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西暦2050年 旧世界 アメリカ合衆国 ニューヨーク 国連本部
日本国が消失してから2年が経つ世界は、普通の日常を取り戻していた。
「—では、これにて通常会期を終了します」
国連総会議長『モルト・S・ハリー』が終了を宣言する。
「お疲れだな。ダレン」
英国連大使が米国連大使ダレンに声をかける。
「あぁ...........」
ダレンがある席を見る。
その机の上には一羽の折り鶴が乗せられていた。
「............日本が消失してから2年か。早いな〜」
「その言い方だと、日本がいなくて嬉しいと見られるぞ」
英国大使の忠告にダレンは肩をすくめる。
「すまん。だが、世界経済の大黒柱の1つがすっぽり抜け落ちても、この世界はよく持ったよ.............これも日本のおかげだな」
「あぁ。だからこそ、核兵器を全廃させるべきじゃないのか?」
「.............それは無理だ。presidentからの命令だ...........」
「そうか。アメリカは孤立の道を選んだか..........」
そう言うと、会議場から出て行った。
その後ろ姿を見ながら、ダレンは、
「私だけじゃ、どうしようもないんだ............」
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新世界 中央歴1636年 5月10日 ロデニウス大陸北西沖
ムー共和国使節団を乗せた第1任務部隊はロデニウス大陸の北西沖を航行していた。
その第1任務部隊の前衛艦隊旗艦を務める『うんりゅう』の艦載機から、CICに通報が入る。
『こちらうんりゅうスワロー05。艦隊右舷後方、距離20マイルの地点で未知の音源を確認』
水測長が聞き返す。
「待て。なぜ今まで探知できなかった?」
『それが、このあたりの海流が激しく渦を巻いていて、そして磁場の乱れも激しく、発見が遅れました』
「分かった。後続の本隊に連絡する。そのまま追跡を続行されたし」
『了解』
「通信士。あかぎに緊急連絡」
「はい!」
うんりゅうが得た情報は、共有情報システム、そして緊急連絡によって全艦隊が状況を把握した。
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あかぎ CIC
うんりゅうからの情報を見たあかぎは焦る様子を見せることなく話す。
「ふ〜ん............」
隣にいた砲雷長があかぎの顔を見ると、にやけていた。
「艦長。顔に出てますよ」
「わざとよ」
「何を考えていらっしゃるので?」
すると、あかぎは再び笑みを浮かべ、
「使節団の軍関係者を呼んできて」
「はい」
しばらくして、CICにムー使節団の軍関係者が入ってくる。
「な、なんだこれは.............」
CICに入ってくるなり、その意味不明用途不明の装備品を見て驚きの声を上げる。
「では皆さん。こちらへ座ってください」
「「「「?」」」」
何が起こるのかと考えながら椅子に座る。
「あの?これに映ってるのは?」
海軍の1人がレーダー情報を映しているディスプレイを指しながら聞いた。
「これは本艦を中心としたレーダー情報など映しているものです。AEWのカバーもありますが、3000kmは探知できます」
「は?」
「.............」
海軍関係者が絶句する。それはこちらがコソコソと動き、奇襲を敢行しようとしても、すぐに探知されるからだ。
「先程から言われてるレーダー?は、なんだね?」
「まぁ詳しい説明は後ほどしますので」
「これが正しいとすれば艦同士の距離は数十kmは離れていることに.............ん?艦隊右舷のところに、ポッカリ穴が空いているようだが?」
「これからお見せするのはそれに関係しています」
「艦長。各部、係留物固定完了しました」
攻撃指揮官妖精があかぎに報告する。
「しかし艦長。来ますかね?」
「今までの報告を見る限り間違いなく来るわ」
攻撃指揮官妖精は帽子を被り直す。
「願わくばこないことを祈ります」
だが、攻撃指揮官の願いはすぐに散る。
「対潜担当艦『みゆき』の潜望鏡探知レーダーに反応ありとの連絡」
通信士妖精が報告するのと同時に、レーダーにフリップが映る。
電子戦士官妖精がレーダー波を検知する。
「...........unknown。レーダー波を照射中」
「本艦との正確な距離を測っているのですかね?」
『こちらむらくもCIC。敵潜水艦が魚雷発射管に注水した模様..........発射されました』
すると、魚雷航送データが映る。
「雷数8。3線は外れますが、5線命中コースです。速度48ノット。本艦に真っ直ぐ、斜角3度で近づきます。命中まで2分」
「航海長。舵もらうわ!」
『了解です』
「エンゲージ」
あかぎの霊力が爆発的に上がり、それを受けた妖精たちは活力を得る。
そしてあかぎの船体に光が走り、艦首、飛行甲板にイデア・クレストが浮かび上がる。
「警報!雷撃回避運動!」
「総員、シートベルト点検!」
各員が緩みがないかを確認する。
ムー共和国軍関係者のベルトは既に締められていた。
「最大戦速!060へ面舵一杯!」
あかぎの船体が48ノットまで上がる。
前回の話で、45ノットと表記したが、あくまで45ノットは出るという話で、実際はそれを遥かに上回る。
「「うおっ!!」」
Gがかかり、グッと体が後ろに引かれる。
そして右へ旋回する。
「ウォォォォォォォォォーー!!!!!」
悲鳴に、絶叫に等しい声を出す。
ラッサンがディスプレイに映る映像をチラチラと見た。
(あんなに急旋回を!)
