ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle48 「貫き通す物」

 決勝トーナメント3日目の午前のバトルは大方の予想通りにアイラの圧勝で終わった。

 午後からは初出場で最年少のセイ、レイジ組とマオとのバトルだ。

 

「ようやく決着をつける日が来ましたね」

「そうだね。マオ君」

「勝つのは俺達だけどな」

 

 セイとレイジだけではなく、マオも同年代のビルダーとしてはセイが初めてのライバルと言える相手だった。

 だからこそ、世界大会と言う舞台で決着をつける日を待ち望んだ。

 遂に決着をつける日が来たが、これ以上の話しは無意味だ。

 

「スタービルドストライク! イオリ・セイ!」

「レイジ! 行くぜ!」

 

 そして、バトルが開始される。

 バトルフィールドはオーソドックスな宇宙だが、バトルフィールド内には月が配置されているタイプだ。

 普通ならそこまでの意味を成さない月だが、マオのガンプラ、ガンダムX魔王はその能力を発揮しやすいフィールドでもあった。

 

「レイジ、距離を作っての戦いはこっちの方が圧倒的に不利だ」

「だろうな」

 

 レイジもセイに言われるまでもなく、ガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンの脅威は知っている。

 その為、すぐにガンダムX魔王の位置を見つけようとしている。

 だが、それよりも早くガンダムX魔王が長距離からのハイパーサテライトキャノンを撃って来た。

 

「いきなりかよ!」

「こんなに早く!」

 

 スタービルドストライクは何とか、アブソーブシールドで受け止めた。

 距離を取られている限り撃って来る可能性はあったが、幾らなんでも早すぎる。

 月からスーパーマイクロウェーブを受信すれば、その光で方向と位置を特定できるのだが、その光は無かった。

 つまりはガンダムX魔王はスーパーマイクロウェーブを受信せずにハイパーサテライトキャノンを撃って来た事になる。

 

「レイジ! このままだと持たない!」

 

 アブソーブシールドで受け止めてはいるが、ハイパーサテライトキャノンの威力を完全に無効化する事は出来ない。

 いずれはシールドが耐え切れずに直撃される。

 幾ら、アブソーブシールドで威力を無効化していても、完全には出来ていない為、スタービルドストライクに致命傷を与える事は十分に出来た。

 その前にスタービルドストライクは射線上から飛び出した。

 

「やってくれるな……」

「ディスチャージ用の粒子は溜まったけど……」

 

 ハイパーサテライトキャノンをアブソーブシールドで受け止めたお陰でディチャージ用の粒子は満タンなで溜まっている。

 その代償として、アブソーブシールドの粒子の吸収口がビームの余波で損傷している。

 まだ普通のシールドとしては使えそうだが、ビームを吸収する事は出来そうに無い。

 最初のハイパーサテライトキャノンでガンダムX魔王の方向は把握できた。

 その方向に向かおうとするが、二射目のハイパーサテライトキャノンが放たれる。

 

「こんなに早く!」

 

 ハイパーサテライトキャノンに限らず、大火力のビーム兵器は高い火力の代わりにチャージに時間がかかると言うのは常識的な事だ。

 だが、明らかにハイパーサテライトキャノンのチャージ速度は異常だ。

 飛んで来る方向さえ分かれば、レイジの腕なら回避する事は可能だった。

 二射目をかわすとすぐに三射目のハイパーサテライトキャノンが放たれる。

 

「どうなってんだ!」

「居た……そうか! リフレクターのソーラーパネルで周囲の粒子を集めてるんだ!」

 

 ガンダムX魔王のリフレクターはソーラーパネルにより周囲の粒子を吸収する事でスーパーマイクロウェーブを受信する事無くハイパーサテライトキャノンを撃つ事が出来る。

 これは月がないステージでも使えるようにするための改造だ。

 セイのスタービルドストライクもディスチャージを使う為の時間短縮に相手のビームを吸収しているが、やっている事は相手のビームを利用するか周囲の粒子を利用するかの違いだ。

 スタービルドストライクの場合は防御も兼ねているが、フェリーニ戦のように警戒されてしまえば上手くチャージが出来ない場合や、今回のように許容範囲を超える威力のビームは吸収しきれないと言う欠点もある。

