異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

11 / 27
 評価してくださいました、特務機関様、70あい様、クルンパ様ありがとうございます。
 その他お気に入り登録してくださいました皆様もありがとうございます。
———————————————————————————————————
 (宇宙戦艦ヤマト 無限に広がる大宇宙2199版)

 日本国は列強とのひとまずの穏当な接触に完全に成功する。そしてムー共和国使節団は日本の軍の一部を見て何を思うのか、それは誰にもわからない。


ムー共和国の調べ

 ???

 

 

「しかし、シャマシュ。なぜこっちの日本を召喚したんだ?」

 

 男性とも女性と取れる、中性的な見た目をしたものが、白髪を腰まで伸ばした女性に聞く。

 

「うん?だって、この日本を召喚したところで、あの魔帝を倒すのは規定路線としても、その後の世界が悲惨な状況になるからね。だったらある程度行動力の大きいこっちを召喚した方がいいんじゃないかな〜と」

 

 大きくため息をしながらそれに返す。

 

「全て終わった後の始末はお前に任せるが、アスタルテのようなことにはなるなよ」

 

 その忠告に、

 

「それは分かっているわ」

 

 と、返したシャマシュだった。

———————————————————————————————————

 中央歴1636年 5月29日 日本国 首相官邸

 

 

 数台の黒塗りの公用車が官邸の守衛所を通過する。

 

「ここが、日本の政治の中枢..........」

 

 文官関係者が言葉を漏らす。

 

「趣を感じるな」

 

「あの白い服を着て武装しているのは、軍でしょうか?」

 

 団員の1人が疑問にした白い服を着た者達は、保安隊である。

 

「まぁ、それは置いといて、この後の会談に備えましょう」

 

 使節団は、車から降りて、大会議室に案内される。

 

「緊張しますね」

 

 外交官の1人が言う。

 

「決して粗相の無いようにしないと..........」

 

 アベルがネクタイを締め直しながら言った。

  

 スッ

 

 扉の向こう側に気配を感じ、姿勢を正す使節団。

 扉を開けて入ってきたのは、各閣僚、官僚だった。

 

「ムー共和国使節団の皆さん。お待たせして申し訳ありません。私は日本国内閣総理大臣『佐山 譲二』と言います。今回はよろしくお願いします」

 

 佐山のおっとりとした雰囲気に、気が緩む団員たち。ただ、アベルは気を緩めるどころか、更に気を引き締める。

 

(こいつ。腹の裏にとんでもないことを抱えてやがる!)

 

 佐山は、クワ・トイネ公国使節団に見せた時とは違い、ムー共和国使節団に、裏の圧を掛けていた。

 

(他は気付いていない...........くっ!まずいぞ!)

 

 アベルは佐山の激しい圧に耐えていた。

 

「では、早速ですが、両国にとって初となる会談を始めましょう」

 

「はい............」

 

 その後、国交締結や、貿易などに関する話が行われた。

 

 〜2時間後〜

 

「では、ここにサインを」

 

 貿易に関する条約は後回しにされたが、国交締結の条約の公文書に佐山とアベルの名が記名される。

 

「アベルさん。これからよろしくお願いします」

 

「はい。こちらこそ」

 

 2人は硬い握手を結ぶ。

 後に、ムー共和国は日本国にとって重要な友好国となるのであった。

———————————————————————————————————

 2日後 横須賀港

 

 

 ムー共和国軍関係者は陸海空それぞれの分野に分かれて行動するもではなく、一緒に見学することを選んだ。

 

「..............壮観だな」

 

 マイラスが双眼鏡で沖合にいる戦艦2隻を見て、そう言葉を漏らす。

 

「しかし、あの戦艦の砲撃を今日は観れるんだぜ!これほどいいことはないな!」

 

「ですな。しかし、41cm砲の威力.........楽しみです」

 

 海軍士官がこれからのことを楽しみにしていた。

 すると、こちらに近づいてくる小型艇が2隻。

 

「こんにちは。今回案内をさせていただく、『室蘭 桜』1等宙佐と申します」

 

