異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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 晶彦様、誤字報告ありがとうございます。



(無限に広がる大宇宙 2199版)

 国連軍海兵隊第100混成旅団はギムへと到着した 一方、ロウリア王国は侵攻開始まで後1日まで迫っていた そして日本はこの世界の列強国『ムー共和国』に目をつけられたことを知る 日本はまだ見知らぬ世界で生き残る為の道を探り続ける


侵攻阻止

 中央歴1635年 クワ・トイネ公国

 

 

 あぜ道を土煙を巻き上げながら猛スピードで駆け抜ける車両の姿があった。

 その車両は、全てが白色の塗装を施され、各所に『UN』と書かれていた。先頭を走るLAV-25の車内で話している者がいた。

 

「隊長、なぜ全速力で向かうのですか?向こうに着く前に燃料切れになる可能性もありますが.........」

 

 運転手の疑問に車長は、

 

「統合司令部の命令は『後を考えるな。民間人避難を最優先とせよ』だ。それに燃料は向こうで補給できる」

 

「ですがあのエイブラムスの改良型は燃費が良くなりましたね」

 

 運転手は画面に移されている映像を見ながら言った。エイブラムス、主はこう思う。燃費悪すぎ、と。何しろ停止状態で何リットルの燃料を消費したと思う?約46リットルもの燃料を消費するのである。うん、いくらあのデカブツを動かす為とはいえ、ガスタービンを採用したのが原因だね。

 

『Ob's stürmt oder schneit』

 

 ふと無線から歌が聞こえてきた。

 どうやらレオ乗組員がパンツァーリートを歌っているようである。

 

「楽しそうですね」

 

「俺らも歌うか?」

 

「遠慮します」

 

 国連軍海兵隊第100混成旅団は、ドイツ人が歌う『パンツァーリート』をBGMにギムへ向かった。

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 マイハーク近郊の海岸

 

 

 ここで日本国国防軍の輸送艦3隻と国連海軍の強襲揚陸艦2隻が第2水陸機動団の揚陸作業を行なっていた。

 LCACが陸まで上がり、戦車や装甲車、人員を吐き出していく。揚陸された部隊は離れた位置で整列している。その中のうちの一両、30式指揮通信車の中で話し合っている人物がいた。

 第2水陸機動団所属の2尉妖精が指揮通信車の扉を開けて入り、作業をしている団長に向かって報告する。

 

「失礼します。高野団長、現在部隊の8割の揚陸が完了。引き続き作業に当たります」

 

「そうか.........この調子だと夕方に終わるかな?」

 

「はい。予定だと1750に終了です」

 

「そうか、事故に気をつけて」

 

「了解」

 

 指揮通信車から出ていく2尉妖精を見送りながら時計を見る高野。

 

「この調子だと向こうに着くのはギリギリか.........それまで頼むぞ、国連軍」

 

 高野はディスプレイに表示されている国連軍海兵隊第100混成旅団のマークを見ながら言った。

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 マイハーク人工島 統合司令部

 

 

 統合司令部は先ほどからざわめきに包まれていた。その理由は.........。

 

「まずいぞ。このままじゃ避難が間に合わない.........」

 

 彼らの前にあるディスプレイに表示されていたのは、第7機動部隊の早期警戒偵察機E-8Jがリアルタイムで送信している、国境付近に集結しつつあるロウリア軍の姿だ。

 

「隠すつもりもない........それだけ自信があるってことか........」

 

 小野の呟きに、

 

「まぁそうでしょう。日本が参戦しなければ圧倒的な戦力ですからね」

 

 と参謀は同意した。

 

「現在の避難状況は?」

 

 参謀は自分の端末を見ながら説明する。

 

「現在、6割の避難を完了しました........間に合うかはギリギリです.......」

 

「第100混成旅団が向かってるが、多勢に無勢か.........」

 

「はい.........」

 

「司令。こちらを........」

 

 そう言い、写真を見せる。

 

「ん?あぁ、例の諜報員か.........」

 

「はい。こんごう艦長が発見し、特殊作戦群が連行したとのことです」

 

「まぁ、こんごうさんはS入隊資格どころか、そのSから訓練を受けていたらしいからね..........これぐらいは朝飯前だろう。で、そのこんごうは?」

 

「すでに自艦のヘリで戻っています」

 

「了解した」

 

「失礼します!!!」

 

 参謀妖精が声を張り上げる。

 

