ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle34 「弱点」

 マシロが新たなガンプラを制作する為に、自身の兄弟たちを巡る旅は終わりを迎えた。

 その帰還は約3か月程になる。

 3か月ぶりにマシロとアイラはチームネメシスの拠点の島に帰って来た。

 

「ようやく戻ったか」

 

 島に戻るとマシロとアイラはオーナーであるヨセフに呼び出されていた。

 オーナー室にはヨセフの他にバルトも二人を待っていた。

 島に付いてホワイトベースを降りた時点でアイラは初めて会った時のように無表情となっている。

 

「ただいま」

「それで首尾はどうなんだ? 納得の行くガンプラは作れそうなのか?」

 

 ヨセフは旅の事よりもそっちの方が聞きたかった。

 マシロが次の世界大会用の為に制作するガンプラはネメシスが優勝する為には重要となって来る。

 

「決勝に間に合わせる事が限界みたい」

 

 マシロも隠す必要も無い為、現状を素直に話した。

 余り良くない状況にヨセフは顔を顰めるが、その反面、ヨセフの横にいるバルトは少し嬉しそうだ。

 マシロの新型が間に合わなければ、その分、フラナ機関が送り出して来たアイラの活躍の場が増える。

 そうなれば、ヨセフからの評価も変わって来る。

 

「それで、アイラの指導はどうなんだ? まかさ、3か月も連れまわして何の成果もなかったとは言わないだろう?」

 

 結果が思わしくない事を言い事に散々、フラナ機関の予定を狂わしたマシロに対し、バルトは嫌味も込めてそう言う。

 だが、マシロは気にした様子はない。

 

「その事なんだが、ガウェイン以外でチームのファイターを全て貸して欲しい」

「どういう事だ?」

「アイラに本格的な練習をさせる為に必要なんだよ」

 

 マシロは自分の用事も済んだ為、本格的にアイラを鍛えようとしていた。

 その練習の為にガウェインを除いたネメシスのファイターを全て使いたかった。

 

「説明次第だ」

「練習は簡単。今日からアイラにはひたすらバトルをして貰う。相手はガウェインを除いたネメシスのファイター全員とだ。期間は3か月。その間、ファイター達にはアイラに何度も挑んで貰う。アイラにはバトルを拒否する権利はない。但し、一日100勝をノルマとし、クリアすれば拒否する事も許可する。そんで、一日の最後に俺がガンプラの修理とメンテをするけど、それ以外は全てアイラ自身がやる事。必要な道具やパーツはチームから支給させるけど、手伝いの人員はチームやフラナ機関から使う事は一切禁じる。バトルが終わる度にレポートを俺に提出、一回の提出忘れで一か月期間を延長する」

 

 マシロは次々とアイラの練習メニューを告げる。

 ヨセフは顔色を変える事は無いが、その無茶苦茶な内容にバルトは顔を青ざめている。

 顔にこそ出さないが、アイラも同様だ。

 

「最後にこれが重要。その間に一度でも負けたらチームを去れ」

「何を馬鹿な事を!」

 

 最後の条件にバルトがついに口を挟んだ。

 幾ら練習とはいえ、たった一度の敗北でアイラをチームから追放するなど無茶も良いところだ。

 一か月を30日として計算すると、一か月で3000回、3か月で9000回のバトルを行い、尚且つ全て勝利しなければならない。

 その上で毎回、レポートを提出しなければならず、一回の忘れに対して一か月の期間延長すると言う。

 更には一日の最後にマシロがやってくれるとは言っても最低100回のバトルでの損傷はアイラ一人で直さなければならない。

 被弾しなければ修理の必要はないが、ガンプラを実際に動かしていると都合上、バトルの回数が増えれば関節部などは消耗して来る。

 そこに回数を重ねる事で疲れが溜まればアイラでも厳しいだろう。

 

「幾らチームのエースだろうとそこまでの権限は……」

「許可しよう」

 

 抗議するバルトを遮りヨセフが許可を出した。

 

「しかし! オーナー……流石に彼の条件は……」

「負けなければいいだけの事だろ? それに世界大会ってのは一度の敗北で終わるって事も珍しくはないんだよ」

 

