ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle53 「暴走」

 

 準決勝の第一試合が終わり、日が沈み会場も静まり返る頃、ユキネは会場のメインスタジアムの下にいた。

 そこには巨大なアリスタが隠されていた。

 大型アリスタからはガンプラバトルに必要不可欠であるプラフスキー粒子が半永久的に生成されている。

 この技術はユキネがPPSE社に提供したものだ。

 本来はPPSE社の生命線でもある為、厳重な警備やセキュリティが施されているが、ユキネにとっては意味は無いに等しい。

 

「気づかない方が幸せだったのにね」

 

 ユキネは一人呟きながらも大型アリスタに繋がられている装置を操作する。

 ユキネは始めから知っていた。

 マシロが何を望んでいたと言う事をだ。

 だが、同時にそれを得ることは出来ないとも知っていた。

 だからこそ、知りながらもマシロに教える事はしなかった。

 教えてしまえばマシロは終わってしまうかも知れないからだ。

 

「それでも、まだ可能性は残されている。あの子にファイターとしての心が残されているなら」

 

 そうしているうちにユキネの作業が終了する。

 

「悪く思わないでね。先に約束を破ったのはそっちなんだから。これでガンプラバトルが終わろうともあの子が復帰しなければどうなっても構わないもの」

 

 誰に対してと言う訳ではないが、ユキネはそう言う。

 ユキネのやろうとしている事は場合によってはガンプラバトル自体が終わりを迎えかねない事だ。

 だが、元々は愛する物の為でしかない為、キヨタカが死に、マシロがバトルから離れてしまえば、ガンプラバトルが終わろうと関係なかった。

 ユキネは全て知っていた。

 マシタが自分との約束を破った事を。

 これはその報復でもある。

 

「さて……ガンプラバトルの危機にしろりんはどう出るのかしらね」

 

 用事を済ませたユキネは自分がここに来た痕跡を完全に消して、その場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準決勝第二試合の当日となり、セイ、レイジ組は会場でメイジンカワグチこと、ユウキ・タツヤと対峙している。

 レイジはタツヤに負けた借りを返すことがバトルを始めた理由でもある為、やる気は十分だ。

 一方のセイは少し眠そうにしていた。

 それも、昨日レイジが突然、アイラを連れて来て一晩泊めると言いだした事に始まる。

 時間が時間だけに行く当てがないと言うアイラを追い返す訳にもいかずに了承するしかなかった。

 だが、セイは異性よりもガンダムに興味があると言っても年頃の中学生だ。

 異性に全く興味がないと言う訳でもない。

 その為、異性と同じ部屋で一晩を過ごすと言う事で緊張をしない訳が無い。

 連れて来たレイジは全く気にすること無く、さっさと寝て、アイラもアイラでマシロと世界を回った時に同じ部屋で寝泊まりとしていた為、気にすることは無かった。

 結局セイだけが、変に意識して中々寝付けなかった。

 尤も、アイラはチーム自体が優勝しか狙っていない事もあって聞かされていなかった事で世界大会では決勝戦の前に前座として3位決定戦を行う為、準決勝まで残れば大会終了までホテルの部屋は使えるのだった。

 セイもセイでその事を突然の事態に頭の中から抜け落ちていた。

 

「ようやくこの日が来たな。あの時の借りを返す時がな」

「うん……ユウキ会長は強敵だけど、今の僕とレイジなら勝てるよ」

 

 ここまで来るのは決して平坦な道のりではなかった。

 だからこそ、それを乗り越えてここまで来た。

 

「当然だ。勝つぞ。セイ!」

「ああ!」

 

 二人にとってはタツヤも目指すべき相手の一人だ。

 その一人とようやく、世界大会と言う大舞台で戦う事が出来る。

 後は全力で戦い勝つだけだ。

 バトルシステムにGPベースをセットしてガンプラを置く。

 同様にメイジンもGPベースをセットして、ガンプラを置いた。

 

「おい、セイ……ユウキの奴のガンプラ」

「ケンプファー? エクシアじゃない」

 

