ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle60 「集いし戦士達」

 エリカとシオンとのバトルから数日、マシロがPPSEの会長に就任してから約半月が経った。

 マシロが会長になったところでPPSEに大きな動きはない。

 精々、マシロが新会長となった事に対する会見の準備が進んでている程度だ。

 その間、マシロは会長らしい仕事は何一つ行ってはいない。

 マシロは単にクロガミグループの傀儡に過ぎず、会長としての仕事はマシロ同様にクロガミグループから送り込まれて来た秘書たちがマシロの指示として行っている。

 いずれは会長として表舞台に立つ時が来るが今はその時ではない。

 その為、会長と言う職に就きながらマシロは自由に使える時間が多く、その間に色々と準備を進める事が出来た。

 

「準備の方は万端だよ。兄さん」

「そうか」

 

 マシロはPPSE本社ビルの会長室からユキトに定期連絡を入れていた。

 クロガミグループがガンプラバトルをビジネスとして牛耳る為の準備の中でマシロはユキトにとある提案をしていた。

 その準備はマシロに全て任せてある。

 

「これが終わればクロガミグループに逆らうファイターはいなくなる。そうなれば、クロガミグループはガンプラバトルにおいて不動の地位を得る事になる」

「好きにしろ。但し、敗北は許さんぞ」

「分かってるよ。それと、兄さんにも当日は会場に来て欲しいんだ。連中にとってこのバトルはまさにガンプラの未来を賭けたバトル。こちらの御大将がいた方が向こうも盛り上がるからね」

 

 マシロの提案はクロガミグループがガンプラバトルにおいて不動の地位を得る為に、現在世界で活躍中のファイターと相手にバトルする事だ。

 世界レベルのファイターに勝利する事で、クロガミグループの力を見せつける事で、世界レベルのファイターをクロガミグループの傘下に置く算段だ。

 

「良いだろう」

 

 ユキトは用件が済んだ事で一方的に電話を切る。

 電話が終わったところで、マシロは一息つく。

 

「負けんは許さんか……兄貴にとってはこのバトルの勝敗に意味はないんだろうな」

 

 ユキトにとってはバトルに勝って世界レベルのファイターを参加に置く事は、バトルを盛り上げる上でマシロ以外のスターを用意する手間が省ける程度の事でしかない。

 そして、バトルに負けたところで別の手段を用意して、バトルの勝敗自体を有耶無耶にして最終的にクロガミグループが不動の地位を得ると言う結末には変わらないだろう。

 

「結局、兄貴は兄弟である俺達すらも信用してないんだよな。だからこそ、勝機がある」

 

 普通に向かったところで、マシロにはユキトは強大過ぎる。

 しかし、このバトルにおいてユキトは勝敗など気にはしていない。

 ユキトにとってはそれは勝負ではなもなんでもない。

 ただの余興に過ぎない。

 だからこそ、ユキトと直接的に対峙する事無く動けた。

 

「これでやれる事はやった。ここから先は競争か……」

 

 そう言うマシロの視線の先には机に置かれた7通の封筒がある。

 余り時間を空けすぎる訳にもいかない為、これ以上の引き伸ばしは出来ない。

 しかし、マシロの準備は全て整っているとは言い難い。

 

「後はアイツ等次第だ」

 

 すでにいくつもの仕込みは終えている。

 後はマシロでも大した事は出来ない。

 マシロが望む結末を迎えるか否かはもはやその時が来るまで誰も分かりはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 イオリ・セイが学校から帰るといつもの光景が広がっていた。

 

「だから! 今日は私の番だって言ってるじゃない!」

「セイはお前と違って繊細なんだよ! お前のやり方じゃセイが潰れちまう!」

「何ですって!」

「何だよ!」

 

 世界大会からセイの生活は大きく変わった。

 世界大会後、アイラがイオリ家に居候している。

 元々はセイの母親のリン子が独断でアイラをイオリ家で預かる事を決めていたが、父親のタケシが帰って来た時にはあっさりと話しが纏まってアイラはイオリ家に居候する事が決まった。

