異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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(無限に広がる大宇宙 2199版)

 西暦2048年 日本は異世界へ転移した 日本はその後異世界国家 クワ・トイネ公国とクイラ王国と国交締結、条約を締結した しかし国交締結後 日本はこの世界において自分たちが隔絶していることを知る この混沌とした世界で日本がすべきこととは 


不穏

 日本とクワ・トイネとの国交成立から一ヶ月近くが経過し、既に両国との間では民間に限った交流が始まっていた。

  特に盛んなのが技術交流だ。日本は『技術流出防止法』を制定。しかしその法律の許す限りの、また民間技術、書店からの本から、クワ・トイネとクイラの両国は日本から輸入した科学技術を応用し、拾得した技術を基に自国の発展に生かしつつあった。

 

 経済都市マイハークの町は以前とは打って変わり、道路整備と鉄道整備が進み、穀倉地帯から首都へと続く町にある駅には資材や食料品を積載した電動機関車が行き交い、アスファルトで塗りかためられた道路にはトラックやバイク、馬車が頻繁に行き交う姿が見受けられる。

 無論、クイラにもクワ・トイネから鉄道を使って石油や鉱物資源の運び出しや、食料品が運び込まれた。そのため、クイラは建国以来の好景気に沸いていた。

 しかし、その好景気を喜びつつも浮かない顔をしている者もいた。

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 西暦2049年 1月9日 日本国首相官邸 総理執務室

 

 

 執務室に明らかな不機嫌オーラを放出している者が1人。

 

「で、新年早々何の用?」

 

「うっさい。総理だから休みなんて存在しねぇ」 

 

「は〜」

 

 佐山と白井のやり取りを呆れながら聞く箕輪私設秘書。

 

「それで、報告したいことって何?」

 

 お喋りはここまでだと言わんばかりの気迫で話す佐山。

 

「これを見てください。いや、見ろ」

 

 端末を佐山に見せる白井。

 

「ん?」

 

「パーパルディア皇国は知ってるよな?」

 

「確かフェン王国とクワ・トイネ公国からの情報があった国か」

 

「ロウリア王国も知ってるよな?」

 

「門前払いされた国か..........」

 

「あぁ、そのロウリア王国から出港を確認されたパーパルディア皇国籍の船を確認した」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「で?」

 

「で、MQ-5リーパーからの写真だ」

 

 そこには鱗を持った異世界生物の—

 

「ワイバーンか.........」

 

 の姿があった。

 

「クワ・トイネ公国からの情報だとロウリア王国はここ最近急速に勢力を増したらしい」

 

「つまり?」

 

「パーパルディア公国からの軍事支援があると見て間違いない」

 

 佐山はロウリアの背後関係に頭を悩ます。

 

「パーパルディア皇国は要注意国家としてマーク。荒米、背後関係を特定しろ」

 

「わかりました」

 

 荒米情報庁長官が返事をする。

 

「広瀬。戦争になった場合どうする?」

 

「なぜ俺に聞く?」

 

「一応大臣だろ?」

 

「飾りのな。白井説明頼む」

 

 広瀬は白井に投げる。

 

「えーと。まず国連軍に紛争調停、もしくは平和維持派遣の名目でうちと一緒に参戦という形にする」

 

「つまり遅れて参戦するということか..........」

 

「国連とは刷り込みが終わってるんだろ?とっとと話せや」

 

「おかしいな。会談の内容は誰にも知らないはずなのに?」

 

 白井はポケットから何かを取り出す。

 

「...........盗聴器か」

 

「ザルだから助かる。おかげで何もかも聞いたよ」

 

「あの.........」

 

 たまりかねず箕輪が口を挟む。

 

「どうやって盗聴器を?定期的に警察、保安隊が検査をしてるはずですが.........」

 

「甘いね。俺の人脈舐めんなよ」

 

 箕輪の額に青筋か浮かぶ。

 

「あなたを警察に通報できますけど?」

 

「どうぞご自由に」

 

「くっ..........」

 

「そこまで。白井、盗聴器を撤去しとくように」

 

 一触即発の空気を佐山が一言声を掛け鎮める。

 

