ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
ガンプラバトル選手権世界大会の開幕当日となり、会場には世界大会をまじかで見ようと多くのファンが訪れている。
ファン以外にもテレビ関係者も多く集まっている。
世界大会はネットやテレビで全世界に中継されている。
予選ピリオドは大規模なバトルでない限りはメインスタジアムではなく、4つのサブスタジアムで行われる。
第一ピリオドは4人同時のバトルで大会参加者は100人である為、全部で25試合行われる事になる。
その為、バトルは4つのサブスタジアムで同時進行となる。
マシロはサブスタジアムの一つで最初の一戦から出番となっている。
マシロのバトルの行われるサブスタジアムは他のスタジアムよりも観客が多く入っている。
圧倒的な強さで優勝してから1年が経ち、その間、マシロは公式戦等に殆ど顔を出していない為、非常に注目されている。
尤も、必ずしも勝つ事を期待されている訳でもなく、去年の大会で大口を叩いている為、マシロが初戦から負ける事を期待して見に来ている観客も少なくない。
その証拠に現王者にも関わらず、応援の声よりもブーイングに方が多い。
しかし、マシロはそんなブーイングにもどこ吹く風だ。
「マシロ。分かってるわね。この所詮は大事よ。まずは圧倒的な力で勝利しなさい」
「了解」
マシロのセコンドに付いているレイコがそう言う。
初戦で大事なのは勢いをつける事。
初戦で負けたり苦戦していると勢いがつかず、後のバトルに影響しかねない。
ここで圧倒的な力で勝利する事は世界大会で勢いをつける為には大きな意味がある事だ。
その為、世界大会において最初の一戦は勝ち進む為には最も重要な一戦でもあった。
「マシロ・クロガミ。ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケット。出る」
重要な一戦だが、マシロは緊張した様子も気負った様子も無く、いつも通りだ。
初戦のバトルフィールドは宇宙だ。
バトルフィールドに入って少しすると、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットに強力なビームが飛んで来る。
「いきなりか」
「速いわね」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは余裕を見せながらビームを回避する。
「ウイングガンダムか」
攻撃して来たのはガンダムWの前半の主人公機であるウイングガンダム。
可変機能と高い火力を持っている。
飛行形態であるバート形態からモビルスーツ形態に変形するとバスターライフルを放つ。
「当たらないでよ」
「分かってる」
ウイングガンダムはバスターライフルを連射するが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは推力に物を言わせて振り切る。
「回り込まれてるわ」
「知ってるよ」
ウイングガンダムを振り切っていると、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの進行方向に別のガンプラの姿がある。
Gガンダムの前半の主人公機であるシャイニングガンダムだ。
シャイニングガンダムはビームソードを振るい、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはハイパーメガドッズライフルの砲身で受け止める。
ハイパーメガドッズライフルの砲身は高い火力でも大丈夫なように強固に作られている為、ある程度の攻撃を受け止める事が出来る。
シャイニングガンダムの攻撃を受け止めている間にバード形態のウイングガンダムがバスターライフルを撃ち2機は距離を取る。
そして、ウイングガンダムはモビルスーツ形態となると、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットにバスターライフルを放ち、シャイニングガンダムはガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットに突っ込んで来る。
「どっちもこっちが狙いか。つか、バスターライフルを撃ち過ぎなんだよ」
シャイニングガンダムは位置的に完全にウイングガンダムに背を向けている為、マシロガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットのよりも狙い易いが、狙わない。
恐らくは事前にレイコが懸念していた通り、マシロを優先的に狙って来ているのだろう。
「さて……どうやって圧倒的に勝とうかね」
ウイングガンダムもシャイニングガンダムも大幅な改造はされていないが、細かいところの出来は流石は世界レベルのファイターと言ったところだが、マシロからすればすぐに勝てる相手だ。
だが、レイコの言う通りに圧倒的な力で勝つと言う条件を満たす為にはある程度は考えて戦う必要がある。
そうこうしている間に先ほどのウイングガンダムのバスターライフルとは比にもならない強力なビームが戦場を横切る。
「そっか。このバトルフィールドには月もあったよな」
バトルフィールドの端にはサテライトキャノンを担いだガンダムXがいた。
このバトルフィールドには月がある為、ガンダムXはサテライトキャノンを使う事が出来る。
4機目が参戦しなかったのはサテライトキャノンを使う準備をしていたかららしい。
「3人とも俺優先と言うか、組んでるな」
相手の戦い方を見てマシロは確信した。
中距離からウイングガンダムがバスターライフルで牽制して、近距離でシャイニングガンダムが足止めをする。
止めに後方からガンダムXがサテライトキャノンで止めを刺す。
シンプルだが、即席チームとしては抜群のチームワークでもあった。
「マシロ」
「分かってる。そろそろ終わらせる」
