ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
世界大会決勝トーナメントの当日を迎え、メインスタジアムには大勢の観客が詰めかけている。
特に初戦は前回の王者であるマシロのバトルと言う事もあり、観客はマシロのバトルに期待を寄せている。
会場の中継をメイジンは会場内の控室で見ていた。
「相手はアルゼンチンのレナート兄弟だ。予選ピリオドを全勝で勝って来たものの目立った活躍は第7ピリオドでイオリ・セイ、レイジ組を破ったくらいだが……一回戦の勝敗は決まったも同然かな」
「どうだろうな。能ある鷹は爪を隠すと言う」
レナート兄弟の戦果はマシロやメイジンと同じ全勝で勝ち抜いて来た。
だが、圧倒的な実力で勝ち抜いたマシロやメイジンとは違い、レナート兄弟は目立った戦果を挙げていない。
これまでのバトルを見る限りでは、マシロとの実力差は明白でマシロの初戦の勝利は固いように見える。
しかし、メイジンは逆に目立たな過ぎて違和感を感じていた。
決勝トーナメントに勝ち抜いて来たファイターは誰もが自慢できる武器を持っている。
レナート兄弟は今まで毎回使用するガンプラを変更している事もあって、目に見えた武器は無い。
逆に言えば、そんな武器を見せる事無くここまで勝ち抜いて来たと言う事だ。
「尤も、それは彼も同じことかも知れんがな」
レナート兄弟が何かを隠していると言う事は明白だ。
だが、マシロもまた全てを見せてはいない。
予選第8ピリオドで見せた荒々しいバトルもそうだが、マシロは勝つ為に全てを晒さない。
一部の手札を晒して相手を揺さぶりにかけて置いて、状況に応じて新たな手札を見せて相手を翻弄する。
それで去年の世界大会は誰一人としてマシロを出し抜く事が出来ずに優勝している。
今年も去年と同じガンプラを使っている以上はまだ、マシロには隠している手札があると言う事になる。
つまりは、この一回戦は双方が手札を隠した状態でのバトルと言う事だ。
隠している手札がより強い方がこのバトルを制するだろう。
「確かに、そう言う点では一回戦の相手はレナート兄弟で良かったとも言えるか……」
手札を隠すマシロだが、すでに公開した手札で対処可能であれば、新たなに手札を切っては来ないだろう。
だからこそ、実力を隠して来たレナート兄弟はマシロの新しい手札を切らせるのにはうってつけの相手だ。
「メイジン! 大変です!」
マシロとレナート兄弟のバトルが始まるのを待っていると、アランの部下が慌てて入って来る。
「何事だ?」
「先ほど、メイジンの対戦相手からファイターの交代申請が出されて受理されたと……」
「交代だと? マッケンジー卿に何があった?」
世界大会のルールにおいて、エントリー時に登録したファイター以外での交代は認められていない。
だが、場合によっては例外が認められていた。
その条件として本来の出場選手が怪我、または病気などで大会を続けることが出来ないと医師の判断があった時と言うのが前提としてある。
一つ目は交代が可能なのは決勝トーナメントのみである事だ。
PPSE社としても様々なところから融資を受けて、大会を開催している以上は大会は失敗出来ない。
予選ピリオドなら出場者の一人くらいの欠場では問題がないが、決勝トーナメントとなればそうもいかない。
バトルが一つ抜けるだけでも盛り上がりに欠けて大損害に繋がりかねない。
そうなるくらいなら、交代してでもバトルを成立させると言う事は重要だ。
二つ目は代わりのファイターの実力だ。
決勝トーナメントは全世界にリアルタイムで中継されている。
その為、代わりのファイターの実力が決勝トーナメントに参加するに相応しくないファイターを代わりにされると、盛り上がりに欠ける。
それを避ける為にも交代するファイターの実力も必要だ。
メイジンの対戦相手であるジョン・エアーズ・マッケンジーが交代申請を出してその申請が通ったと言う事はこれらの条件を全てクリアした事になる。
「それでカワグチの相手は誰になったんだ?」
「代わりのファイターの名はジュリアン・マッケンジーとあります」
「ジュリアンだと!」
その名を聞いて、メイジンとアランは驚愕して顔を見合わせる。
二人はその名を知っていた。
メイジンがユウキ・タツヤとして、マシロと出会う以前にアランと共にガンプラ塾にいた時の先輩がジュリアンだ。
ジュリアンはガンプラ塾の一期制で、三代目メイジンカワグチに最も近いファイターとされていた。
そして、タツヤはガンプラ塾で一度もジュリアンに勝った事は無い。
「全く……まさか、こんなところで超えるべき壁が出て来るなんてね」
ジュリアンはガンプラ塾と二代目メイジンカワグチの方針を受け入れる事が出来ずにガンプラ塾を去り、ガンプラバトルから離れた。
多少のブランクはあるとしても、その実力は健在だと考えるべきだ。
何故、ファイターの交代と言う過去にも殆どない事が起きたかと言う事はこの際、どうでも良い。
だが、タツヤにとってはマシロに挑む前に越えねばならない壁が目の前に立ちはだかったと言う事だけは事実だった。
マシロとレナート兄弟のバトルの開始時間がまじかに迫って来るが、控室のレナート兄弟は対戦相手が現王者と言うにも関わらず余裕を見せていた。
尤も、弟のフリオはネットの予想を見て不満そうにしていた。
