ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
タッグバトル大会決勝トーナメント1回戦を勝利したマシロとタツヤは別の試合を観戦したシオンと合流した。
試合その物は見ることは出来なかったが、試合の様子をシオンから聞いていた。
「次の対戦チームはチームイェーガーに決まりました。バトル内容は正直な話し良く分かりません」
「何で?」
「イェーガーの使用ガンプラがガンダムシュピーゲルとサンドージュです。バトル内容はイェーガーの劣勢だった筈ですが、いつの間にか勝っていたので、私には何が起きたのか……映像で残しておけばマシロ様の判断も仰ぐことが出来たんですが……」
シオンはマシロの執事として付き従っているだけあってガンダム関連の知識はかなり深い。
その為、相手のガンプラの種類を把握する事は出来る。
バトルに関してもある程度は分かっているが、チームイェーガーのバトルは劣勢だったのに気が付いたら勝っていたと言う印象しか持てなかった。
シオンが気づかずともバトルの様子を録画しておけば、マシロに見せれば何か分かったはずだ。
どれだけ上手く隠したところでガンプラバトルにおけるマシロの嗅覚は人間離れしており、どんな不可解なバトルも一度見ればその謎を解き明かす事が可能だと言っても過言ではないとシオンは思っている。
「映像が無いのは仕方がないさ。とにかく、油断できない相手って事は分かったよ。シオン君」
「どの道、勝つのは俺だからな」
「申し訳ありません」
相手の戦い方は正確には分からないが、相手が油断できない相手だと言う事は分かった。
それが分かっているだけでも違ってくる。
イェーガーの一回戦の相手はそれを知らずに優勢だと思って敗北している。
「そんじゃ、サクッと勝って来る」
一回戦と二回戦の間のインターバルが終わり、マシロとタツヤは二回戦の会場へ向かう。
二回戦のバトルフィールドは宇宙要塞内だ。
無重力かつ、施設内でのバトルとなる。
双方のチームの4機のガンプラは要塞内にランダムで出撃し、他のガンプラがどこにいるかは分からない状態でのバトルだ。
要塞内は通路や巨大な部屋を初めとした閉鎖空間でのバトルとなる。
相方のガンプラや敵のガンプラの位置が分からない為、仲間と合流する事を優先するか、自分の有利な場所で相手を待ち構えて罠を張るか、チームの戦略が試されるフィールドと言える。
マシロとタツヤがGPベースをセットしてガンプラを置いた。
今回、マシロは閉鎖空間での戦闘と言う事で射程の短いビームガンとガンダムアストレアF2のGNハンマーを装備されている。
一方のタツヤの高機動型ザクⅡ改も閉鎖空間用の装備として、マシロと戦う為に用意したハンドガンを腰に装備させている。
ザクマシンガンよりも威力も連射速度も劣るが、両手に2基持たせる事で二方向への攻撃を可能とする事で、高機動戦を得意とするマシロのガンプラに機動力で振り回されても対処できるようにするための装備だ。
更には銃身が短い為、取り回しが良い事もあって中距離戦から近距離戦に移行した時に武器を変えることなく対応できるようになった。
ハンドガン以外に手持ちの武器をザクバズーカからマゼラトップ砲に代えている。
これは今までの装備がマシロのガンプラと白兵戦をする事を重視した装備で、今度はマシロの射程外からの砲撃を行う為の装備だ。
マシロ程のファイターなら遠距離からの砲撃など避けることは容易いが、近接戦闘にばかり重視してマシロの得意分野で常に戦うのも癪だったからだ。
自分がマシロの腕でもそうそう回避出来ない程の精度で砲撃を行えるようになれば、マシロも得意な近接戦闘に持って行けずに煮え湯を飲ませる事が出来る。
遠距離の砲撃戦から中距離の射撃戦、近接戦闘までも高い次元で行う事が出来るガンプラが、タツヤの思い描くマシロと戦う為のガンプラだ。
双方のチームがガンプラをセットして、バトルシステムが起動しバトルが開始された。
「まずはマシロ君と合流する事が優先か。相手は搦め手を得意としている筈だ。そう言う手合いにはこのフィールドは有利だからな」
