ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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四章
Battle38 「新世代」


 世界各地でガンプラバトルの世界大会地区予選が開始され、次々と代表が決まって行く中、マシロは大会の会場のある静岡に到着していた。

 去年の予選の為に買ったホテルの最上階を開催までの拠点にしている。

 今まで、別行動だったレイコも合流し、世界大会に向けての調整を日々していた。

 

「やっぱり、過去に何度も出場しているイタリアのリカルド・フェリーニ、タイのルワン・ダラーラ辺りは今年も出て来てるわね」

「だろうね」

 

 マシロはバトルをしながら話しを聞いている。

 すでに出場が決まったファイターの中には大会の常連も入っている。

 

「ただ、去年のアメリカ代表だったグレコ・ローガンは今年は予選落ちしているわね」

「グレコ・ローガン……確か、決勝トーナメントで中々決着が付かなかった奴だよな」

 

 マシロは去年の大会の事を思い出す。

 去年の世界大会ではマシロが決勝戦でわずか1秒で勝利すると言った最短レコードを更新した事が有名だが、逆にリカルド・フェリーニVSグレコ・ローガン戦においては両者が互角のバトルを行い中々決着が付く事が無かった。

 それにより、世界大会の決勝トーナメントにおいて初めてのサドンデスバトルである「Vアタック方式」により決着が付けられた。

 

「で、相手は?」

「ニルス・ニールセン。大会参加最年少の一人よ」

「聞いて事がないな」

「こっちの調べでは彼は数か月前からガンプラバトルを始めたらしいわ」

 

 マシロの記憶の中にニルスと言う名のファイターはいない。

 グレコは決勝トーナメントに進める程のファイターである為、そのグレコに勝ったと言う事はそれ相応の実力者と言う事になる。

 直接面識が無くとも実力のあるファイターは常にマークしているが、ニルスは過去に公式戦に一度も出ていない為、マシロが知らないのも当然だ。

 

「成程。他に面白い情報は?」

「今年は日本代表が総入れ替えになってるわ」

 

 レイコの言葉にマシロはバトルの手を止める。

 

「どういう事だよ」

「その言葉通りよ。日本は5つの枠を持ってるけど、今年は全員初出場って事。第一ブロック代表はタチバナ・アオイ」

「アイツか」

 

 去年、地区予選の決勝でマシロが倒したアオイが今年は第一ブロックを制したらしい。

 だが、その事は特別驚く事ではない。

 元々、世界を目指せる程の潜在的な才能を持っていた。

 それが開花すれば第一ブロックを勝ち抜く事は大して難しくもない。

 

「第二ブロック代表はアンドウ・コウスケ」

「変身ユニコーンの奴か。何でまた? 第二ブロックは北海道とかそっちの方だろ」

「彼の大学がそっちの方だからよ」

 

 第二ブロックを勝ち抜いたコウスケの事はマシロもまだ覚えている。

 ユニコーンガンダムを改造してデストロイモードになれるようにしていたファイターだ。

 元々は静岡の第一ブロックに何度か出ていたが、コウスケは今年から北海道の方の大学に通っているらしく、世界大会も別のブロックに出たと言う事らしい。

 

「第三ブロックはイオリ・セイ、レイジ組」

「誰だよ。てか、タツヤはどうした? まさか、その二人に負けたって事はないよな」

 

 第三ブロックは東京を中心としたブロックだ。

 去年はユウキ・タツヤが代表として出場していたが、今年は違う。

 二人組だが、どちらの名もマシロは聞いた事は無い。

 だが、タツヤの出ている第三ブロックの代表と言う事はタツヤに勝って代表の座を勝ち取ったと言う事になる。

 

「彼は途中で棄権しているわ」

「は? 何でだよ!」

「知らないわ。流石に私も個人の事情にまで踏み込む事は出来ないわよ」

 

 余りのもレイコらしからぬ白々しさだが、マシロはタツヤが負けたのではなく、途中で棄権したと言う事実に驚き気づく事は無かった。

 当然、レイコはその辺りの事情も調べてある。

 だが、それは敢えて話す事は無い。

 

「イオリ・セイはあのイオリ・タケシの息子よ」

「あの大人げないおっさんのね……」

 

 マシロはそれを聞いた途端に少し拗ねた。

 イオリ・タケシはマシロにガンプラを教えた相手だが、マシロが唯一負けた相手でもある。

 まだ、あの時の雪辱を果たしてはいない為、余り思い出したくはないのだろう。

 

「問題は相方のレイジと言う少年の方ね。素性を調べたけど、数か月前に初めてバトルした後からは、足取りが度々分からなくなるけど、ある程度は掴んでいるけど、それ以前の足取りが全く掴めてないのよ」

 

 レイコはイオリ・セイと共に出場しているレイジなる少年の情報も集めているが、クロガミグループの情報網を駆使しても完璧に調べる事は出来ない。

 確認しているだけで最初のバトルはイオリ模型店で、同地区のファイターであるサザキ・ススム戦だ。

 それ以前は度々、目撃情報を得る事が出来たが、レイジに関する個人的な情報は全くと言って良い程集まってはいない。

 

「次の第四ブロック代表はありすなのよ」

「ふざけんな。何でアイツが出てんだよ」

 

 ありすの名を聞いた途端に、マシロは不機嫌になる。

 レイコもこうなる事は分かっていなた。

 マシロはありすの事を明らかに嫌っている。

 

「ドキュメント番組の撮影らしいわ。あの子の新規のファン層を確立する為のね。ガンプラバトルに嵌っているオタク層は金になると踏んだのよ」

 

 マシロが知る限り、ありすはガンダムやガンプラバトルに一切の興味は無かった筈だ。

 それどころか、一般的にオタクと呼ばれる層の事を毛嫌いしていたほどだ。

 だが、ありすのファン層を一層広げる為に、ドキュメント番組が企画された。

 それがありすがガンプラバトルを始め、世界大会を目指すと言う番組だ。

 そして、第四ブロックの代表となったらしい。

 