「第2水陸機動団の揚陸が終了しました」

 

「よーし。第2水陸機動団に下命。『ギムに向かい、ロウリア軍の侵攻を阻止せよ』と」

 

「了解」

 

 統合司令部の命令は第2水陸機動団に適切に伝えられた。

 

「これでなんとか最低限の戦力は確保できた。後は任せよう」

 

 第2水陸機動団は命令を受領し、全速力でギムへと向かった。

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 クワ・トイネ公国 ギム

 

 

 国連軍海兵隊第100混成旅団はギムの入り口に着いた。街の入り口の警備をしている、日本国国防軍隊員に止められる。

 

「強行軍お疲れ様です。第100混成旅団ですね?」

 

 先頭のLAV-25の車長が代表して部隊証を渡す。部隊証を受け取った隊員はそれを腕に付いているデバイスにかざし、認証する。認証を終えた隊員はそれを車長に戻す。

 

「問題ありません。任務頑張ってください!」

 

 隊員は敬礼すると車止めをどかすように指示する。車止めをずらされたことを確認すると車列は進み出す。

 

『各車、所定の位置に付け、車両部隊は国防軍と合流し避難民搬送に協力。それ以外は国防軍が拵えてくれた陣地に配置だ』

 

 戦車、装甲車などが配置につく。

 

「後は待つだけだ.........」

 

 第100混成旅団団長は少ない戦力で40万もの勢力を相手取ることに恐怖を覚える。

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 ロウリア王国侵攻軍 本陣

 

 

「ヒヒヒ、亜人共をいたぶることができるまで後少し........ヒヒッ」

 

 獰猛な笑みを浮かべながら独り言を話す者が1人。彼の名はアデム。ロウリア王国軍の中でも人格が最悪な将軍とされている。

 

「楽しみですねぇ」

 

「アデム君、想像するのは勝手だが、場を弁えたまえ」

 

 そのアデムを注意したのは今回の侵攻軍の将軍『ジューンフィルア』だ。

 

「おっと..........申し訳ありませんでした」

 

 アデムはジェーンフィルアの注意を受けて謝罪する。

 

(本当に面倒くさい男だ.........)

 

 ジェーンフィルアは、アデムの腐った性格にうんざりする。

 

「まぁいい。抜かりないようにな」

 

「分かっております」

 

 ジューンフィルアは地平線に沈みかけてる太陽を見た。

 

「なんだろう、嫌な予感がする.........」

 

 この後起こる様子を頭に想像するアデムをよそに、ジューンフィルアは不吉な予感に身震いするのだった。

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 後日 

 

 

 ロウリア王国はクワ・トイネ公国、クイラ王国の両国に宣戦布告、戦争が始まった。

 国境の町、ギムの避難状況は、不眠不休の搬送によって8割が終了した。

 ギム防衛戦力は国連軍海兵隊第100混成旅団、国防陸軍第7師団第34機動部隊、第10高射特化部隊のみである。

 この僅かな戦力で敵軍40万の侵攻を、阻止とまでは行かないが、避難民の搬送が完了するまで時間を稼がないといけない。

 

「現在第2水陸機動団がこちらに急行していますが、まぁ、会戦までには間に合わないでしょうな」

 

 参謀がそう言った。

 

「エアカバーは空軍、海軍が行ってくれます。露払いは陸軍の高射特化部隊がするでしょうが........」

 

 参謀達があれこれ言うが、つまりは誰にも予想ができない戦いになるということである。

 

「失礼します!!たった今、MQ-9リーパーのカメラが侵攻するロウリア軍を捉えました!」

 

「モニターに出せ」

 

 端末を操作し、ディスプレイに投影する。映像には大地を這いずる大蛇.........否、列を成すロウリア軍40万の姿が映った。

 

「うわー。これを相手取るんですか?」

 

「それ以外に選択肢はあるか?」

 

「ありません」

 

「よし、少ない戦力で時間を稼ぐぞ」

 

「「「「Yes sir!!」」」」

 

 各班長の後ろ姿を見送ると、自身も配置につくためヘルメットを抱えて退出する。

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 ダイダル基地

 

 

 待機室で8人の隊員が思い思いに寛いでいた。突如、警報が鳴る。投影機に表示されたのは『SC』スクランブルと表示された。それを見た隊員と妖精は、椅子から飛び上がって格納庫に走っていく。

 

「オラー!!さっさと飛ばすぞ!!」

 

