ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle44 「譲れない戦い」

 予選ピリオドの最後である第8ピリオドの時点で半数以上の決勝トーナメントの椅子が埋まっている。

 そして、最後の第8ピリオドのバトルはオーソドックスな1対1でのバトルだ。

 1対1と言う事もあり、バトル数は全部で50回となる為、第8ピリオドは2日に分けられる。

 1日目のバトルですでに決勝トーナメントが確定したファイター達は順当に勝利して、2日目に入る。

 2日目には一敗組であるアイラとセイ、レイジ組のバトルが控えている。

 どちらも今日のバトルで勝たなければ決勝トーナメントが一気に遠のく為、勝たねばならない重要な一戦だ。

 アイラは第8ピリオドのバトルも苦も無く勝利し、決勝トーナメントに駒を進めた。

 

「何とか生き残れたみたいで良かったよ。予選落ちとか俺が教えた時間が無駄にならずに済んだよ」

「おかげさまで」

 

 第8ピリオドのバトルを控えて、すでに決勝トーナメントが確定しているマシロはトレーラーでくつろいでいた。

 序盤の第2ピリオドで勝ち数を逃して、残りの全てを確実に勝たねばならなくなって苦労したのはマシロのせいである為、文句を言いたいが、マシロに言ったところで意味がないとアイラは諦めてソファーに座る。

 

「それにしてもさ……この局面で、イタリアのフェリーニか。本当に運がないよな」

 

 セイとレイジの第8ピリオドの相手は去年も決勝トーナメントに出ているイタリア代表のリカルド・フェリーニであった。

 今年もマシロやメイジンを除けば優勝候補の一人に上げられている。

 

「でも、そいつってここまで全勝でしょ? 適当に流すんじゃないの?」

「どうだろうな」

 

 フェリーニはマシロ同様にここまで全勝している為、すでに決勝トーナメント進出は確定している。

 その為、第8ピリオドは流して負けたとしても、問題は無かった。

 寧ろ、下手に本気で戦ってガンプラが壊れてしまったら、決勝トーナメントに支障が出かねない。

 

「まぁ、バトルが始まれば分かるさ」

「……マシロから見て、本気で戦えばどっちが勝つと思う?」

「どうだろうな。ガンプラの性能で言えばスタービルドストライクの方が上だ。けど、フェリーニは強いんじゃなくて上手いんだよな」

 

 互いのガンプラの性能で言えばセイの作ったスタービルドストライクの方が確実に上だ。

 フェリーニのウイングガンダムフェニーチェも一般的な世界レベルの水準よりも性能は高いが、スバ抜けて高いとは言えない。

 しかし、フェリーニはウイングガンダムフェニーチェの事を熟知し、100%以上の性能を引き出す術を知っている。

 だから、マシロの印象としてフェリーニは強いと言うよりも上手い。

 

「普通のバトルならば、苦戦するかも知れないが、泥臭いバトルに持ち込めばガンプラの性能で勝るアイツ等の方が有利だろうな」

 

 ギリギリのバトルまで持ち込めば戦い方の上手さよりも、ガンプラの性能が高い方が優勢となる。

 特にスタービルドストライクにはギリギリのバトルで切り札となり得るRGシステムがある。

 

「アイラ、このバトルは良く見ておけ、今のお前に一番足りない物があるからな」

 

 バトルが始まり、スタービルドストライクとウイングガンダムフェニーチェは序盤から激しいぶつかり合いを見せる。

 ビーム兵器が主体のウイングガンダムフェニーチェは序盤の内にスタービルドストライクのアブソーブシールドにビームを吸収されないように気を使いながらアブソーブシールドを破壊して見せた。

 機体性能で劣っても、それをフェリーニの経験と技術で覆して、バトルの流れを掴みかけるが、セイとレイジも負けていない。

 バトルフィールドの渓谷を利用して、バックパックのユニバースブースターを分離した状態で隠して、本体を囮にウイングガンダムフェニーチェの背後から攻撃した。

 だが、負けじとウイングガンダムフェニーチェもバルカンとマシンキャノンでスタービルドストライクを牽制しながら、バスターライフルカスタムでユニバースブースターを破壊する。