「気に入らない」

「気にする必要はないわよ。あの子が優勝を目指している訳でもないんでしょうし、適当なところで頑張ったけど、ガチ勢には及ばず敗退ってのが番組の筋書きだから」

 

 すでに、レイコは番組に付いて調べた。

 地区予選でバトルした相手は番組とは関係ない為、ありすの実力だが、今後の番組の方針としては表向きは優勝を目指していると言う事になっているが、番組としては優勝する必要はない。

 ある程度、勝ち進んだところで本気で優勝を目指している所謂「ガチ勢」に負けて終わると言う事になっている。

 余り勝ち進み過ぎると下手をすれば、ありすと言うアイドルに余計なイメージが付きかねないからだ。

 最後はガチ勢に負けて涙の一つでも流せば番組としては成り立つ。

 ありすが本気で優勝を狙いに来たとすれば、今大会において間違いなく最も厄介な相手となっていた。

 

「最後の第五ブロック代表はヤサカ・マオ」

「だから誰だよ」

「情報によればガンプラ心形流造形術の跡継ぎらしいわ」

「ガンプラ心形流造形術……あの珍庵の爺さんのとこか」

 

 マシロは第五ブロックの代表であるマオの事は知らないが、ガンプラ心形流造形術の事は知っている。

 ガンプラの歴史の中で武術のように流派が生まれて来ている。

 ガンプラ心形流造形術もその中の一つだ。

 そして、その現在の師範である珍庵はマシロがいずれは戦いたいファイターの一人だ。

 

「たまにあるんだよな。こういうのは」

 

 数回の世界大会の出場者の大半は何度も出場経験があるファイターだが、毎年初出場のファイターの中でも一人は有望な新人が出て来る。

 去年のマシロのようにだ。

 今年は更に一気に実力のある新人が出て来る珍しい年になっているようだ。

 

「他はフランス代表はアンタが落とし損ねたシシドウ・エリカで決定したみたい」

「まぁ、妥当なところだろうな」

 

 以前にフランスでエリカと組んでバトルをした事があった。

 あの時はガンプラが使い慣れていなかったと言う事もあって苦戦していたが、根本的なところではガンプラの制作技術もバトルの腕も格段に上がっていた。

 

「後、警戒すべきは今年カイザーを破ってフィンランド代表となったアイラ・ユルキアイネンとオーストラリア代表のガウェイン・オークリー。どちらもマシロと同じネメシスのファイターでマシロとのバトル経験が多い二人よ」

 

 アイラは去年、マシロが決勝戦で秒殺したカルロス・カイザーに勝ってフィンランド代表となった事で話題となっている。

 ガウェインはオーストラリア予選の一回戦でアイラに勝利すると言う大金星を挙げ、その勢いでオーストラリア代表となっている。

 それにより、今年のチームネメシスはマシロを含む3人のファイターを世界大会に送り込んだ事になる。

 そして、アイラとガウェインはマシロとのバトル経験が最も多い二人だ。

 アイラはマシロに付いていた間に相手をさせられ、ガウェインもアイラが来るまではチーム内でマシロの練習相手になるファイターはガウェインしかいなかったと言う事もありガウェインの都合を無視して相手をさせられていた。

 その中で全力を出したバトルは一度もないが、マシロとのバトル経験が豊富なのは優勝を目指す上で他のファイターにはない大きなアドバンテージだ。

 

「最後に最も警戒すべきファイターは今年、PPSEが特別参加枠を使って送り込んで来た三代目のメイジンカワグチね」

「三代目? 二代目はどうしたん? クビにでもなったのか?」

「二代目は倒れたそうよ。アンタがガンプラ塾を潰したせいで精神的な負担から体調を崩してね。今は絶対安静で危険な状態よ」

 

 二代目のメイジンカワグチはマシロに負けてから体調を崩し、遂には倒れた。

 PPSE社は急遽、メイジンカワグチの後釜を用意して三代目のメイジンカワグチが誕生している。

 そして、大会の運営の特権を使って三代目メイジンカワグチを特別参加枠で世界大会に出場させた。

 

「三代目ね……二代目が二代目だっただけにあんまり興味はないな。今のところ」

 

 マシロは三代目メイジンカワグチに対して興味を持つ事は無い事で、レイコは内心安心していた。

 当然、レイコはすぐに三代目の事も調べてある。

 PPSEがワークスチームと共に送り込んで来た以上は優勝を目指せる程のファイターである事は確実だからだ。

 PPSEはその正体を秘匿しているが、クロガミグループの情報網ならすぐにメイジンの素顔を特定する事が出来た。

 その正体こそが日本第三地区予選を辞退したユウキ・タツヤだった。

 その事をマシロに話してしまうと、マシロが余計な行動を取りかねない為、今は知らせずにいつも通り勝ち続けることを優先させた。

 いずれは分かる事かも知れないが、今は知る必要のない事だと判断した。

 

「さてと……レイコは情報収集を続けてくれ」

「どこに行くの?」

「ちょっと出る杭を打って来る」

 

 マシロはそう言って出かける用意をする。

 レイコは流石に本命の大会を前に無茶はしないだろうと、詳しく聞く事は無かったが、すぐに護衛と車を手配させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルを出たマシロはレイコが用意した車で海に居ていた。

 海ではあるが、マシロは海に泳ぎに来た訳ではない。

 季節が夏と言う事もあって、海の方には海水浴客が大勢いるが、マシロは海に目もくれずに目的の場所を目指していた。

 

「ここであってんだよな」

 

