異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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宣戦布告

 

 フェン王国での海戦、陸戦は、日本側の勝利で終結。

 あとは、ニシノミヤコの奪還と敵艦隊の対応を残すだけであった。

 

 ◆ 国防省 統合幕僚会議室

 

「敵艦隊は全て殲滅。数百名が捕虜となりました」

「現在、アメリカ海兵隊は揚陸作業中。特科連隊が合流することによって編成完結となります」

「……ここまで来ると、防衛出動のほうがやりやすいんだがな」

 

 雲野副総隊司令官がうそぶく。

 

「それよりも、向こうの出方が気になります。既に軍事的には圧倒的な敗北ですからね。パーパルディア皇国の性格を考えると、ラインを超えるのでは?」

 

 現状、フェン王国で展開されている戦闘はあくまでも紛争とされている。その先は——-である。

 

「まぁいい。ニシノミヤコの奪還、そして残存艦艇の対応でフェン王国の騒乱は終わりだ」

「はい」

 

 その後、ニシノミヤコにアメリカ海兵隊を中心とした日米連合部隊が突入。

 海兵隊の攻撃ヘリ、国防軍の特科部隊の精密な支援により、ニシノミヤコに駐留していた部隊は壊滅。

 残存部隊全てが降伏。

 揚陸艦隊も同様に全て降伏。

 フェン王国の戦いはフェン王国側の勝利で終わったのだった。

 

 ◆ フェン王国 ニシノミヤコ

 

 ニシノミヤコの外縁付近にある崩壊した家屋の群れを海兵隊の一個中隊が歩いていた。

 彼らはそこらじゅうに転がっている遺体をチェックし、生きているものはいないかどうかを探す。

 

「ダメです」

 

 既にこの中隊だけで約20人の遺体の確認をしている。いや、20人だけ、とも言えた。

 

「フェン王国が避難させてなかったら、もっと犠牲者が出ていたに違いない」

 

 中隊長は周囲の警戒をしつつ、瓦礫をどかす。

 また瓦礫の下に遺体があった。

 

「……」

 

 ダメであった。

 中隊長は左手を自分に胸に当て、右手をここで亡くなった遺体に手を載せる。

 

「せめて、次は戦争のない幸せな世界で生まれてくれ」

 

 部下に指示をして、遺体を通りにまとめさせる。

 すると『中隊長』と無線から呼び出しを受ける。

 

「どうした?」

『その通りの先の広場に来てください』

「分かった。何かあったのか?」

 

 中隊長は駆け足で広場に向かいながら問い返すも、返答は来なかった。

 

「何があったんだ」

 

 1分走り、広場に着く。

 広場の真ん中で人集りひとだかできていた。

 

「何があった!」

 

 中隊長の問いに誰も答えず、中隊長は人混みを掻き分ける。その先にあったものは——

 

「……っ!」

 

 遺体であった。レイモンドの。

 

「間違いないのか……」

「はい。大尉の持つIDと一致しました。間違いなくレイモンド大尉です」

「……」

 

 中隊長は動かないレイモンドを見つめる。頭部が銃撃により大きく抉れており、原型を留めていなかった。

 

「総員、作業やめ。たった今、勇敢なる戦士の最後の場所を見た。総員——-

 

 中隊長は涙を流しながら一言、発した。

 

「——敬礼」

 

 その場にいた隊員が敬礼をする。

 最終的に中隊長が『直れ』と言うまで敬礼は続いた。

 

 その後、この悲報は全国ニュースとなり、日本中が彼を殺したパーパルディア皇国と、彼を助けられたかもしれない日本国政府に深い怒りの矛先を向けるのだった。

—————————————————————————————————— 

 ◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 第一外務局局長室では、今後の日本に対する措置について、アルデを交えて話し合いが行われていた。

 

 第一外務局長エルトが発言する。

 

「間もなく皇国陸戦隊がフェン王国の首都アマノキを落とす頃ですね。レミール様、本当に現地の日本人観光客は殺処分してもよろしいのですか?」

「良い。今度こそはもっと多くの日本人が確保出来るだろう。蛮族には、しっかりと教育をしなければ分からないようだ……やはり、ニシノミヤコで日本人を1人も押さえられなかったのは痛かったな。アルデよ、アマノキでは確実に日本人を捕縛しろ。ニシノミヤコのように、アメリカ人1人などではなくな」

「はい、分かりました」

「で、その後の事だが……」

 

 ドアがノックされる。

 

