ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle45 「逃れられない物」

 8回に渡る予選ピリオドが終わり、決勝トーナメントまでは会場のセッティングなどで3日程空いている。

 その間に決勝トーナメントに駒を進めたファイター達は決勝トーナメントに備える。

 現在の時点では全勝組と一敗組が確定するも、決勝トーナメントの席は空いている為、残りの枠を争って二敗組が最後のバトルを行う事になっている。

 

「暇だ」

 

 マシロは公園のベンチに座り空を見上げてそう言う。

 昨日までの予選ピリオドは連日行われた為、今日は決勝トーナメントに備えての休養日としている。

 幾ら、実力があっても当日に体を壊していては勝てない為、こうして月に一度くらいは一日ガンプラを触らない日を作っている。

 そして、そんな日は必ず、時間を持て余す。

 ガンプラバトルに勝つ為だけに毎日を過ごしているマシロにとってガンプラを取ってしまえば何も残らない。

 

「王者の余裕って奴か?」

「そんなところだ」

 

 空を見上げていると、通りかかったエリカがそう言う。

 

「そっちは忙しいそうじゃん」

「おかげさまでな」

 

 マシロの皮肉に一瞬、ムッとするも実際のところエリカは暇と言う訳でもない。

 元々、一つ落としたところに第7ピリオドのレースで負けたエリカは決勝トーナメントが危うい状況で今日のバトルで決勝トーナメントに進めるかが決まる。

 今は丁度、会場に向かう途中だった。

 

「んな事よりも、こんなところで油を売ってていいのかよ。アオイの奴だって今頃は……」

「興味ないね」

 

 昨日、マシロに負けたアオイだが、レイコが想定していたよりも精神的なダメージは少なかった。

 負けた事は当然、ショックではあったが、アオイには自分を励ましてくれる仲間がいる。

 その上、去年もマシロに大敗している為、そこまでのショックは受けていなかった。

 今は、大破したビギニングガンダムB30の修理に全力を尽くしている。

 

「アイツが潰れようと、這い上がってこようと関係ない。俺に向かって来る奴は倒す。例え、メイジンカワグチだろうとね」

 

 マシロはそう言って、ベンチの後ろの木の影に軽く視線を向ける。

 

「そうかい」

「取りあえず。エリカは今日のバトルに勝って来ないと向かって来る事すら出来ないけどな」

「うっせ」

 

 マシロに挑もうにも、アオイとは違いエリカは決勝トーナメントすら危うい状況だ。

 

「まぁ、頑張って来いよ」

「……おう」

 

 その言葉にエリカは一瞬戸惑う。

 マシロは基本的に相手が誰だろうと強ければ気にしない。

 そんなマシロがかける言葉とは思えなかった。

 

「……何だよ?」

「……何でもない。精々、アタシにぶっ飛ばされる覚悟をしとくんだな」

 

 流石に照れているのか、エリカは足場やに会場に向かって行く。

 

「何なんだ……まだいいか。それよりも盗み見とは余り良い趣味とは言えないな。タツ……いや、今はメイジンカワグチだったな」

「今はタツヤで良いよ。いつから気づいて?」

「始めからかな」

 

 先ほど軽く視線を送った木の影からメイジンカワグチこと、ユウキ・タツヤが出て来る。

 今日は今までもようなメイジンの衣装ではなく髪も下した普段着だ。

 

「成程」

 

 タツヤは感心しながら、マシロの横に座る。

 二人は気づいていないが、タツヤの問いのいつから気づいていたと言うのは、自分がメイジンカワグチだと言う事で、マシロの答えはいつから見ていた事に気が付いたかだ。

 エリカと話している最中に、たまたま通りかかったタツヤがマシロを見つけるも、エリカと話していた為、邪魔をするのは不味いと気を利かせて隠れた。

 そして、その違いに気づかない為、タツヤも始めから自分の事に気づいていたと勘違いを起こしている。

 マシロがメイジンカワグチの正体に気が付いたのはチーム戦の時だ。

 始めは第2ピリオドで戦った時の動きが、初めてタツヤとバトルした時の動きと酷似していた事だったが、確信を持ったのはチーム戦だった。

 明らかにケンプファーアメイジングの動きがマシロの動きが分かった上での援護だった。

 マシロの動きは多くのファイターが研究しているが、マシロを援護する事を前提に考えると言う事は無い。

 だが、メイジンはまるでマシロとチームを組んだ事があるようなスムーズな動きで援護している。

 マシロがまともにチームを組んだ事のあるファイターはエリカ以外ではタツヤしかいない。

 

「それで……彼女はフランス代表のだよね? ずいぶんと親しげだったけど。どういう関係なんだい?」

「あれで親しげに見えたのかよ」

 

 タツヤには先ほどのやり取りの会話までは殆ど聞こえなかったようだが、二人は親しげに見えたらしい。

 尤も、興味のない相手に関してはとことん興味を示さないマシロと言う事を考えれば会話がまともに成立している分だけ親しいかも知れない。

 

「まだいいや。関係って言われてもな……こっちにも色々とあるんだよ」

「色々ね……それよりも調子は良さそうだね」

 

