ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
マシロとタツヤが出会い1週間後、タッグバトル大会の開催日となった。
会場には平日の午前中にも関わらず多くの観客や参加者が集まっていた。
「ずいぶんと多いんだな」
「参加チームは約100チーム。約200人が参加するみたいだね。規模で言えば世界大会以上だよ」
「でも、こいつら皆、世界大会に出られないレベルなんだろ?」
大会の参加者は約200人でその数は世界大会の倍の人数と言える。
しかし、マシロにとっては数が多かろうと世界大会に出られないファイターの集まりに過ぎない。
「つか、平日の午前中に来れるって事は、こいつら毎日が休みのニートか仕事をサボっている奴らって事じゃね?」
「マシロ様。世の中の学生は今は夏休みですし、土日祝日に働いて平日が休みと言う人もあります。まぁ、マシロ様はニートですけど」
「俺はニートじゃねぇよ。ファイターだ」
「とにかく、受付に行こう。参加登録は僕がしたけど、9時までに受付に行かないと棄権と見なされるからね」
タツヤがそう言い、マシロとしても大会に出れなくなると面倒な事になる為、大人しく受付に向かった。
受付も終わり、大会の開会式まで会場の周辺で待機する事となり、近くの喫茶店で最後の打ち合わせを行う事となった。
「マシロ君。確認しておくけど、大会の日程は把握しているよね?」
「とにかく、勝てば良いんだろ?」
「マシロ様はガンプラを組み立てる時でも説明書を読まずに組み立てる人ですから、きちんと説明してあげた方が賢明ですよ。ユウキ様」
「それはそれで凄い気がするけど……」
要するに大会の事は事前に運営側から日程はバトル方式についての告知がされているが、マシロは大会がここで行わると言う以外は全く知らないと言う事だ。
マシロにとってはただ、バトルに勝利して優勝する事にしか興味がないようだ。
「まず、今日の午前中に世界大会でも用いられるバトルロワイヤル方式でバトルが行われる。その中から生き残った16チームが決勝トーナメントに進める」
「チーム数は100程ですよね? 時間がかかるのではないですか?」
「ええ、ですから制限時間が1時間でそれを過ぎても17チーム以上残っている場合は各チームの撃墜数の上位16名が残るルールです。この撃墜数には残ったガンプラだけが計算されるのでチームの片方が撃墜されていた場合、残った方の撃墜数のみがチームの撃墜数となりますね」
参加チームが100チーム程ある為、いきなりタッグ戦と言う訳ではなかった。
世界大会でも全員参加のバトルロイヤル方式が採用されている事もあり、同じ方式で振いにかけられる。
だが、世界大会とは違い時間的な余裕が無い為、1時間と言う時間制限で行われる。
「そして、今日の午後には準々決勝まで消化してベスト4まで決めて、明日の午前中に準決勝が、午後から決勝戦が行われると言うのが大会の日程になる」
「2日で終わりか……俺としては今日で全部決めても良かったんだけどな」
「準決勝や決勝ともなると相応の準備が必要だからね」
今回の大会は二日かけて行われる。
一日目の午前中にバトルロイヤルの予選と午後に勝ち進めば2戦行う事になる。
二日目には午前と午後に1戦行い優勝者が決まると言う日程だ。
「んな面倒な事をしなくてもバトルロイヤルで最後まで生き残った一人が優勝で良いじゃん」
「最後の残るのが一人だとタッグバトルの意味は無いよね」
「ユウキ様。マシロ様の言動に一々、真剣に返す必要はありません。話半分で流した方が良いですよ」
シオンの言葉にタツヤは苦笑いで返すしかない。
そうこうしている間に予選の時間が迫り会場へと戻る。
会場には巨大なバトルシステムが設置され、大会の参加者たちは指示された場所で待機している。
参加者ではないシオンは観客席でバトルを観戦し、マシロとタツヤは指示された場所に向かう。
到着し、全ての参加者が揃い皆がGPベースをバトルシステムに付けてそれぞれのガンプラをセットする。
それが確認されるとバトルシステムにプラフスキー粒子が散布される。
そして、タッグバトルの予選が開始された。
