異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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(無限に広がる大宇宙。2199版)

 西暦2048年 日本は異世界へ転移した この世界で日本がすべきこととは 誰にもわからない


接触

 

 4時間程時間を遡る。

 

 国防宇宙海軍 第6機動部隊 かが

 

 

 あかぎ型護衛宙母『かが』はこちらに近づく船舶1隻をexcel01が探知。同船へ近づき、接触を果たす。

 

「随分と驚いてますね」

 

 航海長妖精がモニターを見ながら言う。

 

「レーダー反射が少ないから漁船かと思ったが、まさかガレオン船とは........」

 

「.........司令」

 

 安田は、かがに睨まれて硬直する。

 

「まさか中央からのレポート読んでないんですか?」

 

 安田の目が泳いでるのをかがは見逃さなかった。

 

「は〜。司令としてあるまじき行為ですね」

 

「すみません」

 

「かが艦長。その辺にしてくれないと艦橋要員が笑い死んでしまいます」

 

 かがはそう言われて周りを見ると、艦橋要員が笑いを堪えていた。

 かがは再び司令を睨む。

 

「次にやったら白井司令に言いつけますからね」

 

「うっ、それは勘弁です」

 

 艦橋に笑い声が響いた。

 

「さぁ、未知との遭遇だ」

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 軍船『ピーマ』 

 

 

 軍船ピーマは、領海付近を哨戒中、超巨大船と遭遇。臨検をするため接近する。

 軍船『ピーマ』船長のミドリは水平線上に微かに見える船を見ていた。

 

「大東洋沖からきたのか?」

 

 ミドリの問いに副長も唸りながら答える。

 

「うーん。国というより群島の集落はありましたがね〜。あのような船を作る技術はないと思いますがね〜」

 

「やはりパーパルディア皇国か?」

 

 あれこれ言うが答えは分からない。

 やがて、巨大船の全容が明らかになる。

 

「..........副長。私の目が逝かれたのかも知れんが、小島が動いてるようにしか見えないのだが?」

 

「私もです」

 

「!?な、なんて大きさだ!400m位はあるんじゃないか!?」

 

「そうにしか見えません」

 

「超巨大船。停止した模様!」

 

「敵対の意思はないか........これより臨検を行う。絶対に威圧したりするなよ」

 

 ミドリは恐怖に包まれた。

 

 

 かが 艦橋

 

 

「こちらの誘導に従ってますね」

 

 艦橋要員が接舷作業をしている軍船『ピーマ』を見てそう言った。

 軍船『ピーマ』の大きさは約50mなのに対し、かがは約400m。

 象と蟻である。

 

『接舷終了。ラッタルを渡します』

 

「了解。気をつけて」

 

『はい』

 

「艦長、行っていいですよ」

 

「え?」

 

「さっきからずっとソワソワしてますから」

 

 そう言われて自分を見ると、いつのまにか腕を掴んでいた。

 

「じゃ、艦の指揮お願いね」

 

「了解です」

 

 かがは艦橋から出る。

 

「あ、司令は.........いいか」

 

 そう言い、貴賓室へ向かう。

 

 

(この船の動力は一体何なんだ?マストが複数あったものの帆が無かった。それにこれは全て金属でできている.........)

 

 ミドリは顔を少し後ろに向けて後ろにいる謎の黒い杖を持った青いまだら模様の服を着た兵士を見る。

 

(見たことのない兵器。日本軍の兵士は全て魔道士なのか?)

 

 ミドリは不安を感じながらも案内に従う。

 

 

 貴賓室(食堂)

 

 

「緊張しますね仙崎さん」

 

「言葉の壁はないみたいだ」

 

 仙崎は傍にある端末に流れてる映像を見ながら言った。

 その映像は艦内各所に設置されてる監視カメラの映像だ。これを閲覧できるのは司令と艦長のみであるが、一時的に許可をもらって見ていた。

 

「文法、言葉遣いともに現代日本語ですね」

 

 仙崎の隣に座っているかががぶつぶつと言っている。

 

「あの〜かが艦長」

 

「ブツブツ」

 

「艦長?」

 

「あー艦長の(いずも型護衛艦2番艦『かが』)はこんなんじゃないんですけどね」

 

「ていうか先先代(空母加賀)の血を引き継いでる先祖帰りふごっ!!」

 

 給養員妖精がかがから左ストレートを顔面に喰らう。

 

「ねぇ今何か言った?」

 

「何も言ってません」

 

「よろしい」

 

 かがと給養員妖精とのやり取りを見てた仙崎らは萎縮した。

 

(怒らせない方がいいな)

 

 貴賓室(食堂)でそんなやり取りをしてるのを露知らず、艦内保安妖精が貴賓室の扉の前に到着する。

 

 ゴンゴンゴン

 

「どうぞ」

 

 中からかがの声が聞こえてきた。

 

「艦内保安妖精、客人案内を終了します」

 

「ご苦労様」

 

 椅子に座る。

 ミドリは気を引き締めて話始める。

 

「私はクワ・トイネ公国海軍所属軍船『ピーマ』船長のミドリです。ここから先は我が国の領海に入ります。貴船の航行目的を教えてください」

 