それに、船体に光が走ってることに気づくが、それを深く考える余裕はなかった
「変針260。取舵一杯!」
次は左に急旋回をする。
「ヒャッハァァァァァァァーーーー!!!」
どこからか○ナッシーの声が聞こえてくるが気のせいだろう。
「うぐっ............」
「もど〜せ〜!!」
そして舵を再び面舵に戻す。
海上に巨大な“S”を描いた。
そして魚雷は次元排水量10万トン越えの航跡に突っ込み、3本はもみくちゃにされて、あらぬ方向へと進み沈降し、残りの2本は信管が誤作動し、爆発した。
「ふ〜。舵、戻すわよ」
『はい』
舵があかぎから艦橋に渡される。
「警報解除します」
「了解」
攻撃指揮官が警報を解除する。
そして旗艦が攻撃を受けたことで付近にいたむらくも艦載機SH-60Kが、うんりゅうスワロー05の情報を受け取り、反撃を開始する。
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むらくも艦載機 SH-60K
副機長が爆発した魚雷を目視する。
「どうやら弾き飛ばしたようですな」
「誘導魚雷じゃなかっただけマシだろう。ソナーマン、反応はどうだ?」
機長が後方にいるソナーマン妖精に聞いた。
「3番ブイの感が大きい..........再装填中の模様。位置を送る」
敵潜の位置情報が機長のHUDに表示される。
「了解した。TACCO!」
「はい!」
「38式を使うぞ」
「既に準備済みです。データも入力してあります!」
「よし。アプローチするぞ!」
高度と進路を調整する。
「いくぞ!」
「進路、速度このまま。38式、投弾よ〜い。投下!」
TACCOが発射ボタン押し、パイロンから38式次元短魚雷を投下する。パイロンから切り離された38式は、パラシュートを展開し、海面へと着水する。
海面へと着水した後、しばらく沈降し、ジャイロによって姿勢を整えて探信音を一回放つ。
そして弾頭にある、パッシブソナー、磁気探知装置が起動し、敵潜をモーターの続く限り追い続ける。
「こ、こんなはずでは!」
あかぎを攻撃した潜水艦の艦長はあかぎを攻撃したことを後悔するが、もう遅い。
海中に光が走る。
ザァァァァァァァーーーーン!!!
海面に水柱が出来上がる。
「どうだ?」
機長が窓から水面の様子を見ていた副機長に聞く。
副機長が目を凝らして見ていると、油の膜や、何かの破片が浮かび上がってくる。
「重油の膜、破片を確認。撃沈したと思われます」
「..............了解。このまま哨戒を続行する」
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あかぎ CIC
『重油の膜、破片を確認。撃沈したと思われます』
「了解」
フリップが“撃沈”になる。
「艦長。警報解除します」
「はい」
「警報解除。対潜戦闘用具収め」
「警報解除。対潜戦闘用具収め」
警報が解除され、対潜装備に安全装置が掛けられる。
あかぎが後ろにいる使節団の軍関係者を見ると、
「あら?」
口から泡を吹いて気絶しているもの。目をぐるぐる回らさせているもの。白目を剥いているものと、一部を除いて全員がそれぞれ気絶している。
「ごめんなさい。医務室へ運んであげて」
「了解です」
「「...............」」
マイラスとラッサンはあの急軌道に必死に耐えた後、考察していた。
(デカイ癖に凄まじい加速性能...........我が軍の軽巡に匹敵する。これだけの機動性があれば砲弾を避けることもできるだろう)
(この巨艦をどうやってこれほどの機動性を出せるんだ?)
