異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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動乱の予兆

 中央暦1638年 5月15日 日本国 東京 首相官邸 総理執務室

 

 

 この日、佐山は情報庁長官荒米から報告を受けていた。

 

「すごい地形だな.........何をどうやったらこうなる?」

 

 佐山の視線は手元にある写真に注がれていた。その写真に写っていたのは、中央に巨大な大陸、そしてそれをぐるっと囲むように巨大山脈があった。

 

「写真の分析のみになりますが、噴火や地殻変動でできた大陸や山脈ではないそうです」

 

「当たり前だ。もしこれが自然現象だとしたら天災レベルだぞ.............いや、転移も十分天災か」

 

 そういえば、と荒米が佐山に言う。

 

「総理は去年ぐらいにパーパルディア皇国と戦争になる、と言われてましたよね? どうしてそう思ったのですか?」

 

「..........なぜ知っている?」

 

「とある方から親切に教えて頂きました」

 

 とある方、佐山の頭に浮かんだのは1人しかいなかった。

 

あいつ(白井)か............まぁいい。パーパルディアと戦争になる理由は、経済的対立だ」

 

 荒米は頭に?を浮かべる。

 

「なぜ経済的対立で?」

 

「昔の日本も同じような経緯だろう?」

 

 そういえばと荒米は納得する。

 

「失念していました。第三文明圏外国家を中心とした地域共同体、経済軍事同盟を我が国が設立し、法律の許す限り全面支援を行っていますからな..........」

 

 太平洋戦争で軍部が暴走する原因となったのはあらゆる不況が重なったとも言えるし、勢力を拡大したい、あらゆる理由が複合的に重なった結果起きたものとも言える。

 

「まだパーパルディア皇国の実情を詳しく知っているわけでは無いが、国交締結をした第三文明圏外国家の話から推測された国家像は、謂わば弱肉強食を体現化した国とも言えるものだった。そして技術レベルは魔法補正を加味しても一部19世紀初頭のそれに匹敵するものがある」

 

「一部とはいえ19世紀ですか、国防軍と国連軍の敵ではありませんが脅威ですな。そんな国家が日本の目と鼻の先と言っていい距離に存在すると...........」

 

 荒米は髪を掻く。

 

「となると最前線になるのはここ、フェン王国とアルタラス王国ですか。フェン王国は既に大東洋条約機構に加盟しているので問題はありませんが、アルタラス王国は未加盟です。もし我が国が軍事行動を起こすとなると、邦人保護法を名目に行うしかありません」

 

 邦人保護法

 

 各国に何らかの形で滞在している日本邦人保護のために施工された法律。

 その承認条件は、『各国に何らかの形で滞在している邦人が生命の危機に瀕し、その邦人がその国家の援助を受けられないと判断した時、内閣閣議決定で発動できる』とされている。

 現状、日本国が一番武力行使しやすい法律となっている。尚、この法律が過去数十回発動されている。

 

「後は国連の安全保障決議だな。だが国連非加盟国、オブザーバーですらないというのが痛い...........パーパルディアが何か非人道的なことでもしてくれれば..........」

 

「本音出てますよ」

 

 佐山は荒米の指摘を受け、軽く咳払いをする。

 

「んん。まぁ情報庁のほうでもパーパルディア皇国に関する調査は続行してくれ」

 

「わかりました。それと国防軍の方からも報告はあったと思いますが........例の通商航路に時折出現する潜水艦ですが.........どうやらここの無人島を拠点としていたそうです」

 

 荒米は第三文明圏南西、ロデニウス大陸に程近い島であった。

 

「伊400型擬きとはいえ、航続距離が無限なわけないからな。どこかにあるとは思ったがまさか経済的重要拠点(ロデニウス連邦)の真前にね............」

 

「言っておきますが、潰すなんて考えないで下さいよ」

 

「分かってるって..........」

 

 コンコンコン

 

 ドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

 扉を開けて入ってきたのは国防大臣の広瀬であった。

 

「経済連の反応はどうだった?」

 

「予め聞いていたそうですが、それでも結構驚いてましたね.......後2週間か」

 

「組閣から長いようで短かったものでしたな。ついにこの長期政権に終止符をと..........まぁ穴はでかいが、あの老獪な幹事長ならなんとかするだろう」

 

「発表はいつするので?」

 

「俺がしなくとも、定例会見でプレスが聞いてくるさ」

 

 佐山の予想は当たっていた。

 定例会見の報告の質問が終わった後、記者らの質問は次期総裁選関連に移る。

 