「入れ!」

 

 次長ハンスが汗をかきながら入室してくる。

 

「本会合に関係ある内容でしたので、失礼とは思いましたが、文書をお持ちしました」

 

 次長ハンスは局長エルトに対し、文書を差し出す。

 

『緊急調査報告書』

 

 そう書かれていた5枚程度の簡単な報告書が机上に置かれる。

 次長ハンスは報告書の概要を口頭で説明する。

 

「ムーがフェン王国での戦いに関し、日本側へ観戦武官を派遣した事案につき、ムー大使に事実確認とその意図を調査した結果の報告書になります」

 

 ムーが観戦武官を日本側へ派遣した事を知っていた第一外務局は、ムーの意図を計りかねていた。

 

「結論から申し上げますと、ムーはフェン王国での戦いは日本が勝つと判断しています」

「なんだと!」

「ハンス!どういう事だ!?」

「ムーは、自らが入手した情報を分析した結果、今回の戦いは日本が勝つと思っているのです」

「まさか——」

 

 アルデは恐る恐ると言った様子で話す。

 

「日本はこうなることを予め予測していたのでは? もしそうなら、ムーも一眼を置くほどの情報収集能力を持ち、適切な戦力を運用できるだけの力量を持っている可能性が……」

「なるほど。ムーが観戦武官を派遣するのも分かる……」

 

 エルトが報告書の半ばに書かれている一文に注目する。

 

 ——『アメリカ合衆国との関連性あり』

 

「アメリカ合衆国との関連ありとはどう言うことだ?」

「はい。ムー大使からの情報で、日本を介してアメリカ合衆国と交流していると」

「……何かしらの情報ではなく、全容を掴んでいるのでは?」

 

 アルデのその言葉に局長室にいる全員が顔を青ざめる。

 

 すると、雑なノックの後に汗にまみれた第一外務局の若手幹部が入室してくる。

 

「失礼します!!」

「何だ!!」

「フェン王国に派遣していた皇軍は、戦列艦隊、補給艦隊、竜母艦隊、陸戦隊、すべて全滅。残ったニシノミヤコ守備隊と揚陸艦隊は、日本国とフェン王国の連合軍に降伏しました」

「な……何だと!?」

「ば、馬鹿な!! 何かの間違いではないのか?」

 

 誤報ではないかと指摘するアルデ。

 パーパルディア皇国軍は、フェン王国を落とすために十二分な戦力を整えていた。送り込んだ兵力はフェン王国を落として余りある戦力だった。

 

 誰もが顔面蒼白となる、その時だった。

 パリン! と、カップを落として割れる音が鳴り響く。

 レミールであった。

 

「フェン王国という文明圏外国家ばかりか、日本に負けただと!!!」

 

 レミールの脳裏に生意気な2人の外交官の顔が浮かぶ。

 おそらく、今回の件で強気に出てくる日本の姿が容易に想像できる。

 

「蛮族めぇぇぇぇ!!!!」

 

 奇声の様な声を上げるレミール。

 レミールの目は血走っている。

 フェン王国で、皇国が敗れた事はすぐに各国に広まるだろう。

 

 これ以上の悪いことが起きる予感がし、軍の最高指揮官アルデは逃げるように退室した。

 

「列強たるパーパルディア皇国がここまでコケにされた事を許すわけにはいかない!!! 日本国を殲滅するしかない!!! エルト!!」

 

 エルトは椅子から飛び上がる。

 

「陛下に許可をもらいに行く。殲滅戦の準備をしておけ!!!アルデにも伝えろ!!!」

「ははっ!!!」

 

 レミールは退室した。

 

 残された第一外務局の職員は硬直していた。

 

「全員動け!!」

 

 エルトのその一言で職員らが動き出した。

 

 戦争の第2歩が動き始めた。

 

 

 ◆ 同国 デュロ 陸軍基地

 

 パーパルディア皇国三大陸軍基地に数えられるデュロ陸軍基地。

 ここは陸海軍共用基地となっていて、港には多数の戦列艦が停泊している。

 

 そんな基地を一望できる山の中腹に、デカい図体の望遠カメラを構えた人の姿があった。

 それらは、一見して分からない様に、迷彩服の上から偽装服を着込み、レンズの反射を防ぐためにカバーを掛けてあった。

 

「……」

 

 日本国情報庁、特殊作戦執行部の東堂(とうどう) 紗季(さき)であった。

 既にここに張り込んでから1週間近く経っている。

 

(張り込んでから1週間、未だに姿を見せず、か……噂は噂だったのか?)