「どいつもこいつも……好き勝手に言いやがって」
「言わせておけ」
ネット上では一回戦で、どんな風にレナート兄弟を倒すと言う話題で持ちきりだ。
その意見でもレナート兄弟が勝つ事はおろか、善戦すら出来ずに負けると言う事を前提にどれだけ圧倒的な差を見せつけるかで議論は盛り上がっている。
「けどよ……」
「気にすることはない。確かに去年の大会で優勝した実力は本物だ。それに二代目に勝ったと言う噂すらある」
言いたい放題入れているが、兄のマリオは動じた様子はない。
結局のところ、ネットの意見は自分達の真の実力を知らないから言える事だ。
「実力はあっても所詮は全てを与えられている坊やだ。俺達の戦争をすれば勝ち目は十分にある」
レナート兄弟からすれば、マシロはクロガミ一族と言う家に生まれて自分で得ることもなく、全てを与えられている子供に過ぎない。
実力がある事は認めざる負えない事実だが、決して勝てない相手ではない。
「だから余り熱くなるな。こちらのペースにさえ持ち込めば負ける事はない」
「分かってるけどよ。ようやくあの時の屈辱を返すことが出来ると思うと……」
「それは俺も同じだ。だが、忘れるなよ。俺達にとってマシロ・クロガミは通過点に過ぎない。最終的には決勝で三代目メイジンカワグチの化けの皮を剥がす事だ」
レナート兄弟の最終的な目的は優勝以上にメイジンカワグチに勝利して、今のメイジンはメイジンたる実力がないと言う事を世界大会を通じて世界に見せつける事だ。
だが同時にレナート兄弟はマシロに恨みを持っていた。
数年前、たまたま二人で出場したタッグバトル大会において、レナート兄弟はマシロと出会っていた。
その時のマリオのガンプラはガンダムデュナメスでフリオのガンプラはガンダムサバーニャだった。
予選のバトルロイヤルで二人は身を隠しトラップで周囲を固めて狙撃で敵を仕留めていた。
順調に撃墜数を稼いでいたところに、マシロのガンダム∀GE-1が通りかかり、トラップをあっさりと掻い潜り二人のガンプラを撃墜した。
ただ、負けたのならいざ知らず、その時のマシロはただ近くにいたから仕留めた程度でレナート兄弟の事など眼中にないと言う事が伝わって来た。
それは二人にとっては何よりの屈辱だった。
そんなマシロがタッグバトル大会で優勝しただけでなく、去年の世界大会で優勝した事を知り、この世界大会の場であの時の屈辱を晴らす為にレナート兄弟は出場した。
尤も、出場後に三代目のメイジンカワグチが大会に出て来る事になり、たった一度の屈辱の復讐よりもメイジンカワグチのメッキを剥がすことを最優先事項に変更にはなったが、復讐も忘れてはいない。
「あの時、奴はこう言った。俺と倒したければもっとトラップを用意して来いと。お望み通りに地獄を見せてやるさ」
「当然だ。兄貴!」
レナート兄弟は過去の復讐の為にマシロとのバトルに向かう。
同時刻、マシロの控室からマシロがレイコと共に最後の打ち合わせを終えて、会場に向かっていた。
予選ピリオドから今日までの間に何があったのか知らないがマシロの様子が変わったと言う事にレイコは気が付いていた。
今日もバトルが始まる前から、臨戦態勢でまるで触れれば全てを切り裂く、抜き身の刀のようなオーラを全身にまとい、血に飢えた獣を思わせた。
何がここまでマシロを駆り立てるのかは分からないが、今日のマシロは今までとは一味違う。
だが、味方である筈の自分すらも切り裂きそうな感覚すら覚える今日のマシロには正直近づきたくはないとも思いながらも、逃げる訳には行かない為、少し離れている。
二人がメインスタジアムのステージに上がり、バトルシステムの前に立つ。
「よう。チャンピオンさんよ。あの時の借りを返しに遥々来てやったぜ」
フリオがマシロを煽るがマシロは完全に無視してガンプラをバトルシステムに置いた。
「ちっ……無視かよ」
「気にするな。向こうのペースに乗せられるぞ」
完全に無視されて、頭に血が昇りかけるフリオをマリオが沈める。
「出るぞ」
そして、決勝トーナメントの第一回戦第一試合が開始する。
今回のバトルフィールドは廃墟となっている。
マシロの装備はフルアサルトジャケットだ。
「マシロ。相手のガンプラは見えた?」
「ジムスナイパーⅡの改造機だ。外付けで色々と持ち込んでいた」
「スナイパー……プランはそのままで構わないわ」
「了解」
マシロはバトルフィールドから出た一瞬の間にレナート兄弟のガンプラを見ていた。
今までは殆ど改造していなかったが、今回はレナート兄弟も決勝トーナメント用のガンプラであるジムスナイパーK9を投入している。
マシロの見立て通り、ジムスナイパーK9はジムスナイパーⅡの改造機だ。
レイコはジムスナイパーⅡの事は知らないが、スナイパーと名のつく以上は狙撃機であると言う頃は理解した。
そして、相手が狙撃用の機体を使うとなれば、事前の作戦のままでいい。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは手頃な広場を見つけると、広場の中央の陣取った。
バトルが開始されて、すぐにバトルが止まった。
マシロのガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは広場の中央から全く動かずに、レナート兄弟のジムスナイパーK9は廃墟の建物に姿を隠して動かない。