 メイジンがバトルシステムに置いたガンプラはアメイジングエクシアではなく、ケンプファーアメイジングだった。

 セイとレイジは知らないが、アメイジングエクシアはフラナ機関によりガンダムエクシアダークマターとして改造された。

 その後、マシロのガンダム∀GE-2とバトルして破壊されていた。

 その時の損傷は酷く、一日で修理出来るレベルではなかった。

 予備パーツを使ってもある程度は形にはなったが、準決勝に間に合う事は無かった。

 現在も、アランたちが急ピッチで修理をしているが、準決勝はアメイジングエクシアではなく、ケンプファーアメイジングを使わざる負えなかった。

 

「どういうつもりだ?」

「あの装備は……ビーム兵器を避けて実弾系の装備で固めてると思う」

 

 ケンプファーアメイジングは今までは、ビーム兵器を主体とした装備を使っていた。

 だが、ビーム兵器は二人のスタービルドストライクのアブソーブシールドの餌食になり兼ねない。

 それを避ける為に実弾系の武器を使うと言う事は理に適っている。

 実際、ケンプファーアメイジングは手持ちの火器に、以前、タツヤが使っていたザクアメイジングのロングライフルを持っている。

 4基のアメイジングウェポンバインダーには外付けのミサイルポッドも見える。

 恐らくはウェポンバインダーの中身も実弾系の武器を積んで来ていると推測できた。

 

「多分、アブソーブシステムを警戒しての事だよ。気を付けて、エクシアじゃないけど、ユウキ会長は本気で勝ちに来てる」

 

 メイジン側の事情を知らない二人だが、アブソーブシールドを警戒して、実弾系の武器を中心にしているところから、向こうは手を抜いている訳ではないと言う事が分かる。

 今回はニルス戦の時のように金属板を仕込んでいない為、アブソーブシールドはただの盾に過ぎない。

 

「分かってる。あのユウキが舐めた事する訳がないからな」

「なら良いよ。行くよ。レイジ!」

「おうよ!」

 

 そして、決勝を賭けた一戦が始まる。

 今回のバトルフィールドは火山地帯だ。

 火山から吹き出ているマグマは触れたガンプラにダメージを与える為、マグマにも注意が必要だ。

 バトル開始早々、ケンプファーアメイジングはウェポンコンテナに外付けして来たミサイルを一斉掃射する。

 

「レイジ!」

「いきなりやってくれるな!」

 

 スタービルドストライクはバルカンとスタービームライフルで迎撃する。

 ミサイルを撃ち尽くしたケンプファーアメイジングは外付けしたミサイルポッドを全てパージして身軽になると、突撃する。

 

「嬉しいよ。君たちとこうして再び相見える日が来る事を!」

 

 ケンプファーアメイジングはロングライフルを連射する。

 それをかわしながら、スタービルドストライクはスタービームライフルで迎え撃つ。

 

「君たちの強さを乗り越えさせて貰う!」

「ユウキの奴!」

「突貫!」

 

 ロングライフルの残弾を一気に打ち尽くしたケンプファーアメイジングはビームサーベルを抜いて突撃する。

 スタービームライフルで迎撃するも、ケンプファーアメイジングは速度を緩めずに最低限の動きで回避する。

 そして、ビームサーベルを抜いて迎え撃った。

 2機はビームサーベルで鍔迫り合いとなる。

 

「行き成り飛ばして来るじゃねぇかよ!」

「様子見をしている余裕はないのでね!」

 

 ケンプファーアメイジングは鍔迫り合いをしながら、空いている方の手をウェポンバインダーの中に入れる。

 そして、中からチェーンマインを取り出すと振るう。

 とっさにスタービルドストライクはアブソーブシールドで受け止める。

 

「これはチェーンマイン!」

「何だ。この武器は!」

 

 アブソーブシールドに付いたチェーンマインが爆発し、アブソーブシールドを吹き飛ばす。

 幸い、破壊されたのはシールドだけで済んだが、これで身を守る盾が無くなった。

 

「何なんだよ!」

「次が来るよ!」

 

 ケンプファーアメイジングはウェポンバインダーからシュツルムファウストを両手に3基つづ出すと一気に使う。

 スタービルドストライクはかわし切れずに両腕でガードする。

 損傷する事は無いが、その間にケンプファーアメイジングはザクマシンガンとショットガンを出す。

 

