ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
マシロとユキトの兄弟対決が幕を開けた。
バトルフィールドはコロニー「ヘリオポリス」となった。
「ヘリオポリス……新世代の始まりの場所か。コイツは俺に新世代を作り出せって言っているような物だな」
マシロがそう言っていると、ガンダム∀GE-FXに高出力のビームが飛んで来る。
それをガンダム∀GE-FXはバックパックにアームで固定されている大型シールドで受け止める。
「あのシールドは!」
控室でバトルを観戦していたセイが思わず声を上げる。
一見するとガンダム∀GE-FXはビームを大型シールドで受け止めているように見えるが、良く見るとシールドの隙間にビームが吸い込まれているようにも見える。
「流石はセイ君です。あのシールドは君の作ったスタービルドストライクと同じアブソーブシールドです」
ガンダム∀GE-FXの制作に関わっていたニルスが説明をする。
ガンダム∀GE-FXはPPSEの情報を元にマシロが最強のガンプラに必要と思う技術は全て取り入れている。
その中にはビームに対して圧倒的な防御力を持つスタービルドストライクのアブソーブシステムが挙げられていた。
それを大型化し、腕ではなく、アームで稼働出来るようにする事でより広範囲をカバーする事が可能になっている。
「アレが兄貴のガンプラ……ずいぶんと貧相な癖して大した火力だな」
モニターには先制攻撃をして来たユキトのガンプラが映されている。
ユキトのガンプラはエクストリームガンダムをベースに両腕にGNドライヴとGNバスターライフル、GNシールドを装備されているくらいで大幅な改造はされていない。
マシロのガンダム∀GE-FXのベースとなっているガンダムAGE-FXとユキトのエクストリームガンダムはどちらも進化するガンダムだ。
マシロのガンダム∀GE-FXが戦いの中で他のファイター達のガンプラの技術を取り込んで多くの装備を持つのに対して、必要最低限の装備のみで、機体名すらもエクストリームガンダムで登録し、徹底的に無駄を省いたユキトのエクストリームガンダムは対極の進化を遂げている。
「それに完成度は俺のFXと同等……個人でここまで作り上げて来るかよ。どうせ片手間で作った癖に」
「この程度の事は資料を見れば誰でも出来る事だろう。こんな事に時間を費やしている連中の気が知れないな」
マシロのガンダム∀GE-FXはPPSEの技術班の技術を総動員しているが、ユキトのエクストリームガンダムは個人製作だ。
それも普段のクロガミグループの総帥としての仕事の合間に用意していた。
元々、ガンプラの制作において画期的な手法は滅多に出て来る事は無い。
大抵は先人達が確立した手法を手本に技術を会得するのが一般的だ。
それ自体は特別な流派でない限りはホビー誌などにも載っている。
ユキトからすれば、それらで得られる情報通りにガンプラを制作すれば、この程度の完成度のガンプラは簡単に作る事は可能らしい。
尤も、やり方が分かってもそれを実際に会得してガンプラ作りに反映させるにはそれなりの経験が必要になる。
「言ってくれるな。けど、やられたら倍返しにして返すのが礼儀だよな!」
ガンダム∀GE-FXはバックパックのフォトンブラスターキャノンを前方に転回する。
同時に大型アブソーブシールドに付いている6基のCファンネルが展開する。
Cファンネルはガンダム∀GE-FXの前方で円を描くように配置されると周り始める。
それによりフォトンリングゲートが形成された。
「だから……受け取れ!」
ガンダム∀GE-FXがフォトンブラスターキャノンを撃ち、フォトンリングゲートを潜るとガンダム∀GE-FXの撃ったビームに回転が加わると同時に威力が一気に上がる。
「アブソーブシステムだけじゃなくて、ディスチャージシステムも!」
「それにあの火力はワイのサテライトキャノンに匹敵……それ以上や!」
ガンダム∀GE-FXのフォトンブラスターキャノンはマオのガンダムX魔王のハイパーサテライトキャノンのデータを元にされている。
圧倒的な火力を維持する為にマオは周囲の粒子を集めていたが、マシロはスタービルドストライクのアブソーブシステムと組みわせた。
そこに同じくスタービルドストライクのディスチャージシステムのプラフスキーパワーゲートを合わせて更に火力を向上させると同時にリングを回転させる事で、ビームにドッズ系と同じ回転を加える事で、貫通力を上げた。
