ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
タツヤとマシロ、世界大会決勝戦で激闘を繰り広げた2人のファイターが再び激突する事となった。
バトルフィールドは月面だ。
月面は地上ステージに比べると重力が小さい為、ガンプラが軽く感じるが宇宙ステージと比べるとガンプラが重く感じる。
バトルが開始されてタツヤは軽く操縦桿を動かす。
するとガンダム∀GE-2はすぐに反応して危うくバランスを崩しかけた。
「反応が敏感過ぎる」
元々ガンダム∀GE-2はマシロが自分の反応速度に合わせている。
その為、ガンダム∀GE-2は非常に操縦性に難がある。
「しかし! 使いこなして見せる!」
タツヤはガンダム∀GE-2を一気に加速させた。
操作性は悪いが、そこをマシロは自身の技術で補うつもりだ。
ならば、マシロのライバルを自認するタツヤとしてはマシロが扱えるのであれば自身もまた扱えなければならない。
扱い切れなければ操作技術でマシロに劣っていると言っているような物だからだ。
「モビルスーツ形態でこの加速性……流石と言ったところか」
マシロの戦闘スタイルは高速白兵戦。
ガンダム∀GE-2はガンダムAGE-2をベースにしている為、ストライダー形態に変形する事が出来る。
当然、ストライダー形態の方が機動力は上がっている。
にも関わらず、ガンダム∀GE-2はモビルスーツ形態で並の可変機の機動力とは比べものにならない。
「アレがマシロの新しいガンプラ。何と禍々しい」
加速してすぐにタツヤはマシロのガンダム∀GE-3を補足した。
ガンダム∀GE-3はまるでタツヤとガンダム∀GE-2を待ち構えていたかのように月面で立っている。
そして、シグマシスドッズキャノンをガンダム∀GE-2に向けて放つ。
「この距離でこの威力……だがしかし!」
ガンダム∀GE-2はストライダー形態に変形する。
そして、ガンダム∀GE-3に一直線に向かって行く。
先ほどまでの約3倍相当の速度のガンダム∀GE-2は瞬く間に距離を詰めると速度に乗った状態でモビルスーツ形態に戻るとドッズランサーを突き出す。
「この程度で臆する訳には行かない!」
ガンダム∀GE-2の攻撃をガンダム∀GE-3は正面から受け止める。
勢いに乗ったガンダム∀GE-2の攻撃を簡単に止められる訳もなく、ガンダム∀GE-3は後ろに衝撃を逃がして受け止めた。
「流石だ。このガンプラの攻撃を熟知している」
ストライダー形態で勢いをつけての攻撃はガンダム∀GE-2においては基本的な攻撃の一つだ。
それ故にガンダム∀GE-2を制作したマシロなら攻撃のタイミングは知っている。
タツヤも今の攻撃においては単純に突っ込んでいる。
これが他のファイターならば、その速度に圧倒されるところだが、マシロならば圧倒される事無く攻撃のタイミングを見切って勢いを殺す事など造作もない。
この一撃はガンダム∀GE-3を倒す物ではなく、確認だった。
そして、この攻撃のタイミングを完全に見切った上で衝撃を殺して見せたマイスターの中身はマシロしか考えられない。
ガンダム∀GE-2はガンダム∀GE-3を振り払って一度距離を取って仕切り直す。
「君に聞きたい事がある!」
ガンダム∀GE-2はドッズランサーに内蔵されているドッズガンで牽制しながら距離を詰める。
対するガンダム∀GE-3はシグマシスドッズキャノンを連射する。
「君たちはこのバトルに勝利してガンプラバトルを支配すると聞いている。本気なのか!」
ガンダム∀GE-3の攻撃を掻い潜り、懐に這い込んでドッズランサーを突き出す。
マシロは何も答えずに攻撃をかわして、距離を取る。
「答えてくれ! マシロは本当にそんな事を望んでいるのか!」
ガンダム∀GE-2は左腕のシールドライフルからビームソードを展開して追撃する。
機動力はガンダム∀GE-2に分があり、すぐに距離を詰めてビームソードを振るう。
それをガンダム∀GE-3はシグマシスドッズキャノンの砲身で受け止めた。
「そんな事が君がやりたかったバトルなのか!」