 牽制でスタービルドストライクのスタービームライフルを破壊するも、その前に撃ったビームがバスターライフルカスタムに被弾してウイングガンダムフェニーチェは爆発する前にバスターライフルカスタムを捨てた。

 互いに火器を失い睨みあう。

 ここまでは完全に互角だ。

 スタービルドストライクはビームサーベルを、ウイングガンダムフェニーチェはビームレイピアを抜いて構える。

 2機は一気に接近すると切り合う。

 2機は激しく切り合い一進一退の攻防を繰り広げていた。

 一瞬の油断が命取りとなり得る。

 

「何で……」

 

 二人のバトル見ていたアイラの感想はそれだった。

 フェリーニはすでに決勝トーナメント行きが確定している。

 その為、このバトルで勝つ必要はない。

 レイジもこのバトルで負けても、次がある。

 ここで、全てを出し切って負けるよりも、ここは軽く負けて次で決めた方が確実だ。

 少なくともここで負けても終わりではなく、残りの椅子を賭けて戦う相手はここまでに2回も負けているため、確実にフェリーニよりも弱い。

 それなのに、レイジもフェリーニも後の事はまるで考えずにこのバトルで全てを出し切っているように見える。

 

「意地があるんだよ。ファイターにはさ。それに次があるなんて考えている奴はそこまでだ」

 

 合理的に考えるとレイジやフェリーニのやっている事は無駄な事でしかない。

 だが、二人を動かしているのはファイターとしての意地だ。

 例え、合理的でなくとも目の前の相手には絶対に負けたくはないと言う意地だけで二人は戦っている。

 

「だから目に焼き付けろ。今のお前に足りてない物がこれだ」

 

 アイラは地区予選でガウェインに敗北した。

 その後は真面目に練習をするようにもなり、相手の事を研究するようにもなった。

 だが、まだ死にもの狂いに勝ちに行くとまでは行っていない。

 元々、相手を舐める傾向にあったとはいえ、アイラは十分に世界に通用するだけの実力を持っている。

 そんなアイラだが、ギリギリの戦いをした事は殆ど無い為、例え全てを失っても勝利すると言う事が決定的に足りていない。

 

「……分からないわよ。そんなの……」

 

 今の生活を失わない為にアイラはガンプラバトルで勝ちたいとは思っている。

 だが、目の前の一勝の為に全てを捨ててまで勝ちたいと言う気持ちはアイラの戦う理由と正反対でり、捨てられた側であるアイラには理解など出来る筈もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 スタービルドストライクとウイングガンダムフェニーチェのバトルは熾烈を極めていた。

 互いに一歩も引かずに切り合っていたが、2機は一度距離を取った。

 

「たく……しぶといんだよ」

「お前もな。フェリーニ」

 

 レイジもフェリーニも限界が近いが、どちらも勝利を譲る気は無い。

 激しい切り合いで高いの武器も限界を迎えている為、どちらも武器を捨てて拳を構える。

 どちらも武器の全てを失っている為、残されているのは拳だけだ。

 距離を詰めて、2機はノーガードで殴り合う。

 ウイングガンダムフェニーチェの拳がスタービルドストライクの胴の装甲をへこますと、スタービルドストライクの拳がウイングガンダムフェニーチェの頭部を潰す。

 例え、損傷しようとも一歩も引かずに殴り合う。

 だが、ウイングガンダムフェニーチェの胸部にスタービルドストライクのパンチが決まると、ウイングガンダムフェニーチェは大きく後ろに飛ばされるが、何とか倒れずに踏みとどまる。

 その一撃でウイングガンダムフェニーチェの胸部に皹が入る。

 追撃をしようにもスタービルドストライクもボロボロだ。

 

「レイジ……RGシステムだ」

「この場面でか? アレは負担も大きいんだろ? 今使ったら……」

 

 RGシステムはガンプラにかかる負担が大きい。

 その為、使えば攻撃力を上げる代わりに、相手からの攻撃のダメージも大きくなる諸刃の剣だ。

 下手をすれば、ウイングガンダムフェニーチェの攻撃で逆にやられる危険性も高い。

 

