト。こっちがアイラだ」

「……アイラ?」

 

 眼鏡をかけたナイン・バルトは、にこやかにそう言うがマシロが興味を示したのはアイラと呼ばれた少女の方だ。

 

「何か?」

「別に」

 

 マシロがじっと見ている事に気が付いたアイラがそう言うとマシロは視線を逸らす。

 

「つか、あんた等がフラム機関ね」

「フラナ機関だ」

「フラム・ナラ機関の略称だろ? まぁ、アニメキャラの名前を付けた機関とか恥ずかしいから隠したい気持ちは分からんでもないけど、その辺りの恥じらいは捨てないと駄目だと思うぞ。俺は」

「茶番はそこまでにしておけ」

 

 ヨセフに言われてもマシロもこれ以上言う事は無い。

 

「ヘイヘイ。で、どっちが俺の保険?」

「どうやらこのアイラがそうらしい」

 

 ヨセフがそう言うが、明らかに不服だと言う事が分かる。

 マシロが今年の世界大会で実力を見せ過ぎたせいでヨセフも来年の世界大会での保険をかける為に、フラナ機関に優秀なファイターを寄越すように指示を出した。

 そして、送り込まれて来たのがアイラと言う事だ。

 

「ふーん。で、俺が呼ばれた理由は?」

「はっきり言って私はアイラの実力を信用しておらん。お前から見てどうだ?」

 

 マシロがヨセフに呼ばれた理由はそこにあった。

 ヨセフにはアイラが優秀なファイターにてとても見えない。

 見た感じではアイラはマシロよりも少し年下に見える。

 そんなアイラの実力を信用出来ないのも無理はない。

 そこで、ファイターとしてずば抜けた嗅覚を持つマシロを呼んで見極めさせようとしていた。

 

「彼女は我がフラナ機関が作りあげた最強のファイターです。必ずやオーナーの意向に沿う事が出来るでしょう」

「言うね。現最強ファイターの俺を前にして」

「なら、証明して見せます」

 

 バルトがヨセフにアイラの事を売り込むが、世界大会を制したばかりのマシロを前にしては「最強」と言ったところで意味はない。

 そして、アイラがそう言う。

 

「私が勝てば最強である事を証明できると思います」

「しかしだな……いきなり彼を相手にするのは……それに、お前のガンプラは」

 

 挑戦的なアイラにバルトはアイラを諌めようとする。

 流石にいきなりマシロを相手にするのは分が悪い。

 少なくとも世界大会を優勝出来るだけの実力をマシロは持っている。

 その上で、アイラの専用機は今は完成していない。

 

「ガンプラは俺が作った奴を特別に貸してやる。ボス、ガヴェインの奴はいたよな。すぐにお呼び出してくれ」

「貴方が相手をするのでは? それとも逃げるんですか?」

「ゲームだって始めからラスボスと戦える訳じゃないだろ。俺とバトルしたかったら、せめてガヴェインを倒せる程度の実力は無いとな。それとも自信がないとか? まぁ、俺とバトルして負けるんなら仕方が無いと言うのも分かるけどさ」

「分かりました」

 

 アイラは少しムッとして答える。

 マシロより先にガヴェインとバトルする事になるが、勝って実力を証明すればいい。

 

「良かろう」

 

 アイラとガヴェインのバトルがオーナーであるヨセフに了承されてしまえば、バルトにはどうしようもない。

 すぐに、ガヴェインがバトルルームに呼び出されてマシロ達もバトルルームに移動する。

 

 

 

 

 

 バトルルームに呼ばれたガヴェインはマシロを見た途端に顔をしかめる。

 呼び出された事自体はさほど問題ではないが、マシロの差し金と言う事は面白くはない。

 だが、オーナーのヨハンの命令である以上はガウェインはアイラとバトルせざる負えない。

 そして、バトルが開始された。

 ガウェインのガンプラは独自の改造を施したデビルガンダム。

 アイラのガンプラはマシロが制作した白いジェガンだった。

 二人のバトルが開始されるとすぐに状況はアイラに傾いて行く。

 

(あの動き……)

 

 アイラの動かすジェガンはガウェインのデビルガンダムの攻撃をいとも簡単に回避する。

 そして、ガウェインの反撃を許す事無く、デビルガンダムが破壊された。

 

「まさか……ガウェインをここまで容易く」

 