膠着状態が1時間程続き、バトルを期待していた観客からは口々に野次が飛ばされる。
だが、マシロもレナート兄弟も野次には動じない。
「そろそろか」
余り時間を使いすぎるとタイムオーバーとなる為、マシロが先に動き出す。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットが動き出そうとした瞬間にガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの四肢が爆発する。
「何が起きたの!」
「狼狽えるな。四肢の関節にジオン兵が爆弾を仕掛けただけだ」
「いつの間に……」
「小さいからレイコは気づかなかったんだろう。想定内だ」
レイコは完全に裏を突かれていた。
この一時間の間にジムスナイパーK9はバックパックに内容されているジオン兵を使って、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの四肢に爆弾を仕掛けていた。
その余りにの小ささにバトルフィールドの地形を把握していたレイコは完全に気づかなかった。
レイコはガンプラバトルの作戦を立てる上で、様々な戦術を把握していたが、まさか、人間に対して更に小さい人間が四肢に爆弾を付けるなど言う事は考えてはいなかった。
尤も、マシロは気づいていたようだ。
四肢が爆破されるも、爆弾の威力は大したことは無かった為、四肢は吹き飛ばされる事は無かった。
「ちっ……あれで破壊出来ないのかよ」
「狼狽えるな。この程度で仕留められる相手ではない事は分かっていた事だろう」
並のガンプラなら今ので四肢を破壊されて終わりだが、関節部に特殊プラスチックを使っていたガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの関節は破壊出来なかった。
だが、直接爆破した事で四肢にダメージを与える事が出来た。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの両手に装備されているドッズランサーもハイパーメガドッズライフルも重量が重い為、ダメージを受けた腕の関節では持ち上げる事が出来ずに両腕が下がる。
「両腕が……」
「問題ない」
そして、どこからともなく、狙撃されるが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはホバー装甲で回避する。
「すぐに狙撃場所の特定を……」
レイコがジムスナイパーK9の位置をビームの軌道から割り出そうとするが、全く別の方向からビームが飛んで来る。
それをかわすが、やはり別の場所からビームによる狙撃が行われる。
「狙撃場所が複数!」
「当然だろ。狙撃用のライフルも体に括りつけて10本くらいは持ち込んでる」
一瞬で見てだけでも、手持ちの一つを含めて最低でも10本の狙撃用のライフルをレナート兄弟はバトルフィールド内に持ち込んでいる事になる。
それを時間をかけてバトルフィールド上に配置しているのだろう。
「やってくれるわね。素人の癖に」
「だが、1000本以下なら想定の範囲内だ」
事前の情報からレナート兄弟は真っ向勝負よりも情報戦などを駆使した搦め手の方が得意だと予測している
そこからある程度の行動も予測できる。
その中に狙撃も含まれていた。
バトルフィールドにもよるが、今回のように市街地戦ならば、マシロは1000方向位からの狙撃までは想定していた為、10本程度なら気にする程でもない。
「作戦通りにやる」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは狙撃をかわしながら走っていると、ビルとビルの間に張り巡らされているワイヤーに引っかかる。
すると、爆発と共にビルが倒壊して、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの頭上に落ちて来る。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはビルの瓦礫を破壊しようにも両手の武器は真上には上げる事が出来ない為、加速して回避するが、回避先にもワイヤートラップが設置されていた。
「いい気味だな」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットがトラップにかかって行く様をレナート兄弟はビルに隠れながら見ていた。
この1時間でバトルフィールド内の至るところに持ち込んだトラップが設置されている。
「そうだな。これが俺達のやり方だ。坊やのお遊びっじゃない。戦争だ。だが、油断するなよ」
マシロがトラップにかかっている為、気分が良くなるフリオだが、マシロは諌める。
トラップにかかったとはいえ、まだガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを仕留めた訳ではない。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは地上のトラップを回避する為に推力を最大にして飛び上がる。