 世界大会は予選ピリオドと決勝トーナメントの2つに分けられる。

 決勝トーナメントはその名の通りトーナメント戦で一度の敗北で終わりとなる。

 予選ピリオドは8つのピリオドからなるポイント制だ。

 各ピリオドは観客を飽きさせないように、毎年のように様々なルールや形式で行われる。

 その中で各ピリオドで定められた条件を満たす事でファイターにポイントが振り分けられる。

 そのポイントの獲得数が多い上位16名が決勝トーナメントに駒を進める事が出来る。

 一見、一度や二度程度ポイントを落としたくらいでは挽回が出来るように見えるが実際は上位16名の大半は全勝で勝ち抜けている。

 その為、予選ピリオドにおいて、1つ落とすだけでも決勝トーナメントに進める可能性は格段に落ち、2つ落とせばまず勝ち進めないシビアな戦いが毎年のように繰り広げられている。

 ルールも単純なバトル形式から変わり種と多種多彩で本来は決勝トーナメントで上位に勝ち進めるだけの実力を持っていても、変わり種の種目でポイントを逃してしまい、予選ピリオドで敗退するファイターも毎年出て来る。

 単純なバトルの実力はあって当たり前でどんなルールだろうと、対応する事が世界大会で必要とされる強さと言っても良い。

 つまり、世界の頂点を狙うのであればどんな条件や状況だろうと勝たなければ生き残る事は出来ない。

 

「問題ありません。勝てば良いだけの事でしょう」

「しかしだな……」

「俺とガウェインがいないだけ有難いだろう」

 

 マシロがガウェインを除くと言ったのは、ガウェインも含めてしまえば1か月も待たずにアイラはどこかでガウェインに負けると考えているからだ。

 その点、ネメシスには自分とガウェインを除けば準世界レベルが関の山で世界レベルのファイターはいない。

 

「文句を言っても中間管理職のアンタじゃどうにもならないんだ。どの道、勝ち続ければ良いだけの簡単な練習なんだからさ」

 

 尚も納得の行かないバルトにそう言う。

 マシロにとってはバトルで負けないと言う事は当たり前の事でしかない。

 どの道、ヨセフが認めた以上は、バルトが抗議したところで決定が覆る事は無い。

 

「ちなみに練習は今日からだから」

 

 こうして、アイラの地獄の3か月が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習開始から1週間が経過した。

 始めこそは一日100回のノルマとそのバトルレポートに苦戦するも、元々の実力差が圧倒的である為、一週間もすればアイラも序盤と終盤の戦い方が分かり余裕も出て来た。

 次のバトルの相手はイージスガンダムだ。

 イージスはビームライフルを連射して、ある程度の距離を詰めると両腕からビームサーベルを展開して接近戦を仕掛ける。

 

「その程度の動きで……」

 

 イージスのビームサーベルをサザビー改はギリギリのところで回避する。

 ビームサーベルを回避されたイージスは右足を蹴りあげる。

 

「無駄よ」

 

 粒子の動きからそれを見えていた為、サザビー改はシールドで受けようとした。

 しかし、シールドで受ける前に、イージスの足からビームサーベルが展開した。

 

「っ! そんなところに」

 

 粒子の動きからはイージスの動きは蹴りの動作でしかなかった為、足からビームサーベルが出せると言うのは完全に予想外の事だった。

 イージスの足のビームサーベルはサザビー改の頭部を切り落とすが、すぐに至近距離からサザビー改にロングビームライフルを撃ち込まれてイージスは撃墜された。

 ガンプラの修理の経験のないアイラは、その日のバトルはサザビー改は頭部がない状態で戦う事となり、これを好機と何人のファイターが挑むが結局、アイラを負かす事は誰も出来なかった。

 

 

 

 

 訓練から一か月、この頃になると一回のバトルに使う時間が短くなって来ていた。

 時間をかければかける程、体力も使う為、速攻でバトルを決めて速い段階でノルマを達成すれば体を休める時間も増える。

 そんなアイラの次のバトル相手はセラヴィーガンダムだった。

 