 始めから説明するのは面倒である為、マシロも適当に濁す。

 タツヤも気にはなるものの、どうしても知りたいと言う訳でもない。

 単にガンプラにしか興味を示さないと思っていたマシロが異性と仲良くしているところを見て、関係が気になったに過ぎない。

 

「どうだろう。俺はいつも通りに勝ってるに過ぎないけど……ただ、去年よりかはなんか充実してる」

 

 去年の世界大会同様にマシロは順当に勝ち進んで決勝トーナメントを勝ち取った。

 去年は勝つたびに虚しさを覚えてが、今年は不思議と虚しさを覚えるどころか不思議と充実感すら感じていた。

 今年はセイやレイジ、タツヤなど実力者が多いと言う事もあるが、去年も実力者は多かった。

 予選ピリオドでは圧倒的に格下の相手とのバトルでも、勝った後には虚しさを感じる事は無い。

 

「何か今年の俺は全てが上手く行きそうな予感すらする」

「それは怖いな」

 

 そう言うマシロを見てタツヤは苦笑いする。

 話す限りでは今年のマシロはいつも以上に絶好調に見える。

 

「マシロ、あの時の約束は覚えているよね」

 

 タツヤは立ち上がりマシロを真っ直ぐと見る。

 あの時の約束……かつてタッグを組んだ大会の後、マシロとタツヤは世界大会で戦う事を約束している。

 去年は、その約束は叶わなかったが、今年は違う。

 

「僕は君から王座を奪う。メイジンカワグチとしてではなく、ユウキ・タツヤとして君に勝って見せる」

「やれるものなら」

 

 二人の視線はぶつかり合う。

 どちらも譲る気は無いようだ。

 すると、マシロの携帯が鳴り、マシロが確認するとマシロは眉をしかめる。

 

「兄貴……悪い。兄貴からの呼び出し」

 

 メールはユキトからで、会場に来ているからすぐに来いとだけ書かれてある。

 用件は分からないが、わざわざ自分から来ると言う事はそれだけの用である為、決勝トーナメントを前に厄介な事になりそうだ。

 

「そうか。最後にこれだけは言わせてくれ。決勝で待っていてくれ」

「なら、勝ち抜いて来いよ。俺が勝ち上がるのは分かり切ってるからな。尤も、決勝より前に俺と当たったらタツヤは決勝に行けないけどな」

「その時はその時さ」

 

 決勝で戦うと約束した物の、トーナメントの組み合わせ次第では初戦で当たる可能性すらある。

 そして、マシロは誰と当たろうとも負ける気は無い。

 タツヤがマシロと戦う為にはそこまで勝ち続ける必要があった。

 今年の世界大会は例年よりも平均的にレベルが上がっている為、勝ち上がるのも楽ではない。

 

「兄貴から呼び出し受けてるから、行くけど。俺とやりたいなら負けんじゃねーぞ」

 

 マシロはそれだけ言って、ユキトに指定された場所に向かって行く。

 

 

 

 

 

 マシロがユキトに呼び出された場所はメインスタジアムのVIPルームだ。

 スタジアム内にはいくつも、こういった部屋が用意されている。

 幾ら、現チャンピオンと言えども、出場者は入る事は出来ないが、ユキトの方から話しが行っているのか、すんなりと入る事が出来た。

 出入り口を固めている護衛がいるもののVIPルームにはユキトしかいない。

 

「久しぶり」

「挨拶は良い。まずは順調のようだな」

 

 ユキトと会うのは1年くらいになるが、ユキトは久しぶりに弟と会ったところで前置きは最低限の物でしかない。

 ここまで勝ち進んでいる事も、当たり前の事でマシロと褒める気も労う気もない。

 マシロはユキトの対面に座る。

 

「どうも。で、何か用?」

「この大会の後の事だ」

 

 世界大会はこの後から決勝トーナメントが始まり、最大の盛り上がりとなるが、ユキトの中ではその後の事まで考えているようだ。

 ユキトは持って来た鞄の中から書類を出すとマシロの前に出す。 

 マシロは書類を流し読みするが、書類には数式やグラフが書かれているが、まともに学校にすら通っていないマシロには書類に書かれている事の殆どは理解出来ない。

 だが、これがガンダムやガンプラ、ガンプラバトルに関係している事だけは理解出来た。

 

「これは?」

「ガンダム及び、ガンプラバトルに関連している商品の収益を纏めた物だ。ガンプラバトルが始まって10年での収益がとんでもない事になっている事くらいはお前でも理解は出来るだろう」

「まぁ……」

 

 内容は理解出来るとも、グラフを見れば何となくそんな気はする。

 

「父さんもこうなる事を見越していたのだな。流石としか言いようがないな」

 

 まだ、父であるキヨタカが生きていた頃で、マシロが引き取られる以前にキヨタカはユキトにガンダムやガンプラを勧めていた。

 ユキトは幼少期こそは父の影響でガンダムやガンプラにはまっていた時期があったが、歳を重ねるごとに興味を失って行った。

 ユキトからすれば、将来的に更に人気が出る事を見越していたと思っているが、実際のところは一般家庭でもある、父が息子に自分の趣味を押し付けているだけに過ぎない。

 

