ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
決勝トーナメント一回戦が終わり、二回戦の第一試合は相手のトラップに対して、自らトラップに飛び込む事でトラップを潰して勝利したマシロと真っ向勝負で実力を見せて勝利したルワンのバトルだ。
一回戦は対象的な展開で勝利した二人だが、去年の世界大会でも決勝トーナメントで当たっている。
その時はマシロが徹底的にルワンのアビゴルバインを抑えて勝利した。
ルワンにとっては去年の雪辱を晴らす機会でもあった。
「この一年は君に勝つ為に努力して来た」
「無駄な努力だな」
「努力に無駄は無いさ。それをこのバトルで見せる」
会話もそこそこに二人はGPベースをセットしてガンプラを置く。
今回の装備は格闘戦用のセブンスソードだ。
準備が整いバトルが開始される。
バトルフィールドは草原。
陸戦では草に足を取られなけないフィールドだ。
「まずは様子見だ」
ガンダム∀GE-1 セブンスソードはショートドッズライフルで先制攻撃を行う。
距離もあり様子見と言う事でモビルアーマー形態のアビゴルバインは難なくかわして2機は接近する。
すれ違いざまにガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードを振るうが、アビゴルバインは回避してモビルスール形態に変形する。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードは着地すると、Cソードを展開したまま、アビゴルバインに突撃する。
アビゴルバインもビームサイズで応戦した。
「動きが単調過ぎる……どういう事」
ガンダム∀GE-1 セブンスソードがCソードを振るいアビゴルバインがビームサイズを振るう。
その様子をレイコはバトル中に分析する。
過去のデータからルワンはアビゴルバインのパワーを活かした戦いを得意とする反面、冷静に相手を分析して弱点を突いてくることも多い。
世界大会に何度も出場しているだけあって、熟練のバトルと言う印象だが、今日のルワンは勢いや力に任せて攻撃そのものは単調だった。
「成程。そう言う事か」
ガンダム∀GE-1 セブンスソードがビームサイズを左腕のシールドで受け止めて、アビゴルバインはCソードを実体剣ではない部分を腕で受け止める。
少ないやり取りの中でマシロはルワンの意図に気が付いたようだ。
「どうやら今回はレイコの出番はないようだ」
「何か分かったの?」
「ああ。コイツ……何も考えずに出たとこ勝負をしてる」
去年の世界大会でマシロに敗北したルワンはその敗因を考えた。
単純な実力以上にマシロはアビゴルバインのパワーを封じて来ている。
当然、ルワンもバトルの中でその事に気が付いて何度も手を打った。
だが、マシロはルワンの対応も事前に分かっていたかのようにルワンの手を潰して来た。
そこから、マシロは単純に圧倒的な力で相手を潰すだけではなく、相手の事を徹底的に研究して相手がやるであろう全てを事前に考えて対策を用意していると考えた。
ルワンも相手のバトルから情報を得て対策を練る事はあるが、マシロはそれをとんでもないレベルでやっている。
情報戦においては絶対にマシロには勝てない。
それがルワンの出した結論だった。
そこを割り切ってしまえば、話しは簡単だ。
情報戦で勝てないなら情報戦をしなければ良い。
情報戦で勝てずともガンプラバトルで勝てば良いのだから。
だからルワンはこのバトルでは策も何も考えずにマシロの動きに合わせる事にした。
普通なら簡単な事ではないが、ルワンは元はプロの野球選手だった。
プロ野球時代には何千、何万のプロの投げたボールを見て来た事で培った動体視力と反射神経を持ってすればマシロの動きに即座に反応して動く事が出来る。
奇しくもルワンはマシロと同じ戦い方でマシロに挑む事となった。
「お前じゃ俺達にはついて来れないだろ」
ルワンもマシロ程ではないが、常人では追いつけない程の動体視力と反射神経を持つ。
幾ら頭の回転が速くてもレイコの動体視力と反射神経は常人の域を超えていない。
そんな二人の間にレイコが入り込む余地はない。
「作戦に変更はない。俺一人でやる」
今回のバトルではレイコはお荷物でしかない。
事前の作戦会議ではルワンの過去のデータから何も考えずに来るのはマシロ相手にはリスクが高すぎるとして優先順位は低かったが、元々の作戦には影響がない。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードとアビゴルバインは距離を取って対峙する。
