YouTube チャンネル名 軍曹
URL https://youtube.com/user/C1kei
と、なっております。
軍曹様、この場を借りてお礼申し上げます。
灯台
それは国連主導のもと、世界各地に作られた。
日本は伊豆諸島鳥島南西沖31kmにそれは建設された。
それは世界各地に10箇所作られた。
“灯台”
正式名称 往復型軌道エレベーター
維持は担当エリア国に委任されるが、管理権は国連の新機関である『世界軌道エレベーター機構』が担当する。
そして軌道エレベーターは、分かりやすい
その規模は、
国連陸軍 一個連隊
同 空軍 無人機飛行隊 五個中隊
同 海軍 無人戦闘艦 5隻
となっている。
この規模の警備が旧世界に存在したそれぞれの軌道エレベーターに配置されている。
視察団を乗せたコスモシーガルが1000m級滑走路に着陸する。
マイラスがコスモシーガルから降りると、軌道エレベーターを見上げる。
「ここが灯台..........」
暗闇の中でも、それは存在感を解き放っていた。
赤、緑、白の航空障害灯が、チカッ! チカッ! と点滅していることも存在感を解き放っている理由であった。
「なんて高いんだ..............」
「首が痛くなる」
「では皆さん。ここから先はこちらのレジーナ・ソフィア中尉が案内します。自分は技術的なことにだけ説明をさせていただきます。では」
それまで米内の一歩後ろにいたソフィアが前にでて、敬礼をする。
「こんばんは。今回、軌道エレベーター案内を務めさせていただきます、レジーナ・ソフィア中尉です。よろしくお願い致します」
「よろしくお願いします」
統括軍参謀が代表して答える。
「では皆さん、こちらにお乗りください」
ストライカー装甲車に分乗する視察団。
「速いな..........」
車内にいても感じれるほどの加速を感じる。
しばらくして、視察団を乗せたストライカー装甲車は、軌道エレベーターの根元にある建物に到着する。
「ん? 紋章?」
視察団が建物の壁に打たれたロゴを見つける。
「................」
「皆さんこちらへ」
ソフィアの後ろについていく。
「視察団案内任務で入ります」
「了解です」
入り口の前に小銃を下げて警備していた守衛が敬礼をすると、入り口の横にある電子端末機にカードキーを差し込み、パスコードを打つ。
“ピー!”
という電子音と共に入り口のロックが解除される。
「宜しい」
「では皆さんお入り下さい」
統括軍参謀は移動中思索に耽っていた。
(随分と警備が厳しい............道中に5個程カメラの様なものがあった............それほどこの建物とあの
しばらく歩くと、大きな扉の前に着く。
「中にお入り下さい」
ソフィアが中に入るよう促す。
中に入ると、そこには大きなホールがあった。
「おお。広いな............」
子供のような感想を口に出す団員。
「ご自由にお座り下さい」
そう促され、各々が選んだ席に座る。
「では..............本日は軌道エレベーターの概要と、その目的についての話をさせていただきます。時間も既に夜となっていますので、説明のみとさせていただきます」
部屋の証明を落とすように指示するソフィア。
それと同時にプロジェクターを操作し、映像を投影する。
「軌道エレベーター。それは旧世界では平和の象徴でした」
(え?)