「それで、兄貴は俺に何をさせない訳?」

「本題はこれからだ。ガンダムの人気はわが社にとっては莫大な利益をもたらす物だと判断した。だからこそ、クロガミグループは毎年のようにガンダムの新作と制作する事で、利益を出す。その為の用意はすでにできている」

 

 ユキトはガンプラバトルによって火の付いたガンダムの人気を利用しようと画策していた。

 毎年のようにガンダムの新作を作れば、その分、ガンプラの種類を増やす事が出来る。

 種類が増えればガンプラバトルにおいても、同じようなガンプラばかりではなく飽きられる事を防ぐ。

 種類も作中で出さずともMSVや外伝作品で改造機などを出す事で幾らでも水増しが出来る。

 その新作のガンダムも、クロガミグループが抱えている人材を使えば、方向性の違った作品を作る事も可能だ。

 その上でグループが総力を挙げて広報する事で、世界レベルで人気を広げる事も出来る。

 更にはガンプラを流通させる為の独自のルートも確保している。

 元々、マシロにエリカを落とさせるように指示をしたのもその為だった。

 そうして、全世界規模でガンダムとガンプラバトルの人気を広める事はクロガミグループの力を持ってすれば容易い。

 

「うちがその気になれば、可能かも知れないけどさ……ガンダムのファンってのは面倒なのも多いぞ。アンチとかさ信者とかさ」

 

 ガンダムは長年続いているシリーズだけあって、ファンの形にも様々だ。

 シリーズ全体を通して好きなファンも居れば特定の作品が好きなファンもいる。

 だが、長年続き多くの作品があるが故に、一部では好き嫌いが出て来るのも当然の流れだ。

 好きな作品の事に熱を上げるのなら、問題がないが、そうもいかないのが現実だ。

 ファンの中には嫌いな作品の事を徹底的に貶める所謂アンチと呼ばれるファンも少なくはない。

 単に嫌いだと思うだけなら、まだしも自分がつまらないと思うと言うだけで作品の粗を探し、制作サイドを貶め、面白いと楽しんでいるファンの感性すら貶める。

 また、逆に一部の作品を好き過ぎて、他の作品を否定するファン、所謂信者と呼ばれるファンたちもおり、アンチと信者は制作サイドにとっても普通に楽しんでいるファンにとっても害悪でしかない。

 当然、毎年のように新作を作れば、アンチや信者の恰好の的となる。

 

 

「無論。その辺りの事は問題はない。所詮、奴らは言いたい事を言うだけで、自分では何もできない屑どもだ。寧ろ、煽ってくれるのであれば好都合だ」

 

 ファンにとっては害悪でしかない存在もユキトにとっては利用価値がある。

 アンチにしろ、信者にしろ、作品を叩けば叩く程、好きなファンの感情を逆なでする事になる。

 そうなれば、ファンは更にのめり込んでいくだろう。

 それはクロガミグループにとっても、好都合な事だ。

 

「そんなやり方で長続きが出来るとは思わないけど」

「だろうな。長く続いても10年くらいと言ったところだろうな。だが、こちらが不利益を被る前に切り捨てる」

 

 ファン同士で貶めあうと言う事が続けば、やがてはガンダムと言うシリーズの存続にすら関わって来るだろう。

 だが、ユキトにとっては使い潰しても構わなかった。

 利益を得るだけ得た後は、グループに損害を出す前に切り捨てれば問題はない。

 

「何だよそれ……」

「安心しろ。切り捨てたとしてもお前の功績次第ではうちで面倒を見てやる」

 

 ガンダムやガンプラバトルが廃れてしまえば、一族においてもマシロの存在価値は無くなる。

 ユキトはそれを気にしていると思い、マシロの面倒を見ると言う。

 一族からすれば、マシロが死ぬまで面倒を見る事くらいは何の負担でもない。

 

「その代り、お前にはそれまでしっかりとグループの役に立って貰う」

「俺に何をさせる気だよ」

「今まで通りだ。観客達が求めている物はギリギリの緊張感と圧倒的な力で蹂躙する爽快感だ。前者は幾らでも作り出す事が出来る。お前がやるのは後者だ。圧倒的な力で勝利する絶対的な王者だ」

 

 ガンプラバトルでギリギリのバトルは観客を燃え上がらせる。

 それと同時に、表にこそ出さないが、圧倒的に相手を蹂躙する光景もまた観客が求める物だ。

 マシロには圧倒的な力を持った絶対的な王者として君臨し続ける事が、ユキトがマシロに望んでいる事だ。

 その為に、ユキトはマシロの支援を行って来た。

 外部から祭り上げられるよりも、確実に操る事の出来る内部の人間を使った方が良いと言う判断だ。

 

「作り出すね……」

 

 ユキトは前者、ギリギリのバトルは作り出す事が出来ると言っていた。

 つまりは、バトルを予め内容を決めると言う事だ。

 ガンダムを初めとした戦闘があるフィクションで手に汗握る戦いは全て製作者が意図的に作っている為、ガンプラバトルだろうと可能だ。

 だが、それでは客が満足しようとも、戦っているファイターはシナリオ通りに戦っているだけに過ぎない。

 それではファイターが満足できないが、ユキトから見ればそんな事はどうでも良いのだろう。

 

「だからお前は余計な事を考えずに勝ち続けろ」

「分かったよ。兄さん」

 

 ユキトはそう言うとノートパソコンを出して、別の仕事を始める。

 マシロに対する用件は終わり、後は用がないのか、マシロの事を一切気にしている様子はない。

 マシロもこれ以上、ユキトと話しをする気は無くVIPルームから出て行く。

 

(なぁ、兄貴……兄貴がやろうとしている事はかつて誰もがやらなかった悪行だって事。分かってんのか?)