 機付き長が吠える。

 AAM-4(37式長距離誘導弾)8発、AAM-5(39式短距離誘導弾)8発のミサイルの安全ピンを抜く。それを目視で確認した機付き長はトレーに乗せる。その間にパイロットはエンジンを始動させ、各種テスト項目を確認する。GPSだけがエラーで返ってきた。

 パイロットがキャノピーを閉める。

 

「外せ!!!」

 

 機付きの合図で車輪止めが外される。それを確認したパイロットは機体をスルスルと移動させる。

 

『This is the control tower. Epoch 01, no aircraft scheduled to enter the runway. Allow takeoff as soon as you enter the runway. The current wind direction and wind force is 2 knots from the east.(こちら管制塔。エポック01、滑走路に進入予定の機体はありません。滑走路に侵入次第離陸を許可します。現在の風向、風力は東から2ノットの風です)』

 

「This is Epoch 01, roger. Take off as soon as you enter the runway.」

 

 F-4Aが滑走路に進入する。

 

「Epoch 01 Take off」

 

『Epoch 02Take off』

 

『The altitude limit is released. After that, please enter the control of AEW. I wish you good luck.(高度制限を解除します。以降はAEWの管制下に入ってください。幸運を祈ります)』

 

「よしきた、全機推力全開!急ぐぞ」

 

『『『『『『『了!!』』』』』』』

 

 アフターバーナーを点火させマッハ7まで加速する。

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 ギム 防衛陣地

 

 

「クソっ!榴弾砲さえ有れば..........」

 

 砲手が悪態をつきながらも主砲を撃ち続ける。

 

「悪態をついてる暇があるなら撃て!」

 

「もうやってます!」

 

 眼前のディスプレイには、殺しても殺しても、尚も突撃を敢行するロウリア軍の姿があった。

 それはWW2のコミー共のようであった。

 

「ゴキブリみたいに湧いて出てくる..........!」

 

AA(自走対空車両)がミサイルを発射!」

 

 今度は空飛ぶトカゲが飛来する。AAが近SAM、35mm機関砲4基がハエ叩きのようにワイバーンを落とす。

 しかし近SAMもすぐに撃ち尽くす。

 

『!?、レーダーに新たな反応........来た!味方です!団長!航空支援が来ました!!』

 

 

 

「このトカゲ共め!02、03は俺とトカゲの相手だ!他は地上の援護をしてやれ!!」

 

 ファルコンはミサイルを全弾撃ち尽くすと、格闘戦に持ち込む。本体なら一撃離脱戦法が適切だが、ファルコンは機体各所に設置された制動装置で通常ではあり得ない機動を披露し、ワイバーンの背後を取ると、25mmをワイバーンにプレゼントする。

 

『後ろを取られた!!誰か助けて—ガキッ』

 

『導力火炎弾を避けられた!?この化物め!!—ブツッ』

 

 ロウリア軍の飛竜隊は混乱を極めていた。

 

「くそ.........」

 

 隊長は拳を握りしめる。眼前の鉄竜は自分たちと比べものにならない能力を保有している。

 

『隊長!後ろ!!』

 

「なっ!!」

 

 気づいた時には遅かった。ファルコンの20mm機関砲が当たり、そこで意識は消えた。

 

 

 

 

「アデム将軍!!ワイバーンが.........上空のワイバーンが全て落とされました!!」

 

「何をやっているのですか飛竜隊は!!」

 

 アデムは先程からイライラしていた。ギムごときなどすぐに陥落させれると思っていたのに、敵は謎の爆裂魔法を行使してくる。物量で押そうとしてもその前に隊が壊滅する。この場合は一旦撤退しなければならないが、そんなことをすれば昇進の道が閉ざされる。絶対にそんなことはできない。

 

「これも貴方達無能のせいですよ.........早くなんとかしなさい!!!」

 

「はいぃぃ!!!」

 

 アデムは爪を噛む。

 

「まずいですねぇ」

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 第2水陸機動団 第2ヘリコプター大隊

 

 

「佐藤隊長。友軍が苦戦しているようです」

 

「当たり前だ。あれだけの戦力で苦戦しない方がおかしい」

 

「隊長」

 

 用賀副隊長が笑みを浮かべながら聞く。

 

「例のあれ、やりますか?」

 

「.............やるか」

 

「了解!」

 

「全機、太陽を背に突入。第100混成旅団を援護する」

 

「行きます!!」

 