突然、ソフィアが大陸共通語から
「この建造計画は、向こうの暦で、西暦2029年に計画が開始されました。しかし計画は一筋縄ではいきませんでした」
「今では私が所属している国連軍*1が編成されるほどの関係になりましたが、当初、旧大国の軋轢は酷いものでした」
「しかし、その状況はある事件を境に、それはほぼ無くなりました」
「欧州同時多発テロの発生です」
欧州同時多発テロ
西暦2029年後期に欧州各地で発生したテロ。
国際テロ組織、『
しかし問題は、これだけの規模なのに、どこの諜報機関も察知できなかったことにある。
いや、IRの存在、そして活動は監視していた。
だがそれでも察知できなかったのだ。
なぜ察知できなかったのかは、今でも謎に包まれている。
襲撃に晒された各国軍、米軍は各地で敗走を重ねた。
米軍は一時的に欧州から撤退、そして欧州各国政府は比較的被害の浅いイギリスへと政府機能を移転させる。
その後、米軍を中心として反抗作戦を実施。
この時点で、“テロに対する戦争”ではなく、“戦争”になっていた。
反抗作戦は順調に成功し、多大な被害を出しながらも“IR”支配地域を解放していった。
その後、欧州全土の開放に成功するが、ある地域にてあるものが発見されるが、それは後に話す。
そして、国際司法裁判所が初の強制逮捕命令を発出、“IR”の本拠地があるアフガニスタンを多国籍軍*2が攻撃した。
しかし、リーダーであるハッサンは自殺、残りの幹部も全て取り逃すという事態が発生する。
幹部はロシアを経由して国外へと逃亡していたのだ。*3
これが災厄の一歩手前までの原因になった。
残された幹部は2つに分かれた。
一つはアメリカ軍戦略軍のコンピューターに侵入し、その照準をホワイト・ハウスへと向けた。
幸いにも、一人の命と引き換えにその発射は阻止された。
そしてもう一つは日本に来ていた。
上記で話した、あるものを奪取に来たのだ。
その名は『L-ウイルス』。
死者を生者へと変質させるウイルスであった。
これが日本にある理由。それはNATOであった。
ウイルス研究を当時の日本に押し付けたのだ。
幸い、米特殊作戦群隷下の部隊、『
しかし、その後も“IR”残党によるテロが世界各地で続いた。
「当時の国連事務総長のマレリア・ライアは舵取りに悩んだと伝えられています」
国連は対応に迫られていた。
IRを完全に潰すには世界各国が連携して、世界各国に潜むIR残党を特定、殲滅しなければならなかった。
だが、そのために多国籍軍を結成しても、どこかしらの国が反対することは明白であった。
「そこに現在の内閣総理大臣、佐山が首相に指名されたことにより風向きが変わります」
以下省略*4
軌道エレベーターの概要、国連軍の設立経緯を聞いた視察団に何回目か分からない暗い空気が漂っていた。
「今まで簡単説明を聞いて、ある程度理解していたつもりだったが.............」
「その理解でも足りない程の出来事があったな」
「あぁ」
「それに我が国の故郷、地球があれほどの経験をしていようとは...........」
ソフィアはここでハッとする。
そう。目の前のいるのは混血が進んだとは言え、かつて地球上での大国の子孫だったのだ。
そして転移によりこの世界に来てしまったが、もとの故郷は地球。
少しは地球のことが気になるようだ。
「現在、日本に駐在する国連軍は旧在日米軍がそのまま国連軍にスライドし、そこに国連からの人材派遣も複数回ありましたので、人数だけで言えば大体6万5千人もの人員がいますね」
「6、万?」
「その規模が日本に?」
もはや占領軍とも言える規模であった。
「我が国は米国のアジア戦略、そして国連軍が編成された現在でも我が国の戦略的重要性はアジア最高峰です」
前にも話した通り、国連軍が日本に駐屯している現在でもその戦略価値は失われてはいない。
ここでマイラスが手を挙げる。
「どうぞ」
「その..............外国軍—と言っても多国籍軍ですが、なぜ駐屯を許しているのですか? 戦略的価値だけではないような気もしますが.............」
「鋭いですね。国連軍が駐屯する理由は、平和のためです」
その平和のための行動が微妙に矛盾していることに気づき、視察団の一部が眉を寄せる。
「これを聞いただけでは矛盾しているように感じますよね。では、これを見てください」
ソフィアが合成樹脂製のボードを操作し、新たな画像を表示させる。
「これは...............なんのグラフだ?」
「これは世界で起きたテロ事件の発生件数です」
「こ、こんなに!?」
グラフはあるところで爆発的に増えていた。
IRによるテロ事件が終結した一年後であった。
「国連の決断した平和維持、それは武装平和でした」
国連、ひいては佐山の最終理想、世界規模共同体の設立—地球連邦構想—に行き着くためには紛いもの、それが白地に絵を描いたものだとしても平和を維持する必要があった。