ガンダム∀GE-FXのドッズフォトンリングキャノンはエクストリームガンダムを飲み込んでコロニーの外壁に穴を空けた。
「これで終わったとか言うなよ」
「当然だ」
ビームの掃射が終わるとそこには中が見えない程の高密度の粒子を圧縮したGNフィールドを展開するエクストリームガンダムがいた。
「GNフィールドか……けど、こっちの最大火力が通用しないってのは流石にへこむな」
ガンダム∀GE-FXはバスタードッズライフルカスタムを連射する。
エクストリームガンダムはGNフィールドを解除すると、残像が残る程の速さでガンダム∀GE-FXの後ろに回り込む。
「機体が薄らと赤い……成程ね。考える事は同じかよ!」
ガンダム∀GE-FXが振り向きざまにバスタードッズライフルカスタムを向けるが、それよりも早くエクストリームガンダムがビームサーベルを振り下ろす。
バスタードッズライフルカスタムはビームサーベルで切り裂かれて、ガンダム∀GE-FXは肩のビームバルカンとガトリング砲で牽制するが、エクストリームガンダムは素早く後退する。
エクストリームガンダムは肉眼では分かり辛い程度に赤く発光している事をマシロは見逃さなかった。
マシロのガンダム∀GE-FXも内部フレームが常にスタービルドストライクのRGシステムを起動させた状態を維持しているように、ユキトのエクストリームガンダムも常に微弱ながらトランザム状態を維持しているのだろう。
それによって残像が残る程の機動性を確保している。
「機動力はこっちの十八番だってのに、てんこ盛りのFXとの相性は悪いな。それにコロニーに穴が開いたせいで空気が漏れてやがる」
ガンダム∀GE-FXはマシロの得意としている高機動戦が出来ない訳ではない。
だが、通常時は多くの武装を持つが故に機動力は余り出せない。
その上で先ほどマシロがヘリオポリスに穴を空けたせいでバトルシステムが更新されて、穴から空気が漏れている。
空気が漏れだした事で、ガンプラはその流れに巻き込まれている。
ユキトのエクストリームガンダムは装備が少ない為、機体重量も軽い事もあって空気が漏れる影響を余り受けないが、ガンダム∀GE-FXはその影響をモロに受けて更にスピードが出ない。
「先に穴を塞ぐか」
ガンダム∀GE-FXは左手のブライクニルランスを構える。
ブライクニルランスはアイラのキュベレイパピヨンのランスビットにガンダムエクシアダークマターのブライクニルブレイドを合わせた武器だ。
本来ならば、接近戦において相手を氷結させるための武器だが、周囲の粒子を氷結させる事も可能だ。
「行って来い」
ブライクニルランスの機能により先端から氷塊を作り出してヘリオポリスに空いた穴を氷塊で塞いだ事で空気の流れを止める事が出来た。
空気の流れを止めたガンダム∀GE-FXはバスタードッズライフルカスタムを失った事で開いた右手にバックパックに装備されているハイパーバズーカを構える。
「高速で動く相手にはコイツで動きを制限させて貰う」
ハイパーバズーカは多種多彩な弾頭を選択する事が出来る。
マシロはその中から特殊弾頭の一つを選択して放つ。
ハイパーバズーカから放たれた特殊弾頭は着弾する前に弾けて周囲にワイヤーが飛び出す。
これはレナート兄弟がマシロとのバトルで使用したワイヤートラップの応用だ。
ワイヤーには特殊な接着剤が浸透しており、一度でも触れたら最後、専用の除去剤を使わない限りは決して取る事は出来ない。
ガンプラにワイヤーを接着させる事で、ワイヤーにより機動力を封じる事が出来る。
「小細工を」
ワイヤーに触れれば動きを制限されるが、ワイヤーを避ける為にも行動が制限されてしまう。
だが、エクストリームガンダムのGNシールドが開閉すると、そこから胞子状のビームが多数形成されるとワイヤーを吹き飛ばす。
「胞子ビット持ちかよ」
エクストリームガンダムの胞子ビットはワイヤーを吹き飛ばすと、今度はガンダム∀GE-FXを狙う。
ガンダム∀GE-FXはブライクニルランスで周囲に小さい氷塊を作りだすと胞子ビットにぶつける。
だが、その間にもエクストリームガンダムはガンダム∀GE-FXの背後に回り込む。
「そう何度も後ろを!」
振り向きざまにブライクニルランスを突き出すが、ブライクニルランスがエクストリームガンダムを貫くよりも先にエクストリームガンダムがGNバスターライフルを放った。
ガンダム∀GE-FXはブライクニルランスを捨てて、本体を大型アブソーブシールドでビームを吸収して防ぐが、ブライクニルランスまでは守り切れずに破壊されてしまう。