「私は日本国外務省アジア太平洋州局外交官仙崎と言います。航行目的は貴国との国交開設です」

 

 他も挨拶をする。

 

「そうですか。しばらくお持ち下さい。本国に連絡します」

 

「どのくらい時間がかかりますか?」

 

「魔信があるので比較的すぐに返答できると思います」

 

「分かりました」

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 クワ・トイネ公国 マイハーク防衛司令部

 

 

「司令!軍船『ピーマ』からの続報です。『超巨大船の国籍は日本国。航行目的は我が国との国交開設』とのことです」

 

「すぐに上層部へ連絡だ!すぐにだ!」

 

「はい!」

 

「日本国?聞いたことがないな」

 

 その後、政治部会に連絡された。

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 クワ・トイネ公国 首相官邸

 

 

「カナタ様。わかっていると思いますが絶対に彼らを侮らないように」

 

「分かっています。気を引き締めなければ........」

 

 カナタは背筋を伸ばし扉をノックする。

 中に入るとパリッとした服を着てる8人の男がいた。

 

「こんにちは。クワ・トイネ公国首相カナタです」

 

「こんにちは。日本国外務省太平洋州局外交官の仙崎です。こちらは—」

 

 日本側も挨拶を終える。

 

「さて、日本国の皆さん。我が国に何の御用でしょうか?」

 

「我が国の目的は貴国との国交締結です」

 

 カナタは手元の書類に目を落としすぐに戻す。

 

「そうですか........。貴国が転移国家というのは真実ですか?」

 

「はい。事実です。もし信じられないのでしたら我が国を直接見ていただけないでしょうか?」

 

「なっ!ぶ、無礼だぞ!!領海を侵犯しようとして—」

 

 捲し立てる外務卿をカナタは手を掲げて止める。

 

「分かりました。私達はお互いのことをよく知らない、使節団を派遣しましょう。それと、国交締結、政治部会に話を通さないといけませんが最善を尽くすと約束しましょう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 仙崎ら外交官一行は揃って頭を下げた。

 

(こちらを見下すような様子はない、か。信用まではいきませんが信頼できそうです)

 

 その後、政治部会にて日本国と国交締結、使節団派遣がわずか1日で決定した。

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 神聖ミリシアル帝国 天文観測所

 

 

 ここで天体観測が国を挙げて行われていた。

 

「ん?」

 

 月を観測していたところ妙な物に気づく。

 

「..........なんだありゃ?」

 

 望遠鏡の倍率をいじる。

 

「!?」

 

「艦?」

 

 誰か挿絵描いてくれないかな.........。

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 同日 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス アルビオン城 

 

 

「緊急と聞いたがどうした?」

 

 皇帝ミリシアル8世が対魔帝対策省長官サーフに聞く。

 

「申し訳ありません。まずこちらをご覧ください」

 

 そう言い、魔写を渡す。

 

「これは?」

 

 ミリシアル8世が影の部分を指差す。

 

「まずこの魔写は天文観測所から送られてきた物です。月の観測中、艦のような物が映ったと」

 

「............貴様はどう思う?」

 

 このどう思うは、魔帝か否かを問うた意味だ。

 

「真か否かは置いといて、魔帝ではないと思います」

 

「ほう、何故だ?」

 

「確かに僕の星の可能性もありますが、そんな物で報告してくるとは思えません」

 

「ふむ、確かにそうだ。だが、念のため調査をせよ」

 

「仰せのままに」

 

 サーフは部屋から退出する。

 

「一体何なんだ..........」

 

 ミリシアル8世の言葉は誰もいない部屋に吸われた。

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 日本とクワ・トイネ公国と接触から1日後

 

 日本国 首相官邸 総理執務室

 

 

「ひとまず穏当な接触ができたということか」

 

「はい。それと、クワ・トイネ公国からの資料なのですが..........」

 

 この資料は、お互いの国の情報交換で作成した資料だ。

 

「は?」

 

 農林水産相が間抜けな声を出す。

 

「食料自給率%換算で210%だと!?」

 

「人口は3000万人強。明らかな過剰生産じゃないか?」

 

「それについて問い合わせたところ、『勝手に育ってくる』とのことです」

 

「「「「「...................」」」」」

 

「なんだそれ............」

 

「天然食料問題は解決だな」

 

「いやそういう問題じゃないでしょ」

 

「惑星調査の状況は?」

 

「惑星の3分の1程終わりました」

 

「結構結構」

 

 佐山は椅子を回転させ窓の外を見る。

 外にはデモ行進が行われていた。

 

「面白い世界だ。ありえないと思ったことが起こる」

 

「総理。懸念が一つあります」

 

「なんだ?」

 

「この世界に骨を埋めたとして、我が国が再び転移した時のことを考えますと、異世界国家との接触はクワ・トイネ公国と、資源輸出有力国に絞るべきだと考えます。我が国の経済構造は以前から崩壊に備えて強化してきてます。5、いや8年は持ちます」

 

 大鷹厚労相が熱弁した。

 

「あぁ、その通りだ。だが、国会、経済連が何を言うかわからないぞ」

 

 この場合追及されるのは経産省だが、責任は大鷹になるという意味だ。

 

