ガンダムビルドファイターズ White&Black   作:ケンヤ

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Last Battle「始まりのバトル」

 マシロとユキトとのバトルの決着後にありすが起こした騒動でメインスタジアムが完全に崩壊するも、事前にユキトが救助隊を用意していたと言う事もあって死亡者が出る事は無かった。

 だが、スタジアムは完全に崩壊し、流石にスタジアムの崩壊そのものは誤魔化し切れない為、表向きは新スタジアムの建設の為だと言う事になっている。

 真実を知る者達も事情が事情なだけに真実を公にする気は無く、新スタジアムの建設は続いている。

 あのバトルからクロガミグループは少しつづ変わり始めている。

 ユキトも少しでも父に近づく為にまずは自分の直属の部下や兄弟たちの事を良く理解しようと努力を始めている。

 すぐに変わらないが、それでも他者を理解しようとしているのは大きな一歩と言えた。

 そして、ガンプラバトルの方は大きく変わり始めている。

 世界大会においてプラフスキー粒子の製造元であった大型アリスタが破壊された事によるガンプラバトルの存続問題は、ニルスが新プラフスキー粒子の製造成功によって次の世界大会は問題なく開催される事になった。

 同時に今までは粒子に関係する技術の全てはPPSE社が独占し、それにより一部のPPSE関係者がガンプラバトルで有利になると言った事態が起きていた為、粒子やそれに伴うバトルシステム関係の利権は全て、ニルスのスポンサーでもあったヤジマ商事に譲渡された。

 これによってPPSE社はガンプラバトルの公式戦の管理運営のみを行う事となった。

 そんなガンプラバトルの変化はガンプラバトルに関わりのない大勢からすれば、大したことではなく、それ以上に世界的なアイドルとして活躍していたありすの突然の無期限の活動休止の方が世界を驚かせていた。

 それから数か月が経ち、季節は春を迎えようとしていた。

 ガンプラバトルが変わるも、イオリ模型店では最近ではすっかりとおなじみの光景がそこにあった。

 

「今日もアイラさん機嫌悪そうだね」

「うん……ここ最近はずっとあんな感じなんだよ。レイジが向こうに帰ってるからまだマシな方だよ」

 

 セイが苦笑いしながらチナにそう言う。

 あの事件から怪我もなく無事に帰って来てから数か月、日増しにアイラの機嫌が悪くなっていた。

 理由はマシロにあった。

 崩壊するスタジアムから重症を負いながらもマシロは救出された。

 そのままクロガミグループ系列の病院に搬送されて一命は取り留めたと言う連絡は受けているが、それ以降何の連絡も無い。

 最初の1、2か月はマシロの状態を考えると仕方が無いと思っていたが、流石に会いに来ると言っていたにしては遅すぎる。

 こちらから連絡を取るにも肝心の連絡先を知らず、会いに来ると言っていた手前、こちらから会いに行くのも癪だと意地を張って、待っているが待てどもマシロが会いに来る事はおろか、連絡の一つもない。

 アイラの機嫌が悪い為、下手に刺激すると切れかねない。

 こんな時にレイジが居れば店の外にまで聞こえる程の大ゲンカになるだろう。

 レイジは現在はアリアンに帰っている。

 時折、アリアンに顔を出して来ると言って帰ってはいたが、最近では向こうにいる時間の方が長くなっている。

 レイジ曰く、王子としての立場上色々とあるらしい。

 レイジが異世界の王子と言う事は未だに信じがたい事だが、いずれはこちらに来る事も出来ない程忙しくなるとセイは察してこの時間も長くはないと漠然と思っている。

 レイジとアイラが喧嘩になっても母親のリン子は喧嘩する二人を微笑ましく見ているだけで、特に止める事はしない。

 最終的に店に1台しかないバトルシステムを使ってのガンプラバトルに発展する。

 レイジとの時間は余り長くは無い為、セイも少しでもファイターとしての実力を付ける為に練習をしたい。

 レイジやアイラでは練習にならない為、最終的にファイターとしての実力はセイと殆ど変らないチナと二人で練習する事は一番だと言う事になり、放課後や春休みはチナが空いている日は一緒に練習をしている。

 

「店の方は母さんやアイラさんに任せておけばいいから僕達は練習の方を始めてようか」

 

 機嫌の悪いアイラを刺激しないように、セイとチナはこっそりとバトルシステムの方に向かい、日課となっている練習を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……想像以上だな」

「全くだよ」

 