そして、ガンダム∀GE-1 セブンスソードはCソードとシールドをパージする。
「武器を捨てた?」
肩のビームブーメランを取るとビームダガーの状態で構える。
腰のビームサーベルとショートソードもパージする。
「身軽になっての肉弾戦か。ならば、私もそれに応じよう」
アビゴルバインはビームサイズを構えると拳を握り構えを取る。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードが一気に接近してビームダガーを振るう。
それをアビゴルバインはギリギリまで引きつけて回避すると殴りかかる。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードは素早い動きでアビゴルバインを翻弄し、アビゴルバインは強力な一撃を繰り出す。
どちらも一瞬でも判断を誤るか、躊躇えば命取りとなりかねないが、常人離れした二人は瞬時に見切って反撃している。
「ここまで俺について来るとは流石だな」
殆どゼロ距離で殴り合っているが、どちらも完全にかわしている。
マシロの方は話しているだけの余裕があるが、ルワンにはそこまでの余裕はない。
だが、ルワン自身は焦りは感じてない。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードのビームダガーは威力が低い為、切りつけられても当たり所が悪くなければ一撃ではやられない。
一方のアビゴルバインの拳は当たり所が悪くなくても一撃でガンダム∀GE-1 セブンスソードは沈められる。
ルワンは一撃でも当てればマシロに勝てるが、マシロは何度も切りつけないといけない。
攻撃が中々当たらずとも、一撃で勝てると言うだけで焦る必要はない。
マシロの操縦技術の正確さはずば抜けているが、マシロも人間である限りは疲れからのミスを無くすことは出来ない。
持久戦に持ち込めば基礎体力で勝るルワンに分がある。
だからこそ、今は致命傷を避けるだけで後はひたすら攻め続けるだけだ。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードとアビゴルバインの肉弾戦は1時間近くも続いた。
マシロの1回戦では何も動かずに過ぎた1時間だが、この1時間で野次を飛ばす観客はいない。
寧ろ、いつ均衡が崩れるかも知れない状況に観客達は息を飲んでみている。
そして、遂に均衡が崩れた。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードがアビゴルバインの攻撃を避けて踏み込んだ瞬間、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは草に足を取られて、片足が滑って体勢を崩した。
「貰った!」
その瞬間にルワンは遂に千載一遇の好機が来たと確信した。
アビゴルバインは力強く踏み込んで渾身のパンチをガンダム∀GE-1 セブンスソードに繰り出した。
完全に崩していたガンダム∀GE-1 セブンスソードはその一撃を回避できずに胸部にまともに受けてしまう。
胸部の追加装甲は粉々に破壊され、ガンダム∀GE-1 セブンスソードの胸部、ベース機からあるAのマークにも皹が入っている。
渾身の一撃を受けたガンダム∀GE-1 セブンスソードの手からビームダガーが滑り落ちて、ガンダム∀GE-1 セブンスソードは膝をついた。
会場はシンと静まり返ると、状況を理解した観客達は歓声を上げた。
今まで圧倒的な強さにより君臨していた絶対的王者の敗北。
それはマシロの圧倒的勝利を望むのと同じ程に観客達が望んでいた事だ。
ガンダム∀GE-1 セブンスソードが膝を付き、歓声が上がりルワン自体も勝利を確信した。
だが、それが致命的な隙となった事にルワンが気づいた時にはすでに遅かった。
アビゴルバインは不意にビームにより貫かれた。
「……ビームサーベルだと」
膝をつくガンダム∀GE-1 セブンスソードの手には身軽になる為に捨てた筈のビームサーベルが握られていた。
そのビームサーベルがアビゴルバインを貫いていた。
マシロが敗北して事で上がった歓声も一気に静まり返る。
アビゴルバインにビームサーベルを突き刺していたガンダム∀GE-1 セブンスソードは何事もなかったように立ち上がるとビームサーベルでアビゴルバインを両断した。
「馬鹿な……確かに最後の一撃は決まった筈」
「決まってたさ。ただ、届かなかっただけだ」
