ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle32 「未来無き未来」

 故郷の町を発ち、ホワイトファングは次の目的地を目指して飛行していた。

 その間の退屈凌ぎと称して、マシロはアイラにガンプラバトルの相手をさせていた。

 アイラも渋々ではあったが、マシロに負けた借りを返す機会としてバトルに応じていた。

 だが、アイラのガンプラとマシロのガンプラでは性能に大きな差がある為、すでに何度も負けている。

 今回、マシロは完成したフルアサルトジャケットを使用している。

 完成系は膝にもホルスターを追加し、計10基の武器を内蔵したホルスターを装備している事になる。

 更には右手にはガンダムAGE-3 ノーマルのシグマシスライフルを改造して制作したハイパーメガドッズライフルを装備し、左手にドッズランサーを装備している。

 胸部のビームバルカンは取り外し、腰にはビームサーベルのラック兼、ビームガンを増設している。

 

「今度こそ……」

 

 再びバトルが開始される。

 バトルフィールドは地上基地だ。

 特にガンダムの作中に登場する基地とは設定されていない市街地の一つに分類されるバトルフィールドだ。

 バトルが開始されて、アイラのサザビー改がロングビームライフルで先制攻撃を仕掛けるが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはホバー装甲で左右に移動しながら回避する。

 

「ちょこまかと!」

「こっちからも行くぞ」

 

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはハイパーメガドッズライフルを構える。

 アイラはすぐにサザビー改を建物の陰に隠す。

 だが、マシロはそんな事をお構いなしにハイパーメガドッズライフルを放つ。

 放たれたビームは地面を抉りながら、建物に直撃すると難なく建物をぶち抜いた。

 サザビー改は建物が破壊される前に避けていた為、ダメージは無いが、射線上の物は跡形もなく吹き飛んだ。

 

「冗談でしょ……」

 

 アイラがハイパーメガドッズライフルの威力に驚いていると、次の攻撃が放たれた。

 サザビー改はギリギリのところで回避するが、右腕がビームに掠ってもぎ取られた。

 

「掠めただけで……」

 

 ガンダムAGEにおいてガンダムAGE-1 ノーマルのドッズライフルから派生してドッズ系のビーム兵器はビームを回転させる事でビームの貫通力を上げていると言う設定がある。

 ガンプラバトルでもドッズ系の装備はエフェクトとしてビームが回転しているように描写されている。

 だが、マシロのガンダム∀GE-1の装備しているドッズ系の装備は実際にプラフスキー粒子を回転させて貫通力を増している。

 それ故に、元々から高い火力に設定されているシグマシスライフルを改造して作られているハイパーメガドッズライフルの威力はガンプラが携帯出来る装備では破格の威力を持ち、掠っただけでも回転により削り取って破壊する事が出来る。

 それにより、特殊な塗装により粒子を弾くIフィールドも、塗料を削り取って無効化する事が可能となった。

 世界大会の決勝戦で、カルロス・カイザーのノイエ・ジールを一撃で破壊出来たのもそのお陰だ。

 

「驚いている暇があるのか?」

 

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはハイパーメガドッズライフルとドッズランサーを捨てるとホルスターの中からロングドッズライフルを出して、空のホルスターをパージする。

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの武装の一つのロングドッズライフルは長距離狙撃用の装備だ。

 先端部のバレルとパージする事でハンドドッズガンとしても使える。

 ロングドッズライフルで空中のサザビー改を狙撃するが、サザビー改は回避しながら着地して、ビームナギナタを左手で持って突っ込む。

 

「そんなに欲張ってるから!」

 

 距離を詰めてビームナギナタが振り落されるが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは膝のホルスターで受け止めた。

 

「残念」

 

 そして、膝のホルスターから2基目のロングドッズライフルを射出してサザビー改にぶつけた。

 

「お次はこいつでどうだ?」

 