 アイラの勝利にヨセフは驚き、バルトは満足そうにしている。

 今となってはネメシスにおいてマシロが不動のエースだが、この前まではネメシスエースと言えばガヴェインだった。

 マシロの陰に隠れているが、ガウェインの実力も世界レベルと言っても良い。

 そんなガウェインをアイラは苦も無く勝利した事をヨセフは信じがたかった。

 以前にもマシロがチームに来た時に一番強いファイターと戦わせろと言いガウェインと戦わせたが、その時もマシロの圧勝だった。

 マシロの場合はクロガミ一族と言う特殊な一族から引き入れている為、驚きこそしたが同時に納得も出来た。

 

「勝ちましたけど?」

「言うだけの事はあるね。だが、奴はネメシス四天王の中でも最弱! 勝ったところで良い気にならないで貰おう」

 

 ガウェインに勝ったアイラはマシロにそう言う。

 マシロはバトルシステムの前に立つとガンプラを置いた。

 

「こいつはハンデだ。まさか、いきなり全力の俺とバトル出来るなんて思ってないよな」

 

 バトルシステムないにマシロのガンプラが出て来る。

 アイラも事前にマシロの事は少し聞いている。

 だが、その時聞いたマシロの使うガンプラではないと言う事はすぐに分かった。

 マシロの出して来たガンプラはコレルル、ガンダムXに登場する機体だ。

 異様に長い手足が特徴のコレルルは明らかにマシロのガンダム∀GE-1とは違う。

 

「武器もこいつだけで十分だ」

 

 マシロはそう言ってコレルルの持つビームナイフを軽く上に投げて見せる。

 そう言われたアイラは少しムッとするが、マシロは気にしない。

 

「止せ、アイラ!」

「問題ありません。このまま行きます」

 

 ガンダム∀GE-1ではないにしろ、いきなりマシロとバトルする事は分が悪いと判断したバルトはアイラを止めようとするが、アイラは聞く耳を持たない。

 バルトとしてはガウェインを倒した時点でアイラの能力が高いと言う事を見せる事が出来たが、ここでマシロとバトルして万が一にも負ける事があってはヨセフの心証に関わって来る為、避けたい。

 そんなバルトに意に反して、バトルが再会された。

 ジェガンはビームライフルを放ち、コレルルは飛び退いて回避する。

 

「ちょこまかと」

 

 コレルルは高い運動性能を発揮してジェガンのビームライフルを回避していた。

 

(この動き……間違いない。コイツ……俺の動きが見えてるな)

 

 攻撃を回避しながら、マシロはそう判断した。

 ガウェイン戦の時もアイラのジェガンの動きはまるでデビルガンダムの次の動きを読んでいるかのようだった。

 そして、実際にバトルして見て確信した。

 アイラはこっちの動きを見えていると言う事をだ。

 単純に動きを読んでいるにしては正確過ぎる。

 バトルの中でジェガンの動きだけでなく、アイラ自身にも注目してみるとアイラは視線が僅かながらこちらの動く先に向かっている。

 からくりまでは分からないが、アイラは確実にマシロのコレルルの動きが見えている。

 

(こっちの動きの先を見るファイターか……悪いな。お前がXラウンダーならこっちはスーパーパイロット。相性が悪い)

 

 アイラがこちらの動きを先読みしていると言う事が分かった時点でマシロは反撃を開始した。

 先ほどまでは、ギリギリのところで防いでいた攻撃が次第に余裕を持って回避できるようになって来ていた。

 

(何で……動きが)

 

 余裕を持っていたアイラも次第に焦り始めていた。

 マシロのコレルルの動きが見えていた物と違って来ているからだ。

 アイラはマシロのガンプラの動きの先を見た上で攻撃している。

 だが、マシロはそんなアイラのガンプラの動きを見た上で動かしている。

 その為、アイラが攻撃した時にはすでに、コレルルはアイラの見た動きとは違う動きをしている。

 アイラの能力が先読みなら、マシロの能力は後出しだ。

 アイラが何千手先を読んだところで、動いた時点でマシロがその動きに反応して動きを変えて来る為、先読み能力は意味を成さない。

 それどころか、先を分かっている事で、それと違う事で一瞬の隙が生まれる。

 そして、コレルルはジェガンのビームライフルを回避して、接近するとビームナイフを振るう。

 ジェガンはシールドで防ぐが、シールドはビームナイフで簡単に切断されてしまう。

 

「っ!」

 

 至近距離でビームライフルを向けるが、それよりも先にビームナイフがジェガンの右腕に突き刺さり破壊される。

 ジェガンはバルカンでコレルルを牽制しようとするが、コレルルはジェガンの背後に回り込む。

 

「速い!」

 

 そして、コレルルが背後からジェガンの首元にビームナイフを突き刺すとジェガンは力無くうな垂れてバトルが終了した。

 

「馬鹿な……アイラがこうも簡単に」

 

