(彼女、びっくり箱の化身だったりするのかしら……)
いよいよ以って驚愕を通り越してもはや呆れの感情を抱く。
彼女が次いで繰り出した『カミちゃん』と呼ばれるポケモン。名前だけでは判断できないが見た目がどう見てもアップリューの進化形である。流石にジュラルドンの進化形というキバナジムリーダーの面目丸潰れ激ヤバポケモンほどの衝撃は無かったものの、アップリューはターフタウン出身の私にとってかなり馴染み深いポケモンであるので、進化形が存在していることへの驚きと、僅かな喜びを禁じ得ない私がいた。
(というより、これまで全部知らないポケモンって──)
まあゲーム本編をやっていても、気づけば手持ちが伝説塗れになるなんてことはザラにあるし、不思議な贈り物を代表に『お前一体どこでそのポケモン手に入れたんだよ』と突っ込みを入れたくなる旅パをしている初心者も中にはいるだろう。
けれど、実際にそのような状況に陥ってしまうと、なるほどこれは確かに理不尽を覚えざるを得ない。しかし同時に、プレイヤーであればと納得せざるも得ない。システム的にはその気になれば創造神×6なんて無法も可能な以上、多少知らないポケモンが出る程度であればむしろ可愛い方ではある。
(まあ、私がどう感じるかは別、だけどね!)
「ノラ、そこで『きゅうけつ』!」
『きゅ──虫技?!?!』
ベストなタイミングを見計らって、ノラの最後のわざを解禁する。四方八方からレーザーを乱射してくる首への対応は本当に骨が折れたが、そもそもがあまり素早いポケモンじゃないのと、ポケモンそのものの練度が低めで本当に助かった。正直言って現状はノラがかなりピンチの状況だったので、この場面で体力的に少しの余裕が出来たのはとてもありがたい。
ここはこのまま、無傷で突破をしたいところではあるが──
「ッ……けど、それなら! カミツオロチ、『みずあめボム』!」
しかしながら、ピンチとチャンスは紙一重とはよく言ったもので、わざが当たればそれで決まる『エラがみ』を代表とする他のわざとは違い、『きゅうけつ』を含む吸収わざは、効果が出るまで僅かな時間を有する。無論、体力を吸収されている最中に的確な反撃へ移るのは相当に厳しいだろうが、逆に大雑把でもいいのであれば、こうして攻撃を当てるのは難しいわけじゃない。
(みずあめボム……?)
「──カミツオロチ、というのね」
未だ心許ない体力。最悪この反撃での脱落も視野に入れていたが、いくら狙いが粗かったとはいえ、受けたダメージはほとんどゼロという奇妙な結果。疑問と好奇心。二つの感情が入り混じる。こんな状況だというのに、不覚にもワクワクしている自分がいる。
次々と矢継ぎ早に繰り出される未知。もっと知りたい。もっと見たい。もっと聞かせて、もっと教えて。もっともっと私を楽しませて──それはオモチャを与えられた子どものように。もしも彼女がそれを狙いにこれまでの試合運びをしていたのなら流石にお手上げではあるが──まあ、そもそもそんな領域の話にまで彼女が踏み込めるようなら、こんな試合で苦戦するようなことはないだろう。
などと、私が思考をフル回転して次なる策に備えていると、
「そう──カミちゃんことカミツオロチの専用わざ、『みずあめボム』は、草タイプに分類される特殊攻撃。見ての通り対象を水飴で雁字搦めにし、その動きを制限するわざです!」
「………?」
(……。……何? 急に──)
これまでうっかり(?)種族名を漏らしたり、レジエレキがスピードタイプであることをバラしたりなど失言はあったが、脈絡もなく使ったわざのネタバラシを始めた彼女の姿に思わず距離を取って様子を伺う。
例えば漫画やドラマで“冥土の土産に”などとベラベラ種明かしをする人物がいるが、余裕と言えば響きは良いものの、実態は誰が見ても利敵行為にしかならない。特に彼女はこれまでの戦いからそうして慢心するような人種じゃないのは嫌というほど理解している。ならば何かしらの狙いがあるとは思うのだが──
「──そして、その拘束は、時間を経るほど強固に、強力なモノになっていきます」
にやり、と少女が笑う。と同時に、私も今更に彼女の狙いを察する。