最後のアビゴルバインの渾身の一撃はガンダム∀GE-1 セブンスソードに直撃した。
だが、その一撃すらもガンダム∀GE-1 セブンスソードを撃破するには至らなかった。
マシロは説明を省いていたが、その秘密は胸部の追加装甲にあった。
この装甲は表面に特殊な塗装を施すことでビームを弾く。
それは何度も見せている為、周知の事実だ。
しかし、これだけではなかった。
今までは防げるビーム以外は被弾させず隠していたが、追加装甲は複数のプラ版により形成されている。
それが攻撃の直撃時に自壊する事で衝撃を吸収するチョバムアーマーとなっていた。
最後の一撃をマシロは敢えて胸部装甲で受ける事で最低限のダメージで耐えきった。
エリカ戦で最後に見せた一撃ならば、追加装甲の許容範囲内であると確信したからこその策だ。
後はやられたフリをすれば、マシロの敗北を望む観客が勝手にマシロが負けたと思いマシロが敗北したのだと言う事を盛り上げる。
そうなれば、ルワンもマシロに勝ったのだと錯覚して、普段ではあり得ない致命的な隙を作り出す。
そして、マシロは戦いながらもゆっくりと自分が捨てたビームサーベルの場所まで移動していた。
膝をついたのも、やられたと言う事を印象づける為の演技であると同時に、落ちているビームサーベルを拾い易くする為と言う意図もある。
武器を捨てた事でルワンはガンダム∀GE-1 セブンスソードの武器はビームダガーのみだと思わせもした。
その上でルワンの性格上、真っ向からの肉弾戦をやろうとすれば付き合う確率も高いを読んでいた。
最後は足を滑らせたと言うミスをしたフリをして敢えて攻撃を正面から受けた。
その気になれば、衝撃を逃がして当たったフリをする事も出来たが、観客の目は誤魔化せても、攻撃時の感覚からルワンに気づかれる可能性も考慮して逃がすこと無く攻撃を受けた。
追加装甲がチョバムアーマーだと知らないルワン達からすれば、自壊したのではなくアビゴルバインの強烈な一撃で粉砕されたのだと誤認させれば、やられたフリにもリアリティが出て来る。
その上でルワンがマシロに勝つ為にとった出たとこ勝負はマシロにとっては逆にやり易かった。
普段のルワンなら冷静に相手の動きを分析して来る為、様々な行動でルワンの思考を誘導して誤魔化しながら持っていく必要があったが、何も考えずに戦ってくれたおかげでこの状況に持って行き易かった。
隙を作った時も普段なら考え難い致命的な隙だが、ギリギリの肉弾戦では一瞬の迷いや躊躇が好機を逃すだけでなく、流れを変えかねない。
この作戦を取ったのも過去のデータからこの場面で罠の可能性があってもルワンが臆する事無く打って出ると読んでの事だった。
「流石としか言いようがないな。私の負けだよ」
一度は勝利を確信しながらの敗北を喫したルワンだが、素直に敗北を受け入れていた。
「だが、次は負けない」
「次ね」
今年もルワンはマシロに負けこそはしたが、来年の世界大会を見据えていた。
悔しい訳ではないが、負けた事は受け入れなければならない。
だが、そんな前向きな姿勢はマシロの心を抉るだけだ。
来年の世界大会はルワンが思っているようなバトルではない事をマシロは知っている。
だからこそ、全てをぶちまけてやりたい衝動に駆られるが、そんな事をしても何も変わる事は無い。
互いの健闘を称える為にルワンはマシロに握手を求めるも、マシロはルワンの事を完全に無視して帰って行く。
午前のマシロの騙し討ちによる勝利は観客達に大きな衝撃を与えた。
そして、午後のバトルは現在のところ、マシロに対する有力な対抗馬であるメイジンカワグチと、二人を除けば優勝候補の一人と目されているイタリア代表のリカルド・フェリーニとのバトルだ。
「ジュリアンに勝ったとはいえ、今日の相手も油断は禁物だ」
「分かっている。ここまで勝ち残ったファイターの中で油断出来る相手などいる筈もない」
「メイジンカワグチに高く評価して貰えて光栄だ。けど、いつまでそのスカした態度を取れるか見ものだな」
バトルが始まる前だが、フェリーニが軽く挑発するもメイジンは挑発に乗る事は無い。
尤も、フェリーニもこれで少しはムキになってくれれば儲け物と言う程度でしか思っていない為、挑発に乗って来なくても気にすることはない。
「装備を強化して来たのか。また厄介な事を」
一回戦では最低限の装備しかしていなかったメイジンのアメイジングエクシアだが、今回は武装を強化していた。
腰にはGNソードの刀身を流用して制作したアメイジングGNブレイドを追加している。
更にはバックパックには大型のユニット、トランザムブースターが追加されている。
