ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
世界大会3位決定戦はセイ。レイジ組の勝利で終わった。
それにより、第7回世界大会において第3位が決まった。
3位決定戦が終わり、遂に今年の世界大会王者を決める決勝戦が始まろうとしている。
決勝戦の組み合わせは第6回の王者であるマシロと、PPSEワークスチーム所属の三代目メイジンカワグチとなっている。
どちらも、始まった時点から優勝候補の大本命と目されており、この組み合わせは決勝トーナメントの組み合わせが発表された時点で予測されていた事でもあった。
それでも、最強のファイターであるマシロに最強のチャレンジャーであるメイジンのバトルと言う事もあって、全世界のファイター達がこの一戦に注目している。
「たく……今日に限って何で寝坊すんだよ!」
「仕方が無いだろ!」
「とにかく急ごう。決勝戦の時間までもうすぐだから」
決勝戦の時間が迫る中、アオイとエリカ、タクトはメインスタジアムに急いでいた。
アオイもエリカもすでに決勝トーナメントを敗退しているが、静岡に住んでいる為、自宅から会場まで電車を乗り継いでくることが出来た。
敗退後も毎回、会場を訪れていたが、今日に限ってタクトが寝坊をして時間ギリギリとなっていた。
「アレって……」
決勝戦まで時間が余り無い為、急いでいたがタクトが立ち止まる。
その視線の先にはサングラスに目出し帽と言った全身を絵に描いたような不審者がメインスタジアムのモニターを見ていた。
「どうしたの?」
「いや、あれってミズキさんだよな」
サングラスと目出し帽で分かり辛いが、確かにシオン・ミズキだった。
シオンはマシロの世話係を辞任してからも、クロガミグループ系列の会社に勤めていた。
どの分野でも天才的な技術を持たずとも、一定以上の成果を出せるシオンは重宝されていた。
「ミズキさん? こんなところで何してんすか?」
「……貴方達。ちょっとね」
「アイツのバトルならこんなところで見なくても」
「色々あるのよ」
アオイ達は知らないが、シオンはマシロの世話係を辞任している手前、会場に行き辛かった。
今日の決勝戦は全世界にリアルタイムで中継される為、ここに来なくてもバトルを見る事は出来る。
それでも、シオンはここに来た。
今日のバトルはマシロにとって特別なバトルだと知っているからだ。
去年とは違い、今日の決勝戦の相手はユウキ・タツヤ。
マシロが珍しく興味を持った相手だ。
シオンもマシロとの付き合いは長い方だが、ここまでマシロが感心を持った相手は珍しい。
昔は今ほどではなかったが、勝ち続けたせいで誰からもバトルの相手をしてもらえなかった時期があったものの基本的にマシロはCPU戦よりも対人バトルを好んでいた。
だが、いつの間にかマシロは他人に対して興味を示す事が殆ど無くなった。
シオンとも始めから仕事だけの付き合いと言う訳でもなかった。
マシロとシオンは対して歳が離れていない。
初めて会った時はまだ、マシロがまだ子供の時だった。
当時のシオンもまだ10代で、仕事だと割り切れる程大人ではなかった。
その為、当初はマシロの世話係と言う立場と同時に弟のように可愛がっていた事もあった。
それがいつしか、今のように仕事だけの関係になったのかはシオンも覚えてはいない。
「マシロのバトルが気になるならアタシ等とスタジアムで見た方が良いですって」
エリカがシオンの腕を取る。
シオンは直接スタジアムまで行く気は無いが、結局、エリカに連れていかれる形でスタジアムまで連れていかれた。
「やっぱ座れないか」
「誰かのせいでな」
「悪かったって」
観客席に到着するが、時間が迫っていると言う事もあって、席は全て埋まっていた。
座る席はないが、立見席の方は若干の余裕がある。