タツヤはまず、マシロと合流する事を優先して要塞内を進んでいた。
シオンからの情報では普通に見ただけでは、劣勢なのにいつの間にか勝負に勝っていたと言う。
つまりは、正攻法で攻めるのではなく、何かしらの搦め手で攻めて来るチームと言う事だ。
この宇宙要塞においては隠れる場所も罠を仕掛ける場所も多く、搦め手で来るチームにとっては有利なフィールドだった。
対する、タツヤとマシロは搦め手よりも正面切ってのバトルを得意としている。
マシロのガンプラの場所は分からないが、今は立ち止まる事は出来ない。
通路を進んでいると今度は広い円柱状の場所に出た。
前方に道はは無く、先に進むには上に向かうしかない。
「嫌な場所だ」
上に進むにしてもガンプラを隠すには十分な幅のパイプが何本も横切っており、避けて上がる事は簡単だが、敵が隠れることも出来る。
すると、パイプの影に何かがいた為、高機動型ザクⅡ改はマゼラトップ砲を向けた。
しかし、タツヤは一瞬、攻撃を躊躇してしまった。
自分が見たのは影でそれがマシロのガンプラかも知れないと考えた。
マシロの性格上、隠れると言う事はあり得ない為、すぐにマシロではないと考えを改めるも、それは致命的な隙となった。
パイプの陰に隠れていたのは、対戦相手チームのガンプラ、サンドージュだ。
サンドージュはパイプの影から飛び出て来ると高機動型ザクⅡ改に頭部の先から液体を吐き出す。
その液体は高機動型ザクⅡ改の右腕に付着した。
「これは……瞬間接着剤か!」
液体の付着した右腕の関節部が動かなくなり、マゼラトップ砲も手放す事が出来なくなった。
サンドージュが吐きだした液体は瞬間接着剤でそれにより、高機動型ザクⅡ改の右腕の関節や右手とマゼラトップ砲を接着させたのだ。
関節部は固まり、マゼラトップ砲の斜角は殆ど固定されてしまった。
サンドージュは背部に装備されている2門のビームキャノンを撃ちながら後退する。
タツヤがサンドージュと交戦する中、マシロの∀GE-1は通路をひたすら直進していた。
ようやく、広間に出るとそこにはチームイェーガーのガンダムシュピーゲルが待ち構えていた。
∀GE-1が広間に入ると入って来た通路を塞ぐように爆発が起きた。
「俺を閉じ込めたのか」
他の入口も瓦礫によって塞がれている。
明らかに人為的に破壊されており、破壊したのがシュピーゲルのファイターである事は明白だ。
「俺とサシでやろってか」
「いざ参る!」
ヒートランスを構えたシュピーゲルは∀GE-1の正面から突っ込んで来る。
機動力が高い訳ではなく、直線的な動きをマシロが見切れない訳が無い。
だが、シュピーゲルはただ、直線的に突っ込んで来た訳ではなかった。
シュピーゲルの肩の装甲から煙が出て来て、すぐに部屋の中に充満して行く。
出入り口を塞いでいる為、煙は外に漏れることは無かった。
「やべ……見えねぇ」
煙で覆われた為にマシロは∀GE-1とシュピーゲルを見ることが出来なくなった。
そして、∀GE-1はシュピーゲルのヒートランスの一撃をまともに受けて吹き飛ばされた。
マシロの人間離れした反応速度は自分と相手のガンプラが見えて初めて成立する。
今回のように視界を完全に遮られては、幾ら反応速度が速かろうと意味がない。
「怯えろ! 竦め! ガンプラの性能を活かせぬまま負けるのだ!」
完全に視界を遮られるが、シュピーゲルはヒートランスで連続攻撃を繰り出す。
その大半は∀GE-1を捕えることが無かったが、少しづつ攻撃は当たっている。
「相手も見えない筈なんだがな」
「これぞ、秘儀サイレント・キル!」
条件は同じだが、相手の武器は間合いの長いヒートランスだ。
一方の∀GE-1の装備はどちらも間合いの短い武器だった。
ビームガンを適当に撃ったところで運良く当たってはくれない。
それどころか、ビームの発光で自分の位置を相手に知らせている。
シュピーゲルの武器がヒートランスなのはビームの発光で自分の位置を知らせない為なのだろう。
煙が漏れないように出入り口を封鎖し、発光しない実体剣を使うあたり、相手はその戦い方を相当練習して来たと言う事だ。