「君たちの実力はこの程度では無いはずだ!」

 

 ザクマシンガンで弾幕を張って接近すると、至近距離からショットガンを何発も撃ち込む。

 

「くそ!」

「落ち着いて! 威力は大したことはないよ!」

 

 ケンプファーアメイジングはウェポンバインダーに大量の武器を仕込んで怒涛の攻撃を見せるが、スタービルドストライクへの損傷は殆どない。

 これはギリギリのところでケンプファーアメイジングを使う事になった為、武器は殆どが市販品の物を素組して少し手を加えた程度でしかない。

 その為、武器の威力は元々、ケンプファーアメイジングが装備していたビームサーベルとアメイジングナイフ以外は簡単にはスタービルドストライクの装甲に傷をつける事が出来ない。

 

「みたいだな!」

 

 怒涛の攻撃を耐え切ったスタービルドストライクはスタービームライフルで反撃する。

 ケンプファーアメイジングはショットガンを捨てて後退する。

 

「全く。ここまで効果が薄いとPS装甲で出来ていると思いたくもなる」

 

 愚痴りながらも、ザクマシンガンで弾幕を張る事を忘れない。

 弾幕を張りながらも、ウェポンバインダーから次の武器を出す。

 次に取りだしたのはクラッカーだ。

 ケンプファーアメイジングはクラッカーを投げつける。

 降り注ぐ榴弾でスタービルドストライクのスタービームライフルが破損する。

 

「ちぃ!」

 

 ケンプファーアメイジングはビームサーベルで切りかかるが、スタービルドストライクはバックパックと本体が分離して回避する。

 

「そこだ!」

「イオリ君か!」

 

 分離したユニバースブースターはセイが操作している。

 ユニバースブースターは上空からスタービームキャノンでケンプファーアメイジングを攻撃する。

 セイのファイターとしての実力はさほど高くないが、メイジンからすればこの状況では非常に厄介だった。

 ある程度の実力のあるファイターなら大抵の動きは事前に予測できる。

 だが、セイの場合は実力が低いが故に、攻撃を読んでいても、セイ自身が狙ったところにビームが飛んでこない事もある為、読みにくかった。

 これが一対一でのバトルなら問題はないが、このバトルはセイ一人ではない。

 セイの方に気を取られ過ぎていると、レイジが操作するスタービルドストライクへの注意が散漫になる。

 

「お前の相手は俺もなんだよ!」

 

 スタービルドストライクはビームサーベルを振るうとバックパックに付いているウェポンバインダーの先端に掠る。

 すぐにウェポンバインダーをパージするが、パージしたウェポンバインダーの中の武器はまだ一つも使っていない為、手痛い損失だ。

 

「流石だ。それでこそだ!」

 

 ウェポンバインダーから今度はビームナギナタとギャン用のビームサーベルを取り出す。

 それぞれ形状の違うビーム刃を形成すると、スタービルドストライクに切りかかる。

 スタービルドストライクもユニバースブースターをバックパックに戻してビームサーベルで迎え撃つ。

 ケンプファーアメイジングの武器は形状の違うビーム刃を出している為、動きが変則的で攻撃が読みづらくスタービルドストライクが若干、押され気味だった。

 

「野郎!」

 

 ビームナギナタをビームサーベルで受け止める。

 そして、スタービルドストライクはRGシステムを起動させた。

 それにより機体性能が底上げされて、ケンプファーアメイジングを弾き飛ばす。

 

「厄介なシステムだよ」

 

 ケンプファーアメイジングは両手の武器を手放しながら、マグマを踏まないように後退しながら、ウェポンバインダーからジャイアントバズⅡを取り出して使う。

 スタービルドストライクも足元に気を付けながらもかわして距離を取る。

 

「一気に決めるぞ!」

「来るか」

 

 RGシステムを起動させていたスタービルドストライクの青白い光が右手に集まって行く。

 完全に右手に集まると輝きを増した。

 スタービルドストライクはビルドナックルを使う為に右手を構える。

 ケンプファーアメイジングはジャイアントバズを捨てるとビームサーベルを貫く。

 2機のガンプラは正面から対峙し、睨みあう。

 そして、同時に前に出る。

 