マイラスとラッサンは、『戦術』『技術』のそれぞれの見方で考察を続けた。
「どうでしたか?」
あかぎが2人に感想を聞く。
「なんとも言えません。この部屋もそうですが、全てにおいて我々の概念とかけ離れています」
ラッサンが答える。
「そうですか。では、マイラスさんが気になっている『レーダー』について説明します。『八木アンテナ』と呼ばれる、指向性電波送受信器が始まりです。それから世界各国はそれらの技術を発展させました。昔は大型艦など、限定的な運用しか出来ませんでしたが、真空管から半導体となり、戦闘機に搭載されるまで小型化されました」
そして説明が終了し、CICを退室した後、2士妖精の案内で飛行甲板に移動する。
マイラスとラッサンはムー共和国軍の既存の戦術では、日本に敵わないことを改めて知る。
「しかし、どう思う?」
2人はしばらく黙っていたが、ラッサンが口を開く。
「既存の運用思想を根底からひっくり返すな」
「既存と言っても、今のムーの技術じゃ実現できないよ」
そう。ムーは一部突出している技術があるとは言え、ほぼWW1イギリスレベルである。対して日本は、一部オーパーツが混じっているが、2050年代の技術である。単純計算でも1世紀は離れている。
「あぁ、それどころか、追いつくことすら不可能だろう」
2人は再び黙る。
そして飛行甲板へと着いた。
「広いな..........」
「あぁ、今さっき分かったが、斜めの甲板は着艦のためにあるんだな」
「あれで航空隊の離着艦の効率は高まるだろうな」
すると、艦載機のF-4Bが発艦するためにカタパルトの発進位置につく。
「色分けされているのも効率化を図るためか」
ラッサンが、色とりどりのジャケットを来た乗組員を見てそう言った。
しかし...........
「それにしてもどうやってあの大型機を発艦させるんだ?」
F-4B程の大型機をどうやって発艦させるのか。それが気になっていた。
「............ラッサン。そう言えばここに来た時、あのレールのようなものが気になってたよな?」
「え?あぁ、あれか、詳しく見ようとしたけど、見れなかった奴だな」
「もしかしたらそのレールは航空機を発艦させられるほどの速度まで加速する装置かもしれない」
「嘘だろ!?たったの数十メートルしかないんだぞ!離陸に足りる速度
まで加速するんだったら相当な出力が必要だぞ!」
「あぁ、我が国の今の技術じゃ不可能だろう。だが日本国とムーの差は100年を軽く超える。100年の差があるならできるはずだ」
「............確かに。そのレールさえあれば、あのような大型機でも発艦させられるということか」
「戦術の幅が大きくなるだろうな」
大型機を打ち出せるということは、その分、武装搭載量などを増やせることにつながる。
「...........しかし、詳しいことを知りたいのは..........」
「やはりあれか」
2人は水平線の彼方を見る。
「この艦隊の前衛を務めてる戦艦を見てみたい」
ラッサンがそう言った。
ムー共和国の海軍の戦略は、基本的に戦艦同士の殴り合いを想定している。空母はあくまで制空権の確保を目的とした補助艦艇扱いだ。
なぜ空母が補助艦艇扱いなのか。
それは、『航空機では戦艦を沈められない』と、世界が思っているからである。無論これは間違いではない。旧世界でも空母が補助艦艇扱いの時があったのだから。
だが、航空機が複葉機から単葉機、そして高速化、爆弾の高威力化によってそれは覆された。
空母機動部隊の有効性を証明したのは、我が大日本帝国の真珠湾攻撃だ。
空母艦載機の集中運用によって強大な打撃力を生み出したそれは、いくら奇襲とはいえ、大多数の戦艦を撃沈したのだ。
「だが、俺はその戦艦のスペックを見ただけで気絶したぞ。衝撃的なスペックだった」
「マジかよ...........」
マイラスが、あかぎで『ながと型護衛戦艦』のスペックを見て気絶したことを思い出していた。
「だが頼めば見せてくれるということだ。早速行くか。お願いします」
「はい」
2士妖精が頷き返す。
