ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

70 / 76
Battle62 「プラフスキージャマー」

 マシロが主催した7対7で行われるガンプラバトル。

 初戦はクロガミサイドのエースであるマシロの敗北と言う番狂わせからスタートした。

 バトルを終えたタツヤは皆の待つ控え室に戻って来る。

 誰もがマシロに勝ちたいと願いながらも、その圧倒的な実力を前に世界大会では誰も勝つ事が出来なかった。

 そんなマシロの敗北の瞬間を見た物のすぐには信じられずにいた。

 

「やりやがったな。まさか、あのマシロに勝っちまうなんてな」

 

 レイジがそう言うも、タツヤの表情は浮かない。

 

「ユウキ会長? どうかしたんですか?」

「いや……彼と戦って分かったよ。彼の中に迷いは一切ない」

 

 実際にバトルをした中でタツヤは感じていた。

 マシロは一切の迷いも躊躇いも無く、勝ちに来ていた。

 

「だけど、アイツはそんな事に興味があるとは思えないわよ」

「僕もそう思う。彼は良くも悪くも自由だからね」

 

 アイラの言う通り、マシロは支配等に興味があるとは思えない。

 マシロは常に勝つ為に戦い続けている。

 そんなマシロが全てを理解した上で戦っているとは思いたくはない。

 だが、一つ言える事はマシロの真意を知る機会が失われたと言う事だ。

 初戦を勝ってスタートしたは良いが、マシロの真意が分からずに終わるも全体的な流れからは7戦の内の1戦目が終わったに過ぎない。

 そうこうしている間にクロガミサイドから次のファイターが出て来る。

 

「あの人って……」

 

 次のファイターはレイジとアイラ以外は顔くらいは知っていた。

 中でもルワンは思わず立ち上がった。

 

「アレはアレックス・アーロン・クロガミか!」

「なぁ、セイ、誰だよ?」

「僕も良くは知らないけど、凄い野球選手だよ」

 

 アレックスの事を知らないレイジにセイが耳打ちする。

 セイも詳しい訳ではないが、一般常識として彼は有名だ。

 アメリカのメジャーリーグで活躍中の選手で投手としてさまざなな快挙を果たしている。

 

「まさか、彼が出て来るとは……」

 

 アレックスがクロガミ一族である事は有名な事でもあるが、流石にこんなところで出て来るとは同じ野球選手のルワンも予想外の事だ。

 

「次のバトル、私が行こう」

 

 マシロとは違い完全に未知数である為、誰も反論はしない。

 

「勝算は?」

「正直なところ何とも言えないが、私は一人のスポーツマンとして彼だけは認める事は出来ない」

 

 誰に対しても態度の悪いマシロに対しても大人な対応をしていたルワンにしても珍しく相手を否定する発言に誰もが少なからず驚いている。

 

「彼とは試合で対峙した事がある。確かに実力は桁違いと言っても良い。だが、彼にとっての打者は誰だろうと関係ない。ただ、彼にとって打者は叩き潰すだけの相手に過ぎない」

 

 ルワンはかつてアレックスと対戦した事がある。

 常人離れした打者であったルワンが唯一完封した相手がアレックスだ。

 だが、アレックスにとって一流の打者であるルワンでも草野球の補欠選手だろうと同じただ、叩き潰すだけの相手だと言う事がプレーの端々から見てとれた。

 相手を叩き潰す事に関してはマシロも同様だが、マシロの場合は相手の実力や性格まで徹底的に調べ尽くしすのに対して、アレックスは相手の実力にも性格にも興味がない。

 だからこそ、マシロとは違いルワンにはアレックスを受け入れがたい。

 

「野球では遅れを取ったが、ガンプラバトルでも遅れを取る訳には行かない」

 

 1戦目のタツヤのようにルワンにとっては譲る事の出来ない相手だと言う事はルワンの様子からも見てとれる。

 その為、誰も異論はなかった。

 

「久しぶりだな。こうして対峙するのは何年振りか」

 

 ルワンはバトルシステムを挟んで数年振りにアレックスと対峙している。

 