「はい」

 

「で、話を戻すが、国連にほぼ丸投げでいいのか?」

 

「あぁ。国連海軍第1艦隊(旧アメリカ第7艦隊)と国連海兵隊第100混成旅団にうちの先遣隊として第一戦隊、第1潜水艦隊、第7機動部隊、第1駆逐隊。陸軍は第7機甲師団、第2重機械化師団。空軍は各航空団からAS-2ハヤブサと、F-4A。そこにBP-1、AP-1を派遣する」

 

 先遣隊の規模...........海軍艦船はおよそ50近くという、ある意味多国籍軍艦艇が、陸は日本国国防陸軍から、第2重機械化師団—約9000名。第7機甲師団—約9000名。そして国連から海兵隊第100混成旅団—約4000。第2水陸機動団—2000名。空軍はまだ概算なので正確ではないが、60機近くの空軍機が参加する。何考えてるの?と思った方挙手。

 というか、先陣を切るのは第7機甲師団が持ち前の機動力、装甲化、ヘリコプター、航空機の支援のもと殴り込みをかける算段だ。国連は後詰に過ぎない。

 

「うちの精鋭を送るのか?」

 

 佐山が気になるところはそこだった。第7機甲師団、自衛隊から続く、最強の打撃力、機動力を保有している。第2重機械化師団、師団装備改編に伴い重機械化師団へと変貌したが、自衛隊から続く最精鋭部隊だ。

 本土防衛に問題はない。海上部隊はおよそ一個機動部隊、一個戦隊、一個潜水艦隊がいなくなるが、十一艦隊計画は伊達ではない。3個艦隊がなくなるが残りの艦隊、地方隊がいるので問題ない。

 

「備え有ればなんとかだ。補給は問題ない。クワ・トイネ公国にうちの分屯地があるがそこに3ヶ月分の弾薬燃料を備蓄済み」

 

「後は待つのみか.........」

 

 すると白井の端末が鳴る。

 

「すまん」

 

「そのままでいい」

 

 白井は席を外そうとしたが佐山に止められる。

 

「どうした............ふ〜。了解した」

 

 電話を切る。

 

「なんだって?」

 

「いい報告と悪い報告がある—」

 

「いい方から」

 

 白井が言い切る前に口を挟む佐山。

 

「そうか...........まず惑星、世界地図が完成した」

 

「そうか」

 

「で、悪い報告はクワ・トイネ公国から謎の電文の発信が確認された」

 

 箕輪がそれのどこが悪いのか分からず質問する。

 

「それのどこが悪いのですか?」

 

「うーむ。異世界国家各国からの情報だとこの世界は魔法を基礎として成り立っている。しかしその世界にうちらと同じ科学文明を有してる国.........オカルトが喜びそうな話だったが、ムー共和国という国は科学文明で成り立っているらしい。ただ第1次世界大戦のイギリスレベルだが...........」

 

「WW1なら電信技術はそれなりに発達してるんじゃないか?」

 

 広瀬が疑問を出す。

 

「そうなんだが.........その電信、D暗号が使われてるらしい」

 

「D、暗号?なんですかそれ?」

 

 箕輪がわけわからん的に聞く。

 

「D暗号。第2次大戦当時、日本軍が使用してた暗号だ。陸軍海軍で少し差異はあったらしいが........それはD暗号本体か?発展系ではなくて?」

 

 荒米情報庁長官が説明する。

 

「D暗号本体だ。まぁ優秀な暗号だが、使用頻度が多すぎると簡単に解けてしまう一長一短のような暗号だったがな..........荒米、D暗号の資料残ってる?」

 

「残ってるといいな」

 

 荒米の返事は残ってないという意味だ。

 

「は〜。話を戻すが........これを」

 

 白井が箕輪に部屋のブラインダーを下げるように合図する。

 部屋のブラインダーが下がり、部屋が少し暗くなる。

 白井が目の前の端末を少し操作し、メインモニターに画像を表示する。

 そこには...........