「日本に来る際、艦で紹介映像を見たと伺っています。人類史上最大の愚行の一つである、世界大戦を2度も起こし、そして地球を何回も滅ぼせるほどの核兵器が製造されていたのです。だからこそ人類は悟りました。『次に大戦が起これば間違いなく人類は滅ぶ』と。そして国連の権限拡大により、その平和は更に盤石になりました」
「そ、その何回も滅ぼせるほどの核兵器を日本と国連は保有していいるのですか?」
なぜこんな簡単な疑問が思い浮かばなかったんだと内心そう思いながら、統括軍参謀が聞く。
「いえ。我が国連軍は保有していません。そして日本は..........米内さん、説明をお願いします」
「はい。我が国は非核三原則というのがあります」
「非核三原則?」
非核三原則
国民の誰もが一回は絶対聞いたであろう単語。
非核三原則とは、『核兵器をもたない、つくらない、もちこまない』という三つの原則からなる、日本の国是。当時の首相、佐藤栄作が打ち出したものである。
「—............なるほど。法制化されていない、言わば慣習法みたいなものですか」
「簡単に言うとそうなります」
「しかし、その核兵器の原理———を応用した、平和利用は我が国に存在します」
謎の間に視察団が頭に疑問を浮かべた。
「その原理..........というのは?」
「申し訳ありません。話すことができません」
核分裂のことを米内が言わなかった理由は、『ムーが核武装する可能性』に思い当たったからである。
WW1レベルのイギリスと同等の技術を有するムー。この国の技術が発展すれば、約38年で原爆を開発することになる。
原爆と核兵器、同じように見えて両者は全く違う。
しかし、原爆の開発に成功した場合、核兵器開発までの時間はそうそう掛からない。*5
「はぁ.............」
これ以上聞くと、自分の身を滅ぼすことになると直感した団員はそこで詮索をやめにする。
「何度言ったかは覚えてませんが、地球は私たちの予想を上回る歴史を辿ってきたのですね..............」
「軌道エレベーター、そして国連軍の説明が終了したので、軌道エレベーター警備部隊の見学に行きましょう」
視察団は建物の外に出て、ストライカー装甲車に乗り、移動する。
「あの無人機を見れるのか............」
マイラスはこれから見れるであろう無人機戦闘機を楽しみにしていた。
視察団を乗せたストライカーは滑走路脇にあるエプロンへと到着する。
「まもなく無人機が来ます。しばらくお待ちください」
しばらくすると、滑走路にアプローチする機体を発見した。
「お? あれか..............」
無人機は順番に着陸し、視察団から数十m離れた場所に駐機する。
ソフィアがその無人機の元へと歩き出したので、それについて行く。
「は〜。なんかのっぺりとしてるな。しかも小さい」
「こちらは国連軍が世界で初めて採用した無人戦闘機です。この戦闘機の最大の特徴はこのサイズです」
全長 8.25 m
全幅 7.22 m
「あの...........戦闘機なのに武装がないようですが............」
—-ゴォォォォォーーーーー!!!!!!!
戦闘機の轟音にマイラスの声が掻き消されしまう。
「.............すいません。もう一度お願いします」
「戦闘機なのに武装がないようですが!!!」
「あぁ。すいません。ウエポンベイを開けてもらえますか?」
整備員が機体にコードを繋げると、ボタンを操作し、ウエポンベイを開ける。
「中に収納されてる?」
「はい。そうです」
「なぜ中に収納する必要が? 空気抵抗の関係ですか?」
「まぁ空気抵抗はこの機体に於いて2番目に重要ですが、それよりも重要なことがあります」
「それよりも重要なこと?」
「レーダーの話は聞きましたね?」
「はい。電波の跳ね返りを画面に投影すると聞きました」
「基礎的なことは聞いてるか............電波の跳ね返りを受信しますが、その電波の反射を抑える技術、ステルス技術というのがあります」
「「「え?」」」
ムーの技術者陣が声を上げる。
レーダーを導入しようと考えていたのに、その対抗策が既に日本にあったことが分かったからだ。
「まぁこのステルス技術は、平時に於いては邪魔な機能なので............ここを見てください」
ソフィアが翼と胴体下部の下を指さす。
翼の下には長方形の何かが、胴体下部には丸っこい何かが出っ張っていた。
「胴体の下にあるのは、胴体一体型の増槽タンクです。機体の下に付いているいるのはハードポイントといいます」
「..............表面積を増やす?」
マイラスが考えたことを口に出す。
「え?...............よく分かりましたね。その通りです。レーダー反射断面積、略称RCSといいますが、意図的に面積を少なくしたり、増やしたりすることで、RCSを調整します。この無人機がレーダーに映った場合、鳥にしか見えないでしょう」
150年という差が、改めて絶望的であると分かり、視察団全員が目眩を起こす。
「もうすっかり日が暮れたな............」
(国連軍............言うなら、地球軍。各国の協力なくてはできない代物だな..............)
