ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle56 「二人で」

 再びバトルの世界へと戻る決意をしたマシロは世界大会の決勝で待つタツヤの元へ向かっていた。

 だが、そんなマシロに最大の危機が訪れようとしていた。

 

「何でこんな時に……」

「流石にこればかりはどうしようも……」

 

 タケシの運転する車で東京から静岡へと向かう最中の高速道路にてマシロの乗る車は渋滞に捕まっていた。

 ラジオの情報によれば事故により渋滞が起きてしまったらしい。

 こればかりは事前に予測する事は出来ない為、運が悪いとしか言いようがない。

 静岡までは多く見積もっても3時間程度で、決勝には間に合うはずだったが、渋滞によってそれも分からなくなった。

 

「渋滞の一つ、クロガミグループの力で……」

 

 クロガミグループの力を使えば速やかに事故を処理して、静岡に向かう事も出来たが、マシロは携帯などは全て置いて来ている。

 その為、身内に連絡を取る事も出来なかった。

 

「とにかく、今は耐えるしかない」

 

 クロガミグループの力があてにならない以上、マシロは無力だ。

 今のマシロに出来る事は、決勝が始まるまでに会場に辿りつく事が出来る事を願うだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシロが渋滞に捕まって動けなくなっている頃、静岡の世界大会会場では、3位決定戦が始まろうとしている。

 3位決定戦は決勝戦の前と言う事もあって、決勝目当てで来た観客でメインスタジアムは満員となっている。

 3位決定戦自体は決勝戦の前座に過ぎないが、対戦カードが準決勝で初めてマシロを追い詰めたアイラとガンプラの世界では有名人であるイオリ・タケシの息子であるセイと言う事もあって、注目度は高い。

 バトルシステムを挟んでセイとアイラは対峙している。

 互いにレイジを通じて知り合いとはいえ、バトルの前に話す事はしない。

 二人はGPベースをセットしてガンプラをバトルシステムに置いた。

 二人の使うガンプラはこれまでのガンプラとは違った。

 アイラはサザビー改をベースに独自の改造を加えたミスサザビー。

 対するセイはスタービルドストライクをベースに重装甲、重武装化したフルアーマースタービルドストライクだ。

 FAスタービルドストライクは全身に追加装甲と、予備パーツの火器を搭載している。

 バックパックにはビルドストライクが装備していたビルドブースターを改造して装備し、ビームキャノンは肩越しに前方を向いている。

 脇の下からは追加装甲の下に装備されている、スタービルドストライクのユニバースブースターのスタービームキャノンが前方を向いた状態となっていた。

 左腕にはビルドガンダムMk-ⅡのビームライフルMk-Ⅱが、右腕の追加装甲にはビームサーベルが複数内蔵されている。

 脚部の追加装甲にはミサイル、右手には強化型ビームライフルを装備している。

 全身の追加装甲と火器によって、スタービルドストライク本来の機動力や運動能力は殆ど失われているが、その分、火力と防御力は大幅に向上している。

 このFAスタービルドストライクがセイがアイラに勝つ為に用意したガンプラだ。

 対照的な2機による3位決定戦のバトルが開始された。

 3位決定戦のバトルフィールドはオーソドックスな宇宙となっていた。

 

「相手は重装備……接近さえすれば」

 

 FAスタービルドストライクが機動力を犠牲にして火力と防御力を重視していると言う事はアイラでも分かる。

 そんな相手には接近戦が有効でミスサザビーもまた近接戦闘を重視している。

 その為、いかに接近戦に持ち込むかが勝敗を分けると言っても良い。

 バトルが始まり、先制攻撃はFAスタービルドストライクだった。

 

「その程度の砲撃なんて」

 