 同時にレイジもたまにアリアンに帰るものの基本的にイオリ家にいる事が多くなった。

 世界大会でセイはレイジの相棒のビルダーとしてではなく、ファイターとしても上を目指す事を決めた。

 大型アリスタの破壊でプラフスキー粒子の再生産が出来なくなった事で粒子の使用制限が付く事になったが、セイとレイジが世界大会で3位になった事で一時的にイオリ模型店の客の数は増えたものの今ではすっかりと落ち着いている。

 そのお陰もあってイオリ模型店に設置されているバトルシステムを使っての練習時間を取る事が出来た。

 そして、セイの練習にレイジとアイラが自分が教えると名乗りを上げて来た。

 イオリ家の居候となったアイラは初めは戸惑う事もあったが、今ではすっかりと馴染んでいる。

 今まで自分がマシロを初めとして年下と言う立ち位置にいた事もあって、アイラはセイの前ではやたらと年上ぶっている。

 居候をしてすぐの時はマシロと連絡を付けようとしていたが、マシロの連絡先はチーム用の物ですでに使ってはいなかった。

 チームを勝手に抜けた手前、チームからマシロに連絡を取って貰う訳にもいかず、クロガミグループ経由にしてもどこに連絡を入れれば良いか分からない。

 その為、今のアイラにマシロと連絡を付ける手段は無かった。

 だが、今年の世界大会同様に特別枠での参加が出来る。

 来年の世界大会まで待てば会場でマシロを探す事も出来る為、今は焦らずにチャンスを待つ時期としている。

 一方のレイジもセイにガンプラバトルを教えるのは自分しかいないと言い、アイラと日夜どちらがセイにバトルを教えるかで口論が絶えなかった。

 

「なら勝負だ!」

「上等よ! 今日も負かしてあげるわよ!」

 

 レイジとアイラは喧嘩しながらもガンプラを取りに言ってバトルのブースに入る。

 二人が口論となった時、ガンプラバトルで決着をつける事が多い。

 今のところの勝率は五分と言ったところだ。

 それによってセイはレイジとアイラの二人からガンプラバトルを教えて貰っている。

 しかし、問題があった。

 レイジはバトル中に考える事はセイに任せて勢いと直感でバトルするタイプだ。

 その為、レイジの教え方は自分の感覚を基本に感覚的な事が多い為、イマイチ伝わらない。

 アイラはアイラで、マシロからしかバトルに関しては教えて貰っていない。

 マシロがアイラにやらせた練習はアイラの実力に合わせている。

 セイとしてもアイラの練習の意図は理解出来るが、今のセイの実力ではついて行く事が出来ずに練習にならない。

 どちらの練習も余り意味がない事もあって、レイジとアイラは相手のやり方はセイには合っていないと言って自分こそが教えるに相応しいと言って聞かない。

 二人がセイに教えようとしているのは純粋な好意であると言う事が分かっている為、断りきれないでいる。

 

「あらセイ、帰ってたの。セイに手紙が来てるわよ」

「手紙?」

「そう言えばそうだったな」

 

 リン子の言葉にさっきまで喧嘩していたレイジが戻って来る。

 セイが学校に行っている間にセイとアイラ充てに手紙が届いていた。

 封筒が同じだった事から送り主も同じと考えてセイが帰って来るまでアイラも開けるのを待っていた。

 

「PPSEから? 何だろう」

 

 送り主はPPSEとある。

 PPSEから何かが送られて来る心当たりは無い為、首を傾げながらも封筒を開けて中を確認する。

 

「何これ?」

「日時と……新幹線のチケット?」

 

 封筒の中には日時と場所の書かれた紙と新幹線のチケットが入っているだけだ。

 セイとアイラ充ての封筒の中身の違いはセイの方には新幹線のチケットが2枚だと言う事だ。

 