いきなり何事かと思ったが、要は時間稼ぎ目的のペラ回し。多少の暴露、いずれバレる情報を安売りした程度でノラの動きが封じられるなら万々歳だと。おそらくは私の性格まで読み切っての番外戦術。本当にこの前告げた通りに何でもやってくるじゃんと軽く戦慄すると同時に、この大舞台でよくもまあそんなクレバーな判断が出来るものだと感心する。
「ノラえもん、『エラがみ』」
ならばこちらも、悠長に付き合ってなどいられない。『きゅうけつ』による回復は非常に惜しいが、これ以上はおそらく取り返しがつかなくなる。私の感覚が他の誘惑に釣られて鈍っていなければ、現在のノラの体力はおよそ3割を超えた辺り。これだけあれば、あとは立ち回り次第でどうにでもなる……はず。多分、きっと、おそらくは。
「……お疲れ様、カミちゃん」
何はともあれ、これで4匹目の突破。ユウリ選手であれば平然と100匹くらい従えてきそうな凄みはあるが、公式戦で認められている最大手持ち数は6。そのうち一匹は間違いなく例のインテレオンだと思われるので、となると割れてない手持ちはあと一体。
なのだが──
(…………)
ちらりと彼女の表情を伺う。写真に残して後から見せたら愉快なリアクションをしてくれそうな険しい顔。しかし、その顔は苦悶や絶望に満ちてこそいるが、そこに諦めの感情はない。
つまりは小生意気にも、彼女にはまだ抗う術があるということだ。ここまで追い詰めた身としてはやや業腹であるが、それでこそだと期待する自分もいる。まあ、いずれにしろ私がやるべきことは変わらない。
(きっと、おそらく──)
その自信の根拠こそが、彼女が次に呼び出すポケモン。切り札、奥の手、ジョーカー……呼び名は何でも良いけれど、とんでもないモノが来るという予感だけはひしひしと感じる。
ユウリ選手がカミツオロチを収めたボールをバッグに仕舞い込むと、彼女はそれと入れ替わりに思わず目を疑うようなボールを取り出す。
紫の意匠にデカデカと『M』の文字が記載されたモンスターボール。それは今更語るまでもない、トレーナーであれば誰もが知っている憧れにして至高の一品。と同時に、そんな劇物まで持ち出してまで捕獲したポケモンとなると、流石の私でも不安を抱かざるを得ない。
「お願い、バドレックス!」
そのポケモンに愛称は無かった。それが如何なる理由なのか、彼女の物語を知らない私には窺い知れない。
氷版ギャロップのような白馬に跨る、どこか冠を思わせる緑色の球体を頭上に生やした鹿とうさぎが融合したようなポケモン。白馬の王子様をモチーフにしているのだろうか。通り一遍のパーツはむしろ愛らしい見た目をしているのに、そこには厳かな気品に満ち溢れている。
(冠を被った氷の馬に乗るポケモン──おそらく、このポケモンが鎧の孤島で言うウーラオスのポジションの子。なんか色々と特殊だけど……)
そもそもアレなんか2匹居ない? と言うのが最初の感想。まあレアコイルとかも大概だし、過去にもヤドランとかキュレムとかサファイザーとか融合ポケモンがいなかったわけじゃないけど。
(何をしてくるのか見当もつかない……)
多分見た感じ物理型。10まんばりきとか使ってきそう。タイプはこおりと……何だろう、くさ? うーんびっくりするくらい何も分からない。というか全部推測。まあ、ただ一点分かることがあるとすれば──あのポケモンには、
(しかし、よくもまあ、ここまで……)
事ここに至れば、呆れより尊敬が先立ってくる。
ガラルの頂点を競うトーナメント。私が今この場所にいるのは、ノラというインチキで実力を誤魔化しているからに過ぎない。なのに彼女は私とは違い、正真正銘自分だけの力でノラのいる領域まで足を踏み込んで来ている。それも、トレーナー歴半年というごく短期間で、である。ちょっと主人公やばすぎでしょ。
何にせよ、もう二度とブリジュラスの時のような無様は晒さない。手強いことが分かっているなら、こちらはこちらでやりようはある。
理不尽には理不尽を。
(それはそうと、この水飴どうしようかな……)
わざわざ番外戦術を仕掛けるだけあって、あのノラが鬱陶しそうにしてるのは相当だ。お相手のポケモンは下が馬だから速そうだし体力もギリギリ……あれ、これかなりヤバいのでは?