「はい。本日はよろしくお願いします」

 

 一行の中で最上級の将校が代表して挨拶をする。

 

「ではこちらにどうぞ」

 

 全員が搭乗したことを確認すると、出るように伝える。

 映像が風で飛ばされないよう手で押さえながら桜は話す。

 

「今回は、各艦隊の一部の艦が定期的に実施する検査に同行していただくことになります」

 

「分かりました」

 

 検査なら護衛艦の定期メンテナンスですればいいじゃないかと思うかもしれないが、これはその護衛艦の一斉技能検査も兼ねている。

 しばらくすると護衛戦艦『ながと』のタラップが見えてきた。

 

「よっと」

 

 小型艇からタラップへと飛び移る。

 そして階段を登る。

 

「どうぞこちらへ」

 

 艦内へ案内される。

 

「戦艦の中とは思えんな...........」

 

 ムーの軍艦に限らず、通路は基本的に狭い。

 やがて艦橋に到着する。

 

「「おぉ...........」」

 

 マイラスとラッサン以外のメンバーが艦橋に入るなり声を上げる。

 見たことのない機械などがズラリと並んでいる。

 

「浦賀水道に入ります。両舷前進強速」

 

「両舷前進強速。赤黒なし」

 

 すると、ながと前方2kmに海保の巡視船『いなさ』が航路哨戒に入る。

 

「巡視船『いなさ』航路哨戒に入りました」

 

「航海長。今日は混んでいますね」

 

「あぁ、おそらく、第3文明圏国家からのコンテナ船だろう。 第2ASF第2対潜艦隊が護衛してきた船団が一斉入港しているんだろうな」

 

 船団護衛という、非効率な護衛を行なっている理由は、潜水艦や魔獣などに各国が対処できないからである。

 そこで中央は、船団護衛という、コストが最もかかる船団護衛方式で輸送船を保護するという策を取っていた。

 

「艦長。今日演習に参加する隊はどこでしたっけ?」

 

「確か..............本艦の他に、それぞれの艦隊にいるたくみ型と、ロデニウス連邦海軍駆逐艦が3隻参加する筈」

 

「あの駆逐艦ですか?」

 

「そのようだ」

 

「皮はお古、中身は化け物か............」

 

(どういうことだ?)

 

 マイラスは、先程のやり取りを聞いてて、『皮はお古、中身は化け物』という文言に引っかかっていた。

 

「それはどういう意味ですか?」

 

 マイラスが室蘭に聞くと、室蘭は自身の端末を見ながら答える。

 

「ロデニウス連邦海軍の最新鋭駆逐艦です。外側はフレッチャー級駆逐艦、中身は最新鋭機材で固められた艦です」

 

 武装は海上自衛隊時代の動態保存品、そして国連軍装備品統一規格に規定されている、MK45.5インチ.mod4が4門と、対潜武装として、イギリスが開発したヘッジホッグを改造したもの。そして533mm 5連装魚雷発射管を搭載し、『ウイロ級駆逐艦』として量産が開始されている。

 いくら日本国が継続的な支援をロデニウス連邦に行っているとはいえ、なぜここまでオーパーツの装備品を運用できるのか?理由は、『魔法しか知らなかった』からである。

 日本国は現在、文部科学省を中心に、魔法の基礎研究を行なっているが、難航を極めている。科学が足枷となっているからだ。

 対して、ロデニウス連邦は、すぐに『科学』を理解した。魔法とは違い、素質のある者だけが使えるわけではなく、学さえあれば、誰にでも使えるからだ。ただし、最初は難航した。魔法とは、先の話でも説明した通り、『過程を無視して現象を発現させる』のである。つまり、酸素が燃えて、二酸化炭素を排出して燃える、といったものを、『必要な魔素さえあれば、火をつけれる』と、過・程・を・無・視・し・て・現・象・を・発・現・させるのである。つまり、過程は知らないと言うことである。なら、魔法の要素を一切考えずに行けばできるんじゃね?という結論に達し、今のレベルまでロデニウス連邦は到達していた。