「そろそろ時間だけど、マシロさんはまだ来てないようだね」
スタジアムの中央に大型のバトルシステムが設置してある。
そこにすでにメイジンことタツヤがスタンバイしているが、マシロはまだいない。
「アイツ、去年優勝したから今年の優勝には興味がないってのかよ」
「マシロに限ってそんな事は無いと思うけどな」
「絶対に来るわ」
シオンはそう断言した。
マシロにとっては世界大会で優勝する事に興味はないだろう。
だが、今年の決勝の相手がタツヤである以上、マシロは来ない訳が無い。
決勝の時間が近づくにつれて、会場がざわめき始めて来た。
すでに10分を切っている。
流石にこの時間で来ないとなれば、本当に決勝戦に出ないかも知れない可能性が出て来る。
残り1分と言ったところで、マシロが走りながらバトルシステムの前に到着する。
時間ギリギリと言う事もあって、会場内は大ブーイングとなる。
去年の騒動もあって、マシロにとっては完全にアウェーな空気となっていた。
渋滞で足止めを食らったマシロはギリギリのところで間に合わった。
体力の限界を超えて走って来た為、息も切れ切れだからそれ以上のピンチがマシロを襲っていた。
(やっべ……俺、ガンプラ持って来てないし……)
マシロは会場に到着してすぐにメインスタジアムを目指した。
そうでもしなければ、間に合わなかった。
だが、マシロが1週間程前に会場を出た時にガンプラは持って来てはいなかった。
それから自分でガンプラを買うと言う事も無かった為、マシロはガンプラを持っていない。
流石にすでに開始時間となっている為、ガンプラを取りに戻ると言う事は出来そうにない。
ガンプラは自分の意志で置いて来ていたが、ファイターとしての性か、GPベースだけは持っていた。
(この空気で∀GE-2を取りに行けそうにないし……あ)
ホテルの部屋に戻れば未完成状態のガンダム∀GE-2がある。
それがあれば、バトルが出来るが、この状況ではどうしようもない。
しかし、マシロはある事に気が付いた。
(まさか……お前が俺の手元にあるなんてな)
マシロはガンプラを置いて来た為、持っていないと思っていた。
だが、実際は一つだけ持っていた事を思い出した。
東京のイオリ模型店でタケシから返して貰ったガンダムAGE-1。
渋滞で足止めを食らっている時に時間つぶしも兼ねて、手直しを加えて居る為、すぐにもバトルに使える。
(いや、俺の俺としての最初のバトルにはお前が一番相応しい。そして、これが最後のバトルでもある)
このガンダムAGE-1はマシロが初めてキヨタカに買って貰ったガンプラだ。
マシロの初めての勝利のこのガンダムAGE-1だった。
新しく自分のバトルをする今日のバトルにこのガンダムAGE-1以上に相応しいガンプラは無い。
そして、このバトルの勝敗に関わらず、ガンプラバトルが変わる最後のバトルでもある。
マシロにとってはこのバトルが本当の自分の最初で最後のバトルだ。
「さぁ……行こう。AGE-1」
性能面での不安があるが、マシロは躊躇う事は無かった。
バトルシステムにガンダムAGE-1が置かれてタツヤは少なからず驚いていたが、すぐに気を取り直す。
マシロがこの場面で適当なガンプラを使う訳がない。
この場面で使って来ると言う事はそれなりの理由がある筈とタツヤは考えていた。
自分と同じように。
タツヤはこの日の為に用意したアメイジングザク・ブレイヴをバトルシステムに置いた。
ザクアメイジングを更に改造したもがアメイジングザク・ブレイヴだ。
ベースとなったザクアメイジングに両腕には右腕にはブレードユニット、左腕にはガンユニットのマーキュリーレヴが装備されている。
これはタツヤが初めて作ったνガンダムヴレイブの物だ。
そして、バックパックの右側にはロングライフルの銃身を流用して制作されたロングキャノン、左側にはロケットランチャーが2基装備されている。
