ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle43 「ガンプラレース」

 4日目の第4ピリオドは1対1のバトルだが、特殊ルールとして運営側が用意した武器以外の使用は禁止されている。

 使う武器はクジで決まる為、使い勝手のいい武器を引き当てる運とどんな武器でも使いこなせる技術が必要とされる。

 

「こいつで一刀両断にしてやるよ!」

 

 マシロの対戦相手のガンプラ、クロスボーンガンダムX3が引き当てた武器であるアロンダイトを構える。

 相手のファイターは攻撃力の高い武器を引き当てた事で、優勢になった気になっていたが、すぐに固まる。

 

「残念」

 

 マシロの引き当てた武器はジャイアントガトリングガンを構えていた。

 クロスボーンガンダムX3のアロンダイトとジャイアントガトリングガンでは間合いが圧倒的に違う。

 クロスボーンガンダムX3はアロンダイトの威力を発揮する事無く、ジャイアントガトリングガンで蜂の巣にされて終わった。

 

 

 5日目の第5ピリオドは殲滅バトルだ。

 各ファイターは迫り来る1000機のガガを制限時間内に何機撃墜出来るかを競う。

 また、ガガの特攻による自壊は撃墜数にカウントされず、尚且つ、制限時間が来るまに戦闘不能となれば撃墜数が0となる。

 半数の500になるとガガは一斉にトランザムを使う為、第5ピリオドで大半のファイターはポイントを獲得できないファイターが続出していた。

 

「殲滅戦とは俺の∀GE-1の為にあるルールじゃないか」

 

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはハイパーメガドッズライフルを構える。

 

「一機残らず殲滅してやるよ!」

 

 ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはバーストモードを起動する。

 バーストモードにより威力が向上した、ハイパーメガドッズライフルが迫り来るガガに放たれた。

 元から高い威力の上に強化されて圧倒的な威力となったビームが射線上のガガを一掃して行く。

 ビームを掃射しながらガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは向きを変えて、瞬く間に1000機のガガを一機も残さずに殲滅した。

 

 6日目の第6ピリオドは3対3のチーム戦だ。 

 チーム分けによってはマシロを倒せるかも知れないと言う希望を持ったファイターも少なくなかったが、そんな希望は完全に打ち砕かれた。

 マシロとチームを組む事となったファイターはメイジンとアイラの2人だ。

 今年の優勝候補の本命であるマシロとメイジンに加えて、カイザーを破って出場しているアイラの組み合わせとなり、相手には同情と同時に優勝候補を一手に受け付けてくれた事に感謝された。

 そんな3人の対戦相手のガンプラは∀ガンダム、Hi-νガンダム、ゴッドガンダムの3機だ。

 バトルが開始されると、キュベレイパピヨンがファンネルを展開し、ガンダム∀GE-1 セブンスソードが突っ込む。

 ファンネルを∀ガンダムがビームライフルで応戦していると、ガンダム∀GE-1 セブンスソードがCソードで切りかかる。

 ∀ガンダムがシールドで受け止めるも、Cソードにシールドは真っ二つに切り裂かれた。

 とっさにシールドを捨てて後退していた為、本体へのダメージは無かったが、∀ガンダムのファイターの注意がガンダム∀GE-1 セブンスソードの方に向いていた為、ケンプファーアメイジングがアメイジングロングライフルで狙撃し、撃墜された。

 

「ちっ」

 

 ∀ガンダムを仕留め損ねたガンダム∀GE-1 セブンスソードはフィンファンネルを使ってキュベレイパピヨンのファンネルと相手をしていたHi-νガンダムの方に向かう。

 

「邪魔」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはファンネルを蹴って、フィンファンネルにぶつける。

 そして、Hi-νガンダムにCソードで切りかかるが、HI-νガンダムは回避してバルカンで牽制する。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはショートドッズライフルでフィンファンネルを撃墜しながら、Hi-νガンダムを攻撃する。

 Hi-νガンダムはビームを回避しながらビームライフルを向けるが、ケンプファーアメイジングの狙撃でビームライフルが破壊され、ファンネルの集中砲火で撃墜された。

 