タツヤは叫ぶがマシロは答えない。
タツヤの問いの答えを示すようにガンダム∀GE-3はガンダム∀GE-2を蹴り飛ばす。
ガンダム∀GE-2は月面に叩き付けられ、ガンダム∀GE-3が追い打ちのシグマシスドッズキャノンを撃ち込む。
「くっ!」
ガンダム∀GE-2は仰向けの状態で肩のスラスターを使って何とか回避する。
「マシロ!」
体勢を整えて、再度ガンダム∀GE-3に接近してドッズランサーを突き出すが、ガンダム∀GE-3はギリギリまで引きつけてシグマシスドッズキャノンを放つ。
ガンダム∀GE-2はストライダー形態に変形して急加速する。
「本当に君は満足なのか! これが君のやりたかったガンプラバトルなのか!」
「いずれガンプラバトルは衰退期を迎える事になる。そうなる前にガンプラバトルをクロガミグループが手中に収めて管理する事でガンプラバトルは存在し続ける」
「だからと言って!」
距離を取ってガンダム∀GE-2はモビルスーツ形態に変形すると左腕のシールドライフルを撃つ。
「いずれ来るかも知れない未来の為にガンプラバトルを支配する! そんなバトルに何の意味がある!」
「さぁな。だが、終わるよりかはマシだ」
ガンダム∀GE-3は攻撃を回避しながらシグマシスドッズキャノンを放つ。
「君はそんな事を本気で言っているのか!」
ガンダム∀GE-2のビームソードをかわしてガンダム∀GE-3がシグマシスドッズキャノンで攻撃する。
それを、左腕のシールドライフルで受けるがシールドライフルは粉々に破壊されてしまう。
「お前達が正しいと言うのなら証明して見せろ。俺に勝ってな」
「分かった……こんな形で君に勝つのは僕としても本意ではない。だが、勝たせて貰う!」
ガンダム∀GE-2は一気に加速して接近する。
ドッズランサーの一撃をガンダム∀GE-3はシグマシスドッズキャノンで逸らす。
だが、ガンダム∀GE-2はその状態から強引に腰の刀を抜く。
刀はそのままガンダム∀GE-3のシグマシスドッズキャノンの砲身に切り込みを入れた。
「ちっ!」
すぐにガンダム∀GE-3は切り込みの入ったシグマシスドッズキャノンをパージする。
パージしてすぐに刀を蹴り飛ばして残ったシグマシスドッズキャノンをガンダム∀GE-2に密着させる。
ゼロ距離からの砲撃が来る前に、ガンダム∀GE-2は砲身を蹴り上げて防ぐ。
ゼロ距離攻撃を防いだガンダム∀GE-2はストライダー形態に変形して距離を取る。
「君が歪まさせられているのなら、僕は君のガンプラでその歪みを破壊する!」
距離を取ったガンダム∀GE-2更に加速する。
ガンダム∀GE-3はシグマシスドッズキャノンで応戦するが、加速するガンダム∀GE-2を捕える事は出来ない。
月の重力を完全に振り切って、バトルフィールドを最大に使ってガンダム∀GE-2は加速する。
バトルフィールドの端でターンしたガンダム∀GE-2はガンダム∀GE-3へと向かって行く。
「全力の一撃で破壊して見せる!」
加速するガンダム∀GE-2はバーストモードが起動して青白く発光する。
それにより更にガンダム∀GE-2は加速して行く。
「なら最強の一撃でそれすらも破壊してやるよ」
ガンダム∀GE-2と共鳴するかのようにガンダム∀GE-3もバーストモードが起動し青白く発光する。
ガンダム∀GE-3は右腕のシグマシスドッズキャノンをガンダム∀GE-2に向ける。
そして、バーストモードで威力を底上げしたシグマシスドッズキャノンが放たれる。
圧倒的な火力のシグマシスキャノンにガンダム∀GE-2は正面から突撃した。
ストライダー形態で、勢いをつけて更にバーストモードを使ったガンダム∀GE-2はビームを突き抜けながらガンダム∀GE-3へと突撃して行く。
「ビームを正面から……この程度の事出来て当たり前か」
ビームを正面から突破するガンダム∀GE-2だが、ビームを直接ぶち抜いているドッズランサーの強度が次第に限界を迎えて皹が入って行く。
「マシロを止める為に僕に力を貸してくれ! ガンプラァァァァァ!」