「誰だっけか? まぁ良い。こっちはこんな玩具の遊びに駆り出されてるんだ。さっさと終わらせる」

 

 アレックスはルワンの事も覚えていないようだ。

 その事は半ば予想していた為、ルワンも一々反応する事は無い。

 

「アビゴルバイン! 出撃!」

 

 今回のバトルフィールドは宇宙だ。

 デブリ等と言った障害のないタイプのバトルフィールドとなっている。

 ルワンのアビゴルバインは見た目こそは世界大会の時と変わらないが、マシロとのバトルで大破するも更に作り込んで機体性能を上げている。

 

「何だ! あのガンプラは!」

 

 モニターにアレックスのガンプラが映される。

 一般的にガンプラはモビルアーマーでない限りは人型に近いシルエットを持つ。

 だが、アレックスのガンプラは球体に大型のスラスターが付いているだけのガンプラだった。

 それが、マシロが制作したボールの改造機、Dボールだ。

 その名が示すようにボール状であるボールを更に突き詰めて180mm低反動砲や作業アームすらついていない。

 ボールと言えば戦闘能力が低いと言うイメージがあるが、この場面で投入するガンプラが並のガンプラであるとは考え難い。

 ルワンは見かけに惑わされずに気を引き締める。

 

「まずは小手調べだ」

 

 アビゴルバインは様子見の攻撃として腕部のビームガンを放つ。

 その攻撃に対する反応を注意深く見ていたが、Dボールは微動だにせずにまっすぐアビゴルバインに向かって来る。

 アビゴルバインの撃ったビームがDボールに直撃するかと思われたが、直前でビームが弾かれた。

 

「Iフィールドか! ならば!」

 

 Dボールの表面には特殊塗装によるIフィールドの機能が備え付けられているらしい。

 ビームせは決定打に欠けると判断したルワンはIフィールドの影響を受けないミサイルを放つ。

 同時にビームサイズを出して接近戦を仕掛ける。

 大量のミサイルがDボールを襲うがDボールはミサイルに構う事は無い。

 ミサイルの直撃をするもDボールは無傷だった。

 外観からは分からないように偽装されているが、Dボールの大半は金属でできている。

 それは稼動させる場所の少ないDボールだからこそ出来る事だ。

 それにより、多少重量は増えるが装甲の高度は飛躍的に高まった。

 増えた重量は大出力のスラスターで補っている為、バトルに影響する程の問題になる事もない。

 アビゴルバインはDボールにビームサイズを振るうが、直前でDボールはスラスターの角度を変えて急に進路を変えた。

 ビームサイズは空振りし、Dボールはアビゴルバインの片足に直撃して足を粉砕する。

 

「なんて威力だ!」

「運の良い奴だ」

 

 大出力のスラスターで勢いをつけての体当たり、これがDボールの唯一の攻撃手段だ。

 金属によって得た強度と大出力スラスターによる速度での体当たりは並のガンプラでは一溜りもない。

 更に金属を多く使用する事で増えた重量が突撃時の威力を更に上げる結果にもつながっている。

 アビゴルバインの片足を粉砕したDボールは旋回して、再びアビゴルバインに突撃して来る。

 

「くっ!」

 

 再びビームサイズ向かえ撃つも、Dボールは先ほどとは違う軌道で避ける。

 Dボールを辛うじて直撃は避けたが、アビゴルバインは体勢を崩し、その間にDボールは旋回している。

 それから何度もDボールはアビゴルバインに突撃を行い、アビゴルバインは何とか直撃を受けずに凌いでいる

 

「ちっ! 往生際の悪い!」

 

 一方的にDボールの攻撃を凌ぐばかりだが、防戦一方も無駄ではなかった。

 相手の攻撃にはある程度の法則性が見えて来た。

 アレックスのDボールの軌道は全てルワンには見覚えがある物だ。

 それはかつてガンプラバトルではなく野球でアレックスと対戦した際のボールの球筋と同じだった。

 ガンプラバトルにおいて、重要な要素としてあげられる物の一つにイメージがある。

 イメージトレーニングの一種とされているが、必ずしも効果がある訳ではないが、ニルスのように自分が実際に会得した技術をバトルに反映させる上では重要な要素と言われている。