「またかよ!」

 

 2機目も撃墜し損ねていると、ガンダム∀GE-1 セブンスソードの背後にゴッドガンダムが回り込んでいた。

 

「せめてお前だけでも!」

「見え見えなんだよ」

 

 背後のゴッドガンダムはゴッドフィンガーを繰り出すも、マシロは背後に回り込んでいた事は気づいていた。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはシールドからビームサーベルを展開する。

 ゴッドガンダムがゴッドフィンガーでガンダム∀GE-1 セブンスソードを攻撃するよりも早く、ケンプファーアメイジングがゴッドガンダムの右手を狙撃した。

 

「余計な事を」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは、振り向きざまにゴッドガンダムをシールドのビームサーベルで一刀両断して撃破した。

 

 

 

 

 

 

 6日目の第6ピリオドが終わり、ネメシスでもミーティングが行われている。

 チームと言ってもホテルのマシロの部屋で、マシロとレイコの二人だけしかいない。

 ここまで来ると決勝トーナメントの事も念頭に入れる為、決勝トーナメントに出場する可能性のある、アイラやフラナ機関関係者にこちらの情報を少しでも与えない為だ。

 

「6日目が終わり、マシロが全勝でアイラさんが5勝と言う結果となっている訳だけど」

 

 この時点でマシロは全てのピリオドで勝利し、アイラもマシロに背後から攻撃を受けた第2ピリオド以外は全て勝っている。

 ガウェインは第1ピリオドのバトルと第3ピリオドのスポーツで敗北し、第5ピリオドでガガを捌き切れずに戦闘不能となり、ポイントを取り損ねている。

 3つ落とした時点で、ガウェインの決勝トーナメントへの出場は絶望的となった。

 

「現時点でマシロと同じ全勝でここまで来ているファイターはマシロと同じ特別枠のメイジンカワグチ、アメリカ代表のニルス・ニールセン。イタリア代表のリカルド・フェリーニ。アルゼンチン代表のレナード兄弟。日本代表からは、イオリ・セイ、レイジ組、ヤサカ・マオ、タチバナ・アオイとマシロを含めて8組みね」

 

 6回も異なるルールでバトルを行えばどこかで負ける可能性は高いがマシロを含む8人のファイターは一度も負けずにここまで勝ち抜いて来ている。

 優勝候補であるマシロとメイジンは驚く程ではないが、8人の中で半分が今年初めての出場となる。

 セイ、レイジ組もレイジの怪我があったが、レイジがギリギリのところで踏ん張って何とか勝ち抜いて来た。

 

「それを追うのがフィンランド代表のアイラさんに、フランス代表のシシドウ・エリカ。日本代表のアンドウ・コウスケ、ありす。タイ代表のルワン・ダラーラ、イギリス代表のジョン・エアーズ・マッケンジーの6組みの計14組が今のところの決勝トーナメント進出の本命ね」

「今年の日本勢は優秀だな。全員が決勝トーナメントに手が届く位置にいる」

 

 日本は参加枠が最も多い5つだが、だからと言って毎年のように成績を残す訳でも無い。

 だが、今年は日本の出場枠から出場した5人が決勝トーナメントに出場する可能性がある。

 その中でもセイ、レイジ組、マオ、アオイは全勝している。

 エリカは第4ピリオドで使い慣れない武器を引き当てて敗北し、コウスケは第3ピリオドでルールもまともに知らないマイナーな競技をする事となり敗北、ありすは第5ピリオドで敗北している。

 尤も、マシロの見立てではありすは第5ピリオドで適当なところでやられているように見えた。

 

「全勝組は明日の第7ピリオドで勝てば決勝トーナメント進出が確定するわ」

「負ければ崖っぷちだけどな」

 