また、バックパックからは稼動アームにより3基つづ計6基のアメイジングウェポンバインダーが装備されており、まるでHi-νガンダムを思わせる。
頭部には小型のバルカンが増設され、腰やバックパックにはハンドガンやヒートナタと言った元のザクアメイジングからの装備や、脚部には予備の装備であるザクマシンガンとヒートホークが付いている。
これまで培って来た技術の全てを注ぎ込んだのがアメイジングザク・ヴレイブだ。
「ザクアメイジングか」
「このザクで君に僕は勝つ。ガンダムに勝つのはザクでないとね」
「言ってろ。勝つのは俺だ」
二人はそれ以上は何も語らない。
その必要はないからだ。
「ガンダムAGE-1!」
「アメイジングザク・ヴレイブ!」
「マシロ・クロガミ」
「ユウキ・タツヤ」
「「出る!」」
2年前の約束の舞台である決勝戦が遂に始まった。
決勝のバトルフィールドはアクシズ。
ファーストガンダムからの宿命のライバルである、アムロ・レイとシャア・アズナブルが最後に戦った場所だ。
「僕はこの日を2年も待った」
バトルが開始され、アメイジングザク・ヴレイブがロングキャノンで先制攻撃を行う。
「なら、後1年待った方がキリが良かっただろうに」
ガンダムAGE-1が砲弾をドッズライフルで撃ち抜く。
「生憎と僕は意外と我慢弱くてね」
マーキューレヴのロングレンジライフルを展開して、ガンダムAGE-1の射程外から狙撃する。
その攻撃をガンダムAGE-1は回避しながら、ドッズライフルで応戦する。
距離が遠い事もあってガンダムAGE-1のビームはアメイジングザク・ヴレイブに当たる事は無いが、射撃の精度は正確である為、タツヤは一瞬の油断も出来ない。
アメイジングザク・ヴレイブの狙撃をかわしながら、ガンダムAGE-1は自分の間合いまで接近すると、ドッズライフルをリアアーマーに付けるとビームサーベルを貫く。
「そうかよ!」
ガンダムAGE-1がビームサーベルを振るい、アメイジングザク・ヴレイブがマーキューレヴのブレードで受け止める。
2機のガンプラは鍔迫り合いとなるが、アメイジングザク・ヴレイブがガンダムAGE-1を弾き飛ばす。
「やるな」
「この日の為に僕は強くなったからね!」
アメイジングザク・ヴレイブがマーキューリーレヴのガトリング砲を展開する。
ガンダムAGE-1はドッズライフルを撃ちながら後退する。
「僕は今まで弱い事を罪だとは思わなかった。無用に力を追い求める位なら、弱くても一歩一歩前に進んでいければ良いと……だけど、思い知ったよ。強さを追い求める事も必要な事なのだと」
タツヤは2代目メイジンの教えである強さを追い求め、勝利のみを追求するバトルを否定した。
だが、去年の世界大会で痛感した。
自身の実力が足りないが故にマシロとの約束を果たせなかった。
「あれか、力はただ力。多く望むのも愚かだけどむやみに嫌うのもまた愚かって奴か。俺には良く分からん事だけどな」
「そう言う事かな。君と肩を並べて戦うにはそれに見合った力が必要なのだとね!」
マシロと対等でいるには、力が必要だった。
それだけの力が無ければ、マシロと対等の立場になる事すら出来ないと言う事を去年の世界大会で思い知らされた。
だからこそ、二代目の思想を否定しながらも、三代目のメイジンとなって力を得ようとした。
「これがその果てに得た力! 全てはこの日の約束の場所の為!」
アメイジングザク・ヴレイブはバックパックの6基のアメイジングウェポンバインダーをパージする。
パージされたウェポンバインダーはそれぞれ、独立した推力を持っており、ファンネルのように独自に動かす事が出来た。
「行け!」
「ちっ!」
ガンダムAGE-1はドッズライフルを連射し、パージされたウェポンバインダーは散開する。