 ロングドッズライフルを捨てると、今度は別のホルスターからニードルライフルを抜いて、空のホルスターをパージする。

 そして、ニードルライフルを放つ。

 ビームでも弾丸でも無く、針が撃ちだされる。

 これは設定上はガンダムAGE-1 スパローのニードルガンを手持ちの武器としている為、同口径の針を撃ちだす武器だ。

 サザビー改はシールドで防ぐが、撃ちだされた針はシールドに刺さると爆発した。

 針の内部には火薬が仕込まれていると言う設定で、対象に刺さる事で対象を内部から爆破する。

 シールドをを破壊された隙にガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはニードルライフルを捨てて、レイザーアックスを抜いた。

 レイザーアックスはガンダムAGE-1 レイザーのレイザーブレイドの発展系と言う設定で柄の長い斧だ。

 レイザーウェアのレイザーブレードは複数の刃を重ねた多層構造の刀身を採用されていると言う設定から、薄いプラ版を何層にも重ねて制作されている。

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはレイザーアックスを振るう。

 

「この!」

 

 だが、レイザーアックスは威力は大きいが、大型で振りも大きい為、サザビー改は空中に飛び上がって回避する。

 空中に逃れたサザビー改はバックパックのファンネルを展開する。

 

「これならどうよ!」

「ファンネルか……」

 

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはレイザーアックスを捨てると大型のドッズマシンガンと小型のビームマシンガンを抜いて空のホルスターを捨てる。

 ホバーで左右に動きながら前進し、包囲しようとしているファンネルに2種類のマシンガンで弾幕を張って、ファンネルを撃墜する。

 

「で、本体が疎かになってるぞ」

 

 両手のマシンガンを捨てて、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは折りたたみ式のビームランスを出すと、サザビー改に目掛けて投擲する。

 アイラはファンネルの操作に気を取られていた事もあって反応が遅れて、左腕がビームランスに貫かれた。

 

「くっ!」

 

 サザビー改は残された装備である、腹部の拡散ビーム砲を撃とうとするが、その時には空中にいるサザビー改の下をガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは走り抜けていた。

 サザビー改の拡散ビーム砲は腹部に内蔵されている為、射線はサザビー改の向いている方向にしか撃てない。

 下を通り、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは完全に拡散ビーム砲の死角に入り込んでいた。

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはGバウンサー用のドッズライフルを出して攻撃する。

 

「まだ!」

 

 サザビー改は何とかビームを回避して、着地する。

 

「マシロのガンプラは!」

 

 着地してすぐにマシロのガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの位置を掴もうとするが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはドッズライフルⅡBを出して投げていた。

 ライフルの下部の実体剣がサザビー改に突き刺さりバトルがマシロの勝利で終了した。

 

「さて、また俺の勝ちな訳だが今回の敗因は?」

「……マシロが変な武器とか使ったから」

「まぁ、それもあるがな。得体の知れない武器をギリギリのところでかわすからそうなる」

 

 マシロはバトルが終わるたびに、アイラに自身の敗因を訪ねていた。

 敗因を理解する事で、次から同じミスをしないように心掛ける事が出来るようになるからだ。

 今回のバトルの敗因の一つが初めて見る武器に対する対応の甘さがあった。

 ロングビームライフルごと片腕を失ったのは、ハイパーメガドッズライフルの威力の見積もりが甘かったからだ。

 多少、大きく回避しても相手の動きに注意していれば、片腕と武器を失う事は無かった。

 尤も、マシロはそれならそれで別の手を用意していた事は今は言わない。

 次に同じような場面になった時に使う為に取っておく。

 

「二つ目は武器の特性を把握していないって事だ。サザビーの拡散ビーム砲は内蔵式だ。内蔵式のメリットは持つ必要がないから他の武器を持ったままで使えると言う事。デメリットは内蔵している為、手持ちの武器のように射角を取り辛いと言う事」

 

 アイラはライフルを失いサザビー改は遠距離攻撃の手段は拡散ビーム砲かファンネルのみとなった。

 拡散ビーム砲は腹部に内蔵されている為、前方にしか撃てない。

 その為、死角に回り込まれないように気を付ける必要があった。

 だが、それを怠った事で、拡散ビーム砲の死角に回り込まれて使えなかった。

 