 

「なんじゃこれ?いやロシア語.........?グラ・バルカス帝国か?」

 

「しかもそのあとが問題だ。宛て『グラ・バルカス情報局』」

 

「ふむ.........」

 

「まぁはっきり言ってこの国の素性は全く不明。後回しでいいと思う。ただ、この発信源だけは後で潰す」

 

 白井の言葉に数人体が震える。それだけ白井の言葉に覇気があったのだ。

 

「程々にな」

 

 コンコンコン

 

 執務室のドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

 佐山が入室を促すと扉が開き郡山政務秘書官が話し始める。

 

「ジェームズ・フィパー様をお連れました」

 

「うむ。ご苦労」

 

「こんにちは、佐山総理」

 

「こんにちは、ジェームズ司令」

 

 ジェームズと握手をしながら挨拶する佐山。

 

「まず結果をお伝えします」

 

 座りながら話始めるジェームズ。

 

「結論は、我が軍は派遣を決定しました」

 

「理由をお聞かせ願いできますか?」

 

 するとジェームズは少し笑ったのち話始める。

 

「佐山総理。敬語は要りません。私たちの存在はあなたによって作られたと言っても過言ではありません」

「............我が軍は国連憲章、道義的判断により派兵します」

 

「ありがとう」

 

「いえいえ.........ただ1つ望みが」

 

「なんでしょう?」

 

「我が軍は、いや国連は日本に存在しながらも準独立機関としての権限を与えて欲しい」

 

 佐山は悩む。与えれば反乱を起こす可能性も否定できない。

 佐山はジェームズの目を見る。青色の瞳、純血アメリカの血を引いてるのがわかる。

 

(反乱を起こすつもりは毛頭ない。権限は国連としての存在意義を保持するためか..........)

 

「わかった。国連関係機関を統合し、各国大使を国連大使として........第2の国連を作りましょう」

 

 ジェームズは目を開く。正気か?、と。国連の運営資金は日本が全額負担することになる。しかしこれ以上ないほどのうまい話だ。

 

「想像以上の慈悲です。では貴国の混乱が収まり次第話を詰めましょう」

 

「わかった」

 

 ジェームズは一礼すると執務室から出て行く。

 

「驚いてましたな」

 

 荒米が言う。

 

「粂川が聞いたら真っ先に反対するだろうな」

 

「まぁ反対するのは真に国のことを思ってるからな」

 

 佐山は手を2回叩く。

 

「さぁ、今日の秘密会はここまで。各自自分の案件に対処するように」

 

 執務室にいる全員が各々の返事をする。

 

「箕輪。この後の予定なんだっけ?」

 

 箕輪は手帳を見てすぐに返事をする。

 

「えーと。経済連との食事会があります。その後幹事長との会談—」

 

「—うげ、あの野郎と.........」

 

「それ、幹事長が聞いたら何をしでかすかわかりませんよ」

 

「言うだけならタダだ」

 

「あなたのその図太さは尊敬しますよ.........」

 

「ありがとう」

 

「褒めてませんって」

 

「さぁ仕事だ」

 

 佐山は気を少し引き締めて執務室から出た。

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 中央暦1635年 ムー共和国 オタハイト 

 

 

 こじんまりとした部屋に20歳ぐらいの若い男と50歳ぐらいの初老の男が、机を挟み、話していた。

 机の上には魔写がある。この魔写は先日神聖ミシリアル帝国天文観測所で撮影されたものだった。

 

「私から見ると明らかに艦です」

 

 そう話すのはマイラス・ルクレール少尉。ムー軍で歴代最優秀と言われている逸材だ。

 

「そうか..........しかしこれは明らかに宇宙を飛んでいる。伝承の魔法帝国の僕の星なのではないのか?」

 

 そう言ったのはマイラスの上司、ウルゲン・ハイル大佐であった。

 

「宇宙空間で艦を浮かばせるなどできないですからね..........しかしこの出所はミシリアル帝国政府中枢からですよね?欺瞞情報を掴ませるようなことは低いと思います」

 

「は〜。仕方ない、これはどうしようも無い、後回しにしよう」

 

 ウルゲンは解析すらできないため棚上げにした。

 

「最近パーパルディア皇国がロウリア王国に軍事支援を行っていることは知っているな?」

「はい.........ですが国としてではなくある機関が独断でやっているとか?」

 