 FAスタービルドストライクのビームキャノンをミスサザビーは軽く回避する。

 だが、回避してすぐに二射目が撃たれる。

 それをも回避するが、更に続けて攻撃が行われる。

 FAスタービルドストライクの砲撃をミスサザビーはかわし続ける。

 しかし、幾らかわしてもFAスタービルドストライクからの砲撃は休みなく続く。

 FAスタービルドストライクはビームキャノン2門とスタービームキャノン2門の系4門のビーム砲を時間差をつけて使う事で、休みなく砲撃を続けていた。

 その間に強化型ビームライフルをチャージして、チャージが完了し次第撃っている。

 

「まずは作戦通り」

 

 FAスタービルドストライクの砲撃はミスサザビーに掠りもしないが、これはセイの思惑通りの展開だ。

 1週間の練習の中でセイはとにかく、射撃の練習を行った。

 それによって多少は射撃の腕は上がったが、アイラには通用するレベルではない。

 ニルスの計算では今のセイの射撃技術でアイラのガンプラに命中させる事が出来る確率は1%程度だと出ている。

 それだけを見れば絶望的とも言えるが、単純計算で100回撃てば1回は当たる。

 だからこそ、その1回の為にセイは休みなく攻撃し続けてた。

 たった1回の直撃でもガンプラの性能においてはセイのFAスタービルドストライクに圧倒的に分があった。

 アイラもそれを知っているからこそ、ただの1発も当たる事が出来ない為、FAスタービルドストライクの連続攻撃を確実にかわさなければならない。

 全く当たらないセイと全てをかわしているアイラ。

 一見、アイラの方が有利に見える展開だが、実のところは1発当てれば一気に有利となるセイの方が1発で致命傷になり兼ねないアイラよりも優位になっている事になる。

 この状況を作り出した事で、バトルの流れはセイの方に向いている。

 

「やってくれるわね」

 

 セイは気づいていないが、セイの戦い方はアイラにとっては面倒な戦い方でもあった。

 アイラはプラフスキー粒子の流れから相手の動きを先読み出来る。

 だが、セイのFAスタービルドストライクはひたすら砲撃を撃って来るだけで微動だにしていない。

 相手がその場から動かなければ、アイラの先読み能力は殆ど意味を成さない。

 これが大したことのないガンプラなら、多少は被弾を覚悟で強引に突っ込むのだが、1撃でやられなけない今の状況では強引に突っ込む事は最後の手段だ。

 

「なら……行きなさい! ファンネル!」

 

 ミスサザビーはファンネルを射出した。

 このまま攻撃をかわし続けていても状況が好転しない為、ファンネルで揺さぶりをかけようとしている。

 セイの砲撃の精度は低い為、ファンネルを操作しながらでも、十分にかわす事は出来る。

 ファンネルは砲撃を避けながらFAスタービルドストライクの方に向かって行く。

 

「ファンネル! なら!」

 

 FAスタービルドストライクは砲撃を続けながら、右腕の装甲に内蔵されているビームサーベルを全て射出した。

 そして、射出されて回転しているビームサーベル目掛けて左腕のビームライフルMk-Ⅱを連射する。

 それによって何発かが、回転するビームサーベルに当たるとビームが拡散して、ファンネルを落としていく。

 

「嘘!」

 