ガンダム∀GE-FXはハイパーバズーカの通常弾頭を撃ちながら後退するが、通常弾頭の弾速ではエクストリームガンダムを捉える事は出来ない。
エクストリームガンダムはハイパーバズーカの弾丸を回避しながらも、胞子ビットをガンダム∀GE-FXの周囲にばら撒く。
「流石は兄貴だよ!」
大量の胞子ビットの攻撃をCファンネルを使って防ぐが、ハイパーバズーカに被弾し、ハイパーバズーカをパージする。
「反応速度はこっちの方が早いってのに!」
マシロが常人離れした反応速度で攻撃に対処しても、ユキトは対処した瞬間に次の手を打って来る。
まるで、マシロが次にどう来るかを事前に分かっているかのようだ。
これではマシロがユキトの動きに反応してから行動しても、それを読んだ上で次々と手を打って来る為、マシロは後手に回り続け胞子ビットによる飽和攻撃で被弾する。
「そっちがその気なら! こっちは力で捻じ伏せるだけだ!」
ガンダム∀GE-FXはバックパックの大剣、プロミネンスバスターソードを抜いて構える。
プロミネンスバスターソードの表面には粒子変容塗料が塗ってある。
それにより、プロミネンスバスターソードは粒子を変容させた炎を纏う。
これはエリカのセイバーガンダム・エペイストにバスターソードにニルスの戦国アストレイのサムライソード、ガンダムエクシアダークマターのプロミネンスブレイドを合わせた物だ。
炎を纏うプロミネンスバスターソードを大きく振るうと炎の斬撃がエクストリームガンダムに向かって行く。
それをエクストリームガンダムはGNフィールドを展開して防ぐ。
「GNフィールドなら実体剣で切り裂ける!」
ガンダム∀GE-FXは一気に加速してエクストリームガンダムに接近を試みる。
だが、ガンダム∀GE-FXの前に胞子ビットが飛来する。
「その程度!」
胞子ビットの攻撃を完全に見切ってガンダム∀GE-FXはプロミネンスバスターソードで切り払うが、エクストリームガンダムは逆にガンダム∀GE-FXとの距離を詰めるとビームサーベルを振るう。
ビームサーベルはプロミネンスバスターソードを持つ右手を狙うが、ガンダム∀GE-FXはプロミネンスバスターソードを手放すと右手のビームサーベルを出して受け止めて、エクストリームガンダムを弾き飛ばす。
弾き飛ばされたエクストリームガンダムはその勢いを利用した加速して距離を取る。
同時に胞子ビットを大量に出して追撃をさせないように置き土産も忘れない。
「流石にかわし切れないだろ!」
大量の胞子ビットはどんなにマシロの反応速度が速く、高い操縦技術を持っていたところで物理的に全てを捌いて防ぐには不可能な数を用意し、まさにビームの壁だ。
その壁を肩のビームバルカンとバックパックのガトリング砲でこじ開けるには火力が足りない。
大型アブソーブシールドでビームを吸収しようにも全方位から休みなく押し寄せて来る為、一つでは手が足りない。
「ならよ!」
ガンダム∀GE-FXの肩の装甲が稼動して、戦国アストレイと同様に第3、第4の腕をなり、ビームバルカンの先端からは突きに特化したビーム刃が形成されビームレイピアとなる。
2本のビームレイピアを前方に向けて強引に突破する。
「お前ならそうするだろうな」
しかし、それはユキトの読み通りの行動でもあった。
ビームの壁を突破すると全方位からの胞子ビットがガンダム∀GE-FXに襲いかかる。
それをビームレイピアを両腕のビームサーベルで捌くが、やがて大型アブソーブシールドのアーム部分に被弾してアームが破壊される。
「これで防御は崩れた」
大型アブソーブシールドが破壊された事で、エクストリームガンダムはGNバスターライフルを最大出力で放つ。
ガンダム∀GE-FXはCファンネルを集めてビームを防ぐが、防げたのは数秒でCファンネルが破壊される。
バトルが始まった時は誰もがこの光景を予想はしていなかった。
特にガンダム∀GE-FXの制作に関わっていたニルスとアランからすれば目の前の光景は信じられないだろう。
PPSEの技術班やニルスの知識を注ぎ込んで制作されたガンダム∀GE-FXと世界最強の座に付いているマシロと言う組みわせでここまで一方的にバトルが展開されている等あり得ない。
だが、実際にバトルはユキトが圧倒している。
その様子を控室ではただ見ている事しか出来ない。
「マシロがここまで一方的に追い詰められているなんて……」
マシロは勝つ為ならガンプラがボロボロになる事も厭わない。
だが、今回に限っては一方的にやられているように見える。
大量の胞子ビットを使って、マシロがどんなに攻撃に反応して防いでも次から次へと攻撃し続ける事で確実にダメージを蓄積している。