「読読新聞社の前澤です。総理は次期総裁選に立候補されるのですか?」

 

 会見室がシンと静まり返る。

 

「私は次期総裁選に立候補は...........しません」

 

 突如として発せられた佐山の爆弾発言に一同騒然となる。

 

「驚いてますな」

 

「当然だ。誰もがこのまま続投すると思っていたんだ、衝撃は大きい」

 

 官僚が口々にそう言う。

 

「どうして立候補されないと決められたのですか?」

 

 佐山は表情一つ変えずに答える。

 

「まず転移による日本のあらゆる混乱が収束に向かいつつあることと、私の理想でもあった地球共同体政府の設立が事実上不可能、そして先程も述べた通り、混乱が収束しつつある今が最適だと判断したためです」

 

 スラスラとペンを走らせる音、タタタタという合成樹脂のボードを叩く音が鳴り響く。

 あるブースでは記者2人が話していた。

 

「な〜んか胡散臭いな..........」

 

「どうしました? 先輩」

 

 先輩と呼ばれた方はペンを額に当てながら答える。

 

「地球共同体の設立が事実上不可能と言ったが..........はっきり言ってしまえばこの世界でも可能な筈だ」

 

「なるほど.........」

 

 先輩記者は腕を組む。

 

「裏で何か動いてるかもな」

 

 会見は終了する。

 その2週間後、佐山政権は終了し、次期総裁である上野尚人(うえのなおと)を首相とする内閣が組閣された。しかし、総理が変わっただけで、他の閣僚は殆どが続投した。

 

「しっかし、(首相)が変わっただけで(閣僚)はほぼ変わらずか」

 

 広瀬は市ヶ谷の国防省の大臣室で呟く。

 

「なぁ白井..........」

 

「ん?」

 

 広瀬は部屋に設置されたソファーで資料を見ていた白井に声を掛ける。

 

「ずっと生きていくってどうなんだ?」

 

 白井は資料から目を離さずに答える。

 

「それを望むものは多い。実際、艦娘になろうとする希望者は一定数いる。だが現実は残酷だ。自分より若い兄弟らが先に老いて召されるのだからな。そして俺はもうどのくらいなのか忘れつつある」

 

「絶望か.........」

 

「横須賀の大巫女に限らず、あの日本海海戦にて覚醒した艦娘は世界初の艦娘。そして生きている年数もそれ相応だ。日本を誰よりも近くで見てきて、そして裏で支えてきた連中だ。もし甘く考えているならすぐに訂正した方がいい」

 

 広瀬は部屋に掲げられている日章旗を見る。

 

「そうだな。我々はこの世界が道を違えることがないようにしなければならない。我々が味わってきたものを..........この世界も味わう必要はない」

 

 白井は資料を読み終えると制帽を被り直し、無言で大臣室から退室する。冷たい反応ではあったが、それは彼なりの意思表示でもあった。

———————————————————————————————————

 中央暦1638年 11月 パーパルディア皇国 第三外務局

 

 

 ここ、パーパルディア皇国の主に第三文明圏外国家を担当する第三外務局の応接室で2人の男が会談、否、その立場が明確に分かれている会談が行われていた。

 

「何? 奴隷の拠出を拒否だと?」

 

 パーパルディア皇国の外交官がその大使が言った言葉に眉を顰める。

 

「はい。我が国は貴国に対しての奴隷拠出をもうやめようございます」

 

 『ほう』と言い、パーパルディア外交官は少し語気を強める。

 

「それは我が国の支援を受け入れないということか?」

 

 パーパルディア皇国は属国に対し、奴隷の拠出を要求し、その対価でパーパルディア皇国で製造された部品、大は船、小はネジなど色々。

 —原作通りなのでこれ以上は割愛させていただく。

 その国の大使、トーパ王国大使は震えながら答える。

 

「か、構いません。我が国は奴隷の拠出を拒否、き、貴国は我が国に対しての支援を止める、こ、これでよろしいでしょうか?」

 

「ふん。その判断、後悔することになるぞ」

 

 するとトーパ王国大使は薄く笑みを浮かべる。

 

「フッ...........我が国はあの日本と国交を締結しているのです。それではこれにて」

 

 そう言うと、トーパ王国大使は部屋から出て行った。

 

「クソッ!!! これで8ヶ国目だ..........!」

 

 部屋に1人残されたパーパルディア外交官は悪態を吐く。パーパルディア皇国に対して奴隷拠出を拒否したのはこれで8ヶ国目であった。

 

