ガンダムビルドファイターズ White&Black 作:ケンヤ
マシロと向き合う事を決めたタツヤは覚悟を胸に大会の会場に到着した。
会場にはすでにシオンが到着していたが、マシロの姿は無かった。
「マシロ君は?」
「先にホテルを出た筈なんですけどね……あの人の事ですから、どこかで道草でもしてるんでしょう」
シオンは普段から、マシロの行動からそう判断していた。
「ですが、バトルの時間には遅れると言う事はないので大丈夫でしょう。今日の対戦相手の事です。ユウキ様もすでに知っていると思いますが対戦チームはチームアモーレ、去年のイタリアチャンプのブルーノ・コレッティのチームです。相方はアンナ・コレッティ。夫婦ですね」
「それでチーム名がアモーレ。愛と言う訳か」
「それはさておき、使用ガンプラはメリクリウスとヴァイエイトの改造機です」
「メリクリウスとヴァイエイトか……確かにタッグバトルとなれば誰かが使ってもおかしくはないね」
対戦相手のメリクリウスとヴァイエイト登場作品であるガンダムWにおいて攻撃と防御を分担して2機での運用を前提に設計されたモビルスーツである。
基本的にガンプラバトルは一体一が基本だが、今回の大会のようにタッグバトルなどのチームで組むようなルールではガンダムの作中と同じ運用方法でチームを組むと言う事は珍しい話しではない。
「奥方のアンナ・コレッティもまた、イタリア予選の上位に入賞する程の実力を持ちます。それ以上に彼らは単体でのバトルよりもタッグで組んだ時の方が強いと言うデータが出ています」
相手は世界大会に出る程の実力者である為、ホテルに帰ってからマシロに頼まれていた事を指示した残りの時間で情報収集で情報を集めることも容易だった。
その中で夫であるブルーノだけでなく、妻のアンナの実力もイタリア予選で上位に入れる程の実力で十分に世界レベルだ。
そして、ブルーノとアンナの実力は単体でのバトルよりも二人で組んだタッグバトルの方が強いと言う事が判明した。
ガンプラバトルはファイターの数だけバトルスタイルがあると言っても過言ではない。
中には一人でバトルするよりも誰かと組んだバトルの方が実力を出せるファイターもいる。
ブルーノとアンナもそのタイプのファイターと言う事になる。
「ガンプラの方も双方の特性を更に強化していますね」
「最強の矛と盾を超えた究極の矛と盾を持つファイターか……強敵だ」
「ですね。現状ではマシロ様とユウキ様は連携のれの字もないですから」
「耳が痛いよ」
大会において一度すらもタツヤとマシロは連携を取った事は無い。
マシロは一人で突撃する為、タツヤは取り残されて結局一人でバトルする事になる。
それでもここまで勝ち上がる事が出来たのは一重にマシロとタツヤの実力が参加者の中でも飛び抜けているからだろう。
しかし、次の相手はどちらも世界レベルのファイターだ。
その上で連携を得意をする二人に連携をしないタツヤ達では勝算は低いと言わざる負えない。
「関係ないね。俺は勝つ。それだけだ」
「マシロ君……」
遅れて到着したマシロを見てタツヤの表情が硬くなる。
覚悟を決めたとはいえ、やはり気まずい。
「どこで油を売っていたんですか?」
「別に良いだろ。バトルには間に合ったんだ」
マシロはさっさと会場の方に向かって行く。
シオンはマシロの歩き方に違和感を覚えた。
マシロが遅れた理由は歩道橋から落ちたと言う事は二人に言うつもりはなかった。
落ちた事でマシロは体の至るところを怪我しているが、それを押し隠している為、歩き方が微妙にいつもとは違った。
常に行動を共にしていたが、故にシオンは小さな違和感を感じたが、タツヤの方は自分の事で手一杯である為、気づかない。
「マシロ君、この戦いが終わったら……」
「それ以上は死亡フラグ。さっさとしないと失格になるぞ」
「分かったよ」
マシロがタツヤの言葉を遮るが、確かにマシロの言う通りだ。
早いところ受付を済ませてないと二人は棄権と見なされて失格だ。
マシロの動きに違和感を感じるも確証が無い為、シオンは二人を見送り観客席へと向かう。
会場にはすでに観客が多く集まりっている。
バトルシステム越しの対面にはすでに対戦相手のブルーノとアンナがすでに待機していた。
