ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Battle63 「裏切りのサムライ」

 タツヤに続きルワンが勝利するも、3戦目のマオはユキネのプラフスキージャマーにより成す術もなく敗北した。

 そして、折り返しの4戦目の相手はアーリージーニアスこと、ニルス・ニールセンだ。

 

「アイツ! 何で向こう側のファイターとして出てんだよ!」

「ちょ! レイジ!」

 

 相手側のファイターとしてニルスが出て来た事で、レイジが飛び出して行こうとする。

 だが、それをフェリーニが止める。

 

「落ち着けよ。レイジ」

「これが落ち着いていられるか!」

 

 これが単なるチームバトルならレイジがここまで激昂する事は無い。

 だが、このバトルは世界大会上位入賞者である自分達を倒す事でクロガミグループの力を見せつけて、ガンプラバトルを支配する為のバトルだ。

 

「気持ちは分からんでもないが、乗せられてるぞ」

「そうよ。こういう相手を精神的に揺さぶるようなやり方はマシロのやりそうな事よ」

「こいつがマシロの考えかはともかく、今のお前じゃあのサムライボーイには勝てるとは思えないな」

 

 マシロが相手に対して挑発的な態度を取る事で、相手の冷静さを奪うと言う事は普段からやっている事だ。

 それを抜きにしても、見知った相手をぶつけて来る事で、裏切られたと言う怒りから冷静さを失わせると言う策である事は容易に想像がつく。

 まさに今のレイジがそんな状態だ。

 その上で、ニルス実力は実際に世界大会で戦ったレイジも良く知っている。

 あの時は隠し玉であるビルドナックルを使い、セイのとっさに機転で勝っている。

 少なくとも、レイジが冷静さを欠いた状態で勝てる相手ではない。

 

「このバトルは重要だ。これで勝てば王手、負ければイーブンに戻されちまうからな」

 

 現在は2勝1敗で勝ち越してはいるが、負ければ2勝2敗と並ばれる。

 タツヤとルワンで2連勝からの2連敗は流れを完全に持っていかれるだろう。

 まだ1敗で余裕があるとはいえ、向こうも本気で勝ちに来ている以上は流れを持っていかれる事だけは避けたい。

 

「だから俺が行く。少なくとも冷静さを欠いているお前より勝算はある。その間に頭を冷やして置け。俺がここで勝って、お前らのどっちかで勝って勝負を決めろ」

 

 残りの4組の内、セイとレイジ、アイラは世界大会でも上位に入っている。

 ここでフェリーニが勝っておけばレイジとアイラのどちらかが勝てば良い。

 レナード兄弟に関しては、同じ世界大会のファイナリストと言っても関わり合いが殆どない上に先ほどから場の空気を悪くする発言が多い為、後を任せるだけの信用はイマイチ出来ない。

 

「それで構わないな」

「好きにしろ」

 

 レナード兄弟もここでフェリーニが出る事事態には異存はないようだ。

 

「……分かった。任せた」

 

 レイジは渋々ながらフェリーニが出る事を認める。

 4戦目のファイターがフェリーニと決まり、フェリーニとニルスはバトルシステムを挟んで対峙する。

 

「僕の相手は貴方ですか、ミスターフェリーニ」

「不服か? けど、こっちもお前さんには少しばかり借りがあるからな」

 

 ニルスは相手がフェリーニである事に特に反応を示す事は無い。

 

「いえ、相手にとって不足はありません」

「グレコの仇は取らせて貰う」

 

 互いにガンプラをバトルシステムにおいてGPベースをセットする二人の準備が完了した事でバトルが開始される。

 今回のバトルフィールドはテキサスコロニー内だ。

 コロニー内でありながら荒廃している為、地上ステージの荒野等に近いステージだ。

 そんな荒野をフェリーニのガンダムフェニーチェリナーシタはメテオホッパーで駆け抜ける。

 元々はフェニーチェがバード形態に変形出来なくなった事による機動力の低下をカバーする支援機だが、バード形態へと変形出来るようになった今でも地上用の支援機として運用は出来る。

 これにより、陸戦においてモビルスーツ形態でも高機動戦を行う事が出来る。

 

「サムライボーイのアストレイは近接特化。メテオホッパーの機動力なら早々、間合いを詰められるって事は無いはずだが……」

「それはどうでしょうか」

 

 疾走するガンダムフェニーチェリナーシタの上を影が飛び越す。

 