「口々に『あの日本』『あの日本』..........ふざけやがって!」

 

 机をドンと叩く。

 一頻り喚き散らした後、外交官は部屋から退室する。外交官はその後第三外務局局長、カイオスの元へ報告しに行った。

 

「そうか............やはり『日本』か」

 

 カイオスは髭を摩りながら報告書を読む。

 

「はい。今回のトーパ王国で8ヵ国目です。このままだと...........」

 

「他の属領も追従する、か...........ひとまず日本国の詳しい情報を集めてくれ。まずは日本がどういう国なのかを調べなければならん」

 

「は!」

 

「そういえば最近貿易商人からも日本国のことをよく聞くな。後で日本の品物を取り寄せておくか」

 

 カイオスはその仕事上、貿易商との関係が密接な為、第三国経由で日本の製品などを調べようとしたのだ。

 

 〜数日後〜

 

 貿易商は日本製品をすぐに入手、カイオスの元へと送ってくれた。

 そしてカイオスは驚愕する。

 

「こ、これが靴だと?」

 

 カイオスが手に取っていたのは、ランニングシューズ、所謂ランシューであった。

 この靴にパーパルディア皇国の様な優雅さは一切ない。だが、この機能性、そして何より軽いということが—下手したらムーの懐中時計より軽いのではないのだろうか。

 

「何をどうやったらこんなのを作れる? 明らかに我が国のレベルを超えてるぞ..............なるほどな、それが次々に奴隷拠出を拒否する理由か」

 

 そしてカイオスは貿易商人から送られてきた資料を見る。『日本、第三文明圏外国家と対等な関係構築』と書かれていた。

 一応、部下の外交官に日本の調査を命じてはいるが、未だに報告が上がらない。その点、商人は他国に許可証さえあればほぼ自由に出入国できる。そしてその取引先の伝手から情報を収集することも容易い。カイオスにとって重要な情報網の一つであった。

 

「対等な関係ということは奴隷の拠出を求めていないということか..........情報が少ないが、もしこれが本当だとしたら我が国より日本との付き合いを深める方を選択するわな...........報告するには少し確度が低いな。もう少し情報を集めてから報告するとしよう」

 

 日本の情報を集めて皇帝陛下に報告することになるのはしばらく後であった。

———————————————————————————————————

 数週間後 同国 第三外務局

 

 

「なんだと!? どちらの案も拒否された!?」

 

 カイオスは部下の報告に思わず耳を疑う。

 

「はい。フェン王国は献上、租借のどちらも拒否しました」

 

「くそ。アルタラスの対応もあるから同時対応は非常にまずい。とりあえずフェン王国に対して圧力を掛けつつなんとかして譲歩を引き出せ」

 

「は!」

 

「優先的に対処するのはアルタラスだが..........まさかフェンがすぐに突っぱねようとは..........やはり日本か」

 

 自身の予想が甘かったことに歯噛みするカイオス。

 

「アルタラスは予定通りなのだな?」

 

「はい。次はシルウトラス鉱山の献上ですが、少しの期間を空けて要求しようと考えていますが、よろしいでしょうか」

 

「分かった。だが来年までには必ずな」

 

「は!」

 

 部下は恭しく一礼すると、局長室から退室する。

 

「やはり日本か..........幸いなのはアルタラスまで日本の手が及んでいないということか」

 

 カイオスは髭を摩る。

 

「まずいな。これは陛下に報告しなければ.........」

 

 カイオスは予定を切り上げてパーパルディア皇帝陛下、ルディアスへと報告することを決めた。

 

 

 

「ふむ。事態は理解した」

 

 第三文明圏の頂点であるパーパルディア皇国皇帝“ルディアス”は、カイオスの報告に特に怒るというわけでもなく話す。

 

「カイオス、貴様は余が二ヵ国同時に対応(戦争)することは、どのような事態であれ避けてきたのは知っているな?」

 

「は」

 

「そうと知っておきながらも今回の事態、どうするつもりだ?」

 

 ルディアスは手を頬に当てながらそう言った。

 

「っ...........申し訳ありません。全て私の予想が甘かったせいです」

 

 カイオスは自らの非を全面的に認める。

 

「そうか。余は貴様を高く評価している。これ以上失望させるでないぞ。アルタラスは予定通りに侵攻を行う。だがフェン王国は監察軍独自で対応せよ」

 

 下がってよいと言われ、カイオスは恭しく一礼をし、王の間から退出する。

 

(完全にやらかした...........だが後始末をうまくつけられなかったらもっとまずい!)