同時に確実に装備を潰している為、すでにガンダム∀GE-FXの装備の大半は潰されている。
そうしている間にも肩の装甲の片方がアーム部分が破壊され、体勢を崩したところにガトリング砲が破壊されてしまう。
「マシロが……負ける?」
この展開に誰もが思い始めた事を、アイラがポツリと零した。
誰もがマシロに勝つ事を目標にしながらも、未だに明確に勝つ為のビジョンが浮かばないマシロの負ける場面。
以前にもルワンが勝ちかけたが、あの時はルワンを油断させる為にわざとそう見せかけていたが、今回は違う。
「マシロ……君はこんなところで負けるのか? 君の力はそんな物なのか……僕を信じさせるんじゃなかったのか」
今回ばかりはマシロの誰もが望んでいる。
だが、現実は非常にもマシロが追い詰められている。
「流石にやばいな……」
胞子ビットの攻撃に大型アブソーブシステムを失った事でGNバスターライフルの砲撃を何とか防いでいるものの、マシロはかつてなく追い詰められている。
どんなに防いでも、ユキトは無限に手を打ち、こちらが被弾するまで終わらない。
まるでユキトは詰将棋でもやっているようだ。
「所詮、お前のやっているガンプラバトルとやらも、この程度のお遊びでしかないと言う事を思い知るが良い」
ユキトは淡々とマシロを追い詰めていく。
ユキトの中ではすでにマシロのガンダム∀GE-FXを戦闘不能に追い込むまでの手順が出来上がっている。
後は一切のミスをする事無くそこまで辿りつけば終わる。
「……ほんと、兄貴は凄いな」
GNバスターライフルのビームが肩を掠めて肩のビームレイピアが破壊される。
同時に胞子ビットが全方位からガンダム∀GE-FXを包み込むように襲い掛かる。
完全に全方位から来ている為、逃げ道はない。
「俺が何年もかけてここまで来たってのに簡単に追いつくんだからさ……だけど、俺はまだ……負けてない。負けてない!」
全方位からの胞子ビットがその包囲を狭めていく。
誰もがマシロの敗北を確信したが、包囲網の中から青白い光と共に胞子ビットが吹き飛ばされる。
「馬鹿な……」
今まで淡々とバトルを進めていたユキトの表情が初めて変わった。
ユキトの中ではこれで勝負がつく筈だったからだ。
胞子ビットが吹き飛び、ガンダム∀GE-FXが両腕からビームサーベルを展開した状態でそこに浮いていた。
「あんな機能を搭載はしてない筈だ!」
絶対絶命のピンチを乗り切った事がアランとニルスは本来、ガンダム∀GE-FXには実装されていない現象に驚きを隠せない。
ガンダム∀GE-FXにはバーストモードが搭載されているが、明らかにそれとは違う。
RGフレームだけでなく、全身に装備されているプラフスキー粒子の結晶体も光り輝いている。
同時に、レイジやセイ、アイラの持つアリスタも輝いている。
「何が起きているんだ」
「ありゃりゃ。流石の私もこれは予想外の事になっちゃったわ」
いつの間にか控室に居たユキネがそう言う。
ユキネにとってもこれは想像していなかった事らしい。
「一体、何が起きているんですか?」
「うーん。多分、しろりんの勝利への執念がガンプラに付いているアリスタが反応、その結果、ガンプラとの感覚のシンクロが極限まで達した事で完全にガンプラと感覚が一体化したって所だと思うんだけど」
「ガンプラと一体化? そんな事が可能なのですか?」
「さぁ? でも科学者としては目の前の事態は受け入れないと。実際問題としてさっきのアレは幾らしろりんが目が良くても操作時のタイムラグが全くないなんてありえない事よ」
胞子ビットの檻をガンダム∀GE-FXは両腕のビームサーベルで切り裂いた。
だが、その速度は並の人間ならば何が起きたのか分からない程の速さだった。
幾らマシロが反応速度は人並外れて、高い操縦技術があっても反応してから操作していては確実に間に合わない。
だからこそ、ユキトもアレで確実に勝利出来ると思っていた。
しかし、実際にはマシロが理論的にはあり得ない事を起こした。
それを理論的に説明すれば、マシロが反応してからガンプラを動かすまでのタイムラグを完全になくすしかない。
つまりは、マシロとガンプラが完全に一体化していないと不可能だ。
「ガンプラとファイターの一体化。いわば同化現象……アシムレイト。まさか、しろりんがガンプラバトルの新たな扉を開く事になるなんてね。くろりんが生きていたら泣いて喜びそうな事態ね」
「アシムレイト……(マシロ、君はまた先に進もうと言うのか)」