「この場所って世界大会の会場だよね。何でPPSEが僕達をこんなところに?」

「それに何で私がここにいるって知っている訳?」

 

 日時と場所以外にはPPSEが送って来たと言う事以外は分からない。

 そして、何よりアイラ充ての封筒がイオリ模型店に来る事がおかしい。

 アイラはチームに何も言わずに抜けている為、アイラ充てに届くとならば、ネメシスの方に行くのが自然だ。

 セイ充ての封筒と一緒に届いたと言う事は向こうもアイラがここにいると言う事を知っていると言う事だ。

 だが、セイの方に入っていたチケットが2枚と言う事は恐らくはレイジの分なのだろう。

 しかし、セイ充ての方はレイジの名は無く、セイを経由してレイジを呼ばせようと思われる。

 

「とにかく行って見れば何か分かるだろ」

「あからさまに怪しいじゃない」

「取り合えず、明日学校でユウキ会長に聞いて見るよ」

 

 PPSEがどのような理由で自分達を呼び出したのかは分からない。

 色々と謎が残るが、まずはPPSEとも関係の深いタツヤに聞いて見る事が一番の近道でもある。

 タツヤは世界大会後にメイジンを襲名する為に休学していた学校に復学している。

 話しを聞くタイミングは幾らでもある。

 これ以上、この事で話したところで進展は無く、レイジとアイラは今日はどちらがセイにバトルを教えるかを決める為にバトルを始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイがタツヤに封筒の事を聞いたが、進展はタツヤにも同じ物が送られて来たと言う事、まだ公になっていないが、タツヤがメイジンを解任された事程度だった。

 タツヤもアランに連絡を取って、メイジン解任の事や封筒の事を聞こうとしたが、アランに連絡がつく事は無かった。

 それから数日が経過し、タツヤは静岡に向かおうとしていた。

 メイジン解任から始まり、自分達の知らないところで何かが動いていると言う事をタツヤは感じていた。

 それが何かを確かめる為にも、あえて誘いに乗る事にした。

 本来ならば、自分一人で行こうとも考えてたが、セイもレイジも自分達も無関係ではないと言ってアイラも含めて4人で向かう事となった。

 

「よぅ」

「君は……」

 

 新幹線の駅に向かう為に屋敷から車で向かおうとすると、屋敷を出てすぐのところでエリカが車を止めた。

 タツヤも直接話した事は無いが、エリカの事は知っている。

 

「出かけるところ悪いが、少し話しがある」

 

 時間には余裕がある為、タツヤは話しに応じる事にした。

 タツヤは車から降りると、エリカと共に車から少し離れる。

 

「悪いな」

「いや、それで僕に何か?」

「短答直入に言う。マシロを助けてやって欲しい」

「どういう事なのか詳しく聞かせて欲しい」

 

 エリカの用件はタツヤが想像もしていない話だった。

 マシロとは世界大会以外連絡も取り合っていない。

 いずれは世界大会で戦う事になるまで、互いに腕を磨き合おうと約束した訳ではないが、タツヤは漠然とそう思っていた。

 エリカはマシロとホワイトファングでの一件を掻い摘んで話す。

 

「まさか……そんな事になっていたとはね」

 

 用件も去る事ながら、内容もタツヤの予想を遥かに上回っていた。

 マシロがPPSEの新たな会長となり、ガンプラバトルをクロガミ一族が支配する。

 そんな事を予想出来る訳もない。

 

「アイツも多分、本意じゃないんだと思う」

 

 口ではクロガミグループのやろうと肯定していたが、去り際にポツリと零した言葉は、マシロが自分の行いについて自覚していると言う事が分かった。

 

「アタシの親もそれなりの地位だからクロガミグループの噂ってのは多少は耳にしてる。今のアイツは自分じゃどうしようもない状況に置かれて流される事しか出来ないんだと思うんだよ」