そして、ウェポンバインダーが開閉して中に収納されている武器が顔を出す。
ウェポンバインダーの一つからはガトリング砲であるアメイジングミニガンが出て来る。
別のウェポンバインダーからはザクバズーカが出て来て、同時攻撃を行う。
ガトリング砲とバズーカである為、弾速が違う事もあって回避するのは難しいが、ガンダムAGE-1は回避しながらドッズライフルでザクバズーカが出ているウェポンバインダーを撃ち落す。
「面倒な!」
流石のマシロでも、ガンダムAGE-1で攻撃を全てかわし切る事は出来そうに無い。
ドッズライフルでウェポンバインダーを攻撃するが、アメイジングGNブレイドを出したウェポンコンテナがガンダムAGE-1の背後から迫っていた。
その攻撃をギリギリのところで回避して、ドッズライフルで撃墜する。
「ならよ!」
ガンダムAGE-1は一気に加速してアクシズの方に向かう。
開けた空間ではファンネル系の武器が全方位から攻撃出来る為、閉鎖空間に逃げ込む事で全方位からのオールレンジ攻撃を封じる為だ。
アクシズに逃げ込んだガンダムAGE-1をアメイジングミニガンと対艦ライフルが出たウェポンバインダーがガンダムAGE-1を追撃して来る。
背後からの攻撃を避けながらアクシズの狭い場所に逃げ込み、肩越しにドッズライフルを後ろに向けて連射して、2基のウェポンバインダーを撃ち落す。
だが、ガンダムAGE-1の前方から別のウェポンバインダーが回り込んでいた。
ウェポンバインダーからは折りたたみ式のアメイジングロケットランチャーがガンダムAGE-1に狙いを定めていた。
「回り込んでいたか」
狭い場所に逃げ込んだ時点で、出口に待ち伏せをしている事は予想できた事だ。
ガンダムAGE-1はウェポンバインダーにドッズライフルを放つ。
それによって、ウェポンバインダーは破壊したが、その前にアメイジングロケットランチャーが放たれていた。
狭い場所に逃げ込む事で、ウェポンバインダーの動きを封じていたが、同時にガンダムAGE-1の動きもある程度封じられている。
アメイジングロケットランチャーのミサイルをドッズライフルで迎撃するが、4発の内3発は迎撃できたが、最後の1発は迎撃しきれずにシールドで防いだ。
「やってくれる」
「まだだ!」
ガンダムAGE-1が爆風から抜けると、アメイジングザク・ヴレイブがマーキューレブからビームサーベルを出して切りかかる。
その斬撃を何とかかわして、ドッズライフルで反撃するが、アメイジングザク・ヴレイブは至近距離にも関わらず回避すると、そのままガンダムAGE-1を蹴り飛ばす。
「メイジンの名を受け継ぎ、メイジンとしてここまで戦って来た。しかし! 今日だけはメイジンもPPSEも関係ない! ユウキ・タツヤとして君に勝つ!」
アメイジングザク・ヴレイブはロケットランチャーを出して追撃する。
「それは俺も同じだ! 俺は俺の意志でお前に勝つ!」
アメイジングザク・ヴレイブの攻撃を回避しながら、ドッズライフルで反撃を行う。
2機のガンプラは互いに距離を保ったまま撃ち合いとなる。
射撃武器が一つしかないガンダムAGE-1に対してマーキューレブを初めとした多彩な火器を持つアメイジングザク・ヴレイブの方が射撃戦では優位になっている。
それでも、ガンダムAGE-1は押されながらも被弾する事は無かった。
「弾切れか!」
撃ち合いをしていると、アメイジングザク・ヴレイブのロングキャノンの残弾が尽きた為、ロングキャノンがパージされる。
ロングキャノンをパージした隙をついて、ガンダムAGE-1はドッズライフルを放つ。
その一撃がアメイジングザク・ヴレイブの肩に直撃するが、肩の装甲を破損させる程度に留まった。
「距離を取っての戦いはこっちが不利……なら接近戦にするしかないよな!」
接近戦はマシロが最も得意としている。