「うっ、それはそうですが.........」

 

 佐山は再び窓の外を見る。

 

「...........広瀬、白井は?」

 

「あぁ、確か横田の国連軍司令部に行ってたはず.........はい。横田に行っています」

 

 広瀬は紙を次官から受け取り話した。

 

「そうか。好都合だ。国連軍司令官ジェームズ・フィパーを連れてくるように言ってくれ」

 

「了解です」

 

「なぜ国連軍司令官を?」

 

「いずれ彼らは必要になってくる」

 

「........そうならないことを祈ります」

 

 井村保安相が言った。しかし彼の願いは叶わない。

 そのことを知るのはずっと後だ。

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 5日後  クワ・トイネ公国 マイハーク港

 

 

「緊張するな.........」

 

「渕上さん。そんなに緊張しなくても........」

 

「いやだって国の命運がこの肩にのし掛かってくるような感じしかしないんだよ...........」

 

 今話しているのは、日本国外務省から派遣された渕上と浦尾である。

 

「いや、実際に交渉するのは本省の大臣と総理でしょ?俺たちの仕事は使節団の案内だけですよ」

 

「それはそうだが.........」

 

「さっ、行きましょう。使節団の皆さんと国防宇宙海軍の方が待ってますから」

 

 まだなにかを言いたそうな顔をしてる渕上を置いて浦尾は波止場に向かう。

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

「お集まりの皆様、本日は日本へ使節団として来て頂けるとの事で、喜びの極みです。」

 

 使節団を出迎えた渕上は、使節団の代表である『ヤゴウ』以下の、使節団の面々に挨拶を兼ねて、日本国への移動手段として用意した船が停泊している場所へと案内する。

 

「はぁ..........船旅は好かんのじゃ..........」

 

  使節団の中で憂鬱そうな表情をしているのは、使節団のメンバーとして日本国の軍事力を見定める役目を担う陸軍のハンキ将軍だった。

 

「ハンキ将軍、顔色が優れませんが?」

 

「ヤゴウ殿、今は外務省出向の身なのだから将軍はやめてくれ。いやな、船旅は良いものでは無いぞ。船内は暗く、狭く、湿気も多い。長旅になると疫病に掛かる者もでるからのぅ...........」

 

 クワ・トイネ公国において、船旅と言うのは過酷との戦いである。

中世時代の帆船しか知らない彼らにとっては、船の中と言うのはあまりイメージは良くなく、ハンキ将軍程では無いが、ヤゴウ達使節団も少し憂鬱に感じている。

 

「皆様、我が国の船が到着しました」

 

 波止場の上で渕上が言うと、ヤゴウとハンキ達も立ち上がり沖を見る。

 

「なっ!」

 

「あれは.........なんてデカイ!」

 

 マイハーク港沖に止まっていたのは旭日旗を掲げた日本の軍艦だった。

全長400メートルの船を海軍が臨検したという噂を聞いたヤゴウとハンキは、作り話程度にしか聞いていなかったため、その軍艦の大きさに驚く。

 

 いずも型護衛艦

 

 全長320m

 全幅62m

 搭載機数 固定翼機52機 回転翼機12機

 

「あれは我が国の海軍に所属する軍艦『いずも』です。本来なら客船を使いたい所でしたが、周辺の海域と空域の安全が確認されていないので、使節団の方々の安全を第1に考え用意しました」

 

 ちなみにいずもは旧海軍、海自、宇宙海軍と3代目である。

 

「ふ......渕上殿、いずも?と言うあの軍船には帆が付いていないようじゃが、どうやって動いてるのじゃ?」

 

 ハンキの質問に渕上はそばにいた青い迷彩服を着た人に視線を送る。

 

「はい。あの艦は波動エンジンを使用して動いています」

 

「はどうえんじん?」

 

「はい。帆やオールを使わなくても船を動かせる事ができる...........何と言いましょうか............人間で言う所の心臓にあたる絡繰りと考えて頂ければ」

 

「よく分からんが..........凄いと言う事だけは分かった」

 

 旧世界では凄いを通り越して頭おかしいなのだが........

 

 渕上や、クワ・トイネ使節団は、いずもからやってきた迎えのSH-60Kへと乗り、無事にいずもへと乗艦する。

 

「これが軍船の上なのか………まるで要塞のようじゃ……美しい……」

 

「それに見てください。全てが金属でできていますよ」

 

「でかい甲板だ。騎馬戦ができてしまう.........」

 

 ハンキはいずもの偉容に敬服し、ヤゴウはいずもの大きさと手入れされた甲板を見て感心する。

 

(本当は水上任務よりの宇宙艦とは言えんな……)

 

 国防宇宙海軍隊員妖精は心の中でいずもの正体については口に出さず、胸の内に仕舞い込む。

 

「渕上殿、出来ればで良いのじゃが、このいずも?の責任者に合わせて頂けないじゃろうか?ワシも軍人の端くれとして、この軍船の責任者に挨拶をしたいのじゃが」

 

「えぇと、よろしいですか?」

 

 渕上は隊員妖精へ聞いた。妖精は頷き返す。

 

「ではこちらへ」

 

 隊員妖精に従い艦橋に向かう。

 