「後は、ファンネルの扱いだ。お前はファンネルの操作に集中していたせいで本体の操作が疎かになった。世界レベルの上位はその隙を確実について来るから通用しないぞ」

 

 アイラのファンネルはマシロが弾幕を張って対処したが、操作自体は問題は無かった。

 今のレベルなら世界大会でも十分に通用する。

 問題はファンネルの操作に気を取られ過ぎて、本体であるサザビー改の操作を疎かにした事だ。

 これはファンネルを使う上で、大抵のファイターが一度は陥るミスだ。

 格下ならば、全く対処できずに一方的に倒す事も出来るだろう。

 だが、世界の上位のファイターとバトルする上で、致命的なミスとも言える。

 

「ファンネルは基本的に補助的な武器だと認識しとけ。実力差のある相手ならともかく、世界の上位クラスのファイターにはファンネルで囲んで相手の意識を散らす程度の効果で、全滅しても構わないくらいの武器だと思っておけば全滅してもバトルに支障はない」

 

 アイラの今までの考えではファンネルを撃墜させないようにしていたが、それで本体が疎かになっては意味がない。

 だから、発想を変えさせた。

 別に撃墜されても構わない武器と思っておけば実際に撃墜されても精神的なダメージも受けない。

 例え、有効的なダメージを与える事が出来ずとも、適当に操作して周囲をうろうろさせておくだけでも、相手がファンネルを少なからず意識させて、注意を拡散させる事が出来る。

 仮に完全に無視を決め込んだとしたら、ファンネルの攻撃を当てる気で攻撃させれば、ダメージを与える事や意識を逸らす事も出来る。

 撃墜されたとしても、敵の攻撃をファンネルに向ける事が出来れば少なからず隙が生まれる。

 世界レベルのバトルにおいて、実力で上回り、圧倒的な優位な状況からでもほんのわずかな隙で逆転される事も珍しくはない。

 

「最後にずっと思っていた事でこれが最も重要な事なんだが、アイラ……お前、なんで無言でファンネルを使ってんの?」

「は?」

 

 さっきまでは、マシロの講義を黙って聞いていたアイラだが、流石に理解は出来ないようだ。

 確かにアイラはファンネルを使う時に何も言う事は無かったが、別に問題は無いように思える。

 

「お前、馬鹿か。バトルを初める時も何も言わないしさ。マナーがなってないんだよ」

「それ……マシロだけには言われたくはないわ」

 

 マシロは相手が誰であろうと自分の態度を崩す事は無い。

 それこそ、自分達のチームのオーナーにすらタメ口だ。

 そんなマシロにマナーを指摘されると言う事は腹が立つ。

 

「出撃時には自分の名前とガンプラ名を告げて、出ると言う旨を伝えなければならない」

 

 言われてみれば、マシロは毎回のように言っていた気がする。

 これは厳密にはルールにはないが、大抵のファイターが行っている行為だ。

 それは、どのガンダム作品の中でも登場キャラが出撃時に行っている事が多い為、ガンプラバトルでも行う事が暗黙の了解となっていた。

 

「ファンネルも然りだ。無言で使って良いのは、ドラグーンとかガンバレルとかでファンネルやファングはきちんと言わないと駄目だ」

 

 これも同様にガンダムの作中にはファンネルなどの武器を使う際にキャラクターがそう言う事を言うからで言わなければならないと言うルールは無い。

 

「今回のバトルでの課題点はこんなところだ。後10回はバトルで体に叩き込んでおきたいところだが、そろそろ目的地に着く時間だ」

 

 アイラも今日中に目的地に着くと言う事は聞かされていたが、どうやら到着の時間が近づいていたようだ。

 散々駄目だしを受けている為、バトルを続けずに済んでアイラは安堵する。

 

「今日は特別に同行させてやる。有難く思え」

 