バトルフィールドは宇宙だが、一般的な宇宙だけではなく場所によってはデブリベルトやコロニー、月面などが再現されている広いフィールドでのバトルとなっている。
「どうする? マシロ君」
「決まってんだろ。手当り次第に叩く。どうせだ、撃墜数で勝負しようぜ。撃墜数が少ない方が今日の昼メシを奢るってのはどうだ?」
「乗ったよ」
「決まりだ。昼メシよろしくな!」
マシロはそう言ってタツヤの高機動型ザクⅡ改から離れていく。
「さて……僕もマシロ君に負けられないな」
すでにマシロのガンダム∀GE-1は彼方へと行っている。
お昼ご飯を奢ると言う賭け自体にはタツヤも大して興味は無い。
別に負けたところで普通に奢れば良いだけの話だ。
だが、マシロに負けると言うのは少し面白くは無い。
勝ちに拘ると言う程ではないが、タツヤの中ではマシロには負けたくはないと言う感情が芽生えていた。
高機動型ザクⅡ改は近くのガンプラを2機同時にザクバズーカで撃墜する。
「たった一機でのこのこと!」
このバトルではタッグ同士は近い位置からのスタートとなる。
片方でも撃墜されると予選を通る事は難しくなる為、必然的にチームは行動を共にした方が生存の確率は高まる。
そんな中で別れて行動すれば他のファイターから見れば撃墜数を稼ぐ格好のカモとなる。
一人で行動するタツヤの高機動型ザクⅡにジンクスⅢ(アロウズカラー)とジンクスⅢ(連邦カラー)が迫る。
「2対1だろうと!」
高機動型ザクⅡ改はザクバズーカを放ち、2機を分断する。
そして、ジンクスⅢ(連邦カラー)にザクバズーカを撃ち込む。
一発目でバランスを崩して二発目でジンクスⅢ(連邦カラー)を撃墜する。
「良くも相棒を!」
ジンクスⅢ(アロウズカラー)は接近してGNランスを突き出す。
「甘い! マシロ君の攻撃速度に比べれば!」
マシロと何度も戦ったタツヤから見ればジンクスⅢ(アロウズカラー)の攻撃速度は恐れるに足りない。
突き出されたGNランスに対して、高機動型ザクⅡ改はザクバズーカを捨てて前に出る。
そして、バックパックに増設した新装備のヒートナタを抜いた。
ヒートナタは腰のヒートホークに比べると威力は劣るが小型な為、小回りが利く。
マシロの∀GE-1の高い機動力から繰り出されるビームサーベルの斬撃に対抗する為に装備したものだ。
「懐に!」
「ここは僕の距離だ!」
小回りの利くヒートナタに対してジンクスⅢ(アロウズカラー)のGNランスが大型で小回りが利かない。
懐に飛び込まれてしまうと、何も出来ない。
高機動型ザクⅡ改はヒートナタでジンクスⅢ(アロウズカラー)を切りつけて、ザクマシンガンを至近距離から撃ち込んで撃墜した。
「ヒートナタは思いののか、扱い易いな。後はこれがマシロ君に通用するかどうかだ……」
新装備の使い勝手をバトルの中で確かめながらもタツヤはバトルを続けた。
タツヤと別行動のマシロも手当り次第に他のガンプラを撃墜している。
今回はバックパックのブースターとガンダムAGE-2ダブルバレットのドッズライフルを装備している。
すでに10機程撃墜している。
「禄なのがいないな」
追加ブースターの機動力でフィールドを駆け回り手当り次第に撃墜するも、殆どが遭遇時の初撃に対応する事が出来ずに撃墜されている。
すると、後方からビームが飛んで来て∀GE-1は腕の装甲で防ぐ。
「狙撃か……少しは骨のある奴もいるみたいだな」
マシロはすぐに狙撃して来た方向にガンプラを向ける。
そこはデブリベルトで狙撃者が隠れるにはうってつけの場所とも言えた。
デブリベルトに入っても狙撃者からの狙撃が止む事はない。
寧ろ、一方向からではなく最低でも2か所以上からの狙撃が行われている。
それらをマシロは全て見切って回避している。
「伏兵を張ったか……けど、そんな子供騙しに引っかかるかよ」
マシロはビームの飛んで来る方向に向かう。
ビームをかわしながら突き進むとそこにはガンダムOOに登場するガンダムデュナメスとガンダムサバーニャが狙撃用のライフルを構えていた。
「成程な。そいつが狙撃銃を大量に持ち込んだって事か」