 アレックスもガンプラバトルは素人も同然だが、実際に自分の投げる球の動きを参考にしているのだろう。

 そこに気づく事が出来れば、次は攻撃に転じる事が出来る。

 アレックスに打ち取られた後、ルワンは再びアレックスと対峙する時の為に何度もアレックスの球をイメージして来た。

 あの時のボールの動きとDボールの動きは全く同じだ。

 

「すでに2度も空振りしている。これが野球なら次空振れば三振して終わりか……ならば次で決める!」

 

 ルワンは次に備えて神経を集中する。

 同時にアビゴルバインはビームサイズを短く持ち帰る。

 後はDボールが突撃して来る事を待つだけだ。

 

「下手な小細工を!」

 

 加速し、勢いを増すDボールの動きをルワンは冷静に見極める。

 そして、十分にDボールを引きつけるとアビゴルバインはビームサイズを振るう。

 Dボールはそれに合わせてスラスターで軌道を変える。

 

「見切った!」

 

 Dボールの動きに合わせてアビゴルバインはビームサイズを振るう。

 迷いのない全力の一振りだ。

 これがマシロ相手なら、次の手を考えている可能性を考慮していたところだが、今回に限ってはその必要はない。

 過去に負けてからアレックスの試合を何度も見ているが、相手に合わせて変化のないアレックスの投球は自信の表れであり、過信でもあった。

 アビゴルバインのビームサイズの柄はDボールの芯を正確に捉えていた。

 勢いを重量のあるDボールだが、アビゴルバインの最大の武器はマシロですらも警戒していたパワーだ。

 更にチューンされて向上したアビゴルバインのパワーはDボールを打ち返すには十分だ。

 

「馬鹿な!」

 

 打ち返されたDボールは回転しながら飛ばされて行く。

 勢いを殺そうとするも、Dボールにはスラスターが一つしかついていない。

 そのスラスターも方向転換の為に必要な最低限度の稼動範囲しか確保されていない。

 他に勢いを殺す手段が無い為、Dボールは勢いよくバトルフィールドから飛び出ると観客席まで飛んでいく。

 Dボールがバトルフィールドから出た事でルワンとアビゴルバインの勝利をバトルシステムが告げる。

 

「やりましたね! ルワンさん!」

「ああ……厳しいバトルだったけど、何とかなったよ」

 

 バトルに勝利して戻って来たルワンをセイ達が出迎える。

 これで2連勝となり、残り5戦の内で2勝すれば良い為、一気に余裕が出来た。

 

「次はワイが行って王手を決めて来ますよ! 新たな魔王と共に!」

 

 マオはそう言ってさっさと飛び出していく。

 状況的に余裕がある為、マオを連れ戻そうとは誰もしない。

 そんな中、タツヤの表情は厳しい。

 

「何か心配ごとでもあんのか?」

「ああ……いや、考え過ぎかも知れないが、向こうもこの状況で何か手を打って来るんじゃないかと思ってね」

 

 皆が2連勝で多少なりとも浮かれていたが、タツヤの言葉でハッとする。

 確かにこちらからすれば連勝をしているが、向こうからすれば連敗している。

 7回の内4回負ければ終わりである以上、次負ければ一気に状況が悪くなる。

 あのクロガミ一族がこれ以上の負けを容認するとも思えない。

 そうなれば、次は確実に勝ちに来るだろう。

 

「問題ないだろう。そいつの言う通り、次は何が何でも向こうは勝ちにする。あいつを当て馬にしてやり過ごせば良い」

「俺らの中じゃアイツが一番弱いからな」

 