 だが、マシロのその一言に悪い予感を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 その予感は的中した。

 ホワイトベースから降りたアイラは山を登っていた。

 マシロを背負って。

 この山がどこの国の山で名称は知らないが、マシロの目的地がこの山にあり、ホワイトベースでは近くに着陸出来ないと言う事から最も近い場所に着陸して、そこからは徒歩で登る事となった。

 ある程度の登山の装備を持って山を登り初めて1時間もしないうちにマシロがバテた。

 その結果、アイラはマシロを背負って山を登る破目となった。

 

「何でこんなことになったのよ……」

「ガンプラバトルなら何日もやり続ける事が出来るんだけどな。やっぱ無理だったわ」

 

 どうやら、始めから登り切る事が出来ないと言う事を分かった上でアイラを連れて来たらしい。

 アイラはマシロを落として帰りたい衝動に駆られるが流石に、こんなところでマシロを置いて帰れば、マシロは野垂れ死にそうだった。

 日頃の意趣返しをしたいが、流石に命に係わる事をするところまでは不満は堪ってはいない。

 

「後、どのくらいでつくのよ?」

「さぁ……もう少しだと思うんだけどな」

 

 マシロの曖昧な言い方に本当に目的地に辿りつけるか、心配になって来る。

 すでに数時間はマシロを背負って山を登っている。

 体力には人並以上の自信を持つアイラだが、人ひとり背負って数時間も山を登っていれば体力の限界も近づいて来る。

 

「アイラ、多分……あそこだ」

 

 背中越しにマシロが指を指して、アイラはそっちの方に向かう。

 その先には一件の小屋が立っていた。

 小屋と言うには大きいが、何故、こんなところにあるのかなど疑問はあるが、あそこがマシロの目的地ならそこまで運んでしまえば、楽になる事が出来る為、アイラはマシロを小屋まで背負って歩く。

 

「……着いたわよ」

「ご苦労さん」

 

 小屋の前まで来るとマシロはアイラの背から降りる。

 背負われている間に体力が回復している為、マシロの足取りは軽い。

 ようやく、マシロを背負う事から解放されたアイラは息を整えながら、マシロの後について行く。

 

「たのもー!」

 

 マシロはそう言って小屋の扉を開いて中に入って行く。

 疲れが溜まっている事もあって、アイラはマシロの行動にもはや何も言う事は無い。

 中に入ると少年が一人いるが、明らかに歓迎している雰囲気ではない。

 

「カナタは奴は……」

「帰れ!」

 

 マシロが言い切る前に少年が叫ぶ。

 どうやら、マシロは事前に来ると言う事を伝えずに来たようで、歓迎どころから敵視すらされているようだ。

 

「お師匠様は具合が悪いんだ! それなのに仕事ばかり持ち込んできやがって!」

「んなもん知るか。さっさとカナタを出せよ。俺はカナタに用があって来たんだよ」

 

 少年の言葉を全く聞かずにマシロはそう言う。

 アイラも大体の状況が掴めてきた。

 マシロは少年の師に仕事を頼みに来たが、その師は体調が悪いらしい。

 マシロはそんな事は気にした様子は無く、一方的に用件を突きつけている。

 

「それでも通さないと言うのなら、ガンプラバトルで勝負だ。俺が勝ったら通して貰う」

「は?」

「何でそうなる訳?」

 

 マシロは持って来ていたガンプラを少年に突きつける。

 マシロはバトルする気満々だが、アイラと少年は完全に流れに付いて来ていない。

 

「何でそうなるんだよ!」

「何でってこの流れはバトルで決着をつけると言うのが当然な流れだろ」

「知るかよ! 大体、こんなところでどうやって戦う気なんだよ!」

 

 マシロはガンプラバトルで決着をつける気ではあったが、この小屋にバトルシステムは無く、少年もガンプラやガンプラバトルの事は少し知っているが、ガンプラを持っていない為、バトルは出来ない。

 

「何……だと」

「騒がしいな。トウヤ」

「お師匠様!」

 