 だが、ガンダムX魔王の場合は吸収する事に重きを置いている為、周囲にプラフスキー粒子があれば安定して短時間で必要な粒子を確保できる。

 そして、バトルシステム内には常にプラフスキー粒子が充満している為、粒子には事欠かない。

 

「ご名答です。流石セイはん」

「で、どうすんだ。向こうはアレを撃ち放題なんだろ?」

「突っ込んで! 幾ら連射が出来ても、砲身の長さはどうしようもないから! 接近はこっちが有利!」

 

 ハイパーサテライトキャノンの砲身は長い為、取り回しが効かない。

 長距離からの砲撃戦では気にする必要はないが、接近戦に持ち込めば邪魔でしかない。

 つまりはハイパーサテライトキャノンを封じる最も簡単な方法は接近戦に持ち込む事だ。

 接近戦に持ち込めばガンダムX魔王は独自の装備は無く、全てが元々ガンダムXが装備している武器しかない。

 

「分かった! ディスチャージで一気に!」

「ディスチャージは一度しか使えないから駄目だ! レイジの腕なら行ける!」

「簡単に言ってくれるな!」

 

 アブソーブシステムが使えない以上、ディスチャージシステムが使えるのは一度くらいしかない。

 まだ、序盤で使ってしまえば、終盤で使いたい時に粒子が足りなくなるかも知れない。

 ハイパーサテライトキャノンは連射していると言っても、搦め手を使っている訳ではない。

 ディスチャージを使わずともレイジの操作技術ならかわしながら距離を詰める事も出来る。

 一撃でも当たってしまうと終わりと言う状況だが、セイはレイジなら出来ると確信している。

 

「けど……やってやんよ!」

 

 スタービルドストライクはハイパーサテライトキャノンを回避しながら突っ込む。

 ある程度の距離を詰めると回避しながらスタービームライフルで反撃する。

 回避をしながらである為、精度は高くないが、直撃すれば損傷は確実である為、ガンダムX魔王は砲撃を中断して回避する。

 

「流石に好き勝手はさせてくれませんね」

「当然!」

 

 距離を詰められた事でガンダムX魔王はシールドバスターライフルで応戦する。

 すでにアブソーブシールドが使えない為、マオもビームを吸収される心配はない。

 その攻撃を回避しながらスタービルドストライクはビームサーベルを抜いた。

 

「こんだけ接近すれば!」

「そうは問屋が卸さへんのですよ!」

 

 更に距離を詰めて完全に格闘戦に持っていこうとするが、ガンダムX魔王は大型ビームソードを抜いて構える。

 明らかにソードの間合いから外れた所から大型ビームソードをガンダムX魔王は振おうとしていた。

 そして、大型ビームソードを振るうと同時に通常のビーム刃よりも高出力の赤いビーム刃が形成された。

 レイジはとっさに回避させていなければ、今頃ガンダムX魔王に一刀両断されていただろう。

 

「何なんだよ……アレ」

「多分、ビームソードにサテライトキャノンのエネルギーを回したんだと思う。でも……ここまでの出力を出して来るなんて……」

「ご名答です。これがワイのガンダムX魔王の魔王剣!」

 

 元々、ガンダムXの大型ビームソードはサテライトキャノンに使われるエネルギーを回すことが出来る。

 それにより従来のビームソードを圧倒的に上回るビーム刃を形成するのが、ガンダムX魔王の新たな武器である魔王剣だ。

 ガンダムX魔王は魔王剣でスタービルドストライクに切りかかる。

 スタービルドストライクはバルカンで牽制しながら距離を取る。

 サテライトキャノンのエネルギーを使っているだけあって、魔王剣の威力は凄まじい。

 正面から切り合っていては勝ち目が無い為、一度距離を取るしかなかった。

 

「距離をとってええんですか?」

 

 ガンダムX魔王は距離を取るスタービルドストライクを追撃する事はしなかった。

 寧ろ、自らも後退して更に距離を取ると今度はハイパーサテライトキャノンを構える。

 

「レイジ!」

「分かってる!」

 

 ガンダムX魔王がハイパーサテライトキャノンを放ち、スタービルドストライクは回避する。

 ビームを掃射したまま、回避するスタービルドストライクを狙い砲身を移動させる。

 

「当たって堪るかよ!」

 