 マシロを含む8組みは明日の第7ピリオドで勝てば、第8ピリオドを待たずに決勝トーナメント進出が確定する。

 だが、そこで落としてしまえば、第8ピリオドで負ける訳には行かなくなる。

 現在、全勝組と一敗組は14組、決勝トーナメントに進めるのは上位16組だ。

 一敗組の後には二敗組が多数残されている。

 全勝組が残り2つを落とすか、一敗組がどちらか1つを落とした場合、残りの椅子を二敗組と争わねばならない。

 特に全勝組はここまで順当に勝ち進んでいる分、この局面での一敗は第8ピリオドにも影響しかねない重要な一戦となる。

 その為、全勝組にとっても明日の第7ピリオドは最後の第8ピリオド以上に大事なバトルだ。

 

「明日の第7ピリオドの種目が発表されているわ。種目はレース」

「俺向きな種目じゃないか」

 

 すでに大会運営から第7ピリオドの種目がレースだと発表されている。

 決勝トーナメント行きの重要な場面で、速さを競うレールはマシロにとっては好都合だ。

 マシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードは格闘戦だけでなく、機動力も重視している。

 並のガンプラでは、高速飛行形態に変形したとしても、スピードでは敵わないだろう。

 

「使用ガンプラや装備の規定は無し」

「何でもありか。本当に俺向きな種目をここで持って来たな」

 

 第7ピリオドではガンプラや装備は特に規定されていなかった。

 つまりは、機動力に特化したガンプラだけでなく、武装をする事で他のファイターを妨害する事も許可されていると言う事だ。

 細かいルールが指定されていれば、それに従わないといけないが、好きにやっていいのであれば、マシロは好き勝手に出来る。

 

「そうね。だけど、油断はしないでよ」

「俺が負けるとかありえないな」

 

 マシロは相変わらずの自信だが、今回は普通のバトルではなくレースだ。

 スピードには自信があると言っても、相手を倒すのでなく、いち早くゴールに辿りつかなくてはならない。

 このルールなら直接バトルをする必要が無い為、十分にマシロに勝つ事も出来る。

 重要な一戦でマシロが無茶苦茶な事をやり出して、足元を掬われない事をレイコは願った。

 

 

 

 

 

 

 7日目の第7ピリオドが各スタジアムで開始している。

 終盤と言う事もあり、確実に勝とうと躍起になるファイターやすでに決勝トーナメントに進む事が出来ない事が確定し、明らかにやる気が見られないファイター、どうせ、決勝トーナメントに進めないのであれば、せめて決勝トーナメントに進める可能性のあるファイターを妨害するなど、各ファイターによってレースに対する姿勢が違う。

 マシロのレースの出番となり、バトルシステムにガンプラを置く。

 今回は陸上での機動力の高いフルアサルトグランサではなく、セブンスソードでレースに挑む。

 レース開始のシグナルと同時にガンダム∀GE-1 セブンスソードは隣のスターゲイザーをCソードで切り裂いて破壊する。

 武装が許可されている時点で他のファイターを攻撃して妨害する事は予想され、すでに終わったレースでも行われているが、レース開始直後から潰しにかかる事は無かった為、他のファイターの間でも動揺が広がっている。

 スターゲイザーを破壊してすぐに、ベースジャバーに乗っていたガンダムMk-ⅡをCソードで切り裂く。

 ガンダムMk-Ⅱを撃破すると、ショートドッズライフルでガンダム試作1号機とΞガンダムを破壊する。

 2機を破壊してすぐに、混乱に乗じて先に進もうとしていたアドバンスドヘイルズを腰のビームサーベルを投げつけて撃破する。

 流石にここまで暴れた時点で、混乱も収まりかけてV2ガンダム(ザンスパインカラー)がガンダム∀GE-1 セブンスソードにビームライフルを向けるが、右腕ごとCソードで落とされた。

 追撃を行おうとするが、ビームの横やりが入る。

 

「やり過ぎなんだよ!」

「エリカもいたのか」

 

 エリカのセイバーガンダム・エイペストがバスターソードを振り下ろして間に入る。

 

「レースだってのによ!」

「ルール上は問題ない」

「そうかよ!」

 

 セイバーガンダム・エペイストはバスターソードで、ガンダム∀GE-1 セブンスソードに何度も振るうが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはヒラリと回避して当たらない。