☆☆☆
「愛馬を取り戻した ヨを超える ポケモンとな?」
あの日。カンムリ雪原からガラルへ戻る際、見送りに来てくれたピオニー隊長の身体を借りて、やや辿々しく、しかし尊大に語りかけて来たバドレックスの言葉を思い出す。
「そう。私は彼女に勝たないといけない。だから、貴方程度に怯んでなんていられないの」
「ほほう それは豪胆なことだ しかし 今のヨをも超える存在 となると それこそヨが活躍した時代 おとぎ話の存在である」
たいそうな自信だ。確かに、フリーズ村に伝わる伝説が全て正しいとするならば、彼は過去にガラル地方の全てに繁栄を齎した、豊穣の王を名乗るに相応しい伝説のポケモン。その力は信仰を失った今なおも強大で、隊長から譲り受けたマスターボールが無かったらどうなっていたことか。
「安心せよ 愛馬を取り戻したヨは、如何なる強敵にも負けはしない」
その言葉が本当なら──いや彼は本気で言っているし心からそう思っている。けれど、それは彼があのポケモンを知らないから言えること。私自身の
「しかし 意思疎通のたび この者の身体を借りるのは不便であるな」
「……力をある程度取り戻したわけだし、直接テレパシーとか出来ないの?」
少なくとも他者の身体を乗っ取るよりは簡単そうだが。というかそもそも他者の身体を乗っ取れる時点でもっとマシな意思疎通の方法が出来そうなものだが。
「おお! ……しばし待たれよ 何分調整が難しそうでな だが 然程手間では無いだろう」
「…………」
ああ、パワーがあり過ぎて逆に調整できないのか。でも、こんな安直な方法にも気付かないあたり、やぱり彼はどこか抜けている。
けれど、それは決して彼の欠点などではなく、むしろ彼を彩る愛嬌として彼への印象に一役買っている。実際、全てが無意味でこの旅が徒労だったとしても、彼とこうして知り合えただけでお釣りが来るほど。
そんなこんなで私は、意識を取り戻したピオニー隊長に見送られ、長く過ごした雪山を後にする。単純な時間としては然程経っていないのに、なんだか随分とそこにいた気がする。
というか偶然出会ったピオニー隊長が凄まじい勢いで物事を進めていくからどうにかなっただけで、自分一人だと多分バドレックスの問題解決すら出来ていない。そう考えると私はかなり運が良かったんだなぁと実感すると同時に、そもそもこんな場所に来るきっかけを思うと辟易する。
その後は移動中に意思疎通のあれこれで四苦八苦したり、流れで繋いでもらったレオンの私に対する想像の100倍は重い感情に驚いたり、あまりにも癖が強い新ポケモンをどうにか躾けたり──ぶっちゃけ本番と言えるのは帰って来てからだった気もするが、ひとまず目処が立ってからはぐっすり寝た。半日くらい寝てて色々と予定を組み直した。施設の点検がどうので2日日程が伸びた時はローズ元委員長に感謝もした。あの人ブラックナイト引き起こした極悪人だけど。
ホップに関しては……私は何も言えなかった。試合では見るからに精彩を欠いていたので、彼にとってもダンデさんの敗北は相当にショックだったのだろう。こればっかりは時間が解決、いやダンデさん本人に直接語りかけて貰った方が良いのか。何にせよ、今の私が出来ることと言えば、元凶である彼女を打ち負かすことで、その矛先を曖昧にするくらいか。誤魔化しているだけとも言えるが、今は私もそれどころじゃないので許してほしい。
で。
『ヌゥ──何であるかこのポケモンは。あの奇怪な造形──見知った顔なのに迫力が段違いである……』
『あ、やっぱり知ってるんだ……』
ある種当然とも言える驚きの思念が脳に伝わる。というかあのポケモンって結構前に絶滅したみたいだけど、それでも知ってるって実は私の想像よりも遥かに長生きしているのねこの子。……自分の愛馬を忘れていてウオノラゴンのことはすぐ思い出すってのはちょっとどうかと思ったけど、あの見た目はそれくらいのインパクトがあるよなぁと言葉を飲み込んだ。
『用心して。貴方がどれだけ強くても──あの史上最強のウオノラゴンに勝てるかどうかは未知数よ』
『ふむ。この目で確と確認した。しかし見たところ、あのポケモンは既に満身創痍。我が槍の一撃であれば』
それが油断だと言っている。確かに彼の槍の一撃の恐ろしさは身をもって知っているが、そもそも万全の状態だとあのウオノラゴンにあんな大振りの一撃が当たるかどうかも怪しい。