 マシロは目的地である旅館「竹屋」を見つけてそう言う。

 地区によって異なるが、日本地区では毎年、地区予選を勝ち抜いたファイターには副賞として旅行券が与えられる。

 場所は毎年異なるが、今年は副賞の宿泊先はこの竹屋らしい。

 マシロも去年には貰ってはいるが、興味がない為、副賞は使ってはいない。

 そして、マシロはここに泊まりに来る日本ブロックを勝ち抜いたファイターが目当てだった。

 副賞を使うタイミングはファイターによって違うが、取りあえず思い立ったから来た為、待ったところで遭遇出来るかは運次第だ。

 

「それにしても……コロニーでも落ちたのか?」

 

 それが竹屋を見た第一印象だ。

 竹屋の正面玄関は何かが突っ込んだのか大破している。

 

「まぁ良いか」

 

 明らかに普通ではないが、マシロは竹屋の事情はどうでも良い為、竹屋の中に入って行く。

 

「ご予約のお客さ……」

 

 マシロが中に入ると従業員と思われる少年が出迎えるが、マシロを見た途端に動きが止まる。

 

「なっ……あああああああああああ!」

「幸先がいいな」

 

 マシロはここに来る道中にレイコに自分の知らない3人、イオリ・セイ、レイジ、ヤサカ・マオの顔写真を手配させていた。

 その為、この少年がヤサカ・マオである事はすぐに気が付いた。

 そして、マオの方もまさか、現チャンピオンのマシロがここに来る事など考えもしていなかった為、大声をあげる。

 

「どうしたの? マオ君。そんな声を上げて」

「また、昨日の連中でも来たのかよ」

 

 マオの叫びを聞いて竹屋に泊まっていたセイとレイジが上の階から降りて来る。

 セイはすぐにマシロの事に気が付くが、レイジの方はマシロの事を知らないらしく、反応しない。

 

「誰だ?」

「誰だって知らんのですか!」

「チャンピオンだよ! チャンピオン!」

 

 マシロの事を知らない事が余程信じられないのか、マオはレイジに詰め寄り、セイが説明する。

 

「チャンピオン? こいつが?」

 

 だが、レイジは半信半疑ではある。

 

「そんなに強そうには見えないけどな……まぁ良いや。アンタ、強いんだろ? なら、バトルしようぜ」

「こっちはそのつもりで来たんだけどな」

「ちょ! レイジ!」

 

 行き成り、世界王者にバトルを挑むレイジの腕を掴んでセイはレイジを引っ張って行く。

 

「何考えてんだよ! 相手は去年の世界大会で優勝してるんだよ!」

「だからだろ。世界大会で優勝してるって事はあのユウキの奴よりも強いんだろ?」

「それは……そうかも知れないけど」

「なら、バトルするしかないだろ。どの道、いずれは戦う事になるんだ。それに、世界で一番強いファイターがそこにいるんだぞ。戦いたくなるだろ。ファイターなら」

 

 セイはまだ、心の準備が出来ていない事や、去年の世界大会でのマシロの戦いを知っている為、及び腰になるが、レイジは相手が世界チャンピオンだろうが関係なかった。

 寧ろ、世界最強だからこそ、ファイターとして戦いたいとさえ思っている。

 レイジにそこまで言われ、セイも自分の作ったガンプラと相棒のレイジがどこまでマシロと戦えるか知りたくなって来た。

 

「分かった。やろう。レイジ」

「おう、そうこないとな!」

 

 セイも覚悟を決めて、二人はマシロと対峙する。

 

「そっちの赤い方がレイジで、青い方がイオリ二世か……」

 

 覚悟を対峙する二人に対してマシロは値踏みするように見る。

 レイジは怯む事は無いが、セイは怯みかけるも何度か踏みとどまる。

 

「成程ね。世界大会に出る程はある……だけど」

 

 マシロは視線を二人からセイの方に向ける。

 そして、ゆっくりと近づき、セイの方にポンと手を置く。

 

「親の事は気にするな。ファイター以外にも道はあるさ」

「えっと……はい?」

 

 マシロはセイに対してそう言う。

 マシロは相手を見るだけである程度は本能的に相手の力量や才能を見抜く事が出来る。

 そして、直接二人を見た感想として、レイジは世界大会に出る程の実力と潜在的な才能を秘めているが、セイからはまるで感じない。

 精々、人並か少し上程度にしか今後はファイターとして伸びる事は無い。

 練習次第ではある程度の実力者となる事は可能だが、世界レベルのファイターになる事は不可能だと言うのがマシロから見たイオリ・セイのファイターとしての才能だ。

 これが普通のファイターであるのなら、世界大会で優勝すると等と言う身の丈に合わない夢さえ持たなければ十分にガンプラバトルを楽しむ事は出来るが、セイの場合父親が問題だ。

 セイの父親のイオリ・タケシはガンプラバトルをやっていれば嫌でも耳に入って来る。

 イオリ・タケシの息子としては世界レベルに到達できないセイはこれからは苦労させられるだろう。

 

「まぁ良いや。で、バトルしてくれるんだろ?」

「当然だ!」

「よろしくお願いします」

「ちょい待ち! 二人だけズルいですやん!」

 

 三人の間にマオが割って入る。

 

「ワイもチャンピオンとバトルしたい!」

 

 レイジがマシロとバトルしたいようにマオもまた、世界チャンピオンであるマシロとバトルしたいと思っている。

 

「俺は別に二人同時に相手しても構わないけど」

 

 マシロは元より、セイとレイジ、マオの二組と戦う気でいた。

 レイジ達だけでなく、マオもその気ならバトルをする事に問題はない。

 レイジは一人づつではなく、二人同時に相手をすると言って来ている辺りは、マシロが自分達を下に見ていると不満そうだったが、それをセイとマオが宥める。

 少なくとも、自分達はまだ実績を残していない為、各下と見られても仕方が無く、相手にされているだけマシなのだと。

 話しが纏まったところで、バトルの為に移動する。

 竹屋の中には卓球と言った温泉旅館では定番の遊具の他にガンプラバトルのバトルシステムも置かされている。

 これは竹屋の経営が思うようにいかない為、他の旅館にはない売りとして導入した物だ。

 バトルシステムをマシロ達4人が囲みバトルの準備が行われていた。

 いつの間にか、セイ達と共に泊まっていたラルさんとセイの母親であるイオリ・リン子、そして、セイのクラスメイトであるコウサカ・チナもセイとレイジがバトルをすると聞きつけて観戦している。