「ビルドナックル!」

 

 スタービルドストライクはビルドナックルを繰り出して、2機のガンプラが交差した。

 

「確かにその技は一撃必殺で強力だよ。でも……当たらなければどうと言う事はない」

「やってくれるぜ」

 

 スタービルドストライクのビルドナックルに対してケンプファーアメイジングはカウンターでビームサーベルをスタービルドストライクの右腕に突き刺していた。

 いかに強力な必殺技だとうとも、直接当てなければ意味がない。

 ビルドナックルは拳で直接殴る為、どうしても間合いはビームサーベルよりも劣ってしまう。

 そこを付け込まれた。

 

「が……掠めただけ……」

 

 ビルドナックルを完全に打ち破ったものの、ケンプファーアメイジングの右腕にビルドナックルは掠っていた。

 右腕が使えない程ではないが、ケンプファーアメイジングの右腕の装甲が抉り取られていた。

 

「レイジ!」

「ああ! まだ負けた訳じゃねぇ!」

 

 必殺のビルドナックルが撃ち破られたが、バトル自体に負けた訳ではない。

 すぐに頭を切り替えて、左手でビームサーベルを貫く。

 

「やはり向かって来るか」

 

 ケンプファーアメイジングはウェポンコンテナからハンドグレネードを出して投げつけるが、スタービルドストライクはバルカンで迎撃する。

 アメイジングナイフを抜いて、ケンプファーアメイジングは応戦する。

 アメイジングナイフはククリの形状をしている為、スタービルドストライクのビームサーベルよりも間合いが短い。

 その為、正面から切り合うと間合いの短さで不利になる。

 

「レイジ!」

「おうよ!」

 

 切り合うスタービルドストライクは再びRGシステムを起動させる。

 外に粒子を放出するディスチャージシステムとは違い、内部フレームに粒子を浸透させるRGシステムは使用後に再び使うまでにかかる時間は殆どない。

 ただでさえ、間合いの優位を持つスタービルドストライクがRGシステムを使う事で機体性能を向上させれば更に切り合いはスタービルドストライクが有利となって来る。

 ケンプファーアメイジングも致命傷こそは避けているが、損傷個所が少しづつ増えていく。

 

「行けるよ!」

「本当に君たちは強くなったよ。だけど!」

 

 ケンプファーアメイジングは右腕でビームサーベルを受け止める。

 右腕にはビームサーベルを防ぐ事は出来ないが、元々並のガンプラよりも性能が良い分、簡単に腕を切り裂かれると言う事は無い。

 右腕で時間を稼いでいる間にケンプファーアメイジングはアメイジングナイフをスタービルドストライクの左肩の関節部に突き刺す。

 

「こんの!」

 

 スタービルドストライクは至近距離からスタービームキャノンを前方に向けて放つ。

 ビームがケンプファーアメイジングの腰を掠りサイドアーマーを破壊する。

 ケンプファーアメイジングは右腕を切り裂かれながらも、スラスターを全開にして体当たりを行う。

 

「勝つのは僕だ!」

「俺達が勝つ!」

 

 体当たりをしたまま、スタービルドストライクを地面に引きずるも、スタービルドストライクの膝蹴りでケンプファーアメイジングが蹴り飛ばされる。

 転がりながらも体勢を立て直すと、ウェポンバインダーからロングライフルを出す。

 

「まだあんな大物を残してやがったか!」

 

 ロングライフルを構えるケンプファーアメイジングに対して、スタービルドストライクもスタービームキャノンで対応する。

 ロングライフルの弾丸がスタービルドストライクの頭部に直撃する。

 対するスタービームキャノンは、頭部に直撃してよろけた為、ビームは明後日の方向に飛んでいく。

 だが、そのビームはステージの岩盤を撃ち抜いた。

 ステージのギミックにより、岩盤によって塞き止められていたマグマが噴き出るとケンプファーアメイジングを飲み込む。

 

「何だと!」

 