 サザビー改はロングビームライフルを連射しながら、セラヴィーに突っ込む。

 セラヴィーは両手のGNバズーカⅡを両肩のGNキャノンに接続したGNツインバスターキャノンを放つ。

 サザビー改はシールドで受け止めながら突っ込んだ。

 そして、ビームナギナタで切りかかる。

 セラヴィーはGNフィールドで防ごうとするが強引にビームナギナタで押し切る。

 ビームナギナタがセラヴィーを切り裂くが、セラヴィーの膝のGNキャノンから隠し腕と共にビームサーベルが突きだされた。

 

「また、そんなところに……」

 

 サザビー改はギリギリのところで回避するが、ビームサーベルはサイドアーマーを破壊する。

 そして、セラヴィーのバックパックが稼動する。

 バックパックが変形して、もう一機のガンプラであるセラフィムガンダムへと変形する。

 

「そんなところにも……」

 

 セラフィムは腕をGNキャノンに変形させると、セラヴィーを切り裂いている途中のサザビー改にGNキャノンを放つ。

 とっさにセラヴィーを盾にして、サザビー改はファンネルを飛ばす。

 セラフィムの攻撃でセラヴィーが破壊される間に、ファンネルがセラフィムを囲い全方位からの集中砲火によりセラフィムを撃墜した。

 その様子をマシロはモニターしていた。

 アイラの行ったバトルは全て録画されており、マシロはリアルタイムとアイラが書いたレポートを見ながら見直していた。

 

「一か月で全然進歩してないな」

 

 それがマシロの素直な意見だった。

 この一か月でアイラはいかに修理なしで回数を重ねるやり方を身に着けつつあるが、マシロから見れば全く進歩していない。

 

「今日もやってんな。今、何勝目だ?」

「さぁ? 大体60勝くらいだな」

 

 モニター室に、アイラの練習から外されて他のファイターは打倒アイラで手一杯である為、練習相手のいないガウェインが入って来る。

 すでにガウェインもアイラが何をやらされているのかは聞いている。

 

「これ見てみ」

「……何だこりゃ」

 

 マシロは持っていた紙の束をガウェインに見せる。

 それを見たガウェインは内容を殆ど理解出来てはいない様子だ。

 

「アイラの奴に書かせたレポート。ふざけてんだろ?」

「これがか?」

 

 流石にすぐには信じられなかった。

 マシロはアイラに書かせたレポートだが、内容が酷かった。

 レポートと言う体は成してはいるが、相手のガンプラは名称ではなく外見や印象などで書かれている事が多い。

 ファイター達には外見が変わる程の改造を禁止している為、単純にアイラは相手のガンプラの名前を知らないだけだ。

 その上で内容は簡単な結末くらいしか書かれていない。

 

「俺は俺の視点からしかアイラのバトルを見る事は出来ないからな。だから、アイラの視点のバトルを知る為に書かせたんだが、意味がない」

 

 マシロがアイラに書かせたレポートの意味は大きく分けて二つある。

 一つはアイラが自分のバトルを客観的に見直す為だ。

 もう一つはアイラの視点からのバトルをマシロが知る為だ。

 どうやっても、マシロは自分の視点からしかバトルを見る事は出来ない為、アイラが自分のバトルを客観視して書いたレポートを見る事で多少は、アイラの視点のバトルを見る事が出来る。

 同じバトルでもファイターによって見えている物は違ってくるからだ。

 だが、アイラの書いたレポートは取りあえず、書けと言われたから書いた程度の物だ。

 

「だったら言ってやれば良いだろ?」

「言ってどうなるってレベルの話しでもなさそうなんだよな」

 

 マシロはアイラと共に行動する中で多少なりとも、アイラの事は見て来たつもりだ。

 

「アイツさ、俺達と違ってガンプラバトルをやっているんじゃなくてやらされているって感じがするんだよな」

 

 マシロも今でこそ、ガンプラバトルで勝ち続ける事を義務つけられているが、今のクロガミ一族になった事もガンプラバトルを始めた事も誰に強制された事じゃない。

 自分でやりたいから進んだ道だ。

 それは程度の問題がどうあれ、ガウェインや大抵のファイターに当てはまる事だろう。

 自分でやりたいと思ったから強くなろうとする。

 だが、アイラの場合は事情が少し違っているように感じた。

 詳しい事情はマシロは興味がないが、アイラはガンプラバトルをやりたくてやっている訳ではないようだ。

 それは、行動を共にしていた中でも、マシロが自由にしていいと言った時、アイラがガンプラに触れていた時間は殆どない。

 自主練をさせても、集中力が長く続かないなど、明らかにアイラはガンプラバトルに対する熱意が絶対的に足りてない。

 