 三代目メイジンカワグチこと、ユウキ・タツヤとアランは目の前の光景に軽く圧倒されていた。

 タツヤは休学していた聖鳳学園を卒業し、今はメイジンカワグチとして正式にPPSEの社員と言う扱いとなっている。

 そして、タツヤはアランと共に静岡で建設されたPPSEの施設の視察に来ていた。

 

「ガンプラ塾を母体に世界で活躍するファイター、ビルダーを育成する専門学校、ガンプラ学園か」

「まさか、入院中に思いついてこの春から開校にこぎつけるなんてね」

「それに関しては同感だよ。入院中から何か企んでいるとは思っていたが……」

 

 二人が視察している施設は、かつて二代目メイジンが行っていたガンプラ塾を母体として、マシロが設立したガンプラの専門学校だ。

 入院中に何を思ったのか、次世代のファイターを育てると言い出したマシロが自らの伝手を最大限に利用して、僅か数か月で完成させて、この春から開校する予定となっている。

 

「僕の甥っ子もここに1期生として入学する予定だけど、ここの施設はまさにガンプラの制作やバトルの実力を高める事のみに特化しているよ。下手なプライベートチームとは金のかけ方が近い過ぎる」

「マシロのやる事だからね。だからこそ、気を付けなければならい。かつてのガンプラ塾と同じ間違いを犯さないように」

「分かっているさ。だから、僕もここで講師をする仕事を受けたんだよ」

 

 アランはPPSEの技術主任の傍らで、ガンプラ学園で講師をする予定だ。

 ガンプラ学園は将来的にPPSEの社員や次期メイジンを育成すると言う目的を持っている。

 学園の理事長はPPSEの会長でるマシロが兼任する予定だ。

 ガンプラ学園は世界で活躍する事を念頭に置いている為、開校すれば世界を目指す若者たちが切磋琢磨する事になる。

 それはかつてのガンプラ塾と同じで、マシロの勝つ事に拘る姿勢はガンプラ学園にも強く反映し、場合によってはガンプラ塾と同じ過ちを繰り返しかねない。

 タツヤも勝ちに拘る姿勢を否定はしないが、勝つ事に拘ると言う事は相手の事を疎かにし兼ねない危険性も持っている。

 だからこそ、アランはマシロからガンプラ学園で講師をして欲しいと言う話しを受けた時に渋りながらも受けた。

 

「それで、肝心の彼はどこに? 僕の方に所在を確認する連絡が来たんだけど」

「ああ……彼なら」

 

 すでにマシロはPPSEの会長として復帰している。

 だが、肝心のマシロは周囲に何も告げずにフラりといなくなる事が多い。

 大抵は仕事をサボりガンプラバトルを行っている事が多く、マシロと個人的な付き合いのあるアランやタツヤ等は良く秘書の方からマシロの居場所についての確認が来る。

 今回はアランはマシロの居場所については知らないが、タツヤは知っているようだ。

 

「僕も視察の仕事が無かったら見に行きたかったんだけどね」

 

 タツヤは軽く肩を竦めて空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある国でイオリ・タケシは相変わらず子供たちにガンプラを教えて回っていた。

 セイの方から大まかな事情を聴いて、一度はイオリ模型店に戻って模型店の作業室に籠っていたが、今は世界を回ってガンプラを広めている。

 

「約束を果たしに来た。イオリのおっさん」

「来ると思っていたよ」

 

 子供たちにガンプラの作り方をレクチャーしていたタケシの前にマシロが現れた。

 スタジアムの崩壊で重傷を負ったマシロは今ではすっかりと回復して、かなり前に退院していた。

 そして、満を持してタケシのところにやって来た。

 

「場所を変えようか。少し話したい事もあるしね」

 

 子供たちに分かれを告げて、タケシとマシロは場所を変える。

 町の路地に入ったところに初期型のバトルシステムを見つけて、二人は近くのベンチで腰を据える。

 

「怪我の方は?」

「問題ないさ」

 

 マシロはそう言って右手をタケシに見せる。

 それを見たタケシは少し表情が暗くなるが、マシロは気にした様子も見せずに右腕をいじくる。

 命こそは助かったマシロだが、救助時に瓦礫で右腕を挟まれており、流石のクロガミグループ系列の病院と言えども右腕を直す事は出来なかった。

 右腕を失った事でファイター生命が一度は絶たれたマシロだが、兄の一人で機会工学に専門家であるリュックが義手の研究をしていた事を思い出して、リュックの最新式の義手を付けて、リハビリを行った。

 その甲斐もあって、マシロの右手はかつてと同じだけの細かい動きも出来るようになっている。

 