「クワ・トイネ公国使節団の皆さん、お待ちしておりました。私は当艦、いずも艦長のいずもです。本日より2日間は大変窮屈な思いをさせてしまうでしょうが、日本までの道中よろしくお願いいたします」

 

 艦橋では、いずも艦長のいずもが使節団を出迎える。

 

「クワ・トイネ使節団代表のヤゴウです」

 

「おなじくクワ・トイネ使節団団員のハンキです。お会いできて光栄です」

 

「ではこれよりいずもは日本国へ向けて出航いたします。これより皆様を客室へとご案内いたします」

 

 使節団を客室エリアへと案内する。

 

「なんて広いんだ!それに回りは明るい!」

 

「光の精霊でも宿しているのかこの船は!?」

 

 豪華客船程では無いが、豪華で、尚且つ軍艦とは思えないほど清潔に保たれた客室に一同は驚きの連続だった。

  いずもは各国VIP、日本国内閣総理大臣、天皇陛下が乗艦されることを想定しているため、豪華ホテルに肩を並べられるほどのレベルだ。

 驚きの熱が覚めぬまま、各々は割り当てられた客室へと入り、一堂は思い思いにくつろぐ。

 しかしハンキは再び艦橋に戻りいずもを見学する。

 

「速い!どのくらいの速度が出てるのですか?」

 

「今は20ノットですね。もうすぐランデブーポイントですから少し速度を落としますがね」

 

「らんでぶーぽいんと?」

 

「味方との合流地点のことです」

 

「だが海の上だと目印はないぞ?どうやって味方と合流するのだ?」

 

「航海レーダー、GPSをもとに予め合流地点を算出しています」

 

 GPSは波動砲艦隊と、突貫改造ロケットで打ち上げられた衛星を中継衛星として使用してる。

 

「それが何なのかよくわからないが凄いことはわかった」

 

 その後もハンキの質問にいずもは嫌な顔一つせず答えた。

 

 

 充てがわれた客室でヤゴウは日記を書いていた。

 

『私は日本国へクワ・トイネ公国使節団代表として、日本の軍船に乗り込んでいるが、私はこのような巨大で尚且つ、帆やオールも無しに動く船など見た事はない。おまけに中は一定の温度が保たれ、明るく、清潔が保たれている。こんな物を作り出す日本国について私は、この日記を書いてる今も、興味が尽きず、非常に楽しみである。もしかしたら日本国は、他の列強国に匹敵する力を持っているかもしれない』

 

 ヤゴウは日記を閉じる。

 

「明後日が楽しみだ」

 

 ヤゴウは眠りについた。

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 いずも 艦橋

 

 

 使節団や外交官が眠りについても当直士官妖精は周りに注意を払いながら航行していた。

 

「まもなくランデブーポイント」

 

「『めいおう』『みょうこう』『なち』『あきづき』『てるづき』『かげろう』『しらぬい』を視認」

 

『『伊-01』『伊-02』『伊-03』の推進音を探知』

 

「さぁ、不安な状況もこれで終わりだ」

 

「艦橋よりCIC、僚艦以外の目標は探知できるか?」

 

『こちらCIC、確認できません』

 

 副長妖精はひっきりなしに発艦、着艦する飛行甲板を見た。

 

「どうされました?」

 

「いや.........なんでもない」

 

「僚艦、面舵回頭。輪形陣に着きます」

 

 いずもの護衛艦は見事なまでの艦隊行動を見せた。

 

「おはようみんな」

 

 艦橋に時刻に合ってない挨拶が聞こえた。

 

「おはようございます司令」

 

「まさかずっと寝てたの!?」

 

「そのまさかグヘッ!!」

 

 第1護衛艦隊司令冨岡はいずもから右フックを喰らう。

 

「ゲホッゲホッ、上司に対して扱いがひどくないか?」

 

「怠け者には関係ありません。立場上は上司ですが、あなたのことを上司とは思ってません!」

 

「そこまでにしないか?また夫婦喧嘩とか言われるぞ?」

 

「うっ、わかりましたここで手打ちにします」

 

 艦橋が笑い声に包まれる。

 冨岡は本省の総隊司令部付の参謀だったが、総隊司令、海上幕僚長の連名により、第1護衛艦隊司令となった。

 いずもは米留学、米軍留学を経た防大卒生だ。

 冨岡の階級は1等宙将。いずもは1等宙佐。

 階級の差は3段位はあるがここまで仲がいい理由は、防大時代の先輩後輩だからである。

 

「全く、少しは優しくしてくれよ...........」

 

「あなたには一生優しくしませんから」

 

「すみません」

 

「全く............」

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 いずもより北東560kmに青白い光を後方に吐きながら漆黒の空を飛ぶ鳥がいた。

 

「あ?」

 

 電子士官妖精が謎のモールス信号を受信する。

 

「..........なんだこれ?暗号化されてるのか.....,,......」

 

「どうした?」

 

 戦術士官妖精が話しかけてくる。

 

「いや、国籍、発信元不明、送信先不明のモールスを受信しました」

 

「ん?.............モニターに投影してくれ」

 

「はい」

 

 電子士官妖精がキーボードを操作しモニターに投影する。

 

「,................何かわかります?」

 