これによって機動力の強化だけではなく、トランザムを安定させた上で使用時間を延ばすことが出来る。
その上、分離して独自に運用する事も出来る為、戦いの幅が広がった。
「けど、俺のフェニーチェだって強化したんだ。勝って次に進ませて貰う」
メイジンのアメイジングエクシアも強化されているが、フェリーニも予選ピリオドから強化したガンダムフェニーチェリナーシタとなっている。
そして、このバトルに勝利する事が出来れば、次のバトルの相手はセイ、レイジ組と戦えるかも知れない。
セイとレイジも次のニルス戦で勝つ必要があるが、その前にフェリーニもメイジンに勝利しなければ戦う事は出来ない。
「心意気は認めよう。だが、私とて負けられない理由はある」
フェリーニがセイとレイジと戦う事を望むようにタツヤもまた、決勝まで勝ち進んでマシロとの約束を果たさねばならない。
どちらもこのバトルで勝たなければならない理由がある。
この先に進む事が出来るのはどちらか一方だけである為、どちらも譲る事は出来ない。
メイジンとフェリーニの負けられない一戦が始まる。
二人がバトルするのは宇宙のステージだ。
障害物となる物は少なく、互いの純粋な技術が物を言う。
「相手がエクシアなら。まずは近づけさせない」
ガンダムフェニーチェリナーシタはまだ、距離があるがリナーシタライフルのハンドライフルで先制攻撃を行う。
相手は近接戦闘に特化しているガンダムエクシアを改造している以上、近接戦闘を得意としている。
ある程度の距離を保っていれば相手の攻撃は恐れるに足りない。
「距離を詰めさせないつもりか。良い判断だ。だが、それがどうした!」
距離があってもかなり正確に狙って来るが、アメイジングエクシアはトランザムブースターで強化された機動力に物を言わせて接近する。
「ちっ……そりゃそんなにデカい背負い物をしてんだ。機動力は強化されてるのは当然か」
ガンダムフェニーチェリナーシタはバスターライフルを放ったが、アメイジングエクシアは当然のように回避して、アメイジングGNソードを展開する。
すでに殆ど距離を詰められている為、ガンダムフェニーチェリナーシタはハンドライフルからビームサーベルを出して、前に出る。
前に出た事で、アメイジングエクシアがアメイジングGNソードを振るう前にガンダムフェニーチェリナーシタがビームサーベルを振るい、アメイジングエクシアがアメイジングGNソードで受け止める。
「悪いが接近戦でも負ける気は無いんでね」
「そのようだな」
アメイジングエクシアはガンダムフェニーチェリナーシタを弾き飛ばすと、アメイジングGNソードをライフルモードにして連射する。
ガンダムフェニーチェリナーシタはビームマントを展開して防ぐ。
「パワーはダンチかよ」
ガンダムフェニーチェリナーシタは頭部のバルカンと胸部のマシンキャノンで牽制する。
弾幕を掻い潜り接近しようとするところを狙ってガンダムフェニーチェリナーシタはハンドライフルを放つ。
この距離なら直撃させればハンドライフルでも十分にアメイジングエクシアに損傷をさせる事が出来る為、メイジンも慎重にならざる負えない。
「そう簡単に踏み込ませてはくれないようだな」
アメイジングエクシアはベースのガンダムエクシア同様に近接戦闘でその能力を発揮する。
フェリーニもそれが分かっている為、近づけさせないようにする事を最優先にしている。
距離を取ってでの戦闘ならば豊富な火器を持つフェリーニのガンダムフェニーチェリナーシタの方が有利だ。
「カワグチ。今日は思い切り行っても問題はないよ」
「そうだな。ならば、全力で行かせて貰おう。トランザム!」
前回とは違いトランザムブースターを装備したお陰でアメイジングエクシアはトランザムを安定して使える。
その為、アランもトランザムを使う事には反対ではない。
どの道、距離を詰めなければ分が悪い為、ここでトランザムを使ってでも距離を詰める必要がある。
「使って来たか!」
前回も使っている為、フェリーニもトランザムは警戒していた。
ガンダムフェニーチェリナーシタにはバトル時に機体性能を向上させる特殊システムの類は搭載されていない為、トランザムを使って来られると一気に流れを持って行かれる。
ガンダムフェニーチェリナーシタはバード形態に変形すると一気に距離を取る。
「逃がさん!」
トランザムを使った事で赤く発光しているアメイジングエクシアはガンダムフェニーチェリナーシタを追いかける。
高速移動が可能なバード形態だが、トランザムを使っているアメイジングエクシアを振り切る事は出来ずにジリジリと距離を詰められていく。