そして艦橋に移動して、あかぎ直々に頼み込む。
「「お願いします!」」
2人はあかぎに頭を下げる。
「いいですよ」
ラッサンの顔がパッと明るくなる。
「私もながとに行くところでしたから。飛行班長」
あかぎは近くにいた飛行班長に声をかける。
「はい」
「私の他に、2人も追加で」
「了解です。伝えておきます」
「出発は1730です。遅れないように」
そして2人は早速飛行甲板へ移動する。
「おい!マイラス!あれ!」
ラッサンが艦尾の方を見るなり、マイラスの事を呼んだのでマイラスが振り返ると、
「なっ!双発機!?」
着艦しようとしていたのは、双発機—E-8J早期警戒偵察機であった。
「..........ミシリアルのようなエンジンなのか」
「あの皿みたいなのは何だろうな?」
2人の注目は、E-8Jの胴体上部にあるAN/APY-11へと向けられる。
「...........う〜ん。さっぱりだ」
用途が全くわからない2人。
「熱心ですね。2人共」
2人の後ろから声が聞こえてきた。
2人が後ろを振り向くと、
「あ、どうも」
あかぎが、飛行班長妖精を連れて立っていた。
「熱心ですね。お二人とも」
「えぇ。まぁ」
「では早速行きましょうか」
4人は、SH-60Kに乗り、ながとへ向かう。
ながとが夕日に照らされる。
「...........なんかスリムだな」
マイラスがながとの姿を見て言う。
ラ・カサミ級のように、ゴツゴツしている訳ではなく、コンパクトな印象を受ける。コンパクトと言っても、全長250mは超えているが.........。
「お。光った」
不意に艦の端の部分が赤や緑などに点滅する。
「この船、夜戦もこなせるのかな?」
「マイラス。それが本当だとしたら、この世界で無敵を誇るぞ」
ラッサンがこう言ったのには理由がある。
まず敵の発見に関する問題だ。いくら航空機があるとはいえ、夜間の視界はかなり悪い。月明かりを頼りにして探すか、艦からの投光器で敵を探すかなどがあるが、天候に左右されやすいし、投光器などを使えば、いい的だ。これはムーだけに限らず、ミシリアルにも言える。
「だが、あのレーダーというのを使えば、敵をかなり遠方で発見できるんだぞ?遠くで発見できる分だけ、準備に時間を使えるし、直掩機の誘導も効率化できる」
直掩機の誘導は、列強だけではなく、対空魔振装置を艦船などに搭載している国家に共通して言える…言えるが、この対空魔振装置は『パッシブ式レーダー』なのである。つまり、ムーのように、魔力を一切使わない純科学製だと人の魔力を探知、判別するしかないのである。加えて、魔力が大量に放出されている地域だと、これはただのガラクタ同然になる。迎撃の効率化は図れたが、外的要因に左右されやすいという、最大の欠点を抱えていた。
「それはそうだが...........」
ラッサンは向かいに座っているあかぎを見る。
(綺麗な人だ............。しかしなんで艦長と、艦の名前が一緒なんだ?)
「どうしましたか?」
「え?いや..........どうして艦長の名前と艦の名前が同じなのか、気になって...........」
「.............そうですね。今ここで説明するのは難しいので、後ほど」
「はい」
どんな事情があるのか更に気になるラッサンだった。
そしてヘリはながと飛行甲板へアプローチに入る。飛行甲板が間近になり、信号士官が着艦の合図を送ると、“ドン!”と、勢いよく着艦した。
RASTがヘリを拘束する。
機長が、スロットルを下げる。
「扉、開けます!」
外から扉が開けられる。
ヘリから素早く降り、退避する。
「ふ〜。ん?」
マイラスが視線を上げると、男が1人立っていた。
「お疲れ様です!」
敬礼しながら挨拶する妖精隊員。
「どうぞこちらへ!」
艦内へ入るために格納庫を通る。
「ん?」
マイラスが格納庫に入る直前、ながとの飛行甲板に近づいてくるヘリが見えた。
そして偶然国籍章が見えた。
微かに見えただけだったので、脳内に念写する。
(おかしい。日本の国籍章は赤丸だったはずなのに。どういうことだ?)