 トウヤと呼ばれた少年の声が大きかった事もあり、奥から一人の男が出て来る。

 和装の男はアイラの目から見ても健康には見えない程、血の気がない。

 

「まだ生きてるってのは本当だったみたいだな。カナタ」

「これは珍しい客が来たものだね」

 

 双方は顔見知りで、男の名はカナタと言うらしい。

 

「マシロは僕のところを訪ねて来るのは初めてかな? まぁ、こんなところで話しもなんだから居間においでよ」

「お師匠様!」

「そうさせて貰う」

 

 トウヤは抗議の声を上げるが、マシロは気にする事無く、カナタと共に奥に入って行く。

 マシロと一緒に来た事で、アイラもトウヤに睨みつけられて居心地が悪く、さっさとマシロの後を追いかけて行った。

 奥には囲炉裏を中心に座布団が敷かれている古い日本家屋の居間となっていた。

 カナタが座布団に座ると、マシロはその対面の座布団に座り込み、トウヤがマシロをにらみながら座って余った座布団にアイラが座る。

 

「一応、紹介するけど、彼は僕の弟子のトウヤ。こっちは……」

「そう言うのは良いから」

 

 カナタがマシロにトウヤを紹介する流れをマシロは遮る。

 マシロにとってはカナタとトウヤの関係には興味がないからだ。

 師であるカナタに対する無礼な態度に、トウヤはマシロに対する敵意を隠す事はしない。

 

「相変わらずだね。マシロも……けど、そっちの彼女の事くらいは紹介して欲しいな」

「こいつはアイラ、俺の弟子みたいなもん」

「へぇ……マシロが弟子をね」

 

 余りにも適当な紹介の仕方にアイラはムッとするも、カナタの方は興味深そうにアイラを見る。

 どことなく、値踏みをされているようでアイラは少しむず痒い。

 

「んな事はどうでも良いから。わざわざカナタのところに来たのは仕事の依頼だ」

 

 マシロはホワイトベースから持って来たケースをカナタの前に出す。

 その中にはマシロがアメリカでレティから貰って来た特殊金属が入っていた。

 

「これは……見た事もない金属だが?」

「レティに作らせた」

 

 アイラやトウヤには普通の金属と大して変わらないように見えるが、カナタは一目見ただけで、この金属が普通の物ではないと見抜いていた。

 

「これを使って刀を打って欲しい。当然、ガンプラサイズの物をだ」

 

 カナタは刀鍛冶として天才的な才能を持っている。

 カナタの打った刀に日本円で最低でも億の値がつく事は珍しくはない。

 マシロはそんなカナタにガンプラが持つ武器を作らせようと訪ねて来た。

 金属で刃を作れば当然、プラフスキー粒子には反応しないが、ガンプラが持って振えば武器として使う事も出来る。

 そして、大会規約には武器に関するルールで本物の刀をガンプラに装備させてはいけないとは書かれていない為、ガンプラサイズの刀をガンプラに持たせる事は違反ではない。

 尤も、大会運営側も本物の刀をガンプラサイズに収縮させた物を持たせると言う事は想定していない為、当然の事でもあった。

 

「ふざけんな! そんな玩具に持たせる為にお師匠様の手を煩わせる気かよ!」

 

 カナタの手前、敵意を向けるだけで黙っていたトウヤがついに我慢が限界に達してマシロに掴みかかる。

 それも当然だ。

 カナタは元々、体が弱い為、刀を一本打つだけでも普通の人間よりも重労働だ。

 それを玩具に持たせる刀を作れと言うのだ、トウヤが怒るのも無理はない。

 ここに来る理由を知らされていなかったアイラも、こんなところまで来てガンプラの武器を作らせると言うマシロの常識を疑っている。

 

「俺はカナタに仕事の依頼として来てんだ。お前がカナタと同じかそれ以上の刀を打てると言うなら、お前でも別に構わないが、俺はカナタ以上の鍛冶師を知らない」

 