「全く分からん。ロシア系なのはわかるが...........暗号までは分からんよ」

 

「仕方ない。お艦に送れ」

 

「了解です」

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 いずも CIC

 

 

 ここは、アメリカ海軍航空母艦のCDCに相当するところである。

 

「で、解けた?」

 

 いずもの問いに電子戦士官妖精が答える。

 

「本艦の演算能力、というか、このお古の暗号に対応してませんので、中央のシステムを一部拝借し、ようやく解けました。それがこれです」

 

 いずもは紙を受け取り、読もうとして固まる。

 

「ちょっと待って。中央のシステムを拝借って言ったけどどういうこと?」

 

「そのままですよ..........ハッキングしました」

 

 電子戦士官妖精は言い逃れをしようとしたがいずもに睨まれて正直に言う。

 

「ログは残してないでしょうね?」

 

「全て消しましたが、総隊司令のことですから..........」

 

「あの人の人脈は恐ろしいからね..........その時の責任は—」

 

「分かってます」

 

 責任は電子戦士官妖精にあるという意味である。

 ちなみにこの電子戦士官妖精、国防軍機密サーバー群に侵入したことがある腕利きのハッカーである。

 

「ふ〜.............驚いた。まさかD暗号を使ってるとは..........」

 

「内容はロデニウス大陸各国の軍事力、政治体系、マジもんの諜報員の報告電文だと思われます」

 

「んー、グラバルカス?グラ・バルカスか.........」

 

「発信源、送信先は依然不明です」

 

「中央に報告。原文そのままね」

 

「はい」

 

「うーむ.........」

 

「まだ何か?」

 

「いやね〜—」

 

「—なんでロシア語擬きなのにD暗号を使ってるのか解せない、だろ?」

 

 いずもが言うより早く冨田が言った。

 

「そうです..........」

 

「痛っ!」

 

 冨田がいずものブーツの踵で踏みつけられる。

 

「な—」

 

 そこで冨田はいずもに睨まれる。

 

「すいません」

 

「よろしい」

 

「痛い.........」

 

 冨田の声は誰にも聞こえなかった。

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 2日後 舞鶴港沖

 

 

 2日間の船旅で、日本の舞鶴港に到着したいずもの飛行甲板からヤゴウとハンキは田中からの説明を受けながら横須賀の町並みを眺める。

 

「これが日本の都市...........」

 

 海上から見える舞鶴港は、彼らからすればとんでもないくらいに発展しているように見える。

 

「この舞鶴港は国内において有数の規模を誇る港であります。ここには国内の産業を担う様々な工場や造船所が設けられ、我が国が保有する民間船や軍艦の少数がここで建造されています」

 

「渕上殿、ここは随分と発展しているようだが、ここが日本国の首都なのかね?」

 

「いえ。我が国の首都は東京であり、ここは地方都市となります」

 

「なんと!?」

 

 ヤゴウは地方都市でこれ程発展しているという説明にただ驚く。

普通地方都市は首都よりも開発や発展が遅れているというイメージを持っており、舞鶴港や舞鶴市街でこれ程発展しているのなら、東京はどのくらいの規模の町なのか、興味が湧き始める。

 やがて、舞鶴港の桟橋に接舷したいずもを降りて、外務省から迎えの車に乗り込んだ使節団一行は、舞鶴港を離れ、警察車両に囲まれながら舞鶴港市内にあるホテルへと向かう

 ホテルに到着しチェックインの後に、渕上から今後の事についての説明を受ける。

 

「えぇ、では明日の予定についてお話しします。明日の午前中は我が国の首都防空を担当する基地にて第1独立航空団の見学を行います。午後からは東京へ移動し、我が国の首相、佐山総理大臣と、各大臣との会談を予定しております。」

 

「ふ.......渕上殿、我々に日本軍を見学させて頂けるのですか?」

 

「はい。我が国を知っていただくための重要な機会ですので」

 

(本当は“あのお方”の命令なんだけどな..........)

 

 ハンキは元々日本軍の調査を担当しているので、渕上には日本軍の見学を依頼するつもりだったため手間が省けて良かったと安心する。

 

「以上が明日の予定になりますが、何か質問はございますか?」

 

「渕上殿、1つよろしいですか?」

 

「どうぞ。」

 

「明日の午後に予定されている貴国の首相は、どういった存在なのでしょうか?」

 

「はい。我が国における総理大臣とは、国の政治における最高責任者であり、首相を筆頭とした政党を中心に国会が開かれ、日本国憲法が定める規定の下、国民投票で選ばれた様々な政党に属する議員が法律の制定や検討、国家戦略、予算について議論を行います」

 

「共和制と民主制なのですね。して、総理大臣と言うのはこの国の王なのですか?」

 

「総理大臣は政治の最高責任者であり、我が国には『天皇陛下』と言う、所謂皇帝と言う王の更に上の立場に居る方がおられるのです」

 

「その天皇と言うのは、政事には関与するのですか?」

 

「いいえ。およそ100年前の大日本帝国憲法と言う憲法では、天皇主権という制度があり、細かい説明は省きますが天皇に主権が集中していたのですが、敗戦後に発布された日本国憲法では、陛下は国の象徴と位置付けられ、陛下と皇族方は首相や国会の承認なしに国の国事行為以外では国政には携われなくなりました」