「それでも使うならここだよ。大丈夫。前にも言ったろ? 壊れても僕が直す。それにフェリーニさんは全てを賭けてるんだ。ならこっちも全てを賭けないと勝てない!」

 

 フェリーニは決勝トーナメントが決まっている為、このバトルに勝つ必要はない。

 それでも、フェリーニは勝つ為に全てを賭けている。

 そんなフェリーニに勝つにはこちらも全てを賭けて戦うしかない。

 

「……分かった。勝つぞ! セイ!」

「ああ!」

「来るか!」

 

 レイジも覚悟を決めてRGシステムを起動させた。

 それに対応する為に、ウイングガンダムフェニーチェも本来は防御用のビームマントを腕に巻き付けた。

 これにより、拳にビームを纏わせる事が出来る。

 

「これで!」

 

 RGシステムを起動させたスタービルドストライクとビームを纏った拳のウイングガンダムフェニーチェは全ての力を込めた一撃を繰り出す。

 2機のガンプラの拳はぶつかり合う。

 その余波で周囲を破壊するが、2機は衝撃を踏みとどまる。

 

「勝つのは……」

「俺達だ!」

 

 スタービルドストライクの拳がウイングガンダムフェニーチェの拳を打ち砕きながら、ウイングガンダムフェニーチェの胸部を捕えた。

 すでに皹の入っていたウイングガンダムフェニーチェではその一撃を耐えきる事が出来ずにウイングガンダムフェニーチェの胸部の装甲は破壊された。

 最後の一撃が決まり、その余波で今までの殴り合いでボロボロとなっていた、ウイングガンダムフェニーチェの装甲が次々と破壊されて行く。

 そして、ウイングガンダムフェニーチェは倒れた。

 スタービルドストライクは最後の一撃の衝撃で右腕の至るところが損傷し、膝をつくも何とか立ち上がった。

 

「……俺の負けか」

 

 地に伏したウイングガンダムフェニーチェと、立っているスタービルドストライク。

 それにより勝敗はスタービルドストライクとなった。

 

「分かってたけど、最後でアレが来るのはキツイな」

 

 バトルが負けたが、フェリーニは全力を尽くした為、悔いはないようだった。

 ギリギリのバトルに勝てて、セイとレイジは一息ついた。

 

「けど、まだ俺の方が200回くらい勝ち越してるからな。これで勝った気にはなるなよ。レイジ」

 

 今回のバトルは負けたが、フェリーニは過去にレイジに200回程勝っている。

 尤も、その200回はレイジに練習を付けていた時の頃で、レイジはセイのガンプラを使ってないし、フェリーニも練習と言う事で手加減をしている。

 それをここで持ち出して来る辺り、フェリーニも大人げない。

 

「すぐに勝ち越してやるよ」

「無理だな。次は俺が勝つ」

「次も俺達が勝つね!」

 

 どっちの始まってもいない次のバトルで勝つ事を主張している様子をセイは苦笑いしていたが、ある事に気が付いた。

 

「フェリーニさん。フェニーチェは……」

 

 このバトルでウイングガンダムフェニーチェは大破している。

 セイもビルダーからこそ分かるが、ウイングガンダムフェニーチェの損傷は簡単に直せるレベルではない。

 決勝トーナメントは3日後である為、今から修理しても間に合うかは分からない。

 

「気にすんな。俺もお前達も全力を尽くした結果だ。悔いはない」

 

 フェリーニも下手をすればこうなる事は分かっていた。

 それでも、レイジに負けたくは無い為、覚悟を決めた。

 

「俺の事よりも自分達の事を心配してろ。決勝トーナメントともなれば、こんなバトルを繰り返すんだ。今年もアイツがいるし、メイジンだって出て来てんだ」

 

 フェリーニに勝って、セイとレイジは決勝トーナメントに進出する事が出来た。

 だが、決勝トーナメントではフェリーニと同等のファイターばかりだ。

 絶対的王者のマシロに加えて、カイザーを倒したアイラにメイジンと今年は例年よりも実力者が揃っている。

 