 

 クロガミグループの力は強大だ。

 マシロが幾ら足掻いたところで意味はない。

 マシロ自身は何も出来ずに流されるしかないとエリカは考えていた。

 

「だから頼む。マシロを助けてやって欲しい。アタシやミズキさんの言葉はアイツには届かない。届くとしたら後はアンタだけだ」

 

 マシロは全てを拒絶した。

 エリカの言葉もシオンの言葉もマシロを動かす事は出来なかった。

 だが、シオンは自分達で駄目なら後はタツヤしかいないと言ったため、エリカはタツヤにわざわざ会いに来た。

 タツヤは周囲に心を開く事のなかったマシロが唯一、関心を持った相手だからだ。

 

「正直な話し信じられない事も多い。だけど、僕は君の話しを信じるよ」

 

 マシロがPPSEの会長になった事等、公になっていない事も多く、話しも突拍子もない。

 だが、PPSEで何かが起きている事はタツヤも良く分かっている。

 そして、何よりマシロに何かが起きていると言う事を信じるになる確証をタツヤは持っている。

 

「僕がマシロを救えるかは約束は出来ない。でも、やれることはやって見ようとは思っている。今はこんな事しか言えない」

「それで十分だよ。アイツの事は任せた」

 

 エリカの言葉を疑っている訳ではない。

 だが、事態の全貌が見えていない為、それ以上の事は何も言えない。

 エリカの方もマシロの事をタツヤに伝える事が出来れば十分だ。

 エリカに見送られてタツヤはセイやレイジ達と共に世界大会の会場のある静岡へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タツヤ達は何事も無く、世界大会の会場に到着した。

 会場は開催期間の盛り上がりのかけらもないが、到着してすぐにPPSEの職員に案内されてメインスタジアムの中に通された。

 案内する職員も、控室に案内するように指示をされた事以外は何も知らず、やがてはメインスタジアムの中の出場選手用の控室に案内された。

 

「セイはん達も呼ばれたんですか?」

「マオ君!」

「それでフェリーニたちまで」

 

 控室にはタツヤ達以外にも呼び出されたマオやフェリーニ以外にもルワンにレナード兄弟もいた。

 タツヤ達を含めて全部で7組のファイター達だ。

 

「これで全員か? で、何で俺達がPPSEに呼び出されるか分かる奴いるか?」

 

 フェリーニの問いに誰も答える事は無い。

 共通点と言えば、セイとレイジ以外はメイジンがタツヤだと気付いていないが、全員に共通しているのは今年の世界大会のファイナリスト達と言う事だが、ファイナリスト全員ではない。

 他にも呼び出されているファイターがいるかも知れない為、控室で待つしかない。

 タツヤ達が来て少しすると、ドアが空いてステージ衣装のキララが入って来る。

 

「キララちゃん! まさかキララちゃんも?」

「違うわよ。私は主催者側」

 

 どうやらキララは皆のように呼び出された側ではないらしい。

 

「詳しい説明は後からされるけど、なんかPPSEが世界レベルのファイター達を相手にバトルのイベントをやるみたいなのよ。で、私は実況の為に呼ばれたって訳」

 

 PPSEがイベントを開催すると言う事は分からない話しでもない。

 だが、未だにプラフスキー粒子の再生産に関わる発表がない事や、事前に連絡も無しにイベントを開催すると言うのは不自然だ。

 

「私としてはこのまま仕事を成功させれればいいんだけど……ちょっと不味い話しを聞いちゃったのよ」

 

 先ほどまでとはうって変わり、キララは真剣な表情をする。

 

「さっき廊下でチャンピオンが変な仮面とマントを付けたのに言ってたのよ。このバトルで世界レベルのファイター達を完膚なきまでに叩き潰すって。そしてガンプラバトルをクロガミ一族で支配するって」

 