タツヤは無意識の内に拳を握り締めていた。
世界大会において、マシロにようやく追いついたと思ったが、マシロは更にその先へと進んだ。
それもガンプラと自身の感覚の一体化と言う常識では考えられない方法でだ。
(ならば、追いついて見せよう。君のライバルとして)
危機を乗り越えたガンダム∀GE-FXは胞子ビットの攻撃を掻い潜って行く。
装備の大半を失った事で、今は身軽となって本来の機動力を出せるようになっているだけではなく、操作時のタイムラグが限りなくなくなった事で、流れも変わりつつあった。
しかし、胞子ビットの一つが掠った事で、ガンダム∀GE-FXは体勢を大きく崩して地面に落ちていく。
何とか、体勢を整えてガンダム∀GE-FXは着地する。
「いって……(何が起きてんだよ。なんかさっきからFXの動きが俺の反応速度に完全に合ってると思ったら今度は掠った場所が痛いしよ)」
控室でユキネがマシロの身に起きている現象を解析している事など、知るよしもないマシロは自分がガンプラバトルの新しいステージに到達していると言う自覚は無い。
だが、ガンダム∀GE-FXが自分の反応速度に追いついている事や、被弾した場所が痛いと言う事はすぐに結びついた。
(なんだかよく分からんが、この調子の良さとこの痛みは連動してるって事か。まぁ、そう都合よくメリットだけのシステムは無いよな。だけど……その程度か)
被弾すれば、被弾した場所と同じ場所が自分もダメージを受けると言う事は察しが付いている。
ガンプラの被弾した場所が同じようにダメージを受けると知るも、マシロは気にした様子はない。
(勝つ為ならお前の受ける痛みなんてのは大した事は無い)
両腕にビームサーベルを展開して、ガンダム∀GE-FXはエクストリームガンダムへと向かう。
エクストリームガンダムは胞子ビットとGNバスターライフルで応戦しながら、ガンダム∀GE-FXを迎え撃つ。
すでに勝利を決める筈だった攻撃で勝負がつかなかった事で、エクストリームガンダムの攻撃は今までのような計算し尽くされた物ではない。
ガンダム∀GE-FXは胞子ビットをビームサーベルで切り裂き、GNバスターライフルのビームをギリギリでかわす。
ビームが掠り、掠った場所が痛むがマシロは気にしない。
勝つ為であれば、自分のガンプラが損傷しようが構わないように、自分が痛かろうが構わない。
ガンダム∀GE-FXのビームサーベルがエクストリームガンダムのGNバスターライフルを切り裂く。
エクストリームガンダムは胞子ビットをばら撒きながら後退する。
それをガンダム∀GE-FXは胞子ビットを捌きながら追撃する。
「何故だ。何故この私が、マシロに押される」
「何でだろうな。多分、兄貴は一人で戦ってるからだと思う。だけど、俺は一人じゃない。こんな俺でも信じようとしてくれる酔狂な奴がいるんだよ」
「くだらん。所詮、人は一人で生きていくしかない。他者等使えるか否かだ」
エクストリームガンダムはガンダム∀GE-FXのビームサーベルをビームサーベルで受け止めるが、常時RGシステムを使っているガンダム∀GE-FXの方がパワーは上だ。
ユキトにとっては他人は自分にとっては使えるか使えないかでしかない。
それは兄弟とて例外ではない。
「多分、兄貴は知らないけどさ……一人ってつまらないんだよ」
マシロも最近になって分かって来た事がある。
今までは一人でCPUを相手にバトルをする事も多かった。
だが、一人でやるバトルは味気ない。
どんなに実力差があっても生の人間とのバトルの方が充実していると言う事にだ。
「父さんもそれを知っていたから、俺達を集めたんだと思う。俺達はその才能が故に孤立してた。一人でいる事のつまらなさを知っている」
マシロの兄弟たちは特出した才能を持つが故に回りに理解されず馴染む事無く孤立した者も少なくはない。
マシロ達の父であるキヨタカがそんな兄弟たちを集めたのは単に才能を活かす環境を与えるだけではなく、同じ痛みを知るからこそ理解し合える真の家族となり得るとして引き取ったのではないかとマシロは考えていた。
「戯言を……」
「父さんは人を切り捨てるんじゃなくて、人を活かす人だった!」
ガンダム∀GE-FXはバックパックの中で唯一、ユキトが破壊していないフォトンブラスターキャノンに付いているビームソードを抜いた。
「兄貴が父さんの後継者だって言うならさ!」
ガンダム∀GE-FXがビームソードで切りかかり、エクストリームガンダムは後退しながらGNバスターライフルを威力を絞って連射する。
「まずは父さんのやっていた事と同じラインに立って見せろよ!」