「生憎と逃げる気は無いんでね!」
一見、逃げているように見えたガンダムフェニーチェリナーシタだったが、急にモビルスーツ形態に変形すると急制動をかけた。
「何?」
バード形態だったガンダムフェニーチェリナーシタを追いかける為に最大速度を出していたアメイジングエクシアは一気にガンダムフェニーチェリナーシタを追い抜くと、ガンダムフェニーチェリナーシタに背を向ける形となる。
これがフェリーニの狙いだ。
始めから逃げる気は無かった。
逃げようとすれば近接戦闘を仕掛けたいメイジンは必ず追って来る。
バード形態のガンダムフェニーチェリナーシタに追いつくにはトランザムを使っていても簡単ではない。
そこで途中で急制動をかける事で、アメイジングエクシアに自分を追い越して貰う事で背後を突くと言う狙いだ。
「こいつで!」
背後を突いたガンダムフェニーチェリナーシタはアメイジングエクシアにリナーシタライフルを向ける。
そして、最大出力でバスターライフルを放つ。
完全に背を向けていた為、回避が間に合わずに、バスターライフルはアメイジングエクシアの背後に直撃して爆発を起こす。
「やったか!」
「これしきの事で!」
だが、爆風からはトランザム状態のアメイジングエクシアが飛び出して来た。
「今のでも仕留めきれないのかよ」
爆風から飛び出して来たアメイジングエクシアだが、シールドとトランザムブースターを失っている。
ガンダムフェニーチェリナーシタのバスターライフルが直撃する瞬間に、アメイジングエクシアはトランザムブースターを切り離した。
それにより、直撃を受けて爆発したのはトランザムブースターだけだ。
ほぼゼロ距離での爆発だった為、シールドを使って爆風から身を守ったが、代わりにシールドが使い物にならなくなり、シールドも捨てた。
「けど、その状態なら!」
急制動を使った攻撃はアメイジングエクシアを撃破には至らなかったが、バックパックとシールドを破壊する事には成功している。
その上でトランザムを使っている為、トランザムが終わるまで凌ぎ切れば勝機が高まる。
ガンダムフェニーチェリナーシタはハンドライフルを連射する。
アメイジングエクシアは回避しながらも、アメイジングGNソードのライフルモードで反撃した。
そのビームが運悪くリナーシタライフルの先端に掠った為、すぐにバスターライフルとハンドライフルを切り離してハンドライフルだけ回収する。
その間にアメイジングエクシアはガンダムフェニーチェリナーシタに接近してアメイジングGNブレイドを振るう。
ガンダムフェニーチェリナーシタはハンドライフルからビームサーベルを出して受け止めるが、正面からぶつかるのではなく、アメイジングエクシアの勢いに吹き飛ばされる形で後方に下がりながらバルカンとマシンキャノンで弾幕を張る。
「カワグチ! トランザムの限界時間が!」
「分かっている」
トランザムブースターを失った事でトランザムの限界時間が一気に短縮されたせいで発動時の予測よりも早く限界時間が訪れていた。
アメイジングエクシアの発光が消えた事でトランザムが終わった事を示した。
トランザムは一度使って限界時間を迎えるを機体性能ががた落ちする諸刃の剣だ。
その上、使用時には赤く発光する為、トランザムを使っているのかが一目で分かってしまう。
トランザムが終わったところでガンダムフェニーチェリナーシタは一気に攻勢に出る。
ガンダムフェニーチェリナーシタはビームサーベルを振るい、アメイジングエクシアはアメイジングGNブレイドで受け止める。
だが、アメイジングエクシアは弾き飛ばされてアメイジングGNブレイドを手放してしまう。
「今度こそこれで!」
ガンダムフェニーチェリナーシタは一気に畳み掛ける為に体勢を崩しているアメイジングエクシアに接近する。
「カワグチ!」
「この瞬間を待っていた!」
ガンダムフェニーチェリナーシタがアメイジングエクシアに留めの一撃をしようとした瞬間にアメイジングエクシアは再び赤く発光した。
それを見た瞬間にフェリーニは下手を打った事を理解した。
だが、それを理解した時にはすでにガンダムフェニーチェリナーシタはビームサーベルを振り下ろしていた。
再度トランザムを使ったアメイジングエクシアは瞬間的に加速して、ガンダムフェニーチェリナーシタの一撃をかわすと発光が終わった。
トランザムの限界時間が迫った時にメイジンはとっさにトランザムを自分から中断させた。
それによりギリギリ使用時間を1秒だけ残すことが出来た。
その1秒間のトランザムを最大限に活かす為のタイミングを見計らっていた。