 不穏な空気が流れる中、レナード兄弟がそう言う。

 その発言に誰もが顔を顰める。

 次のバトルで確実に勝ちに来ると言うなら、最も弱いファイターをぶつけて相手に勝ち数を一つ与える代わりにこちらが戦力を温存する。

 それは理解出来るが、マオを一番弱いファイターとして送り出すと言う事には抵抗がある。

 残っているファイターの中で世界大会の成績はセイとレイジは3位でアイラが4位、フェリーニはベスト8位、マオとレナード兄弟がベスト16位となっている。

 マオとレナード兄弟は共に初戦で敗退しているが、兄弟の中では自分達の方がマオよりも強いと言う位置付けらしい。

 

「次の相手が出て来たぞ」

 

 クロガミ側の手を考える時間も無く、次のファイターが出て来る。

 

「あれって……マシロのお母さんじゃない」

 

 クロガミ一族の人間は各分野でその才能を発揮している為、有名人が多いが、誰もユキネの事は知らない。

 この場で唯一、知っているのはユキネと面識があるアイラくらいだ。

 そして、次の相手は見た目は10代の半ばから後半にしか見えない。

 そんなユキネがマシロの母親だと知り誰もが驚きを隠せない。

 

「お姉さんには悪いけど、ワイの新しいガンプラで勝たせて貰います」

「残念だけどさ、そろそろ勝ち数を稼いでおかないと不味いんだよね」

 

 ユキネはそう言ってガンプラを置く。

 ユキネのガンプラは何の変哲のないローゼンズールだった。

 見た目が変わる程の改造もなければ塗装もされていない。

 かと言って、徹底的に作り込まれているかと言えばそうでもない。

 ただの素組と比べると丁寧に作られている程度のガンプラで、この程度のガンプラは世界大会でも使われるレベルではない。

 この局面で投入するガンプラとしては不気味だ。

 だが、マオはそんな事を気にする様子はない。

 このバトルではマオの新ガンプラをライバルたちに披露する。

 

「これがワイの新たな魔王! クロスボーンガンダム魔王や!」

 

 マオは意気揚々とガンプラをバトルシステムに置く。

 世界大会での経験を元にマオはガンダムX魔王に次ぐ新たなガンプラを制作していた。

 それがクロスボーンガンダムX1をベースに改造したクロスボーンガンダム魔王だ。

 ガンプラバトルにおいて、作中の設定は反映されている訳ではないが、機体特性は反映されている。

 素組の場合、元々格闘戦が得意な機体は格闘戦の方が強く、射撃戦が得意な機体は射撃戦が強い。

 だからこそ、近接戦闘を重視しているクロスボーンガンダムX1を改造ベースに選んだ。

 それにより、対戦相手はクロスボーンガンダムX1の元々持つ近接戦闘能力を警戒してある程度の距離を取って来るだろう。

 それがマオの狙いでもあった。

 胸部の髑髏部分にはガンダムX魔王から受け継いだサテライトキャノンが内蔵されている。

 距離を取って貰えればそれだけ胸部のサテライトキャノン、スカルサテライトキャノンが使い易くなる。

 マオの新たなガンプラとユキネのローゼンズールのバトルが始まる。

 今回のバトルフィールドはサルガッソー。

 フィールド内はデブリだけではなく、氷の粒で非常に視界の悪いバトルフィールドだ。

 

「この程度のデブリなら問題あらへん。先に見つけてしまえば一気に勝負を付ける」

 

 クロスボーンガンダム魔王のスカルサテライトキャノンの威力を持ってすれば、デブリごと相手を焼き払う事は可能だ。

 先にローゼンズールを見つけてしまえば、先制攻撃で一気に勝負を決める事が出来る。

 だが、そんなマオの思惑は外れ、ローゼンズールの本体から切り離されたクローアームに内蔵されているビームがクロスボーンガンダム魔王を襲う。

 

「こっちからは丸見えなのよね」

 

 マオのモニターにはサルガッソーの氷の粒で視界が悪いが、ユキネ側のモニターには画像処理によって氷の粒が表示されておらず、クロスボーンガンダム魔王の姿が鮮明に映されている。

 その上で、事前にローゼンズールとクロスボーンガンダム魔王の出撃時の初期位置は事前にユキネが設定し、自分の方が有利な位置からバトルが始められるように設定していた。

 