 

「イオリ君たちは大丈夫なんでしょうか……」

「相手はあのマシロ君だからね」

 

 チナは心配そうにセイを見ている。

 ガンプラバトルに詳しくないチナだが、マシロが世界チャンピオンだと聞いて心配している。

 

「だが、このバトルは彼らにとって大きな意味を持つ。セイ君はともかく、レイジ君はマシロ君の実力を知らない。ここで世界最強の実力を知る事は今後の世界大会を勝ち抜く上で彼らの財産となるだろう」

 

 このバトルでセイ達がマシロに勝てるとはラルさんは考えてはいない。

 セイとレイジはビルダーやファイターとして優れた才能を持ち、戦う度に強くなっている。

 それでもまだ、マシロには届かないだろう。

 だが、このバトルで世界最強の力を知れば、今後世界大会で強敵と当たっても動じる事無くバトルが出来る。

 今は圧倒的な差を見せつけれるかも知れないが、長い目で見ればそれはいずれマシロと同じ世界最強の座を争う時にマシロの力を何も知らずにバトルするのと知った上でバトルするのとでは大きく違ってくる。

 

「あの子ってキヨさんのところの……大きくなったわね」

 

 二人の相手が現世界最強のファイターである事に心配していないのか、リン子は以前にキヨタカがガンプラを買う為にマシロと共にイオリ模型店を訪れた時よりもマシロが成長している事をしみじみ感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 マシロとレイジ、マオがGPベースをバトルシステムにセットしてガンプラを置いた。

 直接バトルしないセイはレイジの後ろでセコンドに付いている。

 そして、バトルが開始される。

 今回のバトルフィールドは市街地だ。

 マシロはセブンスソードでのバトルだ。

 マオのガンプラはガンダムXを改造したガンダムX魔王、セイとレイジのガンプラはガンダムMk-Ⅱの改造機ビルドガンダムMk-Ⅱだ。

 

「まずは!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードに対してガンダムX魔王とビルドガンダムMk-Ⅱが一斉に射撃を行う。

 集中砲火をガンダム∀GE-1 セブンスソードはギリギリのところで回避しながら2機に接近する。

 

「当たらねぇぞ!」

「アレがマシロさんの……」

「実際に見るのは初めてですけど、どないな目をしてんですか!」

 

 セイとマオは去年の世界大会でのマシロのバトルを何度み見た事がある。

 その中でのマシロのバトルスタイルの特徴の一つが攻撃を回避する際に当たる事を全く気にしていないギリギリでの回避行動だ。

 下手をすれば直撃しかねないギリギリだが、マシロは躊躇う事無くやって見せた。

 それにより動きが最低限である為、距離を取ろうにもガンダム∀GE-1 セブンスソードの機動力を簡単に振り切れないで接近されると言う事が多い。

 

「ちっ……射撃が駄目ならよ!」

「レイジ!」

 

 撃ったところで簡単には当たらないと踏んだレイジは接近戦に切り替える。

 ビルドガンダムMk-Ⅱはビームサーベルを抜いて、向かって来るガンダム∀GE-1 セブンスソードを迎え撃つ。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードを展開し、ビルドガンダムMk-Ⅱのビームサーベルを受け止める。

 

「成程ね。良いガンプラだ」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは後退しながら胸部のビームバルカンを放つ。

 ビルドガンダムMk-Ⅱはすぐに降下して回避すると、後方からガンダムX魔王がシールドバスターライフルで援護射撃を行う。

 

「そっちもやるね」

 

 短いやり取りの中でマシロは二人のガンプラの性能を把握して行く。

 すでにレイコの方からある程度の情報は回して貰っているが、データとして見るのと実際にバトルして見るのとでは違ってくる。

 

(全く、最近のガキは怖いね。総合的な性能じゃこっちの方が負けてるし)

 

 ビルドガンダムMk-ⅡとガンダムX魔王もガンプラとしての出来は非常に高い。

 マシロもこれ程の出来のガンプラとの世界大会以来、久しぶりだ。

 マシロはファイターとしての実力は紛れもない世界最強クラスだが、ビルダーとしての腕が飛び抜けている訳ではない。

 その為、セイとマオが制作したガンプラは総合的な出来ではマシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードを上回っている。

 だが、機動力や格闘戦能力ではまだガンダム∀GE-1 セブンスソードに分がある。

 

「俺もさ、まだ新しい世代に譲る気は無いんでね!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはビルドガンダムMk-Ⅱに向かって行く。

 ビームライフルMk-Ⅱで応戦するが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはギリギリのところで回避すると、Cソードを振るう。

 ビームサーベルで受け止めるもビルドガンダムMk-Ⅱは弾き飛ばされてしまう。

 

「なんてパワーだよ!」

「レイジはん!」

 

 ビルドガンダムMk-Ⅱが体勢を整える間をガンダムX魔王が稼ぐ。

 シールドバスターライフルをシールド形態にするとビームソードを抜いてガンダム∀GE-1 セブンスソードに切りかかる。

 それをガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードで受け止める。

 その間に体勢を整えたビルドガンダムMk-Ⅱが両腕のビームライフルMk-Ⅱでガンダム∀GE-1 セブンスソードを狙う。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはガンダムX魔王を蹴り飛ばして回避すると、ビルの屋上に着地する。

 

「こっちは二人掛かりだってのに……」

「まだ、チャンスはあります! レイジはん、少し時間を稼いで下さい!」

「レイジ」

「何だ知らないが、頼んだぞ! マオ!」

 