ビルを飛び越す程に飛び上がったガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは若干下を向いているがハイパードッズライフルを構える。
「アイツ! ここら一帯を吹き飛ばす気か!」
幾らトラップを仕掛けて隠れていようとも、トラップごと周囲のビルを破壊してしまえば全てが無駄となる。
「想定内だ」
だが、当然の事ながら、マリオもその可能性は考えている。
マシロのバトルは基本的に圧倒的な力で相手を叩き潰すことにある。
だからこそ、強引な攻めも予測して対処法を考えていた。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの四肢に爆弾を仕掛けたジオン兵はそのまま廃墟に隠れていた。
その中の1体が狙撃ライフルでガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを狙撃する。
ジオン兵の大きさは小さい為、豆鉄砲程の威力もないが、人並外れた反応速度を持つマシロは一瞬だけ気を取られる。
普通なら気づかない程の隙だが、事前に予測していればその隙を狙う事も出来る。
念を入れてジムスナイパーK9ではなく、囮の狙撃ライフルで背後からガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットを狙撃する。
ギリギリのとことでバックパックのグラストロランチャーの一つをパージして盾替わりに使って防ぐ。
「ちっ……防がれたか」
「気にするな。予定通りだ」
マシロの反応速度ならば、この一撃を防がれる事も予測は出来る。
ダメージこそは与えられないが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの武器の一つを潰すことには成功した。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはそのまま、降下を始める。
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの姿はビルの影に隠れて見えないが、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットが落ちた方向から爆発は起こる。
レナート兄弟はワイヤートラップだけでなく、地雷も設置していた。
それにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットが着地時に引っかかったのだろう。
流石のガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットも足を潰されてしまえば動く事は出来ない。
だが、爆風から殆ど無傷のガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットが飛び出して来る。
「膝の武装コンテナを身代わりにしたか」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは殆ど無傷だが、膝のホルスターが片方だけになっている。
恐らくは地面に着地する前にホルスターを先に地面に落として地雷の直撃を防いだのだろう。
「大人しくやられていれば地獄を見ずにすんだののによ」
「フリオ。こちらの狙撃も完全に見切られているぞ」
自分達の位置を把握されずに一方的に攻撃して、フリオは気が大きくなるも、こちらの狙撃は完全に見切られている。
「分かってよ! 行って来い!」
狙撃が当たらない為、次の手を打つ。
ジムスナイパーK9のバックパックは分離可能して、K9ドックとして独立可能が出来る。
K9ドックを使って自分の仕掛けたトラップにかからないようにガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの死角を突いては狙撃を行う。
「自走砲か」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは腰のビームガンを使うが、K9ドックはビルの影に隠れてかわす。
「良い気なもんだな! 兄貴! 絶対的王者様が何も出来ずに地を這いずるのを見るのはよ!」
「おかしい……」
ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットは次々とトラップに掛かり圧倒的に優位に立っている筈だが、マリオは素直に今の状況を受け入れる事は出来ずにいた。
今の状況は考えていた状況の中で最も理想的な形で事が運んでいる。
なのに、背筋が凍る感覚を感じている。
「……まさか!」
「ああ。そのまさかだよ」
マリオはマシロの思惑に気が付いた。
今まで、マシロはトラップにかかっていると思っていたが、それは逆だった。
トラップにかかっているのではない、マシロは自らトラップにかかる事でトラップを一つ一つ潰していたのだった。
バトル開始時に持ち込んだ資材を使って仕掛けられているトラップの数には当然限りがある。
だから、マシロ達はわざとトラップを仕掛ける時間を与えて、仕掛け終えたところに自らかかることでトラップを潰して回っていた。
