ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle29 「ストリートバトル」

 アメリカの大学で姉の一人のレティからレティが合成した合金を受け取ったマシロはそのまま、車で半日以上の時間をかけて移動した。

 目的の場所は兄の一人が務めている宇宙センターだ。

 目的地に到着したマシロは受付で兄を呼び出すとロビーで待っていた。

 

「良く来たな!」

「……相変わらず声デカいよ」

 

 ロビー中に響き渡る程の大声で来たのがマシロの兄の一人のクロガミ・ハルキだ。

 日本人離れした屈強な体格のハルキは宇宙飛行士として有名だ。

 ハルキが来た事でマシロは立ち上がるとハルキはマシロに抱擁する。

 マシロは苦しそうにもがくが、ハルキを押しのける事は出来ない。

 マシロの意識が軽く飛びかけたところで、ハルキはマシロを解放する。

 

「聞いたぞ! 世界一になったらしいじゃないか! 俺は信じていたぞ! マシロはやれば出来る奴だって事はな!」

「もう少し、声を落とせって。それに世界大会って言っても一般レベルでの話しだし。規格外の化け物はこんな大会には出ない」

 

 どこで聞きつけたのか、ハルキはマシロが世界大会で優勝したと言う事を知っているらしい。

 だが、世界大会で優勝した事は大した意味はない。

 名実的に世界一になったところで、元から自分が最強だと思っているし、世界大会に出場したファイターは確かに実力者が揃っている。

 しかし、中にはかつてのマシロのように圧倒的な実力を持ちながら、世界大会に出場していないファイターも少なからずいる。

 

「流石の俺でもそいつらに対する勝率は7割と言ったところだよ。今のガンプラではね」

「大した自信じゃないか! 男はそのくらい自信がないとな!」

 

 ハルキは規格外の化け物に対する7割と言う勝率はマシロの自信の表れと取るが、マシロは常に自分が最強で絶対に勝てると言う確信を持ってバトルしている為、7割と言う勝率はマシロの中ではかなり低い。

 

「そんな事はどうでも良いから、頼んだ奴は持って来たんだろうな」

「久しぶりに弟と会ったんだ、ゆっくりしたいではないか!」

「知るか。俺は暇じゃないんだよ」

 

 ハルキとしては、久しぶりに会った弟とゆっくり話したいと思っているが、マシロはハルキの相手をするのは面倒で早く帰りたかった。

 

「忙しない奴だな! これが頼まれていた物だ!」

 

 ハルキは持って来ていたケースをマシロに渡す。

 その中にはマシロがハルキに頼んで宇宙で製造して来た特殊プラスチックが入っている。

 

「これだけか?」

「仕方が無いだろう! これが完成品の試作だ! これを実際にガンプラバトルとやらで使ってマシロの満足の行く結果が出ればすぐにでも量産に入る!」

 

 マシロは量に不満気だったが、あくまでも完成したプラスチックの試作に過ぎない。

 以前、マシロに渡した試作品を改良して完成の域に達してはいるが、頼んだマシロが納得いくかは分からない。

 これで納得が行かないのであれば、再度作り直さなければならない為、最低限の量しか製造していない。

 実際に使ってみて、納得が行くのであればハルキが再び宇宙に上がってマシロに頼まれていた量を作る事になっている。

 

「分かったよ。なるべく早く、結果は伝える。これで良いと仮定して量が揃うのはどの位になる?」

「シャトルを打ち上げるのにも相応の日数はかかる! そこから様々な要因を考えて頼まれていた量を生産するとなると……最短で数か月と言ったところだろう!」

「数か月か……厳しいな」

 

 マシロは頭の中で計算を始める。

 少なくとも第7回の世界大会までには特殊プラスチックを使ったガンプラを完成させたい。

 だが、肝心のプラスチックが用意出来るまで最短で数か月かかる。

 その時間はあくまでも最短で最悪の場合は更に時間がかかる可能性もある。

 時間を短縮する事は不可能だろう。

 ハルキは一見、頭が悪いように見えるが、クロガミ一族の本家の人間だ。

 宇宙飛行士として必要な知識やスキルはマシロの比ではない。

 そんなハルキが提示した数か月と言う日数は多少前後しても、大幅に短縮する事は無理と考えた方が良い。

 世界大会が開催されるまで、後10か月程度ある為、特殊プラスチックを用意するのは可能だろう。

 しかし、プラスチックが完成したところで、それをガンプラにするまでにも時間がかかる。

 それらを計算すると、マシロの新型のガンプラは世界大会が開催されるまでに完成する事は時間的に不可能となる。

 