 

 ガンダムは制作サイドからすれば商売である為、ある程度は儲ける為の事は考えている。

 それでもここまで露骨にはやっていないだろう。

 そして、ガンプラバトルも今までとは違ってくる。

 今まではただ、勝利し続け、一族の事には必要最低限の関わりで使える時に使っていたに過ぎないが、マシロはガンプラバトルをも自分達の為に捻じ曲げようとしているクロガミ一族と言う物を思い知る事となる。

 だが、今さらどうする事も出来ない。

 全ては自分の意志で全てを捨ててここにいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 決勝トーナメントを2日後に控えた大事な時期にセイは相棒のレイジを喧嘩をしていた。

 原因はレイジがフェリーニとのバトルで損傷したスタービルドストライクを修理すると言いだした事に始まる。

 スタービルドストライクの損傷は決して軽くはないが、ギリギリのところで決勝トーナメントに間に合う事は出来そうだった。

 そんな時にレイジが自分も手伝うを言い始めた。

 セイはレイジが一度もガンプラを作った事が無い為、知識も技術もない事を知っている事もあって気持ちだけ受け取ろうとした。

 だが、レイジは頑なに手伝うと言って聞かなかった。

 そうして、口論となり弾みでスタービルドストライクが軽く壊れた事で、レイジがホテルを飛び出した。

 

「何だよ。レイジの奴……」

 

 レイジが飛び出した後、セイの方も頭に血が昇り、集中力が欠けてスタービルドストライクの修理が捗らず、気分転換の為に散歩していた。

 尤も、散歩をしていても気分転換にはならず、歩きながら一人でレイジに対する愚痴ばかりが出て来る。

 一人愚痴りながら、歩いていると昨日と同様にベンチに座りながらボーっとしているマシロと出くわす。

 

「何だ。イオリ二世か。今日はレイジと一緒じゃないのか?」

「別にいつもレイジと一緒って事はないですよ」

 

 レイジの事で機嫌の悪かったセイは、少し棘のある返しをしてしまう。

 

 

「喧嘩でもしたのかよ」

 

 図星を突かれてセイはあからさまに視線を逸らす。

 

「まぁ良いんだけどさ。この国では喧嘩する程仲が良いって言うし。そんな事よりもバトルに付き合えよ」

「えっと……僕はバトルの方は……」

 

 コンビを組むファイターとビルダーが喧嘩すると言う事は珍しくはない。

 そうやって、喧嘩し仲直りをする事で更に強くなるとマシロも聞いた事がある。

 セイとレイジが喧嘩をしたと言う事は、その時なのだろう。

 仮にコンビが解散したとしたら、マシロの見込み違いだったと言う事なだけだ。

 それよりも、マシロにとっては昨日、ユキトと話した事を考えたくは無い為、誰でも良いからバトルの相手を探していた。

 ガウェインやアイラを相手にすれば、どうしても勝つ為のバトルをしてしまう為、相手は勝とうを意識しなくても勝てる相手が望ましかった。

 そう言う意味ではセイは丁度良い相手だった。

 一方のセイは世界大会の地区予選で毎年一回戦敗退で、実力は並以下でしかない。

 本人もそれを自覚しているからこそ、ビルダーに徹してレイジと組んでいる。

 だからこそ、現役の世界王者とバトルしても相手にすらならない事は分かり切っている。

 

「それにガンプラは持ってませんし……」

「ガンプラは俺のを貸してやる。それに子供相手に本気を出す程、俺も子供じゃないからな」

「それなら……」

 

 勝つ事が出来ない事は分かり切っている。

 だが、本気で無ければ運が良ければ一矢報いる事が出来るかも知れない。

 もしも、それが可能なら、レイジを見返す事が出来るかも知れないとセイは考えてバトルの申し出を受ける事にした。

 それから二人は会場のフリーバトルが行えるバトルシステムに向かうが、そこでセイは軽く後悔する事になる。

 マシロから借りたガンプラは白く塗装されたシャイニングガンダムだった。

 一方のマシロは決勝トーナメント前だと言う事もありガンダム∀GE-1ではなくGエグゼスを使用する。

 セイの見立てでは、シャイニングガンダムは白で塗装されているものの、どちらのガンプラも素組で完成度に差はない。

 だが、シャイニングガンダムは格闘特化機で、Gエグゼスは高機動型のガンプラだ。

 戦い方が限られて来るシャイニングガンダムと高機動ながらもバランスの取れた装備を持つGエグゼスではセイの方が分が悪い。

 その上、ガンプラを借りている手前、自分が不利だからとガンプラを交換して欲しいとも言い出せない。

 