「こういうやり方はしろりんは嫌いだろうけどさ」

「後ろを取られた!」

 

 2基のクローアームの攻撃をクロスボーンガンダム魔王はデブリを避けながら回避する。

 以前のガンダムX魔王とは違いサテライトキャノンを内蔵式にしている分、巨大な砲門を抱えていない事やクロスボーンガンダムX1自体小型である為、クロスボーンガンダム魔王は非常に小回りも効いている。

 

「せやけど!」

 

 ある程度の余裕が出来たところでクロスボーンガンダム魔王は反転すると、骨を模した武器であるクロスボーンガン&ソードを構える。

 背後を取られたもののローゼンズールの性能は大して高くは無く、ユキネの操作技術も世界レベルのファイターから見れば驚異ではない。

 クロスボーンガンダム魔王はローゼンズールのクローアームを2基とも簡単に撃墜した。

 ローゼンズールの装備は両腕のクローアームにビーム砲を内蔵したシールドのみだ。

 クローアームを2基とも潰した時点でマオは勝利を確信していた。

 

「ふーん。じゃ、こっちも禁じ手を切っちゃうよ」

 

 ローゼンズールのバックパックからバラのようなパーツが射出される。

 

「サイコジャマー? 残念ですけど、ワイのクロスボーンガンダム魔王にはサイコミュなんて積まれてませんよ」

 

 ローゼンズールの切り札としてバックパックにはサイコジャマーが搭載れている。

 本来はサイコミュを妨害するサイコジャマーだが、当然の事ながらクロスボーンガンダム魔王にはサイコミュ等搭載されていない。

 マオはサイコジャマーではなく、ファンネルやビットの類の武器の可能性も考えるが見た限りではサイコジャマーも特別な改造をしているようには見えない。

 

「坊やはあのガンプラ心形流だったのよね。だけど、私以上にコレの事を知る人間はいないのよね」

 

 ローゼンズールから射出されたサイコジャマーがクロスボーンガンダム魔王を取り囲むとそれは起きた。

 突如、クロスボーンガンダム魔王がまるでエネルギーが切れて機能が停止したかのように力無くうな垂れた。

 

「何や! 何が起きたんや!」

 

 マオは操縦桿を動かすがクロスボーンガンダム魔王はピクリとも反応しない。

 同時にサイコジャマーの端末の範囲内のフィールドエフェクトも解除され、動かないクロスボーンガンダム魔王は落ちていく。

 それに合わせるかのようにサイコジャマーの端末も下に移動し、それに伴い範囲内から外れた部分にはバトルフィールドのエフェクトが再び出て来て、範囲内に入った部分のエフェクトが消える。

 

「これはプラフスキー粒子の動きを阻害するいわば、プラフスキージャマー。この中ではいかなる粒子操作技術も意味を成さない」

「何やて! そないな事されたら!」

 

 マオのガンプラ心形流には独自の粒子応用技術を持っている。

 ユキネのローゼンズールのプラフスキージャマーは粒子の動きを阻害する為、ガンプラ心形流との相性が悪いように見える。

 だが、事はそんなレベルの話しではない。

 ガンプラバトルはガンプラを動かしているように見えるが、実際はガンプラのプラスチックに反応しているプラフスキー粒子を操作している。

 つまりは粒子の動きを阻害すると言う事はいかなるガンプラだろとこの中ではただのガンプラに過ぎない。

 ガンダムにおいてもサイコジャマー以外にミノフスキー粒子やニュートロンジャマー、GN粒子と言った何かを阻害する物が多数存在している。

 ガンプラバトルでもチーム戦での通信妨害を初めとして、相手の行動を阻害する事は珍しい事ではない。

 しかし、粒子の動きその物を阻害すると言う事は今まで行われた事は一度もない。

 なぜなら、それはガンプラを動かして戦うと言ったガンプラバトルの根源から揺るがす事で、相手のガンプラを粒子の動きを阻害して止めてしまえば、バトルその物が成立しないも同然だ。

 