 軍事支援を行うことは知ってるとしても、どの機関が、または国が行っているのか特定できたのはさすがムーだと言えるだろう。

 

「まぁその話は関係ないんだがな」

 

 マイラスはずっこける。てっきりどのような軍事支援内容かを調べてきた諜報員からの報告の分析を頼まれると思っていたからだ。

 

「クワ・トイネ公国。ロウリア王国と緊張状態にある国だが妙な存在を確認された」

 

「妙な?」

 

「クワ・トイネ公国と新たに国交を結んだ国、新興国家日本というそうだが..........どうやら我が国の技術レベルを遥かに上回っているらしい」

 

 ウルゲンが言った、『技術レベル』とは、魔法などではなく、科学技術レベルの意味である。

 

「なっ!?最近噂のグラ・バルカス帝国でさえ我が国を上回るというのに.......」

 

 グラ・バルカスの存在を確認されたのはつい最近だ。第2文明圏のさらに西の西方国家群が容赦なく併呑されているという噂だ。奇跡的に得られた情報によると、技術格差はおよそ30年あるとされている。しかし、まだ全貌が明らかになっているわけではないので、変動するだろうが。

 

「よってマイラス君。君はアルタラス王国経由でクワ・トイネ公国に入り、日本国に関する情報を入手せよ」

 

「はっ」

 

((面倒な事になってきた.........))

 

 2人の思いは共通していた。

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 2ヶ月後

 

 マイハーク 日本大使館

 

 

「仙崎大使、ヤゴウ様が至急お会いしたいとの事で、応接間に来て頂けないでしょうか?」

 

 マイ・ハーク近郊に設けられた日本大使館で、仙崎は突然の来客者に驚きつつもヤゴウと会う。

 

「その節はお世話になりましたヤゴウさん。何やら火急の用事があるとお聞きしましたが?」

 

「はい...........隣国のロウリア王国についてはご存じでしょうか?」

 

「えぇ。我が国もロウリア王国に接触を図っているのですが、中々我々には応じてくれないようでして。それが如何したので?」

 

「我が国とロウリア王国の軍勢の動きが最近活発しているそうで、ロウリア王国軍が我が国への侵攻を見越した準備を開始しているとの情報が入ったのです」

 

 不穏な話題に仙崎の表情が険しくなる。

 

「程なくして我が国はロウリアとの戦争になるかもしれません...........そうなった場合、都市のいくつかを放棄しなければならないでしょう。その都市の中には貴国に輸出する穀物を作っている穀倉地帯も含まれているのです。もしそこがロウリアに押さえられれば、貴国への輸出は...........」

 

「ここまで来て.........何と言う事だ..........」

 

 仙崎は歯を食い縛り、せっかくの努力が水の泡になりかねない事態に曇った表情となる。

 

「私は貴国で見せていただいた光景を片時も忘れた事はありません。仙崎さん!」

 

 ヤゴウは仙崎に詰め寄り、真剣な表情で訴える。

 

「貴国から援軍をお願いします!」

 

「それは.........軍事支援要請と言う事でよろしいですか?」

 

「はい」

 

 仙崎は目を閉じて考える。

 

(最近本国の戦力転換が激しいと報告があったな........これはまさか..........)

 

 仙崎はある可能性にたどり着く。

 

(本国は戦争参戦に躊躇いはないということか.........根拠が乏しいがそれになぞらえるようにしよう。後は派遣の口実作りか...........クワ・トイネ公国に万が一の責任を取ってもらう事になるが仕方ない)

 

その場でヤゴウに仙崎は返事を出す。

 

「ヤゴウさん。援軍の件につきましては、私が責任を持って本国に届けます」

 

「本当ですかっ!!」

 

「はい。ですがおそらく本国は口実を欲しているはずです」

 

「口実、ですか...........」

 

「はい。その口実、軍事支援要請を文書にて送ってもらいたいのです」

 

「その程度で貴国からも支援が得られるなら文書くらい安い物です」

 

「ありがとうございます」 

 

 その日のうちに、クワ・トイネ公国からの要請は日本の佐山の元へと届けられた。

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 同日 首相官邸 大会議室

 