ラッサンは軌道エレベーターを見上げる。
(このエレベーターもだ。いずれこの世界は魔帝の復活で団結せざるを得なくなる。それまでに日本の胴体までは成長したい)
ムーにおいて、魔法帝国の存在は疑問視されているが、ミシリアルにて時折報じられる発掘品のその技術力の高さから、ラッサンはその存在を信じていた。
「?」
ソフィアが米内に何か耳打ちをしている。
しばらく何かを話した後、米内が2回大きく頷く。
「では...............皆さん。あの上へ行きましょうか」
「あの上?..............このエレベーターの頂上に?」
「はい。新世界に転移してから、初めて外部の人間が軌道エレベーターに立ち入ります」
ちなみに視察団がいる場所は軌道エレベーターの基幹を支える人工島である。
「私達が初...............」
視察団は再び車に乗り、地下トンネルを通りエレベーターの昇降場所へと到着し、エレベーターに乗る。
「これにしっかり掴まってください」
当初は疑問に思っていた視察団だったが、『これを付けないと重力に潰されますよ』と、笑顔で言われて疑問は消えていた。
「上に着くまでどのくらいですか?」
マイラスがEEに聞く。
「旧世界だと15分程度でしたが、新世界だと...........大体25分程度ですかね」
「え? 10分も違う?」
「えぇ。新世界の静止軌道の高さが倍近くになったため、延伸工事が施工されました。それに比例して時間も長くなっています」
「..............」
しばらくしてエレベーターの出発準備が整ったことをEEが伝える。
「では皆さん。先程説明した通りにお願いします」
「25分か。軽く休めるな」
マイラスは姿勢を楽にし、これから起こることを予想していた。
(間違いなく軌道エレベーターの頂上には何かがある.............これだけの技術を使用した建造物だ。予想を遥かに超えるものに違いない)
視察団を乗せたエレベーターは日本エリア宇宙基地に到着する。
「着きました。皆さんこの中にお入りください」
少し狭いが部屋に全員が入る。
プシューーーー!!!!
空気が抜けたような音が聞こえた後、扉が開く。
「これからご覧頂くものは我が国のものだけではなく、旧世界にとっても最重要機密です。ここで見聞きしたことを話すのは自由ですが、紙に書き起こす、写真を撮るなど、記録を残すことは許されません。どうか心に留めておいてください」
ソフィアが扉の前に立つとそう言った。
視察団全員が頷く。
「ではお入りください」
後にマイラスは、日本が旧世界に帰還した後、報告書にこう記した。
『その扉を潜ると、そこは摩天楼であった』
と。
まず最初に目に入ったのは、真正面にある窓の外の景色であった。
「これが............宇宙............」
統括軍参謀が呟く。
「地球は青かったのか..............」
どこぞの宇宙飛行士とほぼ同じ感想を言う統括軍参謀。
ソフィアが移動を開始したのでついて行く。
オートウォーキングに乗る。
「そういえばなんで重力があるんだ?」
「言われてみればだな............やっぱり、あの空中空母の時に言っていた慣性制御って奴じゃないか?」
「重力を制御って、改めて考えるとすごいな。そしてこの軌道エレベーターの利用価値は無限だな」
そう。この軌道エレベーターの利用価値は無限に等しい。
軍事利用然り、平和利用然り。
しばらくすると、再び扉の前に着く。
「お久しぶりです。ソフィアさん」
「久しぶりね」
守衛が端末にカードをかざすと扉が開く。
「どうぞお入りください」
「お疲れ様」
中に入ると、その部屋は青白い光に包まれていた。
「ここはこの軌道エレベーターの頂上に位置する基地の司令室です。少しお待ちください」
ソフィアが司令室の真ん中辺りにいる男に声をかける。
男は視察団を一瞥するとこちらに近づいてくる。
「どうも視察団の皆様。私はこの基地の司令を務めています、
光圀の所属は国防宇宙海軍の『宇宙作戦隊』と呼ばれる、主に宇宙基地のような宇宙関連施設の管理を担当する隊である。
そしてもう一つの所属先がある。
『国連宇宙軍』であった。
国連宇宙軍の肩書は、『軌道エレベーター日本エリア宇宙基地司令』。
ちなみに、内神田空間幕僚長も、国連宇宙軍の副司令を兼任して
「ここの役割は、宇宙空間に確認されている物体の監視、そして人工衛星の直接管理、そして航宙管制を担っています」
それからしばらく、光圀は宇宙基地の役割を説明する。
「ここの司令室、様々な人種がいるな」
マイラスとラッサンの小声が聞こえてたらしく、光圀が答える。
「我々は国連軍の所属となっていますが、元はと言えば各国からの拠出部隊で国連軍は成り立っています。世界192ヵ国の人材が国連にはいました」
統括軍参謀は誰にも聞こえないほど小さく溜息を吐く。
(仮に国連とやらに宣戦布告した場合、実質的に日本がいた世界を敵に回すことになるのか............そして日本だけに宣戦布告した場合でも、国連が味方した場合も一緒か................)