 ガンダムX魔王が後方に下がるとビルドガンダムMk-Ⅱは両腕のビームライフルMk-Ⅱを放つ。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは飛び上がって回避すると、ショートドッズライフルをガンダムX魔王に向ける。

 

「何をするかは知らんが、大人しくやらせてやるほど、お人よしでもないんでね」

「やらせるかよ!」

 

 ビルドガンダムMk-ⅡはバックパックのビルドブースターMk-Ⅱをパージすると支援戦闘機となり、ビームライフルMk-Ⅱでガンダム∀GE-1 セブンスソードの攻撃を妨害する。

 

「無人戦闘機か……先に仕留めさせて貰う」

「お前の相手はこっちだ!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは先にビルドブースターMk-Ⅱにショートドッズライフルを向けるが、ビルドガンダムMk-Ⅱ本体がビームサーベルを抜いてガンダム∀GE-1 セブンスソードに切りかかる。

 その攻撃をガンダム∀GE-1 セブンスソードは回避する。

 

「やるな」

「ちっ……こっちは一杯一杯だってのによ!」

 

 ビルドブースターMk-ⅡはビルドガンダムMk-Ⅱのバックパックとなり、背部に戻る。

 そして、ビームライフルMk-Ⅱを連射して、ガンダム∀GE-1 セブンスソードにガンダムX魔王に狙いを付けさせないように牽制する。

 

「そろそろか」

「レイジはん! セイはん! お待たせしました! こっちは行けますよ!」

 

 ビルドガンダムMk-Ⅱが時間を稼いでいると、後方に退いたガンダムX魔王はハイパーサテライトキャノンを構えていた。

 

(成程な。まぁGXの改造機が粒子を集めたらサテライトキャノンを撃って来るわな)

 

 マオのガンダムX魔王が後方に退いたのは自信の切り札であるハイパーサテライトキャノンを撃つ為であった。

 圧倒的な操縦技術を持つマシロに対抗する為の圧倒的な火力で勝負と言う事だ。

 この一撃が当たれば流石のガンダム∀GE-1 セブンスソードも確実に仕留める事が出来る自身がマオにはある。

 

「サテライトキャノンか。月のないステージで撃って来るのは凄いけどさ、当たってやる気はないぞ」

 

 ガンダムXやガンダムDX等に搭載されているサテライトキャノン及びツインサテライトキャノンはガンプラバトルにおいては最強クラスの火力が素組でも使う事が出来る。

 だが、制限として作中の2機は月の太陽光発電施設からスーパーマイクロウェーブを受信してエネルギーを確保している。

 ガンプラバトルでも同様で月のないバトルフィールドでは使えない。

 しかし、マオのガンダムX魔王は月のないバトルフィールドでもハイパーサテライトキャノンを撃てるように改造している。

 それを行う為にも時間が必要である為、マオはレイジに時間を稼いで貰った。

 

「逃がすかよ!」

 

 普通に撃ったところでガンダム∀GE-1 セブンスソードの機動力とマシロの腕なら回避する事は余裕だった。

 ビルドガンダムMk-ⅡがビルドブースターMk-Ⅱをパージしてガンダム∀GE-1 セブンスソードの動きを制限する。

 

「行きますよ!」

 

 ガンダムX魔王はガンダム∀GE-1 セブンスソードにハイパーサテライトキャノンを放つ。

 ビルドブースターMk-Ⅱに足止めをされているガンダム∀GE-1 セブンスソードに高出力のビームが一直線に向かって行く。

 

「流石にアレを食らう訳にはいかないからな、こっちも切り札を切らせて貰う」

 

 するとガンダム∀GE-1 セブンスソードは青白く発光する。

 

「何だ!」

「アレは……バーストモード!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードもまたバーストモードが使える。

 以前のガンダム∀GE-1の時はその出力にガンプラが耐え切れずに動くだけで損傷する程だったが、今は一応の解決策を用意している。

 青白く光るガンダム∀GE-1 セブンスソードだが、光は右腕のCソードに集まる。

 そして、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは高らかにCソードを上に上げると、Cソードから巨大な青いビームサーベルが出て来る。

 

「ライザーソード!」

「違う! バーストソードだ!」

 

 マシロがバーストソードと名付けた巨大なビームサーベルはバーストモード発動時の粒子をCソードに集中させる事で使うガンダム∀GE-1 セブンスソード、第七の剣だ。

 そうする事でバーストモードを使っても、本体への負荷は無くなり、必殺の一撃を使う事も出来る。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはバーストソードを振り落す。

 その際に足止めをしていたビルドブースターMk-Ⅱを一瞬にして破壊し、ガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンとぶつかる。

 2機の使った最大級の攻撃のぶつかり合いはガンダム∀GE-1 セブンスソードのバーストソードが打ち勝ち、バーストソードがガンダムX魔王を襲う。

 

「マオ!」

「マオ君!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードがバーストモードに使った粒子が切れるとバーストソードは消え、Cソードにヒビが入り壊れた。

 バーストモードの粒子をCソードに集めた分、Cソードが本来、本体にかかる筈の負荷を一手に受ける為、一度使えばCソードは破壊されると言うのはバーストソードのデメリットだ。

 Cソードが壊れた為、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはショートドッズライフルごとCソードをパージする。

 バーストソードの一撃が終わるとそこには、バーストソードの直撃を受けたガンダムX魔王がボロボロになっていた。

 辛うじて完全に破壊される事は無かったが、もはや戦闘を続行する事は出来そうに無い。

 

「耐えたか」

「ハイパーサテライトキャノンが撃ち負けるやなんて……」

 

 マオは月のないバトルフィールドでは最大出力では撃てないにしても、ハイパーサテライトキャノンが撃ち負けた事に少なからずショックを受けている。

 一方のマシロも少なからず驚いている。

 バーストソードはガンダム∀GE-1 セブンスソードの必殺の一撃だ。

 その一撃の直撃を受ければ世界レベルのガンプラだろうと確実に仕留める事が出来る。

 それでもガンダムX魔王はボロボロとはいえ完全に仕留める事が出来なかった。

 恐らくはハイパーサテライトキャノンによって威力が大きく削られたからだろう。

 並のガンプラが撃ったサテライトキャノンなら問題はない筈だったので、ガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンは最大出力でなくとも相当な威力だったと言う事だ。