 

「そのフレッチャー級というのは?」

 

「旧世界でのアメリカ合衆国海軍が採用した、量産型駆逐艦です。建造されたのは175隻—」

 

「「「「—は?」」」」

 

 だいたい20隻位だと予想していた見学隊は、予想外の数に間抜けな声を出す。

 

「175隻です」

 

 どうやったらそれほどの数を建造することができるのか.............。あの国に常識は通じないのだよ、君。

 

「175.............」

 

 もしそれほどの数をロデニウス連邦が建造していたとしたら、ムー共和国の艦船数を、その『アメリカ合衆国』の、たかが駆逐艦だけで上回られてることになる。

 

「まぁそんな艦です」

 

 そんな艦だけでいい占められる程の数じゃない!

 そう見学隊が思っているのに気付かずに室蘭は話を切り替える。

 

「浦賀水道抜けました。『いなさ』航路哨戒より離脱しました」

 

「了解。両舷前進第1戦速。黒5」

 

「両舷前進第2戦速。黒15」

 

 出力を第1戦速まで上げる。

 そして演習海域の手前に到着した。

 

「おっほ〜。たくみ型勢揃いですな」

 

 それぞれの艦隊に一隻は所属しているたくみ型護衛艦10隻が全て勢揃いしていた。

 

「...........なんか先進的な見た目だな」

 

 ラッサンがたくみ型護衛艦を見てそう言った。

 たくみ型護衛艦は、ドレッドノート級の準同型艦なので、見た目はドレッドノートに見えるが、中身は完全に別物になっている。

 そしてその後ろにロデニウス連邦海軍駆逐艦3隻がいた。

 

「象と蟻ですね」

 

 全長約250mと全長約125mのたくみ型とウイロ級だ。その差は歴然であった。

 

「これからどのようなことをするんですか?」

 

「主な内容は、武装点検になります」

 

「じゃあこの艦の主砲も?」

 

「はい。撃ちますよ」

 

(((♪───O(≧∇≦)O────♪)))使節団一同の気持ち。

 

「副長。訓練開始とのこと、『たくみ』が最初に行います」

 

「了解。引き続き待機」

 

 機械音と微かに聞こえてくる波音に混じって砲撃音らしき音が聞こえて来る。

 

「メインモニターに映像出せるか?」

 

 つまらなそうな表情を表に出してきた見学隊に気づいた副長は、メインモニターに映像を出すよう指示した。

 

「おぉー」

 

 メインモニターに、上空を旋回しているMQ-18に搭載されている高性能カメラが演習の様子を映し出す。

 

「すごいな。あの小さな的に当てているのか..............」

 

「あの的は、直径10mの、自走式デコイです」

 

「直径10m.............」

 

 それほど小さな的に、20kmも離れた位置から正確に射抜く技量............。

 

「............あの艦の口径はどうですか?」

 

「62口径200mm3連装速射砲です。たくみ型には2基搭載されています」

 

「.............艦体の大きさに武装が割に合わないのでは?」

 

「確かに、貴方達からすれば少ない武装に思うかもしれませんが、それだけ別の兵器にリソースを割いているということです」

 

「..............」

 

 別の兵器とは何か?見学隊は映像を見ながら考えるが、何か分からない。

 

「すごいな。全て正確に撃ち抜いている」

 

 映像を見ている限り、全て正確に撃ち抜いている。時折外している時もあるが、全体的に見れば誤差の範囲だ。

 ここでマイラスがあることに気付く。

 

「...............なぁ、あの砲身、ずっと的を追尾していないか?」

 

「...............言われて見れば...............確かにそのようだ」

 

 隊員妖精が砲身の部分を拡大する。

 

「................波と自身の動きに合わせているようだ」

 

「スタビライザーというやつか?」

 

 ムーにも一応スタビライザーはある。但し、日本国と比べてはいけない。

 

「ですが、私達のものより高性能そうです」

 

 見学隊が話している間にも、たくみ型護衛艦は訓練を続けていた。

 

「終わったようですね」

 

 たくみ型護衛艦全てが技能検査項目を終わらせる。

 

「............副長。本艦に訓練開始命令です」

 

((来た............))