エクストリームガンダムのビームを掠りながらも、距離を詰めてビームソードを振り下ろし、エクストリームガンダムはシールドにGNフィールドを展開して受け止めるが、パワーではガンダム∀GE-FXの方が優勢だ。
「父を超えるのは息子の務めだろ! 必要のない人間を切り捨てるなんて誰でもやれるようなやり方してんなよ!」
ビームが掠った場所が痛むがマシロは気にせずに突っ込んで行く。
「父さんはそれが出来る人なんだよ。だから、その血を引く兄貴だって!」
「だが、そんな父さんは無能な凡人に殺された。そんな奴らを使う等あり得ない事だ。世界を動かすのは我らのような限られた一部の人間だけで十分だ」
「確かに、いつの時代だって世界を変革させて来たのは俺達のような天才かも知れない……だけど、いつの時代だって世界を支えて来たのはその他大勢の凡人だったんだよ。父さんはそれを知ってた!」
バーストモードが起動し、ガンダム∀GE-FXは青白く輝く。
「だから兄貴も父さんのやり方以上のやり方で世界を動かして見せろよ! そんで、俺に自慢させろよ! 俺の兄貴は地球圏一の兄貴だって!」
バーストモードを起動したガンダム∀GE-FXは武装を失って軽量化したと言う事もあり、機動力でもエクストリームガンダムと対等以上となっている。
ビームソードで攻めたてるガンダム∀GE-FXをエクストリームガンダムは上手くかわしている。
「ガンプラバトルしか能のない俺だって世界一の兄貴になれてんだ。大抵の事は完璧にこなせる兄貴なら出来ないとは言わせない!」
徐々に圧倒されて行くエクストリームガンダムだが、今までは肉眼では確認し辛い程度で使っていたトランザムの出力を上げた事で赤く発光を始める。
バーストモードを起動させたガンダム∀GE-FXとトランザムを最大出力で使用しているエクストリームガンダムは機動力ではほぼ互角だが、常にRGシステムを使っている分、正面からのぶつかり合いではガンダム∀GE-FXの方が優勢だが、エクストリームガンダムには遠距離からの攻撃が出来る。
「この期に及んで下らない事を!」
エクストリームガンダムはGNバスターライフルを最大出力で放つ。
ガンダム∀GE-FXはバーストシステムを使っている事もあって、かわす事も無く正面から突っ込む。
高出力のビームが直撃するが、ガンダム∀GE-FXの損傷は軽微だ。
尤も、ガンプラと一体化状態にあるマシロには全身に同じだけの痛みが走るが、マシロは操作に集中している。
強引にビームを突っ切ってビームソードをGNバスターライフルに突き刺す。
ガンダム∀GE-FXはビームソードを手放して、両腕からビームサーベルを出して連続攻撃を行うも、エクストリームガンダムもビームサーベルで上手くいなして行く。
「下らなくなんてない! 兄貴は妹や弟の前で恰好を付けたがる物だし、弟や妹からすればカッコいい兄貴は自慢なんだよ!」
それはマシロ自身が良く分かっている事だ。
かつてはマシロも兄だった事がある。
兄として妹の前で恰好を付けたかった。
同時に今は弟と言う立場としてカッコいい兄がいるだけで他者に自慢できる。
だからこそ、マシロは今のユキトが許せない。
マシロ達の父であるキヨタカは人を活かす事に長けていた。
どんな人材であれ適材適所を見出し、誰も切り捨てる事なく、その者の持ちうる能力を最大限に引き出していた。
そんな父の後を継いでおきながら、誰でも出来るやり方をしているユキトの事はカッコいいとは思えない。
かつてのユキトは確かに選民的な思想を持ってはいたが、キヨタカの元で人を活かすやり方を学んでいた。
その上で、人の上に立つべき人間がいるのだと言っていた。
しかし、キヨタカの死後は方針を一転して、徹底的な能力主義に走っている。
マシロに取っては、現実的ではない理想論を貫いて、それで成功し続けていた父の姿は誰よりもカッコよく見え、ユキトにもそんなやり方を望んでいた。
「兄貴は他人は眼中になくて見下してすらいないから分かんないけどさ。兄貴の言う取るに足らない凡人がいるから俺達才能を持って生まれて来た天才は追いつかれないように出来る。俺はそうして来た。他者より先に、他者より上に! これはその果ての強さなんだ! だから一人で誰からも脅かされずに停滞している兄貴には止める術などはない!」
ユキトは他人の事を能力でしか見てはいない。
故に、他人の事を客観的にしか見てはおらず、他人の事を意識すらしていない。
それは他人の追従すらも許さなかった圧倒的な能力を持つユキトだからこそできた事だ。
