ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle33 「感謝の言葉」

カナタに刀の制作を依頼したマシロはフランスのパリに来ていた。

 相変わらずアイラとは別行動でマシロはそこの研究施設を訪ねて来た。

 そこにはマシロの兄の一人であるリュック・クロガミが所長をしている。

 研究では機械工学の研究が日々されている。

 

「何かすげぇな……その内モビルスーツとか作れそうだな」

 

 マシロは研究所内を歩きながらそう言う。

 研究所には過去にここで制作されたと思われる機会がいくつも展示してあった。

 その中には人型のロボットもいくつも展示されている。

 普通の人間サイズの物から巨大な手など、その種類はさまざまだ。

 

「フン、10Mをも超える人型の兵器などナンセンスだ」

「うっわ。夢がねーの」

 

 神経質そうな男こそがマシロの兄の一人であるリュック・クロガミだ。

 リュックはマシロの感想を鼻で笑った。

 リュックからすればガンダムの作中に出て来るモビルスーツは非科学的な存在でしかないらしい。

 

「フン……で、何の用だ。俺は遊び歩いているお前と違って暇じゃないんだ」

 

 リュックの研究室に入ると、リュックは研究資料に目を通し始める。

 

「率直に言うけど、俺のガンプラの内部フレームを設計してくれ」

「帰れ」

 

 リュックは即答する。

 マシロは機械工学、特に義手を初めとした人体の代わりとなる機械に精通しているリュックに自身のガンプラの内部フレームの設計を頼みに来ていた。

 ガンプラの性能を図る上で可動域は重要な要素の一つだ。

 可動域が狭いとガンプラの動きも狭まる。

 逆に広いとガンプラの動きにも幅が広がる。

 特にマシロの場合は格闘戦を好む為、可動域は重要となって来る。

 そこで、リュックの技術を当てにした。

 リュックは機械工学の中でも義手のような人体の代わりとなる機械の設計の分野で成功している。

 その能力を持ってすれば、限りなく人間の動きに近い動きが出来るガンプラの内部フレームを設計する事も可能だ。

 

「設計図だけで良いぞ。後から装甲と装備も取りつけないといけないし、そっちの方はもう考えてあるから、装甲と装備をフルに装備した状態で限りなく人間に近い動きが出来るように設計してくれ。ああ、強度の問題はある程度はクリアしてあるからそこまで重要視する必要はないかな」

「だから帰れと言っている。何故、俺がお前の玩具を設計しないといかんのだ。そんな事よりも義手の一つでも設計した方が有意義だ」

 

 マシロはリュックの話しを完全に無視して続けた。

 だが、リュックにとってはガンプラの内部フレームを設計するよりも義手などの方が社会的に認められる為、その気は無いらしい。

 例え、マシロがガンプラバトルの世界王者だろうと、所詮、ガンプラは玩具に過ぎない。

 そんな物を作ったところでリュックにとっては一文の得にもならない。

 

「そんな権利があると思ってんの? こっちは兄貴の許しを得てんだよね」

 

 マシロはさっそくリュックが断れない切り札を切る。

 今回の事で他の兄弟の力を借りる事はユキトに許可を取ってある。

 どういう訳か、ユキトは全面的にマシロを支援している。

 リュックもそれが真実かどうかは今の状況では判断は出来ないが、マシロがハッタリをかましたところですぐにバレる為、そんな嘘を言うメリットはない。

 

「そう言う訳だから、最優先で設計しろ。後、手を抜いたら兄貴にチクるから」

「……ちっ」

 

 幾ら、それらしい物を設計したところで、マシロもまたクロガミ一族の一員だ。

 適当な仕事で誤魔化したところで気づかれる事は目に見えている。

 そして、その事をユキトに報告されると言う事は非常に不味い。

 一族の本家として例え、玩具の設計だろうと適当な仕事をすればそれなりのペナルティを課せられるかも知れない。

 マシロのバックにユキトがいる以上、リュックには拒否権は無いも同然だった。

 

「必要な物を置いてさっさと帰れ」

「んじゃ頼んだ」

 

 マシロは始めから自分の話しを押し通すつもりだった為、設計に必要な資料はまとめて用意してあった。

 それをリュックに渡して、マシロはさっさと研究施設から帰って行く。

 

 

 

 

 

 

「これで一通りは揃ったか」

 