 

 見学隊は身構える。

 

「艦長。本艦に検査開始命令が来ました」

 

『了解』

 

 無線越しにながとの返事が来る。

 

『教練対空、対水上、対潜戦闘用意!』

 

 発令員の号令がかかると、電子音が鳴る。

 

「各部配置よし」

 

「了解。最初は水上目標だ。砲術長、外さないように」

 

 それに砲術長は笑みを浮かべながら答える。

 

「任せてください。私達は大砲屋ですからね」

 

 レーダーに輝点が3つ映るのと同時に艦橋からも報告が入る。

 

『こちら艦橋。本艦左120°、水上目標3個を視認。距離約30km』

 

「各砲塔、照準完了次第発射」

 

 砲雷長が号令をかける。

 

「了解。発射管制は手動にて行う」

 

 砲術長が各砲塔担当員に命令を伝える。

 主砲副砲の砲術員の配置は、主砲1つに、2人の管制員が入り、副砲は1人が担当するという方式を取っている。

 砲術員が、振り分けられた目標を、ジョイスティック型コントローラーを操作して狙う。

 目標はそれぞれ分散している為、3つある主砲がそれぞれの目標を狙う。

 

「発射用意」

 

 警報が鳴る。

 

「撃ち方始め!」

 

 砲雷長が命令を発し、それを砲術長が復唱する。

 

「弾種多目的榴弾!ヒト発!撃て!」

 

「発砲!」

 

 砲術員がジョイスティックに備えられているトリガーを引く。

 それぞれの第1砲身から多目的榴弾(500万円)が放たれる。

 レーダーに弾道の線が映る。

 

「着。空中飛翔中の目標なし」

 

『こちら艦橋。目標に命中を確認』

 

 たくみ型護衛艦の時と違い、41cm砲が的を自走式デコイごと消滅させた。

 

「了解。次は対空戦闘だ。各武装をチェック」

 

 その頃艦橋では、見学隊が身をガタガタと震わせていた。

 

「これが41cm砲...........」

 

 艦橋にいても振動を感じる程の威力。

 

「うむ。勝てんな」

 

 海軍将官が言った。

 

「だが、空軍の急降下爆撃ならあるいは.............」

 

 空軍将校がそう言うが、マイラスの一言で沈黙する。

 

「それは無理です」

 

 『何故だ?』と言おうと口を開いた時、艦内通達が入る。

 

『対空戦闘用意!』

 

 警報が鳴り響く。

 

「いよいよだ............」

 

 この艦の対空能力を確かめられる機会だ。見学隊はその光景を頭に植え付ける。

 

「............」

 

 CICは静寂に包まれていた。

 そしてその静寂が打ち破られる。

 

「!、レーダーに反応あり!全方位から対艦ミサイルと思われる飛翔体が本艦に向かって急速接近中!距離600km!数は不明!」

 

「よりによって飽和攻撃か............」

 

 実弾を使用する訓練として、滅多にできない飽和攻撃対処訓練。だが使用される対艦ミサイルは模擬弾ではない。

 使用されているのは、90式SSM、17式SSM、ASM-2、ASM-3、つまり、旧自衛隊の余剰装備品が使用されているのである。

 自衛隊から国防軍へと改組したとき、自衛隊装備品をそのまま使用していたが、ある致命的な問題に気付く。

 それは、『守りに特化しすぎた』と言う事である。そこは別に問題ではないが、敵地攻撃能力の低さは更に致命的であった。改組直前に試作品が完成目前を迎えていた日本初の国産巡航ミサイル、TCM-1で、ようやくまともな敵地攻撃能力を得る事ができる.............はずであった。

 そこに米国の傀儡である、当時の防衛政策局長である、『相口 謙也』が計画にSTOPを掛けた。

 曰く、『国産開発よりも、アメリカのトマホークを採用すべき』と鶴の一声で中止となった。しかし、ここに米国の意思は絡んでいない。むしろ国産開発を後押ししていた局面がある。

 しかしなぜ相口は止めたのか?