長身のブルーノと妖艶なアンナが人目をはばからずに体を寄せ合っている。
「ようやく来たか少年達!」
「待ちくたびれたじゃない」
「申し訳ない」
タツヤとマシロはバトルシステムの前に立つとバトルを行う4人がGPベースをバトルシステムにセットする。
「メリクリウス・ムーロ!」
「ヴァイエイト・ランチャ!」
「ザクアメイジング!」
「ガンダム∀GE-1」
それぞれが自分のガンプラをバトルシステムにセットする。
歩道橋から落ちたマシロだが、ガンプラの方は傷一つついていない。
マシロが普段からガンプラを入れて持ち歩いているケースはマシロの伝手で特注した物だ。
その強度は大気圏を突入しても無事だと言う触れ込みで、核ミサイルの直撃にも耐えられる仕様と言われている。
それが事実かどうかを確かめる術は無いが、少なくとも階段から落ちた時の衝撃程度ではガンプラが傷つく事はあり得ない。
それにより発生した衝撃も内部に届く事は無く、マシロのガンプラは無事だった。
「情報通り、メリクリウスとヴァイエイトか……てか、しれっとチーム名を入れてんなよ。まるでユウキのチームみたいじゃん」
タツヤのガンプラは昨日までの高機動型ザクⅡ改とは少し違っていた。
装甲にリアクティブアーマーを増設し、手持ちの火器が戦車の砲身を流用して自作したロングライフルとなっている。
これこそが、タツヤがマシロと戦う為に完成させた新たなガンプラ、ザクアメイジングだった。
それよりも、マシロはチームの名であるアメイジングをガンプラの名前に付けた事を講義するが、タツヤは苦笑いで誤魔化す。
あまり、文句を言っている時間もなくバトルが開始された。
「マシロ君。相手は世界レベルだ。慎重に……」
「関係ないね」
ガンダムAGE-FXのスタングルライフルを装備した∀GE-1はタツヤのザクアメイジングを置いて飛び出す。
「来た」
∀GE-1はスタングルライフルのチャージモードをいきなり撃ち込む。
だが、放たれたビームは霧散して消える。
「プラネイトデェフェンサーか……」
「その通り。俺のメリクリウス・ムーロはあらゆる攻撃を防ぐ鉄壁の壁! ハニーへの攻撃はさせないぜ!」
メリクリウス・ムーロの周囲にはベースとなったメリクリウスの象徴とも言える防御兵器のプラネイトディフェンサーが展開されている。
これにより発生させられた電磁フィールドによりビームが防がれたと言う事だ。
「数は……30と言ったところか」
通常、メリクリウスには10基のフィールドジェネレーターが搭載されている。
だが、メリクリウス・ムーロにはその3倍の30基が装備されている。
それによってより広範囲や高出力のビームに対応している。
更には本体の両腕にはリーオーのシールドが装備され、両手には下部にビームサーベルのグリップを接着したビームライフルを装備している。
単純に防御力を上げただけでなく、攻撃力も増強されている。
「愛してるわ! ダーリン!」
「マシロ君!」
「分かってる!」
その後方から強力なビームが戦場を横切る。
メリクリウス・ムーロの後方にはアンナのヴァイエイト・ランチャがメガバズーカランチャーを構えている。
百式の装備を流用し、バックパックと両肩、両腰にビームジェネレーターを増設した事でメガバズーカランチャーのチャージ時間を短縮している。
火力を増強しているが、巨大なビーム砲を抱えている為、機動力は皆無だ。
しかし、それをメリクリウス・ムーロの鉄壁の防御力で補っている。
∀GE-1とザクアメイジングは回避するが、そこをメリクリウス・ムーロがビームライフルで狙う。
「これが究極の盾と矛……流石は世界最強クラスのタッグファイターだ!」
「知った事か!」
∀GE-1はスタングルライフルを撃ちながら、突撃する。
ビームはプラネイトディフェンサーに防がれて、メリクリウス・ムーロはビームライフルで反撃する。
(おかしい……いつものマシロ君の繊細さがまるでない。あれでは勇猛ではない。ただの無謀だ)
タツヤはマシロの動きからそう感じていた。
一見、攻撃を受けることを気にしないで突撃して行く様子はいつものマシロの戦い方だ。
だが、いつもはギリギリで攻撃をかわすか、影響のない程度の攻撃は気にしないで突っ込むが、相手は世界レベルのファイターのガンプラだ。