「成程な……」

 

 ニルスの戦国アストレイは近接戦闘に特化している。

 だからこそ、フェリーニはメテオホッパーでモビルスーツ形態のままでも高速移動を可能として距離を詰められる事を避けた。

 しかし、ニルスもそうもそれは想定内の事だ。

 今回は戦国アストレイは以前にも世界大会の予選ピリオドで使用した風雲再起に乗り、アストレイの純正ビームライフルを装備している。

 それによって、フェリーニのガンダムフェニーチェリナーシタに劣らない機動力を得るのと同時に最低限の火力も得ている。

 

「だが、そんな付け焼刃がどこまで通用する!」

 

 ガンダムフェニーチェリナーシタはメテオホッパーの先端に装備されているリナーシタライフルのバスターライフルを放つ。

 だが、戦国アストレイは肩の装甲が稼動し、それにサムライソードを持たせてビームを切り裂くとビームライフルで反撃する。

 

「厄介な物を持っていやがる」

 

 戦国アストレイのビームを切り裂くサムライソードはビーム兵器を主体としているガンダムフェニーチェリナーシタでは厄介な物だ。

 肩の装甲に持たせる事で、戦国アストレイは片手で風雲再起の手綱を握り、安定した状態を維持しつつ片手でビームライフルを使える。

 ガンダムフェニーチェリナーシタはリナーシタライフルを戦国アストレイの方に向けるとバスターライフルとハンドライフルを同時に放つ。

 大火力のバスターライフルと連射速度の高いハンドライフルを同時に使用する事で、戦国アストレイがサムライソードで全てのビームを切り裂かせない為だ。

 

「その程度で!」

 

 だが、戦国アストレイは高く飛び上がって回避する。

 同時にガンダムフェニーチェリナーシタの上を取り、ビームライフルを連射する。

 リナーシタライフルはバスターライフルの弾数を増やす為にメテオホッパーに装着している為、上を取られると攻撃手段が一気に無くなる。

 戦国アストレイのビームをかわしながら一度、ガンダムフェニーチェリナーシタは距離を取ろうとする。

 

「ちっ……どうも強制されてるって訳でも無さそうだな」

 

 向こうの策として、何かしらの方法でニルスを強制的に戦わせているとも考えられるが、戦い方は明らかにバトルに勝ちに来ている。

 勝つ事も強要されているとも考えられるが、ニルスの戦いには迷いが感じられない。

 

「当然です。僕は元々、プラフスキー粒子の謎を解き明かす為にガンプラバトルを始めています。彼はPPSEを掌握している。その上で彼は僕の頭脳を研究を必要とし、僕もクロガミグループの情報と技術を必要としている。僕達の利害関係は一致している以上、こうなるのは必然!」

 

 セイとレイジとのバトルの中でニルスはいつの間にかガンプラバトルにのめり込んでいたと自覚している。

 だが、ニルス自身は元々の研究テーマでもあったプラフスキー粒子の謎についての研究を諦めた訳ではない。

 世界大会後には再び研究を始めようとしているところにマシロから連絡があった。

 クロガミグループの持つ研究施設や研究員、資金等を提供する代わりにニルスは粒子の研究を行い粒子を再生産する事を可能にして欲しいとの事だ。

 ニルスとしては断る理由はどこにも無かった。

 

「その研究とやらの為に奴らのやろうとしている事に加担するってか?」

「クロガミグループは合理的です。ガンプラバトルを純粋に商売をしてみている。だからクロガミグループにとってはガンプラバトルが衰退する事は避けたい。クロガミグループの力を持ってすれば、ガンプラバトルの反映は約束されています」

「そうかよ!」

 

 ガンダムフェニーチェリナーシタは反転すると、バスターライフルを放つ。

 戦国アストレイは飛び上がるとビームライフルを放つ。

 ビームがメテオホッパーのタイヤに直撃し、ガンダムフェニーチェリナーシタはリナーシタライフルを回収してメテオホッパーから飛び退くとバード形態に変形する。

 バード形態に変形した事で空中戦においてはガンダムフェニーチェリナーシタの方が降下するだけの戦国アストレイよりも有利だ。

 

「生憎と俺はお前みたいにお利口さんにはなれないんでね!」

 