 研究所を後にしたマシロは歩きながらそう言う。 

 マシロの目的はこれで大方片付いた。

 後はそれらが完成して届くのを待つだけだ。

 

「これから何をすっかな」

 

 新型のガンプラを作る為の用意は出来ている。

 後は待つだけである為、マシロは次の事を考えている。

 

「そろそろ、本腰を入れるとするか……」

 

 色々とやりたい事もあるが、今のところ興味があるとすればアイラに対するバトル指導だ。

 始めは余り乗り気ではなかったが、アイラに教える事でマシロにとっても良い復習になっている。

 今までは休憩中の片手間程度で、マシロにとっては基礎中の基礎の事しか教えていないが、そろそろ本腰を入れて指導するのも悪くないとも思っている。

 

「今までは少し易し過ぎたからな。少し難度を上げるか」

 

 マシロにとってはアイラに今までやって来た事は当たり前の事を身に着けさせる程度の事で、練習としては生温かった。

 これを機にもっと本格的に教えようと考えていた。

 アイラの練習メニューを考えていると、マシロはふと足を止めた。

 大型の模型店の店先にポスターが貼られていた。

 

「カップルバトルね……ふーん。飛び入りもOKか」

 

 ポスターにはイベントの知らせとしてガンプラバトルの小さな大会が行われると言う旨の事が書かれていた。

 

「カップル限定とかリア充専用かよ。けど……面白そうではある」

 

 マシロは軽く大会の要項を見てそう感じていた。

 大会参加の大前提として、2人組でカップルでないと参加資格自体がない。

 マシロのガンプラバトルの大会の参加経験はユウキ・タツヤと参加したタッグバトル大会と世界大会の2回くらいしかない。

 優勝する事は当然の事として、一風変わった大会に出て見るのも経験としてアリだ。

 

「とはいえ、カップル専用……仕方が無いか」

 

 マシロは携帯を取り出して電話をかける。

 

「何よ? 今日は別行動の筈でしょ?」

 

 電話に出たのはアイラだった。

 前提条件であるカップルを満たす為にはマシロは相手となる異性はいない。

 この際、アイラで妥協する為に電話をかけた。

 

「アイラ、俺の彼女になれ」

「は?」

 

 電話の向こうでアイラは困惑した声を出す。

 それも当然だ。

 一か月以上も、同じ部屋で寝泊まりをしても一度も間違いはおろか、異性として見られている事すらも怪しい相手からの突然の告白を受ければ誰だって困惑する。

 

「だから、カップル専用の大会に出たいから俺と付き合え」

「…………」

 

 マシロが正直に話すと電話の向こうでアイラは黙り込む。

 

「アイラ?」

「ふざけんな!」

 

 そして、マシロが思わず携帯を耳から話してしまう程の大声でアイラは怒鳴り、電話を切った。

 

「何なんだ。訳が分からん」

 

 マシロは切れた電話を見ながらそう呟いた。

 マシロからすれば正直に話している為、アイラが切れる理由は検討も付かない。

 尤も、アイラが切れるのも当然の事だ。

 アイラも今更マシロの事を異性としては殆ど見ていないだろう。

 それでも年頃の少女がいきなり告白をされて何も思わない訳が無い。

 そこに、自分の事が好きだからではなく、ガンプラバトルの大会に出る為に付き合って欲しいと言われれば誰だって怒る。

 

「どうした物か……手頃な奴でもいれば良いんだけどな」

 

 マシロは店内を軽く見る。

 どの道、参加すればマシロ一人で優勝する事は容易い。

 ならば、相手は誰も良い。

 だが、共に参加するとなればある程度の実力が無ければ自分の相方として参加する事は嫌でもあった。

 

「ん? あいつ……」

 

 店内で相方を探しているとマシロは一人の女に目を止めた。

 マシロは基本的にバトルした相手の事はバトルの内容は覚えていても相手の事は覚えていない事が多い。

 だが、相手によっては覚えている。

 将来的に伸びるファイターや面白い戦い方をするファイターなどだ。

 そして、その女の事も覚えていた。

 シシドウ・エリカ。

 以前にマシロがユキトの命令で何とかして口説こうとしていた相手だ。

 そのエリカが店内に掲示されているポスターと睨みあっている。

 

「よう」

「……げ」

 

 マシロは普通にエリカに声をかけるが、エリカの方は顔を顰めた。

 最後に会った時はマシロが世界大会で優勝した時だ。

 あの時にマシロはエリカに宣戦布告をされている。

 マシロの方は大して気にしてはいないが、エリカからすれば余り会いたくはない相手だろう。

 

