ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle50 「必殺技」

 

 

 

 

 世界大会決勝トーナメントもすでに半数以上のバトルが終わり、ベスト4を決めるバトルも後2試合となった。

 午前は初戦を無難に勝ち上がったアイラとコウスケのバトルだ。

 午後はプラフスキー粒子を応用する能力を持ったガンプラを使うセイ、レイジ組とニルスのバトルとなっている。

 このバトルに勝利したファイターがベスト4となり、マシロとメイジンと対戦する事になる。 

 午前中のバトルは初戦で実力差があった為、実力を殆ど見せていない同士のバトルであり、勝った方が次のマシロの相手となる事もあって注目を受けている。

 

「相手はチームネメシスの2番手……ガンプラの相性ではこちらに分があるけど……」

 

 アイラはファンネルを中心に使ってここまで勝ち上がって来た。

 コウスケのユニコーンガンダム・ノルンならファンネルをジャックする事が出来る。

 その為、ガンプラの相性は良い。

 だが、今までファンネルを中心として来た分、ファンネルを使わない戦いは未知数だ。

 以前に圧倒的な差を見せつけられたマシロが所属しているチームのナンバー2と言う事を考えると油断は出来ない。

 

「余計な事は考えるな……いつも通りにやれば良いんだ」

 

 情報の無い相手の事で色々と考えていてもどうにもならない。

 コウスケは頭を切り替える。

 アイラの方も準備が整いバトルは開始される。

 バトルフィールドは小惑星帯。

 デブリベルト同様に障害物の多いバトルフィールドとなっている。

 

「アイラ。分かっていると思うが」

「分かっています」

 

 キュベレイパピヨンは小惑星を避けながら相手を探していた。

 第二ピリオドでユニコーンガンダム・ノルンはクイン・マンサのファンネルのコントロールを奪っている。

 原理はともかく、ファンネルの制御を奪える以上はキュベレイパピヨンもファンネルは下手に使えない。

 ファンネル以外の武器は手持ちのランスビットと腕部のビームサーベル兼ビームガンでどちらも近接戦闘用の武器だ。

 相手に接近しなければ一方的に攻撃される。

 相手を探しているとユニコーンガンダム・ノルンがビームマグナムで先制攻撃を行う。

 その攻撃はキュベレイパピヨンは軽々と回避する。

 一発目を回避するが、すぐに二発目、三発目のビームマグナムが撃たれる。

 

「3……4、5……」

 

 5発目のビームマグナムを回避したところでキュベレイパピヨンは一気に攻撃して来た方に向かう。

 

「弾切れを狙って来たか」

 

 ユニコーンガンダム・ノルンはすぐにビームマグナムのカートリッジを装填する。

 装填するとシールドのビーム砲で接近するキュベレイパピヨンを迎撃する。

 キュベレイパピヨンは小惑星を盾に姿を隠してやり過ごす。

 コウスケが見失っている間に回り込んで腕部のビームガンを放つ。

 ユニコーンガンダム・ノルンはとっさにシールドで受け止めた。

 

「……Iフィールド」

 

 すぐにビームマグナムを放つが、キュベレイパピヨンは小惑星の影に隠れてかわす。

 

「何処に……」

 

 周囲を捜索しているが、キュベレイパピヨンは背後から飛び出して来てランスビットを突き出す。

 

「後ろか!」

 

 振り向きざまにビームマグナムを向けて放つが、向ける前にキュベレイパピヨンはビームマグナムを向ける前に回避行動を取り、撃った時には懐に入り込んでいた。

 すぐに頭部のバルカンで応戦しようとするも、腹部にランスビットの一撃を受けて体勢を崩しながら後方に飛ばされる。

 キュベレイパピヨンはビームガンを連射して追撃する。

 ユニコーンガンダム・ノルンはシールドで受け止めながら体勢を立て直すとバルカンで牽制するが、すぐに小惑星に隠れて当たらない。

 

「その調子だ。アイラ」

 

 小惑星帯に隠れながらキュベレイパピヨンはユニコーンガンダム・ノルンの背後から現れてはランスビットで攻撃する。

 コウスケも何とか反応するが、ギリギリ防御をするので精一杯だ。

 背後から攻撃して来る為、コウスケも自分の背後に敏感になりかけたが、背後から来ると思った瞬間に背後にビームマグナムを撃つが、キュベレイパピヨンはそこにはいなかった。