「面白い戦い方ではあるけど……結局は適当に武器を振ってるだけか。ジャパニーズNINJAってのは火を噴いたり雷を出したり、デカい龍とか召喚したりともっと派手なのを期待してたんだがな。所詮は隠れ里で修業もしていない紛い物はこんなものか」
∀GE-1の動きを止めて武器を捨てた。
それにより何度もシュピーゲルの攻撃が直撃して行く。
「勝負を諦めたか、潔いな。その潔さに免じて苦しまぬように仕留めてくれるわ」
シュピーゲルは渾身の突きを繰り出す。
∀GE-1はシュピーゲルのヒートランスが当たるギリギリのところで最低限の動きでヒートランスを回避すると、ヒートランスを受け止めた。
「何と!」
「捕まえた」
そして、足元に転がしておいたGNハンマーの棘を思い切り踏んでGNハンマーを上に上げた。
GNハンマーが回転しながら、膝の辺りまで上がるとスタスターを使って勢いをつけてGNハンマーを膝蹴りと共にシュピーゲルの胴体に叩き付けた。
その一撃でシュピーゲルのヒートランスを握っていた腕がもげて壁に叩き付けられて動きが止まった。
「馬鹿な……我が秘術によりお主は自身のガンプラを見失っていた筈……」
「案外ガンプラが見えなくてもあんまり関係なかったんだよね」
マシロは最後の一撃の時も煙で∀GE-1もシュピーゲルも見えていなかった。
しかし、動きを止めてからの攻撃の受ける場所とダメージからシュピーゲルの動きを予想した。
何度かダメージを受けた事でその予想の精度を高めていった。
それと同時の相手の攻撃時の微妙な煙の動きを把握した事で、ガンプラではなく煙の微妙な動きで最後の一撃をかわしたのだ。
その上で足元に転がしておいたGNハンマーを蹴りあげて、その時の棘を踏み込む強さからGNハンマーが膝の辺りに来るかを計算して最後の一撃を叩きこんだ。
マシロは簡単にやってのけたが、実際のところ相手が煙でガンプラを見えなくした事で自分の方が優位にいると思った事で動きが単調になっていた為、煙の動きからシュピーゲルの動きを予測する事は更に簡単になっていたが、そんな事を一々指摘する気はマシロには無かった。
右腕を接着剤で固められた高機動ザクⅡ改に対してサンドージュは壁を這うように移動しては接着剤を掃出し、ビームキャノンで攻撃する。
これ以上接着剤で動きを制限されるとまともに戦えなくなる為、高機動型ザクⅡ改は確実に接着剤は回避しなければならい。
隙を見てマゼラトップ砲で反撃するが、サンドージュは後部からビームストリングスを出して一気に後ろに下がっては不規則な動きで翻弄して来る。
「厄介な動きをする」
通路を縦横無人にサンドージュを狙う攻撃はパイプに直撃し、高機動型ザクⅡ改の進路の邪魔となる。
サンドージュのビームキャノンを回避するが、接着剤が左足に直撃して左足の関節が固められる。
「不味いな……このままでは動きが完全に封じられる……」
接着剤自体の攻撃力は皆無だが、関節を固められると確実に動きに影響が出て来る。
その為にサンドージュを何とかしなければならないが、サンドージュは縦横無人に壁を這って移動できる。
それに対して高機動型ザクⅡ改は追いかけるも、接着剤は思いのほか重く機動力が低下している為、サンドージュに追いつく事も出来ない。
マゼラトップ砲で遠距離攻撃を行うも、縦横無尽に動けるサンドージュに接着剤で関節が固定されている為、狙いが上手くつけられずに当たらない。
やがて、マゼラトップ砲も残弾が尽きる。
接着剤で腕に接着されている為、残弾の尽きたマゼラトップ砲は捨てるに捨てれず重りとなる。
左手で腰のハンドガンを抜くが、ハンドガンでは距離あり過ぎる為、当たる事は無い。
「これなら!」
ミサイルとロケットランチャーを撃ち込むが、ビームストリングスを使った動きで回避する。
「厄介な動きをする!」
空のミサイルランチャーとロケットランチャーをパージして少しでも軽くする。
それでも軽くなったとはいえ、サンドージュに追いつく程ではない。
サンドージュがビームストリングズをパイプに引っ掛けてビームキャノンを放とうとするが、突如、外壁が外から破壊される。
そこからシュピーゲルのヒートランスが突き出ている。