「さてと……こっからどうしようかな~」

 

 ローゼンズールはプラフスキージャマーの影響で動く事のないクロスボーンガンダム魔王の周りをグルグルと周る。

 プラフスキージャマーはガンプラバトルの根源を揺るがしかねないが、欠点があった。

 ジャマーを形成しているフィールド内ではいかなる粒子の動きを阻害する。

 範囲内のエフェクトが解除されているのも、その範囲内の粒子がバトル中に行っているバトルフィールドのエフェクトを解除しているせいだ。

 だからこそ、攻撃をしたくても遠距離からの攻撃はジャマーの範囲に入った時点で無効化され、直接攻撃を行おうにも近づく事は出来ず、出来る事と言えば、バトルフィールド内で唯一粒子とは関係なく存在している自分のガンプラの一部を切り離して直接投げつける位だろう。

 これなら、範囲内に入った時点でただの動かないガンプラに戻るもクロスボーンガンダム魔王にぶつける事は出来る。

 しかし、その程度ではクロスボーンガンダム魔王を戦闘不能にするまでに自分のパーツを使いきっても足りないだろうが。

 それ以前に両腕は破壊されている為、投げつける事も出来ない。

 ユキネがその気になれば、都合よく自分はジャマーの影響を受けないようにする事も出来たが、ユキネの目的上、その必要はない。

 

「どうしよっかな~ 降参する?」

 

 ユキネはそう勧めるもマオは降参する事無く、操縦桿を動かし状況の打開を試みる。

 それ以外でも状況の打開策を考えるも時間だけが過ぎていく。

 尤も、ユキネが多少考えただけで状況を打開できるような物を用意する訳も無い為、時間の無駄でもある。

 ユキネも攻撃出来ず、マオも言葉通り何も出来ずに時間だけが刻一刻と過ぎていく。

 これが世界大会等の公式戦ならば、ブーイングが起こるが、観客席には誰もいない為、マオが何とかしようとしている声だけしかない。

 そうしている間にバトルシステムがバトル時間の終了を告げる。

 このバトルは世界大会の公式ルールに準じている為、時間内に決着が付かない場合は延長戦として先に攻撃を当てた方が勝利となるVアタック方式で決着をつける事になる。

 また、ルール上ガンプラの補習は認められないが、ガンプラにまともな武装が残されていない場合は一つだけ装備をする事が許可されている。

 ユキネはローゼンズールのシールドを腕に取りつけてバトルが再会される。

 

「アレを使われる前に!」

 

 バトルは同じフィールドで仕切り直しとなる為、マオのクロスボーンガンダム魔王はプラフスキージャマーの影響化から抜け出している。

 時間切れに追い込まれたプラフスキージャマーが使われるとマオにはどうしようも無い為、先に一撃を入れて勝つしかない。

 一撃を入れるだけならガンプラの性能とファイターの実力差で簡単に出来る。

 だが、バトルフィールドに入って少しすると、先ほどまでと同じようにクロスボーンガンダム魔王の動きが止まる。

 

「何でや! フィールドエフェクトが残っとるやないの!」

 

 マオはプラフスキージャマーが予め展開されている事も事前に想定していた。

 その目安としてバトルフィールドのエフェクトの有無だ。

 範囲内のエフェクトは強制的に解除されている為、すぐに分かる。

 しかし、それが落とし穴だ。

 控室でバトルを見ていたセイ達は届く事のない声でマオに危険を知らせていた。

 控室からはクロスボーンガンダム魔王のスタート位置の正面にプラフスキージャマーを使っている事が見えていた。

 だが、マオのモニターには映像に修正が加えられていた為、気づく事は無かった。

 その為、マオは正面にジャマーが形成されている事を知らずにジャマーの範囲内に自分から飛び込んで行った。

 無論、その場所にジャマーを張る事が出来たのは事前に双方のガンプラの位置はユキネが設定し、本来ならばバトルフィールドには同時に入る筈だが、ユキネのローゼンズールの方が数秒早く入っている事もあって、クロスボーンガンダム魔王がバトルフィールドに入った時点でプラフスキージャマーは展開済みだった。