 

「つまり皇帝には、国政に携わる事を禁止していると?」

 

「はい。陛下に国の主権が集中してしまえば、それを良いことに独断で暴走する者が現れてしまいます。かつて我が国もそれが原因で泥沼の戦いに引摺りこまれてしまった歴史がありましたから」

 

 前世界において関東軍の暴走。陸軍海軍によるクーデターの連続発生。軍令部、参謀本部による統帥権の乱用。天皇陛下の裁可を無視した作戦。玉砕など挙げたら数え切れないほどの原因で敗戦した。

 

「佐山総理大臣が掲げる、恒久的な世界平和理論に基づいて、先ずは国民の意識改革。次に地球市民全員の意識を改革しようと活動されていました」

 

 その活動によって得られた成果としては、

○常設国連軍の設立

○世界平和活動、紛争調停への大国の意思関係なしの積極的関与

 などが挙げられる。

 

「成る程...........佐山総理大臣は中々の政治家のようですね。明日に会えるのが楽しみです」

 

 その後、使節団一行は細かい説明を受け、明日に備えて床についた。

——————————————————————————————————— 翌日

 

 

 使節団一行の姿は、岐阜県にある岐阜航空基地にあった。

 

 

「おぉ!これは..........」

 

 使節団一行の目の前には、F-4Aコスモファルコンの姿があった。

 

「ハンキ将軍。これは神聖ミリシアル帝国の天の浮舟と同じでは........?」

 

「確かに似ていますな..........」

 

(ジェット戦闘機を配備してる国があるのか........)

 

 渕上はヤゴウ達の会話を聞き逃さなかった。

 

「では、この機体について解説してもらいます」

 

 渕上と交替して現れた、基地に所属する解説役の軍人(妖精ではない)がファルコンの説明に入る。

 

「では、このファルコンについてのご説明をさせて頂きます。まずこの正式名称はF-4A。ファルコンと言う名は愛称です。このファルコンは我が国が宇宙空間戦闘のために開発した戦闘機であります。高度は燃料と搭乗員の体が持てばどこまでも、速度は大気圏内でマッハ7です」

「高度制限なし!?それとマッハというのは?」

 

「マッハというのは音の速さを表しています。この場合だと音の7倍位ですね」

 

 ハンキは言葉がでなかった。

 彼が知るワイバーンは出せて350キロが限界で、高度1000メートルを過ぎると空気が薄く、温度が急激に下がるため、高高度での長時間の空中戦はベテランの龍騎士でもやらないのが普通である。

 だが目の前のファルコンという鉄竜は、高高度性能と速度性能がワイバーンと比較にならない。

 恐らく勝負に持ってくる前に、上昇して逃げられるのがオチである。いや勝負にすらならないだろう。

 

「そろそろ訓練飛行の時間です。ファルコンの飛行する場面をご覧になってください。」

 

 予め用意されていた来賓席に通される使節団一行は、目の前の滑走路に駐機されていたファルコンに目を向ける。

 するとハンキがあることに気づく。

 

「!?」

 

「ハンキ将軍。どうされましたか?」

 

「あの鉄竜は女が操るのか?」

 

「えぇ。まず我が第1独立飛行団は主に実験航空団として作られましたからね。で、あのパイロットは鳳翔さんです」

 

「どうして女の竜騎士を?」

 

「確かに我が国も最初は男性のみでしたが、女性登用の機運が高まり、我が軍も女性もパイロットになる道が開けました。しかしそれ以前に鳳翔さんは前世界で最初の航空母艦として作られましたから、操縦技量では国防軍航空隊の中でトップレベルです」

 

 鳳翔が、操縦席に乗り込む。

 鳳翔は昔を思い出していた。

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 西暦2028年 横須賀 郊外

 

 

 鹿威しの音が鳴り響く中、1人の女性と1人の男性が座布団に座り、向かいあっていた。

 一見普通に見えるが、中に入るとそれが間違いだったと思い知らされる。

 鳳翔の艦霊力が解放されているため、一般人はおろか、軍人でさえも倒れるだろう。

 ここに白井が来てからずっと鳳翔は白井の目を見て、艦霊力をぶつけていたが、白井はそれをものともしない。

 

「で、何の御用でしょうか」

 

 鳳翔が口を開く。

 

「静かに余生を送れて何よりだ」

 

 睨み合いが続く。

 

「は〜」

 

 鳳翔がため息を吐くと艦霊力を、スッと収める。

 

「ありがとう。では早速これを」

 

 ちゃぶ台に紙を乗せる。

 

「お断りします」

 

 紙を一瞥するなり鳳翔は問答無用で断った。

 その紙の内容は、『国防空軍第1独立飛行団への所属願い』と記されていた。

 

「前にも言ったはずです。私はもう後世に語ることだけが仕事だと。もう私は軍用機に乗ることはできません。それがたとえ実験機だとしても」

 

 鳳翔が話している中、白井は目を瞑ったままだった。

 すると徐に目を開き話始める。

 

「空は嫌いになったのか?」

 

「意地悪ですね...........嫌いになれるわけがないです」

 