マシロがシュピーゲルを倒した際にヒートランスを奪って外壁を破壊してここまで直進して来た。
それが偶然にもタツヤが交戦している通路に辿り付いた。
更に偶然が重なってサンドージュは直撃する事は無かったが、外壁を破壊したのが相方のシュピーゲルであると誤認して一瞬の隙が生まれた。
「何だ?」
「今だ!」
その隙をタツヤは見逃さない。
ハンドガンでビームストリングスを撃ち抜いてサンドージュはバランスを崩した。
更にハンドガンを撃ち込んでサンドージュには致命的な損傷を与えることが出来なかったが、サンドージュはパイプに叩き付けられる。
ハンドガンの残弾を使い果たし、右腰のハンドガンを抜いてサンドージュに止めを刺して勝負が決まる。
2回戦を勝利したマシロとタツヤは次の対戦相手となるチームの方はシオンに任せている為、決勝で当たると思われるクロガミ・レンヤの率いるチームブラックゴッドの試合を見ることにした。
「これは……」
「あのガンプラの壊れ方は……武器から潰して四肢を削いだな」
バトルは思った以上に早く決着がついたらしく、ついた頃には勝負がついていた。
勝ったのは予想通りのブラックゴッドの方だ。
バトルの終了したバトルフィールドには彼らのガンプラ、ガンダムAGE-2 ダークハウンドとクロスボーンガンダムX2が残されており、対戦相手のガンプラがバラバラになっていた。
バトルが終わり、得意げに相手を見下しているマシロやタツヤと同年代と思われる少年がクロガミ・レンヤでもう片方の目元が髪で隠れている少年が相方の方なのは雰囲気から察する事が出来た。
マシロはその破壊され方からまずは武器から潰したと判断した。
壊れたガンプラは武器が全て壊れてる。
ライフルやシールドならバトル中に壊れることは珍しくはないが、固定装備やビームサーベル、バルカンまで装備の全てが壊れていると偶然と言うよりも狙って破壊したよ考える方が自然だ。
「酷いな。何もここまで破壊する必要はないのに……」
「そうか? 戦略をしてはありだと思うけど。まぁ、俺はそんなまどろっこしい戦い方は滅多にしないけどな」
ブラックゴッドの戦い方をタツヤはそう感じた。
バトルである以上は多少は相手のガンプラを破壊する事は仕方がない事だとはタツヤも思っている。
だが、武器を破壊して戦闘能力を奪った時点で勝負はついている。
バトルが終了していなくても、勝負がついた時点でそれ以上相手のガンプラを破壊する必要もないし、何よりそれだけの実力差を持ちながら敢えて相手のガンプラをいたぶるように破壊しているようで好きにはなれない戦い方だった。
それをマシロは滅多にしない、つまりは必要があればやると言っている。
「本気で言っているのかい? マシロ君」
「ガンプラバトルは勝って終わらないと意味がない。確実に勝つ為にまず相手の戦闘能力を削ぐと言うのは間違ってはいないだろ?」
タツヤは何かの冗談で欲しかったが、冗談でも聞き間違えでも無かった。
マシロは彼らのやり方を認めていた。
「勝つ為って……勝ちたいと言う気持ちは僕にだって分かる。でも、ガンプラバトルには勝ち負け以上に大事な物だって……」
「ないね。ガンプラバトルは勝つ事が全てだ。どんなに互いの全力を出し尽くした熱いバトルも最後に負けてしまえば意味はないからな」
勝つ事が全て……それはタツヤがマシロの口から最も聞きたくなかった言葉だ。
マシロが勝つ為に自身を高める続けていると言う事はこの1週間で知っている。
タツヤ自身、自分を高める為に妥協をしないマシロの事を尊敬すらしていた。
それも全てはガンプラバトルで全力を尽くしてぶつかり合う為だと信じていたからだ。
嫌、信じたかったのかも知れない。
ただ、ひたすらに強さを求める姿勢は良く似ていたからだ。
彼の師に当たる二代目メイジンカワグチに……
「取りあえずクロガミの奴だけあって少しは楽しめそうだ。それも次の元イタリアチャンプに勝たないと戦えないからな。明日に備えて今日は帰るわ」
マシロはそう言い、タツヤはマシロに何も言えなかった。
タツヤに対しての言葉を当たり前のように吐き出しているのか、マシロは全く気にした様子はない。
そんなマシロの後ろ姿をただ見送る事しか出来なかった。