なにせ彼女はつい先ほど、無差別に解き放たれる『きまぐレーザー』の雨を潜り抜けて攻撃を当てるという神技を平然と敢行せしめた狂った空間把握能力の持ち主。同時にその意を正確に遂行するウオノラゴンもまた常軌を逸している。
ただ、カミちゃんの献身のおかげで、今なら例の槍で倒せそうというのは私の見立てでも相違無い。けれど、私はそれでも油断しない。やると決めたなら徹底的に、完膚なきまで叩き潰してこそ。
『行くわよ、バドレックス』
『ウム、良かろう。せっかくの初陣だ、派手に飾ろうではないか!』
最悪拒否られるんじゃないかと思ったが、彼の意外とノリがいい性格のおかげで無事要望が通る。
バドレックスのダイマックスは特別なものだと本人は言う。最初は何のことだか分からなかったが、ぐんぐんと巨大化する彼を下から眺めてしばらく、私はその違和感の正体に突き当たる。
「蒼い、ダイマックス──」
“本来の力を取り戻すと かの者は蒼い光を輝かせ 枯れた畑に作物を生やしてみせた”
雪原に点在する廃墟にあった記述。初めは何のことかも分からなかったが、彼が『豊穣の王』と自称していたことから、これが彼自身を指す言葉であるのは明白。
曰く、ガラル地方におけるポケモンのダイマックス現象は、ガラル粒子と呼ばれるエネルギーがポケモン元来の縮小化と絡み合い、ポケモンが巨大化
正直なところ、その差異が果たして何を意味するのかは分からない。けれど、それが他のポケモンには有り得ない“特別”なのは間違いない。独特、異例、唯一無二──理屈ではなく直感に、問答無用で物事を納得させる力。
──しかし。そんな当たり前をこそ容赦なく打ち砕いて来たのが、目の前の少女であるわけで。
『ヌ?』
『え?』
声は同時。それはダイマックスをするバドレックスに合わせて、彼女が予想外の行動に出たから。
ウオノラゴンを一度ボールへと戻し、道具を介して周囲に漂う粒子を活性化させる。それによりボールを変化させ、新たな姿として舞台に呼び出す。
あまりに見覚えのある動作。あまりにも見慣れた行動。ごく自然に、当たり前のように。どこまでも唐突に理不尽に。しかしトレーナーとしてはこれ以上ないくらい相応しいタイミングで、ついにその力を解禁した。
「さて、ノラ。行くわよ──ダイマックスにも
(才能……?)
その言葉に疑問を覚えるより先に、彼女を中心にとんでもない量のガラル粒子が舞う。
バドレックスとは異なる。見覚えのある赤い粒子。地域の特色だとはいえ、やっていることはガラルの誰もが行うごく普通の行為のはずなのに、それを彼女が行うだけで、その行為は
いや、あるいはそれは凌駕しているのか。これまで私は、ダイマックスの違いなんてものをまるで意識して来なかった。けれど、彼女の其れを見れば、明らかに完成度が違うのが分かる。
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎※※──……!!!』
どこまでも届きそうな重低音。立っていられないほどの威圧。直前に戦ったホップのダイマックスより更に一回りは巨大なサイズ差。誰が見ても『これ以上は無い』と断言するだろう、それはまさに
(こんな、こんなところまで……)
ポケモンバトルは才能に左右される──これは向き不向きに加えて、好悪や運の要素まで一括りに、確かな事実としてそこにある。
ダイマックスの才能。そんなものがあるなんて、こうして実際に見て圧倒されるまで考えもしなかった。でも、逆に。それが本当にごく僅かな差だとして、
「ノラえもん、『ダイドラグーン』」
「ッ……迎え撃って!! 『ダイアイス』!!」
ダイマックスを経たことで水飴からも解き放たれたウオノラゴンが、その巨体が嘘のような早さで攻撃を仕掛けてくる。
赤と蒼。2つの強大な力のぶつかり合い。バドレックスが散らした氷山を竜の咆哮が空へ巻き上げ、それは霰となってスタジアムへ降り注ぎ、とても目を開けられる状態では無くなる。
『ヌォォオオ!? 我が愛馬よ、堪えるのだ!』
試合前の威厳に満ちた会話は何だったのか。バドレックスから私にそんな念話が伝わってくる。とはいえ、私はそれに呆れたりすることはない。こんなの予想できる方が無茶だからだ。
「──ノラえもん、『ダイドラグーン』」
「──……!」
静かな声。冷たい視線。こんな極限下にあってなお、彼女は微塵も相棒の勝利を疑っていない。