余り時間をかけていればそれだけで、圧倒的な勝利には遠のく。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの背後からシャイニングガンダムがビームソードを振り下す。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはハイパーメガドッズライフルでシャイニングガンダムの横っ腹を殴打する。
そのまま、シャイニングガンダムをウイングガンダムの方に放り投げた。
ウイングガンダムはガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットにバスターライフルを向けていたが、射線上にシャイニングガンダムが入った事で反応が一瞬だけ遅れてしまう。
その遅れが命取りとなって、シャイニングガンダムとウイングガンダムは激突して、2機ともバランスを崩す。
「はい。終了」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは体勢を立て直せずにいる2機に向けてハイパーメガドッズライフルを最大出力で放つ。
ウイングガンダムが何とか、バスターライフルを向けるが撃つ前にハイパーメガドッズライフルのビームに飲み込まれて2機は一撃で葬られた。
そして、その射線上にはサテライトキャノンを構えているガンダムXもいた。
ガンダムXはすぐにチャージしていたサテライトキャノンを放つ。
2機のビームはぶつかるが、あっさりとガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットのビームが撃ち勝ち、ガンダムXを飲み込む。
見た目こそは派手だが、見た目に反してガンダムXのサテライトキャノンはマシロが先日バトルし、勝利したガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンと比べると圧倒的に劣る為、正面からぶつかったところでハイパーメガドッズライフルのビームには何の影響もなかった。
ガンダムXが撃墜された事で第一ピリオド第一試合の勝者はマシロで決まった。
「これで良いんだろ」
「ええ。上出来よ」
三機のガンプラに対して一回の射撃でマシロは勝利を収めた。
自身の実力を完全に見せる事無く、一射で勝利したと言う事は今年のマシロの実力を見せつけるには十分だ。
初戦から相変わらずの実力を見せた事で会場は静まり返っていた。
バトルに勝利した事でマシロは、他のバトルの情報を解析する為に戻ったレイコと別れて、選手用の控室に向かう。
各サブスタジアムには選手用の控室がある。
そこからそのスタジアムや他のスタジアムの試合を見る事が出来る。
観客席で一般の観客と共に観戦する事も可能だが、選手によってはファンに囲まれる事もある為、用意されている。
控室にマシロが入ると、自分のバトルを待っているファイター達が一瞥するが、特に絡まれると言う事もなかった。
マシロは控室を見渡した。
すると、同じスタジアムでバトルするのか、エリカが他のスタジアムのバトルを見ていた。
「他のファイターはどうなってんの?」
「さっき、アンドウセンパイが勝った」
後でレイコから今日のバトルの様子は全て見る予定だが、マシロはそう切り出す。
普通にエリカの隣に座った事でエリカも一瞬、面倒な顔をするが、マシロの問いに答える。
別のスタジアムの初戦に出ていたのか、モニターの一つにコウスケが映されている。
モニターにはコウスケと一緒にコウスケの使ったガンプラ、ユニコーンガンダム・ノルンも映されている。
コウスケは地区予選の段階では相手に合わせて多少の武装の変更はあったが、普通のユニコーンを使っていたが、世界大会に合わせてガンプラを強化して来たようだ。
本体へは目に見えての改造はされていないが、装備がライフルとシールドがバンシィ・ノルンの物に変更となり、脚部にはグレネードランチャー、バックパックにハイパーバズーカと火力方面が強化されている。
「他は?」
「さぁ? まだ第一試合だからな」
マシロは第一試合である為、他のスタジアムでも大抵は第一試合で早く決着が付いたスタジアムが第二試合に入っている。
その為、有名どころのファイターはまだバトルをしていない。
「けど、次はアオイの出番だ」
「タチバナ・アオイか……」
モニターの一つにアオイとタクトの姿が映されている。
「良く見とけよ。アオイの奴は以前とは比べものにならないくらいに強くなってるぜ」
「ふーん」
エリカはまるで自分の事のようにアオイの実力に対して自信があるようだ。
アオイのバトルシステムにガンプラを置く。
アオイは今年の世界大会に向けてガンプラを強化して来た。
すでに地区予選で使っている為、そのガンプラを知っているが、地区予選でアオイの新しいガンプラは性能をフルに使っていないように見えた。
アオイの新たなガンプラ、ビギニングガンダムB30はビギニング30ガンダムをベースに制作されている。
ビギニングガンダムBの射撃性能を引きついているが、近接戦闘を行う事も考えている。
両手にはスノーホワイトをベースにして制作されたハイパーバスターライフルを持っている。
元々スノーホワイトはウイングガンダムゼロのツインバスターライフルをベースにされている為、半分にして2つのライフルにする事は大して難しくは無かった。
腰には二連装ミサイルポッドを装備し、バックパックには実体剣が一つとビームサーベルが三本装備されている。
そして、両腕に1つづつ、脚部に4つづつ、バックパック2つのIFSファンネルが装備されている。
「行くぞ」
「うん」
準備が出来たところでバトルが開始される。
アオイの相手のガンプラはそれぞれ、ストライクフリーダムガンダム、ダブルオークアンタ、ガンダムAGE-FXとそれも遠隔誘導兵器を装備しているガンダム達だ。
バトルフィールドはデブリベルトでデブリで視界が悪い上に宇宙である為、ファンネルのような武器が最大限に能力を発揮できる。
「気を付けろよ。相手は全部ファンネル持ちだからな」
「そうだね」
視界が悪い為、アオイは慎重に事を進める。