 ビームサーベルを使ってビームを拡散してファンネルを落とすと言うやり方にアイラは少なからず驚いていた。

 アイラの中ではファンネルは一つ一つ攻撃を回避しながら落とすものだと思っていた。

 だからこそ、そこまでの技術がセイに無い為、揺さぶりとして使っていた。

 しかし、セイも自分にそこまでの技術がないと言う事を自覚している為、アイラがファンネルを使っていた時の対策を事前に考えていた。

 セイには操作技術はないが、それを知識で補う事が出来る。

 ファンネルを落としたやり方もセイが独自に考えた物ではなく、Zガンダムの劇場版でZガンダムがキュベレイのファンネルを落とす際に使ったビームコンフューズだ。

 尤も、セイには回転するビームサーベルに一発でビームを当てる技術も無い為、ビームサーベルの数を増やしてビームを連射する形で補っている。

 揺さぶりを目的にしたファンネルが簡単に落とされた事で逆にアイラの方が動揺する事になった。

 ミスサザビーは近接戦闘を得意としている為、ある程度は近づかなければその能力を存分に発揮する事は出来ない。

 遠距離からでは右手のスィートソードのライフルか拡散メガ粒子砲しかないが、どちらもある程度の距離が近くなければ使えない。

 唯一のファンネルがあっさりと対応されてしまったため、この距離では打つ手がない。

 幾ら、攻撃をかわし続けていたとしても、いずれは操作ミスをしてしまう危険性が高い。

 マシロがアオイとバトルした時のように攻撃をかわす事で精神的なダメージを期待しても、外れる事が前提で撃って来ている為、期待は出来ない。

 セイが操作をミスする可能性もここまで精度は低いと余り意味がない。

 どちらが先に致命的なミスを犯すかと考えると、こちらの動きに合わせて砲身の向きを合わせるだけのセイと攻撃をかわす為に常に操縦桿を動かし続けているアイラの方だろう。

 

「全く……ガンプラバトルにはこういう戦い方もあるのね」

 

 セイの事を侮っていた訳ではない。

 だが、アイラにとっては初めて戦うタイプのファイターである事は確かだ。

 今までの相手はファイターとしてもビルダーとしてもある程度の実力があったが、セイの場合はビルダーとしての能力は世界でもトップレベルだが、ファイターとしての実力は並程度だ。

 その上で自分の実力を自覚した上で戦い方に織り込んで来ている。

 実力は大したことは無くとも、ガンプラの性能を最大現に活かしたバトルをしている為、厄介な相手だと認めざる負えない。

 

「おに……マシロがあそこまで相手を研究する訳ね」

 

 マシロが相手の事を徹底的に研究する事自体は、アイラもある程度は理解出来た。

 相手の事を知れば、それだけバトルを優位に運ぶことが出来る。

 だが、マシロは少々やり過ぎのようにも思っていた。

 そこまで研究せずとも、ある程度のバトルの傾向さえ調べれば対策は幾らでも出来る。

 今でもやり過ぎだと思う事に代わりはないが、そこまでやる理由も理解出来る。

 似たようなバトルスタイルでもファイターによって微妙に異なり全く同じスタイルのファイターはいないと言う事なのだろう。

 だからこそ、確実に勝つ為にマシロは相手の事を徹底的に調べ尽くしていた。

 

「流石に私もこれ以上好きにさせ無いわよ!」

「来る!」

 

 回避に専念していても、状況は好転しない。

 なら、多少強引でも攻める必要がある。

 ミスサザビーは一気に加速してFAスタービルドストライクの方に突撃する。

 多少の被弾を覚悟して、突撃する。

 今後はセイの顔色が少し変わった。

 セイにとっては多少のリスクを覚悟して突撃して来る事は最も避けたい事だった。

 被弾を覚悟と言ってもセイの射撃精度は低い為、突撃して来てもかわせない事もない。

 ガンプラの性能の有利を活かして先制攻撃と連続攻撃で、距離を取るようにさせ、覚悟を決める前に被弾させておきたかったが、そこまで上手くはいかないようだ。

 

「今度はこっちの番よ!」

 

 FAスタービルドストライクの砲撃をかわしたミスサザビーはFAスタービルドストライクの上を取る。

 FAスタービルドストライクのビーム砲は全て前方に固定されている為、前方以外は死角となる。

 上を取ったミスサザビーは拡散メガ粒子砲を放つ。

 重装甲により機動力は殆ど無い為、FAスタービルドストライクはかわす事なくビームが直撃するかのように思えた。

 だが、FAスタービルドストライクに直撃する直前にビームが消えた。

 

「ビームが……まさか!」

「このFAスタービルドストライクは全身がアブソーブシステムで出来ているんです!」

 