 

「現地大使館からです。『クワ・トイネ公国からの軍事支援要請』、内容は総理の予想通りです」

 

 宇治和外務相が報告する。

 

「広瀬。待機中の全部隊に行動開始を下命。『世論、議会は一切気にするな。法律、国際条約範囲内なら何しても構わない』と。全責任は私にある」

 

「まぁ、そこまでは言わないけどね。白井、待機中の部隊に通信、『異世界の夜明けは東から』と」

 

「了解」

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 日本国 奥尻基地

 

 

 ここ、北の島にある港を母港としてるのは第1戦隊、第3護衛艦隊、第8遠征打撃軍の3個艦隊である。

 そして奥尻島にある3本の滑走路を備えた基地は第3護衛艦隊第3空母航空団、第3空母ヘリコプター団。空軍の第1航空大隊が本拠地としてる。

 そして山の麓にある駐屯地は第2水陸機動団、第2高射特化部隊の駐在地となっている

 

 第3護衛艦隊旗艦『そうりゅう』FIC

 

 

「『異界の夜明けは東から』ね〜。作戦名は『森の盾』?。絶対総隊司令だ..........何このダサい作戦名は..........」

 

「藤堂司令、あんまり総隊司令の悪口を言うと、司令の耳に入りますよ」

 

 第3護衛艦隊司令の藤堂咲に警告したのはそうりゅうだ。

 

「あの人、どこからともなく情報を仕入れてきますからね」

 

「おー怖い怖い」

 

 全く怖気付いてる様子のない藤堂。

 

「ふふふ。さあ出港しましょう」

 

「錨上げ!!」

 

 投錨されていた左舷の錨が巻き上げられる。

 

「舫い上げ!」

 

 舫が巻き取られる。

 

「誘導舫、放て!」

 

 誘導舫がタグボートに向けて投げられる。

 出港の準備が整う。

 

「さぁ元気にお願いね」

 

「任せてください」

 

「すー。出港用意!」

 

 航海長妖精が声を張り上げる。

 それに合わせて航海士妖精が見事な出港ラッパを鳴らす。

 

『出港用意!!』

 

 港に響く出港用意の声。

 出港ラッパは、機械による音声再生に変わろうとしていたが、護衛艦勤務の隊員全員が反対。

 誰もが旧海軍、旧自衛隊時代からの伝統を変えたくなかったのである。

 

「両舷前進最微速!」

 

「両舷前進最微速。黒5」

 

 航海士がテレグラフレバーを『最微』まで上げる。

 

「艦隊合流地点まで5km」

 

「第1戦隊を確認」

 

「両舷第3戦速。黒20」

 

「両舷第3戦速。黒20」

 

 テレグラフレバーをさらに上げる。

 

「第1戦隊、艦隊前衛に就きます」

 

 航海士が『ながと』を見ながら報告する。朝日を浴びながら航行する『ながと』の姿は美しかった。

 

「艦隊速度全艦連動。第2戦速」

 

「第2戦速。黒10。全艦連動」

 

 第1戦隊、第3護衛艦隊、第8遠征打撃軍は朝日を浴びながらクワ・トイネ公国を支援するために向かう。

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 2日後 マイハーク沖 マイハーク人工島

 

 

 マイハーク港の沖合5kmに日本が作った人工島がある。その人工島のほぼ中心部に今回の派遣部隊司令部があった。

 

「第8遠征打撃軍は第2水陸機動団の揚陸作業を開始しました。終了予定時刻は1500です。すでに国連軍海兵隊第100混成旅団は揚陸終了。空軍戦闘機、攻撃機、爆撃機、早期警戒機の計65機はすでにクワ・トイネ公国のエジェイ基地にて待機中。海軍の第3護衛艦隊、第7機動部隊、第1駆逐隊、第1潜水艦隊が遊弋中です」

 

「しかし.........なぜこんな大規模派兵になったんだ?2個師団2個旅団って.........。まぁ考えても仕方ない」

 

「それにしても、国連軍は面白いですね」

 

「何がだ?」

 