 マシロにそう言われて、トウヤは完全にマシロに飲まれていた。

 アイラも今までのマシロはいい加減で適当だと思っていたが、ここまでのマシロは知らなかった。

 

「トウヤ。離すんだ」

「……ちっ」

 

 トウヤもカナタに言われてしまえば離すしかない。

 

「分かった。その仕事は受けよう」

「お師匠様!」

「マシロは僕の鍛冶師としての腕を信頼して仕事を依頼しに来たんだ。これは誰でも出来る訳じゃない」

 

 単に刀を作るだけなら、金さえあればすぐに用意出来るだろう。

 だが、マシロは自分の知る限り最高の腕を持つカナタに仕事を依頼しに来た。

 それはマシロがファイターとして妥協をしていないからだ。

 ならば、カナタも職人として受けざる負えない。

 

「それで、どんな刀をお望みだい?」

「そうだな。取りあえず、ビームとか炎を出すとかは最低でも欲しいな」

「出せるか! お前、刀を何だと思ってんだよ!」

 

 マシロのオーダーにトウヤが突っ込む。

 マシロはカナタの方を見るとカナタは黙って首を横に振る。

 流石のカナタでもマシロが言うビームや炎を出す刀など作る事は不可能だ。

 

「何だよ……じゃあ、空間を切り裂いたり、斬撃を飛ばしたりとかも出来ないのかよ」

「出来ないね。フィクションならともかく、現実にそんな刀は作れないよ。母さんなら出来そうだけどね」

 

 マシロの言う刀は全てフィクションの中の産物だ。

 フィクションはフィクションであって、カナタを持ってしても作る事は不可能だ。

 

「……じゃぁ、硬くて切れ味が最高の物で頼む」

 

 マシロの刀に対する像が完全に破壊された事で必要最低限の要望だけになった。

 

「分かった。マシロの期待には添えるようにする。今から下山するのは危険だから泊まって行くと言い」

「始めからそのつもり」

 

 すでに日が傾いて来ている。 

 流石に今から山を下りる事は危険だ。

 マシロは始めからここで泊まって行く気だった。

 余りの図々しさに、トウヤがマシロを追い出そうと思うかけるが、仕事の話が終わったところで、カナタからマシロが弟だと聞かされて追い出す事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が完全に沈み日付が変わる頃になっても、マシロは居間でガンプラを弄っていた。

 小屋は見た目こそは古い日本家屋で囲炉裏などもあるが、体の弱いカナタが生活する上で最新の技術が使われている為、快適に過ごす事が出来た。

 すでにアイラもトウヤも寝静まっている。

 当初は自分とアイラは同じ部屋で構わないとマシロが言い、今更抗議したところで意味がないとアイラは諦めていたが、流石に年頃の娘と同じ部屋で寝ると言う事は問題だとカナタはアイラだけ別の部屋を使わせた。

 マシロは寝れればそれで良いと一人居間で寝る事になっている。

 

「マシロは相変わらずのようだね」

「お互い様だろ」

 

 カナタはマシロがまだ、寝ていない為、様子を見に来たようだ。

 

「確かに」

 

 カナタはマシロの前に座る。

 マシロは相変わらず、ガンプラに夢中でカナタは刀を作る為に命を張っている。

 体が弱いカナタにとって、体調の悪い時に刀を打てば命を縮め、最悪命を落としかねない。

 それでも、仕事として受けた以上は持てる技術の全てを注ぎ込んでマシロのオーダー通りの刀を作るだろう。

 

「でも、例え僕が死んでも僕の作った刀は後世に残る。それを打った僕の名と共にね。けど、マシロ……君はどうだい? 自分の全てを注ぎ込んでも未来には何か残る物はあるのかい?」

「無いだろうな。ガンプラもガンプラバトルも後何年、流行るか分かった物じゃない」

 