 先ほどとはうって変わってバルトが信じられないという表情をしていた。

 アイラは専用のガンプラを使っていなかったとはいえ、ここまで一方的なバトルになるとは予想もしていなかった。

 

「会長! これはですね。アイラは専用のガンプラを使っていなかったからでして……」

「構わん。ガウェインに勝った時点でアイラの実力は分かっておる」

 

 バルトはすぐに釈明するが、ヨセフは負けた事に関しては気にはしていなかった。

 ヨセフの中ではマシロが勝って当たり前で、ガウェインに勝った時点でアイラの実力は十分だった。

 ヨセフはそう言ってバトルルームから出て行く。

 バルトはアイラが負けた物の、フラナ機関への評価が落ちる事が無かった為、複雑そうにしている。

 マシロはバトルを終えて、バトルルームを出て行くとバトルを見ていたガウェインがマシロを追いかける。

 

「お前、俺と当て馬に使いやがったな」

「何の事?」

 

 マシロに追いついたガウェインはマシロの横を歩きながら問い詰めた。

 マシロはとぼけているが、マシロはガウェインをアイラに対しての当て馬として利用していた。

 アイラのバトルの情報を集める為に、それらしい理由を言ってガウェインとバトルさせた。

 その時にジェガンを渡したのも、癖の無いガンプラで戦わせる為だ。

 癖が強いとファイターの方がガンプラの特性に合わせる必要が出て来るが、汎用型のジェガンならそれもない。

 そして、ガウェインとのバトルの中からアイラの戦い方の癖や傾向を見極めていた。

 

「それに何がハンデだ。ふざけやがって」

「ハンデだろ? ∀GEで行くよりはさ」

「よく言うぜ。あの餓鬼には素組に毛が生えた程度のガンプラを渡して、自分は作り込んだガンプラを使っておいて」

「ばれてた?」

 

 マシロはバトルの前にハンデを付けると言ったが、それはアイラが使っているジェガンよりマシロが使ったコレルルの方が性能が低いと言う意味ではなかった。

 マシロが世界大会を制した時に使ったガンダム∀GE-1よりも性能の低いコレルルを使った事はマシロの言うハンデだ。

 二人の使ったガンプラには性能に大きな開きがあった。

 アイラのジェガンは素組した後に塗装し、墨入れをしてつや消しを行った程度だが、コレルルの方は細部まで作り込んでいた。

 ガンプラに関する知識のない他の三人はコレルルの装備の貧弱さから勝手にコレルルがジェガン以下だと思い込んでいた。

 だが、実際にはコレルルの作中の致命的な欠点であった装甲の薄さもジェガンのビームライフル程度なら数発は直撃しても耐えるだけの強度はあり、申し訳程度の威力しかないビームナイフの切れ味もジェガンのシールドを容易に切り裂ける程に強化されている。

 バトルを見ていた者の中で唯一ガウェインだけはその事実に気づいていたが、アイラに負けた腹いせに黙っていた。

 マシロからすれば気づかない方が知識不足で悪い。

 

「で、ルーキーに負けた感想はどうよ?」

「……次は勝つ」

「だろうね。若いんだよ。動きに感情が乗り過ぎてる。私は強いんです。私は先が見えて凄いんですってね」

 

 ガウェインは次にアイラとバトルすれは勝てると思っている。

 それは強がりでは無く、マシロも肯定している。

 アイラの実力は決して低くない。

 ガウェインが負けたのはアイラに対して油断があった事は確かだが、アイラが予想以上に強いと考えを改めた時には手遅れだった。

 並のファイターなら持ち直す事は出来ただろう。

 そうできなかった事はアイラの実力が高いと言う事でもある。

 だが、次にバトルした時は油断は無い為、先ほどのような展開にはならないだろう。

 アイラの先読み能力も事前に分かっていれば幾らでも打つ手はある。

 実力は世界レベルだが、世界でたそこそこしか通用しないと言うのがアイラと戦って見ての感想だ。

 実力はあるが、致命的のが自分の能力に絶対的な自信を持っている事だ。

 自分の実力に絶対的な自信を持っていると言う点ではマシロも同じだが、アイラの場合は能力を過信しすぎている。

 だから、ガウェインとバトルした時も自分の能力を隠そうともしなかった。

 並のファイターから見れば、圧倒的な実力でしかないが、世界レベルのファイターの目はごまかせない。

 実際、マシロだけでなく、ガウェインも一度のバトルでアイラの能力に気づきかけた。

 これでは世界大会に出たところで始めこそは勝てても、決勝トーナメントに進む事は精一杯だ。

 その頃にはアイラの能力は知れ渡り、世界の強豪たちは確実に対策を練って来る。

 