自らトラップにかかると言う行為は自殺行為に他ならない。
一歩間違えれば自滅するだけだ。
それでも、マシロはトラップを潰す為に意図的にトラップにかかり続けた。
ある程度は身代わりを立てる事で、ダメージは軽減しているが、それでも無傷とは言えない。
「レイコ」
「ええ。私の見立てではトラップの9割以上は駆除したわ」
「やられた……」
レナート兄弟が狙撃をして来た時点でトラップを仕掛けて来る事は想定していた。
先にトラップを始末すれば後はゆっくりと狙撃ポイントを潰して回れば良い。
狙撃は相手に一方的に攻撃出来る反面、位置を特定してしまえば一対一では圧倒的に不利となる。
それを補う為のトラップだが、その大半はマシロが意図的にかかって排除してある。
「狼狽えんなよ! 向こうだってボロボロだ!」
「ああ……そうだな」
自分達の策の裏を突かれた事で動揺するマリオだが、フリオの言う通り、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットはボロボロでまともに戦える状態ではない。
裏をかかれたが、自分達の有利は変わらない。
「ここまで徹底した戦いは初めてだ。だが、ここからは俺のターンだ」
自分達の方が有利なのにも関わらず、マシロは自分の勝利を確信して疑わない。
それだけの根拠があった。
レイコの立てた作戦は二つだ。
一つ目は相手の仕掛けたトラップを潰すことと、もう一つはその後は圧倒的な力で叩き潰すと言う事だ。
レナート兄弟のような策を巡らすタイプの相手には対処法は大きく分けると二つある。
一つは策で相手の上を行き続ける事だ。
もう一つは策など通用しない圧倒的な力で叩き潰す事だ。
一つ目はすでにクリアした。
最初こそは裏を突かれた物の、後は完全にレイコの想定内の展開だ。
そして、次で一気に仕留めるだけだ。
マシロがコンソールを操作すると、正面のモニターに「G」と表示される。
そして、マシロは右手を握って腕を振り上げる。
「フルアサルトジャケットの真の姿を見せてやる……強制、解除」
右腕を「G」の表示に目掛けて振り落すと、ガンダム∀GE-1 フルアサルトジャケットの装甲が次々と落ちていく。
バックパックに残っているホルスター、胸部の装甲、両腕のシールド、手持ち武器、脚部のホバーユニットと次々とパーツが落ちていく。
最後にはガンダム∀GE-1だけが残される。
「これがこいつの真の姿、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリだ」
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリ、それこそがフルアサルトジャケットの中に隠されていたもう一つの∀GEだ。
全ての装甲と武器を捨てる事で身軽となる事で高い機動力を発揮する。
その反面、武装は腕と腰のビームサーベルのみだ。
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは腰のビームサーベルを両手に持って、振り返る。
その先には狙撃ポイントの一つがある。
そして、そここそがジムスナイパーK9が隠れているビルでもあった。
「かくれんぼの次は鬼ごっこだ」
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは迷う事無く、ジムスナイパーK9の方に突っ込んで行く。
「馬鹿な!」
10か所の狙撃ポイントから真っ先にジムスナイパーK9のいる場所を当てる確率は10分の1だが、マシロは確信していた。
ダミーの場所はセコンドのマリオの方がタイミングを見計らって撃っていた。
だからこそ、10か所の内1か所だけが狙撃時に微妙な違いをマシロは見逃さなかった。
その場所が本命だと推測して、マシロは突っ込む。
ジムスナイパーK9は迎撃するが、位置がばれた狙撃ではマシロのガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリを捕えることなどできはしない。
「見つけた」
一直線にビルのジムスナイパーK9のいるフロアまで来た為、場所が特定された時の為にビルの中にもトラップは仕掛けてられていたが、そのトラップを全て無視してビルまで到達した。
「まだだ!」
ジムスナイパーK9は狙撃用ライフルを捨てると、胸部のヒートナイフを抜いて切りかかる。
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは真っ向から迎え撃つが、振り落されたヒートナイフを気にすること無く、反撃する。
ヒートナイフはガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリの頭部に突き刺さるが、そのままビームサーベルを振るう。
ビームサーベルがジムスナイパーK9を切り裂く寸前に、ヒートナイフを捨てて一気に距離を取る。
「バイザーが赤く……EXAMか」
ジムスナイパーK9の頭部のバイザーがEXAMシステムが起動しているとき特有に赤くなっている。
白兵戦に持ち込まれた時の為にマリオはジムスナイパーK9に機体性能を向上させるEXAMシステムを搭載していた。