 何度か同じ方向から攻撃する事でその方向に注意が行く辺りから、背後と見せかけて別方向から攻撃を行う事で相手を翻弄する。

 

「こっちの動きが見切られてるのか……」

 

 ユニコーンガンダム・ノルンの背後からキュベレイパピヨンがランスビットを突き出し、ユニコーンガンダム・ノルンは何とかビームマグナム下部のリボルビング・ランチャーからビ

 

ームジュッテを出して受け止める。

 だが、キュベレイパピヨンは左手にビームサーベルを持って振う。

 ビームサーベルがビームマグナムを切り裂いて破壊されるとその爆風に紛れて再びキュベレイパピヨンは小惑星帯に姿を隠す。

 

「流石はチームネメシスのナンバー2。簡単には勝たせてはくれないか」

 

 ユニコーンガンダム・ノルンはシールドをバックパックに装着する。

 そして、デストロイモードへと変身する。

 

「……変身した」

「こけおどしだ」

 

 デストロイモードとなったユニコーンガンダム・ノルンは一気に加速して小惑星帯を駆け抜ける。

 

「速い」

 

 バックパックに装着したシールドの推力も合わせてユニコーンガンダム・ノルンの速度は相当な物になっている。

 単純な機動力ではキュベレイパピヨンを遥かに凌駕していた。

 これでは幾ら粒子の動きから先読みしても追いつく事は困難だ。

 

「悪あがきを……」

「問題ありません」

 

 機動力では圧倒的だが、この程度でアイラは動じる事は無い。

 今のユニコーンガンダム・ノルンはただ機動力が高いだけに過ぎない。

 その程度なら何度もマシロとの練習でやっていた。

 キュベレイパピヨンはランスビットを手放すと左手でビームガンを撃ちながら右手にビームサーベルを持ってユニコーンガンダム・ノルンを追いかける。

 ユニコーンガンダム・ノルンは両腕からビームトンファーを出して、ビームをかわしながらキュベレイパピヨンに接近する。

 高い機動力を活かして、一気にキュベレイパピヨンを責め立てる。

 

「アイラ! 何とかしろ!」

「少し黙ってて下さい」

 

 ユニコーンガンダム・ノルンが攻勢に出ているように見えるが、その動きは直線的である為、動きを読んで攻撃を流すことは容易だ。

 キュベレイパピヨンは動きを止めてひたすらユニコーンガンダム・ノルンのビームトンファーの攻撃を凌ぐ。

 

「これで!」

「余り調子に……」

 

 ユニコーンガンダム・ノルンがキュベレイパピヨンに接近してビームトンファーを振り上げた瞬間にランスビットが横からユニコーンガンダム・ノルンに襲い掛かる。

 ランスビットはユニコーンガンダム・ノルンのバックパックとシールドの間に突き刺さり、ユニコーンガンダム・ノルンは体勢を崩す。

 

「槍が! どうして」

 

 キュベレイパピヨンのランスビットは今まで手持ちの槍としてしか使っていなかったが、「ビット」と名がついているようにビット兵器として遠隔操作できる。

 アイラがランスビットを手放したのは、小回りの利く武器に持ち替えただけではなく、相手の意識からランスビットの存在を消す為だ。

 その上で攻撃を凌ぎながらチャンスを見ていた。

 ランスビットの横やりで一気に形勢は逆転した。

 

「行きなさい。ファンネル」

 

 今までファンネルジャックを避ける為にファンネルは温存してあった。

 それをこの好機に一気に使う。

 横やりで完全に体勢を崩しているユニコーンガンダム・ノルンはファンネルジャックを使うだけの余裕はない。

 瞬時にユニコーンガンダム・ノルンを囲んだファンネル達は全方位からの攻撃を開始する。

 真っ先に武器を持つ両腕と頭部、脚部が破壊される。

 ファンネルが攻撃している間にキュベレイパピヨンは両手にビームサーベルを持ってユニコーンガンダム・ノルンに突き刺す。

 ランスビットの横やりからわずか数秒の出来事である為、コウスケはまともな抵抗をする事無く勝敗は決した。

 

