FM神浜ささささラジオ   作:三白めめ

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優木沙々が小さいキュウべえになって実装されたので、約束通り初投稿です。


7/27 番外編

 美国織莉子は考えた。今までの予知で暗殺が失敗していたのはあの守護者、暁美ほむらが隠れられていたからなのではないか。つまり、取るべき手段は暁美ほむらと鹿目まどかが同じ場所にいて、そのうえで別行動をしている状況を狙う。極めて困難な挑戦ではあったが、その機会はいともたやすく訪れた。

 

「これは、プール……?」

 

 いつものように行っていた、鹿目まどかに関する予知で見えた光景では、鹿目まどかや巴マミ、佐倉杏子といった見滝原の魔法少女が一堂に会している。そこには予知の中で何度も邪魔をしてきた守護者(暁美ほむら)の姿もあった。

 

「なにか様子がおかしい。魔女がいるの?」

 

 そこから先で予知が捉えたのは、魔女を倒すために見知らぬ、それこそ千歳ゆまと同じくらいの歳の少女とウォータースライダーに乗っているほむらの姿だ。ここならば鹿目まどかを殺せるのではないか──

 

「いや、ここでは無理ね。他の魔法がわたしの予知と反発しているわ」

 

 おそらく、彼女らが戦っている魔女の魔法のせい。なにかしらの結果を確定させるようなものだろう。因果が確定するほど強力な魔法。これでは暗殺は無理だ。

 予知を更に先に進める。会話の内容から察するに、あの魔女が打倒された瞬間が最大のチャンスだろう。

 

 そうして魔女の魔法の効果範囲外まで予知を進めた時のことだった。空はすっかり黒に染まっていて、守護者──暁美ほむらが魔女は倒すために一人で鹿目まどかたちのいるプールサイドを離れていた。

 

「暁美ほむらはいない。そして他の全員が上を見上げている。狙うとしたらここね」

 

 最大の好機。間違いなく必殺の瞬間を目にして、しかし美国織莉子は久方ぶりの困惑を迎えていた。

 

「──え?UFO?」

 

 未確認飛行物体。謎の円盤。宇宙人の乗り物。連想する単語は数多く出てくるが、実像とはまったくもって結びつかない。

 

「もう一度見て見ましょう。いやいや、UFOだなんて……」

 

 思わず途切れさせてしまっていた予知を、再び先ほどの位置まで進める。そこにいたのはUFOだった。間違いなくUFOであった。

 

「……キリカ!キリカ!UFO!UFOが飛んでるわ!」

 

 美国織莉子は買い物に出かけていたキリカが帰ってくるまで錯乱し、帰ってきたキリカにカメラを持ってプールに行こうと熱弁していたことは余談だろう。

 

 

 

「──そういえば、千歳ゆまはどこにいたのかしら」

 

 落ち着いたところで先ほどの予知を思い出す。もう一つ懸念すべきなのはそこだ。佐倉杏子が面倒を見ているはずの千歳ゆまの姿が一向に見当たらない。

 

「彼女はわたしの顔と名前を知っている。もし話しかけられて一緒にプールを回ることになれば、わたしの想定は台無しになる」

 

 しかし、何度予知を見返しても、そこに千歳ゆまの姿はなかった。

 

「どういうこと?まさか、杏子がゆまを置いていったの?ネグレクト……いや、佐倉杏子がそんなことをするとは思えない。なぎさと言ったかしら、同年代の魔法少女もいるから連れて行かない理由もない」

 

 美国織莉子は、可能性を記憶の断片から探し出す。佐倉杏子がゆまを連れて行かない理由。いや、連れていけない理由。そして、織莉子は一つの事例に思い至った。

 

「神浜について調べていた時に聞いたことがあったわ。そうだ。仲間が死んだとき、遊園地に行って気分転換したチームがあったはず」

 

 おそらく、それと同じ発想なのだろう。だとすれば佐倉杏子が千歳ゆまを連れていないことも理解できる。

 

「あまりいい状況とは言えないかもしれない。ゆまはまだ駒として使える。あのUFOが不確定要素な以上、次善の策として残しておくべきかしら」

 

 ──成功すれば美国織莉子の目的は果たされる。失敗すれば駒が一つ失われる可能性。佐倉杏子の、風見野の魔法少女の危険性は以前の戦闘で理解した。キリカを以てしても不意打ちでないと仕留められない相手がいる以上、同じ風見野出身の彼女に有効な駒をここで切るのは惜しい。

 ──必殺の瞬間を取るか、不確定要素で見切りをつけるか。

 

「──ッ。無理ね。あの円盤がインキュベーターの宇宙船だったら、膨大なエネルギーを回収できるはずの鹿目まどかを守るために動くかもしれない。そうなれば、わたしやキリカではどうしようもなくなるし、最悪の場合はわたし達に魔法少女を仕向けてくる。ここは見送るしかない……わね」

 

 顔を歪め、舌打ちをすらしたくなる気持ちを抑える。では、ゆまをどうするか。一番手っ取り早いのは杏子がプールに行っている間は織莉子自身で預かることだが、キリカを一人にするわけにもいかない。だとすれば、未だに切り捨てていない彼女が役に立つだろう。電話帳に登録されているアドレスを押した後、数回鳴ったコール音

 

「沙々さん、元気かしら」

 

 優木沙々。彼女の魔法なら違和感なく連れ出せる。

 

「あ、もしもし、沙々です~。どうしましたぁ?」

 

「頼みたいことがあるの。千歳ゆまという少女の親戚として、彼女とどこか──そうね、だれかの別荘にでも行ってくれないかしら」

 

「はあ。まあできないことはないんですけど、意図が掴めませんね」

 

「そうね。千歳ゆまは佐倉杏子の大切な庇護対象だと言ったら分かってくれるかしら」

 

 一瞬の沈黙。こちらの意図は理解できたのだろう。

 

「……くふふ。分かりました。ついでに小巻先輩あたりに押し付けるのは?」

 

「ええ。分かったわ。小巻さんに貴女とゆまの二人が来るって伝えておくわ」

 

 先ほどとは違う、呆気にとられたような間が開いた。不機嫌そうな声が聞こえてくる。

 

「はあ?わたしもですかぁ?まあ分かりました。で、いつからですか?流石にあの化け物から拉致ってこいなんて言いませんよね」

 

「ええ。彼女は他の魔法少女との話し合いがあるから、その隙を突いてきてほしいの。親戚と遊びに行くと言われれば、佐倉杏子もある程度は納得するでしょう」

 

 優木沙々は使える手駒ではあるが、どうしても必要なわけではない。まあ、風見野の抗争でも生き残ったのだから、このくらいなら大丈夫だろう。

 ──少し甘くなっているかもしれない自分と、それも悪くないかと思っていることを自覚して、少しイヤになる。

 

 

 

 

──数日後

 

 杏子さん、ゆまさんはプールに連れてかなかったんですね。ひとりぼっちは寂しいんじゃなかったんですかァ?

 というわけで、本日は公開収録!ゲストにゆまさんと、あとなぜか着いてきた小巻先輩をお呼びして、プールの前でお届けします!

 

FM神浜 Holy Radio Station SS(ささ)

 

 お相手はいつもお馴染みあなたのトモダチ優木沙々です!




3周年おめでとうございます。それで、おりマギイベントはまだですか?

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