それをとっさに使ってガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリの攻撃を回避した。
「フリオ。まだ地の利はこちらにある」
「分かってるよ! 兄貴!」
ジムスナイパーK9は逆手にビームサーベルを持つと、俊敏に動きながらガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリの背後を取ろうとする。
スタスターの推力では敵わないが、閉鎖空間ならばEXAMによる高い俊敏性を持つジムスナイパーK9に分がある。
だが、幾ら素早く動こうとも、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは対応して来る。
「糞ったれが!」
「フリオ! 熱くなるな! 負けるぞ」
攻めあぐねていた事で熱くなりかけるフリオをマシロが止める。
元より正面から戦っても勝ち目のない相手だ。
ここで熱くなって冷静さを欠けば勝てるバトルも勝てない。
「すまねぇ……兄貴」
「頭を冷やしたなら、次にすべきことは分かるな?」
「ああ!」
ジムスナイパーK9は片手にハンドガンを持って、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリを牽制しながら交代して隣の部屋に入る。
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはハンドガンを最低限の動きでかわしながら、追撃する。
部屋に入った瞬間に目の前のジムスナイパーK9ではなく真横からK9ドックの攻撃を受けた。
ビームがガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリの膝の関節を撃ち抜いて、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは両足を破壊されて転がる。
「くたばれ!」
ジムスナイパーK9はもう片手にもハンドガンを抜いて一気に畳み掛ける。
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはビームサーベルを投擲して、ジムスナイパーK9のハンドガンを潰す。
両足を失っている為、バックパックのスラスターを全開にして、ジムスナイパーK9に飛び掛かる。
ジムスナイパーK9はハンドガンで応戦しながら、ビームサーベルを抜いて突き出す。
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはハンドガンのビームを気にすることは無かった。
ビームが直撃して損傷するも、致命傷にならないのであればマシロは気にしない。
ジムスナイパーK9のビームサーベルがガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリの脇腹に突き刺さる。
だが、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは退くどころか、脇腹をビームサーベルで刺されながらも前進する。
そして、ゼロ距離まで詰めるとビームサーベルを振り上げる。
ビームサーベルを持つ手を手首ごと回転させて、ジムスナイパーK9の頭部から垂直にビームサーベルを突き刺していた。
「正気かよ!」
「正気だよ」
その一撃でジムスナイパーK9は戦闘不能となるが、自立可能しているK9ドックがいる限り、レナート兄弟の負けにはならない。
K9ドックがガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリを狙ってビームを放つも、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリは重心を移動させてジムスナイパーK9を盾にしながら倒れ込む。
「ふざけがやって!」
「アンタ達ささっき戦争とか言ってたよな。アンタ達の言う戦争は負ければ死ぬのか? 死なないよな。結局、アンタ達がしてるのは戦争ゲームに過ぎないんだよ。けどな、俺はバトルに全てをかけてんだ。アンタ達とは生きてる世界が違うんだよ」
レナート兄弟はバトルを戦争に見立てている。
だが、実際の戦争とは違って、レナート兄弟が負けても死ぬことはない。
一方のマシロは勝ち続ける事だけが、一族の中で自分の存在価値を証明する事が出来る。
負けた時点でマシロの存在に価値は無くなる。
それだけじゃない。
このバトルが終わればガンプラバトルが今までとは変わる為、マシロにとっては残り少ないバトルだ。
ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはスラスターの推力だけでジムスナイパーK9を盾にK9ドックに突っ込む。
「こいつ!」
K9ドックはビームを撃つもジムスナイパーK9を中々貫けなかった。
そして、そのままK9ドックに突撃してビルの壁をぶち抜いた。
ビルの壁をぶち抜いたガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはジムスナイパーK9とK9ドッグごと降下を始める。
「やばいぞ! 兄貴!」