光圀が色々と説明していたが、その声は視察団の耳には届いていなかった。
「—では皆さん。当宇宙基地の最大の目玉を見に行ってもらいます。ソフィア中尉、頼む」
「了解。行きましょう」
「え? はい」
ようやく現実に戻った視察団。
「当基地は10箇所ある軌道エレベーターの中で、本格的な宇宙基地としての機能を備えた港です。なぜ10箇所もあるのに当基地だけが宇宙基地としての機能を備えているかというと.............段差気をつけてください」
「おっと!」
ソフィアの後ろを歩いていた統括軍参謀がつまづく。
「なぜここだけ段差が...........」
「実は延伸工事の際、そこが切られたのです」
「切ってここの高さまで?」
「はい。その通りです」
「無重力というのもあるだろうが、この空間での工事は困難な筈。ましてや延伸工事を切って伸ばすなどと突拍子もない工法.............」
話しながら歩く視察団をよそに、マイラスは窓の外を見る。
宇宙基地の通路が複雑に絡まり合い、迷路のような構造になっていた。
そしてその隙間から赤い何かが見えた。
気になるマイラスであったが、迷子になったら迷惑を掛けると判断し、視察団を足速に追いかける。
「なにやってたんだ?」
「ちょっと景色をな...........」
「ふ〜ん」
ラッサンが聞いてくるが、そつなく躱す。
「今まで当基地を見ていただきましたが、ここから先は完全な機密条項となります。重ねて申し上げますが、ここで見聞きしたものは—」
「絶対に話すな書くな、ですね」
「お願いします」
ソフィアはカスタマーIDを胸ポケットから取り出し、端末に翳す。
ピィーー! という電子音とともに扉が開く。
ちなみに普段は、関係者が近づくと自動認証システムが働き、IDを使わなくても入れる。
「うん?」
扉を潜ると、再び通路であった。
「まだ歩くのか............」
がっかりした気持ちを隠しもせず話す統括軍参謀。
「はは..........でも30秒も歩かずに着きます。もう少しだけ頑張ってください」
「はい.........」
実際には10秒歩いたところに斜め上に上がる通路があった。
「ここから先は宇宙空間となります。下手に動いたら無限の大宇宙を彷徨う羽目になりますので気をつけてください」
さらっと恐ろしいことを言うソフィア。
作業員の助けを借りて宇宙服を着る視察団。
「開けます」
部屋から空気が抜かれる。
マイラスは人生初となる—こんな体験、二度とできないだろうが—宇宙へと来ていた。
最も、慣性制御というのが働いているのか、重力をしっかりと感じていた。
埠頭のようなものを歩いて行く。
「っ!?」
マイラスは思わず目を疑った。
「せん..........かん.........なのか?」
(推奨BGM 夕日に眠るヤマト)
「ここからは私が。これは日本国が設計開発した史上初の宇宙艦艇、その名は『やまと』です」
「『ヤマト』?」
「その通りです。現在は国連宇宙軍と日本国国防宇宙軍の両方の管轄に置かれている、ある意味奇妙な艦ですがね...........」
「宇宙の戦艦...........そんなことが..........」
やまとが惑星の向こうに沈みかけてる太陽の光を浴びる。
『やまと』艦尾にある特徴的なノズルが目に入る。
「これもジェットエンジンで? いや、真空であるはずの宇宙ではジェットエンジンを使えない.............まさか、これも波動エンジン?」
「それにでかい主砲だ。41cmはあるんじゃないか?」
—いや。41cmどころじゃない..............最低でも46cmはある。
「大量の対空機銃があるな」
—なんていう艦だ。こんな..........こんな非現実的なことが............。
マイラスは激しい心の動揺に襲われていた。
—もし、もし日本を敵に回したら。
マイラスはムーがたった一隻の宇宙戦艦になす術なくやられて行く未来を予想していた。
「では皆さん。こちらの艦に乗りましょう」
無言で付いて行く視察団。
「ふ〜」
ヘルメットを外し、息を吐くソフィア。
ソフィアはロシア出身だ。
恐らくそれだけで察した人もいるだろう。
—綺麗だ。
マイラスがじっと見ていると、少しだけキツく睨まれた。
恋愛経験が無に等しいマイラスは少しだけビビる。