 チャンピオンと言うのはマシロの事を指している事は説明するまでもなかった。

 だが、マシロの話していた内容は穏やかではない。

 そして、タツヤはエリカから聞いた内容と合わせるとエリカの話しの信憑性が出て来る気がした。

 

「とにかく、私としてはアンタ達がボッコボコになっても構わないけど、用心はしなさいよね」

 

 キララはそう言って出て行く。

 キララとしては雇い主であるPPSEの思惑通りに言った方が良いのだろうが、話しが話しだけに警告に来たようだ。

 尤も、ガンプラバトルを支配するなど突拍子もない事で、どう反応すれば良いのか困りものだ。

 その後、PPSE側からバトルのルールが一方的に通達された。

 

「ルールを要約するとだ。一対一でバトルして勝ち数が多い方が総合的に勝利するって訳か」

 

 提示されたルールをフェリーニが要約する。

 ルールは至ってシンプルだ。

 各ファイターがバトルを行い7回のバトルの中で勝った数が多い方が最終的に勝利となる。

 バトルする順番は自由だが、各ファイターは1度しかバトルが出来ない。

 

「少し拍子抜けな気もするけど……いきなりこんなバトルをして来て一体何が狙い何だ」

 

 タツヤの疑問は最もだ。

 いきなり集めてルールだけを提示して来ているが、バトルの趣旨すらも明かされていない。

 

「そんな物は始まれば分かる事だ」

 

 レナード兄弟の兄マリオが一蹴する。

 

「つってもな。向こうの狙いが分からん以上は俺達だって動きようがないぞ」

「ビビったんなら逃げれば良いだろ。今のところは強要はされてないんだしよ」

 

 レナード兄弟の弟フリオの言葉に一同は顔を顰める。

 

「そんな事はどうでも良いわよ。さっきの話しが本当ならマシロはここにいるんでしょ。私はマシロに用があるわ」

 

 今までは接触する機会が無かったが、アイラにとってはマシロと接触できる機会が訪れたと言う事でもある。

 PPSEの思惑よりもそっちの方がアイラにとっては重要だ。

 

「確かにね。バトルとなればマシロは必ず出て来る。彼の相手は僕に任せて欲しい」

「ちょっと待ちなさいよ! セイの先輩だか知らないけど、私がマシロの相手をするのよ!」

 

 キララがマシロを目的していると言う事はマシロはPPSE側として出て来るだろう。

 タツヤにとってはバトルを通じてマシロの真意を確かめる機会でもあるが、アイラにとってもマシロとバトルする機会でもある。

 

「悪いけど、君とマシロとの間にどんな因縁があるかわかないけど、これは誰にも譲る事は出来ないな」

 

 タツヤとアイラはマシロと戦わなければいけない理由がある。

 どちらも譲れないだけの理由だ。

 

「僕はかつてマシロとチームを組んでいた時がある。本当はあの時、気づくべきだったんだよ。彼の抱えている物に……」

 

 以前にタツヤはマシロと共に大会に出た時がある。

 その時の決勝戦でマシロは負傷しながらもバトルを行った。

 あの時は相手が意図的にマシロを負傷させてバトルを有利に運ぼうとしていた事もあって卑劣な手段には屈しない為にもとマシロと共に戦った。

 一重にガンプラへの愛がマシロを動かしたのだと思っていたが、今になって思えばそう思おうとしていたのかも知れない。

 例え、命に係わる程の重傷を受けていたとしてもマシロはバトルをしていただろう。

 そこまで行けば愛を通り越している。

 一度はマシロに対して疑念を感じたが、ガンプラに対する愛は本物だと知った時点でそれ以上踏み込む事をタツヤはしなかった。

 

「もしもの事は考えても仕方が無いと言う事は分かってる。でも、あの時、僕がもっと踏み込んで理解し合う事が出来ればマシロを救えたかも知れない。だから、マシロと戦うのは絶対に譲る事は出来ない」

 