接近戦ならば武器の差を埋める事も出来る。
ガンダムAGE-1は接近戦を仕掛ける為に距離を詰めようとするが、思ったよりも加速しない。
「不味いな。地球の重力に捕まったか」
「いつの間に……」
マシロもタツヤも目の前の相手に集中していた為、気づくのが遅れたが、バトルフィールドのアクシズは地球に降下している。
その為、ガンダムAGE-1もアメイジングザク・ヴレイブも地球に近づき過ぎた為に地球の重力に捕まっていた。
「ちっ!」
「重力を振り切る事は出来ないか」
2機は完全に地球の重力に捕まっている為、重力を振り切る事は出来なかった。
すでに大気圏に突入仕掛けている為、無理に戻る事も出来ない。
ガンダムAGE-1はシールドを掲げて大気圏に突入体勢を取る。
アメイジングザク・ヴレイブも近くのデブリを盾にして降下を始める。
ガンダムAGE-1とアメイジングザク・ヴレイブが大気圏に突入すると、バトルシステムが更新された。
今度は地上ステージとなり、地上には巨大なクレーターが出来ている。
「タツヤのザクはどこだ?」
無事に大気圏に突入したガンダムAGE-1だが、シールドが大気圏に突入した時に使い物にならなくなり、手放して地上へと降下して行く。
バトルが続行していると言う事は、タツヤのアメイジングザク・ヴレイブもバトル可能な状態だと言う事だ。
すぐに周囲を索敵するが、その前にアメイジングザク・ヴレイブがロケットランチャーをガンダムAGE-1に撃ち込んで来た。
ロケットランチャーが背後から直撃して、ガンダムAGE-1は体勢を崩しながら、降下する。
ロケットランチャーを撃ち尽くして、アメイジングザク・ヴレイブはロケットランチャーをパージすると、少しでも軽くなる為に両腕のマーキューレブもパージするとスラスターで降下する速度を軽減させる。
その間にもガンダムAGE-1は地上に落ちていく。
体勢を崩しながらも地上に受け身を取りながら落下時の衝撃を逃がしてガンダムAGE-1が先に地上に降りる。
「やってくれたな!」
一足先に地上に降りたガンダムAGE-1はドッズライフルを精密射撃モードにして、降下して来るアメイジングザク・ヴレイブを狙撃した。
アメイジングザク・ヴレイブはザクマシンガンで反撃しながら降下するが、降下中と言う事もあって最低限の回避行動しか取れない。
直撃はしなかったが、ビームに掠りながらアメイジングザク・ヴレイブも地上に降りると休む間もなく、ヒートナタを抜いてガンダムAGE-1へと突撃する。
ガンダムAGE-1もドッズライフルを通常モードに戻すと、左手でビームサーベルを抜いて迎え撃つ。
バトルの場が宇宙から地上へと移り代わり、会場の熱が更に上がって行く。
開始当初こそは去年の世界大会優勝時の発言や、遅刻ギリギリの登場で会場の空気はメイジン一色だったが、もはやどっちが勝つかなど観客達には関係なかった。
ただ、マシロとメイジン、世界最強クラスの二人のファイターが持ちうる全ての実力を出し切って戦う。
そんな二人のバトルに熱くなり、二人に声援を上げている。
「ガンプラの性能で劣って、ファイターの腕でまで劣ってたら立つ瀬ないだろ!」
ガンダムAGE-1がドッズライフルを放ち、アメイジングザク・ヴレイブはかわすと懐に入り込み、蹴り上げる。
それをガンダムAGE-1は腕で受け止めると、アメイジングザク・ヴレイブはそのまま、飛び上がる。
上空からヒートナタを振るいながら降下し、ガンダムAGE-1はビームサーベルを突き上げる。
アメイジングザク・ヴレイブのヒートナタがガンダムAGE-1の肩の装甲を切りつけて、ガンダムAGE-1のビームサーベルがアメイジングザク・ヴレイブのサイドアーマーを突き刺す。
アメイジングザク・ヴレイブはサイドアーマーを破壊されながらも着地すると、体勢を低くしてガンダムAGE-1の足を払おうとするが、ガンダムAGE-1は飛び上がってかわして、アメイジングザク・ヴレイブを蹴り飛ばす。