 

「その損傷ではこれ以上のバトルは出来ないだろ」

「……そうですね。後はお二人にお任せします」

「……ああ、任せろ」

「だけど……」

 

 マオのガンダムX魔王は戦闘不能でこれ以上のバトルには参加できない。

 マシロも戦えない相手と戦う気は無い。

 後はレイジとセイのビルドガンダムMk-Ⅱだが、すでにビルドブースターMk-Ⅱを失っている。

 残っている装備はビームサーベルが2本だけだ。

 対するマシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードとショートドッズライフルを捨てただけだ。

 

「降参するなら認めても良いけど。どうする?」

 

 すでに勝敗は見えている。

 流石のレイジもこの状況でマシロを相手に勝てると思っている程、自身の実力に自身を持っている訳ではない。

 

「……なぁ、セイ」

「レイジ?」

「ユウキの奴も凄げぇと思ったけどよ。世界は広いな」

 

 レイジもタツヤとバトルした事はある。

 その際に世界の実力を身を持って体験している。

 そして、その上が更にいると言う事をこのバトルで実感した。

 

「うん」

「それが分かっただけでもこのバトルには意味があったのかも知れない。ここで諦める事が賢い選択かもな」

 

 レイジは世界最強の力を知った。

 勝ち目がない以上は、降参する事が賢い選択と言える。

 このバトルで負けたところで世界大会に出れない訳ではない。

 寧ろ、バトルを続けることはガンプラを無用に傷つける事になる。

 

「そうだね」

「けどよ……これから先、世界大会でこいつみたいな奴らを相手にしないといけないんだろ? なら、ここで諦めちまったら、多分……一生アイツ等には追いつく事も超える事も出来ない気がする。だからさ……悪い。お前の作ったガンプラが壊れるかも知れないけど、俺は諦めたくねぇ!」

 

 賢い選択をすればガンプラが壊れる事は無い。

 レイジもそれは理解している。

 だが、レイジは本気で世界大会で優勝を目指している。

 優勝を目指すと言う事はいずれはマシロに勝たないと優勝する事は出来ない。

 ここで降参すると言う事はマシロに勝つ事を諦めてしまうと言う事だ。

 一度、諦めてしまえば二度とマシロに勝つ事もそこまで辿りつく事も出来ない気がした。

 

「そうだね……レイジは後の事なんて考えなくても良い! 思いっきりぶつかろう!」

「おうよ!」

 

 覚悟は決まった。

 例え、負ける事が分かり切っていても今は、諦めて負けるよりも諦めずに負ける事を二人は選択した。

 だが、レイジは負ける気など毛頭ない。

 どの道、勝ち目はないがそれでも尚、勝つ気でマシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードに向かって行く。

 ビルドガンダムMk-Ⅱは両手にビームサーベルを持ってガンダム∀GE-1 セブンスソードに突撃する。

 

「勝ち目がないと分かって尚、挑むか……悪くない選択だ」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは向かって来るビルドガンダムMk-Ⅱを迎え撃つ構えをする。

 そして、ビルドガンダムMk-Ⅱはビームサーベルを振るった。

 

「……ちくしょう!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードの最後の一撃はセイはおろか、レイジすら完全に捉える事が出来なかった。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードが腰のビームサーベルを抜いたと思った瞬間にガンダム∀GE-1 セブンスソードの姿は消え、ビルドガンダムMk-Ⅱにビームサーベルが突き刺さっていた。

 最後の一瞬だけ、マシロは全力を出した。

 いつもは全力を出すとガンプラがそれに耐え切れない為、滅多に全力を出す事は無いが、マシロは全力で止めを刺した。

 それにより、ガンダム∀GE-1 セブンスソードも関節が悲鳴を上げて、右腕は力なくうな垂れて膝をついている。

 胸部に突き刺さったビームサーベルが決めてとなり、ガンダムX魔王も戦闘不能である為、バトルはマシロの勝利で終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルが終わるとレイジやセイ、マオは一言も出て来なかった。

 終わってみればマシロの圧勝だ。

 相手が世界王者だろうと世界大会に出場する自分達が二人掛かりなら或いはと心のどこかでは思っていたが、見事に打ち砕かれた。

 

「まずまずだったよ。お前ら」

 

 口を開かない三人に代わりマシロが口を開く。

 終わってみれば圧勝ではあったが、マシロからすれば中々のバトルだったらしい。

 

「まず、マオだっけか。お前のGXの改造機はあんな方法で粒子を集めているところから察するにサテライトキャノンに重きを置いたガンプラと言ったところか」

「まぁ……そうですけど」

 

 ガンダムX魔王が後方に下がり、ビルドガンダムMk-Ⅱと戦っていた時もマシロはガンダムX魔王から目を離した訳ではなかった。

 その為、月のないバトルフィールドでハイパーサテライトキャノンを撃つカラクリも一部始終見ていた。

 敢えて、あんな方法と方法を言わないのはこの場にマオ以外のファイターがいるからだ。

 わざわざ、自分が見抜いた秘密を意味もなく他のファイターに教える気は無い。

 

「今回はチーム戦だったから良かったものの、格下相手じゃないとサテライトキャノンのチャージは出来ないだろう」

 

 図星だった。

 ガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンを撃つには時間がかかる。

 今回はレイジに時間を稼いで貰ったが、世界大会で使う為にはまだ難が残る。

 

「マシロはんはワイの魔王にサテライトキャノンを捨てた戦い方をしろと言うんですか?」

「合理的に考えればそうだな。サテライトキャノンは威力は高いがチャージにかかる時間が長い上に使えるバトルフィールドが限られて来る。チーム戦向きの武器でタイマン向きじゃない」