 エリカがマシロの相手している間にV2ガンダム(ザンスパインカラー)は進もうとするも、ガンダム∀GE-1 セブンスソードが腰のショートソードを投擲して倒す。

 

「それにしてもエリカも運がないな。俺と同じレースとかさ」

「そうでもねぇよ! 去年の借りをここで返せんだからよ!」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードがバスターソードの間合いから距離を取ると、セイバーガンダム・エイペストはアムフォルタスを放つ。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードを突き出してビームを弾いた。

 ビームが弾かれるとセイバーガンダム・エイペストはバスターソードを投げ捨てた。

 バスターソードは威力は高いが、大振りとなる為、マシロのガンダム∀GE-1 セブンスソードを相手にするには不向きだ。

 セイバーガンダム・エペイストはソードライフルのソードモードを構えると、距離を詰める。

 ソードライフルの連撃をガンダム∀GE-1 セブンスソードは余裕を持って回避している。

 

「ほらほら。俺はこっちだよ」

「舐めやがって!」

 

 ソードライフルの攻撃に加えて、脚部のグリフォンビームブレイドの攻撃を合わせてセイバーガンダム・エイペストは責め立てるが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは守りに徹している。

 

「エリカとのダンスも悪くないけど、そろそろ時間だから終わりさせて貰う」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはセイバーガンダム・エイペストの蹴りをシールドで受け止めた。

 その後、蹴りとは逆の軸足を払って体勢を崩した。

 そして、空中でグリフォンビームブレイドの出せない脹脛の部分を掴んだ。

 

「うん。無事に戻って来てくれて何よりだ」

 

 マシロとエリカが戦っている間に残っていたZガンダムとガンダムAGE-2 ノーマルがレールを始めていた。

 レールはコースを3周しなくてはならない為、絶対にスタート時点に戻って来る。

 レースを始めていたZガンダムとガンダムAGE-2 ノーマルが変形した状態で1周を終えて、スタート地点へと戻って来ている。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはセイバーガンダム・エイペストを振り回して勢いをつけると戻って来た2機に向かって投げ飛ばす。

 

「マシロ!」

 

 セイバーガンダム・エイペストはガンダムAGE-2 ノーマルに直撃して体勢を崩したところにショートドッズライフルを撃ち込んで2機を仕留めた。

 

「悪いな。俺の為にコースを走って貰ってさ」

 

 残ったZガンダムをガンダム∀GE-1 セブンスソードが待ち構えていた。

 マシロは武装が許可されている時点で、他のファイターの妨害の他にコースに武器がないと切り抜ける事の出来ない障害の可能性も考慮していた。

 その為、ZガンダムとガンダムAGE-2 ノーマルは意図的に見逃して、先に1周を走らせた。

 2機が無事に戻って来たと言う事は少なくとも、普通に走るだけでは障害はないと言う事だ。

 それを確認する為に、エリカとのバトルは敢えて守りに徹して、先行する2機のレースを観察していた。

 無事に戻って来た以上は、もはや用済みだ。

 Zガンダムはビームガンでガンダム∀GE-1 セブンスソードを牽制するが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは最低限の動きでビームを回避して、Cソードを振るう。

 Zガンダムとすれ違いざまに、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードを振るった。

 ギリギリのところでZガンダムはモビルスーツ形態に変形してかわしたが、Cソードは軌道を変えて、Zガンダムの両足を切りつけた。

 何とか、1周をした物のZガンダムは両足を損傷してまともに歩く事が出来ずに座り込む事となる。

 

「だけど、終わって良いぞ」

 

 Zガンダムはビームライフルを放つが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは軽く回避して、ビームライフルを掴むとライフルの銃身を捻じ曲げた。

 足を損傷した時点でZガンダムの機動力は殆ど失われているが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは至近距離からショートドッズライフルを撃ち込んでZガンダムに留めを刺した。

 

「さて、これでゆっくりとレースが始められる」

 

 自分以外の9機のガンプラはすでにレースが出来る状態ではない為、もはやマシロと止める事は誰にも出来なかった。

 後はコースのトラップに気を付けながら、マシロは悠々と3周を走り終えた。

 