 それは防衛商社との蜜月関係にあった。

 防衛商社は、日本の防衛装備品などを手がけるが、それよりも重要な事があった。

 『アメリカ軍事産業。米国防省との強力なパイプ』の存在である。

 防衛省と国防省との関係はもちろんあるが、防衛商社と比べれば貧弱なパイプであった。

 そして、国産巡航ミサイルの開発終了目前との情報を得た米軍事産業は、直接圧力を掛けて、開発を中止にさせた。

 その後、憲法改正、そして防衛省が改組された際、ほとんどがスライドする形でポストに入っていったが、数年後、人事再調査で相口の数々の汚職が発覚、相口が逮捕されると芋づる式に続々と汚職が発覚、改組してまもない国防省の一大スキャンダルとなったが、当時の局長、そして国防大臣が全て辞任、それで一応の幕引きを終えた。

 そしてそこから国防省は、国産兵器の開発を強力に推し進めていくこととなる。

 今回訓練に使用されている対艦ミサイルは、90式、17式SSMが使われている。

 それが約300発。

 

「両舷対空戦闘用意!」

 

 既に戦闘配置を終えているため、隊員の気持ちは整えられていた。

 

「全力応戦だ。前部VLS、1番〜16番までのSM-6、発射よ〜い!」

 

「1番〜16番までのSM-6、データ入力!」

 

「発射用意よし!」

 

「てぇー!」

 

 ミサイル員が発射ボタンをタップする。

 1秒間隔で16発のSM-6が目標に向かう。

 

「続いて、17番〜33番までのVLS、発射よ〜い!」

 

「てぇー!」

 

 その間にも、ミサイル群は距離を500kmを切っていた。

 

「主砲副砲、対空戦闘用意!」

 

「全砲塔に重力子スプレット弾を装填、2斉射!」

 

 主砲の射線の隙間を、副砲が埋める。

 

「射線方向障害物なし!撃ち方始め!」

 

「発砲!」

 

 トリガーを引く。

(SE音は、アンドロメダ級の重力子スプレット弾の発射音と、3式弾の発射音を足して2で割ったのをイメージしてください)

 発射された後の砲身から青白い光が漏れ出た。

 その間にも、ミサイル群は400kmを切る。

 

「てぇー!」

 

 何回目か分からない斉射で、ついにVLSの全てを撃ち尽くす。

 

「煙突ミサイル発射よ〜い!」

 

「てぇー!」

 

 ながとの煙突からミサイルが8発放たれる。

 

「CIC、艦橋バラストタンク調整、アップ10」

 

『バラストタンク調整、アップ10』

 

 次元バラストタンクが排水され、喫水線が上がる。

 それまで海面に隠れていた側舷ミサイル発射管が姿を現す。

 

「てぇー!」

 

 10発ずつ、計20発のミサイルが放たれる。

 

「敵ミサイル群、重力子網に突入............残存29!」

 

「インターセプト10秒前—マークインター、!?。敵ミサイル、全てが本艦の対空ミサイルを避けました!」

 

「は?」

 

 ミサイルの自立回避機能は、旧世界でロシア軍が開発に成功した、『ミサイル自立回避機能』が最初である。

 そこから続々と各国も開発に乗り出して、成功させた。

 しかし、その機能は西暦2037年以降のミサイルにしか搭載されていない。

 

「まさか45式.............」

 

「議論はやめだ!現在距離150km!」

 

「ミサイルは撃つな。ギリギリまで引き付けて主砲で撃ち落とす」

 

「了解!」

 

 じわじわと迫るミサイル。距離が120kmを切ったところで、主砲発射準備を下命しようと砲雷長が号令を掛けようとしたとき、ながとの一言で口をつぐんだ。

 

「砲雷長。火器管制権を移譲」

 

「はっ!You have FCP!」

 

「I have............エンゲージ」

 

 ながとが淡々と言うと言うと、額にながとのイデア・クレストが浮かび上がる。そして船体にも光の線が走り、艦首艦尾側舷にイデア・クレストが浮かび上がった。

 