「やってやるさ。レイジに出来たんだ。僕にだって……」

 

 マシロ相手にある程度でも戦えたら、レイジを見返せる。

 その一心でセイは久しぶりのバトルを行う。

 今回のバトルフィールドはオーソドックスは地上ステージだ。

 バトルが開始され、Gエグゼスがビームライフルで先制攻撃を行う。

 その攻撃をシャイニングガンダムは紙一重で回避した。

 

「このガンプラ……凄く扱い易い」

 

 セイが使うガンプラは自分で制作した物が殆どだ。

 実家が模型店と言う事で幼い頃からガンプラに触れる機会の多かった事もあり、セイのビルダーとしての実力は世界レベルのファイターでも認める程だ。

 そんなセイのガンプラの性能は特別な改造をしなくても、高い性能を誇る。

 だが、それ故に扱う為にはある程度の実力が必要となっている。

 ガンプラの性能にファイターとしてのセイの実力は全く追いついていない事もあって、セイは実力を発揮する事が出来なかった。

 しかし、素組同然のシャイニングガンダムならセイの実力でも十分に扱う事が出来るようだ。

 

「これなら……僕にだって!」

 

 自分の思い通りにガンプラを動かせる為、セイは今までバトルの腕には自信が無かったが、少し自信を取り戻す。

 尤も、マシロは当てる気のない様子見の攻撃で、レイジなら余裕で回避して反撃が出来た。

 シャイニングガンダムはGエグゼスとの距離を詰めると、パンチやキックで攻めたてる。

 その攻撃を、シールドで流すか最低限の動きでGエグゼスは対応する。

 

「当たらない!」

「動きが単調過ぎる」

 

 今まではガンプラを思うように動かせ無かった為、セイの攻撃は単調で次に繋がっていない。

 だからこそ、その一撃さえ防いでしまえば問題がない。

 シャイニングガンダムが大きく振りかぶってパンチを繰り出すが、Gエグゼスはギリギリまで引きつけて回避するのと同時に足を引っ掛けてシャイニングガンダムをこけさせる。

 

「強い……やっぱり僕なんかじゃ……」

「諦めんのか?」

 

 運が良ければマシロに一矢報いる事が出来るかも知れない。

 そんな甘い希望はマシロに軽く打ち砕かれた。

 ガンプラの性能は互角で、本気を出していなくても、セイとマシロとの間には決して超える事の出来ない絶対的な差があると思い知らされるだけだ。

 どんなに足掻こうと勝ち目はない。

 このまま続けても一矢報いる事も出来ずに無様に負けるだけだ。

 ならば、潔くここで負けを認めるのも一つの手だ。

 どの道、相手はマシロである以上、負けたところで何一つ恥ずかしい事は無く、負けて当然な相手だ。

 だが、シャイニングガンダムは立ち上がり、Gエグゼスに向かって行く。

 勢いを乗せたパンチもGエグゼスに届く事は無く、シールドを突き出して吹き飛ばされる。

 

(何かないか……このまま負けるとしても何か出来る事は……レイジは諦めなかったんだ)

 

 以前にマオと組んでレイジはマシロとバトルしている。

 その時も数の差をもろともせずにレイジとマオを圧倒した。

 あの時も圧倒的な差を前にレイジは諦めずに向かって行った。

 ここで諦めてしまったら、レイジを見返すことなど一生出来ない。

 だからこそ、セイはマシロに立ち向かう。

 セイは頭をフルに回転させて状況を変える方法を模索した。

 自分と相手のガンプラの特性、バトルフィールド……状況を変える事が出来れば何でも良かった。

 不思議と周囲の情報は頭の中に入って来た。

 セイは気づいていないが、レイジがここまでのバトルを通して成長しているようにセイもレイジをサポートする事で、ファイターとしては得られない視野の広さを会得していた。

 セコンドは目の前の相手に集中しているファイターとは違い、常に変わるバトルの様子を見ながらガンプラの状態や相手のガンプラの打開策などを考えなければならない。

 そして、セイは状況を変えられるかも知れないたった一つの答えに辿りつく。

 

(これだ!)

 

 武器スロットの中にそれがあった。

 それを使うとシャイニングガンダムの右手が光輝く。

 シャイニングガンダムの代名詞とも言える必殺技のシャイニングフィンガーだ。

 当然の事ながら、シャイニングガンダムの武器スロットにシャイニングフィンガーは登録してあった。

 これなら通常の攻撃よりも攻撃力が高い。

 

「シャイニングフィンガーか……なら」

 

 シャイニングガンダムがシャイニングフィンガーを使うのを見たマシロはシールドとビームライフルを捨てて両手にビームサーベルを持たせる。

 Gエグゼスが二本のビームサーベルを構え、シャイニングガンダムがシャイニングフィンガーを構える。

 

「シャ、シャイニングフィンガー!」

「ウルフファング」

 