 スタービルドストライクは懸命にハイパーサテライトキャノンに当たらないように逃げる。

 完全に粒子を使いきる前にガンダムX魔王はハイパーサテライトキャノンの掃射を中止して、シールドバスターライフルでの攻撃に切り替える。

 

「距離を取ればサテライトキャノン、接近戦では魔王剣……遠距離と近距離でこれだけの威力の武器を見せられたら……」

 

 今まではハイパーサテライトキャノンに注意するだけで良かった。

 マオ自身、ガンダムX魔王はサテライトキャノンの使用に特化した改造を施している。

 マシロとのバトルで世界大会で優勝する為にはそれだけでは駄目だと思い知らされた。

 だからこそ、ハイパーサテライトキャノンを活かす為に近接戦闘用の武器として魔王剣を用意した。

 接近すればハイパーサテライトキャノンが使えない為、大抵の相手は接近戦を挑んで来る。

 実力差があれば、接近する前に撃墜するか接近戦でも勝てるが、決勝トーナメントともなればそうはいかない。

 その欠点を補う為に魔王剣を使う事で相手はその威力を前に距離を取らざる負えない。

 そして、距離を取ればハイパーサテライトキャノンを使う機会も増えて来る。

 相手は接近すれば魔王剣、距離を取ればハイパーサテライトキャノンと言う一撃でガンプラを破壊出来る強力な武器を前にどちらを選択しても脅威が残される。

 

「やっぱり凄いな……マオ君は」

 

 一対一のバトルには向かいハイパーサテライトキャノンを活かす為に更にガンダムX魔王を強化して来たマオの事をセイは素直に凄いと感じていた。

 

「何言ってんだ。お前だってこれほどのガンプラが作れるんだ。十分に凄いだろ」

 

 マオの実力に関心するセイだが、レイジから見ればセイも十分凄い。

 セイを見返す為に自分でもガンプラを作ったが、素組をするだけでもかなり苦労させられた。

 そこから、世界大会を勝ち抜けるだけのガンプラを制作するのは更に困難だろう。

 

「レイジ……」

「確かにマオの奴も凄いけど、お前だって負けてない。だからこのバトルも勝つぞ!」

 

 スタービルドストライクはビームサーベルを抜いて再度ガンダムX魔王に突撃する。

 

「レイジ! 接近すれば!」

「確かにな。だけど、距離を取ってもダメなら前に出るしかないだろ!」

 

 接近すれば魔王剣を使って来る。

 だが、距離を取っても変わらないならレイジは前に出る。

 

「やっぱりレイジはんはそう来ますよね」

 

 ガンダムX魔王は大型ビームソードで迎え撃つ。

 魔王剣は確かに接近戦において相手の接近戦用の武器ごと相手を葬るだけの威力を持つ。

 だが、その反面、長時間の使用が出来ない上にハイパーサテライトキャノン用の粒子が尽きれば使えない。

 完全に粒子を使いきってしまうと脅しにも使えない為、さっきは粒子を使い切る前に砲撃を中断した。

 本来の魔王剣の使い方は敵を撃破する以上にこちらにも強力な接近戦用の武器があるのだと見せつけて、距離を取らせる事だ。

 だから、レイジのように突っ込んで来られるのは余りよろしくは無い。

 距離を取っていれば周囲の粒子を集めるのも容易だが、接近戦では粒子を吸収している余裕はない。

 

「せやけど、ワイかてここまで来たんです!」

 

 スタービルドストライクとガンダムX魔王は互いに切り合う。

 サーベルの出力ではガンダムX魔王に分があるが、ガンプラ自体のパワーではスタービルドストライクに分がある。

 総合的ではやはり、スタービルドストライクにはガンダムX魔王は届かない。

 致命傷こそは避けているが、ガンダムX魔王は次第の損傷を負って行く。

 

「まだや! まだ負けてへん!」

 

 劣勢ながらもガンダムX魔王はスタービルドストライクと殆ど互角の切り合いを見せる。

 

「ちぃ!」

「接近戦でも負けてない!」

 

 ガンダムX魔王は大型ビームソードの出力に物を言わせてスタービルドストライクを弾き飛ばす。

 スタービルドストライクはそのまま月面に叩き付けられた。

 

「いつの間にこんなところまで」

 