ガンダムフェニーチェリナーシタの一撃をかわしたアメイジングエクシアはアメイジングGNソードのライフルモードをガンダムフェニーチェリナーシタの胴体装甲に殴りつけるように押し付けた。
「この距離ならば!」
装甲に押し付けてゼロ距離からアメイジングエクシアはビームを撃ち込む。
元からライフルモードのビームの威力は低い上にトランザムを限界時間まで使ったため、威力はかなり落ちているがゼロ距離からビームを撃ち込まれてはガンダムフェニーチェリナーシタも無事ではない。
「まだ! 俺達は負けてねぇ!」
胴体を撃ち抜かれながらも、最後の力を振り絞ってガンダムフェニーチェリナーシタはシールドでアメイジングエクシアを殴りつける。
「くっ! 私も負ける訳には行かない!」
殴り飛ばされながらも、アメイジングエクシアはアメイジングGNソードを展開すると、短距離ではあるが勢いをつけて、ガンダムフェニーチェリナーシタの胴体に突き刺す。
「アイツ等と戦う為に!」
「マシロと戦う為に!」
腹部にアメイジングGNソードを突き刺すアメイジングエクシアにガンダムフェニーチェリナーシタは頭部のバルカンと胸部のマシンキャノンを至近距離から撃ち込む。
バルカンの被弾しながらも、アメイジングエクシアもアメイジングGNソードを突き刺したまま、左手でガンダムフェニーチェリナーシタの胴体を殴り、GNバルカンを撃ち込む。
もはや、策も技術も関係ない。
至近距離からのバルカンの撃ち合いはどちらが先に限界を迎えるのかの根競べだ。
ガンプラバトルにおいてガンプラの完成度が性能に左右する。
ここで簡単には埋める事の出来ない差が出て来る。
どんなに制作技術があっても、個人が企業が総力を挙げて制作したガンプラと基本性能で対等に立つ事は難しい。
アメイジングエクシアとガンダムフェニーチェリナーシタを比べると総合的には火力や可変機構などを持つ為、大きな差はないが、基本性能においてアメイジングエクシアはガンダムフェニーチェリナーシタよりも高い。
この状況においてはその差が決定的な物となって覆すことは出来ない。
バルカンとマシンキャノンの集中砲火を浴びているアメイジングエクシアよりも、片腕のGNバルカンを受けているガンダムフェニーチェリナーシタの方が先に限界を迎えようとしていた。
「ここまでかよ……」
至近距離からバルカンを撃ち合っていたが、ガンダムフェニーチェリナーシタが機能を停止した。
アメイジングエクシアも至近距離からバルカンとマシンキャノンの集中砲火を浴びて無傷とは言えないが、まだ十分に動く事が出来る。
ガンダムフェニーチェリナーシタが機能を完全に停止し、メイジンの勝利が決まった。
「今回も勝ったね」
「ああ。何とかな。エクシアの性能があってこそだが」
最後は策も実力も関係なく、純粋にガンプラの性能で勝負が決まった。
一対一でのバトルに重きを置いたアメイジングエクシアだからこそ、勝つ事が出来た。
「次のバトルに勝てば決勝……Aブロックはマシロ・クロガミが勝ち上がって来る事が硬いか」
「その前に次の相手も油断は出来そうにない」
メイジンの次の相手はセイ、レイジ組かニルス・ニールセンのどちらかだ。
双方が大会初出場ながらも、その実力を発揮している。
どちらが勝ち上がろうとも強敵になる事は間違いない。
マシロとバトルする為の最後の壁もそう簡単には突破できそうにはない。
「だが、勝って見せるさ。その為に私はここに居る」
だが、あの日の約束を果たす為にもタツヤは負ける訳には行かない。
決勝トーナメント5日目が終わり、優勝候補の二人は順当に勝ち上がり、大会常連の二人が姿を消した。
5日目が終わり、マシロはホテルを抜け出して適当に歩いていた。
今日のバトルで勝利したは良いが、胸部装甲の秘密を見せた。
この時点でガンダム∀GE-1の隠し玉を全て使い切った事になる。
まだ、フルアサルトジャケットの使っていない武器のストックは大量にあるが、切り札にすぐ程ではない。
今年の大会用の用意しようとしていた新型は思った以上に時間がかかり、まだ手元に届いていない。
「後2回か……」
マシロは日が落ちた空を見上げてそう言う。
後2回のバトルが終われば今年の世界大会は終わる。
そうなれば、ガンプラバトルは今までとは大きく変わる。
それを止める術は無い。
「何でこんなことになったんだろうな」
今更言ったところで何が変わる訳でも無い。
ユキトがガンダムやガンダムバトルが利益となると目を付けられた時点でマシロがいなくても結果は変わらないだろう。