一撃一撃が下手をすれば致命傷になり兼ねない。
今のところは被弾しても、目立った損傷はないが、それでもバランスを少し崩して足を止めてしまっている。
これはいつものマシロの戦い方ではないとタツヤには一目で分かる。
実際、歩道橋から落ちた時に腕は守ったが、それ以外のところは守り切れずに負傷をしている為、マシロは本調子とは程遠い。
それをタツヤやシオンには隠しているが、流石にバトルには少なからず影響が出ている。
「射撃がダメなら!」
∀GE-1はメリクリウス・ムーロの攻撃をかわして突っ込む。
プラネイトディフェンサーの電磁フィールドを突撃して強引に内部に入り込む。
「全く……無茶な戦い方をする!」
「この距離ならプラネイトディフェンサーの影響はないだろ」
∀GE-1は左腕の装甲からビームサーベルを展開して、メリクリウス・ムーロに突き出す。
メリクリウス・ムーロは腕のシールドを掲げた。
∀GE-1のビームサーベルはシールドに当たると霧散した。
「ちっ……シールドにIフィールドを仕込んでやがったか!」
「生憎とその程度の攻めじゃメリクリウス・ムーロの壁は崩せないんでね!」
メリクリウス・ムーロのシールドには表面に特殊な塗装がされており、それによりプラフスキー粒子を変容させる事でビームを弾く事が出来る。
この技術は世界大会において大型モビルアーマー等に使われる事が多く、ビームを弾く事からガンダム内の技術から名前を取って「Iフィールド」と呼称されている。
メリクリウス・ムーロのシールドもまた、特殊塗装によりIフィールドが使える。
故に∀GE-1のビームサーベルの粒子が変容して霧散した。
「なら!」
今度は至近距離からスタングルライフルを放つが、シールドのIフィールドで防がれる。
「マシロ君!」
「分かってる!」
後方からヴァイエイト・ランチャのメガバズーカランチャーが発射されて、∀GE-1は回避するが、メリクリウス・ムーロがビームライフルで追撃して、スタングルライフルに被弾してライフルを捨てた。
メリクリウス・ムーロの攻撃をかわしているうちにプラネイトディフェンサーの外まで追い出された。
「離れてはプラネイトディフェンサーに接近戦ではIフィールド……ガッチガチに守りを固めやがって」
(このままじゃ駄目だ……僕達も連携しないと……)
ブルーノとアンナを前にタツヤはそう考える。
相手はどちらも世界レベルのファイターでタッグバトルを得意とする。
バトル前から連携の必要性は感じていたが、実際にバトルしてそれを実感した。
4人の中で単純な実力はマシロが一番だろう。
だが、マシロの調子が悪い事を除いても、マシロも攻め切れていない。
それは、アンナのヴァイエイト・ランチャが機動力を犠牲にした火力による砲撃支援のタイミングとブルーノのメリクリウス・ムーロの鉄壁の守りが成せる業だ。
単体ではマシロに劣っても二人のコンビネーションによってマシロに互角以上の戦いをしている。
それに比べてタツヤ達は個々の技術は優れていたとしても、個々で戦っている。
(だけど……僕は……)
連携の重要性を感じながら、後一歩が踏み出せない。
連携に重要な要素は互いの信頼感だ。
マシロがタツヤの事をどう思っているかは、タツヤ自身は分からないが、タツヤはマシロの事を今一つ信じ切れていない。
(このままでは僕達は勝てない……なら)
バラバラで戦うだけではタツヤとマシロに勝機はない。
このままでは勝てないと自覚したタツヤは賭けに出る覚悟を決めた。
「マシロ君」
「どした?」
「君に聞きたい事がある」
「後にして欲しいんだが、こいつら予想以上にやる」
タツヤはマシロに通信を入れる。
二人の距離は大して離れている訳ではないが、会場の騒音で普通に話しをしても聞こえ辛いと言う事もあり、互いに通信を入れることが出来るようになっている。
マシロは怪我や事前情報で聞いていた以上に強い為、余りタツヤと話している余裕はなかった。
「聞いてくれ!」
タツヤもマシロが調子が悪いと言う事は予想以上に強いと言う事は十分に理解している。
それでも声を上げてマシロに話しを聞いて貰おうとする。