 シャイニングガンダムが勢いよく、Gエグゼスに突っ込む。

 シャイニングフィンガーがGエグゼスを捕えるかと思った瞬間にセイはGエグゼスを見失った。

 そして、シャイニングガンダムは一瞬の内にGエグゼスの二本のビームサーベルでバラバラに切断された。

 ガンプラの性能に差は無かった筈だ。

 だが、セイでは反応出来ない程の動きを可能にしたのはマシロの実力なのだろう。

 改めてセイは自分では一矢報いる事はおろか、対等に戦う事すらも出来ない相手だったと言う事を痛感した。

 マシロとの実力差を思い知らされたセイは落ち込むどころか、清々しくすらあった。

 ここまで差を見せつけられてしまえば、悔しさすら湧いてこない。

 

「あ……マシロさん! ごめんなさい!」

 

 バトルが終わって、負けた余韻に浸る事無く、セイはマシロに謝った。

 今のバトルでマシロから借りたシャイニングガンダムはバラバラに壊れてしまった。

 パッと見る限りでは簡単には修理出来ない程に壊れている。

 壊したのはマシロだが、セイは自分がもっとうまく戦えていたらここまで壊れずに済んだかも知れないと思った。

 そして、セイはある事に気が付いた。

 今までは自分の作ったガンプラでバトルをしていた為、バトルに負けて壊れてもまた直せば良いと思っていた。

 だが、今回は人が作ったガンプラを使ってバトルをして壊した。

 自分の作ったガンプラの時とは違い、壊してしまった事に対して申し訳ないと言う気持ちとなった。

 それは今までレイジが感じていた事でもあった。

 セイはレイジの事を全面的に信用している為、レイジの操作なら負けて修理不能になっても納得し、その事でレイジを責めたりはしない。

 全ては自分が納得した上で、レイジに自分のガンプラを託しているからだ。

 しかし、レイジからしてみれば、自分を信じて託したガンプラを壊しているのだ、マシロのガンプラを壊してしまったセイの比ではない。

 そんな気持ちを抱えて、常にレイジはバトルしていたのだと、セイは初めて知る事になる。

 だからこそ、レイジはフェリーニとのバトルで損傷したスタービルドストライクを直す手伝いをしようとしつこく言って来たのだろう。

 

「マシロさんはそれを僕に教える為にこのバトルをしたんですね!」

「……ああ、うん。まぁ、そんなところだ」

 

 セイからすれば、並以下の実力しかない自分にマシロがバトルを挑む訳が無い為、自分にレイジの気持ちを教える為にバトルをしたのだと解釈した。

 だが、実際のところ誰でも良かったとは純粋に感謝の眼差しを向けているセイに対して言える訳もなかった。

 

「それに今回のバトルで見えて来た事もあります。僕は帰ってスタービルドストライクの修理に専念します!」

 

 セイはバトルにこそ負けたが、ファイターとしてバトルした事でレイジの気持ちを理解しただけでなく、何か閃いたようだ。

 そんなセイを見て、マシロは罪悪感を覚えた。

 この世界大会が終われば、クロガミグループによりガンダムもガンプラバトルもクロガミグループが利益を得る為だけの道具をなる。

 そして、自分はガンプラバトルを破壊する側の人間だと言う事を思い知らされる。

 

 

 

 

 

 その事すらも忘れる為に戻ったマシロをガウェインを相手にひたすらバトルを繰り返していた。

 だが、何度やっても忘れる事などできはしない。

 今更どうする事もマシロには出来ない。

 ガウェインとのバトルが10回を超える頃に、アイラが帰って来る。

 そして、アイラはバトルが終わるタイミングを見計らいマシロに近づく。

 

「マシロ。これを見て頂戴」

 

 アイラは自信満々にガンプラをマシロに見せる。

 一般的なガンプラではなくそれはSDガンダムと呼ばれるシリーズだ。

 作中に出て来るモビルスールを縮小したガンプラとは違い、2等身となっている為、女の子や子供に人気のシリーズだ。

 アイラが見せて来たのはコマンドガンダムだった。

 

「色々あって作って見たけど、どうよ。私だって少しは作れるのよ」

 

 バトルの練習をある程度、真面目に練習するようになっても、アイラはガンプラを作った事は無い。

 マシロも自分の使うガンプラの事をきちんと理解さえしていれば、わざわざ自分で作る必要はないと、制作に関しては特に課題も出していなかった。

 寧ろ、時間が限られている以上、ガンプラの制作技術よりもバトルの技術を優先させていた。

 だが、どういう訳か、アイラは自分でガンプラを制作したようだ。

 

「どうって……それ、墨入れとつや消しはしてるけど、初心者レベルの出来だろ。何、その程度で良い気になってんだよ」

 

 アイラのコマンドガンダムは初心者が制作したにしては基本を押さえて丁寧に作られている。

 アイラも出来には自信を持っていたが、マシロの反応は冷たい。

 

「……マシロの馬鹿!」

 

 自信作を酷評されて、アイラは怒りながら出て行く。

 その様子を見てガウェインはため息をつく。

 