 ガンダムフェニーチェリナーシタはビームはサムライソードで防がれる為、主翼に内蔵されているミサイルを撃ち込む。

 戦国アストレイもビームライフルでミサイルを迎撃するが、その隙にバスターライフルが撃ち込まれ、サムライソードで防ぐには間に合わないと判断したニルスは風雲再起を踏み台にして、ガンダムフェニーチェリナーシタに突っ込む。

 空中でガンダムフェニーチェリナーシタと戦国アストレイが交差する瞬間を狙って戦国アストレイはサムライソードを振るうが、ガンダムフェニーチェリナーシタは紙一重でかわす。

 しかし、同時に戦国アストレイもビームライフルを放ち、ガンダムフェニーチェリナーシタの片翼を撃ち抜く。

 片翼を失ったガンダムフェニーチェリナーシタはバランスを崩しながらモビルスーツ形態に変形すると、ハンドライフルで牽制射撃を行う。

 戦国アストレイも風雲再起を踏み台にした時の勢いを失い降下を始め、ガンダムフェニーチェリナーシタのビームをサムライソードで防ぎながらビームライフルで反撃する。

 片翼を失っているガンダムフェニーチェリナーシタはバランスを崩しているが故に、ニルスは動きの予測が付きにくいが、フェリーニにとってはガンプラのバランスが悪い事は慣れている。

 どちらも決定打を与える事も無く、着地して対峙する。

 

「やるじゃねぇかよ」

「貴方の実力も想像以上だ」

 

 ガンダムフェニーチェリナーシタと戦国アストレイは睨みあったまま動かない。 

 どちらも仕掛けるタイミングを窺っている。

 先に仕掛けたのは戦国アストレイだった。

 牽制目的のビームライフルを放ち、ガンダムフェニーチェリナーシタはリナーシタウイングシールドで防ぐとバスターライフルで反撃する。

 戦国アストレイはビームライフルを捨てて両手にサムライソードを持たせるとビームを切り裂きながら突撃する。

 ビームを切り裂きながら距離を詰めた戦国アストレイに対して、ガンダムフェニーチェリナーシタはハンドライフルの先端からビームサーベルを出して、リナーシタライフルを振り下ろす。

 だが、戦国アストレイはギリギリまで引きつけてガンダムフェニーチェリナーシタの攻撃をかわして、サムライソードを突き出した。

 それを、リナーシタライフルで防ぐ。

 サムライソードはリナーシタライフルに切り込みを入れるが、完全に切り裂かれる前にハンドライフルの部分をパージして、バスターライフルを戦国アストレイに付き付ける。

 ゼロ距離のバスターライフルの一撃が放たれる前に戦国アストレイは横に飛び退くと、サムライソードの一本を戻すと再度距離を詰める。

 

「粒子発勁!」

「させっかよ!」

 

 戦国アストレイの粒子発勁を撃ち込まれないようにガンダムフェニーチェリナーシタはすでに残弾の尽きているバスターライフルを盾に後方に飛び退くと、頭部のバルカンと胸部のマシンキャノンを撃ち込む。

 バスターライフルは爆発を起こし、爆風が戦国アストレイを包み込む。

 それに乗じてガンダムフェニーチェリナーシタはリナーシタウイングシールドの先端で戦国アストレイに追撃を入れようとガンダムフェニーチェリナーシタは距離を詰める。

 だが、爆風からは持っていたサムライソードを捨てた戦国アストレイが飛び出して来る。

 それによりフェリーニは反応が一瞬だけ遅れてしまう。

 

「左もあるんですよ!」

 

 右手はバスターライフルの爆発で失ってはいるが、左手でも戦国アストレイは粒子発勁を使う事は出来る。

 

「粒子発勁!」

 

 戦国アストレイが前に出て来た事で、反応が遅れた事でガンダムフェニーチェリナーシタは戦国アストレイの粒子発勁をリナーシタウイングシールドで受け止める事になる。

 粒子発勁はプラフスキー粒子を流し込む為、シールドで防ごうと金属パーツ等、粒子の反応しない物を挟まなければ防御は不可能だ。

 

「くそったれ!」

 

 粒子発勁の威力はフェリーニも初めてニルスが戦国アストレイを公式戦で使ったアメリカ予選で見ている。

 ライバルのグレコのトールギスワルキューレを一撃で仕留めた戦国アストレイの粒子発勁を受けては流石のガンダムフェニーチェリナーシタも一溜りもない。

 強引に後ろに飛び退いたガンダムフェニーチェリナーシタだったが、粒子発勁によりガンダムフェニーチェリナーシタの左腕が粉々に破壊され、胸部や頭部に至るまでヒビが入っている。