「何でお前が……」

「お前こそ」

「アタシは母さんの実家がこっちなんだよ。で、お前をぶっ倒す為に武者修行で少しこっちに来てんの。てか、なんでアタシばっか説明しないといけないんだよ」

 

 エリカはこっちにいる理由を話すも、マシロの方は話す気は無いらしい。

 

「俺の事はどうでも良いけどさ。それに出んの?」

「いや……賞品は欲しいけど相手がいないんだよ」

 

 マシロは優勝が前提である為、賞品になど興味は無かったが、優勝者には賞品が贈られるらしい。

 大型の大剣とライフルとソードの複合武器が賞品として乗せられている。

 エリカはその賞品に興味があるが、マシロ同様に共に参加する相手がいない為、出るに出られないと言う状況だった。

 

「ふーん。ならさ、俺と出ない? 俺も面白そうだから出たいんだけど相手がいなかったんだよね」

「は? 何でアタシがお前となんか」

 

 マシロとエリカは共に相手がいない。

 マシロとしては賞品に興味は無く、参加自体が目的だ。

 エリカにとっては両方の賞品を手に入れる事が出来る。

 だが、エリカとしてはマシロとカップルとして参加する事に抵抗があった。

 

「俺達の利害は一致してるんだしさ。俺としてもレベルの低い相手と組むのは正直嫌だ。その点、エリカなら最低限の基準は満たしてるしな」

 

 エリカは正直なところ以外だった。

 マシロは自分の実力に絶対的な自信を持っている為、自分以外のファイターの事など眼中にないと思っていた。

 実際のところ、自分の実力に絶対の自信を持っているし、眼中にない相手の事は徹底的に相手にしないが、マシロから見てエリカはマシな方だった。

 今の実力的にはマシロの足元にも及ばないが、潜在的なセンスではマシロの記憶に留めて置くだけは持っている。

 

「……分かった。一緒に出てやる」

「決まりだな」

 

 抵抗はあるが、マシロは実力的に問題はない。

 寧ろ、自分は何もしないで優勝する事も可能とすら思えてしまう。

 流石に、マシロを完全に当てにする事はしないが、それでも相手がある程度の実力があった方が良い。

 

「で、大会に参加するガンプラはどうすんだよ。アタシ等のガンプラじゃ参加出来ないって事分かってんだろうな」

「マジで?」

 

 マシロは参加要項を流し読みしていたが、参加条件の一つには使用ガンプラは原則として作中の再現以外での改造を認めていない。

 マシロのガンダム∀GE-1はセブンスソードもフルアサルトジャケットも胴体部や頭部は殆ど改造していないが、それ以外は原型を留めていない。

 更には2人のガンプラは作中ではパイロット同士が恋人やそれに近い関係でなければならないともある。

 これらはあくまでもイベントとしての大会である為の制限だ。

 

「マジか……俺の∀GEをAGE-1仕様に戻すとしても問題はエリカのガンプラか……AGE-1のパイロットとなるとフリットか、アセム。となると相手はエミリーとロマリー……どっちもモビルスーツに乗ってない……まてよ。エリカ、お前、ディーヴァで」

「出ないって。大体、なんでそっちが基準なんだよ。マシロがこっちに合わせれば良いだけの事だろ」

 

 エリカはため息をつきながらそう言う。

 マシロはあくまでも自分の方を主体に考えて、エリカに戦艦での参加をさせようとしている。

 そこまで、するくらいならエリカに合わせた方が良いのは明白だが、マシロは相手に合わせると言う事を今までやって来た事がない。

 

「アタシのルージュを貸してやる。お前を倒す為に新しく作ったガンプラはセイバーだからな。セイバーとルージュなら参加できるだろ」

 

 エリカはそう言って持っていたガンプラをマシロに見せる。

 マシロを倒すと宣言したエリカは自分の腕を磨く以外に新しいガンプラの制作にも取り掛かっていた。

 それがガンダムSEED DESTINYに登場する可変モビルスーツのセイバーガンダムだ。

 セイバーガンダムのパイロットであるアスラン・ザラとストライクルージュのパイロットのカガリ・ユラ・アスハは作中で恋人同士である為、参加条件は十分に満たしている。

 

「ふーん。セイバーね」

「まだ、本格的に改造はしてないけどな」

 