すると、バトルフィールドの前方でビームが飛び交っている。
「始まってるみたい」
「どうする? 落着きまで待つか?」
「僕達からも仕掛けた方が良いと思う」
「だな。相手に勢いつかせる訳にもいかないしな」
ここで待って潰し合うのを待つのも作戦の一つだが、アオイは敢えて戦いの中に入る事を選んだ。
ビギニングガンダムB30はビームが飛び交う方へと向かう。
そこにはガンダムAGE-FXとストライクフリーダムが交戦している。
ガンダムAGE-FXはダイダルバズーカを装備しており、デブリを無視して攻撃している。
一方のストライクフリーダムは両手のビームライフルで反撃するも、ガンダムAGE-FXはデブリを盾代わりに使って攻撃を防いでいる。
「どっちから行く?」
「まずはFXから行くよ。あの火力は厄介だから」
ビギニングガンダムB30はガンダムAGE-FXに向けてハイパーバスターライフルを放つ。
ストライクフリーダムに気をとられていたが、ガンダムAGE-FXは直前で気づくが、回避が遅れてダイダルバズーカに直撃した。
ダイダルバズーカが爆発する前にバレルをパージして、ビギニングガンダムB30にスタングルライフルで牽制を入れる。
「アオイ! 2機を相手にするのは」
「分断する」
両手のハイパーバスターライフルでガンダムAGE-FXとストライクフリーダムを攻撃し、2機とも回避する。
3機が互いを牽制し合って睨みあいに入ろうとすると、ビギニングガンダムB30の後ろからダブルオークアンタがGNバスターソードで切りかかって来る。
「アオイ!」
「IFSファンネル!」
ビギニングガンダムB30の各部に装備されているIFSファンネルが展開される。
ビギニングガンダムB30の周囲に展開されたIFSファンネルは、独自にIFSフィールドを展開して、フィールド同士が結合し全方位にIFSフィールドが展開された。
それにより、ダブルオークアンタの攻撃を受け止める。
IFSフィールドで受け止めている為、ビギニングガンダムB30はハイパーバスターライフルをダブルオークアンタに向けるだけの距離を確保できる。
ビギニングガンダムB30がハイパーバスターライフルを放ち、ダブルオークアンタはとっさに肩のGNシールドで防ぐが、GNシールドが破壊されて体勢を崩す。
2機が交戦している隙を狙ってガンダムAGE-FXがスタングルライフルのチャージモードでビギニングガンダムB30を、ストライクフリーダムがビームライフルを連結させたロングライフルでダブルオークアンタを狙う。
体勢を崩していたダブルオークアンタは成す術もなく撃墜され、ビギニングガンダムB30はIFSフィールドを展開していた為、IFSフィールドで防いだ。
「あぶねー」
「フィールドを展開していなかったら不味かった」
攻撃を防いだところで、IFSファンネルの展開可能時間が限界を迎えた為、一度本体に戻す。
そして、2機を牽制する為にハイパーバスターライフルを放つ。
2機は回避して、ガンダムAGE-FXはデブリの影に隠れ、ストライクフリーダムはバックパックのスーパードラグーンを展開する。
「少し耐えてくれ! ファンネルがもう少しで使えるようになる!」
「分かってる!」
ストライクフリーダムの攻撃をビギニングガンダムB30はデブリを使いながら防ぐ。
それでもかわせない攻撃は腕に装備したIFSファンネルからIFSフィールドを直接展開するIFSシールドで防いで行く。
「アオイ!」
「ファンネル!」
本体に戻した事で、短時間ながらもIFSファンネルの再展開が可能となり、ビギニングガンダムB30は再びIFSファンネルを展開する。
ストライクフリーダムはスーパードラグーンとビームライフル、レールガン、胸部のビーム砲を使ってのフルバーストを行うが、ビギニングガンダムB30はIFSファンネルを前方に集中させて、最大出力のIFSフィールドを使って防ぐ。
「これで……」
その間に両手のハイパーバスターライフルを連結させて、スノーホワイトの状態にする。
そして、最大出力でスノーホワイトを放つ。
以前はその威力に耐える事が出来ずにまともに使えなかったスノーホワイトだが、今のビギニングガンダムB30ならば、十分に扱える。
射線上のデブリごとスノーホワイトから放たれたビームはストライクフリーダムを吹き飛ばす。
「後一機だ!」
「FXはどこに……」
ストライクフリーダムの相手をしている間にガンダムAGE-FXの姿を見失っていた。
デブリの影に隠れたガンダムAGE-FXはいつの間にか、ビギニングガンダムB30の背後に回り込んで、腕部のビームサーベルで切りかかる。
その攻撃をビギニングガンダムB30は何とか回避し、スノーホワイトをハイパーバスターライフルに分離させて反撃する。
だが、ガンダムAGE-FXはCファンネルを展開して防ぐ。
「固い……」
「アイツ……ファンネルにIフィールドを積んでやがる!」
ビギニングガンダムB30のハイパーバスターライフルをCファンネルで防げる最大の理由はそこにあった。
Cファンネルの一つ一つに特殊塗装を施しIフィールドの機能を持たせる事で高い防御力を得ている。
「なら……」
遠距離での攻撃では厳しいと判断したアオイは右手のハイパーバスターライフルを左手の物にドッキングさせて、三本のビームサーベルを抜いて接近戦に切り替える。
ガンダムAGE-FXもスタングルライフルをCファンネルを組み合わせて応戦して来る。
Cファンネルをかわし、スタングルライフルをIFSシールドで防ぎながら、ガンダムAGE-FXに接近する。
「もう少し……」
ガンダムAGE-FXも簡単に接近を許す気は無い。
Cファンネルを駆使して、ビギニングガンダムB30の道を塞いでくる。
ビギニングガンダムB30は腰のミサイルを放ち、前方のCファンネルを破壊する。
そして、遂には接近して、ビームサーベルを振るう。
ガンダムAGE-FXは両腕からビームサーベルを出して受け止める。
「このまま一気に押し込め!」
ビギニングガンダムB30は左手に持っていたスノーホワイトを手放すと、バックパックの実体剣を取ると、ガンダムAGE-FXの横から振るう。