「この義手は凄いんだよ」

 

 マシロがそう言うと、義手の指から小型のニッパー、ヤスリ、瞬間接着剤、速乾性のパテ、ガンダムマーカー(白)が出て来る。

 これはマシロが折角義手にするなら色々とギミックを仕込みたいと無理を言った結果だ。

 義手を自慢げに見せる辺り、右手を失った事に関してはマシロは落ち込んでいないようで、タケシも一安心した。

 

「それは何よりだ。だけど、PPSEの会長がこんなところで油を売っていていいのかい?」

「良いんだよ。ミズキの奴、ガンプラは一日6時間までって言い出すんだぜ? 兄貴は兄貴で俺の私生活には色々と文句をつけて嫁でも貰えば少しはマシになるかも知れないって言い出してさ、最近は顔を合わせる度にお見合い写真を見せてくんだぜ」

 

 あの一件で兄弟の仲は少しつづ改善されつつある。

 尤も、マシロはユキトから普段の生活に問題が多いと指摘されている。

 PPSEの会長としての職は退く気は無い為、元々は傀儡としてだった会長から本当の会長としての仕事をする筈がマシロは基本的に好き勝手にやっている。

 それでは当然、会社としては成り立たない為、好き勝手にやるマシロに堂々と意見を言える秘書として、かつてはマシロの世話係をしていたシオン・ミズキを会長秘書としてPPSEに入社させた。

 元々、ミズキは大抵の事はそつなくこなせる事もあって、マシロが仕事をまともにしない分、ミズキがそれを補ってPPSEは何とかやって行ける状態だ。

 だが、流石にミズキにマシロの私生活にまで管理させるのは申し合分けがないのか、私生活に関してはマシロを強制的に結婚させてその妻に管理させようと動いているらしい。

 今まで好き勝手に生きて来た分、兄弟間の関係が改善される事での不満を愚痴るマシロを見てタケシも家族も上手く動き出していると感じていた。

 

「それはそうと、セイから連絡があったんだけど、いい加減、アイラちゃんに会いに来たらどうなんだい?」

「それは無理な相談だな。そもそも、俺はあいつに『全て』が終わったら会いに行くって言ったからな。俺はまだ全てが終わったとは思っていない。寧ろこれから始まるんだよ。家族間の問題は解決したけど、俺のガンプラバトルはこれからも続く。俺がガンプラバトルを止める時は死ぬ時で、その時が来てようやく全てが終わる。だから、それまでは会いに行く気はないさ」

 

 アイラを納得させる為に会いに行くと言った物の、マシロはアイラに会いに行く気は無かった。

 今更、マシロに話す事はないからだ。

 

「悪いとは思ってるけどさ。この先、生きていればそう言う理不尽な事も多いし、いつかは受け入れる事も出来る。アイツの人生に俺は必要ないと思うしな。俺とアイツはもう別の人生を歩いている。俺はもう、自分に嘘をつく事を止めたから、俺はアイラに会いに行くつもりはないし……ぶちゃけ、アイツ怒ってるだろうからな。あったら確実に一発殴られる」

「そうか……」

 

 タケシもそれ以上はこれに関しては追及する事は無い。

 無理にマシロを連れて帰ったところで、マシロはちゃんと話す事は無い為、強制しても拗れるだけだ。

 いずれは顔を合わせる機会が訪れるかは神のみぞ知る事だが、いつかきっと話しが出来る日が来る事を願うだけしか出来そうにない。

 

「んな事よりも、バトルやろうぜ」

 

 元より、世間話をする為にタケシの元を訪れた訳ではない。

 マシロはタケシと騒動が終わった後にバトルをする約束をしていた。

 今日はその約束を果たす為に来た。

 

「良いだろう。今日の為に最高のガンプラを用意してある」

 

 タケシも遠からずこの日が来る事を確信していた。

 その為にイオリ模型店に帰ってマシロが来た時の為のガンプラを用意して来た。

 これ以上、二人が語る事などは何もない。

 

「行こう。AGE-1……このバトルは終わりじゃない。このバトルに勝って俺達は次に進むんだ」

 