 形振り構わず飛び退いた為、ガンダムフェニーチェリナーシタは勢い余って倒れ込む。

 

「勝負ありですね」

 

 戦国アストレイは残っているサムライソードを抜いて構える。 

 すでに状況は圧倒的にニルスが優勢となっている。

 ガンダムフェニーチェリナーシタはメインの武器であるリナーシタライフルを失い、武器は頭部のバルカンと胸部のマシンキャノン、ビームサーベルに右肩のビームマントだ。

 バルカンとマシンキャノンは損傷により片方しか使えない。

 種類はあっても、バルカンとマシンキャノンは基本的に牽制目的の武器で決定打に欠ける。

 ビームサーベルとビームマントは戦国アストレイのサムライソードで容易に切り裂かれる。

 戦国アストレイは片腕を失いながらもサムライソードは1本持っており、肩の装甲も健在だ。

 更には粒子発勁も使える。

 フェリーニは戦国アストレイの動きに注意しながらも周囲の状況を把握する。

 状況は圧倒的に劣勢とはいえ、ここで負けるとタツヤとルワンで作った流れを一気に断ち切る事になる。

 少しでも勝機を探すがバトルフィールドのテキサスコロニーはステージギミックが少ない。

 見渡す限り荒野が広がりオブジェクトは岩山程度しかない。

 ステージギミックを使っての状況の打開は出来そうに無かった。

 

(このバトルを落とす訳にはいかねぇ……悪いな。フェニーチェ。アレを使う!)

「では……覚悟!」

 

 戦国アストレイはサムライソードを構えると、ガンダムフェニーチェリナーシタに止めを刺そうと一気に接近して来る。

 この劣勢の中でフェリーニは打開策を一つだけ思いついていた。

 止めを刺す為に接近して来る戦国アストレイに対して、フェリーニはスラスターを最大出力で使って、避けるどころか逆に戦国アストレイに突っ込む。

 戦国アストレイが突き出したサムライソードがガンダムフェニーチェリナーシタの胸部を貫くが、フェリーニは気にする事は無い。

 胸部を貫かれながらもガンダムフェニーチェリナーシタは戦国アストレイごと岩山に突っ込む。

 

「一体何を!」

 

 岩山に突っ込んだ時に舞い上がった砂塵が収まると、そこには戦国アストレイの腕をガンダムフェニーチェリナーシタがしっかりとつかんでいた。

 

「こうしてしまえば粒子発勁も使えんだろ!」

 

 フェニーチェリナーシタは戦国アストレイの腕を掴みながら覆いかぶさるようにしている為、サムライソードを刺したまま岩山に押し付けられて身動きが取れない。

 

「しかし、こちらには!」

 

 身動きが取れないが、戦国アストレイも肩の装甲は辛うじて動かす事が出来る。

 サムライソードは使えずとも、ガンダムフェニーチェリナーシタを殴り飛ばす事くらいは出来る。

 

「悪いが俺は負ける訳にはいかないんでな!」

 

 ガンダムフェニーチェリナーシタには改修前のウイングガンダムフェニーチェの時から搭載しながらも一度も使わない機能があった。

 それはフェニーチェのベースとなったウイングガンダムが作中でも使った自爆システムだ。

 フェリーニもそれに倣ってウイングガンダムフェニーチェに自爆システムを搭載させていた。

 元々はウイングガンダムをベースにするなら自爆システムは必須と言うだけで実際には使う気の無かった物だが、最後の手段としてフェリーニは今まで一度も使わなかった自爆システムをここで使おうとしている。

 それをこの距離で使えば戦国アストレイを戦闘不能に持ち込む事は出来る。

 それでバトルを引き分けに持ち込んでしまえば、負ける事は無い。

 負けなければ相手に勝ち数を与える事が無い為、全体の勝敗条件である勝ち数で並ばれる事は無い。

 ここで引き分ければ、残りの3戦で全勝しなければクロガミ側に勝ち目は無く、こちら側は3戦の内2勝すれば良い為、優勢を崩す事は無い。

 

「……まさか! 正気ですか!」

 

 ニルスもフェリーニの意図に気が付く。

 

「当然だ! ガンプラバトルを好きにさせて堪るかよ!」

 