 

 

 

 

 

 第7ピリオドを終えてトレーラーに戻ると先にアイラが戻っていた。

 アイラは心配そうにモニターを見ている。

 ここ数日は毎日こうだ。

 

「そんなに心配する必要もないだろ。ここまで何とか勝って来てんだ。元々、大した怪我でもないんだろ」

 

 そして、アイラが心配そうにバトルの様子を見る理由は一つしかなかった。

 

「知ってる。でも、私は別にアイツの事なんか、どうでも良いし……私はただ、そう、相手の事を分析する為に……」

「そう言う事にしといてやるよ」

 

 以前に比べると、ほかのファイターのバトルを見る事が多くなってはいるが、バトルの中から相手の情報を徹底的に得ようとまでは行ってはいない。

 アイラがここまで真剣に見ているのはレイジの出るバトルくらいな物だ。

 理由は分からないが、アイラはレイジの事を気にかけているようだ。

 

「まぁ、今日は普通に圧勝だろ」

 

 ソファーに座りながら、マシロがそう言う。

 セイとレイジのスタービルドストライクならば、順当にいけば第7ピリオドで勝つ可能性は高い。

 そして、セイとレイジの出ているレースが開始される。

 開始早々、スタービルドストライクが飛び出して先頭に立つと、後方からビームによる一斉射撃がスタービルドストライクを襲う。

 

「馬鹿だろ」

 

 そのビームはスタービルドストライクがアブソーブシールドで吸収した。

 武装が許可されている為、飛び出した相手を攻撃して妨害する事は当然の事だが、ビーム兵器で攻撃する事は悪手でしかない。

 ビームを吸収したスタービルドストライクはディスチャージシステムのスピードモードを使って一気に加速した。

 元々、高い機動力を持ったスタービルドストライクがディスチャージシステムを使えば他のガンプラは距離を離されて行くだけだ。

 ある程度後続のガンプラを引き離したところでスタービルドストライクはディスチャージシステムを解除して普通に飛ぶ。

 ディスチャージシステムを解除したところで、機動力の差は埋まる事は出来ない為、後続との距離が縮められる事は無い。

 

「これ、もう決まりじゃない」

「どうだろうな」

 

 後続との距離が開いている為、アイラはレイジの勝利を確信している。

 だが、単独で首位を独走しているスタービルドストライクだったが、湖の上を飛んでいると突如、湖の中に落ちた。

 

「今、何か下から!」

「今のは……どういう事だ?」

 

 湖に落ちたスタービルドストライクは湖に落ちたまま中々浮かんでこない。

 その間に、後続のガンプラがスタービルドストライクを抜いて、遂には首位から最下位にまで転落してしまう。

 

「何やってんのよ……」

 

 最下位となり、少しすると爆発と共にスタービルドストライクが湖から飛び出して来る。

 湖の中で戦闘でもしたかのように装備を失いスタービルドストライクは損傷している。

 そして、すぐに再びディスチャージシステムを起動させて、追い上げる。

 損傷しているが、機動力は圧倒的である為、瞬く間に他のガンプラを追い抜いては順位を上げていく。

 怒涛の追い上げもあって、2位にまで順位を上げて、ようやく首位が見えて来た。

 

「後一機……」

「だが、最後はレナード兄弟のガンプラだ」

 

 首位のバクゥタンクはレナード兄弟のガンプラだった。

 レナード兄弟は目立つ事は無かったが、ここまで毎回ガンプラを変えて全勝している。

 派手さはないが、全勝している為、素直に首位を譲って貰える訳が無い。

 バクゥタンクは追い上げて来るスタービルドストライクにミサイルで牽制すると、加速する。

 それでも、スタービルドストライクの機動力を振り切る事は出来ない為、じりじりと距離が詰まって行く。

 

「後少し……」

「いや、もう粒子が足りない」

 

 最後のカーブを抜けて、後はゴールに辿りつくだけと言う場面で、スタービルドストライクはバクゥタンクを捕えた。

 だが、最後の最後でディスチャージシステムの粒子が尽きてスタービルドストライクは失速してしまう。

 それによりギリギリのところで、バクゥタンクを追い抜く事は出来ずにスタービルドストライクは2位でゴールする。

 