 

 彼女がここに来た目的。

 エストシラントのとある居酒屋で皇国軍幹部らしき人物らの会話を盗聴していた潜入班はある会話を聞いた。

 曰く。『デュロにワイバーンロードに対して撃墜判定を叩き出す高性能な対空魔法がある』という。

 東堂は陸路で馬車を乗り継ぎ、デュロへと到着。

 現地で情報を収集するものの、それらしい情報は無く、張り込みすることとなった。

 

(気が滅入りそうね……)

 

 時折、周囲を警戒しつつ基地の偵察を行う。

 衛星の映像画像だけは把握できない場所の記録。ローケーションの把握。

 やることが多い。だが、それをこなすには粘り強く観察しなければならない。

 欠伸をすると、滑走路脇の広場に何かが牽引されてくる。

 

「ん?」

 

 カメラをズームする。

 馬鹿でかい鉄の塊の様なものがあった。

 

「なにあれ?」

 

 写真と映像の同時撮影を開始する。

 半円形の物体に鉄の棒が突き刺さっている。

 

「あれが噂の対空火器?」

 

 しばらく見ていると、布を曳航しているワイバーンが数騎飛行してきた。

 すると、例の物の砲身にアニメなどで出てくる魔法陣が出現する。

 かなり離れた場所でも、目視で確認できるほどだった。

 

「お?」

 

 すると、砲身に光の粒子が集まり、銃弾を猛烈な速度で発射していく。

 砲火はワイバーンが曳航する標的を次々と撃ち抜いていく。

 

「……」

 

 その光景を写真を映像に収める。

 

「脅威ね。少なくともエリコンかブローニングレベルの機関銃と言ったところかしら」

 

 そして、10秒弱に攻撃の後に突然収まる。

 砲身から多量の煙が出ていた。

 

「……」

 

 その後、しばらく見張っていたものの、それ以上射撃することなくどこかの格納庫に撤収していったので、東堂も機材を回収し、撤収する。

 

「急いで報告ね」

 

 このことはエストシラントにある潜入班本部から情報庁へと送信、統合幕僚本部へと議題に上がることになった。

 

「まずいですね。概算のデータだけなら中高度を飛ぶジェット戦闘機が撃墜される可能性があります」

 

 そう発言したのは高射幕僚だ。

 

「データが十分ではないため、断言できるほどではありませんがもしこの通りなら、我に十分な脅威であると言えます」

「仮にデュロの工業地帯や基地を爆撃するとなると、ストライクパッケージの進出、あるいは巡航ミサイルによる攻撃になります」

 

 デュロに配備されている未知の対空兵器の対応するための議論を雲野が止める。

 

「……詳細な立案は後にしよう。それより、先程政府から停戦交渉に備えろ、とのお達しが来た」

 

 雲野がダンっと、机に紙束を放り投げる。

 

「これ以上パーパルディア皇国を刺激するような真似は避けろ、とのことですか?」

「その通りだ。ま、ムーの情報通りなら実質的な敗北を認めることになる。そんなこと、我々が彼らの立場だったら屈辱でしかない。そんなもの、到底受け入れられないだろうな……」

「はい……」

「それより司令、パーパルディア皇国の攻撃計画の立案は継続でよろしいですね?」

「あぁ。だが、面倒な戦争になるな、これは」

 

 雲野のその言葉に一同顔が暗くなる。

 パーパルディア皇国の性格は外務省からだけではなく、ムー共和国軍からも伝わってきている。民間についても同様だった。

 既に幕引きを図るタイミングを失しているように感じる。

 

「はぁ。どう幕引きを図るのだか……」

———————————————————————————————————

 ニシノミヤコ解放から2週間後。

 邦人や外国人として初の死者となったレイモンドの軍葬が横谷基地に併設されている国立墓地にて行われていた。

 

 参列者は親族のみならず、日米両政府、両軍関係者、そして三笠も来ていた。

 

「まさか日本人があんなことをするなんてな」

 

 ウィリアムが愚痴ともおぼつかない言葉を言う。

 

 レイモンドの棺を横須賀基地からここの墓地に来るまでの間、警察の先導を受けて霊柩車が走行したのだが、その沿道で多くの日本人が星条旗を掲げて旗を振っていたのだ。

 中には、クレーン車に巨大な星条旗を吊り下げているものもいた。

 