「良くやったぞ。アイラ」

「この程度の事は想定内です」

 

 バルトは終盤のデストロイモードを使ってからは冷っとさせられたが、アイラはマシロの攻撃と比べると分かり易すかった。

 アイラがコウスケに快勝した事で準決勝の組み合わせがマシロとアイラで同じチーム同士のバトルで確定した。

 

 

 

 

 

 

 マシロの準決勝の相手がアイラで決まり、午後のバトルの勝者がメイジンの準決勝の相手となる。

 どちらもプラフスキー粒子を応用したバトルを行うファイターだが、ニルスは接近戦に特化したガンプラを使い、セイとレイジは汎用に特化したガンプラを使う。

 そして、どちらも大会最年少だ。

 

「今日は絶対に勝つぞ。セイ」

「うん!」

 

 初戦でマオと砲撃勝負で負けながらもバトルには勝った事や、昨夜の出来事でセイもレイジも気合十分だ。

 一方のニルスも静かに集中している。

 ニルスにとってはこのバトルは決勝で勝つ以上の意味がある。

 互いに譲れない思いを持ちながらバトルが開始される。

 バトルフィールドはキャッスル。

 地上ステージだが、一般的な物やガンダムの作中を再現したステージではなく、巨大な城がそびえ立つフィールドだ。

 

「アイツはどこに!」

「あそこだ! 天守閣の上!」

 

 バトルフィールドの中央の城の天守閣にニルスの戦国アストレイは待ち構えていた。

 城が西洋ではなく日本の城をイメージした作りとなっている為、待ち構える戦国アストレイが絵になる。

 だが、そんな事はお構いなしにスタービルドストライクは天守閣へと向かう。

 天守閣でスタービルドストライクと戦国アストレイが向かい合う。

 

「まずはこいつで!」

 

 スタービルドストライクはスタービームライフルで様子見を行う。

 しかし、戦国アストレイは肩の装甲を稼動させて、サムライソードでビームを切り裂く。

 

「やっぱ……ビームは効かないか……ならコイツはどうだ!」

 

 スタービルドストライクはバックパックのスタービームキャノンを前方に向けるとスタービームライフルと同時に攻撃する。

 戦国アストレイはサムライソードで切り裂くのではなく、飛び上がって回避する。

 

「やっぱり、切り裂けるビームにも限界があるようだな!」

 

 戦国アストレイのサムライソードはビームを切り裂くが、両手に2本しか持っていない。

 スタービルドストライクは同時に三つのビームを撃っている為、確実に防げるビームは二つしかない。

 その気になれば、三つとも防げるが、防ぎ損ねた時のリスクを考えると無理に防ぐ必要もない。

 

「その程度の事で!」

 

 戦国アストレイは降下しながら、スタービルドストライクに向かう。

 それをスタービルドストライクはスタービームライフルとスタービームキャノンで迎撃する。

 戦国アストレイは二つのビームをサムライソードで防いで残り一人を回避する。

 最後の一つは足にギリギリ掠るが気にする程ではなかった。

 降下しながらサムライソードを突き出して、攻撃し、着地してすぐにサムライソードで責め立てる。

 スタービルドストライクは至近距離からスタービームライフルを放つが、戦国アストレイは紙一重でかわす。

 

「ちっ! ならよ!」

 

 ビームをかわされてすぐに左手でビームサーベルを抜かずに柄の部分だけ向けてビーム刃を出して攻撃するが、戦国アストレイは背中の盾である鬼の盾でビームサーベルを防ぐ。

 そして、サムライソードを振り落す。

 スタービルドストライクはシールドで受け止める。

 シールドで受け止めた瞬間に金属音がなった。

 

(金属パーツを仕込んでいるのか……)

 