 マシロはエリカの持っているセイバーの方を注目した。

 以前にバトルしたストライクルージュと比べると細かいところで出来が良くなっている事がわかる。 

 それだけでもエリカが以前より成長していると言う証明だ。

 

「分かった。ルージュの方を借りる」

 

 自分で制作したガンプラが使えないと言うのは正直なところ不本意ではあるが、使うガンプラが何であれ、マシロは負ける気は無い。

 エリカからストライクルージュを借りるとマシロとエリカは大会の参加申し込みを済ませる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大会はマシロとエリカが申込みをした次の日ですぐに大会の当日となった。

 開催がすぐだったのは参加申し込みが思った以上に少なく全部で8組しかいない事が原因で8組目のマシロ達が申し込んだ時点で他の参加者に連絡を入れて開催される事になった。

 

「参加が8組か……」

「3回勝てば優勝。ガンプラバトルをカップルでやってるリア充はそうそういないって事か」

 

 バトルの組み合わせの抽選も終わり、マシロとエリカはステージに置かれているバトルシステムの前に向かう。

 

「観客の皆さん! まさかの現役世界王者が参戦! 生で王者のバトルが見られます!」

 

 集まった観客に対して、大会を仕切っている模型店の女性定員が実況する。

 マシロは別に自分の素性を隠す事もしなかった為、すぐに世界大会優勝者である事が明らかになっている。

 参加申し込みをしたのは昨日の今日だが、マシロのバトルを見る為に客の数は主催者側が想定していた数よりも多くなっている。

 尤も、マシロは世界大会で世界のファイターに喧嘩を売っている為、必ずしも友好的な目で見られている訳ではない。

 

「使用ガンプラはストライクルージュとセイバーガンダム! しかしこれは……」

 

 バトルシステムにマシロとエリカはガンプラを置いた。

 エリカのセイバーは目に見えて改造はされていないが、マシロのストライクルージュは違った。

 その名が示す通り、ストライクルージュは赤色だが、マシロが置いたストライクルージュは赤でなく、トリコロールカラーでストライクルージュではなくストライクだった。

 しかし、シールドだけはストライクルージュとなっている。

 更にはバックパックがオオトリを装備している。

 

「これはストライクカラーのルージュ! つまり、アスキラと言う事か!」

 

 マシロはエリカのストライクルージュを赤い色よりもこっちの方が好みだと言う事で塗装している。

 シールドだけ塗装しな無かったのは、ガンダムSEED DESTINYの作中で一度だけ、ストライクルージュのOSの設定を弄りストライクカラーとなった事があるからだ。

 それで、ストライクルージュと言い張って参加している。

 尤も、それにより女性店員は何やらスイッチが入ったようだ。

 

「なぁ、マシロ……あの人、何でテンションが上がってんの?」

「さぁな。どっか腐ってんだろ」

 

 マシロはテンションの上がる女性店員をスルーして、GPベースをバトルシステムにセットする。

 興奮している女性店員がバトル開始の合図をするとバトルが開始される。

 バトルフィールドは山岳地帯で対戦相手のガンプラはアプサラスⅡとガンダムEz8の2体だ。

 ガンダムEz8だけは飛行能力を持たない為、ベースジャバーに乗っている。

 

「俺がアプサラスをやる。エリカはEz8だ」

「分かった」

 

 マシロはエリカにそれだけ言うとアプサラスⅡの方に向かう。

 

「さて……リア充は殲滅だ!」

 

 ストライクルージュはアプサラスⅡに対してビームライフルを連射する。

 だが、ビームはアプサラスⅡのまで弾かれる。

 

「Iフィールドか……当然か」

 

 マシロにとっては大型のモビルアーマーにはIフィールドを持たせる事は必須だが、それが出来るだけでも相手の実力はある程度は持っていると言う事になる。

 ストライクルージュはオオトリのビームランチャーを放つが、アプサラスⅡのIフィールドに阻まれる。

 

「ちっ……流石は鉄の子宮。硬いな」

 

 ストライクルージュにビームランチャー以上の火器は無い。

 アプサラスⅡは反撃のビームを放って来る。

 

「反応が遅い」

 

 ビームを回避するも、マシロは反応の遅さを感じていた。

 今までは自分が使う為の制作している為、ガンダム∀GE-1の反応速度を遅く感じる事は無かったが、このストライクルージュはエリカが作った物だ。

 どうしても、反応の遅さを感じてしまう。

 