「対人バトルの経験が極端に少ないんだろうな。一体、どんな練習をして来たんだか」

「お前が言うか」

 

 マシロの見立てではアイラは対人バトルを殆どして来ていなかったと推測できた。

 だからこそ、相手が自分の能力を見極め、対策を取って来ると言う事を余り重要視していない。

 CPU戦なら、自己学習プログラムでも組み込んでいない限りはパターン化された動きしかしてこない為、柔軟な思考は出来ない。

 それがマシロが度々、対人バトルをする理由の一つでもあった。

 

「色々と足りないところはあるが、その辺りを克服すれば化けるね。少なくともガウェインには勝ってるし」

「煩い」

「まぁ、精々三番手に落ちてボスに首切られないようにするんだな」

 

 マシロはガウェインにそう言って自分の部屋の方に戻って行く。

 後ろからガウェインが抗議の声を上げているが、マシロは気にすることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシロが部屋に戻ると、シオンが荷造りをしていた。

 マシロは準備ができ次第、世界中を飛び回る予定で、その準備だ。

 

「マシロ様。報告書の準備が出来ています。会長から今日のバトルの報告書、特にアイラ・ユルキアイネンに関する物を提出するようにと連絡がありました。すでにPCの用意は整っています」

「相変わらず仕事は速いな」

「まぁ……これが最後の仕事になりますから」

 

 マシロはシオンが準備したPCの前に座ると報告書の作成に取り掛かる。

 すでに、報告書のテンプレートはシオンが作成している為、マシロは必要事項を打ち込むだけで良かった。

 

「ああ……そう言えばそうだったな」

 

 マシロはPCに向かいながらそう呟く。

 シオンは一月ほど前、マシロが世界大会に優勝した後に、シオンはマシロに移動願を提出していた。

 マシロはそれを二つ返事で了承した。

 シオンとしては、マシロが引き止めたり、自分が離れる事にショックを受けているようなら少しは考えもしたが、マシロは全く動じる事も気のすることもなかった。

 結局のところ、何年行動を共にしてもマシロにとってシオンはどこまで行っても自分の世話係でしかなかった。

 

「一応、聞いとくけど移動願の理由は?」

「今更ですか……強いて言うのでしたら、これ以上、クロガミ一族と深くかかわって行くと人として大切な物を失いそう……と言う事ですかね」

「ふーん。まぁ、シオンは無駄に器用だから新しい現場でも上手く行くと思うけどさ」

 

 相変わらず、気にした様子はマシロには見られない。

 マシロがそうだからこそ、シオンは移動を決意した。

 初めて会った時はまだ、マシロも今よりもずっと子供で、性格的な問題もその内普通になると思っていたが、数年経った今でもあの時と大して変わらない。

 変わった事と言えば歳を重ねた事で無駄な知識を増やしたくらいだ。

 それは、マシロ個人の問題と言うよりもクロガミ一族全体の問題に思えた。

 それを何とかするだけの力はシオンにはない。

 マシロだけとも考えた時期もあったが、本人がそれを望んでいない以上は何を言っても無駄でしかなかった。

 そうして、出した決断がクロガミ一族と距離を置くと言う事だ。

 移動先はクロガミグループ内である為、完全にクロガミ一族と繋がりを断ち切る訳ではないが、本家の人間と関わらないのならば問題はない。

 マシロはシオンに移動に関して対して興味がないのか、作業を進めシオンの方も今更気にすることでも無い為、マシロの荷造りを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 アイラとのバトルの翌日、マシロはヨセフの呼び出しを受けていた。

 面倒に思いつつも仕方が無くオーナールームに来た。

 

「昨日のバトルの事なら報告書を出したけど? まだ、何かあんの? 俺、暇じゃないんだけど」

「報告書は読ませて貰った」

 

 マシロはソファーに座り込む。

 

「お前の報告書を見るかぎりではアイラでは世界大会を優勝する事は難しいと?」

「現段階ではね。次の世界大会まで1年くらいある」

 

 報告書には今のアイラでは世界大会を優勝する事は無理だとマシロははっきりと書いてある。

 ヨセフもガンプラバトルに関してはマシロの意見を全面的に信用している。

 そんなマシロが無理だと言うのであればそうなのだろう。

 

「そこで本題だ。マシロ、アイラを育てて見る気はないか?」

「俺に父親役をやれと」

「対人バトルの経験の少いとはいえ、ガウェインを倒すだけの実力は持っている事は確かだ。経験を積むと言う点ではお前に付いて学ばせる事が一番の方法だからな」

 

