ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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幕間
幕間4


 イオリ模型店でイオリ・タケシに負けてからのマシロはひたすら強くなろうとした。

 手始めにとにかくバトルをして、合間にガンダムを見ながらバトルの相手として使うガンプラの制作をしながらガンプラ作りの方を勉強した。

 余りにガンプラバトルに熱中している為、キヨタカも心配となり、年の近いシオンをマシロの世話係としてマシロの傍に置いた。

 

「……何で、俺より後に初めてミズキの方が上手い訳?」

 

 世話係となったシオンもマシロに付きあわされてガンプラ作りをさせられたが、すぐにマシロよりも上手く作れるようになってマシロは面白くはない。

 

「私は手先は器用な方だから。それにバトルの方はマシロの方が強いわよ」

「そんなの分かってる」

 

 元々、シオンは大抵の事は平均以上にこなす事はできる。

 その為、制作だけではなくガンプラバトルの実力も短期ながらもある程度の実力となった。

 だが、すでにマシロはその才能を順調に開花し続けて、バトルの腕前はマシロの方が若干上だ。

 

「それが出来たら、もう一回バトルするから」

「はいはい」

 

 今日だけで10回以上もバトルをやっているが、マシロはまだやり足りないらしい。

 そんなマシロを微笑ましく見ながらシオンはマシロに付き合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシロは腕を上げて近所でガンプラバトルで勝利を重ね過ぎたせいで、誰も相手になって貰えなくなると言う事もあったが、シオンだけはマシロのバトル相手となっている。

 シオンの実力もマシロとのバトルの中で磨かれて行き、その辺のファイターよりも手ごたえがある為、マシロも近所で相手にして貰えなくてもバトルの相手に困る事は無かった。

 バトルの相手が自分だけだと言う現状はシオンとしては余り良い傾向ではないと思い、いろんな相手とバトルする事をマシロに提案するも、マシロはシオンが相手になれば十分だと言って外に出る頻度は次第に減って行った。

 そんな状況をキヨタカに報告し、キヨタカもマシロに学校に行くように進めるが、マシロは行きたくないと言って聞かなかった。

 流石にガンプラバトルだけの生活は将来的に危険である為、学校に通う事は強制しなかったが、代わりに家庭教師役をシオンに任せた。

 だが、マシロは面倒だと言って、勉強の時間になると逃げだした。

 マシロを捕まえる事はシオンには簡単な事ではあったが、本人がやる気が無い為、幾ら教えても身に付く事は無い。

 そんな事が続き、シオンもマシロに対して口うるさく勉強をする事を言う為、シオンとのバトルの時間も次第に少なくなり、マシロは一人でCPUを相手にバトルをする時間が増えて来た。

 一人でバトルする時間が増えていくが、マシロはバトルを重ねるごとに自分が強くなって行く事を実感し、強くなればキヨタカが褒めてくれる為、毎日が充実していた。

 しかし、そんな日常はある日突然、終わりを迎えた。

 その日は、久しぶりにキヨタカが時間を作って会いに来てくれる予定があった。

 前に話した時に、次に会う時は一緒にガンプラバトルをやろうと言う約束もした。

 キヨタカの仕事が終わるまで、マシロはCPUを相手にバトルの練習をいつも通り行っていた。

 マシロがバトルしている中、使用人の一人がシオンを呼びに来た。

 バトルに集中しているマシロはそれに気づく事は無いが、シオンは使用人と共に部屋を出て行く。

 少しすると、シオンは部屋に戻って来るが、シオンの様子は血の気が引いていた。

 

「マシロ……」

「何だよ。今良いところなんだから」

 

 バトルをシオンに止められて、マシロは不機嫌になる。

 だが、シオンはそんな事を気にする余裕はない。

 

「さっき、連絡があったわ。総帥が事故に遭われて亡くなったそうよ」

「は? 何言って……」

 

 マシロはすぐにシオンの言葉を理解出来なかった。

 使用人はシオンにキヨタカがこちらに向かう途中で事故に遭ったと言う事を伝えてに来た。

 すぐに事実確認を行うと、それが紛れもない事実だと確認して、シオンはマシロに伝えに来た。

 次にシオンが適当な事を言っているのかとも思ったが、シオンの様子が嘘ではないと語っている。

 

「だって……父さんは……俺とバトルするって」

 