 ニルスはクロガミグループならガンプラバトルを繁栄させると言っているが、フェリーニは具体的にどのような方法を取るかは分からない。

 だが、支配すると言っている以上は実際にガンプラバトルを行うファイター達にとっては禄でもないやり方であると言う事は分かる。

 

「お前ら……後は任せた!」

「軟弱者!」

 

 相討ちに持ち込む為の自爆システムの起動ボタンをフェリーニが押そうとした瞬間、スタジアムにキララの怒号が響き渡る。

 キララは音響ブースでバトルの様子を見ながら、全世界に中継しているバトルの実況を行っているが、どうやら音響ブースからスタジアムのスピーカーを通じて声を届けているようだ。

 

「何恰好つけてんのよ! 相討ち覚悟の自爆? アンタは何の為に戦ってんの!」

「なっ!」

 

 いきなりの乱入にフェリーニは自爆システムを押そうとした手が止まり、ニルスも軽く混乱し手が止まっている。

 どうやらキララはフェリーニの行おうとした自爆に腹を立てているらしい。

 

「そんなやり方でガンプラの未来とか守っても自分の未来を潰したら意味ないでしょ!」

 

 キララに言われてフェリーニはハッとした。

 フェリーニがバトルに負けても自爆システムを使わなかったのは使えば、下手をすればフェニーチェが再起不能な程に壊れるからだ。

 ガンプラバトルの性質上、バトル後にガンプラが壊れると言う事は珍しい事ではない。

 バトル時の損傷によってはビルダーの技量では修復出来ないレベルで損傷する事も決して珍しい事態ではない。

 その場合、新しいガンプラを制作すると言う事が一般的だ。

 しかし、フェリーニは幼少期に始めて制作したウイングガンダムがプラフスキー粒子により初めて動いた時の感動から、何度バトルで壊れても新しいガンプラを作る事なくウイングガンダムを直し続けた。

 その結果、左右非対称と言うバランスの悪いウイングガンダムフェニーチェとなり、全面改修してガンダムフェニーチェリナーシタとなっている。

 ここで自爆させて、再起不能となった場合、フェリーニはガンプラを続けるだろうが、ガンプラバトルを行う事は無いだろう。

 フェリーニにとってバトルで使う相棒はフェニーチェ以外にはありえないからだ。

 つまりは、ガンダムフェニーチェリナーシタを自爆させて、バトルを引き分けに持ち込んで次にセイとレイジ、アイラが勝って全体で7勝したとする。

 それによってクロガミグループの思惑からガンプラバトルを守ったとしても、フェニーチェを失ったフェリーニにファイターとしての未来はない。

 

「確かに……それに勝ち目がないから相手を道連れにするってのもクールじゃないな」

 

 ガンプラの未来を守る。

 それに囚われすぎて、バトルで敗北寸前まで追い込まれていた事で、フェリーニは失念していた。

 だが、キララの喝で自分が馬鹿げた事を行おうとしていた事にも気が付いた。

 ガンプラの未来を守ると言う理由があったとはいえ、自分の相棒を犠牲する戦いなどファイターとしてやってはいけない事だ。

 

「……やれよ」

「よろしいので?」

「ああ……これ以上、俺の相棒に無様な真似をさせられるか」

 

 ガンダムフェニーチェリナーシタは戦国アストレイから離れて対峙する。

 最後の手段の自爆をする気がない以上はフェリーニに逆転の為の策はない。

 後の事はレイジ達に託し、フェリーニは敗北を受け入れた。

 バトルシステムの外に自ら出たり、降参する事でこれ以上、ガンプラを傷つけずに負ける手段はあるが、フェリーニはそれをしない。

 例え、敗北を受け入れても相手に背を向けて逃げると言う事も戦いその物を放棄したくはないと言うフェリーニの最後の意地だ。

 

「そうですか……」

 

 戦国アストレイは立ち上がりサムライソードを構える。

 

「では……お覚悟を!」

「悪いな……相棒。後で必ず直してやるからな」

 

 サムライソードの横一閃はガンダムフェニーチェリナーシタの捉えた。

 そして、ガンダムフェニーチェリナーシタの上半身と下半身が腰の辺りから離れて真っ二つとなり、バトルシステムがニルスの勝利を告げる。

 バトルは終わり、ニルスはフェリーニに対して一礼をして戻って行く。

 

「こいつは……」

 