それでも尚、ガンダム∀GE-2は止まる事は無い。
遂にガンダム∀GE-2のドッズランサーの槍が粉々に粉砕するが、ギリギリのところでガンダム∀GE-2はガンダム∀GE-3へと体当たりを行う。
ガンダム∀GE-3と共にガンダム∀GE-2は月面に激突した。
「まだだ!」
「終わってない!」
月面に突撃したガンダム∀GE-2は何とか立ち上がるが、特殊プラスチックで出来ているのにも関わらず、ガンダム∀GE-2はボロボロだ。
すでに満身創痍だが、ガンダム∀GE-2は立ち上がって、ガンダム∀GE-3を迎え撃とうとする。
「……マシロ?」
激突時に舞い上がった砂煙が収まらない中、ガンダム∀GE-3が立ち上がる気配はない。
砂煙に紛れて仕掛けて来る可能性を考えてタツヤは気を緩める事無く、周囲を警戒する。
少しすると砂煙が収まって行き、ガンダム∀GE-3の姿を見る事が出来た。
ガンダム∀GE-3は月面に仰向けに倒れており、機体の至るところを失っている。
マシロが動かそうとしているのか、ガンダム∀GE-3は立ち上がろうと足掻いているように見える。
強引に体を起こそうとしたのか、ガンダム∀GE-3の膝と肩の関節部が壊れて、起き上がろうとしていたガンダム∀GE-3は地に伏した。
それと同時にバトルシステムがバトルの終了のアナウンスを入れる。
「……マシロ」
この数年間、マシロに追いつく事を目標にマシロに勝ちたいと心の底から望んだ。
ようやく、マシロに勝つ事が出来たが、タツヤはマシロに勝った事に対する高揚感は全く感じなかった。
バトルに勝ったと言っても、マシロもタツヤも本来のガンプラを使ってのバトルではない。
これはタツヤが望んだバトルでは無い。
そんなバトルに勝ったところで意味はない。
望まぬ勝利に虚無感を覚えているタツヤが気が付いた時にはすでにマシロはその場から姿を消していた。
バトルを終えたマシロはメインスタジアムの通路を歩いていた。
だが、マシロの歩いている通路はクロガミサイドの控室の方ではない。
「まさか、君が負けるなんてね」
「そうでなければ困る」
タツヤが連絡を取ろうとしていたが、連絡の付かなかったアランが、そう言う。
マシロは特に驚く事は無かった。
「タツヤが使っていたのは∀GE-2だからな。完成度では∀GE-2の方が上だからな」
「そう言う事にしておくよ」
ガンダム∀GE-2とガンダム∀GE-3では完成度ではガンダム∀GE-2の方が上だ。
その上、マシロの得意とする高速白兵戦を重視したガンダム∀GE-2と苦手としている砲撃戦を重視したガンダム∀GE-3では相性が悪い。
だが、2機のガンプラの完成度の差は多少でバトルの勝敗に大きな影響が出る程ではない。
ガンダム∀GE-2も操作性には難がある為、ガンプラの性能と相性だけで負けたと言う訳ではない。
「後、俺は負けてないから。バトルにおいて真の敗北とは勝つ事を諦めた時だからな」
マシロは仮面をつけている為、表情は見えないが、少し拗ねているようだ。
マシロにとって敗北とは勝つ事が出来ないと諦めた時で、諦めない限りは負けではないらしい。
「そんな事よりも、こんなところで油を売っている時間は無いはずだが?」
「そうは言ってもね。君が無茶振りするからね。少しは妥協をしてくれると助かるんだが」
「ヤダ」
「だろうね」
アランは自分で言いながらもマシロの答えが分かっていた為、予想通りの答えが返って来て肩を竦める。
タツヤがアランに連絡が出来なかったのは、マシロにこき使われていたからだ。
「だからこそやりがいがあるんだけどね」
「俺もここからは自由に動ける」
「助かるよ」
マシロが認めていなくても、客観的な事実としてマシロはバトルに負けている。
そんなマシロは控室に戻る事など出来る筈もない。
だが、マシロにとっては好都合だ。
負けた時点で、控室にいるユキトにとってはマシロに価値はない。
その為、ここからはマシロがどこに居ようとも気にも留められないだろう。
マシロが主催したバトルの初戦、タツヤ対マシロはタツヤの勝利と言う結果から始まった。