マシロはガンプラバトルで勝ち続ける為に常に他者を意識して負けないようにして来た。
その為に、自分を脅かす可能性のあるファイターは徹底的にマークし、自分の実力を磨き、それに見合ったガンプラを用意した。
その結果として、マシロはガンプラバトルにおいては最強の称号を維持し続けている。
「兄貴は一人で生きていくしかないって言うけど、俺のこのガンプラにはいろんな奴の想いが詰まってる」
ガンダム∀GE-FXは世界で戦う多くのファイター達が今まで培って来た経験や技術が詰まっている。
「俺を信用しようとして想いを託してくれた奴もいる。この状況に持ち込むのだって俺一人じゃ何も出来なかった」
好き勝手に行動して来たマシロの事をタツヤは今でも信用しようとしている。
ユキトと対峙しているこの状況を作り出したのはマシロだが、この状況を作りだすだけでもマシロ一人では到底出来い。
「今、ここにいるのは俺一人だけど、もう……俺は一人でバトルをしなくても良い! 今度は強がりなんかじゃない。敢えて言う。今の俺は最強だ!」
バーストモードとトランザムを使う二機は高速でぶつかり合う。
GNバスターライフルを失うも、エクストリームガンダムには胞子ビットがある為、胞子ビットを上手く使う事でパワーの差を補っている。
「だから、俺は兄貴に勝つ! 勝って俺の強さの方が正しいと証明してみせる!」
ガンダム∀GE-FXはアームを破壊されて落とした肩の装甲を回収する。
肩の装甲は戦国アストレイと同様に手として機能する為、その手を右腕に装着する。
元々、肩の装甲は手に装着する強化装置としての機能も持っている。
ユキトが簡単に破壊出来るアーム部分を狙って破壊している為、その機能は生きている。
腕部に装着すると、バーストモードの青白い光が腕部に集中して行く。
「アイツ! ビルドナックルまでパクってやがったのか!」
控室でレイジが叫ぶ。
ガンダム∀GE-FXの腕部に光が集まって行くのはセイとレイジのスタービルドストライクの必殺技であるビルドナックルと同じだ。
「アレはビルドナックルを元にしていますが、ビルドナックルとは違い、バーストモードで放出している超高濃度の圧縮粒子を集めているのでその威力はビルドナックルとは桁違いです」
制作にかかわったニルスが解説を入れる。
ビルドナックルはRGシステムの粒子を一点に集中する事で必殺の威力を得ている。
だが、マシロはRGシステムに使われる粒子とは桁違いの粒子量であるバーストモードの粒子を使っている。
粒子の使用量の少ないRGシステムでも世界レベルに通用するだけの必殺技となるビルドナックルを粒子量の多いバーストモードの粒子を使えば当然、一点に集められた粒子の密度は違う。
「マキシマム・アルティメット・スペシャル・インパクト・ロイヤル・オーバーナックル。通称マシロナックル。あの一撃はまさに必殺の一撃です」
その威力を知っているニルスはそう断言出来た。
ニルスがそう断言する以上はそれ相応の威力を持つ事は確実で誰もが息をのみ、技の名称に突っ込みを入れる者はいない。
「行くぞ。兄貴!」
ガンダム∀GE-FXは一気に加速すると、エクストリームガンダムに一直線に突っ込んで行く。
エクストリームガンダムは胞子ビットを差し向けて迎え撃つ。
右腕に粒子を集中している為、バーストモードは解除されているが、気にせずに突っ込む。
胞子ビットに正面から突っ込むが強引に突破する。
エクストリームガンダムは右手にビームサーベルを持ちながら、左腕のシールドに最大出力のGNフィールドを展開して受け止める構えをする。
ガンダム∀GE-FXの攻撃をGNフィールドで受け止める。
「そんな物で今の俺を止められると思うなよ!」
GNフィールドを正面からぶち抜こうとするガンダム∀GE-FXだが、腕部にヒビが入って行く。
元々、圧倒的な粒子量を使うバーストモードの負荷に本体が耐え切れない時期があった。
それによる自壊を防ぐ為にマシロは粒子を一点に集中する事で、負荷で自壊する部分を一か所に留めていた。
マシロナックルはそれと同じで始めから肩の装甲を使い捨てにする事を前提とした技だ。
自身の威力の負荷で、腕部が限界を迎えるかと思われたが、ギリギリのところでGNフィールドをぶち抜いてGNシールドに腕部が練り込むが、そこで攻撃が止められてしまう。
マシロの渾身の一撃が止められた事で、控室でもこれまでかと思われたが、GNシールドにヒビが入り、ヒビはエクストリームガンダムの腕にまで広がって行く。