「けど、その程度の事で」

 

 ストライクルージュはシールドとビームライフルを捨てると対艦刀を取る。

 そして、オオトリをパージするとオオトリが一直線にアプサラスⅡの方に向かって行く。

 オオトリは本体からパージされて支援機としても運用が可能である。

 オオトリはレールガンとミサイルをアプサラスⅡに撃ち込む。

 ビームはIフィールドで防げるが、実弾系の装備には効果がない。

 レールガンとミサイルの直撃を受けて、最後はオオトリがアプサラスⅡに突っ込み、アプサラスⅡは大破し地に伏した。

 一方のエリカの方もガンダムEz8と交戦を始めていた。

 ガンダムEz8はベースジャバーに乗っている為、機動力では単独で飛行が出来、変形も出来るセイバーに分があった。

 しかし、思いの他、エリカの方は手こずっていた。

 

「空中戦はこっちが有利なんだがな!」

 

 ガンダムEz8のビームをセイバーはモビルアーマー形態で回避するとモビルスーツ形態に変形して、アムフォルタスで反撃する。

 ガンダムEz8はシールドで防ぐと頭部のバルカンでセイバーを牽制する。

 セイバーはシールドで守りながらビームライフルで応戦する。

 

「流石は優勝候補って訳か……」

 

 初戦の相手は今大会ではマシロ達が参加するまでは優勝候補とされていた。

 エリカもセイバーの操縦はまだ完全な物ではない為、簡単に勝てる相手ではない。

 

「けど……アタシの目指す先に行くにはここで足踏みは出来ないんだよ!」

 

 エリカは意を決して、シールドを掲げながら突撃する。

 セイバーは肩のビームサーベルを抜いて、ガンダムEz8もビームサーベルで応戦する。

 互いのビームサーベルをシールドで受け止める。

 すると、上空に影が出来た。

 エリカとガンダムEz8のファイターがその影の正体を確かめる前に影が落ちて来た。

 その影はマシロのストライクルージュでスラスターを最大出力で使って上に上がってからの降下だった。

 降下して来るストライクルージュは対艦刀でガンダムEz8を後ろから切りつける。

 計算していたのは対艦刀の鼻先はギリギリ、セイバーに当たるか否かのところでガンダムEz8を一刀両断にして、落ちていく。

 ガンダムEz8を撃破したところでバトルが終了した。

 

「おいしいところを持ってったな」

「気にすんな」

「てか、アタシのルージュをなんて使い方してんだよ!」

 

 完全に良いところをマシロに持ってかれた形となったが、それ以上にマシロのガンプラの扱いにエリカは抗議した。

 ストライクルージュに装備されているオオトリもエリカが制作した物でマシロはそれを躊躇う事無く、アプサラスⅡにぶつけて使った。

 当然、オオトリは破壊されている。

 

「ぶつけただけじゃん。ちゃんと直すさ」

 

 そう言う問題ではなく、借りたガンプラの使い方としてどうなのかと問い詰めたいが、マシロを相手に一般的な常識は期待できないとエリカは直す気があるだけマシだと諦めた。

 1回戦を勝ち抜いたマシロとエリカは次の対戦相手が決まるとすぐに準決勝を始める。

 準決勝のバトルフィールドは宇宙で対戦相手のガンプラはガンダムF91とビギナ・ギナの2体だ。

 

「俺はビギナをやる」

「好きにしろ」

 

 連携を取る気なしのマシロに対して、エリカは気にすることはない。

 言ったところで大して意味はないからだ。

 

「さて……あんまり動けないからな」

 

 ストライクルージュはビギナ・ギナにビームライフルを向ける。

 今、使っているストライクルージュはガンダム∀GE-1のようにマシロの動きについて来る事は出来ない。

 その為、高速戦闘は出来ない。

 ビギナ・ギナはビームライフルとビームランチャーを連射するが、ストライクルージュは最低限の動きのみで回避しながら狙いをつける。

 そして、ビームライフルを放ち、その一撃はビギナ・ギナの胴体に直撃し、一撃で撃墜した。

 

「こっちは終わったから。エリカの方に行くか」

 