 フェリーニは壊れたガンダムフェニーチェリナーシタを見てある事に気が付いた。

 ガンダムフェニーチェリナーシタの損傷は決して軽いとは言えない。

 だが、最後の戦国アストレイの一撃は制作に下半身を腰のパーツの間を破壊して、ガンプラが上半身と下半身が分かれるだけの損傷で収まるようになっている。

 

「アイツ……」

 

 単に止めを刺すだけなら、もっと簡単に一撃を与えるだけで良かったが、ニルスが敢えてこんなやり方をした理由は一つしかない。

 バトル後に修理が少しでも簡単に行えるようにすると言う事だ。

 最後の一撃を確実に勝利する為に粒子発勁で止めを刺されていたら、この程度では済まなかっただろう。

 それは単なる気まぐれなのか敗北を受け入れても尚、戦う姿勢を止めなかったフェリーニに対する武士の情けなのかは分からない。

 理由は分からないが、少なくとも最低限の破壊で済ませたと言う事実は事実だ。

 フェリーニはそれを好意的に取る事にした。

 ニルスの語る理由で本当に向こうに付いたか否かはともかく、ニルスは相手のガンプラを必要以上に破壊すると言う事はしなかった。

 

「悪い。負けちまった」

 

 ガンプラを回収して控え室に戻ったフェリーニを誰も責めたりはしない。

 これで連敗し、2勝2敗と状況をイーブンに戻されたが、バトルの内容はどちらも正々堂々とバトルした。

 その結果として今回はフェリーニが負けただけの事で、敗北自体は責められる事ではない。

 

「仕方がありませんよ」

「まぁ……ニルスの奴も腕を上げてたしな」

 

 バトル前にはガンプラバトルではなく、直接ニルスに殴りそうな勢いだったレイジもフェリーニとニルスのバトルを見てニルスの戦いから何かを感じとったのか、ニルスに対しての敵意は薄れているようだ。

 

「つっても、流れが悪いな」

 

 誰もその事に触れないが、最初の2戦での勝利で得たリードはマオとフェリーニが負けた時点で無くなっている。

 その流れを最初に作ったマオもばつが悪そうにしている。

 

「やっちゃった物は仕方が無いでしょ。次は私が出るわ。これ以上、負けが続かせる訳には行かないもの。そんな状態で単細胞馬鹿のレイジを行かせる訳には行かないわ。精々、私のバトルでも見て頭を冷やしてなさい」

「んだと!」

 

 アイラはそう言ってレイジの反論を無視して出て行く。

 

「だから落ち着けって、彼女の実力はお前らも分かってんだろ。それにアレだ。ああいう娘を日本では何つったけな……ああ、あれだツンデレ? 要するに最後はお前に任せるって事だろ?」

 

 アイラの言葉を言葉通りに受け取れば、単にレイジを馬鹿にしているが、仮にこのバトルでアイラが勝ったとしても、3勝だ。

 残るレナード兄弟かセイとレイジの2組で最後の一勝を勝ち取らねばらない。

 当然、残りの2戦は相手も勝たせないように手を打って来る事は確実だ。

 そうなれば、勝つのは次の1戦よりも難しい。

 ここでアイラが出ると言う事は最も勝つのが難しいであろう最後の1勝をセイとレイジに任せると言う信頼の証だ。

 普段は良く喧嘩をしている為、アイラの言葉を言葉通りに受け取っていたレイジもフェリーニにそう言われて、落ち着く。

 

「アイツ……恰好付けやがって」

 

 馬鹿にされた怒りも収まってレイジは最後を自分達に託したアイラのバトルを見守る事にする。

 そして、アイラの対戦相手が出て来る。

 

「サムライボーイの次はあの娘かよ」

「せやけど、楽勝やん」

 

 アイラの次の相手は世界大会に出場していたファイターなら知っているありすだ。

 ニルス同様に決勝トーナメントまで勝ち進むだけの実力は持っている為、クロガミサイドは連れて来ると言うのも納得が出来る。

 

「……どうだろうな」

 

 ありすの成績は決勝トーナメントの初戦でフェリーニに負けている。

 片やアイラは準決勝でマシロに敗北し、3位決定戦でセイとレイジに負けて4位だ。

 成績だけを見れば決勝トーナメントに残ったと言っても、世界でも上位の実力者のアイラとでは分が悪いのは誰の目にも明らかだ。

 しかし、実際に世界大会でありすとバトルしてありすを下したフェリーニはバトルの際に妙な違和感を感じていた。

 あの時は思いのほかあっさりと勝負を付いたからだと深く考えはしなかったが、このタイミングで出て来たとなると嫌な予感は拭えない。

 そんな不安を余所にありすはGPベースをセットして、ガンプラを置く。

 