 

 カイオスは足早に第三外務局に戻り、指示を出す。

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 西暦2052年 内宇宙 日本政府非公式呼称『アマール』 大気圏外

 

 

 アマールより更に外、宇宙に“それ”はいた。

 

(宇宙戦艦ヤマト アンドロメダのテーマ2202版)

 

『全艦、そのまま隊列を維持』

 

 それは麾下の艦に指令を下す。

 

「エリア558の偵察終了、続いてエリア559の偵察に移る」

 

「了解」

 

 それは全長444mと、日本国国防宇宙海軍あかぎ型航空母艦とほぼ同等の大きさであった。

 それの名は『アンドロメダ』。国連宇宙海軍旗艦であった。

 

「ふ〜。地味な作業だな」

 

 アンドロメダの艦長である、『ジェイコブス』は艦連動望遠鏡による周辺の天体観測任務に不満を抱いていた。

 

「これではNASAと変わらん」

 

 ジェイコブスがこう言う理由、旧世界のアメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士であった為だ。

 経歴は—

 

 国際宇宙ステーションでの搭乗勤務 

 月 

 火星

 

 —を10年間の内にこなすなど、超が付くほどのベテランの宇宙飛行士であった。その後はNASAからアメリカ宇宙軍(軍種)へと出向、そのまま軍属となる。そしてアンドロメダの経歴を紹介する。

 

 前衛武装宇宙艦(AAA)アンドロメダ

 

 ドレッドノート級が実質的にイギリス、世界主要国との共同開発なのに対して、アンドロメダは日米両国のみの共同開発であった。

 そして波動エネルギーを全面的に活用した武装となっている。

 

 

 主砲 16インチ三連装砲(40.6cm)3基

 副砲 8インチ三連装砲(20.3cm)2基

 多目的VLS 128セル

 多連装ミサイル発射機 6基

 重力子スプレッド 4基

 その他多数。

 

 

 副砲については8インチ砲が採用されることはすんなり決まったが、主砲についてアメリカ側が強固に20インチ砲の搭載を主張していたが、日本は宇宙戦艦ヤマトに関するコストを全て開示した。

 宇宙戦艦ヤマト—それはメリットもあるが、デメリットが多いものでもあった。

 その一つが..........コストであった。

 建造費もあるが、何より運用、維持、その他諸々を含めるとアメリカ海軍の原子力空母以上のそれに匹敵するものであった。

 そして16インチと20インチ砲のそれぞれを採用した場合の試算も提示した。これを見て流石にアメリカ側も冷静になり、そして軍事企業からもたった一隻のために全てを一から作る必要性(オーダーメイド)を疑問視された為、アメリカ側も16インチ砲で妥協することになる。

 そしてこれが後々のヤマトを超える戦艦を作り出すアメリカの動機の一つとなる。

 

 —説明終了

 

 ジェイコブスはNASAの時となんら変わりない任務に不満を抱いていた。そして実際の観測は全て艦連動望遠鏡に接続された量子コンピューターが全て行っていた。だから暇潰しとまで行かなくとも、艦長席に送られてくるデータの再精査をしていると、ジェイコブスはあることに気づく—

 

「............ん?」

 

 —太陽の反対側の重力数値が微妙に歪んでいることに。

 

「観測員。まだ太陽の裏側に手は付けていなかったな」

 

『は! 太陽系外の調査を優先していますが.........太陽系内の調査は既に完了しています。何かありましたか?』

 

「いや...........太陽の裏側の重力数値が若干歪んでいてな............」

 

『............分かりました。ワイオミングを動かしてて調査をしましょう』

 

 自身の僅かな発言で取るべき行動を察してくれた観測員に心の中で感謝するジェイコブスであった。

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 ドレッドノート級二番艦『ワイオミング』

 

 

 ワイオミング艦長はアンドロメダの命令を確認するとそれをすぐに実行に移す。

 

「旗艦より新たな命令だ。太陽の裏に行くぞ。艦連動解除、反転180度、両舷前進強速」

 

「反転180度、補助エンジン、両舷前進最大戦そ〜く」

 

 航海士が復唱し艦が180度回頭、速度が14Sノットまで加速する。

 

「まもなく太陽湾曲を抜ける」

 

 ワイオミングが太陽の影から出ると—

 

「っ! こ、恒星の反応があります!」

 

「惑星ではなくか?」

 