 あっさりと勝負を決めたマシロはエリカの方にガンプラを向けた。

 ガンダムF91とバトルするエリカも優勢にバトルを進めていた。

 一回戦は完全にセイバーになれていないと言う事もあったが、前回に比べて扱い方も分かって来ている。

 ガンダムF91のビームをモビルアーマー形態に変形して回避して、一気に加速、モビルスーツ形態に戻りビームサーベルを振るう。

 その一撃にガンダムF91のファイターは対応しきれなかったが、まだ微妙に狙いが反れ、ガンダムF91の右腕を切り落とした。

 右腕を切り落とされながらもガンダムF91はヴェスバーをセイバーに向けるとセイバーも反転してアムフォルタスを向ける。

 2体にガンプラがビームを撃ち合おうとする瞬間にガンダムF91の背後からオオトリがガンダムF91に激突した。

 

「はい。終わり」

 

 オオトリに突撃された事でガンダムF91は撃墜されてバトルが終了した。

 

「次で最後か」

「最後かじゃねーよ。また、オオトリをそんな事に使いやがって……」

「直せば問題ないだろ」

 

 1回戦に続き準決勝でもオオトリをぶつける為に使われて文句を言いたいが、言ったところで無駄なのだろう。

 そして、すぐに決勝戦が開始される。

 決勝戦のバトルフィールドは海上、バトル相手はアーチャーアリオスだ。

 バトルが開始されて、ストライクルージュとセイバーはビームライフルを放つ。

 だが、アーチャーアリオスは回避する。

 

「やっぱ早いな」

「今回はマシロの出る幕はないだろ」

 

 セイバーはモビルアーマー形態に変形してアーチャーアリオスを追いかける。

 だが、マシロのストライクルージュではアーチャーアリオスやセイバーの機動力にはついて行くことが出来ない。

 セイバーがアムフォルタスを放ち、アーチャーアリオスはGNアーチャーとアリオスガンダムに分離して回避する。

 元々、アーチャーアリオスはその2機がドッキングした状態である。

 2機の分離して、セイバーの攻撃をやり過ごすとセイバーの背後を取って、集中砲火を浴びせる。

 

「へぇ……意外とやるね」

 

 アリオスとGNアーチャーの動きを眺めていたマシロはそう言う。

 単純な実力で言えば1回戦の相手の方が上だが、決勝戦のファイターは2機の連携が取れている。

 少なくともマシロにはその動きを1人でやるならともかく、2人でやるのは難しい。

 

「流石にエリカ一人に押し付けるのも悪いな」

 

 エリカは上手い連携に苦戦している為、マシロも動き出す。

 

「ちょこまかと……」

 

 セイバーはモビルスーツ形態に変形するとビームライフルを放つ。

 だが、アーチャーアリオスは分離とドッキングを繰り返して、セイバーを翻弄する。

 アーチャーアリオスは分離して、GNアーチャーがGNミサイルの弾幕を張る。

 セイバーはシールドを掲げながらビームライフルと頭部のバルカンでGNミサイルを迎撃する。

 しかし、GNミサイルを迎撃している間にアリオスがGNビームサーベルを抜いて回り込んでいた。

 セイバーは何とかシールドでアリオスの攻撃を受け止める事が出来たが、今度はGNアーチャーがGNビームサーベルを抜いてセイバーに迫って来ていた。

 完全にアリオスの相手で手一杯である為、GNアーチャーの攻撃にまでは対処しきれなかった。

 GNアーチャーがビームサーベルでセイバーを攻撃しようとしたが、その前にオオトリがGNアーチャーに激突した。

 

「またかよ!」

 

 1回戦、準決勝に続き決勝戦においてもオオトリをぶつけて、流石にエリカもバトル中にマシロに文句を言うが、マシロのストライクルージュは降下していた。

 元々ストライクルージュには重力下での飛行能力は無い。

 オオトリをぶつける為に使ってしまえばストライクルージュは海に落ちる。

 

「後はお前が決めろ」

 

 マシロがそう言ってストライクルージュは海に落ちた。

 この程度では戦闘不能にはならないが、暫くはストライクルージュはバトルに参加は出来ないだろう。

 

「勝手な事言って!」

 

 セイバーはシールドでアリオスを押し戻す。

 アリオスを押し戻すとビームサーベルを抜いて、反撃する。

 アリオスは肩からビームシールドを出して、防ごうとする。

 

「舐めんな!」

 

 セイバーのビームサーベルがアリオスのビームシールドにぶつかる寸前に、セイバーはビームサーベルを止めた。

 そして、そのまま機体を回転させて、アリオスのビームシールドを発生させている肩のユニットを切り裂いた。

 

「こいつで!」

 