「それに、俺のフェニーチェは不死身だからな。決勝トーナメントじゃフェニーチェの真の姿になって復活するから、次はこうも行くと思ったら大間違いだ」

 

 フェリーニはそう言い残して戻って行く。

 今日の勝利は次に繋いだに過ぎず、本番はこれからで、決勝トーナメントはこれ以上のバトルとなる。

 

「どうした? セイ」

「……何でもない。レイジ、すぐにスタービルドストライクの修理に入るから戻ろう」

 

 世界大会の為に制作したスタービルドストライクをレイジは完璧に使いこなしている。

 だが、序盤とは違い、スタービルドストライクのデータは他のファイターの知るところとなり、今日の勝利もギリギリだった。

 その為、セイはスタービルドストライクの更なる強化の必要性を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイ、レイジ組とフェリーニの激闘の熱気がスタジアムで残る中、アオイはタクトと共に最後の調整をしていた。

 アオイも第7ピリオドの時点で決勝トーナメント出場を確定させている。

 だが、第8ピリオドの相手はマシロとなった。

 

「調子はどうだ?」

「こっちは万全です。エリカさんの方はどうでした?」

「首の皮一枚で繋がったよ」

 

 マシロとのバトルを前にエリカが様子を見に来たが、アオイは必要以上に気負ったりもせずにいつも通りだ。

 エリカも第7ピリオドを落として2敗だったが、今日の第8ピリオドで勝ち、まだ決勝トーナメントへの可能性が残されたようだ。

 

「決勝トーナメントが確定しているとはいえ、よりにもよってここでマシロと当たる事になるなんて、アオイも大変だな」

「けど、アイツも決勝トーナメントが確定してんだ、少しは気が抜けてるかもな」

「それは無いと思う」

 

 マシロもアオイも今日のバトルの勝敗には関係なく、決勝トーナメントが決まっている。

 その為、タクトはマシロが今日のバトルを軽く流すかも知れないと考えるも、アオイは否定する。

 去年も全勝で予選ピリオドを通過したが、決勝トーナメント出場が確定した後もマシロは容赦なく敵を叩き伏せている。

 

「でも……マシロさんに勝つ為にこの一年、皆で頑張って来たんだから優勝とは関係なくても、今日のバトルは勝つよ」

「だな。あの人を見下したムカつくマシロの鼻を明かしてやろうぜ。アオイなら絶対に出来る」

「うん。そろそろ時間だから行こう」

 

 アオイ達は去年、地区予選でマシロに大敗してからの一年、マシロに勝つ為に努力を重ねて来た。

 その結果、今年の世界大会では決勝トーナメント進出出来るまでに成長した。

 だが、アオイ達にとって最大の目標はマシロに勝つ事だ。

 そして、そのチャンスは決勝トーナメントの前に訪れていた。

 マシロとアオイのバトルの時間となり互いにセコンドと共にバトルシステムの前に立っている。

 会場には観客の数は目に見えて少なかった。

 どちらも決勝トーナメントを決めている為、このバトルは軽く流すと思われているのだろう。

 尤も、すでに決勝トーナメントを決めたファイター達は出場者用の観客席からバトルの様子を見ていた。

 彼らからすれば、マシロが決勝トーナメント出場者とサシで戦う為、少しでもマシロに勝つ為の情報が欲しい。

 マシロが決勝トーナメントが確定したところで、手を緩める気がない事は分かり切っており、実力に差がある相手ならともかく、自分達と同じレベルのファイターとのバトルは決勝トーナメントを前に良いデータとなる。

 

「マシロ。今日のバトルは……」

「分かってる」

 

 マシロはGPベースをセットしてガンプラを置く。

 以前のバトルでは未完成だったフルアサルトジャケットを使ったが、今回はセブンスソードを使っている。

 

「アオイ、勝つぞ」

「うん」

 

 アオイもGPベースをセットしてガンプラを置く。

 