 FAスタービルドストライクの両肩の装甲がスライドしており、そこからはアブソーブシールドと同じビームの吸収口が見えている。

 この追加装甲は単に装甲を厚くするだけの物ではない。

 セイが事前に用意していたアブソーブシールドを流用して制作した物でアブソーブシールド同様にビームを吸収するいわば、アブソーブアーマーだ。

 ミスサザビーの攻撃を吸収したFAスタービルドストライクは体勢を変えて、ビームキャノンで牽制する。

 予想外の事態で軽く動揺していたと言う事もあって全砲門で一斉に攻撃を完全にかわし切れずにミスサザビーは右足を撃ち抜かれた。

 

「くっ!」

「浅い!」

 

 続けてビームを撃ちつづ付けるも距離が近い事である程度は当たりかけるが、流石にそう簡単に直撃はさせて貰えない。

 ミスサザビーはビームをかわしながら距離を取る。

 だが、序盤のように自分の射程から外れるような事はしない。

 ある程度の距離を詰めても、十分にかわせると言う事はここまでの戦いの中で分かっている。

 それなら無理に距離を取って向こうの思惑に乗らずに、いつでも距離を詰める事が出来るだけの距離を保っておいた方が良い。

 FAスタービルドストライクは時間差でビームを撃つもミスサザビーを捕える事は出来ない。

 序盤とは違い距離が近い為、その気になればいつでも接近戦に持ち込める為、セイは焦り始めるがそれを抑える。

 ここで焦ってしまえば、勝ち目はない。

 この距離でビームを撃って来てもアブソーブアーマーで防ぐ事が出来る。

 

「守ったら負ける。攻めるんだ!」

 

 ガンプラの性能では分がある物の、アイラとのファイターとしての実力差はそれを覆す事は出来る。

 守りに入っていては勝つ事が出来ない。

 FAスタービルドストライクはひたすらビームを撃ち続ける。

 

「そうそう好き勝手には!」

 

 アブソーブアーマーのせいで下手に攻撃してもビームを吸収されるだけだ。

 ビームを吸収されると言う事は単に無効化されるだけではなく、ディスチャージシステムに利用されると言う事でもある。

 その為、アイラも下手に攻撃は出来ないが、機動力を活かしてFAスタービルドストライクを翻弄する。

 元々の射撃精度が高くないと言う事に加えて、ある程度の距離から機動力で振り回されている為、射撃の精度は更に落ちている。

 FAスタービルドストライクの砲門は両手のライフル以外は固定されている為、体ごと動かさないと銃身の向きを変える事が出来ない。

 距離が離れていれば、多少の修正で良かったが距離が近くなればなるほど、修正は大きくする必要がある。

 砲撃をかわしながら、ミスサザビーは接近する。

 FAスタービルドストライクは左腕のビームライフルMk-Ⅱで応戦するが、ミスサザビーはかわして左足のビームサーベルで蹴りかかる。

 その一撃はFAスタービルドストライクの強化型ビームライフルを切り裂いた。

 

「っ! まだ!」

 

 すぐに頭部のバルカンでミスサザビーを狙うが、ミスサザビーは左腕のスィートシールドで身を守りながら、砲撃を避けながら後退して行く。

 序盤の先制攻撃でガンプラの性能差を活かして流れを引き寄せこそしたが、時間が経つにつれてアイラの方もセイの攻撃に慣れ始めていた。

 まともに直撃すれば、一撃で倒せると言う状況には変わりはないが、慣れて来た事でアイラの方も多少のリスクを冒してでも、攻めに行けるようになっている。

 接近戦に持ち込まれるとファイターの腕の差が出て一方的にやられる。

 セイはこうなる前に仕留めたかった。

 FAスタービルドストライクは脚部のミサイルを一斉掃射する。

 撃たれたミサイルは更に細かいミサイルに分かれてミスサザビーに向かって行く。

 

「また面倒な物を……だけど!」

 