 スタービルドストライクとガンダムX魔王は切り結びながらもいつの間にかバトルステージに配置されている月まで来ていたようだ。

 

「月……まさか!」

「そのまさかですよ! セイはん! レイジはん!」

 

 スタービルドストライクが起き上がるまでの間にガンダムX魔王も月面に降り立っていた。

 そして、マオの狙いは月面まで戦いを持っていくことにあった。

 月面のスーパーマイクロウェーブ送信システムからガンダムX魔王に対してスーパーマイクロウェーブが送信される。

 今までは距離があり、動き続けている以上、簡単にスーパーマイクロウェーブを受信できずにいたが、ここまでくれば受信も容易だ。

 それによりソーラーパネルで周囲の粒子を集めるよりも短時間で大量の粒子を集める事が出来る。

 

「レイジ! まずいよ。ディチャージで!」

「なぁ……セイ、マオの奴はこれを狙ってたんだよな。これだけの為にガンプラを傷つける事を覚悟して……」

 

 マオは不利な接近戦をしてまで、ハイパーサテライトキャノンを最大出力で撃つ為にここまでやって来た。

 その覚悟があるからこそ、接近戦でもスタービルドストライクに遅れを取る事もなかった。

 

「確かにディスチャージを使えばサテライトキャノンの一撃を回避できるだろうけど、マオは意地を貫いてこの状況を作り出した。そんなマオの覚悟から逃げて勝って満足できるか? 俺は……嫌だ!」

 

 接近戦になれば魔王剣を織り交ぜて確実に勝つ事も出来た。

 だが、マオは敢えてハイパーサテライトキャノンで勝つ事に拘った。

 それはマオの意地なのだろう。

 効率良く勝つのではなく、自分の好きな勝ち方で勝つと言う。

 その為にマオはガンダムX魔王の損傷も覚悟して戦った。

 この状況はその覚悟と意地を貫いた結果だ。

 セイの言う通り、ディスチャージのスピードモードを使えば確実にかわすことが出来るだろう。

 マオもそれが分からない訳がない。

 それでもハイパーサテライトキャノンを撃とうとしている。

 この一撃をかわすことが出来れば、一気に勝利が見えている。

 しかし、そんな形で勝ったとして本当に満足できるかと聞かれるとレイジは満足できない。

 覚悟を持って挑む相手から正面からぶつかる事を避けて勝ったとしても、それは逃げただけだ。

 マオは楽で確実な方に逃げる事無く困難な道を選んだ。

 

「レイジ……そうだね。ここで逃げたら僕達の負けだ!」

「そう来ないとな!」

 

 スタービルドストライクはセイが丹精込めて作ったガンプラである為、セイが正面からぶつかる事を避けると言うのであれば、レイジも従うつもりだった。

 だが、セイもレイジと同じように正面からぶつかる道を選んだ。

 スタービルドストライクはアブソーブシールドの先端のプラグをスタービームライフルに接続した。

 ライフルのバレルが変形すると、砲撃形態を取る。

 そして、バックパックのスタービームキャノンを前方に向ける。

 

「行くぞ! セイ!」

「ああ!」

 

 スタービルドストライクはディスチャージシステムのライフルモードが起動してチャージを始める。

 ガンダムX魔王もすでに撃つだけなら可能だが、最大出力を出す為に更にチャージする。

 

「行きますよ! お二人さん!」

 

 スタービルドストライクとガンダムX魔王の最大出力の砲撃が同時に放たれる。

 スタービルドストライクのディスチャージライフルモードは以前にメガサイズのザクⅡに使った時とは違い、スタービームキャノンも使った収束砲だ。

 2機の放ったビームが正面からぶつかり合った。

 その余波で周囲が吹き飛んでいく。

 

「勝つのは!」

「俺達だ!」

 

 2機のガンプラの砲撃はどちらも譲る気がないと言う事を表しているかのように拮抗している。

 

(もうちょっとや……もうちょっと……ガンダムX魔王、ワイに勝利を……)

 

 最大出力のハイパーサテライトキャノンを使う事には成功したが、ガンダムX魔王の損傷は軽くはない。

 この状況での最大出力はガンダムX魔王自体に大きな負荷をかけている。

 だが、時間をかければスーパーマイクロウェーブでチャージしている分、マオに分がある。

 そして、遂に決着の時が来た。

 先に粒子が切れたのはスタービルドストライクだった。

 