 止めに左腕のシールドを捨て、2本目のビームサーベルを抜いて、アリオスに留めの一撃を入れた。

 その一撃はアリオスを両断した事でバトルは終了した。

 

 

 

 

 大会の決勝戦が終わり、表彰式が始まる頃には観客の大半は帰っていた。

 現役の世界王者であるマシロが参加する以上は優勝者はマシロとエリカであると言う事は誰もが分かり切っていた為、決勝戦が終われば残っている理由もない。

 こうして、カップルバトルは終わりを迎えた。

 

「本当に良いのかよ? アタシが2個とも貰ってさ」

「俺要らないもん」

 

 大会が終わって賞品である大剣とガンソードを貰ったが、本来は二人で分ける為に賞品が二つ用意されていたが、マシロは元から賞品に興味は無かった。

 エリカとしても流石に二つとも貰うのは気が引けた。

 

「武器は持ってて楽しいコレクションじゃない。使ってこそだろ」

 

 ガンプラの楽しみの一つとして作ったガンプラを飾って楽しむと言うのがあるが、マシロとしてはガンプラは戦わせてこそのガンプラだ。

 その為、使い道のない武器を貰っても仕方がない。

 

「まぁ……マシロがそう言うならアタシが使わせて貰うけど……」

 

 大会自体、殆どマシロが勝ったような物で、活躍出来なかったエリカは賞品だけ貰うと言うには抵抗があるが、マシロがいらないと言っている以上、貰うしかない。

 

「アタシに負けて後悔すんなよ」

「俺が負けるとかありえないね」

「言ってろ。アタシだけじゃない。アオイだって格段に腕を上げて成長してんだ。余り余裕をかましていると足元を掬われるぞ」

 

 マシロは相変わらずの絶対的な自信だが、静岡ではアオイは今でも成長を続けている。

 特にアオイは自分やタクトと本当の意味で友達となった事で急激に成長している。

 そのまま成長を続ければ自分もアオイもマシロに届き勝つ事が出来ると信じている。

 

「やれるもんならやって見ろ。お前達が幾ら成長しようとも関係ない。俺はそれ以上の速さで進化しているから」

 

 アオイやエリカが成長しようとマシロには関係なかった。

 幾ら成長したところで、マシロは進化して行く。

 そうすれば差は縮まるところか開いて行くだけだ。

 

「とにかくだ。これだけは言っておく……今日は助かった。ありがとう」

 

 エリカのお礼にマシロは少し驚いていた。

 理由までは分からないが、エリカがマシロに敵対意識を持っていると言う事は気づいていた。

 今日の事も互いに利害の一致でしかない為、礼を言われる理由などない。

 だが、エリカにとっては形はどうあれ、マシロに助けられた事に代わりは無い。

 例え、それがマシロにとっては利害の一致でしかないと分かっていてもだ。

 流石にマシロに面と向かって、お礼を言うのは気恥ずかしいのか、視線を逸らしていた。

 

「ああ……うん」

「何だよ?」

「……何でもない。ただ、悪くない」

 

 マシロはそう言うが、今度はエリカの方がついて行けない。

 エリカとしては、マシロに対する感謝の気持ちを口にしたに過ぎない。

 多少、気恥ずかしい事もあり、マシロとは決して友好的な関係でもない。

 とはいえ、別にエリカとマシロはガンダムの作中における戦争をしている組織同士のような敵同士と言う訳でもない。

 倒すと言っても、マシロがファイターとしてずば抜けている為、同じファイターとして実力者であるマシロを倒したいと思っているだけで、マシロが思っている程、敵視をされている訳でも憎まれている訳でもない。

 だから、エリカにとってはマシロに感謝する事があれば、感謝の言葉を口にするのは当然の事だった。

 

「そんじゃ、俺は用は済んだから帰る」

「次に会うのは世界大会の会場だからな」

「そう言い切るには観客としてじゃない事を願うね」

 

 最後は憎まれ口を叩いて、エリカと別れるが不思議と気分が良く足取りは軽かった。

 

「ありがとうか……さて、アイラの奴を鍛えるとするか」

 

 マシロはネメシスの拠点に戻った後のアイラの練習メニューを考えながらホワイトベースに帰って行く。

 そして、気分が良いが故にマシロの考えた練習メニューがアイラにとっては地獄の始まりである事は、この時、マシロと別行動でパリを満喫していたアイラは知る由も無かった。

 

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