 ニルスは金属音からそう判断して内心舌打ちをする。

 ニルスがスタービルドストライクの情報から対策を考えていたようにセイも戦国アストレイの情報から対策を考えていた。

 戦国アストレイはビーム兵器を持たない為、スタービルドストライクのアブソーブシステムは意味を成さない。

 ビーム兵器を持っているのなら存在だけでも牽制に使えるが、ビーム兵器を持っていなければ牽制にすら使えない。

 その為、セイはアブソーブシールドを軽く改造して、粒子の吸収口を潰して金属板を仕込んでおいた。

 これにより多少の重量は上がるが、同時にシールドの強度も上げられる。

 アブソーブシステムが使えなくなるが、ビーム兵器を相手が持っていないなら使えなくても問題は無かった。

 セイは知らないが、ニルスにとっては非常に面倒な事でもあった。

 戦国アストレイの粒子発勁は粒子の反応しない金属パーツが間にあると効果が一気に落ちるのはマシロとのバトルで実証済みだ。

 意図せずにセイは戦国アストレイの粒子発勁の対策もしていた事になる。

 ニルスにとっての幸いはまだ、その事をセイが知らないと言う事だろう。

 戦国アストレイは一度、距離を取ってサムライソードを構える。

 事前にシールドに金属板が仕込まれている事を知れたのもニルスにとっては幸運だ。

 

「流石に接近戦は厳しいな」

「ビームを撃ってもあの刀で防がれる……」

 

 ビームを連射して手数を増やせばサムライソードで防げないが、当てる事は難しい。

 近接戦闘では接近戦に特化している分、戦国アストレイに分がある。

 このままではジリジリを置きこまれる。

 

「向こうには一回戦で使ったあの技もある」

「ムカつく奴だけど実力は本物だって事かよ」

「レイジ……アレを使おう」

「良いのか? 出来るだけ温存したかったんだろ?」

 

 この状況を一気に打開する方法が一つだけある。

 だが、それはセイが決勝トーナメントの為に用意した切り札だ。

 ここで使ってしまえば、その存在が露見してしまう。

 

「ここで勝てなければ一緒だよ。このバトルに勝てばユウキ先輩と戦える。その先にはマシロさんも居る。勝つんだろ。僕達は」

 

 このバトルに勝てば、セイとレイジの目標の一人であるメイジンカワグチこと、ユウキ・タツヤと戦える。

 その為、このバトルは何としても勝ちたかった。

 勝たねば次に戦える機会はいつになるのか分からない。

 もう少しで手が届きそうなところまでタツヤやマシロが来ている。

 ここで伸ばさない理由はない。

 

「……分かった。行くぜ!」

 

 スタービルドストライクはシールドとライフルを捨てるとRGシステムを起動するとフレームが青白く発光を始める。

 

「性能強化の能力……この状況で?」

 

 対峙した状態でRGシステムを使っても大したことは出来ない。

 ニルスから見れば対応しやすいがこの状況で使って来たと言う事は自棄を起こしたか、何か理由があるかのどちらかだ。

 その為、ニルスはサムライソードを構えながらも注意を怠らない。

 RGシステムを使ったスタービルドストライクだったが、フレームの光が小さくなって行く。

 それと同時に右手の光が増していく。

 

「これは……一体?」

「RGシステムを右手の一点に集中する事でその威力を一気に高める。これが僕達のガンプラの必殺技!」

「名付けてビルドナックルだ!」

 

 セイはマシロとのバトルの中で足りない物を見つけた。

 それは必殺技だ。

 ディスチャージシステムも圧倒的な能力を発揮するが、必要な粒子量が膨大である為、いつでも使えると言う訳ではない。

 RGシステムは発動が容易だが、その分、必殺の一撃を繰り出す程の力はない。

 バトルの流れを変えたい時や一気に攻勢に出る時にいつでも使え、一撃で状況を覆す程の力が必要となって来る。

 そして、マシロとのバトルで使ったシャイニングガンダムのシャイニングフィンガーからヒントを得たで生み出したのがレイジ命名のビルドナックルだ。

 RGシステムは元々、部分的に使う事も出来る為、全体に使う分を右手の一点に集める事でRGシステムの発動の容易さを維持したまま、一点集中で必殺の一撃にまで攻撃力を圧縮下のが

 

ビルドナックルだ。

 修理の際に内部フレームを強化している為、ビルドナックルの負荷にも十分に耐えきれる。

 

「ビルドナックル……」

 