 

「本当にしろりんが見てなくて助かったわ」

 

 これらの策は全てマシロが見ていないからこそできた事だ。

 マシロは現在、他の事にかかりきりである為、バトルは結果しか聞かずにいる。

 ユキネのやっている事はバトルの根源を揺るがす行為だけではない。

 バトルシステムのシステムへの介入や自分や相手のモニターの画像処理等は完全に不正行為だ。

 勝ちに拘るマシロだが、バトルのルールを守った上で勝つ事は前提条件であって絶対条件だ。

 そこを破ってしまえば勝利の意味はない。

 だが、ユキネにとってはバトルを出来るだけ引き延ばして時間を稼いだ上で勝つ事が重要だ。

 ユキネの頭脳は並の天才を遥かに凌駕しているが、身体能力は並の人間と大して変わらない。

 頭脳だけでは確実に勝つ事が出来ない為、ユキネは確実に勝つ為に今回のような手段を行っている。

 幾らクロガミ側の勝ち数を稼ぐ為とは言え、バトルのルールを破ればマシロが出て来てバトルを止めかねない。

 

「さてと……これ以上の引き伸ばしはユッキーに怪しまれるから終わらせるとしますか」

 

 ここまでは圧倒的優位を前に遊んでいる程度で幾らでも誤魔化しが効く。

 しかし、何度も時間切れとなっていてはユキトが時間を稼いでいると感づかれる危険性がある。

 ローゼンズールは新しく装備して来たシールドをクロスボーンガンダム魔王の頭上から投げる。

 プラフスキージャマーの範囲に入ってただのガンプラとなるが、クロスボーンガンダム魔王の上から投げている為、シールドは重力によってそのままクロスボーンガンダム魔王の頭上に落ちる。

 シールドはクロスボーンガンダム魔王にコツリと当たるとバトルシステムはクロスボーンガンダム魔王に攻撃が当たったと判断し、ユキネの勝利を告げた。

 

「ほんまに済んません」

 

 バトルが終わり、控室を出た時とは違い意気消沈してマオが戻って来る。

 あれだけ大口を叩いた手前、戻り辛くはあったが、誰もマオを責める事はしない。

 

「気にすんなよ」

「そうだよ。マオ君、それにあのバトル……少しおかしな気もしたし」

 

 外から見ていても、Vアタック時のマオは明らかにおかしかった。

 サルガッソーは視界が悪いがあそこまで簡単に敵の張ったプラフスキージャマーに嵌るとは思えない。

 今となっては相手が何かを仕掛けて来たと言う事を証明する手段はない。

 

「それにまだ1敗だ。後は俺達に任せろ」

「フェリーニはん……後は頼みます」

 

 マオが負けたがまだ2勝1敗だ。

 まだ、世界大会で上位に入賞しているセイとレイジ、アイラが残っている上に世界大会の常連であるフェリーニと策を弄する事に長けているレナード兄弟が残っている。

 この4組むで2勝すれば勝てる。

 マオの時のように不正な手段で来る可能性もあったが、今からではどうしようもない。

 考えても意味がないなら、余計な事を考えずに勝つ事を考えた方がマシだった。

 

「そう上手く行けばけどな」

 

 前向きに考えようとする中、レナード兄弟の弟、フリオが茶々を入れる。

 

「どうやら次の相手はお前達を良く知っている相手のようだぞ」

 

 兄のマリオがそう言い、皆の視線が次の対戦相手に向けられる。

 

「嘘だろ……何でアイツが!」

「そんな……」

 

 対戦相手を見たセイ達は今までの対戦相手以上の驚きを見せた。

 それもその筈だ。

 この場に呼ばれていない事に違和感を覚えてはいたが、それ以上は考えていた訳ではない。

 そして、この状況を想定していた訳でも無い。

 4戦目の相手は見間違える筈もなくセイ達も良く知る相手。

 次のクロガミ側のファイターはアーリージーニアス事、ニルス・ニールセンだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。