「あのガンプラは! 何故彼女がアレを!」

 

 ありすのガンプラは世界大会で使用した物から変わっていた。

 セイ達は単にガンダムエクシアの改造機だと言う認識しかなかったが、タツヤだけは違った。

 あの時の記憶はおぼろげだが、ありすのガンプラはかつてタツヤがPPSEの前会長のマシタにフラナ機関のエンボディシステムによる洗脳化に置かれた時に使わされていたガンプラ、ガンダムエクシアダークマターそのものだ。

 ダークマターは元々は、アメイジングエクシアを更に改造した物でベースとなったアメイジングエクシアは修理されてタツヤの手元にある。

 ありすのダークマターはデータを元に作られたレプリカだろうが、一目みたけでもその完成度は以前のダークマターと同等かそれ以上だ。

 フェリーニの感じた違和感、使用ガンプラがダークマターと多くの不安要素のある中、アイラとありすのバトルが開始される。

 バトルが開始され、アイラが進みながらもありすのダークマターを探す。

 今回のバトルフィールドは宇宙。

 アイラのミスサザビーのファンネルが使い易いフィールドだ。

 ミスサザビーは見た目こそ変化はないが、アイラとレイジがセイにガンプラバトルを教えたのと同じように二人もセイからガンプラ作りを教わっている。

 セイに教わりながら、ミスサザビーをチューンしている為、性能は世界大会の時よりも向上している。

 控室のファイター達は単に世界大会のファイナリストと言う程度の認識だが、アイラは以前にありすがマシロ達の兄弟の末っ子だと聞いている。

 少なくともただの可愛いだけのアイドルではないと言う事は確かだ。

 

「あの子ってマシロの……」

 

 世界大会で見せた実力はともかくとして、ありすがマシロの妹だと言う立場がアイラは少し面白くはない。

 そんな事を考えていると、すぐにありすのダークマターを補足した。

 

「正面から?」

 

 奇襲を警戒していたが、ありすは正面から隠れる事も無く向かって来ている。

 

「おて柔らかに。お姉さん」

 

 マシロ曰くキャラ作りらしいテレビの中と変わらない愛らしいありすだが、撃って来るダークマターライフルの精度は精密で、ミスサザビーはスィートシールドで攻撃をいなしながらスィートソードのライフルで反撃する。

 

「悪いけど、幾ら可愛くしても負ける気は無いわよ!」

 

 スィートソードのビーム刃を展開してミスサザビーはビームを回避しながら接近する。

 射撃は正確だが、アイラの先読み能力を持ってすれば、かわしながら接近する事も容易い。

 ダークマターはダークマターライフルからビームサーベルを展開して迎え撃つ。

 

「せっかくの美人さんなのにそんなに怖い顔してたら台無しですよ」

「うっさい!」

 

 脚部の先端からビームサーベルを出しての蹴りをミスサザビーは繰り出すも、ダークマターは紙一重でかわす。

 

「そんなに足を上げるのははしたないですよ」

 

 ダークマターはGNバルカンを撃ちながら後退する。

 ありすの言動の事はアイラはどうでも良かった。

 今の一撃はバトルを決めるとまでは行かなくてもある程度の損傷を狙っていたが完璧にかわされた。

 腹部の拡散メガ粒子砲を撃ってみるもダークマターは上手くかわした。

 

(この子……強い)

 

 口では軽口を叩いているもののありすの実力は世界大会の時とは別人のいようだった。

 始めから油断をしていた訳ではないが、ありすの実力が未知数と言う事でアイラは気を引き締める。

 

「ファンネル!」

 

 真向からぶつかるだけでは勝機を見つけるのは難しいと判断したアイラはファンネルで揺さぶりをかける。

 

「スカートに武器を仕込むのも女の子としてどうかと思いますよ」

 

 ありすの言葉に耳を貸す事無く、アイラはバトルに集中する。

 

「ありゃ……ノリが悪いですね。それじゃこっちはこうしますよ!」

 

 ダークマターは腰のプロミネンスブレイドを貫く。

 プロミネンスブレイドの刀身が炎を纏うとダークマターはプロミネンスブレイドを振るう。

 プロミネンスブレイドを覆う炎は広がりファンネルを破壊して行く。

 