 マグマの中からケンプファーアメイジングは転がり出て来るが、マグマに飲み込まれていただけあってところどころがボロボロとなっていた。

 ウェポンバインダーも残っていた3つの内2つはマグマに飲み込まれた時に外れている為、残るウェポンバインダー

 

「チャンスだ! レイジ!」

「ユウキには悪いがな!」

 

 完全に偶然の重なりだが、これは千載一遇のチャンスだった。

 スタービルドストライクはビームサーベルを抜いて仕掛ける。

 ケンプファーアメイジングは何とか使えそうだったハンドガンを出して迎撃するが、ハンドガンの威力ではスタービルドストライクを止める事は出来ない。

 

「くっ!」

 

 ボロボロのケンプファーアメイジングではスタービルドストライクとの接近戦では分が悪い。

 何とか状況を打開しようと考えているとそれは起きた。

 スタジアム全体の揺れと同時にバトルシステムから通常のバトルではあり得ない量のプラフスキー粒子が溢れ出て来る。

 

「これは……」

「何が起きてんだ!」

 

 バトル中に特定の条件が満たされるとバトルシステムが更新されて、ステージが変化すると言う事は多々ある。

 だが、これは明らかに異常事態だ。

 

「アレは……ア・バオア・クーか?」

 

 今までは地上ステージだったが、バトルステージが宇宙に変更となり、バトルシステム中央にジオン軍の宇宙要塞ア・バオア・クーが現れる。

 

「レイジ! セイ! 無事か?」

「フェリーニさん」

「何とかな」

 

 明らかに異常事態と言う事もあって、バトルを観戦していたフェリーニがニルスとマオと共にセイとレイジの元に駆けつける。

 外まで溢れだした粒子が結晶化し、スタジアムを侵食し始めている。

 観客達もその事態が大会の演出でも無いと気付き軽くパニックを起こしている。

 

「ユウキ会長!」

「とにかく今はここから退避しよう」

 

 状況は分からないが、ここに居る事が危険だと言う事は確かだった。

 バトルシステムからGPベースとガンプラを回収すると、脱出を試みる。

 だが、レイジの足にいつの間にか、現れたマシタがしがみ付いた。

 

「レイジ王子~ 助けて下さい! 宝物庫からアリスタを盗んだ事は謝りますから! ごめんなさい!」

「お前、アリアンの人間か!」

 

 マシタがセイ、レイジ組を大会から排除しようとした理由はマシタがレイジと同じ異世界アリアンから来た事が理由だ。

 マシタはこちらの世界に来る前に、アリアンの王宮の宝物庫からアリスタを盗んでいた。

 そのアリスタによってこちらの世界に飛ばされたところを、現在の秘書であるベイカーと出会い、アリスタを何かに利用出来ないかと模索しているところにユキネが現れてアリスタを粒子化した物がプラスチックに反応する事などを教えられた。

 そうして、ユキネのバックアップを受けて設立したのがPPSE社だった。

 元々、アリスタはアリアンから盗んで来た物である為、大会でレイジを見つけた時に、マシタはアリアンからの追手だと思って排除にかかった。

 尤も、レイジはアリアンからの追手ではないどころか、マシタがアリアンの人間だとは知らなかった。

 マシタが自分の事を覚えているかも知れないとも思っていたが、一国の王子であるレイジがただの盗人であるマシタの事を知る訳もない。

 更に言えば、追手によってガンプラバトルに影響が出ないようにする為に、ユキネがアリアンで話しを付けてある為、追手が来る事は無い。

 

「地下のアリスタが暴走して止めようが無いんですよ! 王子なら何とかしてください!」

「勝手な事を……」

「また、貴方の仕業か」

 

 マシタにはメイジンを洗脳してまで勝とうとした前科がある。

 バトルの中でメイジンが劣勢となった事で、レイジが勝ち上がる事を恐れて必死にレイジが負けるように祈った。

 その感情がマシタの持っていたアリスタと地下の大型アリスタが共鳴を起こして大型アリスタが暴走を始めた。

 だが、引き金はマシタの感情だが、直接的な原因はユキネが事前に大型アリスタに細工をしかけた事だ。

 

「違うって、僕じゃない!」

「今はそんな事を話している場合ではないわ」

 