両手が完全に塞がっている為、ガンダムAGE-FXはまともに防御態勢を取る事も出来ず、Cファンネルを間に入れる事も出来ずに胴体が真っ二つに両断される。
ガンダムAGE-FXが撃墜された事でアオイ達の勝利が決まった。
「なっ。アオイは強くなってただろ」
「まぁまぁかな」
アオイのバトルを見てエリカがそう言う。
だが、マシロからすれば想定の範囲内だ。
地区予選ではIFSファンネルは使ってなかったが、それだけの事だ。
「射撃の精度は世界上位レベル。格闘戦もそこそここなせるようになってる。それだけだろ。この程度の事は去年にバトルした時から分かってた事だ」
アオイは去年に比べて苦手だった格闘戦も世界大会で十分に使えるレベルとなっている上に、得意だった射撃の腕は単純な精度だけならすでに世界の上位のファイターともやり合える程だ。
しかし、マシロは去年の地区予選でアオイとバトルした時にここまでなら一年あれば十分可能だと踏んでいる。
「可もなく不可もないってところか」
「相変わらず。素直じゃないな。ここは素直に期待通りだって言っとけよ」
「別に期待はしてないし」
マシロからすれば、それは期待ではなくアオイの潜在的な才能を正当に評価したに過ぎない。
それを期待と言わない辺りがマシロらしいとエリカは内心思っていた。
「そんじゃそろそろ、アタシの出番だから。アタシの上がった腕前見せてやるよ」
「地区予選で見せて貰ったけどな」
「一言多いんだよ」
エリカは文句を言いながらも、会場の方に向かう。
エリカの実力もフランス予選で見ているが、マシロは他のスタジアムのバトルと並行して、エリカのバトルにも注目していた。
会場についたエリカはバトルシステムにガンプラを置いた。
以前にフランスでマシロと会った時に使っていたセイバーを改造して完成させたのがセイバーガンダム・エペイストだ。
右手にはマシロと参加した大会の賞品であるソードライフル、バックパックの アムフォルタスの横には同様に賞品のバスターソードを装備している。
脚部にはグリフォンビームブレイド、肩にはフラッシュエッジ2ビームブーメラン、腰にラケルタビームサーベルと近接戦闘を主眼に置いた装備を持っている。
左腕にはベース機と同じシールドを装備し、セイバーと同様にモビルアーマー形態への変形機構も残している為、高い機動力と格闘能力を持つ。
「さて……マシロの奴に目に物見せてやる!」
エリカのバトルするバトルステージも宇宙だ。
バトル開始早々にモビルアーマー形態に変形して、相手を探す。
機動力を活かした事もあり、早々に他のファイターのガンプラを見つける事が出来た。
「見つけたのは良いが……ここは宇宙フィールドだぞ」
エリカの見つけた相手のガンプラはザクⅡJ型である。
数あるザクの中でJ型は陸戦ようだ。
今回の宇宙用のフィールドでは相性が悪い。
無重力で思うように動けずにいた。
「可愛そうだが、運が悪かったと思ってくれ」
セイバーガンダム・エペイストはモビルアーマー形態でつけた勢いを殺す事無く、モビルスーツ形態に変形すると、ザクマシンガンを連射するザクⅡJ型に接近して、脚部のグリフォンビームブレイドでザクⅡJ型を蹴り飛ばして両断する。
「……次行くか」
流石に殆ど抵抗でき無い相手を一方的に撃破したのは後味が悪い為、すぐに次の相手を探す。
移動していると、不意にレールガンの弾丸が飛んで来て、セイバーガンダム・エペイストはシールドで防ぐ。
「今度こそは……って今度はバクゥかよ」
次の相手を見つけるも今度の相手も陸戦用であるバクゥだった。
バクゥはレールガンを連射するも、中々狙いが定まらずにセイバーガンダム・エペイストには当たらない。
セイバーガンダム・エペイストはバックパックのアムフォルタスを前方に向けて放つ。
まともに動けないバクゥはあっさりと撃墜された。
「仮にも世界大会なんだから陸戦用のガンプラでも宇宙戦が出来るように改造しとけよ」
愚痴りながらもエリカは残り1人を探しに向かう。
「……お前ら、どんだけ陸戦やりたかったんだよ!」
最後の1機は陸戦型のモビルスーツですらない61式戦車だった。
ここまで来るとエリカも突っ込む気力すらない。
大会規約では使用するガンプラはガンダムシリーズ内に登場する兵器のプラモデルと言う定義がある為、モビルスーツ以外でもモビルアーマーも使用が可能で極論を言えば、戦艦だろうと戦車、戦闘機だろうとガンダムの作中に登場していれば使える。
果ては要塞や大量破壊兵器の類もルール上は使える。
だが、実際にその手のプラモデルで参加しているファイターはまずいない。
基本的にチームではなく一人でバトルする為、その手のプラモデルでは一方的にやられるからで、総合的なバランスを考えればモビルスーツかモビルアーマーでなければ勝ち進む事は出来ないと言う結論に誰もが達している。
「……もう、どうにでもなれよ」
61式戦車は懸命に155mm2連装滑腔砲で攻撃するが、セイバーガンダム・エペイストはソードライフルを一発撃ち込んで61式戦車を破壊した。
これでエリスが一人三機を撃墜して勝利と言う形となったが、相手が陸戦用のガンプラで宇宙戦と言う余りにも無謀な事をしている為、素直に喜べない。
釈然としないながらも第一ピリオドを勝ち抜いて控室に戻ると、控室のファイター達が少しざわついている。
「何かあったのか?」
取りあえず、マシロに聞いて見る。
マシロは特別驚いている様子は見られない。
「うちのガウェインが負けたんだよ」
「マジかよ」
エリカもガウェインの事は知っている。
今でこそはマシロやアイラの影に潜んでいるが、元々はチームネメシスのエースとして名が知られている。
そんなガウェインが第一ピリオドを落としたのだ周りのファイター達がざわつくのも無理はない。
「相手は?」
ガウェインが負けた事は驚くべき事だが、それ以上に重要なのは勝った相手の事だ。
すぐにモニターで確認すると、ガウェインと同じバトルシステムにありすがいた。