「マイラス!早く来い!」
ラッサンから声をかけられて現実に引き戻される。
「すまん!すぐ行く!」
そして艦内へと入る。
「.............やはり明るい」
ラッサンが明るく照らされてる通路を見て言う。
「さっきもそうだったけど、空調が効いているな」
「うん。とても快適だ」
たがが空調に驚く2人。
やがて艦橋に到着する。
「艦隊副司令入ります!!!」
その声に呼応し、敬礼する隊員妖精。
その迫力に思わずたじろぐマイラスとラッサン。
「お疲れ様。副長、ながとはどこに?」
隊員妖精を労いながら、副長にながとの居場所を聞くあかぎ。
「はぁ、それが、副司令が来ると分かった途端、艦長室に行かれました」
「............勘がいいわね。分かったわ、ありがとう。それと、この方達に説明をよろしくね」
「了解です」
敬礼しながら返事をした副長。
あかぎは艦長室へ向かった。
「航海長。指揮を頼む。では、どこから見たいですか?」
2人は少し顔を見合わせると口を揃えて、
「「主砲からお願いします」」
と答えた。
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ながと 艦長室
艦長室の扉の前であかぎは服装を整えていた。
そしてノックをしようとすると、
「入れ」
と、中からながとの声が聞こえてきた。
中に入るあかぎ。
「なんの用だ。わざわざ副司令が来るなど」
ながとの開口一番の質問にあかぎは微笑むだけだった。
「............ここに来て正解だったようだ」
「ふふ。相変わらずのながとね」
「どうも」
「それじゃあ本題だけど—」
あかぎは机の前にある椅子に座りながら話す。
「—潜水艦について、ながとはどう思う?」
真面目な表情になったあかぎに、ながとも気を引き締める。
「............はっきり言うなら、国際法、と言っても、この世界にまともな国際法はないが..........宣戦布告すらしてない相手の軍艦に攻撃を仕掛けてくる時点で、その軍人は腐っていることになる。既に国交を締結した一部の第3文明圏国家の商船の被害も確認されている。正直言って、対応は政治的判断になる」
ロデニウス大陸周辺の潜水艦は、クラーケン排除のついでに殲滅している。だが、第3文明圏国家、特に、シオス王国の商船に被害が出ている。
日本政府は、シオス王国に基地を建設することを検討しているらしいが............。
「シオス王国に基地を建設するとなると、パーパルディア皇国を間接的に脅かすことになる」
「そうよね...........」
「ところで、旦那がいなくて寂しいか?」
ながとの質問にあかぎはカッと赤くなる。
「ねぇ。なんでそんなこと聞くの?」
「いや、なんとなく。というか旦那だと認めるんだな」
「なっ!?」
艦長室周辺に悲鳴が響き渡った。
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ながととあかぎが艦長室で騒いでいる頃、マイラスとラッサンはながとの第1主砲の前にいた。
「これが41cm............」
「でかい上に長砲身だな。どのくらいの射程があるのですか?」
ラッサンが副長に聞く。
「具体的な数値は申せませんが、40kmは軽く超えますね」
「.............は?」
「40kmです」
「...................」
ラ・カサミ級の射程を、倍以上を超えている。
「口径は?」
「62口径です」
「62............!?」
「.............」
もはや戦艦同士の殴り合いでも勝てないと絶望しているラッサンだったが、あることに疑問を持っていた。
「あの、どうやって40km先の目標に当てるのですか?」
そう。最大の疑問はそこにある。
いくら長射程を誇っていても、敵に当てられなければ意味がない。大和型戦艦がいい例だろう。
「私たちの場合、それぞれの砲塔にある、これですね。FCS-4というレーダー測距儀兼主砲専用射撃指揮装置です」
「レーダー測距儀?射撃指揮装置?」
測距儀や射撃指揮装置はムーにもあるが、レーダーを利用するものではなく、測距儀は人力で距離を算出する。射撃指揮装置は、その数値をもとにした仰角をとる機械があるだけだ。レーダーなどは一切利用しない。
「しかし、もしそのレーダーにて得られた情報をもとに砲撃するとしたら、計算速度が尋常ではない速度が必要になるのでは?」
「その通りです。しかし高性能コンピューター.............電算機で計算された情報をもとに砲撃を行います」
「すまんマイラス。電算機ってなんだ?」