 タツヤに言葉に一同は黙り込む。

 普段のタツヤを知るセイが一番驚いているだろう。

 

「私にだって……」

「止せよ。アイラ、こいつは男同士の問題だ。女が口を挟むな」

 

 タツヤの事情は理解出来るが、アイラはアイラの事情がある。

 だが、レイジがアイラを止める。

 アイラは不服そうにするが、周囲の空気はマシロの相手はタツヤに任せるとなっている。

 

「どうせ、アイツとのバトルは捨てるんだ。好きにすれば良い」

 

 そんな空気をフリオがぶち壊す。

 

「当然だろう。ルール上、こちらがマシロ・クロガミに勝つ必然性はない」

 

 マリオもさも当然かのように言う。

 ルールでは7回のバトルで勝ち数が多い方が最終的に勝利となっている。

 つまりは4勝すれば良い。

 一人が2度出れない為、マシロに負けたとしても他で4勝すれば問題はない。

 これがチーム戦や勝ち抜き戦であれば、どこかでマシロを倒さなければならない。

 尤も、バトルするファイターは事前に決める必要が無い為、向こうが3勝した状態で出て来られた場合はどうしようもない。

 

「アイツは異常だ。無理に勝つ必要はない」

 

 レナード兄弟は世界大会でマシロと戦った。

 その時にマシロは自らのガンプラがどこまで壊れようとも構わなかった。

 それ自体は決勝トーナメントまで勝ち進んだファイターなら少なからず持っている。

 自身のガンプラの強さを証明して世界大会で優勝する為には必要な覚悟だ。

 だが、マシロは一般的なファイターとは違うように感じた。

 そんなマシロに無理に勝つ必要はどこにも無い。

 

「確かにね。僕はバトルを通じて彼と対話を試みるつもりだ。だから勝つ必要はないと言う意見には賛成するよ。だけど、本気で勝つ意志が無ければ彼と対話する事は出来ないと思っている。僕も彼もファイターだからね。ファイター同士が分かり合う為には本気でぶつかり合わないと分かり合う事は出来ない」

 

 タツヤにとってはバトルの勝敗自体に大きな意味はない。

 あくまでもバトルでマシロの本心を探る為にマシロとバトルする。

 しかし、マシロは常に勝つ為にバトルをして来ている。

 マシロとバトルを通じて対話し、マシロの心を知るにはマシロに勝つつもりで挑まなければならない。

 

「勝手にしろ」

 

 レナード兄弟もタツヤがどんな思いでマシロとバトルするかなどはどうでも良い為、それ以上は何も言わない。

 そして、少しすると一方的に開始が告げられる。

 

 

 

 

 

 

 バトルは世界大会と同じ大型のバトルシステムで行われる。

 互いが控室で待機し、バトルを行うファイターだけがバトルシステムのあるホールに出ると言う形となっている。

 直前まで相手側のファイターが分からない為、一見フェアに見えるが、PPSE側は相手を呼び出している事もあって7人のファイターの情報は持っているが、タツヤ達はマシロがどこかで出て来る事以外は分からない。

 その為、出来る手は時間のギリギリまで粘って相手のファイターが先に出て来てから誰が行くかを決める事くらいだ。

 PPSE側もその事は十分に予測して来ると思っていたが、PPSE側の1戦目でファイターはすぐに出て来た。

 

「おいおい……何だ。あのコスプレ野郎は」

 

 PPSE側の最初のファイターはいきなりマイスターだ。

 キララがマシロが変な仮面とマントの人物を話していたと言う事は知っているが、実際に本物を目の前にすると呆れるしかない。

 

「挑戦者諸君。この最強のファイターたる私に挑む哀れなファイターは誰かね?」

 

 マイスターがそう言う。

 その声は控室のスピーカーから届いていた。

 その瞬間に誰もがマイスターの中身を思い浮かべた。

 

「まさか、いきなり彼が出て来るとはね」

 