 マシロは今日の為に用意して来た新たなガンプラ、ガンダムAGE-1 リブートをバトルシステムの上に置く。

 かつて、世界大会の決勝戦で使用したガンダムAGE-1を徹底的に改修して作り込んだのがガンダムAGE-1 リブートだ。

 見た目こそは通常のガンダムAGE-1と同じだが、徹底的に作り込んでき来た事で完成度は高い。

 一方のタケシのガンプラは以前にマシロとバトルした時にも使用していたガンダムだ。

 以前と同じガンダムではあるが、マシロとのバトルの為にタケシのビルダーとしての全てを注ぎ込んで作り込んでいる。

 更に二人が戦うバトルフィールドは奇しくもあの時と同じサイド3のコロニーでバトルが開始される。

 バトルが開始され、タケシのガンダムがビームライフルで先制攻撃を行う。

 マシロのガンダムAGE-1 リブートは最低限の動きで回避する。

 多少のフェイントを入れるが、あの時とは違いマシロはタケシのフェイントには全く釣られると言う事は無い。

 互いにライフルを撃ち合いながら、速度を緩める事も無く突っ込む。

 どちらもギリギリのところでビームをかわしている。

 そして、そのまま二人のガンプラはシールドを掲げて激突する。

 

「相当ガンプラを作り込んで来たみたいだね」

「そっちもな!」

 

 シールドでぶつかり合う2機のパワーは互角だ。

 ガンダムがシールドから頭部だけを何とか出して、ガンダムAGE-1 リブートをバルカンで狙うが、ガンダムAGE-1 リブートは体勢を低くしてかわす。

 同時にガンダムに対して足払いをするが、ガンダムは上空に飛んで避ける。

 そのまま逆さになりながらも、ガンダムAGE-1 リブートの背後まで飛び上がるとビームライフルでガンダムAGE-1 リブートの背後を狙う。

 だが、ガンダムAGE-1 リブートは腕だけを動かしてのシールドで防ぐと、ドッズライフルを肩越しに後ろに向けて放つ。

 逆さの状態であるガンダムはスラスターを使って体勢を立て直すのと同時にビームを回避して着地する。

 着地したガンダムはビームライフルをガンダムAGE-1 リブートに向けようとするが、ガンダムAGE-1 リブートは振り向きながらドッズライフルを振り回して、ガンダムのビームライフルにぶつけての射線を逸らす。

 

「やるようになった!」

「まだここからだよ!」

 

 ガンダムはバルカンを連射し、ガンダムAGE-1 リブートはシールドで防ぎながら、ドッズライフルをリアアーマーに付けるとビームサーベルを抜いて切りかかる。

 ガンダムもビームライフルを左手に持ち変えるとビームサーベルを抜いて応戦する。

 2機のガンプラのビームサーベルの出力に差は無く、互いに弾かれるが、ガンダムは左手のビームライフルを放つ。

 ガンダムAGE-1 リブートはビームを回避するとビームサーベルを振うがバルカンの牽制を行ってガンダムは一度後退する。

 サイドアーマーにビームサーベルを戻してドッズライフルをガンダムAGE-1 リブートは連射する。

 ガンダムもビームライフルを右手に持ち変えてビームライフルを連射する。

 正面からビームをぶつけてもドッズライフルの方がビームが回転している分、貫通力があって有利だが、タケシは回転するビームに対して正面からビームをぶつけるのではなく、微妙にずらしてビームの軌道を変えている。

 それからも2機は一進一退の攻防を繰り広げていく。

 

「いい加減に時代を譲ったらどうなんだ?」

「そう簡単に負けて上げる訳にもいかないんでね」

 

 激しい攻防の末、互いはライフルを失いところどころ損傷している。

 ガンダムAGE-1 リブートはシールドも失いマシロ得意の2刀流で戦い、ガンダムのシールドもところどころに穴が開いている。

 

「いつまでも続けていたいけど、そろそろ終わらせて貰うよ」

 

 ガンダムは余り使い物にならなくなったシールドをパージしてビームサーベルを両手で持って構える。

 

「同感だな」

 

 ガンダムAGE-1 リブートも2本のビームサーベルを構える。

 2機は睨み合って動かない。

 どちらも最後の一撃の為にチャンスを見計らっている。

 そして、2機は同時に飛び出し、渾身の一撃を繰り出す。

 マシロとタケシの一騎打ちは観客のいない路地裏で終わりを迎えた。

 だが、マシロにとってはこのバトルは終わりではなく始まりに過ぎない。

 マシロのガンプラバトルはこれからも続く。

 マシロはただ戦い続ける。

 自身が最強のファイターである事を証明し続ける為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき



今回でガンダムビルドファイターズ White&Blackは完結となります。

気づけば約1年の連載を何とかやり切りました。

そして、偶然にも最終話はトライの最終回と同じ日となりました。

トライ編もいずれは始めると思っています。

最後まで読んで頂いた方々、1年間ありがとうございます。
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