ラッサンが電算機の意味が分からずに聞く。
「確か、どこかの大学が試作しているという、真空管というのを利用した電気計算機のことだと思うが...........もし実現できた場合、ビル60階分レベルの大きさになるらしい」
マイラスはチラリと艦橋を見る。
「だが、この戦艦が使っている電算機はビル程の大きさもないようだな」
短時間で電算機の概要を思い出すマイラス。恐るべし。
「なぁ、マイラス。俺たちも—」
「無理だ」
「ですよね」
ガックリうなだれるラッサン。
「あはは」
副長は顔を引きつらせながら笑った。
「あの、話が変わるのですが、先程着艦しようとしていたヘリコプターでしたっけ?の国籍章らしきものが、あなたたちの赤丸とは違ったような気がしたのですが.............」
マイラスが思い出したように副長に聞く。
「あぁ、あれですか。あのヘリコプターは、『アンティータム』艦載機ですね」
「アンティータム?」
今までの日本の軍艦の名前を考える限り、有り得ない名前だ。
「それは、属国軍ですか?」
ラッサンが聞く。
「え?いえいえ、違います。アンティータムは、国連海軍第7艦隊所属の巡洋艦です。現在はこの任務の応援艦として艦隊に加わっています」
「国連海軍?」
「国連海軍とは、各国政府が国連軍に拠出している艦船などから構成される軍です。まぁ多国籍軍と思っていただいて結構です」
「多国籍軍............」
「すごいな。だとしたら各国の仲は相当いいんだろうな」
ラッサンがふと漏らした言葉に、
「いえ、そうはいきません。何せ仮想敵国同士の軍隊も含まれていましたからね。当初は拠出という形を取っていましたが、現場での軋轢が生まれ始めて、国連事務総局は、国連軍に所属している全ての部隊を正式に国連軍として定められました」
要するにNT((殴
「しかし、その所属の部隊の不満はどうなんです?」
「確かに、当初は離脱する部隊もいましたが、一部の隊は残りました。そのうちの1つがあの増援艦が所属している第7艦隊です」
『ロナルド・レーガン』は第7艦隊、第5空母打撃軍の所属であり、在日米海軍として、横須賀を母港としていたが、日米安保条約自動延長終了に伴い、アジアでの米軍のプロセス低下が、米国の何よりの懸念だった。別地点候補として『韓国』『台湾』『フィリピン』の主に3つが候補に挙げられたが、韓国は敵と近すぎ、そして海軍戦力展開には向かない。台湾もほぼ同じ理由であった。そしてフィリピンも、
「あれだけの艦隊を手放すなんて。その国はかなりの太っ腹なんですね」
ラッサンが言う。
もしそんなことがあれば、喉から手が出るほど欲しい戦力だ。
「まぁ、当初は原隊復帰命令が出ていましたが、当時の司令が『我々は独立する』と言い、全ての第7艦隊所属艦艇、及び、人員などと一緒に国連軍の軍人となりました」
「え?それはつまりクーデターということですか?」
ラッサンが聞く。
「えぇ。実質そうです」
思ったよりもヘビーな問題に絶句する2人。
「これ以上詳しい話をすると、1時間以上はかかりますので、また後ほど」
気になる2人だったが、話を強制的に打ち切られて内に仕舞い込む。
その後、副長の案内で、護衛戦艦ながとの各種装備を見学した2人であった。
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中央歴1636年、5月15日。西暦2050年5月15日。ムー共和国使節団は佐世保へ降り立った。この時、日本、いや、世界に新たな歴史が刻まれた。
『ムー共和国。文明圏外国家へ使節団派遣』
と。
挿絵
https://media.defense.gov/2019/Sep/03/2002360959/-1/-1/0/190903-N-JN784-1117.JPGより引用。
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えぇ、はい。前回投稿から13日、約2週間でなんとか投稿できました。そして、あかぎのイデア・クレストの作画を友人に依頼したので、しばらくしてから、画像を入れます。
そして国連の複雑さに目を白黒させる同期2人組。
次回はどのような反応をするのかをお楽しみに。
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次回予告
ムー共和国使節団は、日本の圧倒的な国力に驚愕する。そしてその頃、外務大臣の姿は大東洋諸国会議にあった。生まれ変わる大東洋諸国会議。そしてムーは、日本との接触で何を見出すのか。それは誰にも分からない。
次回『ムー共和国の調べ』
パラレルワールド その1
-
①
-
②