「そんな奴に何を言っても意味し、成長もない。それでも、実力はあるから3か月間で負ける事は無いだろうけど」

 

 本人の熱意に実力が比例する訳ではない。

 幾ら、熱心に練習を繰り替えいても、ファイターとしての芽が出ないファイターも居れば、アイラのように本気で練習をせずともファイターとして実力を付けるファイターもいる。

 

「取りあえず、残りの2か月は様子見も兼ねてこのままやらせるけど、アイラ自身が変革しなければ多少は強引な手を使わないと駄目だな」

「ふん。アイツの事はどうでも良い。後、2、3か月で世界大会の地区予選が始まり出すんだ。それに備えて練習相手を探していたんだが、お前のせいで見当たらないんだが、どうしてくれる」

「仕方が無いな。俺が相手をしてやるよ」

 

 ネメシスのファイターはマシロの指示でアイラの練習に駆り出されている。

 チーム外のファイターとのバトルは自信の情報を流出しかねない為、この時期には極力避けたい。

 マシロとしても少々、退屈していた為、ガウェインの相手をする事にした。

 

 

 

 

 

 練習開始から2か月。

 この頃になると、ネメシスのファイター達も、単純に回数を重ねても正面から攻めたところでアイラに勝ち目がないと言う事を悟り始める。

 それと同時にアイラは一度の敗北も許されていないが、他のファイターは何度負けようとも挑戦が許されている。

 その中で、気づき始めている。

 アイラはバトルの腕はずば抜けているが、その反面、ガンダムやガンプラに関する知識は皆無なのだと。

 アイラは通常バトルでは無敵とも言えたが、何度か危うい場面がある。

 その場面は外観からは予測し辛いギミックによる物だ。

 ファイター達はガンダムに関する知識は相当な物である為、そんなギミックは当然始めから知っている物だと言う前提だったが、知識がないのであれば十分に使える物だと気付き、その情報は瞬く間に拡散した。

 そんな、ガンプラを用意しアイラのバトルが続く。

 次の対戦相手のバウだ。

 バウはビームライフルを連射するが、サザビー改は簡単に回避して、ビームナギナタで接近戦を仕掛ける。

 ビームナギナタでバウを胴体から切断しようとするが、バウはバウ・アタッカーとバウ・ナッターに分離して攻撃をやり過ごす。

 

「分離した……」

 

 そして、バウ・ナッターをサザビー改に特攻させる。

 サザビー改はバウ・ナッターを拡散ビーム砲で撃墜すると、バウ・アタッカーはサザビー改の背後を取り、攻撃するも決めてにはならずにサザビー改のロングビームライフルで敢え無く撃墜された。

 

 

 

 3か月目にもなると、アイラの不意を付く作戦もネタ切れ寸前となって来た。

 その頃になると、ひたすら挑んで偶然の勝利を当てにするも、そう都合よくはいかない。

 結局のところ、アイラは3か月の間、一度も負ける事は無かった。

 

「どーよ!」

「格下相手に連勝したところでなぁ」

 

 アイラは3か月間、全勝しマシロに対して若干の疲れを見せるも得意げにしている。

 マシロからすれば、アイラの実力ならこの程度は出来て当たり前だと思っている為、驚きも何もない。

 

「言われた通りに全部勝ったじゃない」

「相手が弱かったからな。うちのチームは俺とガウェイン以外は良くて準世界レベル。ガウェインに一度でも勝つ事が出来たお前なら勝って当たり前なんだよ」

 

 言われた通りに勝ち続けたのにこの言われようでは、アイラも面白くはない。

 得意げな表情から一変、ムスっとするが、マシロは続ける。

 

「だから見せてやるよ。最強ファイターのバトルって奴をな」

「見せて貰おうじゃない!」

「そんじゃ、出かけるぞ」

 

 アイラはここでマシロの実力を見せるものだと思っていたが、どうやら違うようだった。

 

「目的地は世界レベルのファイターを多く輩出しているらしい。ガンプラバトルのメッカ。ガンプラ塾だ!」

 

 

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