ギリギリのところでアメイジングザク・ヴレイブは腕でガードするが、そのまま蹴り飛ばされながらザクマシンガンを連射して距離を取る。
後退するアメイジングザク・ヴレイブにドッズライフルを向けるが、ドッズライフルにザクマシンガンの銃弾が直撃して、ガンダムAGE-1はドッズライフルを投げ捨てる。
「それがどうした!」
ドッズライフルが爆発し、爆風をガンダムAGE-1が突き抜ける。
右手にもビームサーベルを持って、距離を詰めるとビームサーベルでアメイジングザク・ヴレイブのザクマシンガンを切り裂くと、もう片方のビームサーベルを突き出す。
アメイジングザク・ヴレイブはヒートナタを使って、ビームサーベルを受け流しながらザクマシンガンを失った右手でヒートナタを貫くと同時にガンダムAGE-1を切りつける。
ヒートナタは間合いが短いと言う事もあって、ガンダムAGE-1はギリギリのところで回避する。
それによって距離が空き、アメイジングザク・ヴレイブは頭部のバルカンを連射する。
「このバトルがいつまでも続けばいいのにね!」
「全くだ。だが、勝つのは俺だ!」
「悪いけど、それを譲る事は出来そうにないね!」
ガンダムAGE-1がビームサーベルを振るい、アメイジングザク・ヴレイブがヒートナタで受け止める。
その体勢のまま、アメイジングザク・ヴレイブがビームサーベルを受け止めているヒートナタとは別のヒートナタを振るい、ガンダムAGE-1はビームサーベルの柄を逆手に持ってヒートナタを受け止めた。
互いに武器を振り抜こうとするが、どちらの武器も振り抜く事は出来ない。
そして、同時に互いを蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた2機は体勢を整えて対峙する。
「そろそろ終わりにしようか」
「そうだね」
アメイジングザク・ヴレイブはガンダムAGE-1との撃ち合いでボロボロになりかけているヒートナタを捨てるとヒートホークを手に取る。
ガンダムAGE-1も片方のビームサーベルを手放すと、残るビームサーベルを両手でしっかりと持って構える。
ガンダムAGE-1とアメイジングザク・ヴレイブは睨みあったまま動かない。
互いにタイミングを見計らっている。
観客達も次が互いに最後の一撃であると、雰囲気から察して息を飲んでこのバトルの結末を見届けようとしている。
そして、同時に地を蹴る。
「マシロ!」
「タツヤ!」
ガンダムAGE-1とアメイジングザク・ヴレイブの距離が一気に縮まり、アメイジングザク・ヴレイブがヒートホークを振り下ろす。
ガンダムAGE-1はアメイジングザク・ヴレイブよりも一歩踏み込んでビームサーベルを突き出した。
アメイジングザク・ヴレイブのヒートホークがガンダムAGE-1の頭部を切り裂き、そのままバックパックのブロードアンテナを切り裂いた。
そして、アメイジングザク・ヴレイブよりも一歩踏み込んでいたガンダムAGE-1のビームサーベルがアメイジングザク・ヴレイブの胴体に突き刺さる。
互いの最後の一撃が終わり、会場はシンと静まり返る。
アメイジングザク・ヴレイブのモノアイから光が消え、両腕が力無くうな垂れて、ガンダムAGE-1にもたれかかるように倒れる。
「そうか……終わったんだな」
「ああ。俺の勝ちだ」
バトルシステムがバトル終了のアナウンスを告げる。
バトルの勝者が決まると当時に観客の声援が一気に湧き上がる。
今まで色々と問題発言の多いマシロだが、タツヤとの全力バトルはそれらを全て吹き飛ばすだけの物があった。
バトルに勝利したマシロは拳を握り締めて高らかに腕を上げて歓声に堪えた。
バトルに負けたタツヤだが、全力を出し切って負けた為、晴れやかな表情でマシロを見ている。