「勝った!」

「ちくしょぉぉぉぉぉ!」

 

 ディスチャージ用の粒子が切れたことで、正面から砲撃のぶつかり合いで多少は威力が落ちているハイパーサテライトキャノンだったが、スタービルドストライクを戦闘不能に持ち込むのは十分の威力は残されている。

 砲撃勝負に打ち勝った事で誰もがこのバトルの勝者はマオだと確信した。

 だが、ガンダムX魔王の砲撃はスタービルドストライクには直撃せずに横にそれていた。

 

「外……れた……」

「あかんかったわ……」

 

 砲撃勝負に打ち勝ったガンダムX魔王だったが、同時に今までの無理が祟り限界を迎えていた。

 そのせいで砲撃が僅かに逸れてスタービルドストライクには当たらなかった。

 限界を迎えたガンダムX魔王は自身の砲撃の負荷に耐え切れずに損傷していた部分から壊れて遂には倒れた。

 ガンダムX魔王はそれによって戦闘不能と見なされてバトルはセイ、レイジ組の勝利となった。

 セイにとって最大のライバルであったマオに勝利したが、セイの表情は晴れない。

 最後の砲撃勝負では完全に負けていた。

 ガンダムX魔王がハイパーサテライトキャノンに特化したガンプラだと言う事は関係ない。

 正面からの真っ向勝負で自分のスタービルドストライクが負けたと言う事実は変えられない。

 バトルに勝利しても砲撃勝負で負けては素直に喜べない。

 同様にレイジも悔しそうにしていた。

 セイに言ったように、意地を通した相手に対して逃げるのは嫌だと感じて真っ向を挑んだ選択を間違いだとは思わない。

 だが、そのせいでセイの作ったガンプラで負けるところだった。

 あの時、自分も意地を張らずに回避に徹していれば完勝出来た。

 尤も、逃げて勝ったところで胸を張って勝った事を誇れると言う訳ではないが、意地を張ったせいでスタービルドストライクは砲撃勝負で負けたと言う事実には変わらない。

 

「お二人さん。どっちが負けたのか分かりませんよ」

 

 マオは悔しそうではあるが、どこか晴れ晴れとしていた。

 マオは自分の好きを貫いて砲撃勝負に勝った。

 バトルには負けて悔しさはあるが、意地を貫いた事は後悔はしていない。

 

「どんな形であれ、お二人さんは勝ったんですから、胸を張って下さい」

「マオ君……」

「今日のところはワイの負けですけど、第二第三の魔王は現れますよ。ここで足踏みしていたら来年はワイの圧勝で終わります」

 

 マオはそう言い残して去って行く。

 

「セイ……今日は悪かった。俺のワガママのせいで……」

「レイジのせいじゃないよ。僕達の負けだ」

「そうだな……俺達はもっと強くならないよな」

 

 二人は今日のバトルを敗北として受け入れる事にした。

 その敗北を糧に強くなると言う決意を固め、次のバトルへと駒を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 4日目の午前のバトルはコウスケが危なげなく勝利を収めた。

 それによりアイラとコウスケのバトルが確定した。

 そして、決勝トーナメントの1回戦は残すはセイ、レイジ組の相手を決める日本代表のアオイとアメリカ代表のニルスとの対戦だ。

 アオイは長距離からの攻撃を得意とするのに対して、ニルスは接近戦を得意と言う両極端な対戦カードとなっている。

 

「緊張はしてないようだな」

 

 バトルを前にすでに敗退したエリカと地区予選でアオイに負けたレッカがアオイを激励しに来ている。

 

「うん。マシロさん以外にも凄いファイターが多いからね。緊張しても仕方が無いよ」

 

 一回戦の最後と言う事もあって、マシロの第一試合から見て来ている為、他のファイター達の実力を知っている。

 だからこそ、誰が相手でも強いと言う事が分かっている為、緊張する事なく逆に開き直っている。

 

「負けたアタシが言うのもなんだけど、思いっきり行って来い」

「エリカさんの分まで頑張って来るよ」

「お前の仇はアオイと取って来るぜ」

「そんな番狂わせがあるか」

 