「マシロ? ずいぶんと久しぶりのように思えますね」
「こんな時間に子供が出歩くのは不味くないか?」
適当に歩いているとマシロはニルスと遭遇した。
ニルスとは世界大会の開催前夜にバトルした時からまともに話してはいない。
あれから2週間程度しか経っていないが、ずいぶんと時間が経った気がする。
「少し良いでしょうか? 聞きたい事もあります」
ニルスがそう切り出して来て、マシロも断る理由はない。
話しは長くなりそうだった為、二人は場所を移動して適当にベンチを見つけて座る。
「少し合わないうちに雰囲気が変わった気がします」
「どうだろ。で、話しって何? 母さんからの連絡はないけど」
ニルスも以前に会った時とはマシロの雰囲気が変わった事に気が付くが、それ以上は追及しない。
だが、決勝トーナメントに入り集中しているのだろうとして話しを進める。
ニルスの話しとしては今日の昼間にPPSE社の会長秘書から接触を受けて、PPSEが次のバトルに勝てばニルスの事を資金的に援助したいと申し出て来た事。
独自のルートから会長はプラフスキー粒子の秘密を知り、その秘密を「少年」により暴露される事を恐れている事などを話した。
「クロガミグループがPPSE社の創立に出資している事は簡単に調べが付く事です。マシロは何か知ってますか?」
「そっちは管轄外」
マシロもPPSEの会長とクロガミグループの関係については深くは知らない。
だが、ニルスの話しか見えて来た事がある。
このタイミングでニルスを支援すると言ってまで次のバトルに勝たせないと言う事と会長が暴露を恐れている秘密を知っている少年。
そこからその少年はセイかレイジを指していると仮定すれば全ての辻褄が合う。
今まで二人を妨害していたのがPPSEの会長の差し金と言う事になる。
尤も、全ては推測の域を出ない為、確定は出来ない。
しかし、調査を指示したが、中々成果が出ない事を考えるとあながち間違いでもないだろう。
大会期間中はPPSEの会長にもクロガミグループがある程度警護をしている。
期間中に会長にもしもの事があっては、大会に影響が出るかも知れないからだ。
クロガミグループの人間が警護している以上、簡単に情報を得ることが出来ないのも当然だ。
「そんな事よりも明日のバトル方は?」
「僕は元々、プラフスキー粒子の秘密を暴く為に大会に参加しています。次の対戦相手の二人のどちらかがその秘密を知っていると分かった以上は勝ち上がる必然性はないです。だから、さっき彼らと接触して明日の勝利を譲る事を条件に秘密を話して貰おうとしましたけど、断られましたよ。それで、明日のバトルに勝てば知っている事を全て話してくれることになりました」
「そりゃそうだろ」
ニルスがこんな時間に出歩いていたのは、セイとレイジと会う為らしい。
明日の対戦相手と人目の多い昼間に会うにはリスクが高いから、人目の少ない時間帯を選んだ。
そこで、明日のバトルでニルスがわざと負ける事を条件にプラフスキー粒子の情報を聞き出そうとした。
結果は失敗に終わった。
優勝を狙っている彼らからすればその前の一戦を楽に勝ち抜けるなら情報を提供する程度の事は気にする程ではないと考えていた。
学者であるニルスからすれば、研究の為に誰かに答えを教えて貰いそのまま発表する事はあり得ないが、目的の為に必要ならば分からい事を誰かに教えを請う事は間違いではないと考えている。
今回の事もニルスからすれば決勝で勝利を譲られるならともかく、ニルスとのバトルは優勝を目指す上での過程に過ぎない為、勝てるならそれに越したことはないだろうと提案した物だが、二人からすれば違うらしい。
マシロも二人の言いたい事は理解出来る。
優勝を目指しているが、一戦一戦も適当に流すことの出来ない重要な戦いなのだろう。
残り少ないバトルとなった今ではそれも理解できる。
「で、天才少年としては明日のバトルに勝機はあるのか?」
「当然です」
セイの作ったスタービルドストライクとそれを動かすレイジの実力は高い。
それでもニルスは勝機を見出していた。
「彼らのガンプラは確かに強い。ビームを粒子変換して吸収する能力に吸収した粒子を全面解放する能力、機体性能を底上げする能力と様々な能力を持っています。ですが、ビーム兵器を持たない僕の戦国アストレイにはビームを吸収する能力は意味を成さない。ビームが吸収できないであれば全面開放する能力も使えない」
ニルスにとっては最も厄介だったのがディスチャージシステムだ。
今のところはディスチャージシステムは膨大な粒子を推力に回すか、火器に回すかをしている。