ありすが観客のファンに向けてポーズを取っている辺り、ありすが勝者だと言う事が分かった。
「あの子ってお前の」
「アイツはうちでも特別だからガウェインに勝っても不思議じゃない」
マシロからすれば相手がありすだと言う事であれば、ガウェインが負けるのもうなずける。
それほど、ありすはクロガミ一族の中でも特別だからだ。
「にしても、ジムダガーね……ただのジム頭じゃん」
ありすの使ったガンプラは地区予選の時と同じだ。
ありすのガンプラは一般的にミキシングと呼ばれる技術で制作されている。
自分オリジナルのガンプラを作る際に簡単な方法としてあげられるのが、塗装とミキシングだ。
自分の好きな色で塗装する事で所謂専用機とする方法ともう一つはパーツの組み換えだ。
ガンプラの四肢のパーツを組み替える事で、手軽にオリジナルのガンプラとする事をミキシングと言う。
昔は四肢のジョイント部分がガンプラによっては、改造をしなければ合わないと言う事があったが、ガンプラバトルが始まってからは特殊な構造をしていない限りは四肢を初めとしたジョイント部分が統一されている為、組み換えが容易となっている。
そうやって、制作されたのがありすのジムダガーだ。
マシロの言うようにジムダガーのジム要素は頭部しかない。
頭部はパワードジムの物だが、胴体はストライク、両肩と左腕がストライクフリーダム、腰がフリーダム、右腕と脚部がアレックス、バックパックにIWSP、右手にジェガン用のビームライフルとジム要素は殆どない。
「まぁ、ガウェインは相手が悪かったとしか言いようがないな。次はうちのルーキーの出番だ」
別のモニターには専用のヘルメットとスーツを着込んで第一ピリオドに臨むアイラが映されている。
「キュベレイの改造機か……」
今まではマシロが貸していたサザビー改を使っていたが、今回からアイラも自分専用のガンプラであるキュベレイパピヨンを使っている。
そして、マシロはそれに見覚えがあった。
キュベレイから大きく改造されているが、それはかつてマシロがアイラに押し付けて来たキュベレイをベースにされている。
そんな複雑な思いを余所にアイラのバトルが始まる。
アイラの相手はジ・O、ガンダムスローネツヴァイ、ガンダムヴァサーゴだ。
「まずはアイツからだ!」
相手の3人はフィンランド予選でカイザーを倒しているアイラに狙いを定めているようだ。
だが、事前にその可能性は示唆されている事もあり、アイラは冷静に対処する。
「俗物が……ファンネル」
キュベレイパピヨンのファンネルを展開する。
対戦相手の3機のガンプラは自分達を包囲するファンネルに対して、背を預けるように陣形を取り全方位に対して持ちうるすべての火器を使って応戦する。
だが、小さい上に素早く動くファンネルを破壊する事は中々出来ず、ファンネルの数を減らす事は出来ていたが、ファンネルの攻撃で被弾し、ガンダムスローネツヴァイとガンダムヴァサーゴが撃墜される。
残りはジ・Oだけとなるが、ジ・Oはビームライフルで何とか最後のファンネルを撃墜する事に成功した。
「これで!」
「終わり」
何とか全てのファンネルを撃墜したが、ファンネルを撃墜する為に完全にキュベレイパピヨンから注意が離れていた。
その隙をアイラが見逃す筈もない。
最後のファンネルが撃墜されると同時にキュベレイパピヨンは腕部のビームガンをジ・Oに撃ち込む。
一発辺りの威力は大して高くない為、キュベレイパピヨンはジ・Oに反撃の隙を与えないように何度も撃ち込んだ。
そして、ジ・Oは体勢を整えて反撃をする事無く一方的な攻撃で撃墜された。
バトルを終えたアイラはホテルの自室に戻って来る。
流石にここまではバルトも気軽に出入りできない為、一人になりたい時には最適だった。
「あのファンネルの使い方は良かったぞ」
何故か自分より先に部屋にいるマシロの事をスルーしてアイラは被っているヘルメットを取る。
今更、マシロがここにいる理由や鍵はアイラが持っていると言う事には突っ込まない。
「それにしてもさ、そんなに疲れるようなバトルとも思えないけど?」
「別にそんなに疲れてないわよ」
マシロから見てアイラのバトルした相手の実力は凡庸で実際に圧勝している。
だが、マシロにはいつもよりアイラが疲れているように見えた。
「そう言う事にしといてやるよ」
マシロも深くは追及する事は無い。
今回はアイラにとっては初めての大舞台でのバトルである為、意外と緊張して疲れたのだと適当に納得しておく。
「で、何しに来たの?」
「そろそろ俺の一押しの奴が出て来るからな。お前もチェックしておけ」
マシロはテレビをつけてチャンネルを合わせる。
テレビにはどこかのスタジアムの様子が中継されている。
「まだ始まってないのか?」
予定ではそろそろ始まる筈のバトルが未だに始まっていないようだ。
「初戦から遅刻ギリギリか。大物なのかただのバカか……ようやく登場だ」
時間に遅れなければ失格にはならないが、本来は予定されている時間にはバトルを開始する為、開始時間よりも前に集まらなければならない。
まだ、第一ピリオドも序盤である為、時間が早い。
場合によっては寝過ごしたと言う事もあり得るが、大事な初戦を前に寝過ごして遅刻ギリギリだと言うのは初戦だからと言って特に気にしていないと言う事になる。
「来たな」
「……あああああああ!」
「何だよ。うるさいな」
バトル開始ギリギリで、ようやく最後の一組であるセイとレイジが会場入りした映像が映されるとアイラが叫ぶ。
「こいつよ! 赤い方が昨日、因縁つけて来た変な奴!」
「赤い方……レイジの事か。そんな事はどうでも良いから始まるぞ」
昨日、アイラが因縁をつけられたと言っていたが、その相手はどうやらレイジのようだった。
だが、マシロからすればそんな事はどうでも良く、セイとレイジのバトルの方に興味があるようだ。
「ビルドストライクを強化して来たか……」
二人が到着した事でようやく、バトルが開始される事になる。
マシロはバトルシステムに置かれた二人の新しいガンプラの分析に入る。
二人が地区予選の準決勝まで使っていたストライクガンダムの改造機であるビルドストライクガンダムを強化して来た。