 ミサイルはミスサザビーを追尾し、ミスサザビーはスィートソードからビームを撃って迎撃して行く。

 だが、小さい上に数が多い。

 迎撃できなかったミサイルをスィートソードからビーム刃を出して切り裂いていく。

 しかし、それでも完全に迎撃しきれずに、ミサイルがミスサザビーを襲う。

 とっさにスィートシールドで身を守るが、数発のミサイルの直撃でスィートシールドは破壊されて被弾する。

 ミサイルによる爆発からミスサザビーが飛び出して来る。

 ミサイルにより、スィートシールドごと左腕が吹き飛び、頭部や至るところに損傷が見られるが、戦闘は十分に出来る。

 

「仕留め損ねた!」

「危なかったわ」

 

 接近された時の対策として用意したミサイルは数で圧倒する事で被弾率を上げた。

 想定通りにミスサザビーに損傷を与える事には成功したが、数で圧倒する為にミサイルを小型にして数を用意している分、ミサイル一発辺りの威力はさほど無い為、ミスサザビーに致命傷を与える程ではなかった。

 ミサイルの威力の小ささだけではなく、ミスサザビーを制作するにあたり元々、アイラの筋が良かった事に加えてラルさんから色々とアドバイスを受けている為、ミスサザビーの完成度も並のビルダーが作ったガンプラよりも高い事も致命傷にならずに済んだ理由の一つだ。

 そして、ミサイルは使い切った為、後は今まで通りの時間差攻撃でミスサザビーを倒さなければならない。

 

「まだ! 負けてない!」

 

 接近された時のミサイルは最後の手段でもあった。

 ミサイルを使うと言う事はそれだけ相手に接近されていると言う事。

 この攻撃で仕留めきれなければ、後は今までと同じように戦うしかない。

 だが、仕留めきれなくとも、ミスサザビーに損傷を与えている。

 FAスタービルドストライクは畳み掛けるようにビームを撃つが、多少は損傷しているものの、問題なく回避する。

 損傷こそ、ミスサザビーの方が酷いが、流れは完全にアイラの方に向いていた。

 

「悪いけど、勝たせて貰うわよ!」

 

 FAスタービルドストライクの砲撃をかわしながら、ミスサザビーはFAスタービルドストライクの背後を取る。

 機動力においてはミスサザビーに分がある為、背後を取るのも容易だ。

 背後を取ってスィートソードのビームを撃つもアブソーブアーマーに吸収される。

 

「後ろも駄目……なら!」

 

 距離を取ってのビーム攻撃はどの方向からもアブソーブアーマーにより吸収されると見て良い。

 元々、火力は大して高くない為、ミスサザビーはFAスタービルドストライクに接近する。

 スィートソードの一撃がFAスタービルドストライクの背後に決まる。

 だが、FAスタービルドストライクの装甲は厚く、スラスターの一部を切り裂くだけで致命傷にはならない。

 

「固い!」

 

 スラスターの一部を損傷しながらも、FAスタービルドストライクは懸命に砲撃を続けて、ミスサザビーに距離を取らせる。

 

「動きは遅いし、射撃は当たらない。なのに攻めきれない」

「やっぱりアイラさんは凄い」

 

 流れは完全にアイラの方を向いているものの、FAスタービルドストライクの厚い装甲をミスサザビーの攻撃力では簡単に突破する事は出来ないようだ。

 一撃を浴びせても仕留めきれなければ至近距離で撃って来ても先読み能力とアイラの実力なら、回避する事も出来るが、逆に言えば相手にも至近距離で撃ち込めるチャンスを与えるようなものだ。

 一撃で決めたいところだが、装甲を強化しているFAスタービルドストライクを一撃で仕留めるのは至難の技だ。

 

「あそこまで強固なガンプラに損傷を与えるなら関節……」

 