 そう言ってタツヤが立ち上がる。

 誰もがPPSE側の切り札であるマシロは戦局を決める重要なタイミングで出て来ると考えていた。

 初戦も流れを作る為には重要ではあるが、ここでマシロと投入して流れを作っても最後まで流れを維持する事は難しい。

 多少は面を食らったが、マシロが出て来る前に勝負をつけてしまえばマシロと戦う機会を逃してしまうよりかはマシだ。

 事前にマシロが出て来た場合はタツヤに任せると決まっている為、タツヤが控室を出て行く。

 アイラだけは未だに納得がし切れていないのか、不満そうだったが、タツヤにも譲れない思いがある。

 申し訳ないと思いつつもタツヤは世界大会からさほど時間が経つ事無くマシロと対峙する事となる。

 

「久しぶり」

「何の事かな?」

 

 マシロはあくまでもシラを切る気らしい。

 

「君の事は少し聞いてる。本気か?」

「私は常に本気だよ」

「分かった」

 

 マシロの言葉がどこまで本気かは分からない。

 そして、言葉を交わしたところでマシロが本心を告げる事は無いと確信する。

 そうなればもはやバトルしかない。

 タツヤはGPベースをセットして持って来たガンプラをバトルシステムの上に置く。

 そのガンプラを見て、控室のセイ達だけでなく、マシロも仮面の下で驚いていた。

 タツヤのガンプラはメイジンとして使っていたケンプファーアメイジングでもアメイジングエクシアでもない。

 決勝戦で使ったザクでもない。

 マシロが決勝戦の為に用意していたガンダムAGE-2をベースにしたガンダム∀GE-2の完成系だった。

 

(何でタツヤが……またか)

 

 世界大会では様々な事情が重なりプロトタイプを一度だけ使って使う事のなかったガンダム∀GE-2だが、大会後にマシロはきちんと完成させていた。

 両肩に大型のスラスターを増設し、腰にはカナタが制作した日本刀とビームサーベルが2基、両腕にはビームソードの展開が可能なシールドライフル、右手にはドッズランサーとマシロの得意とする高速白兵戦を重視したガンプラとなっている。

 ベースとなったガンダムAGE-2が高速飛行形態であるストライダー形態への変形が可能な可変機と言う事でガンダム∀GE-2もストライダー形態への可変機構が残されており、両足のふくらはぎにはストライダー形態で主に使われるカーフミサイルが内蔵されている。

 完成後にすぐにガンダム∀GE-3を制作している為、保管してあった筈のガンダム∀GE-2だが、どうやらタツヤの手元に渡っていたらしい。

 そして、こんな事をするのは一人しか思いつかない。

 シオンやエリカの事で問い詰めては見たが、のらりくらりとはぐらかされてしまったが、二人の事以外でもユキネが勝手な事をしていたと言う事だ。

 

「このガンプラは君が世界の頂点を取る為に作ったガンプラ。いわば君の分身をも言えるガンプラだ。僕はこのガンプラで君と戦う。そして、君の本心を見極めさせて貰う!」

 

 タツヤ髪を掻き上げて戦闘体勢を取る。

 このバトルにおいてタツヤは自分のガンプラではなく、マシロが作ったガンダム∀GE-2でバトルをしようとしている。

 ガンダム∀GE-2はマシロが世界大会で優勝する為に制作したガンプラだ。

 マシロの本心を探る為のバトルでこれ以上の適任は無い。

 PPSEから届けられた封筒の他にガンダム∀GE-2の入った小包を受け取った時は訳が分からなかったが、今となっては誰が何の理由で送って来たかはともかく、このガンプラでマシロと対峙する為に送られて来たのだと解釈していた。

 

「やって見ろよ」

 

 マシロもGPベースをセットしてガンダム∀GE-3を置く。

 両者の準備が完了し、世界大会の決勝戦を争ったタツヤとマシロのバトルが開始された。

 

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