 タクトにレッカが突っ込む。

 アオイがエリカの仇を取ると言う事は決勝戦でルワンと対戦必要があるが、ルワンの次の対戦相手はマシロだ。

 流石に常連のルワンだろうとマシロに勝つ姿は想像できない。

 

「それだけの意気込みだって事だよ。なっアオイ」

「うん。行って来る」

 

 エリカとレッカに見送られてアオイはタクトと共に会場に向かう。

 会場にはすでにニルスが待機していた。

 

「相手は子供とは言え天才少年らしいからな。油断するなよ」

「アメリカ予選は凄かったからね」

 

 アオイも事前にニルスに関する情報を集めていた。

 アオイ達に集められる情報は大したことはないが、ネット上でニルスのアメリカ予選の決勝戦の映像を見つける事が出来た。

 去年のアメリカ代表で決勝トーナメントでフェリーニと激戦を繰り広げたグレコを終始圧倒して勝利した。

 特に最後に何かしらの方法でグレコのガンプラを破壊した事は今でも鮮明に思い浮かぶ。

 

「とにかく接近させるなよ」

「そうだね」

 

 元々、射撃戦が得意と言う事もあって、接近戦に持ち込まれるとグレコを破った技の餌食になり兼ねない。

 

「行こう。タクト君」

「参ります」

 

 一回戦の最後のバトルのバトルフィールドはデブリベルトだ。

 

「デブリか……」

「隠れるところは多そうだね」

 

 ビギニングガンダムB30は様子見も兼ねてハイパーバスターライフルで射線上のデブリを吹き飛ばす。

 すると、ニルスの戦国アストレイを補足する。

 続けてハイパーバスターライフルを放つが、戦国アストレイはサムライソードでビームを切り裂く。

 

「本当にビームを切り裂いたな」

「タイミングもばっちりだったよ」

「この距離からこれ程までの精密な狙撃……成程。確かに厄介ですね」

 

 最初はどちらも様子見だったが、ニルスが先に仕掛ける。

 戦国アストレイはデブリの中を最低限の動きで殆ど一直線にビギニングガンダムB30に向かって来る。

 ビギニングガンダムB30もハイパーバスターライフルで迎撃するが、戦国アストレイは両手のサムライソードでビームを切り裂く。

 ある程度の距離を詰めたところで戦国アストレイはサムライソードを振るって粒子の斬撃を飛ばす。

 

「IFSファンネル!」

 

 それをビギニングガンダムB30はIFSファンネルを展開してIFSフィールドで防ぐ。

 

「火力に射撃精度もですけど、そのファンネルも厄介ですね」

 

 戦国アストレイは立て続けに粒子の斬撃を飛ばすが、IFSファンネルを突破は出来ない。

 ビームを切り裂き、戦国アストレイはビギニングガンダムB30を自らの間合いに入るとサムライソードを振るうが、IFSフィールドに止められる。

 

(直接触れる事が出来れば粒子発勁で潰すことが出来るのだけど)

 

 戦国アストレイの粒子発勁は直接触れる事でしか相手に粒子を流し込む事は出来ない。

 マシロがやったように粒子の反応しない物を間に入れる以外にもIFSフィールドのように直接触れる事が出来ない物も対処としては有効だった。

 

「行けるぞ! アオイ!」

 

 ビギニングガンダムB30は左右のハイパーバスターライフルで時間差をつけてビームを放ち、戦国アストレイはサムライソードとデブリを使って攻撃を防ぐ。

 

「後々の為に余り無茶はしたくはないんですけど……背に腹は代えられないか」

 

 IFSフィールドで守りを固められて粒子発勁を撃ち込むどころか、中々接近もさせて貰えない。

 ビギニングガンダムB30はIFSファネルを常に全て使うのではなく、数を制限している為、チャージの隙を突く事も出来ない。

 ニルスとしては勝ち上がる為に一回戦から無茶をしたくはないが、このまま長期戦に持ち込んでも勝機は薄い。

 ここで敗退するくらいなら多少は無茶をした方が良いと判断した。

 

「仕掛けて来る!」

 

 戦国アストレイはデブリを思い切り踏み台として一気に加速して、一直線にビギニングガンダムB30に突撃する。

 ビギニングガンダムB30がスノーホワイトで迎撃するが、戦国アストレイは二本のサムライソードを使って、スノーホワイトのビームを切り裂いた。

 