「マシロ・クロガミ。ガンダム∀GE-1 セブンスソード……出る」

「タチバナ・アオイ。ビギニングガンダムB30……行きます!」

 

 そして、バトルが開始される。

 今回のバトルフィールドは宇宙だ。

 多少のデブリが流れている以外は特に障害物は無い。

 互いのファイターの実力が直に試されるフィールドとなっている。

 バトルが開始し、2機のガンプラが接触するよりも早くビギニングガンダムB30が先制の砲撃を繰り出す。

 その一撃をガンダム∀GE-1 セブンスソードは難なく回避する。

 

「この距離から……」

「想定内だろ」

 

 ビギニングガンダムB30との距離はかなり離れているが、事前の打ち合わせではこの距離でも十分に狙って来れると言う事は分かっている。

 位置と距離さえ分かれば、どんなに正確な射撃だろうと、マシロは回避できる。

 ビギニングガンダムB30はハイパーバスターライフルで時間差攻撃するが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードには当たらない。

 

「成程ね。射撃精度は悪くない。俺じゃなかったら楽にかわせない」

「当たらない……」

 

 バトルはビギニングガンダムB30がガンダム∀GE-1 セブンスソードの射程外からの砲撃で一方的に見えるが、実際のところアオイが攻めあぐねている。

 何度、砲撃をしても掠りもしない。

 アオイは牽制を混ぜているものの、何度も当てに行っているが、一度も当たりそうにもない。

 これではどちらが攻めているのか分からない。

 

「落ち着け。アオイ。向こうも攻撃出来なんだ」

「分かってるけど……」

 

 フルアサルトジャケットとは違い、セブンスソードは格闘戦用の装備である為、射程は短い。

 これだけ距離が離れていれば、撃って来ても脅威にはならない。

 だが、最も自信を持っている射撃がここまで当たらない事でアオイも焦りを見せている。

 一瞬でも油断をすれば一気に流れは持っていかれて、流れを戻せずに攻めて来るのがマシロだ。

 撃ち続けるしかない。

 それでも、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは確実に回避して来る。

 

「やっぱりな。ここまでかわされ続ける事に慣れてない。精度が落ちて来てる」

 

 マシロは回避に専念する事で、攻撃する事無くアオイを攻めていた。

 過去のバトルを見ても、アオイに射撃能力は世界大会の出場者の中でも群を抜いている。

 単純な射撃能力だけなら、自分と同等レベルとまで見ている。

 しかし、射撃能力が高いが故にアオイの射撃が全く当たらないと言う事は無かった。

 今までにも何度か回避されている事はあるが、ここまで一方的に撃っていても掠りもしないと言う事は無い。

 だから、揺さぶりにかけた。

 徹底的に砲撃を回避し続ける事で、アオイを焦らせて射撃精度を狂わせる事でアオイの最大の武器を封じにかかっている。

 それが可能なのも、マシロが圧倒的に上位にいる事で、一瞬の油断も出来ないと言うプレッシャーと何より、アオイはそこまでの強者とのギリギリのバトルの経験が致命的に不足している。

 特に経験の少なさは今更どうする事も出来ない。

 

「俺の勝ちだ」

 

 アオイの射撃精度を狂わす事が出来れば、アオイにマシロと対等に戦うだけの能力は無い。

 その上で更にプレッシャーをかける為にガンダム∀GE-1 セブンスソードは前に出る。

 ビギニングガンダムB30の砲撃を軽々と回避しながら、距離を詰める事で更にアオイに対してプレッシャーをかける。

 

「前に出て来た!」

「落ち着け! お前ならやれる!」

「分かってるけど……」

 

 タクトがアオイを落ち着かせようとするも、並のガンプラとは比べものにならない速度で迫るガンダム∀GE-1 セブンスソードを前にアオイにかかるプレシャーも増えていく。

 

「ここは俺の距離だ」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは十分に間合いを詰めるとCソードを展開してビギニングガンダムB30に迫る。

 Cソードを振り落すが、タクトがとっさにIFSファンネルの1基でIFSフィールドを展開して防ぐ。

 

「落ち着け! アオイ! お前の実力はこんなもんじゃんないだろ!」

「タクト君……」

 