「距離110km...........100km!」

 

「主砲。仰角55°」

 

「主砲、弾種超重力弾。近づく目標。Fire」

 

(三式弾SE音)

 

「着弾まで、10、9、8、7、6、5、4、3、2、マークインターセプト」

 

『爆発閃光視認』

 

「残り11。距離70km」

 

 既にながとの間合いに入った。

 

「主砲弾種変更、多目的榴弾」

 

『弾種変更。多目的榴弾!』

 

「交互撃ち方始め」

 

 そこからながとの主砲による全力射撃が行われる。

 

「くそっ!器用に避けやがる!」

 

「まさかロシア製のやつか?」

 

「F群、G群全滅。残り4!距離30km!」

 

 副砲も連続で砲撃を行うが、ミサイルはその全てを最小の動きで回避する。

 

「距離10km!」

 

「RAM発射!」

 

 ながとに4基あるうちの2基が起動し、接近するミサイルを狙う。

 だがそれも回避されてしまう。

 

「距離5km!」

 

「CIWS。オープンコントロール!」

 

 CIWSが起動し、自動でミサイルを追尾する。

 

「落ちろ!」

 

 砲雷長が呻く。

 

「1km!」

 

「総員衝撃に備え!!!」

 

 全員が歯を食いしばり、机の角を掴む。

 

 ゴォォォォォーーーーン!!!!!

 

 CICに微かな爆発音が聞こえてきた。

 

「目標撃墜!」

 

「応急長!被害状況報告!」

 

 しばらくして応答がくる。

 

『被害特にありません!』

 

「ほっ..............」

 

 ながとは400発近くの対艦ミサイルの飽和攻撃を防ぎ切ったのだった。

 CICに歓喜の空気が流れているのに対して、艦橋の空気は重かった。

 

「.................」

 

 その原因はムー共和国軍関係者であった。

 

「............次元が違う。いや、違いすぎる」

 

 徐に口を開いたのはラッサンであった。

 

「交戦距離、使用兵装。どれを取っても違いすぎる..............」

 

 ながとが使用した対空兵器。ミサイルというらしいが、目にも止まらぬ速さで、空の彼方へ飛び立ち、対艦ミサイルというのを撃墜する。しかも視界外で、だ。

 

「対艦攻撃能力、防空能力。やはり次元が違う」

 

 恐怖に身を包まれる海軍に対して、空軍は絶望を味わっていた。空軍は、戦闘機による制空権、航空優勢の確保や、爆撃機による爆撃など、“飛行機”を使った戦術が基本である。この世界では、『戦闘態勢の戦艦を撃沈することはできない』という概念があるが、この艦はまさしくその言葉を体現した言っても過言ではない能力を保有していた。

 

「うむ。無理だな」

 

 全員が諦観を持つ。

 陸軍も海や空のことは完全に門外だが、あれほどの大口径砲を、艦砲射撃にでも使われたりしたら、一軍団が簡単に壊滅するのが目に見えていた。

 それに加えて、戦艦に陸軍ではダメージを与えることができない、ということもあった。

 

「副長、入電です。『検査を終了する。結果は後日通達する』と」

 

「ふ〜」

 

 副長が大きく息を吐くと、艦橋の空気が緩くなる。

 

「対潜もあったら精神的にきついですね」

 

 模擬弾ではなく、実弾を使用した訓練。気を抜いたら、最悪死者が出ることになる。

 

『対空、対水上、対潜戦闘用具収め』

 

「対空、対水上、対潜戦闘用具収め」

 

 硝煙の匂いがまだ引かぬ中、護衛戦艦ながとは太陽の光を浴びていた。

———————————————————-————————————————

 中央歴1636年 6月21日 クワ・トイネ公国 マイハーク

 

 クワ・トイネ公国である会議が開催されようとしていた。

 

 それは

 

 大東洋諸国会議―

 