 RGシステムを普通に使うならともかく、一点に集中したとなると、その一撃の威力は計り知れない。

 ニルスも流石に今まで以上の警戒の色を濃くする。

 サムライソードを仕舞うと、戦国アストレイは粒子発勁の構えをする。

 データに無い未知数の必殺技に対して、ニルスも自分の持てる最強の一撃で迎え撃つつもりだ。

 それだけの自信を戦国アストレイの粒子発勁には持っている。

 粒子発勁の一撃はマシロにすら通用する。

 スタービルドストライクと戦国アストレイは互いに睨みあって動かない。

 そして、遂に2機は距離を詰める。

 

「粒子発勁!」

「ビルドナックル!」

 

 スタービルドストライクのビルドナックルと戦国アストレイの粒子発勁が正面から激突する。

 

(この程度の攻撃など……僕の戦国アストレイなら!)

 

 双方の必殺技がぶつかり合い、戦国アストレイの右腕が吹き飛び、スタービルドストライクの右腕の装甲が吹き飛ぶ。

 

「左だ!」

 

 セイが叫び、ニルスはとっさにスタービルドストライクの左腕の方を見た。

 そこには右腕の時よりも光は小さいが確かにビルドナックルと同様に光っていた。

 

「左の!」

 

 ビルドナックルと粒子発勁がぶつかった時にセイは流し込まれた粒子を左手に移動させていた。

 ビルドナックル自体、RGシステムで使っている粒子を移動させている為、自分の中の粒子を移動させる事は可能だ。

 そのお陰でスタービルドストライクは右腕の装甲だけが吹き飛ぶ程度で済んでいた。

 

「俺達はこの手で勝利を掴んで見せる!」

 

 ニルスがセイの声に反応してスタービルドストライクの左腕を見ていたが、レイジは左腕を見る事無く、セイの声と同時に左で殴ろうとしていた。

 左のビルドナックルが戦国アストレイの胴体に撃ち込まれる。 

 右の時と比べて明らかに威力が落ちている為、直撃しても何とか踏ん張れている。

 

「くっ! ならば、こちらも左の粒子発勁で!」

 

 左のビルドナックルに耐えながらも、戦国アストレイが粒子発勁を左腕でスタービルドストライクに撃ち込もうとする。

 だが序盤でスタービームキャノンが掠った片足がビルドナックルに吹き飛ばされないように踏ん張った負荷に耐え切れずに損傷が広がっていた。

 片足の損傷が広がった事で戦国アストレイは粒子発勁を撃ち込む前に踏ん張りが利かなくなった。

 

「行け! レイジ!」

「おうよ!」

 

 スタービルドストライクは左のビルドナックルを振り抜いて戦国アストレイは天守閣の上を転がりながら吹き飛ばされた。

 天守閣の端まで吹き飛ばされた戦国アストレイはすでに戦闘不能な損傷を受けている。

 

「あり得ない……僕の戦国アストレイが……」

 

 ニルスは自分の戦国アストレイが負けた事を受け入れる事が出来ずにいたが、バトルシステムは勝敗を告げる

 

「やったな! セイ!」

「うん!」

 

 一方のセイとレイジは一回戦のマオの時とは違い明確に勝利した為、笑顔でハイタッチをかわしていた。

 そんな二人にニルスは顰め面で近づいて来た。

 少し揉めたと言う事もあり、セイとレイジも表情が強張る。

 

「次は僕と戦国アストレイが勝ちます!」

 

 ニルスは壊れた戦国アストレイを突き出して宣言する。

 それを聞いた二人はキョトンとしている。

 自分達と思っていた事とは違ったからだ。

 

「何か?」

「いや……てっきり、昨日みたいに粒子の秘密云々とか言い出すと思ってたから」

 

 レイジはセイに目線を送るとセイも頷く。

 昨日、二人に勝利を譲るから粒子に関する秘密を話すようにと言った事から、二人はプラフスキー粒子に関する事かと思っていた。

 それを聞いたニルスも、キョトンとした。

 ニルスも負けたからと言って、諦める事は無いが、二人を前にして出た言葉がそれだった。

 

「何だよ。バトルに夢中で忘れてたのかよ」

 

 そう言われてニルスはハッとした。

 確かにバトル中はいかにして、二人に勝つかを考えていた。

 だが、バトルに勝って粒子の事を聞くなど頭の中から完全に抜けていた。

 