「ちぃ! アオイ!」

「分かってる!」

 

 すぐにIFSファンネルを何基か使ってIFSフィールドを張る。

 

「幾ら守りを固めようとも! 打ち塗らぬくのみ!」

 

 戦国アストレイは二本のサムライソードを前方に向けた状態で回転を始める。

 全体をドリルの如く、戦国アストレイはIFSフィールドに正面から突撃した。

 回転する戦国アストレイはIFSフィールドをジワジワを削って行く。

 以前にマシロとバトルした際にドッズライフルでサムライソードの特殊塗料を削られた時の応用だ。

 IFSフィールドはドッズライフルの回転は防げたが、戦国アストレイは当たれば消えるビームではなく、実体を持っている。

 削れて再展開してもすぐに再度フィールドを削る。

 やがてはフィールドの再展開が間に合わずにIFSフィールドは戦国アストレイに突破される。

 

「まだ!」

 

 IFSフィールドを突破されたが、ビギニングガンダムB30はスノーホワイトを分離させて迎撃する。

 だが、サムライソードによりビームが切り裂かれる為、戦国アストレイを止める事は出来ない。

 

「ビームが駄目なら!」

 

 ビギニングガンダムB30は実弾である腰のミサイルで対処する。

 ミサイルはサムライソードに直撃すると先ほどの無茶のせいもあって、サムライソードは粉々に砕け散った。

 

「良し!」

「ハァァァ!」

 

 サムライソードを失いこそしたが、戦国アストレイはすでに自らの間合いに詰めていた。

 ビギニングガンダムB30がハイパーバスターソードを戦国アストレイに向けるが、戦国アストレイは肩の装甲が腕となり、ビギニングガンダムB30の両手のハイパーバスターライフルごとビギニングガンダムB30の両腕を掴む。

 

「両腕が!」

「粒子発勁!」

 

 腕を掴んだ事でビギニングガンダムB30は防御を取る事も出来ない。

 その上で、完全にゼロ距離まで距離を詰められて戦国アストレイの必殺の一撃である粒子発勁がビギニングガンダムB30の胴体に撃ち込まれた。

 マシロのようにガンプラに金属パーツなどが使われていない事もあって、ビギニングガンダムB30はその一撃で内部から破壊された。

 

「ここまでかよ!」

 

 粒子発勁が決めてとなりバトルは終了した。

 

「終わったな……」

「うん。やっぱり世界は広いね」

 

 バトルが終わり、ニルスは二人に一礼してそそくさを帰って行った。

 タクトもアオイもここまで勝ち抜いた来た事で、決勝トーナメントでもそれなりの戦いが出来ると思っていたが、自分達が思っていた以上に世界の壁は厚かった。

 

「タクト君。また一から来年に向けて練習をしないと駄目みたいだね」

「だな。来年も一緒にここに来て今度こそ、マシロをぶっ飛ばして優勝しないとな」

 

 今年は決勝トーナメントの1回戦で負けたが、去年は地区予選で負けている。

 そう考えると確実に前進している。

 負けた事は悔しいが、全く歯が立たなかった訳ではない。

 世界大会を通して、色々と課題も見えて来た。

 マシロに勝つ為には負けて腐っている時間は勿体ない。

 今年は一回戦で敗退しても、また来年この舞台に戻って来ればいいだけの事だ。

 少なくとも負けて全てが終わりと言う訳ではないのだから。

 

「ぶっ飛ばすは穏やかじゃないけど」

「そのくらいの気合がないとアイツには勝てないって事だよ。マシロの奴なんか刃向う奴は皆殺しって感じだぞ」

 

 タクトの例えにアオイは愛想笑いで濁す。

 例えは少し乱暴だが、そのくらいの気迫が無ければ世界大会を連覇など出来ないのだろう。

 そう思える程の気迫をアオイも感じた。

 

「タクト君。来年もここに来てもっと上を目指そう」

「だな。次こそはだ!」

 

 アオイ達の世界大会はここで終わったが、来年に向けて新たな決意と共にアオイとタクトは会場を去る。

 アオイとニルスのバトルが終わり、今年の世界大会のベスト8が出そろい、2回戦の組み合わせはマシロVSルワン、メイジンVSフェリーニ、アイラVSコウスケ、セイ、レイジ組VSニルスで確定した。

 

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