恐らくは出会ってから初めて声を上げた事でマシロも、驚きタツヤの言葉に耳を傾ける。
「君はガンプラバトルは勝って終わらないと意味がないと言っていたね。僕には分からない! 勝つのみを求めるバトルに何の意味があるのか! 答えてくれ!」
タツヤは昨日抱いた疑念をマシロにぶつける。
勝つ為にはマシロの事を信じる事が必要となる。
昨日の事で信じる事が出来なくなったため、ヤナに入れたみたいにマシロと正面から向き合おうとした。
これでマシロが二代目メイジンのような勝つ事のみを追求するファイターであるのなら、どの道、チームを組む事は出来ずにここで敗退する事になるだろう。
最後の希望を託してタツヤはマシロに叫んだ。
意を決しての叫びだが、マシロの方はキョトンとしていた。
「確かに俺は勝って終わらないと意味がないって言ったし、勝つ事が全てだとも言った。けど、勝つ事のみを追求するなんて言ってないんだが……けど、何の意味があるかって聞かれたら、意味なんてないと俺は答えるね。勝利は何かを得る為の手段でしかない。手段が目的となった時点でそいつの器は知れてる」
確かにマシロはガンプラバトルは勝って終わらないと意味がないとも、勝つ事が全てだとも言った。
しかし、タツヤの言うような勝つ事のみを追求しているとは言ってはいない。
その二つは似ているようで違う。
マシロにとっては勝利とは何かを得る為の手段に過ぎず、勝利のみを追求する事に意味は無かった。
「じゃあ、マシロ君は何を求めて勝利を得ようとしている?」
「何って……楽しいじゃん」
「は?」
予想外の答えに今度はタツヤの方が呆気に取られていた。
「いや、はって、何ザクがビームライフルを食らった顔してんの? 勝つと楽しいのは当たり前じゃん。勝てば楽しいし負ければ死ぬほど悔しい。だから俺は勝つ。だけど、弱い奴に勝ってもつまんねーからより強い勝つに勝つ事の方が俺は好きだね。そんで、俺の作ったガンプラは最強で俺がガンプラを一番上手く操れると言う事を証明する事が堪らなく楽しい」
余りにも予想外過ぎてタツヤは一瞬思考が停止して言葉の意味を理解するのが遅れた。
「何だよ。俺、変な事を言ったか?」
「……いや、変じゃない……」
タツヤは込み上げて来る笑いを何とか押し留める。
マシロの答えを聞いて、今まで変に考えていた自分がおかしく思えて来たからだ。
(勝つと楽しくて負けると悔しい……当たり前の事じゃないか)
ガンプラバトルを始めたファイターは最初は自分の作ったガンプラが動くだけ満足だが、バトルを始めるとそうではなくなる。
バトルで自分のガンプラが勝てば嬉しくて楽しいが、負けると悔しい。
悔しいから負けないように強くなろうとする。
これはファイターなら誰しもが通る道だ。
タツヤもガンプラバトルを始めた時はそうだった。
自分の作ったガンプラが誰のガンプラよりも強いと思いたいのも誰もが思う事だ。
マシロは楽しいから勝つ……それだけの事だった。
(二代目の思想に囚われていたのはマシロ君の方ではなく、僕の方だったみたいだ……何をやっていたんだろうな。僕はあの人からガンプラバトルは楽しい物だと言う事を教えて貰っていたと言うのに……)
タツヤは二代目メイジンの勝つ事のみを追求するバトルを認める事が出来ずに否定する余り、マシロの事を二代目と同じなのではないかと勘繰っていた。
それは例えマシロの言い方に問題があったとしても、結局のところタツヤもまた二代目の思想に囚われていたと言う事だ。
「マシロ君、僕は理解したよ。君と言う存在を……己のガンプラが最強である事を証明する為に勝つ……その気持ち愛だ! ガンプラへの愛が君を勝利へと駆り立てそこまで強くしたと言う事か!」
「えっ……ああ……うん。まぁそんな感じだ。うん」
疑念から一転、マシロはただひたすら自分のやり方でガンプラバトルを楽しんでいたに過ぎないと言う事が分かり、タツヤの中で何かが突き抜けた。
「で、壊れてるところ悪いんだが、どうする?」
「メリクリウスの方はIフィールドを持っているから実弾を中心とした僕のザクアメイジングの方は良いと思う。ヴァイエイトの方は完全に砲撃に特化しているから、機動力の高いマシロ君の∀GE-1の方が良いと僕は思う」
「同感だ」