「予選ピリオドなら、レイコの策があれば今のままでも勝ち抜く事は出来る……問題は決勝トーナメントか」

 

 ハルキそっちのけでマシロは頭をフルに回転させて考える。

 世界大会の予選ピリオドは毎回ルールが変わる為、単純な操縦技術の他にルールに対する順応性が勝ち抜く為に必要となる。

 そこはレイコの策があれば乗り切る事は出来る。

 問題は予選ピリオドを勝ち抜いた先の決勝トーナメントだ。

 決勝トーナメントは一体一のバトルとなっている。

 今年はレイコの策や、予選ピリオドまで完全なノーマークと言う事もあって、圧倒的に有利な状況から一気に優勝まで行ったが第7回はそうはいかない。

 総勢100名のファイターは皆、マシロを王座から引きずり落とす為に世界大会に出場しているようなものだ。

 去年のバトルのデータからマシロに勝つ為に1年間、腕を磨きガンプラを強化して来た。

 参加者の大半は、マシロにとっては取るに足りない相手だが、一部の優勝を狙えるファイターを相手にする為には今のガンプラでは心もとないと言わざる負えない。

 

「弱音を吐くな! それがクロガミ家の男の台詞か!」

「うるさい。ハルキに言われなくても分かってる」

「それでこそマシロは俺の弟だ!」

 

 ハルキは笑いながらマシロの背中をばしばしと叩いて激励する。

 

「俺を殺す気か!」

「この程度で死ぬなら鍛え方が足りない証拠だ! どうだ? 俺と一緒に訓練に参加いて見ないか! マシロはもう少し体を鍛えた方が良いぞ!」

「だから、死ぬって」

 

 ハルキの誘いにマシロはゲンナリする。

 宇宙飛行士としての知識は豊富だが、ハルキは基本的に脳筋だった。

 レティ達と相いれないと言うのも十分に理解出来る。

 

「とにかく……頼むからな」

「分かっている! こっちもプロだ! 頼まれた仕事はきっちりとこなして見せよう!」

 

 多少は時間的な不安要素はあるが、ハルキもプロである以上はこちらの都合に合わせて来るだろう。

 その点に関してはマシロも信用している。

 

「俺も次はカナタのところに行かないといけないから、この辺で返るぞ」

「次はカナタ兄さんのところか! あの人も元気でやっているか心配だから頼むぞ!」

「どうだろ? 元気ではない事は確かだと思うけどな」

 

 マシロはそう言って席を立つ。

 次に尋ねる兄のカナタは体が丈夫ではない。

 死んだと言う話しを聞かない以上は生きているとは思うが、カナタが元気でいる様子は想像できない。

 マシロはハルキから特殊プラスチックを受け取ると、ホワイトベースがある空港へと、また数時間をかけて戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシロにおいて行かれたアイラはマシロの言いつけ通りに練習をしたが、結局、その日の内にマシロが帰ってくることは無かった。

 事前に連絡用として携帯を渡されていたが、電話をかけてもメールを出してもマシロからは何も返答は無かった。

 マシロが出た翌日にはマシロから自由にしてろと言う簡潔なメールが届き、部屋のロックも解除されていた。

 自由にしても良いと言われたのでアイラは町をぶらついていた。

 出かけの際にマシロから渡すようにと言われていたと船長から財布を受け取っている。

 中を確認すると約1月程生活が出来る程の現金が入っていた。

 これを持たされたと言う事はこの金を好きに使っていいと言う事なのだろう。

 

「高級な奴も良いけど、やっぱりこっちの方が私の口には合ってるのよね」

 

 アイラはその辺のファーストフード店で大量にハンバーガーを買い込んで抱えていた。

 ホワイトベースで食べたステーキも良かったが、アイラには親しみのあるチープな味のハンバーガーの方が口には合っているようだ。

 せっかく、かなりの現金を持たされてたので、この基に今までなら変えなかった程の量のハンバーガーを買い込んで食べながら歩いていた。

 食べる事に夢中で回りの事は人や物にぶつからない程度の注意しかしていなかった事もあり、アイラは気づけば裏路地に入っていた。

 裏路地に入ると表とは違い、荒んでいる。

 

「どこの国にもこんな場所はあるのね」

 

 普通の少女であれば、こんな場所に入り込むと怖がってさっさと出て行くが、アイラはフナラ機関にスカウトされる前はストリートチルドレンだった事もあり、こんな場所でも臆する事は無かった。