「アレはないわ。どう見たって褒めて欲しいって言ってるようなもんだろ」

 

 ガウェインはアイラとは別に親しくはないが、流石にアイラがマシロに褒めて欲しくてコマンドガンダムを見せて来たのは明白だ。

 誰でも初めてガンプラを上手く作れた時は親や兄弟、友達に見せて凄いと褒めて欲しいと思うのは良くある事だ。

 アイラにとっては、褒めて欲しい相手と言うのはマシロだったのだろう。

 

「良いんだよ。あれで。大体さ、俺が師匠とか始めから柄じゃなかったんだよ。俺は昔から強くなる為に必要な物と要らない物を選んで来た。だから選んだだけだ。俺が俺である為にアイツは要らない」

 

 マシロはガンプラバトルに必要な物を選んで来た。

 必要ないと判断した物は捨てた。

 そして、アイラも必要ないと判断した。

 ユキトがガンプラバトルを売り物にすると言う事はマシロにとっては自分にとっての全てを壊される事だ。

 だが、ガンプラバトル以外に取り柄の無いマシロにはどうする事も出来ない。

 そんなところにアイラが居たら、マシロは昔のただのマシロであった時の事を懐かしみ戻りたくなって来るだろう。

 今までアイラの面倒を見たのも心の奥底ではあの時に戻りたいと言う願望があったのかも知れない。

 しかし、どんなに望んだところで、マシロには帰る場所はクロガミ一族の中にしかない。

 これも自分で選んで捨ててしまった事だ。

 

「結局、俺は何をしたかったんだろうな」

 

 マシロはそう呟いて、バトルを切り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決勝トーナメントを翌日に控えた頃に、ベスト16に残ったファイター達の組み合わせが公表された。

 その組み合わせを見たマシロは顔を顰めている。

 

(なんだこれ。ずいぶんと露骨に操作されてるな)

 

 トーナメン表を見たマシロの第一印象がそれだ。

 マシロはAブロックの第一試合で対戦相手はアルゼンチン代表の双子のファイターであるレナート兄弟だ。

 それはどうでも良い。

 マシロとは逆のBブロックにはメイジンカワグチの名がある事は今はどうでも良かった。

 問題はAブロックとBブロックの組み合わせにある。

 Aブロックには他にはルワン・ダラーラにアイラ、エリカにコウスケの4人と後はギリギリ出場したマシロも注目する気にもなれないレベルのファイターが2人だ。

 対するBブロックはその大半が全勝組となっている。

 流石にこれを偶然と考えるのは不自然だ。

 まるで何者かがBブロックのファイターの誰かを意図的に強敵と当てて負けさせようとしているかのようだった。

 仮に最後まで勝ち上がったとしても決勝で自分を当てると言う狙いが見える。

 

(となると……レイジとセイか)

 

 Bブロックで狙われている可能性として考えられるのがセイとレイジだ。

 第7ピリオドで妨害された他にも考えてみれば、第3ピリオドでレイジが怪我を負った状態で圧倒的な不利な条件でバトルをさせられている。

 もはや、運が悪いでは済まされないレベルだ。

 決勝トーナメントにしても二人の1回戦の相手はここまで圧倒的な火力を駆使して勝って来たマオで2回戦には粒子を使った技を使うニルスと大会でも最高クラスの射撃能力を持つアオイのどちらかだ。

 2回戦を勝ち進んだとしても、3回戦ではメイジンと当たりかねない。

 その上で決勝で自分と当たる。

 

「流石にこいつは……」

 

 セイとレイジに次々と強敵を当てる事自体に不満はない。

 だが、不満点があるとすればAブロックの組み合わせだ。

 1回戦で当たるレナート兄弟はともかく、2回戦で当たるのはルワンかエリカだ。

 どちらもすでに一回は勝っている相手だ。

 3回戦は順当にいけばアイラとなるが、アイラとは何度もバトルしている。

 トーナメントと言う方式上、マシロが優勝までに戦えるのは4回と限られて来る。

 その限られた回数の中で、強い相手と戦いたいが、メイジンとレイジと両方を戦う事は出来ない。

 

「仕方が無い」

 

 今までは一族を動かすことはしなかったが、この大会が終わればガンプラバトルが変わってしまう。

 その為、貴重な残り少ないバトルを邪魔しようとするのであれば、マシロも黙ってはいない。

 流石に明日から決勝戦と言う事もあって、レイコを使う事は出来ないが、クロガミグループの情報網があれば、数日で今までセイとレイジを妨害するように指示を出した相手を割り出すことが出来る。

 マシロはすぐにその為の指示を出した。

 

 

 

 

 

 

 決勝トーナメントが明日に迫り、会場内のPPSE社ワークスチームは慌ただしく動いていた。

 本社の方から予選ピリオドで得たケンプファーアメイジングのデータから、決勝トーナメント用のガンプラを用意していた。

 ギリギリまで制作をしていた事もあり、メイジンの手に渡るのは前日となっていた。

 

「これがアメイジングエクシアか」

「そう。PPSE社が総力を挙げて制作した君専用のガンプラだ」

 