外観からは武装を一新し、脚部などに若干の改良を加えただけに見えるが、果たしてそれだけなのかは未だに未知数だ。
そんな、二人の新たなガンプラ、スタービルドストライクのバトルが開始される。
セイとレイジの初戦の相手はゲーマルク、スーパーカスタムザクF2000、デュエルガンダムASの3機だ。
「性能が格段に上がっているな。アレはストライカーを新しくしただけじゃないな」
バトルが始まるが、始まったばかりと言う事もあって誰もが様子見の段階だ。
それでも、地区予選までのビルドストライクとスタービルドストライクとの性能差は見て取れる。
「ただの性能が上位互換だけならつまらんガンプラのままだが……」
今のところはビルドストライクの性能を向上させただけに過ぎない。
ビルドストライクの時点でマシロのガンダム∀GE-1と互角で総合的な性能では上回っている為、それ以上の性能を持つスタービルドストライクはすでに世界トップレベルの性能を持っていると言っても過言ではない。
それでも、まだ物足りない。
バトルが進みデュエルガンダムASは持っていたバズーカ「ゲイボルグ」を放つ。
本来はレールバズーカであるゲイボルグだが、デュエルガンダムASのファイターはビームバズーカとして改造している。
そして、スタービルドストライクは左腕のシールドでビームを防いだ。
「ビームが……」
「今のは……消した? いや、ビームその物を粒子に戻して吸収したのか」
スタービルドストライクは左腕のシールド、アブソーブシールドでデュエルガンダムASのビームを完全に消して見せた。
だが、ただ消しただけではなくビームを粒子に変換して取り込んでいた事をマシロは辛うじて見逃さなかった。
ビームに対してIフィールドのように弾く防御系の能力を持たせると言う事は何年も前に確立されている技術ではあるが、ビームを粒子に戻した上で自機に取り込むと言う事は初めての事だろう。
わざわざ、そんな事をして取り込まずとも、プラフスキー粒子はバトルシステム内に充満している為だ。
「消すのではなく、吸収した……」
わざわざ、ビームを弾いて防ぐのではなく、粒子に変換して取り込むと言う行動をするという事は必ず意味がある。
ゲーマルクがデュエルガンダムASごとスタービルドストライクにビームを放つ。
デュエルガンダムASは消滅するが、スタービルドストライクはアブソーブシールドで吸収して防ぐ。
「やっぱり、粒子を吸収してんだ」
マシロは2度目でそう確信した。
ビームを吸収したスタービルドストライクにスーパーカスタムザクF2000が火器を一斉掃射する。
スタービルドストライクはミサイルを専用のビームライフル、スタービームライフルで迎撃し、弾丸を回避する。
「ふーん。そう言う事か。で、ビームを吸収したって事はだ」
そして、スタービルドストライクはディスチャージシステムを起動し、バックパックのユニバースブースターからプラフスキーパワーゲートを形成すると本体がゲートを抜ける。
すると、吸収した粒子を全面に展開し、粒子の翼を展開した。
「何なの……」
「吸収した粒子を全面展開、俺の∀GEのバーストモードと原理自体は同じだが……」
スタービルドストライクのディスチャージシステムは原理としては機体内のプラフスキー粒子を全面に展開すると言う物で、それ自体はマシロのガンダム∀GE-1のバーストモードと同じだ。
だが、ガンダム∀GE-1のバーストモードは元々、機体の中に蓄積している粒子を使っているが、スタービルドストライクのディスチャージシステムは相手のビームを利用して粒子を大量に集めている分、解放時の粒子量はバーストモードの比ではない。
尤も、バーストモードの方が出力は低いが、機体内の粒子で発動出来る分、発動が容易だと言う利点もある。
「どうかしたか? アイラ」
「……何でもないわ」
マシロですら肉眼で見える程の高密度の粒子の翼をスタービルドストライクは展開している。
その為、普段から粒子が見えているアイラは余程粒子が眩しいのか目を細めている。
粒子の翼、プラフスキーウイングを展開するスタービルドストライクに対してゲーマルクはマザーファンネルを展開して応戦する。
マザーファンネルから更にチルドファンネルを展開する。
スタービルドストライクを狙うファンネルだが、スタービルドストライクの驚異的な機動力を前に成す術がないどころか、すれ違っただけで風圧で破壊されてしまう。
「速いな」
プラフスキーウイングを展開するスタービルドストライクはバーストモードを使ったガンダム∀GE-1と同等かそれ以上の機動力を発揮している。
「だが、それ程の粒子を使っている以上、発動限界時間が短い上に操作性は最悪の筈。どうする?」
圧倒的な機動力を発揮する為に、スタービルドストライクは大量の粒子を使用している。
幾ら、相手のビームを利用して粒子を集めているとはいえ、これだけの粒子を長時間使い続ける事は不可能だ。
すぐに粒子が尽きる上に、それだけの速度のガンプラを操作するのは至難の技だ。
だが、スタービルドストライクはスタービームライフルでゲーマルクのマザーファンネルを一発で撃破し、ゲーマルク本体を撃ち抜いて撃墜する。
その勢いのまま、スーパーカスタムザクF2000に向かって行く。
スーパーカスタムザクF2000も腕部のザクマシンガンで応戦するが、スタービルドストライクの機動力に追いつけない。
旋回したスタービルドストライクはビームサーベルを抜いて、ザクⅡF2000に突撃する。
スーパーカスタムザクF2000はデッドエンドGヒートホークを構えるが、反撃する前にスタービルドストライクのビームサーベルで一刀両断されて終わった。
「アイツ……中々やるじゃない。まぁ、私やマシロに比べれば全然まだまだだけど」