ガンダムサバーニャの腰にはホルスタービットが付いていない。
ホルスタービットはその名の通り、ホルスターの役目も持っており、内部には武器を収納する事が出来る。
それを使ってフィールド内に大量の火器を持ち込み、視界の悪いデブリベルトに配置して狙撃者の位置を特定出来ないように罠を張ったと言う訳だった。
その上で狙撃を行い、それで撃墜出来れば良し、気づかれようともデブリベルトにノコノコと入り込めば、周囲に張り巡らされた罠によって狙撃者が移動しているか、もしくは2つ以上のチームが手を組んだと誤認させてかく乱して仕留めることが出来たからだ。
相手チームの最大の誤算は最初の一撃で、マシロが狙撃者の方向を完全に把握してしまった事にある。
そして、マシロは相手が移動すればデブリの微妙な動きから位置を把握する事が可能で、相手の数は撃墜数が稼げると言う認識でしかなかった。
「お前の方が司令塔だよな」
∀GE-1はドッズライフルでガンダムデュナメスを撃墜する。
「兄貴!」
そして、ガンダムサバーニャに体勢を整える時間を与えずにドッズライフルを撃ち込んで破壊した。
「発想は悪くないし、狙撃の腕も悪くないが……俺を仕留めたかったらもっとトラップを用意しとくんだな」
2機の狙撃型ガンダムを撃墜したマシロはすぐに別の獲物を探しに向かう。
それから間もなくして制限時間の1時間となり、予選のバトルロイヤル戦が終了した。
バトルロイヤル戦が終わり、運営が各チームの撃墜数の集計に入り、結果が会場の大型モニターに表示された。
その結果、撃墜数ではマシロとタツヤのチームアメイジングがダントツのトップを記録した。
その数は40機と2位が10機程度だと言う事を考えると脅威的な撃数である事が分かる。
「俺が28でユウキが12と俺の圧勝だな」
「1時間でそんなにも撃墜したんだね」
「僕も結構頑張った方だとは思ったんだけどね。機動力の差が大きかったかな」
予選を1位で通過したが、マシロとタツヤの個人成績はマシロが28機でタツヤが12機と個人成績でもチームアメイジングは1位と2位を独占した。
タツヤの撃墜数だけでも2位のチームの撃墜数を上回っている。
これは大抵のチームはある程度の撃墜数を稼いでからは自分達の身を守る事に専念し、二人のように積極的に撃墜数を稼ごうとしたチームはその際のバトルで受けた損傷で結局は最後まで生き残る事が出来なかった事が大きな要因だった。
それでもマシロの撃墜数は異常とも言えた。
バックパックのブースターで更に機動力を増してから一撃で相手を仕留めて回った為である。
二人のバトルはマシロの勝利に終わり、タツヤはマシロにお昼ご飯を奢る事となった。
尤も、コンビニでおにぎりを数個買っただけなのでガンプラを買うより安上がりだった。
お昼ご飯を買い、植木に座り簡単に昼食を取っている。
シオンは昼食を取っている二人の代わりに決勝戦トーナメントの組み合わせを見に行っている。
「まぁね。つか、人が増えてない?」
「多分、アレだよ」
予選を行っている時よりも会場付近の人が多くなっている事にマシロが気づいてタツヤが会場の外にもついている大型モニターを指さす。
「お昼の休憩中にはPPSEが招待したゲストのありすがミニライブをやっているみたい」
「ありすねぇ……」
「マシロ君も名前くらいは聞いたことはあるだろ? 彼女は日本のみならず世界中でもヒットしたみたいだからね」
モニターにはありすと呼ばれたアイドルがライブをしている様子が映されている。
ありすは大会を主催したPPSEが予選と決勝トーナメントの繋ぎとして招待したアイドルだ。
まだ12歳と言う年齢ながら、その愛らしい容姿と抜群の歌唱力によって大人気のアイドルがありすだ。
歌だけでは無く、演技力も高くハリウッドからも出演のオファーが来ているとまで噂され、バラエティーでも天然で甘え上手なキャラとして活躍している妹系アイドルとして日本のみならず世界中で注目を受けている。
「まぁね。俺にはどこが良いんだか、さっぱりだけどな」
「僕も名前と顔が一致する程度だけどね」
この人の多さも大会と言うよりもありすが目当てなのだろう。
「俺はあんなガキ臭い奴よりも、断然キララ派だね」