決勝戦の決着が付いて、マシロは過去の世界大会で初めての2連覇を遂げた。
決勝戦が終わった後は表彰式と閉会式で今年の世界大会は終わりを迎える。
決勝の行われたメインスタジアムでは大会スタッフが表彰式の準備で慌ただしく動いていた。
そんな様子をマシロは観客席に座って眺めていた。
決勝中は満員だった観客席も表彰式の準備で、今は観客はいない。
「終わったんだな」
表彰式の準備が進められている光景を眺めて、改めて世界大会が終わったんだと実感していた。
去年は優勝した事に対しては何も思う事はなく、ただ世界大会のレベルもこの程度かと言うだけだ。
だが、今年は色々あった為、感慨深いものがある。
「チャンピオンがこんなところに居て良いのかい?」
「別に良いだろ」
準備を眺めているところにメイジンの衣装から私服に着替えたタツヤがマシロに話しかけて来る。
「そうだね。まずは優勝おめでとう」
「それ、本気で言ってんの?」
「……それはどういう意味だい?」
タツヤはマシロの席に座る。
「別に。俺がお前と同じ立場ならそんな事は言えないと思ってな」
「……君には敵わないな。確かに、僕の中で心の底から君の優勝を祝う事が出来ないと言う気持ちはある」
タツヤがマシロにかけた言葉に嘘はない。
マシロが世界大会を2連覇したと言う事はガンプラバトルの歴史に残る快挙だ。
それを祝う気持ちはある。
だが、同時に友人の快挙を素直に喜べないと言う気持ちもタツヤの中にあった。
「正直、悔しいよ。僕は君に負けた事が」
決勝で全力を尽くした。
それでも負けたが、悔いはない。
悔いはないが、バトルに負けた事は悔しい。
当然だ。全力を出して、本気だったからこそマシロに勝ちたかった。
「嫌になるよ。友達の事を素直に祝ってやれない自分自身の事を」
「それが普通だろ。本気でやって負けて……それを受け止めて当たり前のように相手を心の底から称賛できる奴なんていない。それは諦めだからな」
感情がある以上は、負けた事を受け入れて賞賛しながらも次は勝とうと思う事はあっても、負けを受け入れて相手を称えるだけと言う事は出来る訳が無い。
それが出来ると言う事は相手に対して勝つ事を諦めていると言う事だ。
「俺なら絶対に無理。負けて相手に祝いの言葉をかけるなんてさ。俺なら祝いじゃなくて呪いの言葉をかけるね」
「君らしいな。羨ましいよ。僕も君のようにしがらみとは無縁なバトルをしてみたいよ」
「そうでもないさ」
マシロは今まで自分の好きなようにバトルをしていると思って来た。
だが、実際のところ色々なしがらみを抱えていたと言う事に気づかされた。
それこそ、自分が本当に望んでいた事を忘れてしまう程に。
しかし、決勝だけは違った。
クロガミ一族もネメシスも関係なく、自分の為だけに戦えた。
これまでのマシロのバトルは勝つ為にある程度の力をセーブするのではなく、勝つ為に全てを出し切ったバトルは観客達の心を動かし、マシロに対する印象をも変える程だ。
「君はこれからどうするつもりだい?」
「そうだな……」
今年の世界大会は終わった。
タツヤは来年の世界大会に向けてと言う意味で聞いているが、マシロの頭の中では別の事を考えていた。
「色々とやる事があるんだよな」
「そうか。来年こそは僕がマシロに勝つ」
裏でクロガミグループが動いている事を知らないタツヤからすればマシロの色々と言うのは来年の世界大会に向けての事だと解釈しているようだ。
「来年か……そうだな。それも良いけど、来年と言わず今からやろうぜ」
「今から?」
「まさか、一戦だけで燃え尽きたって事はないよな?」
「……当然」
来年の事はマシロにもどうなるか分からない。
だが、来年の事よりも今、マシロは無性にガンプラバトルがやりたい気分だった。