(機動力重視の汎用型ってのはビルドストライクと同じだが、基本性能は今大会じゃ最高レベル。その上でビームを吸収する事によるビームに対する圧倒的な防御力とそこからの粒子を一気に解放するシステムを使えば、俺の∀GEと互角以上の機動力にライフルの形状的に粒子を火器に回せるとすれば、バーストモードを使ったハイメガドッズや魔王のサテライトキャノンに匹敵する火力。弱点の少ない汎用型としての性能を突き詰めた上で勝負の決め手となる切り札を用意して来たか……それだけのガンプラを作るイオリ・セイとそれを完璧に扱いこなして来たレイジ。面白い……正直予想以上だ。)
以前にセイとレイジとバトルした際にマシロは汎用機である事をつまらないと評価した。
だが、セイはビルドストライクの元々持つ、機動力を重視した汎用性を強化して来た。
素直にマシロのアドバイスを聞く気は無いと言う事なのだろう。
そして、完成したスタービルドストライクの基本性能はこのバトルを見るだけでも高いと言う事が分かる。
「マシロ?」
レイジと揉めたアイラはそこまで評価してはいないが、マシロは完全にこの大会においてセイとレイジを倒すに値する敵だと認識した。
それから、他のバトルを観戦するも、セイやレイジ程のファイターが現れる事無く、マシロもリアルタイムでの観戦に飽き始めている。
第一ピリオドのバトルは全てチームのファイターに録画させている為、リアルタイムで見る必要もない。
「ようやくお出ましか」
第一ピリオドも大詰めに入ったところで、飽きてベッドで寝転がっていたマシロが起き上がる。
今年の大会において最も警戒すべきだとレイコが言っていた相手の登場だからだ。
「PPSEのワークスチーム、三代目メイジンカワグチ。二代目のようにつまらんバトルはしてくれるなよ」
マシロと同じ特別参加枠での出場となるPPSE社のワークスチーム。
ガンプラバトルは玩具のバトルとはいえ、世界大会を開く程の規模で世界に広まっている為、ファイター個人に企業がスポンサーとしてつくと言うケースは珍しくはない。
そのファイターが成績を残す事で企業側としても利益を得る事が出来るからだ。
その中でもPPSE社はプラフスキー粒子に関する技術を一手に独占し、ガンプラバトルを運営していると言う事もあって、大会に入れる力は他の企業とは比べものにならない。
そんなPPSE社が今年は満を辞して三代目メイジンカワグチが社内の優秀な人材を集めて結成したワークスチームを引き連れての参加だ。
今年の優勝候補の大本命であるマシロに勝てる可能性が最も高いとして注目されている。
「アイツがそのメイジン? メイジンって言うくらいだから結構な歳だと思ってたけど、マシロと同い年くらいじゃない」
「そのようだ……どっかで見た気がするが……まぁ、良いか」
「良い訳?」
「良いんだよ。良いか、アイラ。良い機会だ言っておくが、仮面キャラってのは早々に素性を明かしちゃ駄目だし、例え素性を知っていても素顔の名前を呼ぶ事はするなよ。仮面をつけて偽名を名乗ってんのに本名で呼ばれるとか軽い羞恥プレイだからな。仮面キャラって点はメットで素顔を隠しているお前も同じだから滅多に素性を明かすなよ。今後、チーム以外で知り合いになった時とかは適当に偽名でも名乗ってろ」
そう言うマシロをアイラは軽く流す。
マシロが理解出来ない事を言い出す事はいつもの事で、それに対して真面目に考えるだけ馬鹿だと言う事は約1年の間でアイラは学習している。
それでも、いつ役に立つのか分からない為、心の隅にでも留めて置く程度で良い。
「要するにメイジンの中の人はどうでも良いんだよ。重要なのは強いか弱いかだ」
マシロにとってはメイジンの素性はどうでも良かった。
マシロにとって重要なのは倒すに値するファイターか否かだ。
それを見極める為の三代目メイジンカワグチのデビュー戦が始まった。
バトルフィールドは雪原、メイジンの使用するガンプラはポケットの中の戦争に登場するモビルスーツ、ケンプファーの改造機であるケンプファーアメイジングだ。
メイジンのバトル相手はジンクス(連邦軍仕様)、ガンダムF91(ハリソン機)、陸戦型ガンダム(ジム頭)の3機だ。
「ケンプファー。三代目だけにエクシアじゃないのかよ」
バトルが始まり陸戦型ガンダム(ジム頭)が両手のマシンガンを乱射しながらケンプファーアメイジングに接近しようとする。
ケンプファーアメイジングは手持ちのアメイジングライフルを放つ。
ビームが陸戦型ガンダム(ジム頭)の頭部を撃ち抜き陸戦型ガンダム(ジム頭)の頭部が吹き飛ばされて仰向けに倒れる。
すぐにジンクス(連邦軍仕様)がGNロングビームライフルを放つが、ケンプファーアメイジングには当たらない。
GNロングビームライフルでは埒が明かないと判断した、ジンクス(連邦軍仕様)はライフルのバレルとパージしてGNビームライフルとして、GNビームサーベルを抜いて近接戦闘を仕掛けようとするが、GNビームライフルを抜こうとした隙をついてケンプファーアメイジングはアメイジングライフルでジンクス(連邦軍仕様)の頭部を撃ち抜いた。
頭部を撃ち抜かれたジンクス(連邦軍仕様)はそのまま地に落ちていく。
その時点でケンプファーアメイジングは最後の相手であるガンダムF91(ハリソン機)の方を向いている。
ガンダムF91(ハリソン機)はビームライフルを撃つも、ケンプファーアメイジングは最小限の動きで回避してアメイジングライフルで頭部を撃ち抜いた。
最後のガンダムF91(ハリソン機)を撃墜し、メイジンの勝利が決まる。
「大したもんだ」
「そうなの?」
「世界大会で全機をヘッドショットを狙ってやってんだ。余程の実力がないと無理だろ」
メイジンは3機全て頭部を撃ち抜いている。
相手も地区予選を勝ち抜いて来たファイターだ、マシロからすれば弱いが実力がない訳ではない。
それを正確に一発で撃ち抜いている辺り、メイジンの実力が伺える。
「それに全力を出してない」
意図的に頭部を狙っていると言う事はそれだけ余裕があると言う事だ。
だが、それ以上にマシロにはメイジンが全力を出さずに抑えていると感じている。
メイジンの事情は知らないが、メイジンの全力はこの程度ではない。
「それだけじゃない。あのケンプファー、企業が全面的にバックアップしてるだけあって基本性能が半端ない。ホント、セコイよな大人って奴は」