「キララ?」
「お前知らないのかよ。確か……この辺りで活動しているガンプラアイドルだぞ? まだあんまり売れてはないみたいだけど、ガンプラアイドルってところはポイントは高いね。どうせ、アイドルなんてのはみんなキャラを作ってるんだろうけど、なんつったってガンプラアイドルだしな。実物は見た事は無いけどな!」
結局のところ、マシロはそのキララと言うアイドルの容姿や歌などには全く興味はなく、ガンプラアイドルと言う点しか見ていないと言う事だ。
アイドルにさほど興味の無いタツヤも容姿や歌と言ったアイドルのファンになる要素よりもアイドルの肩書にしか注目せずに売れているアイドル以上に推しているマシロに苦笑いしか出ない。
「マシロ様。ユウキ様。対戦の組み合わせが決まりました」
シオンが戻り、二人に対戦の組み合わせを見せた。
「俺達の一回戦の相手はチームかいと? うみひと? どっちだ?」
「多分、
「紛らわしいな。で、強いの?」
「そうだろうね。聞いたことのないチームだね」
マシロとタツヤの対戦相手はチーム海人となっており、タツヤもそのチーム名やファイターの名前には聞き覚えがない。
「決勝トーナメントに残っているくらいだから、弱くは無いと思う」
「それに勝ち進めば明日の準決勝ではブルーノ・コレッティのチームと当たるのは確実ですね」
「誰それ?」
「知らないのマシロ君! ブルーノ・コレッティと言えば元イタリアチャンプだよ。今年の世界大会のイタリア予選ではリカルド・フェリーニに敗北して出場を逃したけど、間違いなく世界レベルのファイターだよ。まさか、この大会に出ていたなんて……」
マシロは興味が無い為、知らないがブルーノ・コレッティはファイターの中ではある程度の知名度は持っている。
イタリア代表として何度も世界大会に出場経験を持つファイターだ。
今年はリカルド・フェリーニにイタリア予選の決勝戦で敗北して世界大会への出場は絶たれて為、この大会への出場資格は失っていない。
そんな世界レベルのファイターが決勝トーナメントまで残るのは当然の事だろう。
「世界レベルのファイターってもさ、そのフェラーリだかパニーニだかに負けたんだろ。じゃぁ大したことなくね?」
相手は世界レベルのファイターだと言うのにも関わらず、臆する事なくそう言うマシロには呆れを通り越して感心すらしてしまう。
マシロにとっては世界レベルのファイターだろうと、関係は無いようだ。
「そして、問題なのがクロガミ・レンヤ。彼のチームが決勝戦の相手となる可能性は高いですね」
「だから誰だよ。そいつ……クロガミ?」
「マシロ君もクロガミグループの事は知っているよね」
「まぁ……」
マシロは珍しく歯切りが悪く答える。
タツヤの言うクロガミグループは「スプーンからスペースシャトルまで」をキャッチフレーズに様々な分野に乗り出して来ている世界的な企業だ。
タツヤの父の経営している塗料メーカーとも繋がりを持っているとタツヤも聞いている。
そのクロガミグループの特徴の一つに参加の企業の多くにはクロガミ家の人間が関わり、誰もが天才的な実力を発揮している点だ。
決勝戦で対戦すると思われるクロガミ・レンヤなる人物もクロガミ家の人間なのだろう。
「クロガミグループは表向きは超優良企業で、実際にそうなんだけど、裏では違法スレスレの事も行っていると言う黒い噂も付いて回っているからね」
「ふーん。んな事よりも一回戦の用意の方が優先だろ。一回戦のバトルフィールドは発表になってんだよな」
「そうですね。一回戦のバトルフィールドは海中となっていますね」
マシロはクロガミ家の話題から強引に話しを逸らす。
だが、当たるかも知れない相手の事よりも一回戦の相手の事の方が重要だ。
そのバトルに負けてしまえば明日の準決勝も決勝にも出ることが出来ないからだ。
「海か……相手チームは海人なんだろ? 名前からしてこっち相手側の方が有利じゃん」
「こればかりは仕方がないよ。僕達も僕達で出来ることをしないとね」
すでにバトルフィールドが決まった以上、文句を言っても仕方がない。
マシロとタツヤは午後からの一回戦に備えてガンプラの調整と準備を始めた。