推力に回した状態の機動力は火器を持たない戦国アストレイで対処するのは厳しい。
火器に回した状態でもビームを切り裂く刀を持っていたとしても、第二ピリオドで見せた拡散状態では全てを凌ぐ事は不可能で、マオとのバトルで見せた収束状態もガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンと正面からぶつかり合えるだけの火力を持っている為、完全に防ぐ事は出来ない。
しかし、ニルスの見る限りディスチャージシステムはアブソーブシステムと併用しなければバトル中にはまともに使えない。
戦国アストレイはビーム兵器を持っていない為、アブソーブシステムを気にする必要は無い為、必然的にディスチャージシステムをバトル中に使われる危険性は大きく減る。
「機体性能を上げる能力は厄介ですが、解放する能力に比べれば爆発的ではない為、決して対処出来ない事は無い」
残るはRGシステムだが、RGシステムはディスチャージシステムと比べると発動条件が容易で安定している分、ディスチャージシステムのような爆発的な性能を発揮する事は無い。
元々のスタービルドストライクの性能が高い分、更に性能を底上げするRGシステムは厄介ではあるが、ディスチャージシステムを使われる事よりかは対処が可能だ。
「つまりは彼らに隠し玉がない限りは僕の勝利は揺るがない」
ディスチャージシステムが使えない以上、RGシステムにさえ警戒していれば良い。
スタービルドストライクには実体剣や実弾系の装備は今のところ使ってない為、ビーム兵器なら戦国アストレイのサムライソードで対処が出来る。
その上で、白兵戦に持ち込めばスタービルドストライクを相手に勝機は十分だ。
切り札である粒子発勁もマシロの時のように金属パーツが使われている形跡もなければ、アオイの時のように直接触れる事が出来ないと言う事もない。
つまりは懐に入り込んで粒子発勁を撃ち込めば勝てる。
予選ピリオドや1回戦を見る限りではセイもレイジも切り札を温存できるタイプではない。
ここまでのバトルの中で全ての機能を晒したと見て良い。
隠し玉がない以上はニルスの有利は変わらなかった。
「俺も良く言われるけど、その余裕に足元を掬われないようにな」
「分かっています。彼らが油断できない相手だと言う事は百も承知です。ですが、彼らは自らの能力を見せ過ぎている。すでに彼らに関するデータは集まっています」
世界大会で今まで誰も連覇できていない最大の理由はそこにあった。
公式戦で結果を出せば出す程、自分の情報が流出する為、常にファイターは進化し続けなければ対策を立てられて、時代に取り残されて追い越されて行く。
世界大会の常連と言われているファイター達は単純な実力の上に常に進化しているからこそ常連として名を馳せている。
ニルスもまた、これまでのデータからスタービルドストライクのデータを集めている。
だが、マシロは敢えて言わなかったが、過去のデータなど参考程度でしか役には立たない。
特にセイとレイジは安定して実力を発揮するタイプと言うよりも、追い詰められて一気に進化するタイプのファイターだ。
その為、バトルを重ねるごとに過去のデータは役には立たなくなり、場合によってはバトルの中で進化する事もある。
それらを踏まえなければデータなど何の意味もない。
「明日のバトルは僕にとっては優勝以上に意味のある事。必ず勝って見せます」
ニルスは優勝を目的にしている訳ではない。
明日のバトルに勝利すればセイやレイジからプラフスキー粒子に関して知っている事を聞く事も出来て、PPSE社から援助も受けられる。
情報だけでなく、PPSEから援助を受ける事が出来ればPPSEがひた隠しにしている粒子の謎にも迫る事が出来る。
ニルスにとっては明日のセイ、レイジ組とのバトルは世界大会での優勝以上の価値がある物だ。
「あっそ」
ニルスの思惑はマシロにとってはどうでも良い事だ。
明日のバトルでセイとレイジが負けるならそこまでの事でしかない。
どの道、Bブロックからは一人としかバトルが出来ない。
メイジンも順当に勝ち上がってもいる。
その為、セイとレイジが負けても別に構わなかった。
二人に勝てるのであればそれはそれで戦うに値する。
「それでは失礼します」
ニルスは明日のバトルに備えて先に戻る。
ニルスが帰った後はマシロもしばらくベンチに座ってボーっとしていた。
「俺の準決勝の相手は多分……」
そこまで口にするもそれ以上は考えないにした。
考えたところでどうしようもない。
今はただ一回でも多くバトルをする為に勝つ事しか考えないようするだけだった。