ケンプファーアメイジングはPPSE社が最新の技術を使っているだけあって、個人レベルの技術で制作できる代物ではない。
特にPPSE社はガンプラバトルにおいてあらゆるノウハウを持っている。
尤も、マシロもマシロで各分野で天才と言われている兄弟達を使って新型のガンプラを制作している為、人の事は言えない。
「全く……今年は本当に豊作の年だよ。色々と目移りしそうだ」
この一戦だけでもメイジンの実力とケンプファーアメイジングの性能が高いと言う事は分かった。
他にも去年の出場者の多くが去年よりも強くなって来ている。
初出場のルーキーを含めて今年の世界大会はマシロにとっては非常に満足の行く相手が多い。
メイジンのバトルが終わった事で第一ピリオドにおける注目しているファイターのバトルが終わった為、マシロはテレビを消した。
初日の第一ピリオドが問題が起こる事なく終わりを迎えた。
日が落ちた会場は観客もいない為、非常に静かだ。
第一ピリオドが終わり、第一ピリオドのバトルの分析を終えたメイジンはセコンドのアラン・アダムスと共にホテルの部屋に戻って来る。
部屋に戻るとメイジンはサングラスを取り、メイジンカワグチからユウキ・タツヤに戻る。
「お疲れ様」
今日一日メイジンカワグチとして表舞台に立ったタツヤをアランが労う。
「今日のバトルはメイジンの実力を示す素晴らしいバトルだったよ」
「当然の事だよ」
「確かにね。それはさておき、何故、彼らに素顔を? 一応、メイジンカワグチの素性に関しては秘匿する必要があるんだけど」
「さて……気が触れたとしか言いようがないな」
第一ピリオドのバトルが終わった後、セイとレイジがタツヤの前に現れた。
セイはタツヤの通う聖鳳学園の中等部に通っている。
そして、セイとレイジは2度に渡り、タツヤに敗北をしている。
タツヤの前に現れた二人はメイジンカワグチはユウキ・タツヤではないかと問い詰めて来た。
本来、メイジンカワグチの素性は一般には秘匿されている。
だが、タツヤはサングラスを取って素顔を見せた。
その理由をタツヤは誤魔化す。
「そう言う事にしておくよ」
アランも何かしらの意図があって、タツヤが素顔を晒したと考えるが言わないと言う事はそれだけの理由がある。
そう考えて、タツヤの言葉で納得しておく。
(これは僕の個人的な理由だからね。イオリ君とレイジ君……彼らはマシロとは別の道で同じところを目指している彼らだからこそ、その強さを乗り越える必要があるんだ)
マシロは兄弟の手を借りる事はあっても、一人で戦い続けている。
それがマシロの強さと言える。
一方のビルダーとしての実力は高いがファイターとしての実力がないセイとファイターとしての素質が高いが、ビルダーとしての能力がないレイジの二人は足りない物を補い合って戦っている為、マシロとは対極と言える。
それでもマシロもセイとレイジは同じ世界最強の座を目指している。
二人で補い合う事で世界のファイター達と対等に戦う事の出来る強さだ。
だからこそ、そんな二人の強さを超える事で、マシロのいる高見へとタツヤは登ろうとしている。
二人に素顔を晒したのは、メイジンカワグチとしてではなく、ユウキ・タツヤとして世界大会で戦うと言う決意を込めての事だった。
第一ピリオドのバトルを一通り確認したマシロはバルトに呼び出されていた。
アイラがまた、勝手に出かけて行方が分からないでいる為、その捜索の為らしい。
マシロの他にフラナ機関のスタッフたちも、アイラの捜索に駆り出されている。
「見つけ次第、アイラを確保して連れて来い」
バルトが陣頭指揮を執る中、マシロはバルト達に気づかれる事無く、近くの茂みを横目で見ていた。
バルトの指示が行き渡ったところで、散開してアイラの捜索が開始される。
「さて……どういう状況なんだよ」
マシロが横目で見ていた茂みの後ろ側が見える位置に遠回りで移動したマシロがそう言う。
見ていた茂みにはアイラが隠れていたが、予想外の事態としてアイラの他にレイジもいた。
アイラがレイジと揉めたと言う事は軽く聞いているが、状況が呑み込めない。
「流石に出て行く訳にもいかないな」
アイラは今はバトル中とは違い素顔を晒している。
レイジがいる以上は、下手に接触は出来ない。
「何か面白そうだし、もう少し眺めていくか」
マシロは二人にばれないように隠れた。
それから、二人の様子を観察する。
距離がある為、会話の内容までは聞き取れなかったが、やがてレイジの方がアイラに何かを放り投げて帰って行く。
レイジが完全に見えなくなった頃合いを見計らってマシロがアイラに近づく。
「よっ」
後ろから声をかけるとアイラはビクりとして振り向く。
声をかけたのが、マシロであると確認して安心するも、さっきの事を見られていたかも知れないと気付くと気恥ずかしくなり視線をあからさまに逸らす。
「……いつからいたのよ?」
「そんな事よりも俺はレイジと茂みの中で何してたのか気になるだけど」
そんなアイラの心情をマシロが察する事も気にする事は無い。
重要なのはアイラとレイジがあんなところで何をしていたかだ。
「……マシロには関係ないわよ」
「関係あるね。アイツ等は俺の方が先に目を付け、唾を付けたんだ。勝手に変なフラグでも立てられると困るんだよ」
「は? 何言ってんのよ」
「要するにアイツ等は俺の獲物なんだよ」
アイラに釘を刺すマシロの目は普段のマシロとは違い鋭く獲物を狩る獣の目を思わせた。
「別にアイツの事なんて……ガンプラバトルに熱中してる奴なんて碌な奴じゃないに決まってるし」
「なら良いけど。後、そろそろ帰るぞ。さっき、大会の運営から次のルールが公表されたからな」
アイラは自分に言い聞かせるようにそう言う。
それでマシロもいつものマシロに戻る。
すでに第二ピリオドのルールが各ファイターに公表されている。
ネメシスがアイラの捜索に人員を裂いたのも、その打ち合わせの必要があるからだ。
アイラもこれ以上、出歩くと後で面倒な事になる為、大人しくマシロと共に帰る。
そして、夜が明け第二ピリオドの全員参加のバトルロワイヤルの幕が開ける。