 余り気にせず食べ歩いていると裏路地の一画に人だまりを見つけた。

 何気なく覗いてみると人だかりの中央にはバトルシステムが置かれ、ガンプラバトルが行われているようだ。

 

「何でこんなところにまで……」

 

 普通に考えればこんな場所にバトルシステムを設置するメリットは無い為、恐らくはどこかから持ち出された物なのだろう。

 

「どっちも弱すぎ」

 

 バトルを見たアイラはそう感じた。

 どちらのファイターもアイラから見れば大したことはない。

 尤も、アイラは対人バトルの経験は殆ど無い為、基準となっているのは世界レベルの実力を持つマシロやガウェインで、ストリートバトルのファイターとは実力が段違いなのは当然だ。

 そして、バトルが終了する。

 勝ったのは明らかにガラの悪い大男だ。

 勝った男は相手のガンプラを手にすると地面に叩き付けて踏みつけた。

 

「くだらない。あんなことで自分の力を見せつけようなんて」

 

 男の行為は自分の力を周囲に見せつけようとしていると言う事はすぐに分かった。

 アイラが暮らしていたところでも似たような事は日常茶飯事だった。

 一帯を仕切っているボス気取りの奴が自分の力を周りに見せつけて、周りを従わせる。

 尤も、アイラの暮らしていた町の場合はガンプラバトルではなく純粋な暴力でだったと言う違いはある。

 直接的に被害を与える暴力に比べたら、玩具のバトルで優劣をつけている辺り温いとも感じた。

 

「流石裏キングだな。圧倒的だった」

「えっ! あの程度で!」

 

 アイラは誰かがそう言った事に反応して声を上げてしまう。

 さっきのバトルを見る限りではそこまで強いとは思えない。

 思わず声を上げた事で、周囲の視線はアイラの方に向く。

 そして、裏キングと呼ばれた男もアイラの方を睨みつけている。

 

「言ってくれるな小娘が」

「はぁ……」

「待てよ!」

 

 面倒事になる前にアイラは立ち去りたかったが、そうはいかないようだ。

 余り大事や荒事にはしたくはないが、逃げれば追い駆けて来る事は目に見えている。

 逃げ切る事は恐らくは難しくはないだろう。

 元々、そうやって生き延びて来た。

 

「……何?」

「ガンプラバトルも禄に知らない癖に勝手な事言ってくれる」

「知ってるし、私はアンタよりも強いわよ。何なら証明しても良いけど?」

 

 普通に逃げたら面倒な事になる。

 そこで、アイラは一つの策を打った。

 アメリカに来る道中でマシロに一つ言われた事があった。

 大抵の事はガンプラバトルで蹴りを付ける事が出来ると言う事だ。

 余り信じがたい事だが、ガンプラバトルで相手の戦意を削ぐ事が出来れば面倒事にならずにこの場から去る事も出来るかも知れない。

 さっきのバトルを見る限りでは裏キングとやらは自分より強いとは思えない。

 

「良いだろう! 徹底的になぶり殺しにしてやるよ!」

「出来る物ならね」

 

 声を上げて威嚇して来る裏キングの事を気にすること無く、アイラはバトルシステムの前に立つ。

 マシロからファイターたるもの、ガンプラは常に持つとうるさく言われていた事もあり、仕方が無くサザビー改を持っていたがこんなところで役に立つとは思わなかった。

 もしも、ガンプラを持っていなければ恰好が付かず、引っ込みも付かなかった。

 アイラはサザビー改をバトルシステムに置いた。

 裏キングも自分のガンプラを置く。

 

「……さっきとは違う」

「言ったろ? なぶり殺しにするってな!」

 

 裏キングのガンプラはさっきまでのとは違った。

 前に使っていた奴も今回使う奴もアイラは名前は知らないが、前の奴とは違って今度のは頭部からガンダムだと言う事は分かる。

 裏キングの使用するガンプラはブリッツガンダムだ。

 

「ブリッツ! 出るぞ!」

 

 2機のガンプラがバトルフィールドに射出されてバトルが始まる。

 今回のバトルフィールドは廃墟だ。

 

「見せてやる! 俺のブリッツの真の力をな!」

 

 裏キングがそう叫ぶとブリッツは風景と同化して行く。

 

「ガンプラが消えた……」

 