今まで色々としがらみにより束縛されて来たが、タツヤとの決勝戦で今までの抑えて来た物を抑えきれなくなっていた。
そして、タツヤもまたマシロの誘いを断る事が出来なかった。
決勝戦でマシロと全力でバトルし、結果は敗北に終わったが、タツヤの中でもガンプラバトルに対する熱は収まってはいなかった。
会場ではマシロとタツヤの激闘の決勝戦の熱が残る中、表彰式を閉会式の準備が終わり、メインスタジアムに観客達が再び入っている。
最後と言うだけあって決勝と同様にメインスタジアムは立ち見席まで満員となっていた。
そんな中、セイはレイジを探していた。
決戦が終わり、表彰式の合間に少し目を離すとレイジは消えていた。
流石に自分の世界大会最後のバトルが終わって、決勝戦が終わったからアリアンに帰ると言う事は無いと思い探している。
途中でアイラやラルさんにレイジの事を聞くもどちらも知らないと言い別れて探して貰っている。
「全く……最後の最後まで」
セイは愚痴りながらもレイジを探した。
セイとレイジは3位に入賞している為、表彰式に出なければならない。
二人でエントリーしているが、どちらか片方でも出ていれば問題はないみたいだが、セイはレイジと共に世界大会を勝ち抜き3位と言う成績を収めた。
それは二人で戦って来た結果である為、表彰式には二人で出たい。
「くっそ! また負けた!」
レイジを探しているとレイジの声が聞こえて来た。
その方向に向かうと、どうやらレイジの声は会場内のフリーバトルルームからのようだ。
決勝が終わったが、まだフリーバトルルームは使える。
元々、バトルシステムには使用制限があり、流石に表彰式を前にフリーバトルルームを使うファイターはいないが、レイジが中に居る事は確実だ。
セイはフリーバトルルームの中を覗きこむ。
そこにはやはりレイジが居るが、レイジはマシロとバトルをしていたようだ。
「レイジ! 何やってんのさ!」
「セイ! 良い所に来た! スタービルドストライクは直ってたよな? なら少し貸してくれ! 流石に俺のビギニングはバトルになんねぇ!」
レイジは自分で制作したビギニングガンダムでマシロとバトルしていたようだが、ビギニングガンダムは初心者にしては良く出来てはいるが、完成度はさほど高くはない。
そんなガンプラでマシロに挑んでも勝ち目はないのも当然だ。
「肩慣らしは出来てる。そいつとは結局戦えなかったからな」
マシロの方もスタービルドストライクとバトルする気満々のようで言ったところで止める気配はない。
表彰式の時間が迫っている為、こんなところでバトルをしている時間は無い。
だが、レイジもマシロもやる気満々である為、どうやって説得しようと考えていると、視界にタツヤが入る。
「ユウキ会長からも言ってください!」
この場において最も常識人であるタツヤなら表彰式の時間が迫っていると言う事も分かっている筈だ。
「そうだね。レイジ君、次は僕の番だ」
だが、セイの希望は脆くも崩れ去った。
元々、マシロとタツヤがここでバトルを始めたところにレイジが通りかかり、レイジも混ざって交代でバトルをしている。
始めからマシロとタツヤが抑えられない衝動から始まっている為、タツヤに期待する事が間違いだった。
「どうせだ、3人でバトルすれば良い」
「それは妙案だ」
「面白れぇ!」
「ああもう! どうにでもなれ!」
レイジにマシロ、タツヤまでも表彰式に出るよりも、ここでバトルする気満々でもはや止める手立てのないセイは半ば自棄になる。
今年の世界大会の上位3人の同時バトルはファイターとして興味もある。
セイはレイジにスタービルドストライクを渡す。
3人の準備が整った時点で3人のバトルロイヤル形式のバトルが始まる。
第7回世界大会はマシロが前回から連続して優勝する快挙を遂げた記念すべき年でもあり、同時に上位3組のファイターが皆表彰式をサボると言う異例の年として幕を下ろした。