フリオがそう言い、ガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはK9ドックとジムスナイパーK9を下にするようにして、地面に落ちる。
すると地面が爆発を起こす。
ビルの出入り口にもノコノコと居場所を見つけて攻めて来る敵を嵌める為に地雷を設置していた。
そして、マシロも地雷の存在を知りつつもビルから逃がさない為に残しておいた。
「……イカれている」
爆風からガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリが飛び出てて来る。
両足が破壊されているガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリはそのまま転がるも、まだ動けない程のダメージではない。
それでも、すでに満身創痍である事には変わらない。
だが、K9ドックはジムスナイパーK9とガンダム∀GE-1 ユマラテゥーリの2機分の重量と落下のエネルギーを一気に受けた上に地雷によって跡形もなく吹き飛んでいた。
それにより第一試合の勝敗が決して。
それと同時にレナート兄弟は自分達の認識の違いを思い知らされた。
レナート兄弟は実力こそ認めていたが、マシロを温室育ちのお坊ちゃんだと思っていた。
だが、実際は温室とはかけ離れているだけでなく、マシロの勝利に対する狂気とも言える執念を知らなかった。
このバトルでマシロは敢えてトラップをかかると言う戦い方や、損傷を無視して勝ちに行くスタイルはまともなファイターならまず取らない。
それでも勝つ為ならマシロは躊躇い無い。
もはや復讐などよりもマシロのバトルに対しては、恐怖しか感じない。
バトルに勝ったマシロはボロボロとなったガンプラを回収して帰って行く。
「マシロ。バトル中に連絡があったけど、メイジンの対戦相手が変わったみたいよ」
「だから? 誰に変わろうと関係ない。Bブロックを勝ち抜いた相手が俺の最後のバトルに相応しいだけの事だ」
レイコがメイジンの相手がジュリアン・マッケンジーに変わったと言う情報を伝えるも、マシロは興味を示すことはない。
どの道、Bブロックのファイターは一人しか戦えない。
ならば、誰が勝ち上がろうと関係ない。
最後まで勝ち上がった一人が最後の相手として倒すだけの事だからだ。
第一回戦の第一試合が終わり、会場は静まり返っていた。
一時間の膠着から始まり、マシロの損傷を無視した強引な戦いは観客達を盛り上がらさせるどころか恐怖すら与えた。
第一試合が終わり、第二試合の準備が開始された。
準備が終わり、会場ではアランと共にメイジンカワグチはジュリアンと対峙していた。
互いに言葉を交わすことはない。
二人はGPベースとセットしてガンプラをバトルシステムに置く。
「メイジンカワグチ。ガンダムアメイジングエクシア、出る」
今回のバトルフィールドは砂漠地帯。
足場が緩い砂地である為、飛行能力を持たないガンプラは苦労させられるフィールドだ。
「やはり、ガンダムF91イマジンで来るか」
サブモニターにジュリアンのガンプラ、ガンダムF91イマジンが映される。
ガンダムF91の改造機ではあるが、見た目は一部が赤く塗装してある程度だが、完成度は非常に高く、かつてタツヤは一度もガンダムF91イマジンから勝利を得ることが出来なかった。
(降って沸いた障壁)
(君な何故メイジンの名を襲名したのか)
(超えさせて貰う!)
(見極めさせて貰う!)
アメイジングエクシアはアメイジングGNソードを展開する。
ガンダムF91イマジンもビームサーベルを抜いて、2機は加速しながら接近する。
2機は互いの剣を振るいぶつかり合う。
「無敵を誇ったガンダムF91イマジン……だが、所詮は3年前のガンプラ! このエクシアの敵ではない!」
ぶつかり合う2機だったが、アメイジングエクシアがガンダムF91イマジンを弾き飛ばす。
「くっ……流石はPPSEの新型」
だが、ガンダムF91イマジンは弾き飛ばされながらも、ビームライフルでアメイジングエクシアの追撃を防ぐ。
「腕を上げたようだね!」
「やはりその腕は衰えていない!」
アメイジングエクシアがシールドを使いながら、アメイジングGNソードで切りかかり、ガンダムF91イマジンは上昇しながらバルカンで牽制する。
「こちらから仕掛けさせてもらう!」
ガンダムF91イマジンが一気に加速すると、機影が増えたように見える。
「質量を持った残像か!」
ガンダムF91が最大稼動時に表面装甲の金属粒子を強制的に剥離する事で冷熱を行うが、それをセンサーが誤認する事でガンダムF91が分身しているように思わせる事が出来た。
ジュリアンのガンダムF91イマジンもガンプラの表面塗装を剥離して分身しているかのように見せる事が出来る。
アメイジングエクシアはアメイジングGNソードのライフルモードで応戦するが当たらない。
最大稼動状態による質量を持った残像を使い、相手を惑わしながら一撃を入れる。
これこそが、かつてジュリアンを次期メイジン候補の筆頭と言わしめた、バックジェットストリームだ。
「相変わらずの早さか……」
「タツヤ! 君はどうして!」
ガンダムF91イマジンがビームサーベルで切りかかり、アメイジングエクシアは回避して、左腕のGNバルカンで弾幕を張る。
「二代目の思想に囚われたのか!」