「こう、かなりの多国籍、自国製なのに弾薬燃料は全て共通化されてますからね」

 

 彼の1番のお気に入りはドイツのレオパルト2A8がお気に入りであった。

 

「まぁその費用は日本持ちだけどな」

 

 そう、全て日本持ちである。もう一度言おう。全額負担である。

 

「まぁ予算は財務省だ。うちには関係ない」

 

 話が脱線しているので猪瀬高級参謀が咳払いをする。

 

「ゴホン!。話を戻します。現在、稼働可能なヘリ、輸送機は全てギムの避難輸送に充てています。現在の避難状況は全体の0.5割が完了したとのことです。車両部隊が到着すれば効率は良くなるはずですが.........なんとも.........」

 

 派遣部隊司令官『小野大地』は顔を僅かにしかめる。

 

「まずいな。ロウリア王国軍が侵攻するまでおよそ5日だって言うのに」

 

「時間稼ぎが必要です。自分は第2水陸機動団の第31機動連隊、第12空中機動大隊。国連軍海兵隊第100混成旅団は揚陸を終了しています。早急に向かわせるべきだと...........」

 

 小野は横にいたアメリカ人、UN海兵隊第100混成旅団参謀のカール・シュナイダーを見る。

 カールはすぐに答える。

 

「我が隊は既に準備を整えています。命令が有ればすぐに動けます」

 

 え?なぜ国連軍が日本軍の指揮下にあるって?さっきも言っただろう、国連軍の資金は全て日本が負担していると。もう一度言おう。全額負担である。

 しかし、今回の件は国連軍が自ら望んで指揮下に入ったと言うのが正しい。この判断は国連軍アジア司令部司令官ジェームズの判断だ。なぜ?まず彼の個人的動機。彼は日本に救われたからである。これは後々解説する。そして組織の目的。自分たちが食ってけるのは日本が生活資金、燃料など、元々の負担に加えて更に自分達を保護するために金を払っているのだ。つまり...........食客としての務めを果てす.........ということである。

 

「わかりました。貴隊はすぐにギムに向かい避難民輸送任務に当たってください」

 

「了解」

 

「ふー。予定通りだが—」

 

 小野は顔の表情をキッと引き締める。

 

「—戦争は予定を狂わす.........気を引き締めないと.........」

 

 小野は職務を遂行する。

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 同日 

 

 

 国連軍海兵隊第100混成旅団の移動の様子を見ている男の姿があった。

 

「なんだあれは!?プロペラが上に付いてる!?それにあれは戦車か?我が国の戦車よりも遥かに大きい。というか設計思想が全く違う.......!?それに形も大きさも全然違う!?実験部隊か?.......主砲はざっと120mmはあるか?」

 

 マイラスはレオパルト2A8、T-14、M1H2を見てそう言った。

 

「あんなのとうちの陸軍が戦ったら—」

 

「手も足も出ずに敗北する。でしょ?」

 

「えっ!?」

 

 当然の声にマイラスは振り向こうとするが、体を後ろから押し倒され動きを封じられる。

 マイラスが首を動かし顔を見ようとするが逆光のせいで見えない。しかし髪が長いことから女だと判断した。

 マイラスがもがこうとすると、

 

 ガチャ!

 

 背中に金属音を鳴らしながら何かを押しつけられる。

 

(銃!?)

 

 マイラスは驚愕する。

 銃という銃を軍で正式採用しているのは神聖ミリシアル帝国とムー共和国しか採用していない。

 最近はパーパルディア皇国がマスケット銃の開発に成功したとの噂を聞いたがレベルが違う。

 

「へー。お兄さんいいもの持ってんじゃん。カメラ?にしてはやたらアクセサリー.........あ、これ魔法写真だっけ?の奴か..........」

 

 マイラスは考えに夢中でバックの中を探られたことに気づかなかった。

 

「あ、銃じゃん」

 

 懐にしまってあった拳銃を抜き取られる。

 

「設計思想はイギリスっぽいね..........あなたここの人間じゃないわね?」

 

「...............」

 

「沈黙は肯定とみなします」

 

「うげっ!」

 

 マイラスは突然首根っこを掴まれて持ち上げられる。そこでその女性の美貌が明らかになる。

 

「!?」

 

 ブラウンの髪に特徴的なアホ毛、背中まで伸ばした髪。そしてブルーの瞳。人間離れした容姿だった。そしてマイラスの視線は.........。

 

 パシィィィィィィン!!!