「あぁ。誰もがレイモンドを悼んでいるんだろう」

 

 ジェームズが星条旗で覆われた棺を遠い目で見る。

 棺は海兵隊員6名の手によって運ばれる。

 やがて棺が台座に収められ、式典が始まる。

 

「———」

 

 だが、ウィリアムは発せられるその全ての言葉が、ひどく薄く、ペラペラにしか感じられなかった。

 

 関係者のスピーチが終わり、儀仗銃を持つ兵士が整列する。

 

「装填——-撃て」

 

 それを13回繰り返し、散って行った戦士への慶弔を示す。

 全ての行程を終え、いよいよ棺を埋めるための準備に入る。

 棺に覆い被せられている星条旗をキビキビとした動作で13回、三角形に折り畳まれる。

 独立戦争を三角帽を身につけて戦った戦士をイメージするために、そう畳まれる。

 三角形に折り畳まれた星条旗を頭より上に上げたまま、レイモンドの妻の元へと歩いていく。

 一度敬礼をし『アメリカ合衆国大統領、アメリカ合衆国軍および感謝する国民を代表して、あなたの愛する人の名誉ある誠実な奉仕に対する感謝の証として、この旗を受け取ってください』と言った。

 星条旗が妻へと渡される。

 そして、埋葬となる。

 葬送ラッパとともに、棺が収められ、埋められていく。

 

「敬礼!!!」

 

 号令によって兵士たちは敬礼を、政府関係者や参列者は右手を胸に当てて三十度の敬礼をする。

 

 葬儀は終わった。

 

 政府関係者や参列者はすぐに帰って行ったが、親族や妻、レイモンドとジェームズは残っていたが、親族も3人を残して帰って行った。

 

 墓地に3人が佇む中、空をどんよりとした雲が覆っていき、雨が降り始めた。

 

「どうして.......」

 妻が星条旗を抱えたまま、目の前にある墓石に言う。

「っ……」

 ウィリアムは下唇を噛む。

 あの時、無理矢理にでも連れて行けば……

「よせ。今更何を言っても、レイモンドは戻ってこない」

 どうやら口に出ていたらしい。

 ジェームズに肩を叩かれる。

「……馬鹿野郎が」

 それが、今のウィリアムに言える精一杯の言葉だった。

 

 そんな3人の姿を、敷地内の小高い丘から眺める人影があった。

 

「……まさか、転移後初の犠牲者が日本人でなく、海外邦人。しかもアメリカ人で国連軍とはな」

「はい」

「……日本は強硬論へと傾きつつあるが、軍はどういう状況かの?」

 

 見た目に似つかわしくない口調で話す人物。三笠であった。

 

「副官経由で話を聞いていますが、羽崎陸軍参謀総長を中心にパーパルディア皇国に対する報復論で沸いています」

「……」

「申し訳ありません。ストッパー役の私が辞めることになってしまい——」

「もう過ぎたこと。それよりも、次をどうするかじゃ」

「——はい」

 三笠の言う通り、事態は進みつつある。それの対応を考えなければならない。

「この東京で、再び政府、陛下に銃口を向けさせるような事態を起こしてはならぬぞ」

「は……」

 そう言うと、三笠はコートのフードを被り、墓地から去って行った。

 

「は〜」

 1人残った白井は、駐車場に向かいながらため息を吐いた。

 あの御仁と話すのは疲れる。

「ん?」

 自身の車の横で傘を差し、こちらを見ている男がいた。

「誰だ?」

 帽子に掛かる水滴を払いながら近づくと、見覚えしかない顔があった。

「は〜。北海道にいたんじゃなかったのか? 佐山」

 そこにいたのは前首相の佐山 譲二であった。

「悪いが隠居生活もできそうな状況じゃなくなったんでね。上京してきたわけさ」

 白井は周りを見ると、ため息を吐きながら言う。

「……まぁ、取り敢えず車に乗れ」

「おう。悪いな」

 前首相なのにSPがいないことで察してしまったのだ。

「か〜……警備課に連絡はしたのか?」

「一応。その上で警護はいらないことを伝えた」

「了解。取り敢えず、朝霞の“浦賀”に行くぞ」

 浦賀とは、会員制のバーのことで、利用者は防衛省勤務者が主な場所だ。

「プライベートか?」

「バカ。副官と会うんだよ。羽崎の動向を調べさせてる」

「……羽崎?」

「あぁ。国防軍の中でも屈指のタカ派だ。それが色々と動いてるらしくてな」

「……色々ね〜」

 国防軍のタカ派が動いている。それだけで佐山はある程度のことを察した。

 