ジュリアンは通信越しに叫ぶ。
今までガンプラバトルから離れていたジュリアンが祖父の代わりに決勝トーナメントに出場した理由はそこだ。
かつての後輩が二代目の後を継いで三代目のメイジンカワグチとなった事で、二代目の思想に囚われたのかをバトルで確かめたかった。
「答えてくれ!」
ガンダムF91イマジンはヴェスバーを放つ。
シールドで防ぐもシールドは一撃で破壊されてしまう。
「アラン……済まない。私はしばしメイジンを捨てる!」
3年のブランクを見せないジュリアンを前にメイジンとしてのバトルでは勝てないとタツヤは感じていた。
だからこそ、メイジンのバトルを捨て、ユウキ・タツヤとしてのバトルに切り替える。
最大稼動状態のガンダムF91イマジンが背後を取るが、アメイジングエクシアは振り向きざまにアメイジングGNソードを振るう。
ガンダムF91イマジンは回避は出来たが、ビームライフルの銃身の先端に掠っていた為、ビームライフルを捨てた。
「僕はユウキ・タツヤとしてあの人を超える! その先に私の目指すメイジンが……そして!」
「タツヤ!」
アメイジングエクシアがアメイジングGNソードを振るおうとした瞬間に、ガンダムF91イマジンの頭部のフェイスガードが展開する。
そこには小型のビーム砲が内蔵されていた。
ギリギリまで引きつけた上で、強烈な閃光と共にビームが放たれた。
「彼が居る!」
強烈な閃光にアランは目を瞑るも、メイジンはサングラスのお陰で何とか目を瞑らずに攻撃をギリギリのところで回避し、ガンダムF91イマジンを蹴り飛ばして距離を取る。
「だから、僕は先輩に勝つ! 今日、ここで!」
アメイジングエクシアはライフルモードのアメイジングGNソードで攻勢に出る。
「それが君の覚悟か!」
ガンダムF91イマジンはビームシールドで攻撃を防ぐ。
「我が盟友と作りし、エクシアの奥義を使う!」
「タツヤ? トランザムは!」
「紅蓮を纏え! エクシア! トランザム!」
アランの生死を聞く事も無く、メイジンはトランザムシステムを起動させた。
赤く発光するアメイジングエクシアは一気に加速する。
「トランザムか!」
ガンダムF91はヴェスバーを放つも、トランザムを使っているアメイジングエクシアには当たらない。
その機動力を前に射撃では簡単には当たらないと判断したジュリアンは接近戦に切り替える。
最大稼動状態のガンダムF91イマジンとトランザム状態のアメイジングエクシアは高速で動きながら切り結ぶ。
切り結ぶ中でも互いに隙あらば、ビームを撃って仕留めようとする。
そんな高速戦闘も終わりを迎える。
先に最大稼動状態に入ったガンダムF91イマジンが通常の状態に戻る。
「くっ!」
バルカンを放つが、アメイジングエクシアを止める事は出来ない。
ガンダムF91イマジンはサイドアーマーから予備のビームシールドをアメイジングエクシア目掛けて射出する。
それをバルカンで破壊して、爆風で煙幕を張って、ヴェスバーを放った。
だが、それよりも速くアメイジングエクシアはガンダムF91イマジンの背後を取る。
「後ろ!」
「これが……私の……僕の覚悟だ!」
完全に背後を取ったアメイジングエクシアはアメイジングGNソードを振り下ろした。
その攻撃をガンダムF91イマジンは回避しきれずに直撃し、それが勝敗を付けた。
「僕の完敗だったよ。メイジン」
バトルに負けたジュリアンはメイジンに歩み寄る。
このバトルでジュリアンは確信した。
タツヤは二代目の思想に取り込まれてはいなかった。
二代目ならば、ジュリアンのガンダムF91イマジンの最大稼動状態と正面からは戦わずに徹底的に封じて来た筈だ。
だが、メイジンは正面からぶつかって来た。
これは勝つ為だけのバトルではなく、相手を正面から見て受け止めようと言うメイジンのバトルの表れなのだろう。
「良いバトルだった。これでようやく壁を一つ乗り越えられる事が出来た」
過去に一度も勝つ事の出来なかったジュリアンに勝った事でタツヤは更に高見へと昇る事が出来た。
「ガンプラバトルに戻る気は?」
「君の真意を確かめるつもりだったんだけどね」
元々、ジュリアンはタツヤの意志をバトルの中で確かめる気でバトルに戻って来た。
しかし、バトルの中で考えが変わった。
「こんなに熱くなったのは3年振りだよ」
ガンプラバトルから離れていた3年間でジュリアンは本気で熱くなったことは一度もなかった。
「こんなに楽しい物はそう簡単に止める事は出来そうにないな」
「同感です」
タツヤとのバトルはかつてのガンプラバトルの楽しさを思い出させるのには十分だった。
それを思い出してしまった以上は、再びバトルから離れる事は出来そうに無い。
「僕が離れていた間にとんでもないファイターも現れたようだしね」
「ええ」
去年の優勝者としてジュリアンもマシロの事は知ってるが現役時代にはマシロは表舞台にはいなかった。
そんなマシロと戦ってみたいと思うのはファイターの性なのだろう。
負けこそしたが、このバトルはジュリアンにとっては収穫も多かった。
次期メイジンの筆頭とまで言われていても、バトルから離れていた3年間でガンプラバトルは大きく発展し、新たな世代のファイター達も台頭を始めている。
決勝トーナメント一日目の第一回戦、第一第二試合はマシロとメイジンが勝ち抜けて二日目へと進んでいく。