「君もガンプラが好きなんだよね」

「僕がガンプラを……」

 

 ニルスは壊れた戦国アストレイを見つめる。

 セイに言われてニルスも気づいた事がある。

 バトルに負けた時に真っ先に考えた事は粒子の事を聞き出す方法よりも、戦国アストレイの雪辱を晴らすことだ。

 元々、ニルスがガンプラバトルを始めたきっかけは粒子の秘密を知る重要人物であるユキネの息子であるマシロに接触する為だ。

 最も確実にマシロに接触するには世界大会に出る事は近道だと判断して世界大会に出る為のバトルや制作技術を磨いた。

 今まではガンプラは粒子の秘密に至る為の手段に過ぎないと思っていたが、バトルをやっているうちに自分でも気がつかずにガンプラにのめり込んでいたようだ。

 

「昨日は感情的になってごめん。少しニルス君の事を誤解していたみたい」

「いえ……」

 

 セイはニルスの物言いから珍しく激怒した。

 だが、ニルスもまた自分達と同じだと知り認識を改めた。

 

「僕達に出来る事があったら言ってね。出来る事なら協力するから」

「けど、次に勝つのも俺達だけどな」

 

 バトルにこそ負けたが、セイとレイジと和解する事は出来た。

 ニルスはそんな二人を見送った。

 ここで二人が知るかも知れない粒子の事を聞くのは野暮だと感じていた。

 

「まだ精進が必要だな」

「そうですわね。ニルスの事は今後、ヤジマ商事が全面的にバックバックアップしますわ。私も彼女として協力を押し切ませんわ」

「お願いします。キャロライン」

 

 いつの間にか、ニルスのスポンサーでもあるヤジマ商事の社長の娘であるキャロラインが立っていた。

 ニルスは自分のガンプラに対する本当の気持ちを知った事で、キャロラインの最後の重大発言には気が付いてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイ、レイジ組のバトルをVIPルームで見ていたPPSE社会長のマシタは秘書であるベイカーに泣きついていた。

 とある理由から世界大会でセイ、レイジ組を排除しようと試みたが、失敗に終わりついには準決勝にまで勝ち進んでいる。

 

「また勝っちゃったじゃないか!」

「ご安心を次こそは」

「それ何回も聞いた!」

 

 二人を排除するように指示を出すも、すでに何回も失敗している。

 その度にベイカーは次は大丈夫だと行って来た。

 

「これなら決勝じゃなくて初戦で当てた方がマシだったよ! なんかいつにも増して怖いし!」

 

 決勝トーナメントの組み合わせはベイカーが意図的に組み合わせた物だ。

 最後の最後でマシロと当たるように仕組んだもの当然、ベイカーだ。

 回りくどいやり方だが、最後の最後で最強のファイターをぶつけると言う目論みらしい。

 

「それに次のメイジンだって思った程じゃないし……」

 

 セイとレイジの次の相手はメイジンカワグチとなっている。

 PPSEが送り出して来たとはいえ、メイジンは一回戦と二回戦と決して楽に勝ち上がって来てはいない。

 マシタからすれば思った程強くないように見える。

 尤も、メイジンの実力が悪いのではなく、対戦相手のジュリアンとフェリーニも実力者であるから苦戦しても仕方が無い。

 

「分かりました。念には念を入れて彼を使いましょう」

「本当に信用出来るの? だって彼は……」

「心配ないでしょう。彼はチーム内での立場は危ういみたいですし、そう言う手合いはこちらの信用を得ようと必死になる物です」

 

 普通に戦っても十分に勝機があるようにベイカーは思うが、マシタが納得しないのであれば、更に手を打つだけだ。

 ちょうど、とある人物からの接触を受けていた。

 マシタの言うように全面的に信用するのは危険かも知れないが、相手にもそれなりの事情があってわざわざこちらに接触して来た。

 信用を得たいと思っている事は確かである為、今回だけは信用しても大丈夫だろう。

 

「ほんとにほんと?」

「ええ。余計な邪魔が入らなければ確実に……メイジンにはその為の人柱になって貰いましょう」

 

 今までは間接的に妨害工作を行って来たが、遂にマシタも本格的に動き出す。

 

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