 大きな出来事が起きた場合に臨時的に開かれる会議である。参加国は文明圏外の国々で構成される。

 それは元々会議の提唱国が文明圏外の国であったため、列強のパーパルディア皇国や、第3文明圏の国々は『会議は必要が無く、無意味』として不参加となった。

 簡単に言えば、文明圏外国家の会議に文明圏内国家が参加することは無い、ということである。

 なので、会議に文明圏の国々はいないため、過去に開かれた会議では、国同士の会議としては珍しく、比較的に本音を交わすオープンな会議が行われてきた。

 今まで行われた会議では、列強パーパルディア皇国の動向等が会議の主題となることが多かったが、今回は違う。

 今回の大東洋諸国会議の目玉は急遽現れた新興国家、『日本国』についてである。

 

「これより大東洋諸国会議を開催します」

 

 司会役が開催を宣言する。

 

「事前に告知した通り、今回は日本国から派遣された特使、『菅原人吉』殿が参加しています。本日はよろしくお願いします」

 

 菅原は起立する。

 

「日本国より来ました、外交官の菅原と申します。今回はこのような会議に招待しくださったロデニウス連邦に感謝を示すのと同時に、会議参加を受託してくださった皆様に御礼を申し上げます」

 

 菅原が綺麗な60°の礼をしている時、各国大使の内心は正反対な気持ちを抱いていた。

 

(ふん。どうせ裏で何か考えているに違いない)

 

 と、日本国と国交を結んでいない大使が考えているのに対して、日本国と国交を結んでいる国の大使は、

 

(次はどのようなことをするのだろう)

 

 と、日本国が言うであろう、これからの発言に期待していた。

 

「では、我が国はロデニウス連邦からある程度の事前教養を受けていますが、まだ新参のため、最初は聞くのみに留めたいと思います。私の存在を気にせずお話ください」

 

 気にせずに話せるか、と各国大使は抱く。

 国交を結んでいない国家は、日本が自分たちがパーパルディア皇国に対して様々な—パーパルディア皇国人の前で言えば、なぶり殺しにあう程—言動を報告するのではないか?、そう疑念を抱いていた。

 

「シオス王国大使、どうぞ」

 

 シオス王国大使が挙手し、司会が指名する。

 

「では、最初に、我が国がアルタラス王国経由で得た情報ですが、近々第3文明圏北方にある、ウーヴェ王国を侵攻するとの情報を得ました」

 

「ウーヴェか............」

 

 ウーヴェ王国は、シオス王国大使が述べた通り、第3文明圏北方にある、地図にも載るか載らないかギリギリの国家である。しかし、内陸国なのと経済力が小さい為、この会議に参加はしていない。

 

「面子の為か............」

 

 どこかの大使が呟く。

 あの国に戦略的にも、戦術的も何ら利点はなく、資源も無い。それでもウーヴェを侵攻する理由は、『パーパルディア皇国の面子』と『世界征服の為』である。

 

「あの国は最近横暴すぎる。件のウーヴェもそうだが、吹っかけてきては服従を迫る」

 

「................」

 

 各国大使の空気が重くなる。

 まだパーパルディア皇国に従属していない国家は次は自分達だと、暗い影を落としていた。

 

「くそ!あいつら、列強という名を利用しやがって!」

 

 誰かがパーパルディア皇国の事を罵る。

 

「パーパルディア皇国の動向は把握しました。次は日本国の事について話しませんか?」

 

 ロデニウス連邦大使が暗い雰囲気を変えるために話題を転換する。

 

「では、まず各国の日本の印象を述べてください」

 

 最初にロデニウス連邦大使が挙手する。

 

「どうぞ」

 

「我が国は現在日本国の支援で前とは比べ物にならない程発展を遂げました。国民の対日感情は極めて友好であります」

 

 クワ・トイネ公国と日本国の接触、そしてそこから始まる、クイラ王国を交えた友好関係の話が続いた。

 

(う〜む)

 

 各国大使は悩む。

 ロデニウス連邦はその建国経緯から、先程の話を半分程しか信用していなかった。

 