 突如、ユキネが現れて回りの視線がユキネの方を向く。

 

「お前……何でこっちにいんだよ」

「私はこっちの人間だから」

 

 ユキネはアリアンの王宮に出入りしていた事もあって、王子であるレイジとは顔見知りだった。

 尤も、レイジはユキネがこちらの世界の人間だとは知らない。

 

「貴女はもしや……」

「さっきも言ったけど、今は時間がないわ。このままではガンプラバトルが終わりを迎えかねないわ」

 

 ユキネの言葉に一同は思わず息を飲んでしまう。

 だが、この状況が悪化すればそれもあり得るだろう。

 世界大会でここまでの事件となれば、世間はガンプラバトルを危険視するかも知れない。

 そうなれば、公式戦は自粛するしかない。

 今なら、クロガミグループの情報操作能力を駆使すれば、何とか誤魔化せるがそれにも限界がある。

 

「どうすれば良いのですか?」

 

 突然、現れたユキネの事をレイジとマシタ以外は知らないが、ニルスは何となく察したらしい。

 ユキネならばこの状況でもどうにか出来る考えがあるかも知れない。

 ユキネが自分の知識を公表しないと言う事はニルスも知っているが、状況が状況だけに今はダメ元で聞くしかない。

 

「簡単な事よ。大型アリスタを破壊すればこの状況を止める事が出来る」

 

 今の状況を作り出しているのが大型アリスタならば、その大型アリスタを破壊する事が最も簡単な方法だ。

 

「直接、破壊しに行くのは危険だけども、貴方たちには直接行かなくても大型アリスタのところまで行く方法がある」

 

 ユキネの言葉で誰もが思いついたものはガンプラだ。

 プラフスキー粒子があれば、ガンプラを動かして大型アリスタに向かう事が出来る。

 そして、ガンプラを使って大型アリスタを破壊すればこの状況を止める事が出来る。

 尤も、わざわざガンプラを使って行かずとも、大型アリスタを破壊する事が出来るが、ガンプラで破壊しに行って貰わなければユキネが困る為、あだかもガンプラで行くしか方法が無いように言う。

 

「なら、私の力も必要よね」

「アイラ……けど、お前のガンプラは」

 

 観客の避難は始まっているが、アイラはそこから抜け出してレイジのところまで来た。

 話しの最初の方は聞いていなかったが、ガンプラを使ってこの状況を止めると言うのは聞いていた。

 だが、アイラのキュベレイパピヨンはマシロとのバトルで破壊されている。

 その上、実質的にチームを離れている為、アイラはガンプラを持っていない。

 

「大丈夫よ。マシロから貰った奴があるから」

 

 アイラはマシロから借りていたサザビー改を見せる。

 フィンランド予選もサザビー改を使っていた為、まだマシロに返してはいなかった。

 それから中々返す機会を逃して今に至る。

 

「戦力は多いに越したことはないから、後何人かに声をかけて来たわ。数が揃う前に準備を」

 

 ユキネは始めからこの状況を作り出すことが目的だった為、すでに戦力の確保は行っている。

 バトルシステムには今はメイジンとセイ、レイジ組の2組みしかバトルが出来ないようになっているが、バトルシステムはかなりの大型である為、まだ何人かのファイター達がバトルを行えるように出来る。

 すぐに準備に取り掛かる。

 準備が出来た頃には、ユキネが声をかけたアオイ、エリカ、コウスケ、ルワン、ジュリアンと言った世界大会のファイナリスト達が集まっていた。

 すでに観客達がスタジアムから避難している為、観客の安全は気にする必要はない。

 

「無茶だ! あのステージには世界大会の余興で使おうとしていたから派手にする為にこっちの方で無人機を10万程用意してるんだよ! 敵いっこない!」

 

 ガンプラを使って大型アリスタを破壊しに行く準備が整ったところで、マシタがそう言う。

 現在のステージはマシタが世界大会の余興としてどこかで使おうとしていたステージだ。

 バトルを盛り上げる為に、大量の無人機を用意していた。

 その数はおよそ10万機だ。

 その発言でマシタを非難する視線が集まって、マシタは縮こまる。

 