 タクトの叱責で少しは冷静さを取り戻して、ビギニングガンダムB30はハイパーバスターライフルをガンダム∀GE-1 セブンスソードに向けて放つ。

 

「精度が戻って来たか……だが、俺の間合いに持ち込まれた時点で終わってんだよ」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードはショートドッズライフルを放ち、ビギニングガンダムB30はIFSファンネルを展開して防ぐ。

 ハイパーバスターライフルとビームバルカンで応戦するが、距離を詰めた事で正面以外にも位置取りの出来るガンダム∀GE-1 セブンスソードを捕える事は出来ない。

 

「アオイ、幾らちょこまかと動いても、向こうだってこっちの防御は簡単に打ち破れないんだ」

「分かってる」

 

 ビギニングガンダムB30の周囲を移動しながら、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはビームを撃って来るが、IFSファンネルのIFSフィールドは撃ち破れない。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードのショートドッズライフルもビームが回転しているが、IFSフィールドなら削られてもその部分のフィールドを再展開すれば早々に撃ち破られる事は無い。

 

「硬いな。ただ、その手のフィールドは実体剣が鬼門だったりするんだよな」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは一度距離を取ると。ビギニングガンダムB30に向けて一直線に加速する。

 

「来る!」

 

 ビギニングガンダムB30は迫るガンダム∀GE-1 セブンスソードに向けてハイパーバスターライフルを放つ。

 回避するかと思われたガンダム∀GE-1 セブンスソードだったが、左腕のシールドでビームを正面から受け止めた。

 ビームに負ける事無く、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは向かって来る。

 やがて、シールドがビームに耐え切れなくなってガンダム∀GE-1 セブンスソードの左腕ごと吹き飛ぶ。

 

「やったか!」

「左腕はくれてやる」

 

 左腕を失ったガンダム∀GE-1 セブンスソードだが、気にする事無くCソードを展開して突き出す。

 それをビギニングガンダムB30はIFSフィールドを最大出力で展開して受け止めた。

 

「っ!」

 

 勢いの付いたガンダム∀GE-1 セブンスソードをIFSフィールドで止めてはいるが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードの勢いを完全に殺しきれてはいない。

 

「そんなフィールドなど、正面から打ち砕いてやるよ」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは青白く発光する。

 そして、Cソードからバーストソードが展開される。

 バーストモードによる圧倒的な出力のビームソードであるバーストソードはIFSファンネルごとIFSフィールドを貫いた。 

 幸いな事にバーストソードはビギニングガンダムB30に当たる事は無かったが、IFSファンネルの大半を失い、ガンダム∀GE-1 セブンスソードがフィールドを突破してしまう。

 すぐにハイパーバスターライフルを向けるも、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは完全にライフルの死角まで接近していた。

 その間にバーストソードの使用の負荷で使い物にならなくなったCソードはパージしている。

 

「この距離ならライフルも使えない」

 

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは完全にビギニングガンダムB30に取りつくと、両足でがっちりとビギニングガンダムB30の腰に絡みついて、離されないようにする。

 そして、すぐにビギニングガンダムB30の頭部を鷲掴みにする。

 頭部を鷲掴みにして、頭部を握りつぶすかのように力を入れると次第にビギニングガンダムB30の頭部が変形し、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは頭部をもぎ取る。

 腰のミサイルでは爆発で自分にもダメージを受ける為、頭部のビームバルカンが組み付いて来たガンダム∀GE-1 セブンスソードを引き離す為の唯一の装備だった。

 だからこそ、マシロは真っ先にに頭部を潰した。

 後は残っているIFSファンネルを直接ぶつけるしかない。

 

「アオイ!」

 

 ビギニングガンダムはすぐにハイパーバスターライフルを捨てて、バックパックのビームサーベルを取ろうとする。

 3本のビームサーベルを抜いて、ガンダム∀GE-1 セブンスソードを引き離そうとするが、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはビギニングガンダムB30の腕を掴んで強引にビームサーベルを自分ではなく、ビギニングガンダムB30の方に向けようとする。