 FAスタービルドストライクは追加装甲により動きが遅くとも守りは固い。

 近接戦闘ならアブソーブアーマーによるビームの吸収を受けないが、反撃の恐れがある。

 一撃で確実にFAスタービルドストライクに損傷を与えるのであれば、追加装甲で覆われていない各関節部を狙う事が最も有効だ。

 

「仕方が無いわね!」

 

 関節を狙う事は実力差を考えるとさほど難しい事ではない。

 問題は関節部で最も狙い易いのは正面だと言う事だ。

 後ろからだとバックパックが邪魔で本体を狙いずらい。

 上下左右からだと狙える場所は少なく、最小限の動きで関節への攻撃がずれる事もあり得る。

 正面からだと、殆どの関節を狙えて、動いても先読み能力を持ってすれば、修正も容易い。

 しかし、正面からの攻撃はFAスタービルドストライクの砲撃に正面から向かって行くと言う事だ。

 セイの射撃精度が大したことはないと言っても、距離を詰めれば詰める程、当たる危険は増える。

 だが、このまま手をこまねいている訳にもいかない。

 セイの方が実力はともかく、ガンプラバトルの経験も知識も上だ。

 時間をかけ過ぎるとセイの方が先に打開策を思いつくかも知れない。

 ガンプラの性能で劣り、損傷しているミスサザビーでは長期戦は不利だった。

 今ならまだ、ファイターとしての実力差で押し切る事が出来る。 

 アイラは覚悟を決めて、FAスタービルドストライクに突撃して行く。

 

「正面!」

 

 FAスタービルドストライクは全砲門でミスサザビーを迎え撃つ。

 だが、アイラはFAスタービルドストライクほ砲門の動きを先読みして、最小限の動きで回避する。

 流石にここまで小さい動きを先読みするのは初めてである為、ビームはミスサザビーを掠めるが、アイラは構う事は無かった。

 

「懐に!」

「これで!」

 

 ミスサザビーは砲撃をかわして、FAスタービルドストライクの懐に入る。

 ミスサザビーはFAスタービルドストライクの上を取る。

 その際に左足のビームサーベルでまずはFAスタービルドストライクのビームキャノンを破壊して、スィートソードのビーム刃を最大出力で展開する。

 そして、スィートソードをFAスタービルドストライクに目掛けて振り下した。

 

「終わりよ!」

「くっ!」

 

 今までは実力をガンプラの性能と戦い方で補って来たが、流石にこの一撃をかわす事は出来ない。

 全てを出し尽くして戦ったため、セイはここまでかと覚悟を決めた。

 しかし、ミスサザビーのスィートソードがFAスタービルドストライクを捕える直前に、セイの腕が誰かに引かれる感覚と共にFAスタービルドストライクはギリギリのところで攻撃をかわした。

 

「かわされた!」

 

 確実に決まったと思った一撃がかわされてアイラは驚くが、同時にセイも驚いていた。

 

「嘘……」

「何で……」

 

 セイはバトル中と言う事も忘れて振り向く。

 アイラはバトルシステムを挟んで対峙して居る為、セイよりも先にその事に気が付いた。

 そして、自分の目を疑った。

 

「何だよ。折角戻って来たってのによ」

 

 そこには1週間前にアリアンに帰った筈のレイジがセイの腕を引いていた。

 レイジはセイの反応に不服らしく、少しむくれていた。

 

「だって……」

「俺も次にこっちに来れんのはいつか分かんなかったんだけどさ。さっき、ユキネの奴がこっちに来れるって言うから急いで来た」

 

 レイジ自身、1週間前の別れの時にはセイと戦う約束こそしたが、次に来れるかは分からなかった。

 だが、少し前にいきなりユキネがレイジの元に来てこちらの世界に来れると言いだした。

 その話しに乗ったレイジがこちらの世界に来た時には3位決定戦がすでに始まっていた。

 急いでセイの元に来た時にはアイラが止めの一撃を入れるところで、何とかセイの腕を引いて攻撃を回避できたと言う訳だ。

 