対する私はどうだろう。あらゆるポケモンを従える──それはすなわち、摂理として1匹に携わる時間が失われることを意味する。これまでであればそれで良かった。そんなハンデをも乗り越える力が、その程度をモノともしない才能があった。けれど、目の前の彼女こそ、その才能の極地とも呼べる存在で。だから、だから、
「ノラえもん、『ダイストリーム』!」
三度目の交錯。二度も竜の猛攻を耐え凌いだバドレックスは、しかし抵抗も虚しく、最後は槍の破片ごと膨大な水流に押し流される。
ダイマックス解除時の爆発さえも洗い流す雨。いつしか天空の分厚い雲は太陽を覆い隠していて、まるでそれが私の未来の暗示のようで。
「レオン、お願い!」
悪夢を振り払うように。迷いを振り切るように。繰り出した頼れる相棒の姿も、今は真っ直ぐ見ることが出来ない。
勝てない、勝てない、勝てない。どうしよう──焦り、焦燥、疲労が急激に押し寄せ、私の微かな希望さえも削ぎ落とされていく。
「──ノラえもん、『エラがみ』」
「あ───………」
最後のその言葉は、ひょっとして私の幻聴だったのかもしれない。
瞳に水滴が張り付く。咄嗟に叫んだ言葉は、レオンの一番得意なわざ、『ねらいうち』。拭う前の滲んだ視界で見えた光景は──レオンの一撃がウオノラゴンを捕らえ、しかしその勢いのまま、あのポケモンの『エラガミ』がレオンに直撃し──
「──お見事」
「え……?」
顔を拭ったユニフォームが肌に張り付く。不快感を振り払って目を見開くと、そこにはスタジアムのちょうど中央にレオンが、あのポケモンが倒れ伏している。
(だぶる、のっくあうと……)
ルールではどうだったか。いやそもそも相打ちなんて規則にあったか? さっきの交錯は。ウオノラゴンが倒れてる。レオンはどうして、それ以前にリンゴ選手にはまだ。つまり、これは。即ち──
私が状況から結果を導き出すのを避けるべく、なるべく遠回りに思考していると、少女はそれさえも踏み躙るように歩み寄って、
「良い試合だった。……でも、貴女とは二度と闘いたくない」
「………」
いつ尻餅をついていたのだろう。そんなことにも気付いていなかった私に、ゆっくり差し伸べられる手。そこでようやく状況が飲み込めた私は、その彼女の言葉に対し、
「……
「……お手柔らかに。未来のチャンピオン」
最後の言葉は、彼女なりの皮肉だったのだろうか。
差し伸べられた手を取ることもなく、私は自分で立ち上がって会釈をし、そのまま全力で会場を後にする。
次。次だ。足りないものは分かった。必要なモノも理解した。後は時間が、時間さえあれば、次こそは。
──でも、今は?
「あれ──」
通り雨だったのだろう。再び差し込んだ陽射し、それに伴い今更のように垂れる雨粒。頬をゆっくり伝うそれは、太陽の光のせいか、どうしてかとても熱く感じられた。
ユウリちゃんのインテレオンはバドレックスにすら迫るとんでもないレベルですが、流石にインテレオンでは雨が無くても110〜130%ほどのダメージで確定1発です。対戦ありがとうございました。
ダメージ計算
きゅうけつ→カミツオロチ 58〜68% 確定2発(乱数ではなく吸収時間で判定。最大乱数196ダメージ)
ダイドラグーン(ダイストリーム)→バドレックス 33〜40% 確定3発
エラがみ→インテレオン 110〜130% 確定1発
ウオノラゴン(とつげきチョッキ)
14→112→224→109→99→13→3
※捕獲直後のダイマックスレベルは0。
とはいえ、本作品においてのダイマックスレベルはダイマックスそのものの頻度とそのポケモンの仲良し度によって上昇する(ということにしている)ため、基本的にはMAXで計算していました。(逆に例外は主人公のジバコイルくらい)
それはそれとして新人トレーナーがレベル100のポケモンをチャンピオンくらいの練度でダイマックスして来たら普通はビビる。
また、素早さそのものはノラ(249)>インテレオン(241)ですが、素早さがほぼ互角で、状況がイーブンなら流石に突進する『エラがみ』よりも『ねらいうち』の方がどう考えても早いのでいつも通り初手にインテレオンを出していればダメージが足りていたり。まあ結果論ではありますが。
ちなみにユウリちゃんのポケモンはインテレオンとバドレックスがレベル80、カミツオロチとブリジュラスが75、レジ系は70で計算しています。(性格無補正ALL100振り)