 

 ガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンはベースとなったガンダムXよりも使い易く改造している。

 だが、それでも撃つまでの時間はかかる事はどうしようもない。

 実力差のある相手ならまだしも、世界レベルのファイターを相手に何度も使える武器ではない。

 複数のガンプラで戦うチーム戦ならまだしも、世界大会の決勝トーナメントまで来ると全てのバトルが一体一で行われる。

 そこまで勝ち抜いた場合、ハイパーサテライトキャノンは非常に使い辛い。

 そんな装備を無理に使い続ける位なら、いっその事装備しているだけで、相手にサテライトキャノンがあると言う事を印象づけて警戒させる戦いの方が合理的で確実に勝つ事が出来るだろう。

 

「だが逆だ。あんなに使い難い装備を使い易くしてまで使うって事は思い入れがあるって事だ」

 

 マオがガンダムXの改造機を使うきっかけとなったのは元から大火力の機体が好みだった事もあってガンダムXのサテライトキャノンに惚れ込んだからだ。

 その為、月のないバトルフィールドでも使えるように考えて改造した。

 

「つまりは、好きで選んだガンプラから好きな部分を捨てた時点でそいつは負けてんだよ」

 

 自分のガンプラを選ぶ際には様々な基準がある。

 その中でもマオはガンプラの好きな部分で決めている。

 それが好きで選んだガンプラからその要素を捨てた時点で、どのガンプラでも良いと言っているような物でそんなファイターが勝てる訳が無い。

 

「結局のところ、好きなんてものは合理的から最も離れているんだ。合理的に考える必要なんてどこにも無いんだよ」

 

 マオだけでなく、誰もが好きでガンプラバトルを始めている。

 バトルの技術を磨く為に合理的に考える事は必要ではあるが、ガンプラを作る際にも合理的に勝てるガンプラよりも自分の好きなように作ったガンプラの方が強いとマシロは考えている。

 

「だけど、好きな事を突き詰めたところで限界はあるが、好きな事を最大限に活かす術を考える上でそれ以外の事に目を向ける事は案外大事な事だ」

 

 好きで始めた事でも勝敗を付ける勝負である以上は、好きを貫いたところでいずれは限界が訪れる。

 その限界を突破する為には好きな事以外にも目を向ける必要が出て来る。

 マシロの場合は近接戦闘を好んでいる。

 その為、好きな近接戦闘かは離れた砲撃戦の装備を用意している。

 そうする事でマシロは接近戦だけのファイターではないと言う印象を付ける事で、最も好んで使う近接戦闘が活きて来る。

 

「つまりは、ハイパーサテライトキャノンを最大限に活かす為に別の方向にも目を向けろと言う事ですか?」

「その通り。後は自分で色々と試して見るんだな。答えは自分でしか出せないし」

 

 マシロが出来る事はここまでしかない。

 結局のところガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンを最大限に活かすバトルはガンダムX魔王を作ったマオでしか答えを出す事は出来ない。

 

「次にイオリ二世のマークⅡの改造機だ」

 

 話しが自分の方に向くと、ビルダーの腕はすでにセイの方が上ではあるが、相手はチャンピオンである為、緊張して無意識の内に背筋が伸びる。

 

「完成度は悪くない。けど、小さく纏まっていてつまらない」

 

 まさに一刀両断だった。

 セイのガンプラを貶された気がして、レイジが掴みかかりそうになるが、セイがレイジの腕を引いて止める。

 世界大会を勝ち進むにあたり、マシロが実際にバトルして感じた意見はセイにとっては貴重な意見だ。

 

「多分、イオリ二世は自分のガンプラに俺設定を付けるタイプだろ」

「えっと……はい」

 

 セイは図星を付かれて視線を逸らす。

 実際、ビルドガンダムMk-Ⅱには色々と作中設定を付けている。

 

「俺もやるけど、俺設定は時に選択の幅を狭める事がある。俺の場合はAGE系のガンダムはその辺は割と自由が利くけど、宇宙世紀はそうもいかないしな」

 

 作中設定、いわゆる俺設定を考える際に重要なのはガンダムの作中で決してありえる設定を作る事だ。

 マシロのガンダム∀GE-1は元々AGEには意図的に視聴者が自分で考察出来るように設定をぼかしている上にAGEシステムと言うある程度は突拍子もない改造でも作中であり得るだけの受け皿も用意されている。

 逆に宇宙世紀はファーストガンダムに始まり、続編や外伝作品、OVA作品等によって通常のアニメではあり得ない程の膨大な歴史や世界観と言った深い設定を持つ。

 それ故に作中設定に準じた設定を守ろうとすると自ずと選択の幅を狭めてしまう。

 

「それが悪いとは言わないし、お前のマークⅡは俺の∀GEよりも戦い方の幅も広い。けど、お前のマークⅡは多分、過去に一度は誰かが似たような事を考えてると思う」

 

 セイは反論出来なかった。

 確かにセイは宇宙世紀、特にベースとなったガンダムMk-Ⅱが登場したZガンダムの設定をある程度は順守して使っている。

 Zガンダム自体、かなり昔の作品である為、ビルドガンダムMk-Ⅱの設定の一つである、公式には存在しない幻の5号機と言う設定もセイが始めて考えたと言う可能性はまずない。

 装甲が旧来の物ではないと言う設定やギャプランの装備が参考となっていると言うのも然りだ。

 だが、それはビルダーがいずれは当たる壁だ。

 そこで、その壁を破り新たなステップに上がるか、現状で満足するかはビルダー次第だ。

 

「後は俺の好みの問題だが、特徴があんまりないのもな」

 

 ビルドガンダムMk-Ⅱはバランス型のガンプラと言える。

 マシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードは近接戦闘に特化し、マオのガンダムX魔王はサテライトキャノンの使用に特化している。