タツヤがマシロに叫んだ事でマシロの方でも少し頭が冷えて、冷静さを取り戻していた。
「少年の主張は終わったか?」
「律儀に待っててくれたのかよ」
「まぁな」
二人の会話中、相手チームの攻撃は止んでいた。
タツヤが叫んだ事は相手チームの方にも内容はともかく、届いていた。
事情は分からないが、空気を読んで攻撃を控えていたと言う訳だ。
「そいつはどうも」
「なら、その借りはバトルで返さないとね!」
∀GE-1は腰のビームサーベルを両手に持ち、ザクアメイジングがロングライフルを構えた。
待っている間にチャージされていたメガバズーカランチャーが放たれて2機は散開する。
散開した2機にメリクリウス・ムーロがビームライフルで近づけさせないようにする。
(とは言ったものの、僕達に彼らの連携に対抗する連携は出来ない)
マシロへの不信感が無くなったとは言っても、いきなりブルーノとアンナのような連携を取る事は不可能だ。
(あれだけの連携を取れる理由は互いへの信頼感。夫婦として人生を共に歩いて行くからこその戦いと言ったところか……ならば、僕とマシロ君だからこその戦い方でなければ二人に勝つ事は出来ない)
タツヤは必死に打開策を考えた。
彼らと同じように戦う事は出来ないし、やったところで勝ち目はない。
勝つ為にはタツヤとマシロでしか出来ないやり方を模索するしかない。
タツヤが考える中、マシロは単独で向かって行く。
「そう何度も接近させるかよ!」
「行くわよ!」
メリクリウス・ムーロがビームライフルで牽制して、ヴァイエイト・ランチャがメガバズーカランチャーを放つ。
辛うじてメガバズーカランチャーの直撃はかわしているが、このままではマシロの∀GE-1も限界が来る。
(落ち着け……焦ったら駄目だ。今はマシロ君が相手を引きつけている。その間に打開策を考えるんだ)
マシロが何度も接近を試みている為、タツヤの方は考えるだけの余裕がある。
(僕とマシロ君でしか出来ない戦い方はきっとある筈なんだ)
時間にそれ程、余裕がある訳ではないが、マシロが時間を稼いでいる為、その時間を最大限に使って考える。
自分達にしか出来ない戦い方を。
(僕とマシロ君か……そう言えば、余り良く考えた事は無かったな。僕とマシロ君の関係は……友達? 相棒? 何か違うな)
二人でしか出来ない戦い方を考えるにあたり、自分達の関係から考える事にした。
まず浮かんで来たのが友達や相棒と言う関係だが、どこかしっくり来ない。
友達や相棒にしては互いの事を知らなさすぎる。
(案外、分からない物だな……僕とマシロ君は友達や相棒ではない、ましてや彼らのような夫婦と言う訳でもない……そう、強敵(ライバル))
強敵と書いてライバル。
それが一番、しっくり来た。
(なら、やる事は一つだ)
自分達の関係を見直して答えを見つける事が出来た事で見えて来た事があった。
ザクアメイジングがロングライフルを放つ。
「ようやく、やる気になったか」
「まぁね。さっそくで悪いけど……僕が決めさせて貰うよ」
ザクアメイジングはメリクリウス・ムーロの方に向かう。
ワンテンポ遅れて∀GE-1もそれに続く。
「さっきまでサボってた癖にいきなりやる気になってんじゃん」
「当然。僕は彼らだけでなく、マシロ君にも負ける気はない!」
「上等!」
∀GE-1とザクアメイジングはまるで競い合うかのように向かって行く。。
マシロとタツヤの間にはある物は信頼感ではなく、互いに強敵としてのライバル意識だ。
マシロに負けた事でタツヤはマシロに勝ちたいと思った。
マシロもタツヤに勝ったが、最後は本気となった事で将来的に自分に追いつくかも知れないと言う可能性を見た。
それ故にタツヤは連携を取るのではなく、競い合うと言う道を選んだ。
互いに互いを意識して競い合う事で互いの能力を引き出し合う。
これがタツヤが見つけたチームアメイジングとしてのチームの形、二人の戦い方だ。
マシロがそれを意識している訳ではないが、負ける事を嫌うマシロなら例え、相方であるタツヤに負ける事も嫌だと言う事は想像しやすかった。
タツヤもマシロには負けたくはないと意識を今でははっきりと感じている。
「何だ……こいつら! 動きが急に!」