「我が国の建国経緯のせいで、我が国の信用度はかなり低いと自認しています。しかし、建国経緯の如何に関わらず、連邦を結成した事によって、莫大な経済利益を得ています」

 

 それは事実であった。

 『講和 忍び寄る魔の手』にて述べた通り、ロデニウス大陸には、『人』『鉱物』『農産物』と、これからの経済発展に必要なものを全て揃えている。つまり、チート資源大国なのである。

 

「今の発展の機会を与えてくださった日本国には感謝の気持ちしかありません」

 

 そう言いながら着席した。

 

「そうですか..............」

 

 ロデニウス連邦大使の言っていることは本当のようだ。

 各国大使は考えを改める。あの犬猿の仲とでも言うべきクワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国の対立が嘘のように、戦後、連邦を結成し、第3文明圏に置いて有数の経済国を持つようにさせた日本国の手腕は評価に値する。

 

「なるほど。よく分かりました............ですが日本国から直接自分の事を話して欲しいですな」

 

 ゴーマ王国大使が菅原を見ながら言った。

 

「............分かりました。まず、我が国が転移国家というのは皆様ご存知かと思いますが—」

 

 ここで幾人かが目を見開く。どうやら知らなかったらしい。

 

「旧世界では、我が国は列強国の枠に入っていました」

 

「列強...........」

 

 この世界では誰もが一度は夢見る列強。その列強に、旧世界とはいえ日本国が入っているとは..............。

 

「信じられませんな.............しかし日本国の発展具合を見る限り、その旧世界は相当な成長を遂げているようだ」

 

「そして旧世界とは転移によって物理的な繋がりが絶たれてしまいましたが、それでもクワ・トイネ公国を初めとした、友好関係でなんとか持ち直すことができました」

 

 その後、日本国の簡単な説明を終える。

 

「しかしなぜこのような会議に?貴国はこのような会議のレベルではあるまい?」

 

「えぇ、その通りです。しかし、この世界の事を我が国、そしてこの世界も我が国の事をほとんど知らない状況で行動するのは早計と判断されました」

 

 思ったよりも冷静的な民族らしい。

 

「そうか.............では貴国のこの会議の参加目的を教えてもらいたい」

 

 きつく問い質される。

 

「.............では率直に申し上げます。我が国の目的は—」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

        『地域共同体の設立』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「—にあります」

 

 その一言で大使の目の色が変わる。

 

「地域共同体だと!!!?」

 

 この世界に地域共同体、いや、マギカライヒなどの例外はあるが、それでも、国同士の共同体は存在しない。なぜならこの世界が“差”がありすぎるからだ。

 国同士が自身の面子のための、格下の国家へ不平等条約などを結ばさせるなど日常茶飯事。そして文明圏外国家同士でのドングリの背比べ。

 なのになぜ戦争が起こらないのか。

 それは文明圏外と圏内では超えられない壁があり、列強と文明圏内の間にも絶対に超えられない壁がある。そのおかげで、日本が確認できている限りでは大きな、世界大戦が起きていないのだ。

 

「そんな事不可能だ」

 

「えぇ、確かに不可能ですが、地域共同体の利点はかなり大きいです」

 

「具体的には?」

 

 カクカクシカジカ

 

「................一度検討させて欲しい」

 

「えぇ、元より今ここでの返答は求めていません。できれば1週間後にここで検討の結果を話してもらいたいのです」

 

「分かりました」

 

 その後、世界の動向が話された後、会議は終了した。

 誰もいなくなった会議場で、菅原が一人頭を抱えていた。

 

「はぁ。なんで俺がこんな役目を...........」

 

 彼の手元にある資料にはこう書かれていた。

 

『大東洋条約機構(GOTO)構想』

 

 と。

 

 




 うん。今回から次回予告の話を消します(題名はそのまま)。次にどのような事を書くのか、大筋を決めているのですが、それが結果的に自分の首を絞める事に............。
 そして友人から、『ミズーリどうなったん?』と聞かれました。次に出てきます。はい。
———————————————————————————————————
 次回『ムー共和国の調べ』

パラレルワールド その1

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。