「それに俺達の世界大会はまだ終わってないようだしな」

「全く……君って奴は」

 

 レイジがセイに代わり操縦桿を握る。

 それに伴いセイはセコンドの席に移動する。

 セイがレイジの代わりにバトルに出たようにエントリーの時点で登録していれば、バトルの途中にファイターが変わると言うのもルール上は問題ない。

 レイジと戦う為にファイターとしても諦めないようにと思ったものの、やはりレイジと共に戦えるのは落ち着く。

 

「いきなり出て来たと思ったら、いきなりいなくなって……本当に勝手なんだから」

「んな事よりも、俺の言った通りだったろ。アイツを相手にここまでやれたんだ」

 

 レイジがこちらの世界に来た時にはバトルが始まっていた。

 ここまで来る最中にセイのバトルをレイジは見ていた。

 自分とは違ったやり方だが、圧倒的に格上であるアイラを相手に互角以上に戦った。

 

「そんな事言っても誤魔化されないからね! だけど」

「ああ……今は目の前の相手に集中だな」

 

 セイはレイジに言いたい事は山ほどあった。

 だが、今はバトル中だ。

 アイラも空気を読んでこの間に攻撃はして来ないが、いつまでも待っていて貰う訳にもいかない。

 

「全く……かっこよく出て来たところ悪いけど、私がボッコボコにして上げるわよ!」

「言ってろ! 俺とセイが組んでんだ。誰にも負ける訳がなぇよ!」

 

 FAスタービルドストライクは左腕のビームライフルMk-Ⅱでミスサザビーを攻撃する。

 先ほどまでとは違い正確な射撃を何とかミスサザビーは回避する。

 

「少し見ない間に色々と付いてるしやり難いぞ」

「分かってるよ」

 

 元々、スタービルドストライクは機動力重視の汎用機だ。

 それをセイがフルアーマー化して機動力を殺している。

 スタービルドストライクの操作に慣れているレイジからすれば、FAスタービルドストライクは動かし辛い。 

 セイはパネルを操作する。

 

「フルアーマーはパージする物だよ!」

 

 セイが操作するとFAスタービルドストライクの装甲が次々と剥がれていく。

 最後の装甲がパージされて、フルアーマー化に伴い、前方に向けて固定されていたスタービームキャノンが定位置に戻るとFAスタービルドストライクは普通のスタービルドストライクとなる。

 

「成程……こっちなら扱い易い!」

 

 スタービルドストライクは腰のビームサーベルを抜いて加速する。

 ミスサザビーはスィートソードで迎え撃った。

 

「戻って来なかったら私に負ける事もなかったのにね!」

「負けんのはお前だ!」

「アンタよ!」

 

 スタービルドストライクとミスサザビーはぶつかり合い切り合う。

 サーベルの出力ではミスサザビーに分があるが、スタービルドストライクがパワーで押し切る。

 

「行きなさい! ファンネル!」

 

 アイラはファンネルを序盤のゆさぶりで全て使わずにいざと言う時の為に温存していた。

 数は少ないが、身を守る盾のないスタービルドストライクはファンネルの攻撃を確実にかわすしかない。

 動きの少ないセイの戦い方はアイラにとってはやり難いが、レイジの戦い方は動く為、先読みがし易かった。

 スタービルドストライクの動きを読んで攻撃して来るファンネルのビームをスタービルドストライクは左手でもビームサーベルを抜いて切り払う。

 そして、片方のビームサーベルを投擲してファンネルを一つ落とすと、近くのファンネルをビームサーベルで落として、残りをスタービームキャノンで撃ち落す。

 

「へっ! どうだ!」

「そのくらいで良い気にならないでよね!」

 

 スタービルドストライクがファンネルの相手をしている間にミスサザビーは距離を詰めていた。

 スィートソードを振るい、スタービルドストライクは何とかビームサーベルで受けるが、勢いのままに弾き飛ばされる。

 