「気を付けて! さっきまでとは違うわ!」
急に動きが変わった事でブルーノとアンナも困惑している。
動きが変わった事や互いに競い合ってプラネイトディフェンサーを突破しようとしている為、メリクリウス・ムーロでは手が足りなくなる。
砲撃支援を行おうにも、連射が出来ない為、時間をおいての支援しか出来ない。
「俺の勝ちだ!」
「まだ、終わってない!」
∀GE-1がプラネイトディフェンサーを突破し、それに気を取られている間にザクアメイジングも突破する。
「ちっ!」
「先にヴァイエイトから叩く!」
∀GE-1は後方のヴァイエイト・ランチャの方に向かう。
ザクアメイジングがロケットランチャーを放ち、メリクリウス・ムーロはシールドで防ぎ、∀GE-1の方にビームライフルを放つが、すぐに追いかける。
「ハニーは俺が守るんだよ!」
「と、見せかけての!」
∀GE-1はヴァイエイト・ランチャを狙いかのように見せかけて、急制動をかけて追って来たメリクリウス・ムーロに狙いを変えてビームサーベルを振るう。
不意を突かれて、メリクリウス・ムーロは左腕を切り落とされるが、右手のビームライフルの下部のビームサーベルで∀GE-1に切りかかり、ビームサーベルで受け止める。
「やってくれたな!」
「貰った!」
ザクアメイジングがメリクリウス・ムーロに対してロングライフルを放つが、∀GE-1が蹴り飛ばして距離を取る。
「あぶねぇ!」
「マシロ君なら回避すると思っていたよ」
下手をすれば∀GE-1にも当たりそうな攻撃だが、タツヤはマシロなら回避できると思っての攻撃だった。
そして、その攻撃の射線上にはメリクリウス・ムーロと∀GE-1だけでなく、ヴァイエイト・ランチャもいた。
「避けられない!」
「ハニー!」
火力を重視する余りに機動力を完全に失っているヴァイエイト・ランチャはザクアメイジングの攻撃を回避する術は無い。
それを補う為のプラネイトディフェンサーだが、気づいた時には手遅れてロングライフルの弾丸はヴァイエイト・ランチャに直撃してヴェイエイト・ランチャは撃墜された。
「よくも!」
ザクアメイジングはロングライフルを捨てて、ヒートナタを持ってメリクリウス・ムーロに振り下ろす。
ビームサーベルでヒートナタを受け止めるが、横から∀GE-1がビームサーベルを持って突っ込んで来る。
「そいつは俺の獲物だ!」
「悪いけど、僕も譲る気はないよ!」
∀GE-1とザクアメイジングが互いに競い合うようにメリクリウス・ムーロに向かう。
片腕を失ったメリクリウス・ムーロには2機からの攻撃を捌き切る事は出来ない。
「何だってんだ!」
「僕の……」
「俺の……」
「「勝ちだ!」」
2機の攻撃はほぼ同時にメリクリウス・ムーロを捕えて切り裂いた。
メリクリウス・ムーロが撃墜されてバトルが終了した。
バトルが終わり二人は歩み寄る。
「俺の勝ちだね」
「どういう理屈なんだい。僕はヴァイエイトの方も撃墜している」
「いやいや、俺は元イタリアチャンピオンを倒したから俺の勝ちだろ」
「それ自体、ほぼ同時だったから、分からないじゃないか」
バトルが終わった二人は口論を始めた。
その内容は子供染みた物だ。
どっちがブルーノのガンプラを倒したかで揉め、どっちが勝ちかで揉めている。
どっちがメリクリウス・ムーロを撃墜したかと言う事は重要ではなく、二人のチームが決勝に進出したと言う事実の方が重要ではあるが、二人は気にも留めていない。
どっちも譲る気はなく、子供染みた言い分を主張している。
だが、口論をしている割には二人の間に険悪な雰囲気はなく、寧ろ楽しそうにしている。
「たく……俺達の事は眼中にないってか」
「良いじゃない。ああいう青春は私は好きよ」
そんな二人を対戦相手のブルーノとアンナは微笑ましく見ていた。
バトルが終了し、ガンプラを回収したマシロとタツヤは口論を続けながら廊下に出る。
「分かっていた事だけど、マシロ君も本当に負けず嫌いだよね」
廊下に出ても尚、互いの主張は続くかのように思えたが、マシロは何も返さない。
「マシロ君?」
その事が気になったタツヤはふと振り返る。
そこにはマシロが倒れていた。
「マシロ君!」
予想外の事態にタツヤは動揺しながらもマシロに駆け寄った。