 ヨセフはマシロの冗談をスルーして話しを進める。

 マシロがアイラが世界大会で優勝出来ないと判断した最大の理由が対人バトルの経験不足。

 だが、単純な実力だけならガウェインに勝てるだけの物は持っている。

 つまり、経験不足を補えばアイラは十分に世界大会の優勝を狙える事になる。

 

「けど、俺はファイターを育てた経験とかないぜ?」

「構わん。結局のところ、アイラはお前の保険でしかない。お前が来年の世界大会で優勝すれば事足りる」

「それはそうだけどな」

 

 アイラが優勝を狙えるようになればそれに越したことはなかったが、ヨセフの中ではマシロが優勝すれば目的を果たす事は出来る。

 

「保険をかける必要が出て来たのはお前の責任でもある」

 

 本来は来年の第7回大会でマシロを投入して一気に優勝する予定だった。

 それをマシロが7回大会の出場権を得る為に6回大会に出場し、優勝した。

 更にはインタビューで全世界のファイターを挑発もしている。

 だから、ヨセフは保険としてアイラをフラナ機関から呼び寄せた。

 

「それに、ファイターを育てて見る事もお前にとってはいい経験になると思うのだが」

「一理あるな」

 

 マシロは今まで自分の実力を上げる為に事はして来た。

 その中でファイターを育てると言う事は一度もない。

 直接的な練習でなくとも、ファイターを育てると言う事は今までとは違う視点でガンプラバトルに関わる事でもある。

 そうなってくれば、もしかしたら新しい発見もあるかも知れない。

 

「分かった。引き受けよう。但し、やり方は俺の好きにさせて貰う。結果がどうあれ文句は無しだ」

「任せる」

 

 面倒だと思いつつも、アイラをファイターとして育てる事で何かしら自分が得る物があるかも知れないと考えたマシロは了承する事にした。

 ヨセフとしてはやり方にあれこれ指示を出す気はない。

 元々、ファイターを育てる事はおろかガンプラバトルに関してもヨセフの知識は多くはない。

 ヨセフとしてはやり方はどうでも良く、最終的に結果を出せばそれで構わない。

 話しを終えたマシロは早々にオーナールームを出て行く。

 マシロが出て行き、戻って来ない事を確認するとヨセフは電話を出した。

 

「私だ。予定通りに事は運んだ」

「でしょうね」

 

 ヨセフの電話の相手はマシロの姉であるレイコだった。

 レイコは一度、マシロを優勝させたことで今は本業の方に戻りつつも部下に来年の為の情報収集を命じている。

 そんな中でレイコの方からヨセフに要望を出していた。

 

「本当に大丈夫なんだろうな。フラナ機関にはかなりの額の出資をしたんだ。アイラが潰されるようなことがあっては出資が無駄になる」

「さぁ……それはマシロ次第ですね。ただ、あの子は勝ち続けますよ。それしか能がない子ですから。マシロが優勝さえすれば、どこの馬の骨かも分からない子供が一人潰された事や、フラナ機関に出資した額なんてどうだって良いはずです」

 

 アイラをマシロに育てさせると言うのはレイコからの要望だった。

 マシロなら自分の為にもなると言えば受ける確率が高くなると言う事を教えたのもだ。

 ヨセフとしては高い額の出資をして、呼び寄せたアイラが世界大会を前にマシロに潰される事を危惧していた。

 優勝は狙えずとも世界を相手に戦えるだけの実力は持っている。

 本命のマシロのサポート役としては十分だ。

 潰されるリスクを負ってまで、育てる意味はヨセフの側からすればない。

 だが、レイコは確実にマシロが7回大会でも勝つ為にやらせた。

 レイコもマシロがここのところ、勝っても何かが足りないと思っている事にも気づいている。

 大抵の物はクロガミグループの力を使って用意は出来る。

 性質が悪い事に本人すらも何が足りないのか気づいていない。

 マシロ本人ですらも気づいていない為、直接用意する事が出来ないでいる。

 そこで、レイコは今までマシロがやって来なかった事をさせて見てはと思い至った。

 その一環として、ファイターの育成だった。

 マシロはファイターの育成を行った事も、誰から直接指導を受けた事もない。

 ファイターの指導方法は完全に我流でいつも通りの自分の練習をさせれば潰れる可能性もある。

 しかし、レイコからすればアイラが潰れたところで関係は無かった。

 潰れてしまえばマシロの足りない何かではなかったと言う事に過ぎないだけの事だ。

 

「当然だ。マシロには勝って貰わねばならん」

 

 ヨセフはそう言って、レイコとの電話を終えた。 

 こうして、本人たちの知らないところで新たな思惑が動き始めた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。