「さっきのアレは何だったんだ?」

「さっきって?」

「お前も見てただろ。アイツ等のガンプラが水に落ちたところ」

 

 レースの結果よりもマシロにはそっちの方が気になった。

 普通に見ただけでは何故か、スタービルドストライクが湖に落ちたようにしか見えなかったが、マシロの目ははっきりと何かによって湖に引きずり込まれていた。

 アイラも直前に下から粒子が動いているのが少し見えていた。

 

「あんなトラップ俺の時にはなかった」

 

 マシロはわざわざ、他のガンプラを使ってトラップの有無を確かめた上で、注意しながらレースを行った。

 湖の中はトラップを仕込むには最適な場所を見落とす訳が無い。

 

「どういう事?」

「さぁな。ただ、俺のレース以外にもコース上にトラップが仕込まれていたレースは無いからな。このレースのみにトラップが仕掛けられているなんて事は無いだろうから……」

 

 毎レースで固定のトラップなら後の方のレースの方がトラップの場所が分かってしまう為、マシロやアイラのレースとはトラップの種類や位置が違うと言う事はあり得る。

 だが、ここまでのレースで一度もコース上にトラップが仕掛けられていた事は無い。

 流石にスタービルドストライクだけがトラップの起動条件に当てはまってしまったとも考え難い。

 そうなって来ると、トラップは運営側による物ではない可能性が出て来る。

 

「誰からレイジを負けさせようとしたって事?」

「どうだろう。ただ、大会の警備はうちの系列の警備会社を使ってるからな、その警備を掻い潜って妨害して来たとなると、相当な実力者と言う事になる」

 

 世界大会にはクロガミグループがスポンサーをしている。

 その為、大会を成功させる為に、警備も請け負っている。

 特にリアルタイムで世界に配信されるバトルで乱入などがされると非常に困る為、バトル中の警備は最も厳重となっている。

 そんな警備を掻い潜って、妨害出来たとなると、妨害者は相当なやり手と言う事になる。

 

「だが、そんな奴にしては直接的にリスクが大きい過ぎる。ガンプラを使って妨害すればすぐに足が付く」

 

 警備を掻い潜る事の出来る相手にしては、レース中に妨害して来るのリスクが高い。

 湖に隠していても、レース終了後に回収前に運営側に見つかる危険性が高いからだ。

 大会で妨害工作を行えば、当然クロガミグループは妨害者を確保しようと動く。

 そこまでの実力がありながら、証拠を残しかねないやり方を選ぶとは考え難い。

 そんな事をするくらいなら、レース前に下剤でも飲ませて体調を崩させるか、事前にガンプラを傷つけるかした方がマシだ。

 それなら、運営側もファイターの体調管理やガンプラの管理の不備で済ませるからだ。

 

「だから全くの外部犯と言う事は考え難い。寧ろ、運営側が意図的に仕込んだと考えた方が良いだろうな」

「でもなんで……確かにレイジは口とか態度は悪いし、食い意地も張ってるけど……」

「運営と言っても警備状況を知れたのはPPSEの幹部クラスくらいだからな」

 

 運営が関わっているとすれば、レース終了後にガンプラを回収する事も容易で、セイとレイジが騒いだところでどうにでも出来る。

 二人のレースにだけトラップが仕掛けられていたのも、全てのレースで仕掛けられていたと言い張ってしまえば、それがデタラメだと証明する事は今となっては出来ない。

 それがスタービルドストライクだけがかかったのも、トラップの発動理由をスタービルドストライクだけが満たしていたと幾らでもでっち上げが出来る。

 そして、それを行ったのは警備状況を知る事が出来た限られた一部の人間だけだ。

 

「アイツ等を狙った理由などは知らん。PPSEの上層部が絡んで来ているなら、メイジンを勝たせる為と言う事も考えられるが、今年優勝するのは俺だから、俺よりも先にアイツ等を狙う理由はないしな」