「やるじゃないかよ!」

「アンタもね!」

 

 スタービームキャノンでミスサザビーを牽制しながらスタービルドストライクは体勢を整える。

 ミスサザビーも一度距離を取って身構える。

 

「セイ……お前がこの1週間で努力して来たように俺もこの1週間でお前に負けないようにして来た」

「レイジ?」

 

 セイがアイラに勝つ為に1週間の間に努力したようにレイジもアリアンに帰ってからの1週間で何もして来なかった訳ではない。

 尤も、アリアンではガンプラバトルが出来ない為、イメージの中でだ。

 

「見せてやるよ! 俺達のガンプラの新たな力をな!」

 

 レイジはそう言うとRGシステムを起動させる。

 

「セイ! ディスチャージは?」

「行けるよ!」

「上等だ!」

 

 RGシステムを起動させて、それを右手の拳に集中させてビルドナックルの準備を行う。

 それに対してアイラもいつでも迎撃が出来るようにスィートソードを構える。

 レイジはそのまま、ビルドナックルを行うのではなく、今度はディスチャージシステムを起動させた。

 ディスチャージシステムに使うプラフスキー粒子はアブソーブアーマーでミスサザビーのビームを吸収した時に集まっている。

 ディスチャージシステムを起動させて、正面にプラフスキーパワーゲートをいくつも作り出す。

 

「これは……」

 

 元々、スタービルドストライクの3つの機能の内、アブソーブシステムとディスチャージシステムはセットのようなもので、RGシステムだけが独立して使う事を想定していた。

 ディスチャージシステムとRGシステムは粒子を使うと言う点では同じだが、ディスチャージシステムは外にRGシステムは内側に対して粒子を使う為、正反対で両立をさせる事はないと考えていた。

 だが、RGシステムは内部に粒子を浸透させる分、使う粒子量は少ない為、ディスチャージシステムとRGシステムは理論上は同時に使用する事は出来る。

 プラフスキーパワーゲートが出来るとスタービルドストライクはゲートを潜る。

 一つ目のゲートを潜りスタービルドストライクはプラフスキーウィングを展開して加速する。

 二つ目、三つ目のゲートを潜り更にスタービルドストライクは加速して行く。

 

「っ……何が起きて!」

 

 元々、粒子が見えるアイラにとっては圧倒的な量の粒子を放出するディスチャージシステムは粒子が多すぎて本体が見え辛い。

 その上で複数のゲートを通って加速するスタービルドストライクの動きを先読みしても速すぎて目が追いつかない。

 

「ビルドナックル!」

「フルブースト!」

 

 ディスチャージシステムで加速したスタービルドストライクは一直線にミスサザビーに向かう。

 それ自体は一直線ではあるが、プラフスキーパワーゲートを複数通っているスタービルドストライクの速度は圧倒的だ。

 その上で、ディスチャージシステムにより放出されている粒子がアイラにとっては目暗ましとしても効果している為、アイラはその一撃に反応する事は出来なかった。

 元々、一撃必殺の威力を持つビルドナックルがディスチャージシステムで超加速した一撃はミスサザビーを一撃で粉砕した。

 

「そんな事が……」

 

 ディスチャージシステムによる粒子放出が収まって、ようやく視界が安定して来た時にはミスサザビーは破壊されていた。

 

「よっしゃぁ!」

 

 アイラは何が起きたのかと茫然とし、バトルに勝利したレイジはセイとハイタッチをかわしていた。

 3位決定戦はセイ、レイジ組の勝利で終わった。

 会場は熱狂し、午後からは世界大会の最後の1戦にして、世界最強のファイターを決める決勝戦、現世界最強ファイターのマシロ・クロガミとPPSEワークスチームが送り出して来たメイジンカワグチことユウキ・タツヤの1戦が行われようとしていた。

 だが、決勝戦を前にマシロは未だに会場に到着する事無く、決勝戦の時間が刻一刻と近づいていた。

 

 

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