 カナタの打った刀は、刀本来の武器として使われる事は無いだろう。

 武器としては使われないが刀は美術品としての価値がある。

 特に刀のカタナの価値は非常に高い。

 例え、カナタが命を落とそうとも、カナタの名は後にも残るだろう。

 しかし、マシロの場合は違う。

 ガンプラは玩具に過ぎず半世紀以上もの間、続いて来た事自体は奇跡的な事だ。

 どんなに流行った玩具も遊びもいずれは新しい物によって風化し、忘れ去られて行くことは人の歴史上には幾度もあった事だ。

 ガンプラも例外ではない。

 今でこそはガンプラバトルは世界大会が開催される程だが、10年や20年後に続いているかは分からない。

 だが、永遠に続く遊びなど決して存在しない。

 いずれはガンプラバトルも終わりを迎える時が来るだろう。

 ガンプラバトルが終わってしまえば、例え世界チャンピオンだろうと意味はない。

 

「仮にガンプラバトルが廃れてしまって、誰もやらなくなった時はガンプラバトルと心中するさ。どの道、ガンプラバトルが終われば一族にいる事も出来ないし、一族の外に出て生きる事は俺には出来ないからな。それに……もう、帰る場所もないしな」

 

 マシロがクロガミ一族でいられる理由がガンプラバトルがあるからだ。

 仮にガンプラバトルが誰もやらなくなって、完全に廃れてしまった場合、マシロは一族において何の価値も無くなる。

 そうなれば、ユキトはマシロを一族に置いておく理由は無くなる。

 そして、一族に置く理由がなくなれば、容赦なくマシロは切り捨てられるだろう。

 マシロはガンプラバトルでは世界最強となったが、それ以外の事は何も出来ずに、何もして来なかった。

 その為、一族の庇護がなくなれば、生きていくことは出来ない。

 つまりは、ガンプラバトルの終焉はマシロの人生の終焉でもある。

 尤も、マシロにとってガンプラバトルの無い人生には何の価値も見いだせない為、ガンプラバトルと共に人生が終焉を迎える事には何の抵抗もなかった。

 

「悲しいな」

「そうでもないさ。好きな事をやって好きに生きられるからな。今の世の中、そうやって生きる事も難しいからな」

 

 他者から見れば、一時の流行りで生きているマシロの人生は悲しく見えるだろう。

 それでも当事者であるマシロは自分の人生に悲観はしていない。

 世の中には自分がやりたくても才能や金銭的な理由から諦めざる負えない人だって大勢いる。

 それに比べたら好きな事を好きなだけやれる今のマシロの人生は幸せなのだろう。

 未来が無くとも今が良ければそれで幸せなのは、未来に名を残す為に今、苦しい思いをしているカナタとは対極の事だ。

 

「そうか……余り無茶はするなよ」

「カナタ程の事はしないさ」

 

 結局のところ、カナタにはどうする事も出来ない。

 カナタはカナタでマシロの人生が終わる前に、自分の人生が終わるかも知れない。

 心配をしたところで、マシロにとっては意味のないことだ。

 カナタは自分の部屋に戻り、マシロはカナタとの話しの事など気にすること無くガンプラを弄り夜を明かした。

 小屋で一晩を明かし、翌日にはマシロは用を済ませている為、さっさと下山する事になった。

 

「それじゃ、世界大会の決勝トーナメントが始まるまでに完成させればいいから。で、そいつを静岡まで届けて欲しい」

「分かった。納得が行くまでやらせて貰うよ」

 

 どの道、金属粒子を内蔵した特殊プラスチックが届くのは決勝トーナメントには間に合わない。

 その為、早く完成させる必要はない。

 最高の一振りが出来るまで、何度でも作り直すだけの金属は用意してある。

 カナタも職人として、期限までに完成させる事は当然だが、マシロが満足の行く最高の刀を作る事は職人としての意地だ。

 用が済んだ事で、マシロはアイラを連れて山を下りていく。

 それを見送ると、カナタはすぐに刀の構想に入る。

 山を下りたマシロは再び、途中で力尽きてアイラに背負われてホワイトベースに戻ると次の目的地へと向かうのだった。

 

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