「その程度!」

 

 ファンネルを全部落とされたが、ミスサザビーは炎を突っ切ってダークマターに突撃する。

 ダークマターもダークマターライフルで応戦するが、ギリギリのところでかわしてスィートソードを振るう。

 勢いよく振るわれたスィートソードをダークマターはプロミネンスブレイドで受け止める。

 勢いをつけていたと言う事もあり、若干ながら2機の唾是り合いはミスサザビーの方が優勢に見える。

 

「流石世界大会のベスト4……だけどさ!」

 

 劣勢だったダークマターが赤く発光を始めるとミスサザビーを簡単に弾き飛ばす。

 

「トランザム!」

「それじゃ反撃行きますよ!」

 

 トランザムを起動させたダークマターは残像が残る程の速度でミスサザビーを圧倒する。

 

「さっきまでの勢いがありませんよ?」

 

 粒子を全面開放するタイプのシステムは粒子を肉眼で見る事が出来るアイラにとっては機体性能の向上するだけでなく、相手が見辛いと言う目暗ましの効果も副次的に起きてしまう。

 セイとレイジのスタービルドストライクのディスチャージシステムの放出量と比べると可愛いものだが、それでも見辛いと言う事には変わりはない。

 

「いつまでも……」

 

 ダークマターの攻撃をミスサザビーはギリギリのところで致命傷にはならずに防いでいる。

 

「好き勝手にしてんじゃないわよ!」

 

 ダークマターが接近して来るタイミングに合わせて、ミスサザビーはつま先からビームサーベルを出してカウンターの蹴りを繰り出す。

 アイラの粒子が見える故の粒子放出系のシステムとの相性の悪さは世界大会の3位決定戦で身を持って味わっている。

 そんな弱点をいつまでも抱えている訳がない。

 粒子が見えると言う能力自体はアイラにはオンオフの切り替えは出来ないが、自身の弱点として自覚していれば、多少なら何とかする事も出来る。

 ミスサザビーの蹴りがダークマターを捕えた……ように見えた。

 

「へぇ……情報だとこれに対応できない筈だったんだけどな。マシロの情報もあてにならないわね」

 

 だが、ミスサザビーの背後にはバックパックのないダークマターが回り込んでいた。

 

「さっきのは……」

「フェイク。結構簡単に引っかかってくれたわ」

 

 ミスサザビーが破壊したのがダークマターではなく、直前に分離させていたダークマターのバックパックであるダークマターブースターだった。

 普段なら見間違う訳もないが、トランザムによる粒子放出でアイラが相手を粒子の塊としか見え辛いと言う事が災いして、ダークマターとダークマターブースターを誤認させていた。

 背後に回ったダークマターはブライクニルブレイドをミスサザビーに突き刺す。

 そこを中心にミスサザビーに氷が広がって行く。

 

「ねぇ……貴女、世界大会の4位なんですってね」

「この程度の事で!」

 

 腹部の拡散メガ粒子砲が潰されたが、まだ負けた訳ではない。

 何とか氷漬けになる事を防ぐ為に体を動かそうとするが、関節部が凍りつき、ミスサザビーは動きを封じられている。

 すでにファンネルを使い切り、背後を取られている以上、ミスサザビーにダークマターを攻撃する手段はない。

 

「世界4位でこの程度」

「このバトルに勝って……」

 

 ミスサザビーを完全に氷漬けにしたダークマターはブライクニルブレイドを手放すと距離を取って、ダークマターライフルから最大出力でビームサーベルを展開する。

 

「……ガンプラバトルってのも大した事ないわね」

「レイジに……」

 

 氷漬けで身動きすら出来ないミスサザビーを無慈悲に背後からダークマターがビームサーベルを振り下ろす。

 最大出力のビームサーベルが氷漬けで動けないミスサザビーを氷ごと切り裂いていく。

 動けないミスサザビーは避ける事も防ぐ事も出来ない。

 

「繋がないと……」

 

 負ければ状況は最悪の物になり、勝って最後に繋ぐと言うアイラの想いを切り裂くかのようにビームサーベルはミスサザビーを一刀両断にした。

 バトルシステムがバトルの終了を告げる。

 それにより戦績は2勝3敗となり、状況は逆転され残り2戦の内、1度でも負ける事の出来ない窮地に立たされる事となった。

 

 

 

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