「............皆から、鳳翔のことを頼むように言われてることは知っているな?」

 

「はい。特に源田さんからですよね?」

 

「あぁ...........もうすぐ60年か..........」

 

 白井はお茶を飲む。

 

「うん。腕は落ちてないな」

 

 と、満足そうに言った。

 

「さて。もう一度言う。君は第1独立飛行団に入るか?」

 

 白井の気配が変わる。

 

「私は入るつもりはありません」

 

 鳳翔も応じる。

 

「ふっ、頑固さは相変わらずか..........」

 

「それが私の取り柄だと思っていますので」

 

 再び白井がお茶を飲む。

 

「そうか...........。君にこれを見て貰いたい」

 

「?..............!?。え?これって..........」

 

「赤城から渡された」

 

 そこに書かれていたのは、赤城からの手紙だった。

 

「どうやら俺だけでなく、南雲様もお望みになられてるらしい」

 

 赤城は防衛大学校で非常勤勤務員として勤めている。

 

「.............南雲さんが」

 

「鳳翔。君の腕をそのままにしておくのはもったいない。その気になれば戦闘機なり何なりをすぐにでも物にできるだろう。だが、実験機を乗り回した—」

 

 鳳翔は源田らと並び、テストパイロットとして積極的に志願していた。

 

「—その実力は源田様だけではなく、一般人でも知られていた。今でもその評価は高い」

 

 鳳翔は顔を伏せたままだった。

 

「鳳翔。お前にだけしかできないことをやれ」

 

 その言葉にはっとする鳳翔。

 

「覚えてるだろ?」

 

「..........山本長官」

 

「それならいい。で、どうだ?」

 

 鳳翔は顔を上げる。目には涙を浮かべていた。

 

「私をこんな顔にさせるのはあなただけです。白井」

 

「自慢にする」

 

「ふふふ...........わかりました。引き受けましょう」

 

「ありがとう」

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 操縦席に乗り込み、鳳翔が機付きに合図を送る。機付きがミサイルの安全ピンを抜き、数を確認し、トレーに乗せる。

 機付きが頷き、機体から離れる。

 

「Control Tower here for Scott 01 engine start permission(管制塔、こちらスコット01、エンジンスタートの許可を求めます)」

 

『This is control tower Scott 01 engine start is allowed(こちら管制塔、スコット01、エンジンスタートを許可します)』

 

「roger」

 

 鳳翔は機体電源のスイッチを押す。

 昔は、燃料タンクからエンジンに燃料を送るなど、始動までに時間がかかる物だったが、今はボタン一つでエンジンを始動させることができる。

 チェック項目を一つ一つ確認する鳳翔。問題ないことを確認すると、管制塔に滑走路への移動許可を求める。

 

「Engine start is okay. Ask for permission to enter the runway.(エンジン始動よし。滑走路への進入許可を求めます)」

 

『Scott 01. Allow entry to the runway via taxiways 01 and 05(スコット01。誘導路01、05経由での滑走路への進入を許可します)』

 

「roger。Scott 01. Enter the runway via taxiways 01 and 05.(了解。スコット01、誘導路01、05経由で滑走路へ進入する)」

 

『I confirmed the repeat. here you go(復唱を確認しました。どうぞ)』

 

 F-4Aの車輪止めが外され、キャノピーが閉じられると、F-4Aはゆっくりと自走し滑走路の端にある離陸位置につく。

 鳳翔は酸素マスクをつけ、バイザーを下げる。

 

『スコット01。Start of mission』

 

「roger」

 

 一分後、F-4Aは離陸位置から一気に加速し、滑走路の中央辺りで機首を上に向けて離陸した。

 

「なんと言う上昇速度じゃ...........」

 

 ハンキは空に向かって信じられない速度で上昇していくF-4Aに驚き、唖然となる。

 やがてファルコンは空の彼方へと消えていった。

 

「....................」

 

 

ハンキは絶句する。

 

「ご覧ください!先程離陸したファルコンが戻ってきます」

 

「え?もうなのか?」

 

 上昇し姿が見えなくなっていたファルコンが降下しながら戻ってくると、時速700キロ近い速度で飛行場上空て大きく旋回しつつ、左右へのロール回転や急旋回、急上昇といった飛行技術を披露する。

 

「あんな動きもできるのだな..........」

 

「はい。では次に射撃訓練に入ります。滑走路の北にある標的をご覧ください」

 

 示された方向を見ると、巨大な一枚の鉄板があった。鉄板の真ん中には大きく目玉のような模様が描かれている。

 待機していたファルコンは標的に向かって機首を向け、ギリギリまで接近すると、機首から25㎜機関砲に装填された曳光弾が飛び出し、標的に命中する。

 

「それでは標的をご覧ください」

 

 モニターに映された標的を見るとハンキは愕然とした。

 

(こんな分厚い鉄板に大きな穴が..........)

 

 25㎜機関砲は、分厚い鉄板を易々と貫通していた。

 

(日本国の力恐るべし。もしあのファルコンと我が国のワイバーンが戦えば間違いなく敗北だ.........)