 車は“浦賀”に着く。

 白井が車を降りると、佐山も付いてこようとしたため、それを制止する。

「待て待て」

「ん?」

「ん、じゃねぇ。一介の幹部が元総理に会うとなったら緊張して話にならない可能性があるんだぞ」

「でも前首相だぞ?」

「……」

 両腕を広げて首を傾げさせる。そういえばこいつ元総理だった。

「OK。来い」

「分かった」

 2人はバーに入り、指定していた部屋に入る。 

「白井さ……佐山前首相?」

 部屋で水を飲んでいた副官が白井に隣にいる佐山を見て驚き、立ち上がる。

「し、失礼しました。佐山前首相」

「気にしなくていいよ。白井に無理を言ってついてきたんだ」

「そう、ですか」

 白井と佐山は座るのを確認した副官も椅子に座る。

「よし。早速だが、状況は?」

「はい。羽崎参謀総長ですが……友恵ともえ会メンバーの幹部を中心としてクーデターを画策しているのは、ほぼ確実です」

 副官のクーデターという言葉に佐山が目を見開く。

「確実なのか……」

「はい」

「羽崎だけではなく、友恵会までもか……」

 友恵会とは、防衛大出身者の陸軍幹部らが入会している会だ。だが、その構成メンバーはタカ派の集まりだ。

「……副官。お前の予想でいい。俺にも声が掛かると思うか?」

 白井の問いに副官は一時を置いて答える。

「はい。白井さんの影響力は無視できないものです」

「……わかった。このことに勘づいている奴はいるか?」

「いえ。私が思う限りでは誰も」

 白井が大きなため息を吐きながら頭を抱える。

 事態は自身の予想を遥かに超える深刻さだ。

 何をキッカケに爆発してもおかしくない。

「何がトリガーになってもおかしくないな」

「白井さん。どう対応を——」

「したところでどうなる」

「え?」

 予想外の一言に、副官の思考が停止する。

「司令官としての肩書きあった頃ならともかく、今は総理から直々に解任を言い渡された元司令官だ。国防軍に強い影響力があるとはいえ、クーデターを画策している連中に言葉は通じない」

「……」

 白井の強い言葉に、副官も佐山も言葉を失う。

「——すまん。言い過ぎた」

 そう言うと、一万円札一枚を机に置いて店から出て行った。

 すると、副官のスマホから着メロが鳴る。

「……はい。岩見(いわみ)一尉です。はい。佐山前首相だけです。はい——-」

 階級を出したということは、幕僚からの電話だろうと推察する佐山。

「——-え? わ、分かりました」

 副官の顔が戸惑いの表情に変わる。

「すいません。司令官代理から緊急の呼び出しが入りました。佐山前首相も来てください」

「俺も?」

 自身を指さしながら聞き返す。いくら前首相だったとはいえ、今は一般人に過ぎない身分だ。国防省などに気軽に入れるものではないのだが……

「SPもつけていない前首相を1人にするな。連れてこい。と、言われました」

「……すいません」

 平謝りするしかなかった。

 

 2人は店を後にし、駐車場に止まっている車に向かった。

「お疲れ様です。岩見……一尉。 え? 佐山前首相?」

 フロントにもたれ掛かっていたドライバーが佐山の姿を認めるなり、目が点になる。

「三村三曹、悪いけどこの通り」

「……分かりました」

 

 その後、3人は国防省へと移動し、副司令官室へと案内される。

「佐山前首相。国防軍総隊司令官臨時代理を務めています、雲野海将です」

「突然の訪問、大変申し訳ありません。ですが、一民間人である私がなぜこのような場所に……」

 先程とは真逆の言葉遣いと態度に副官が『え?』という顔になる。

「確かに今は民間人であることに間違いはないでしょう。ですが、それを通り越してでも、あなたに伝えなければならないことがあります」

「……」

 クーデターの件かと聞こうとしたが、佐山は雲野が友恵会のシンパであることを警戒して言わなかった。

「なんでしょうか?」

「先程、外務省から各省庁に通知がありました。フェン王国での武力衝突の和平交渉を行うために派遣された外交官に対してパーパルディア皇国が———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ——-パーパルディア皇国が宣戦布告をしたそうです」




 回りくどすぎて時間がかかりましたが、ここまでこれました。
 

内閣総理大臣 上野の運命

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