「だって! ベイカーちゃんが戦いは数だって言うから!」

 

 元々はベイカーが余興として盛り上げるなら大量のガンプラを使って見てはと提案していた。

 それを聞いたマシタが10万ものガンプラを用意させていた。

 尤も、ベイカーは流石にそこまでの数を用意するとは思ってもみなかった。

 

「戦力差は1万対1……状況は絶望的か……」

「でも! ガンプラバトルが駄目になるかも知れないんです。やってみる価値はあります!」

「イオリ君……確かに。なのに、僕は何も出来ないのか……」

 

 マシタが用意していたガンプラは10万、対する破壊に向かうファイターの数はセイ、レイジ組、マオ、ニルス、フェリーニ、アイラ、アオイ、エリカ、コウスケ、ジュリアン、ルワンの10組だ。

 タツヤのガンプラは手元にはケンプファーアメイジングだけだ。

 準備の間にセイがスタービルドストライクを修理したが、ケンプファーアメイジングの損傷はこの短時間で修理出来るレベルではない。

 何も出来ないもどかしさをタツヤは味わっていた。

 

「タツヤ!」

 

 だが、そこにアランがアタッシュケースを抱えて入って来る。

 そのケースの中にはバトル中も修理を続けていたアメイジングエクシアが入っていた。

 本体の修理を最優先にしていた為、武器はアメイジングGNソードとアメイジングGNシールドしか用意できず、バックパックのトランザムブースターもない。

 しかし、アメイジングエクシア自体は万全な状態に修理されている。

 

「助かった。これで僕も戦える(マシロ……君はどこに)」

 

 タツヤが加わったところで、作戦の成功率に大きな変化はない。

 それでも今は一人でも多くのファイターが必要だった。

 顔にこそ出さないが、この場面でマシロがいない事が気がかりだった。

 もしも、マシロがこの場に入れば戦力差が一万倍だろうと、自分一人でも勝てるくらいの事は言って見せただろう。

 マシロが居てくれたら、この状況ではこれ以上もなく心強いのだが、いないマシロをあてにもしてられない。

 タツヤがアメイジングエクシアを受け取り、それぞれのファイター達はバトルシステムを囲む。

 そして、それぞれのガンプラをバトルシステムに置く。

 

「ガンダムアメイジングエクシア!」

「ガンダムX魔王!」

「戦国アストレイ!」

「ガンダムフェニーチェリナーシタ!」

「サザビー!」

「ビギニングガンダムB30!」

「セイバーガンダム・エペイスト!」

「フルアーマーユニコーンガンダム・ノルン!」

「ガンダムF91イマジン!」

「アビゴルバイン!」

「スタービルドストライク!」

 

 11機のガンプラがバトルシステムの中に射出されて、ア・バオア・クーの方に向かう。

 

(世界最強の座を巡って戦ったファイター達がガンプラバトルの未来を守る為に協力して戦う……後は遅れて真打が登場して勝利する。状況は整えたわ。後はしろりんが来るのを待つだけね)

 

 ここまでの展開は全て、ユキネの思惑通りだ。

 大型アリスタをマシタを利用して暴走させる事でガンプラバトル自体の危機を作り出す。

 その危機を回避してガンプラバトルを守る為にファイター達が戦う事も想定内だ。

 そして、最後はここにいないマシロがこの事態を聞き付ける。

 まだ、マシロの中にファイターとしての心が残っているのであれば、この状況を知って動かない訳が無い。

 逆にマシロが動かずに戦いに負けてしまえば、ガンプラバトルは本当に終わりを迎えるだろう。

 クロガミグループも金になるからある程度は情報を操作するが、操作にかかる手間やコストがガンプラバトルで得られる利益をこれば躊躇い無く、ガンプラバトルを切り捨てるだろう。

 マシロがガンプラバトルに戻って来ないなら、ユキネにとってはガンプラバトルに守る価値はない。

 寧ろ、キヨタカやマシロが愛した物として美しい思い出の中にしまって過去の物となっても問題はない。 

 そんなユキネの思惑を知るよしもないファイター達はガンプラバトルを守る為の戦いを始める。

 

 

 

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