 

「どこ見てんのよ.........」

 

 マイラスはこんごうの胸部装甲を見て、こんごうから平手打ちを喰らった。

 

「こんごう。何をやってるんだ........」

 

 後ろから複数の声が聞こえてきた。マイラスが首を後ろに振り向けようとする前に、首根っこを掴まれていた手を離され地面に倒れる。マイラスはすぐに起き上がりその声の正体を確かめる。

 屈強そうな男が数人立っていた。その手には見たことのない銃が握られていた。

 

「これ」

 

 こんごうが左手に持っていた拳銃を渡す。屈強そうな男がそれを一瞥すると、

 

「ウェブリー・リボルバー。イギリス製.......兄ちゃんの服装、繊維からすると、WW1のイギリスレベルか?.........おい」

 

 マイラスは聴き慣れない単語に耳を傾けていたが突然呼ばれて体をビクッと震わせる。

 

「お前、ムーの人間か..........」

 

 一瞬で答えにたどり着かれたことに驚愕するマイラス。だが答えを言うわけにはいかない。

 

「.............」

 

「素人でも諜報員か.........よしこんごう。小野司令から『のぞき見るものは排除』という命令に従って—」

 

「ひっ!!!」

 

「—ん?」

 

 するとマイラスが土下座する。

 

「すいませんでした!!私はムー共和国総括軍情報局員のマイラス・ルクレール少尉です!!目的は貴方達の軍の偵察です!!!」

 

 と全てを白状した。マイラスの体は震えている。

 

「お前、軍人というより技術畑の人間か........。あの白に塗られた車両を見てどう思った?」

 

 屈強そうな男が指を指しながらマイラスに聞く。

 

「.........少なくとも100年の差はあるように見えた。だが陸軍では負けてるが海軍にはラ.........」

 

 マイラスは内心、『あ、やべ』と思っていた。ついカッとなって自国の情報を話してしまっていた。

 

「ラ?」

 

「.............」

 

 マイラスは黙ることで抵抗の意思を示す。

 

「はぁ、もういい。こんごう、小野司令がお呼びだ」

 

「了解」

 

 こんごうは敬礼すると駆け足でどこかに行く。

 

「さて、兄ちゃん。彼女に一目惚れしたそうだが........やめといた方がいいぞ」

 

「え?それってふごっ!!!」

 

 マイラスは聞き返そうとしたが麻酔銃を撃たれ、眠りについてしまう。

 

「よし、連れてけ」

 

「うい」

 

 眠ったマイラスを担いで運んでいく。

 

「ここの世界の列強、ムー共和国が目をつけてきた........面白いことになってくるな.........」

 

『こちらalpha05、感度チェック』

 

 不意に圧縮音声越しに声が聞こえてきた。

 

「こちらalpha01、感度良好。どうした?」

 

『ターゲットポジションA-2-6の諜報員を4人確保しました。ロシア語を話しています........総隊司令の読みは正しかったですね、一ノ瀬1尉』

 

 一ノ瀬は髪をガリガリと掻き毟りながら返事をする。

 

「無駄口を叩くな。と言いたいところだが、まぁその通りだ。こっちに搬送しろ」

 

『了解』

 

 一ノ瀬は懐から写真を取り出すと、それを優しく撫でる。情勢は水面下で動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




挿絵提供
 銀柑様
 日本国召喚@wikiより引用
https://w.atwiki.jp/jp-summons/sp/pages/28.html
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 さぁ、なぜ第1戦隊所属のこんごうが諜報員狩りに従事しているのか........それは次回明らかになる。

 次回予告

 国連軍海兵隊第100混成旅団は、命令を受けて全速力でエジェイの避難民輸送の為に向かっていた。その時ロウリア王国はついに侵攻の秒読み段階に入った。

 次回『侵攻阻止』

パラレルワールド その1

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