 ブリッツには作中ではステルスシステム「ミラージュコロイド」が搭載されている。

 それを使う事でブリッツは肉眼からもレーダーからも消える事が出来る。

 ガンプラバトルにおいてこの手のシステムは演出として使用する事が出来る。

 ミラージュコロイドも消えているような演出をしているだけで、実際には少し見えにくいと言う程度でしかない。

 だが、完成度によっては、演出ではなく実際に作中に限りなく近い効果を得る事が出来る。

 裏キングのブリッツもまた、姿を完全に消す事が出来た。

 

(姿を消す事の出来るガンプラもあるのね。まぁ……姿を消しても粒子で位置はバレバレなんだけど)

 

 姿を消した事にアイラは驚くがそれだけだ。

 アイラは自分でも何故なのか分からないが、プラフスキー粒子を肉眼で見る事が出来た。

 先読み能力もその能力で粒子の動きが見えているからこその芸当だ。

 リフティングの時にスーパーボールの動きが見えていなかったのはスーパーボールはゴム製である為、粒子が反応していなかった事が原因だった。

 そして、ミラージュコロイドでブリッツが姿を消したところでプラフスキー粒子を見る事が出来るアイラには大した効果は無かった。

 確かにブリッツ自体はミラージュコロイドで見えないが、ブリッツの居る場所は粒子でシルエットだけが浮かんでいるからだ。

 ブリッツが動きながら右腕を上げるとサザビー改は後方に飛び退いた。

 サザビー改がいたところにはブリッツが撃ったランサーダートが突き刺さった。

 

「良くかわしたな」

(あの槍……接近戦用の武器じゃなかったんだ)

 

 裏キングはアイラが初撃を回避した事を感心しているが、アイラはブリッツのランサーダートは接近戦で使用する装備だと思っていたらしく、裏キングの言葉など聞いてはいなかった。

 ミラージュコロイドで姿を消しているブリッツはレーザーライフルを連射するもサザビー改を捕える事は出来ない。

 

(取りあえず……)

 

 サザビー改はロングビームライフルをブリッツの移動先を狙って放った。

 ビームはブリッツの右腕を撃ち抜いた。

 

「そのガンプラ、右腕がなくなれば何も出来ないでしょう」

 

 サザビー改はロングビームライフルを捨てるとシールドに装備されているビームナギナタを抜いてブリッツに接近する。

 

「糞ったれ! 何でこっちの位置が!」

 

 裏キングはミラージュコロイドで見えていない筈のブリッツに一直線に向かって来る為、狼狽えている。

 ブリッツは左腕のグレイプニールを射出する。

 

「まだ、武器を持っていたの」

 

 だが、ミラージュコロイドで見えない筈のグレイプニールをサザビー改はビームナギナタで切り落として、ブリッツを間合いに捉えた。

 

「裏キングってこの程度? 表のキングの方が強いじゃない」

 

 サザビー改のビームナギナタは何もない空間を切ったように見えたが、ビームナギナタで切り裂かれた空間からブリッツが浮き出て来て、胴体にはビームナギナタで切り裂かれた傷がついている。

 そして、ブリッツは爆散した。

 

「大したことないじゃない」

 

 ミラージュコロイドで姿を消しているのにも関わらず、あっさりと勝利した事で周囲がどよめている。

 バトル相手の裏キングも茫然とするしかない。

 

「今の内に……」

 

 明らかに向こうの戦意が落ちている為、アイラはさっさと逃げる。

 バトルで戦意を削いだのが功を奏したのか、誰も追って来る事は無かった。

 アイラはこれ以上、面倒事になる前に空港に向かいホワイトベースに帰った。

 

「全くもう……」

 

 ホワイトベースに戻ったアイラはベットに倒れ込む。

 裏キングが大したことなかったとはいえ、自由にしていいよ言われておきながらガンプラバトルをした事で少し疲れている。

 

「さっきのバトル、中々の物だったじゃない」

「アレは相手が弱かった……って!」

 

 アイラは余りにも自然に話題を振られた為、普通に返しそうになるが、それがおかしいと言う事に気が付いて起き上がる。

 ホワイトベースには生体認証によるセキュリティーシステムが完備されている。

 その為、登録されていない人間が内部に入る事は容易ではない。

 ホワイトベースの船員はこの部屋に黙って入る事はない。

 

「……アンタ誰なのよ?」

 

 起き上がり声の先を見るとそこには白衣とセーラー服と言う奇妙な組み合わせの少女が不敵な笑みを浮かべて座っていた。

 

 

 

 

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