「お疲れ様です。『やまと』舷門当直員です。皆様のエスコートを務めさせていただきます」
統括軍参謀が代表して握手をし、挨拶をする。
舷門当直員の案内で艦内を歩く。
「オートウォークがあるのか.........」
「はい。本艦は最大全長333mある上に、艦内構造が複雑になっています。あかぎ型ほどではないにせよ、迷ったら終わりだと思ってください。では歩きながら..............。本艦の種別は護衛戦艦、BBY-01となっています。BB、
原子力動力船と区別するため原子力船の表記は日本独自の表記が取られている。
例 CVn など。*6
「本艦に搭載されている武装で、最大の特徴はなんと言ってもあの目立つ主砲でしょう。本艦の主砲口径は54口径48cm三連装主砲が3基。副砲として62口径127cm三連装砲が2基搭載されています」
「対空火器としてCIWSが40基、
「そして本艦の主機が波動エンジンと呼称される、BW-DWE-2030です。そして補機にアメリカ製の核融合エンジンをライセンス生産したものを2基備えられています」
「ながと型の主砲が40.6cm砲なのと比べると、その差がお分かりになるでしょう」
「40.6cm砲? 41cmの筈では?」
マイラスはながとで見たスペック表を思い出しながら聞く。
「41cmは便宜上そう付けられているだけです。ながと型本来の主砲口径は50口径16インチ砲となっています」
「16インチ?」
「まぁ..........色々な事情がありましてね」
「現在本格的な宇宙艦艇は本艦を含めて10隻あります」
「10隻? 少な—少ないが質が桁違いか.........」
「桁違いというレベルではありませんがね..........あれ?」
舷門当直員が視察団の後ろにいる何かに驚いている。
マイラスが後ろを見ると、身長180cmはある男がいた。
「うわっ!?」
「驚かせて申し訳ありません。自分は宇宙戦艦やまと艦長の、
差し出された手をマイラスは握り返す。
無骨な手であったが、人間の温かみは感じた。
「当直員、私に構わず続けてくれ」
「は。先程もご説明した通り、当艦の所属は国連宇宙軍と国防宇宙軍の両方の管轄に置かれています」
「それだと指揮権の混乱が起こるのでは?」
「仰る通りです。ですが指揮優先権は我が国防軍にあります。地球の有事の際は国連宇宙軍に優先権が移ります。まぁそこの境界線が未だに曖昧なので、御指摘の通り、指揮権の混乱が起こるでしょうね」
その時はその時と、国連宇宙軍も国防宇宙軍も
「しかし、他の艦も気になる..........」
「あ、はい。今一隻が寄港していますので後ほどご案内します」
「他の艦はどこに?」
「あ〜.............艦長」
舷門当直員が艦長に振る。
「現在艦隊はある任務に就いています。ただ詳しいことは言えません」
「分かりました」
波動砲艦隊は現在、艦連動望遠鏡を行い、周辺惑星の偵察を行なっている。
後々、驚愕の事実が判明するがそれは後の話である。
(これだけの事業が成せる地球...........昔、我が祖国がいたという地球。その国家である
統括軍参謀が帰国したら日本との友好関係構築を強く進言しようと決意した。
太陽が沈む...............
え〜。はい。約3ヶ月振りの投稿です。はい。
ムー編は次でラストになります。と言っても数千字で終わりますがね。
ドレッドノート級の紹介ですね。
てか宇宙戦艦やまとは完全に“ヤマト”より持ってきています。
え? 波動エンジン?
次回投稿ですが...........この調子だと夏のどこかで投稿になりそうです。申し訳ありません。
そしてもう一度繰り返すことになりますが、このような作品に設定、ストーリーの使用許可を下さいました軍曹様、本当にありがとうございます。
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次回予告 『第八帝国』
パラレルワールドその2 フェン王国に関する分岐点
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①
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②
-
③
-
④