 このままでは、自分のビームサーベルでやられてしまう為、すぐにビームサーベルのビーム刃を消して、ギリギリのところでやり過ごすが、そのまま腕は握り潰される。

 片腕を握り潰して、すぐにビギニングガンダムB30のもう片方の実体剣に手を伸ばす。

 

「こっちの武器を!」

「使わせて貰う」

 

 実体剣を接続部がもげる事も気にする事無く、強引に奪ったガンダム∀GE-1 セブンスソードは逆手に持ったまま、体をエビぞりに仰け反らせて実体剣をビギニングガンダムB30の胸部目掛けて突き立てる。

 ギリギリのところで、両腕をねじ込ませるが、勢いの付いていた実体剣は両腕を貫通して、胸部に突き刺さる。

 両腕をねじ込ませた事で実体剣は深くは刺さってはいなかったが、片腕と今の体制では力が入らず実体剣を貫く事もそのまま、ビギニングガンダムB30を切り裂く事も出来ない。

 その為、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはビギニングガンダムB30から離れる。

 

「とにかく守りを固めるぞ!」

「お願い!」

 

 この状況でも、アオイもタクトも諦めてはいない。

 圧倒的に不利な状況だろうと、まだ負けてはいないからだ。

 残る武器は腰のミサイルとIFSファンネル。

 それで逆転するしかない。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードも無傷ではない。

 左腕のメインの武器を失っている。

 まだ、希望は残されている。

 しかし、マシロはそんな希望すらも打ち砕いた。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードがビギニングガンダムB30から離れたのは、回収する為だった。

 取りつかれた事で、使えなくなったビギニングガンダムB30のハイパーバスターライフルをだ。

 すでにハイパーバスターライフルは2基とも回収されて、連結したスノーホワイトの状態となっている。

 

「んなのアリかよ……」

「そんな……」

 

 もはや、二人には一筋の望みすらも残されてはいなかった。

 ガンダム∀GE-1 セブンスソードは奪ったスノーホワイトを放つ。

 まともに回避行動も取れないビギニングガンダムB30に残された道はIFSフィールドで防ぐしかない。

 IFSフィールドの防御力なら多少はスノーホワイトの攻撃でも防ぐ事は出来るが、すぐに粒子が尽きてIFSファンネルごとビギニングガンダムB30はスノーホワイトのビームに飲み込まれた。

 すでにボロボロのビギニングガンダムB30ではスノーホワイトの攻撃に耐える事が出来ずに撃墜され勝負が決まった。

  

「こんな感じで良かったか?」

「上出来よ」

 

 このバトル自体、勝つ事は必須だったが、もう色々な思惑があった。

 決勝トーナメント出場が確定したアオイの出鼻を挫くと言う事だ。

 序盤に砲撃をかわしてプレッシャーをかけるだけでなく、最後は去年と同じようにスノーホワイトを奪って決める事で、アオイ達の一年間の努力を無意味だと見せつけた。

 もう一つの思惑として、このバトルを見ていた他のファイターに対するプレッシャーを与える事だ。

 マシロのバトルスタイルは近接戦闘がメインだ。

 その中でもライフルを鈍器のように使う事もあったが、基本的に接近してビームサーベル等の接近戦用の装備で決めると言う接近戦においては基本的な戦い方は多い。

 だからこそ、今回のバトルで相手に組み付いたりと、普段は見せない荒々しいバトルをやらせた。

 それにより、他のファイター達もマシロとバトルする際には今のようなバトルも警戒しなければならない。

 決勝トーナメントが3日後と言うこのタイミングで、今までとは違う戦い方を見せる事で意図的に情報を増やして混乱させる狙いがあった。

 その点、強引に攻めた今回のバトルはレイコからして見ても十分な結果だ。

 

「さてと。今日は軽く流したから、ガウェインにでも付きあわせてもう少し調整しとくか」

 

 バトルが終わり、アオイ達には見向きもせずにマシロはスタジアムを後にする。

 その後も残りのバトルが消化されて、第8ピリオドが終了した。

 

 

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