 

 PPSE社の上層部が絡んで来ているとなれば、PPSE社のワークスチームのファイターであるメイジンカワグチを勝たせる為に有力なファイターを振るい落とすと言う事は十分に考えられる。

 だが、回数を重ねるごとに成功率は低下して行く。

 今年の優勝候補の本命であるマシロよりも先にセイとレイジを狙う理由はない。

 

「となると、個人的な恨みと言う事になるけど、そこまでは知らん。ただ、言える事は運営が妨害して来たと言ってもアイツ等は負けたと言う事だ。俺ならもっと素早く対処出来た」

 

 PPSEの上層部の誰かが、セイかレイジに対して恨みを持っていて、彼らを決勝トーナメントに進ませない為に仕込んだと考えれば辻褄がある。

 だが、それ以上の事は現状では考える事が出来ず、マシロもその辺の動機には興味はない。

 レイコを使えば、1日もあれば実行犯も指示を出したPPSEの上層部を特定する事は容易だが、自分に被害が出ていない為、決勝トーナメントの準備をしているレイコを使う気は無い。

 この事で運営に抗議を入れると言う事も可能だが、明確な証拠はすでになく、運営側が関わっているならいくらでも良い訳が効く為、抗議するだけ無駄だ。

 そして、何より妨害その物は何とかなるレベルの物で、二人の敗北は妨害の対処に時間を使い過ぎた事だ。

 もっと早く対処出来れば十分に一位を狙えた。

 結局のところ、何者かにより妨害を受けたが、対処に時間を使い過ぎたレイジの実力不足と言う事だ。

 

(ただ……アイツ等は俺が先に目を付けてたんだよな。どこの誰かは知らないが、面白くはないな)

 

 妨害者の目的は分からなし、興味もないが、セイとレイジは以前からマシロが目を付けていた。

 今回は敗北こそしたが、バトルで負けた訳でも無く、将来性が失われた訳でも無い。

 そんな二人を今後も狙って来るとしたら面白くはない。

 

(けど、これはある意味チャンスかも知れん。狙われていると言うのであれば、それを乗り切った時に更にアイツ等は強くなる)

 

 二人が狙われる理由は分からないが、二人が完全に脱落した訳ではない。

 明日の第8ピリオドで勝利すれば、決勝トーナメントに進む事が可能で、仮に敗北したとしても、全勝組と一敗組で全ての決勝トーナメントの椅子が埋まる訳ではない。

 そこから2敗組を相手に決勝トーナメント進出を勝ち取れば、問題はない。

 その為、今後も二人に対して妨害工作は十分に考えられた。

 それを事前に潰す事は可能だが、それよりも敢えて妨害させる事で、二人にそれを乗り越えさせた方が、二人をより強くする事が出来ると考えた。

 

(つっても、大人が本気で子供を潰しにかかられたら勝ち目はないからな……仕方が無い。あのおっさんにでも連絡を入れておくか。これは借りにはならないからな。寧ろ、息子の事だから俺に貸しを作る事になる)

 

 マシロの推測通りにPPSE社の上層部が絡んでいるとしたら、その気になればバトルをする事無く二人を潰す事は容易だ。

 セイもレイジも将来性はあっても所詮は子供だ。

 ガンプラバトルで高い実力を発揮しても、大人が本気を出せば太刀打ちは出来ない。

 それは、マシロにとっても困る。

 その為、マシロは保険をかける事にした。

 マシロは携帯を取り出して、操作する。

 携帯には身内以外の連絡先は殆どないが唯一、クロガミ一族とは無関係な連絡先が登録されていた。

 いずれは過去の雪辱を晴らす日が来た時に使おうと独自に連絡先を調査させていた。

 それを今、使おうとしている。

 

(直接、連絡すると向こうのペースに持ってかれそうだからここはメールで……)

 

 マシロは用件だけを簡潔に打つをメールを送信した。

 後で返信が来るかも知れないが、今は話しをする気は無い為、携帯の電源を切って無視を決め込む。

 そして、決勝トーナメント進出を賭けた最後の一戦が始まる。

 

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