「間違いありません。恒星です」

 

「艦外カメラが捉えました。メインパネルに出します」

 

 艦橋のパネルに映像が表示される。

 

「おい。これって地球型の惑星じゃないか?」

 

 表示されている映像には間違いなく地球のような環境を持つ惑星があった。

 

「なぜこんな簡単な物に今まで気付かなかった...........」

 

 まさに“灯台下暗し”であった。

 

「太陽系外に意識を向けすぎましたかね」

 

 航海長は制帽を被り直しながらそう言った。

 

「............取り敢えずアンドロメダに報告だ」

 

「了解」

 

「さて、どうくるか.........」

 

 アンドロメダからの返信は『単独で惑星調査を実施せよ』であった。

 

「まぁ予想通りでしたね」

 

 航海長は苦笑いをする。

 

「ふっ...........では本艦はこれより惑星調査を実施する。大気圏を掠めるぞ」

 

「Sir,YES,Sir!」

 

 ワイオミングは惑星調査を、一部のみの限定調査を実施。大陸などの地球型の惑星に必要な物は全て確認されたが、植物以外の生命体は何も確認出来なかったという報告を上げる。

 そしてこの報告は直ちに国連宇宙軍、日本国政府へと伝えられることとなる。

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 後日 日本国 首相官邸 総理執務室

 

 

「—学術的に考えてかなり珍しい物です。同じ軌道を共有する、謂わば二重惑星であるなど...........」

 

 天文学者が興奮気味に上野に話す。対して上野は学者に冷ややかな目線を—浴びせてはいなかったが、心の中で浴びせていた。

 

「それで、要点は?」

 

 政治家というのは、どれだけ相手が回りくどい言い方をしても最初から最後まで聞かなければならないが、上野はそういった回りくどいやり方を嫌う人間であった。

 

「すいません。まだ僅かなデータなので詳しいことは不明ですが、この惑星は誕生してからおよそ数十億年が経過しています。そして本題は...........生命体が国連宇宙軍が観測した通り、生命体の反応が一切無いのです」

 

「何も?」

 

 いくら専門外とはいえ、ここまでのレベルになれば異常に気付く。

 

「そう何も、です。本来ならありえないことです。これだけの環境を持ちながらも、植物などを除いた生命体が何も確認できないというのは.........」

 

 天文学者はハンカチで汗を拭く。

 

「有り得ないことですが、私独自の仮説があります」

 

 上野は視線で続きを話すよう促した。

 

「.............この惑星—いや、この太陽系は..........人工的に作られた物なのではないかと...........」

 

「人工的に?」

 

 総理執務室にいた全員がクエスチョンマークを浮かべる。

 

「人工的にと言うよりも、もはや神の意志が介在しているようにしか思えません」

 

 執務室にいる全員が有り得ないと思っていたが、ふと現実に戻る。

—『転移はどう説明する』

 と。

 転移だけではない。

・ミズーリの出現

・アマールの質量の小ささ

・そして旧世界の太陽系と酷似している星系

 などなど、挙げたらキリが無い。

 同じ次元に存在する星系としてはもはや異質としか言いようがない現象であった。

 

「神の意志か.........だとしたら相当な嫌な人だな」

 

 上野がブラインダーが掛けられた窓を見ながら言う。

 

「日本でなくとも、アメリカ、ロシア、中国を転移させれば良いのに.........」

 

 複数の官僚、特に外務省関係者が深く同意していた。

 世界警察役(アメリカ)が如何に面倒(馬鹿みたいなコスト)なことかを側で見届けて来ただけであって、よく理解していた。

 無論、この世界に転移し利益が上がっているのは事実であることは誰もが認めていた。

 

「...........この情報はあらゆる動乱の予兆になるかもしれません」

 

  天文学者がそう最後に付け加えた。

 

「...........は〜。これはまた面倒なことになりそうだ」

 

 上野の呟きは全員の耳に入る。

 

「説明ご苦労」

 

「はい。ではこれで失礼します」

 

 天文学者が執務室から出たのを確認すると宇治和外相が切り出す。

 

「申し訳ありませんが総理、一つ報告したいことがあります」

 

 外務大臣の宇治和が如何にも申し訳なさそうな表情で上野に話す。

 

「シオス王国の大使館経由である国から接触がありました」

 

「ある国?」

 

「...........アルタラス王国からです。内容は—」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        —軍事支援要請です 

 

 

 

 

 

パラレルワールドその2 フェン王国に関する分岐点

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