 マシロの頭の中は完全に混乱していた。

 先ほどまではキヨタカに自分の実力を見せようとしていた。

 だが、そのキヨタカは事故に遭って死んだ。

 まだ幼いマシロにはそれを受け止める事などできはしなかった。

 

「すぐにユキト様達が集まるようだから、マシロもすぐに準備を……」

 

 シオンが言い切る前にマシロはふらふらとバトルシステムの前に立つ。

 

「今はそんな事をしている場合じゃ……」

「……そんなには兄貴達に任せておけばいいだろ。俺は忙しんだよ」

 

 マシロは酷く冷めた声でそう言って、中断していたバトルを再開する。

 

「マシロ……」

「もっと強くならないと……でないと父さんに……」

 

 虚ろな目をしながら、マシロはボソボソとつぶやきながら、バトルを続ける。

 シオンは痛々しくて見てはいられなかった。

 あれだけ慕っていた父親を急に亡くしたマシロに対して、シオンは何もする事が出来なかった。

 シオンもまた、突然の事態に動揺しており、シオンもまだ若い為、この状況でマシロに何かを出来る程大人ではない。

 マシロはただ、現実から逃れるようにバトルに没頭し、シオンはただ見ている事しか出来ない。

 それから、マシロはキヨタカのお通夜や葬式、告別式にすら出る事は無かった。

 元々、キヨタカとユキネの愛情を最も受けていたと言う事もあって、この事が兄弟の中でマシロの立ち位置が更に悪くなった。

 クロガミ一族の中でマシロの味方は少なく、最大の後ろ盾であったキヨタカが死亡し、ユキネはこんな時でも行方を暗ませていた事もあってマシロは完全に一人だ。

 それを知るからこそ、シオンはマシロの味方であろうと決意した。

 だが、この日を境にマシロは周囲に心を閉ざし、笑う事は無くなった。

 ある程度の時間が経つにつれて以前のマシロに戻りつつあるが、完全に元のマシロに戻る事もなかった。

 シオンも心を閉ざすマシロにせめて世話係としてはとマシロの望む事を叶え続けた。

 それから数年が経って、マシロはあの日のまま変わる事は無かった。

 遂にはシオンの方も限界を迎え、マシロの元を去る事となり本当に一人となる。

 そして、時間は現在へとたどり着く。

 

「本当に色々あったけど、ようやくここに来る事は出来たよ。父さん」

 

 マシロはキヨタカの墓標の前で今まで人生を振り返った。

 孤児院で生活し、ガンプラと出会った時、ガンプラバトルの才能をキヨタカに見出されてクロガミ一族に引き取られた時、キヨタカと初めてのガンプラをイオリ模型店で買ってイオリ・タケシに敗北した時、そして、キヨタカが事故に遭った時。

 キヨタカが死んだ日からマシロは一度もキヨタカの墓を訪れる事も、線香をあげる事もしてはいない。

 今まではキヨタカが死んだと言う事を受け止めきれずに逃げ続けて来た。

 だが、今年の世界大会を経てマシロはキヨタカの死を受け入れて墓参りに来る事が出来た。

 

「俺さ決めたんだよ。戦うって。俺はもう過ちは……イヤ、あの日の選択を過ちにしない為にも」

 

 マシロは自身の選択でクロガミ一族に来る事でアイラを初めとした孤児院での居場所を失った。

 だが、同時にクロガミ一族の中でも大切な物を貰った。

 だからこそ、マシロはその選択を間違いにしたくはない。

 

「ただのマシロじゃなくて……クロガミ一族のマシロ・クロガミとして戦う。俺なりの戦いで俺の大切な物を守る為に……その為なら何とだって戦える」

 

 今日、ここに来たのは決意表明の為だ。

 キヨタカの墓前で決意表明する事でこの先何があっても、自身の決意が揺らがないようにする為だ。

 

「その為に父さんが守ろうとした物が壊れるかも知れない。それでも俺は行くよ。俺の道を、俺の戦いを……だから見ていてよ。父さん」

 

 キヨタカの墓前で誓いを立てた。

 これでマシロの決意は固まった。

 ガンプラバトルしか能のないマシロなりに色々と考えて来た。

 穴だらけでの計画だが、今のマシロにはこれが精一杯だ。

 その果てにキヨタカが守りたかった物を壊すかも知れない。

 それでもマシロには立ち止まる訳には行かない理由もある。

 決意表明は終わった。

 これでマシロの決意が揺らぐ事は無い。

 後はただ前に進むだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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