この一撃はビルドナックルだけではなくニルスの戦国アストレイの粒子発勁の合わせ技だった。
粒子発勁は当てれば一撃で相手を破壊出来る必殺の一撃だが、最大の欠点として粒子の反応しないプラスチック以外の物を間に挟んでしまえば、それ以上は粒子を流し込めないと言う事だ。
そこにビルドナックルの破壊力を加える事で、金属パーツを仕込んでいようとも、ビルドナックルによる外部破壊により金属パーツを破壊した上で粒子発勁で粒子を流し込んで内部から破壊する事が出来るようになっている。
つまりはGNフィールドを打ち破って拳がGNシールドに到達した時点で必殺の一撃を撃ち込んだと言う事だ。
この一撃で勝負はついたかに思われたが、ユキトはヒビが胴体に到達する前に、ビームサーベルで左腕を切り落として、それ以上の破壊を食い止める。
そのまま、ビームサーベルをガンダム∀GE-FXに目掛けて突き出す。
ガンダム∀GE-FXは渾身の一撃でバーストモードが解除され、回避行動も防御体勢も取る事が出来ずにビームサーベルはガンダム∀GE-FXの腹部に突き刺さる。
「ここまで食らいついた事は褒めてやろう。その健闘を認めて今日の事は不問にしてやる」
エクストリームガンダムはガンダム∀GE-FXからビームサーベルを貫く。
ビームサーベルが抜かれたガンダム∀GE-FXは降下して行く。
やがて、ヘリオポリスの地面に仰向けの状態で落ちた。
何度も、窮地を耐えてユキトを追い詰めたが今後こそはガンダム∀GE-FXはまともに立ち上がる事出来そうに無い。
勝負が完全に付いたようにも見えてが、マシロの目はまだ死んではいなかった。
「安心したよ。兄貴。アンタも人間だったんだな」
「何だと?」
それはほんの一瞬の出来事だった。
ユキトが勝利を確信し、バトルシステムがバトルの終了を告げるのを待つほんの一瞬。
その一瞬が致命的な隙となった事にユキトが気づいた時にはすでに遅かった。
エクストリームガンダムの背後からガンダム∀GE-FXのコアファイターがエクストリームガンダムに突っ込みフォトンブラスターキャノンの銃身の先端をぶつけて来た。
ガンダム∀GE-FXにはベースとなったガンダムAGE-FXと同様にコアファイターが内蔵されている。
マシロはそれを渾身の一撃がGNフィールドを貫く前に分離させていた。
エクストリームガンダムが戦闘不能にしたガンダム∀GE-FXの本体からはすでにコアファイターが分離した状態である為、本体が戦闘不能になってもバトルは継続している。
本来ならば、完全に決着が付くまで油断する事のないユキトも、自分の予想を超えるマシロの戦いを前にいつもの余裕を失っていた。
だからこそ、予想を超えて食らいつくマシロに勝利を確信した時に隙が生まれた。
マシロはその隙を見逃す事はしない。
「この距離ならGNフィールドも張れないだろう!」
コアファイターに唯一残されている武装であるフォトンブラスターキャノンの銃身はエクストリームガンダムの背部に押し付けている。
不意を付いて、突っ込んでいる為、胞子ビットが使えないエクストリームガンダムには反撃の手段はない。
そして、フォトンブラスターキャノンのエネルギーは最大出力では使えないが、アブソーブシールドで吸収した粒子が残されている。
ユキトは的確に武装を潰したが、フォトンブラスターキャノンはアブソーブシールドとの併用でなければまともに使用できないと考えて、あえて狙わずに残しておいた。
まともに使えない武器を残す事でフォトンブラスターキャノンをデットウェイトにして、ガンダム∀GE-FXの機動力を少しでも削ろうとしていたが、それが仇となった。
最大出力で使えずとも、背後からゼロ距離で撃ち込まれれば流石のエクストリームガンダムもGNフィールドで身を守る事も耐えきる事も出来ない。
「俺が……負ける?」
「俺の勝ちだよ。兄貴」
フォトンブラスターキャノンがゼロ距離で放たれて、エクストリームガンダムはビームに飲み込まれた。
最大出力でないにしても、並のガンプラの火力ではない為、一撃でエクストリームガンダムは消し炭となる。
エクストリームガンダムを消し飛ばしたフォトンブラスターキャノンだが、ゼロ距離での砲撃と言う本来の仕様に無い使い方をした事で、銃身への負荷が大きく、すぐにコアファイターからパージされる。
それによって完全にコアファイターは全ての武器を失った事になるが、エクストリームガンダムを完全に破壊する事が出来た。
ユキトのエクストリームガンダムが破壊された事で、バトルシステムがバトルの終了を告げた事でマシロとユキトの兄弟対決に終止符が打たれた。