 特化しているガンプラは特化した分野なら圧倒的な強さを発揮するが、逆に弱点を突かれると何も出来ずに敗北する事もあり得る。

 その点、バランスの良いガンプラには弱点らしい弱点が無い為、特化する事が悪い事ではない。

 だが、過去の世界大会においてギリギリのバトルとなった時にはバランス型のガンプラの勝率は低い。

 これはバランス型が故に相手に勝る武器がないからだ。

 ギリギリのバトルで必要となって来るのは如何に相手より弱点が少ないと言う事ではなく、如何に相手より優れた武器を持っているかとなって来る。

 それ故にバランス型で勝ち残る為には、ファイターの腕が特化型以上に必要となって来る。

 

「けど、誰か考えそうなガンプラよりも、新しいガンプラの第一人者の方が俺は良いと思うな」

「新しいガンプラ……」

 

 マシロからすれば勝てるガンプラを作ると言う事は根底にある絶対条件だ。

 だが、過去のビルダーがすでに確立した物をそのまま使う事は好まない。

 必要であれば、真似する事も辞さないが、自分なりにアレンジしたり、自分に合わせて変化させなければそれは自分の物にしたとは言えない。

 そして、自分が最初の人になる事は他人よりも優位に立ったことにもなる。

 後から同じような事をしても、結局は二番煎じでしかないのだから。

 

「人の相方に好き勝手言ってくれるじゃねぇか」

「今のところは事実だからしょうがないよ。レイジ」

 

 マオの時とは違いセイに対してはマシロはかなり辛辣な物言いだった。

 だが、セイはそれを受け入れていた。

 それが今の自分に必要な事だと感じているからだ。

 

「最後にレイジだが、良いね。その負けん気は実にファイター向きの気質だ」

 

 セイの時とはうって変わり、レイジの評価はマシロの中では高いようだ。

 レイジはマシロの事を知らないと言う事もあり、相手が誰だろうと物怖じしない図太さ、圧倒的な差を見せつけられても尚、勝とうと前進する負けん気。

 ファイターとして必要な要素を持っている。

 これは練習で簡単に会得出来る類の物ではなく、本人の性格による要因が大きい。

 

「後はどれだけ修羅場を潜り抜けるかだが、ファイターが良くてもガンプラがそれに追いついてこなければ宝の持ち腐れだ」

 

 それはセイに大しての言葉でもあった。

 マシロも同様だが、幾らファイターの実力があってもガンプラがそれに追いつかなければファイターの腕を活かし切れない。

 逆にガンプラの性能が良くてもファイターの実力が無ければ、ガンプラの性能を活かし切れない。

 

「それをクリアすれば、お前らがまだまだ強くなれる」

 

 レイジにはそれだけの可能性を感じた。

 まだ粗削りだが、その潜在的な才能は計り知れない。

 世界レベルの実力者とのバトルを繰り返せば爆発的に成長する可能性をレイジは持っている。

 それに加えて元よりビルダーとしての高い能力を持つセイが壁を突き破る事が出来れば、二人は自分のいる高見へと上がれると思える程にだ。

 

「さてと、チャンピオンの有難い講義はこの辺りで終わりにするか。後は自分で考えて自分の答えを出せれば俺と同じステージに来いよ」

 

 マシロは色々と言ったが、最後に決めるのは自分でしかない。

 マシロの言葉はマシロの考えに過ぎず、それを受け入れて答えを出すのか、否定して自分なりの答えを出すのか、それは誰にも明確に答えを出す事は出来はしない。

 だが、その答えを出来れば、セイとレイジだけでなく、マオも世界レベルのファイターやビルダーとしてマシロと同じステージに上がる事が出来る。

 

「それで精々、俺を楽しませてくれ」

 

 何もマシロは善意でアドバイスをした訳でも無い。

 マシロは根本的な部分を思い出せずにいるが、勝つ事が好きで強い相手に勝つ事が好きだと言う事に変わりはない。

 3人にアドバイスを送るのも、それだけの可能性を感じた事による。

 そして、強くなったところを自ら世界大会で倒すと言う算段だった。

 

「その時には楽しめない程に強くなってるかも知れないぜ?」

「やれるもんならな」

 

 レイジの挑発的な態度にマシロも挑発的に返す。

 チャンピオンを相手に強気な態度に、マオは素直に関心し、セイは気が気でない。

 バトルを終えたマシロはさっさと帰って行く。

 

「で……結局、アイツは何しに来たんだ?」

「さぁ?」

 

 何かしらの用事があって竹屋に来た事は確かだが、マシロはバトルをして帰って行っただけだ。

 結局、何の目的で来たのか分からず終いだった。

 バトルを終えたマシロはすぐに静岡へと戻っていた。

 始めから今年の新人の実力を把握する事が目的でセイ、レイジ組とマオの実力を把握する事が出来た為、目的は果たした。

 そして、結果としては上々だ。

 

「アメリカのニルスと言いウチのアイラと言い今年は豊作だな」

 

 今年の初出場のファイターのバトルの映像で確認したが、その中でも何人かは相当な実力者が揃っている。

 それこそ、マシロがバトルしてみたいと思える程のファイターだ。

 

「タツヤが出ないからつまらない大会になりそうだけど、今年は少しは楽しめそうだ」

 

 バトルを楽しみにしていたユウキ・タツヤがまさかの予選辞退で、マシロはテンションが落ちていたが、それを補える程のファイターの登場にマシロも機嫌が良い。

 世界大会まで残り一か月を切っている。

 現時点で世界大会の出場者は全て確定している。

 出場するファイターは優勝、打倒マシロを目指して残りの時間を調整や練習に費やしているだろう。

 マシロもまた、チームネメシスのオーナーであるヨセフとの契約である第7回大会優勝を目指す為に最後の調整に入る。

 それぞれのファイター達が世界一の栄光を目指し、世界大会が開催される。

 

 

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