 メイジンのセコンドとしてついているアランは自慢げに説明する。

 メイジンの為に用意された新しいガンプラはガンダムOOのファーストシーズンの主人公機であるガンダムエクシアを改造したガンダムアメイジングエクシアだ。

 ケンプファーアメイジングは中遠距離でのバトルに重きを置き、アメイジングウェポンバインダーにより毎回ルールの変わる予選ピリオドに対応できる汎用性を重視したガンプラだった。

 一方のアメイジングエクシアは中近距離での戦闘を主眼において、決勝トーナメントの共通のルールである一対一でのバトルを重視したガンプラだ。

 

「本体は届いても武装は最低限の物しか用意されていないようだが?」

「まぁね。そこは僕達の方で作るしかないね。けど、そうする事でこのアメイジングエクシアは完璧な状態で完成する」

 

 現在のアメイジングエクシアはバトル可能な状態ではあるが、武装はシールドとGNソードをベースとしたアメイジングGNソードのみだ。

 ここから実際に操作するメイジンが必要と思う武器を自ら制作する事でアメイジングエクシアは完成する事になる。

 

「余り時間がないのに開発班も無茶を言う」

「そう言うなよ。彼らだって君を勝たせる為に最大限の努力をしているんだ。今回だって……」

「理解はしている」

 

 最後をメイジンに投げる形となったのは開発班の怠慢ではない。

 メイジンを優勝させる為には最強の王者であるマシロに勝つ事は必須だ。

 マシロとの戦闘データは第二ピリオドの物があるが、記録映像と実際のバトルとでは違ってくる。

 だからこそ、実際に戦ったメイジン自らが、マシロに勝つ為に必要な物を付け加えれるように必要最低限の装備しか用意しなかった。

 

「分かってるよ。まずは目の前の相手の方だ。君の1回戦の相手はイギリス代表のジョン・エアーズ・マッケンジー」

「2代目メイジンのライバルだったマッケンジー卿か」

 

 メイジンの1回戦の相手は今大会では最年長のファイターであるイギリス代表のジョン・エアーズ・マッケンジーだった。

 大会最年長の78歳と言う高齢と言う事もあり、ここまで目立った活躍はない。

 だが、ガンプラバトル歴はメイジンとは大きな差はないが、ガンプラ歴ではメイジンの何倍も長くやってきている。

 相手は自分以上にガンプラの事を知り、かつては2代目メイジンカワグチのライバルでもあったファイターだ。

 

「余り気負う必要はないさ。孫のジュリアンならともかく今のあの人なら君とアメイジングエクシアなら十分に勝機はある」

「どうだろうな」

 

 アランはメイジンの実力とアメイジングエクシアの性能に絶対的な信頼を持っている。

 だからこそ、メイジンが負ける事など考えてはいない。

 

「心配症だね。無理もないか。まだアメイジングエクシアは調整段階。トランザムも未調整だからね」

 

 メイジンの1回戦は初日に行われる。

 決勝トーナメントは基本的には1日2回のバトルで進められる。

 午前中にAブロックが、午後からBブロックのバトルだ。

 メイジンのバトルはマシロのバトルの後になる。

 流石にそれまでに装備を用意する事は出来ない。

 その上で、開発の段階ではガンダムOOのガンダムの多くが持つトランザムシステムは搭載する事にはなっていなかった。

 安定して高い性能を発揮する為には、一時的とはいえ性能を底上げする代わりに使用後の性能がガタ落ちするトランザムは不要と言うのが研究班の見解だった。

 だが、第二ピリオドで見せたガンダム∀GE-1 フルアサルトグランサのバーストモードの存在が、研究班も脅威を考えていざと言う時の切り札であるトランザムシステムの搭載を急遽決まった。

 そのせいでトランザムシステムは未調整となっている。

 

「だからトランザムは使わないでくれよ」

「分かっている。そこまで危険な賭けには出る気は無い」

「それは何よりだ。油断が無ければ1回戦の勝利は固い。問題は次の2回戦だね」

「イタリアのフェリーニか」

 

 初戦の相手は油断さえなければ脅威とはなり得ない。

 次の2回戦で予想される対戦相手はイタリア代表のリカルド・フェリーニだ。 

 フェリーニの1回戦の相手はありすだが、ありすのここまでの戦歴を考えると2回戦の相手はフェリーニの可能性が高い。

 1回戦以上に油断の出来ない相手だ。

 

「アラン。これは僕に対して課せられた試練だと思っているんだ。Bブロックには多くの強敵がひしめいている。だからこそ、そんなBブロックを勝ち抜いてこそ、僕はマシロの前に立つ資格があるんだ」

 

 先ほどまでのメイジンとしてではなく、ユウキ・タツヤとしての言葉だ。

 BブロックはAブロックと比べて実力の高いファイターが集中している。

 そんなBブロックを勝ち抜いてこそ、マシロと対等に対峙する資格が与えられると言うのが、このトーナメント表を見たタツヤの感想だ。

 それぞれの想いや思惑が交差しながら、遂に世界大会も終盤の決勝トーナメントの火蓋が切って落とされる。

 

 

 

 

 

 





決勝トーナメントのトーナメント表です。


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