 

 ヤゴウの脳裏には、ファルコンに撃墜されていくワイバーンの姿が写った。それと同時に二人は日本国とは敵対してはならないと直感した。

 

(これは........本腰で掛からないと、我が国の未来と運命を左右しかねない)

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 日本国 帝都東京 首相官邸

 

 岐阜基地での見学を終えた使節団一行は、再び警察車両に囲まれながら迎えの車にて首相官邸へと訪れていた。

 ヤゴウら使節団は首相官邸内の会議室へと通され、充てがわれた席へと座り、会談相手である佐山らを待っていた。

 

「ヤゴウ殿、貴方は日本国の佐山総理大臣をどんな人物だと考える?」

 

「はい。昨日、渕上殿から教えられた通りの人物なら、恐らく相当に優秀な政治家であると考えられます。なにせ、世界平和のために動いていらしたのですから」

 

「うむ..........」

 

 2人は佐山がどのような人物で、どのような人柄なのか、殆ど口頭での説明でしか知らされていないため、緊張で汗しか流れない。

 そこへドアをノックする音が聞こえ、ヤゴウ、ハンキ、使節団一行は姿勢を整える。

 そしてドアが開かれると、茶色いスーツを着こなした比較的若い男が入ってくる。

 

「クワ・トイネ公国使節団の皆さん、遅くなって申し訳ありません。私が日本国首相の佐山です。今回はどうぞよろしくお願いします」

 

 使節団は佐山の優しい雰囲気と、何処か堂々としている姿を見て少しだけ安心する。

 

「皆さん、どうか緊張なさらずに楽にしてください」

 

「は、はい。御気遣いありがとうございます」

 

 佐山に促されヤゴウは肩の力を抜く。

 

「では、早速ですが、両国にとって初となる会談を始めましょう」

 

 向かい側の席に座った佐山を含めた各省庁のトップ達は早速、ヤゴウ達との歴史的な会談を開始する。

 先ずはクワ・トイネ公国との交易と国交樹立に関する協議が始められる。

 

「まず貴国は農業が盛んな国だと伺っております。我が国の食料自給率は98%と比較的高い傾向なのですが、天然食料と、合成食料を合わせた数となっているのです。しかし、加工食品として利用できるものは少ない.........よって貴国から早急に食料を輸入したいのです」

 

「我が国は神のご加護により国内の土地は放っておいても農作物が生え、国民全員がタダで美味い食料を手に入れる事ができ、家畜にでさえも質の良いエサが与えられるのです」

 

「それは凄い!国民全てがタダで食事を摂る事が出来るとは..........」

  

 遠山農林水産相が何か小言をブツブツ言っている。

 

「我が国としましては国民を飢えさせないために早急に貴国と国交を結びたいと考えています。勿論、タダでとは言いません。それに見合う対価もお支払いいたします。如何でしょうか?」

 

 宇治和外務相は輸入品目と輸入数が細かく書かれた書類を手渡す。それを見たヤゴウは少し難しい表情となる。

 

「そうですね...........正直我々もここに書かれている品目の多さには少し戸惑っています。リストの中には聞いた事のない物もありますし、もしそれらを除く代替品でよろしければ我が国は.............貴国が欲している分を全てを賄う事ができますよ」

 

 ヤゴウの言葉に農林水産省や外務省、国防省などの代表達はざわめく。

 

「ただし..........ただしですよ、これ程の量を輸出するにしても、それを定期的に、尚且つ安定して運び出すだけの資材や設備を我が国は保有しておりません」

 

 つまりそれさえ解決すれば問題ないと言うことだ。

 外務省関係者、国防省関係者が笑みを浮かべる。

 

「成る程。分かりました。我が国はそれらの設備に関する全ての技術援助を貴国に輸出いたしましょう。我が国からは穀倉地帯における資材運搬用に鉄道を整備し、品物を輸出するための港湾設備の整備については我が国が全て引き受けます」

 

 ODAの実施である。議会を通さないといけないが、反対するものはいないだろう。

 これを聞いたヤゴウとハンキは国内が一気に近代化し、国が更に栄える未来が見えた。

 

「我が国は国交を結んで頂いた貴国に対して最大限の援助をお約束いたします」

 

「佐山総理!ありがとうございます!では今回の件については私どもが責任を持って首相にお伝えします!」

 

「ありがとうございます。これで我が国は救われました。貴国には感謝をしてもしきれません」

 

 この日より一週間後の10月29日、日本とクワ・トイネ、更に石油大国のクイラとの3国間で正式に国交が樹立された。

 この国交樹立を記念して、日本国内では異世界国家との初の国交締結。条約締結であることから、『ファースト条約』と呼ばれるようになった。

 

 転移後の混乱を水に流すかのように、日本国からクワ・トイネとクイラ王国のインフラ整備に出向いた各分野を得意とする会社が国防軍の護衛の元、インフラ整備を開始し、不眠不休の努力の末に、11月の終わり頃には鉄道と港湾設備、石油採掘プラントの整備が完了し、12月初旬より日本の貿易会社所有の石油資源や食料品を積載した貨物船が両国間を行き交うようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




明日をユメミル様の『後世日本国召喚 新世界大戦録』の第3話から第5話までを参考、引用させて頂きました。

パラレルワールド その1

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