 隊員妖精が再生ボタンを押す。Bluetoothで連動されたスピーカーから大音量でワーグナーの『ワルキューレの奇行』が再生される。

 

『いいねぇ、地獄の黙示録よろしくだな』

 

 AH-64Jを操る隊員妖精が言った。

 

「ハンター02、いっちょやりますか」

 

『ハンター02、了解』

 

『ハンター各機、俺達も混ぜてください』

 

 偵察ヘリコプター、OH-3の隊員も混ざってくる。

 

「いいぞ」

 

『あざす!!』

 

 AH-64J2機とOH-3、1機は、OH-3を先頭に傘型体型へ以降する。

 

「いいぞ!」

 

「フォーー!!!」

 

 第2ヘリコプター大隊の士気は爆上がりした。

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 海兵隊第100混成旅団 LAV-25 車内

 

 

「クソっ!キリがない!」

 

 ロウリア軍が、未知の攻撃に苦しんでいるのと同時に、国連、国防軍側も押し寄せる物量に苦しんでいた。

 

「まじでやばいぞ!!」

 

「撃て撃て!!」

 

 激しい意志のぶつかり合い。お互いに引かない..........。

 

「ん?」

 

 ふと隊員が何かに気付く。

 

「どうした!!」

 

「しっ!」

 

 全員が静かにする。

 

「............ふ、あれ?キルゴア中佐が来てくれたようですな」

 

 全員がその意味を理解する。

 

「ハンマー04より各員!戦場の女神が来てくれたぞ!」

 

 と、同時に突撃を敢行してくるロウリア軍の後方が突如爆発する。

 

「なんだ!?」

 

 ロウリア軍はすぐにその正体を知ることになる。

 

「新しい鉄竜が来たぞ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 敵の鉄竜は猛烈な光弾とともに流星の如き何かを打ってくる。一部の魔道士が鉄竜に向けてファイアーボールを放つが、軽く躱される。そして新たな鉄竜が現れ、光弾を放ってくる。弓を放つ兵もいたが、焼け石に水、当たるはずもない。

 

「まずい、襲撃された!!全隊左右に退避しろ!!!」

 

 隊長が敵がいない左右に退避する様に命じたが、その目論見は挫かれる。

 

「隊長!!!左右に地竜が!!!」

 

「何!!」

 

 そう言われて左右を見た...........そこには第2水陸機動団の各戦車部隊が左右に展開していた。その後も、続々と車両が到着する。

 

「なっ!!まずい包囲された!!!」

 

 そう、前に行けば腰を据えた地竜、左右に逃げようものなら同じく地竜が待ち構えてる。後ろには、滞空する鉄竜がいる.........どうしようもない。だがそれよりもあることに気付く。

 

「ジューンフィルア様は!!アデム様は!?」

 

 そう、指揮をする将軍が消えたのだ。

 

「それが.........」

 

「それが!?」

 

「見当たらないのです.........」

 

 隊長は歯をギリギリ軋ませる。

 

「あの野郎.........一足先に逃げやがったな..........」

 

 ちなみにパンドールは最初の突撃で戦死した。

 

「どうしますか?隊長」

 

「...........くそーーーー!!!!全軍に発令、正面に向かって突撃を敢行せよ!!以上だ!!!」

 

「なっ!?それはあまりにも無謀です!!降伏の決断—グハッ!!」

 

 降伏するよう具申した兵士を剣で刺し殺す隊長。

 

「わかったな!?」

 

 近くにいた兵士を睨む隊長。

 

「はいぃぃぃ!!!」

 

 残存する10万の兵力がギムに向かって突撃を—ピカッ!!!!..............ドォォォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!!

 

 突如、集団のど真ん中に閃光が走り、高さ5000mは超えるであるキノコ雲が出現する。

 

 その上空には、1機の黒い物体が飛んでいた。

 B-2A戦略爆撃機。 日本にたった1機—予備機を含めれば30機、パイロットも確保済み—だけしか存在しないステルス戦略爆撃機だ。彼らが投下したのは、BSG-21誘導爆弾を投下したのだ。

 

「Thunder 01, mission complete,RTB」

 

「まさか最初で最後のやつを落とすとは思いませんでしたね」

 

 そう、副長が言った通り、何故か知らないが、自衛隊時代にBSG-21誘導爆弾を米国から購入していたのだ。しかし、結局何にも使われず、倉庫で埃被っていたのを発見。使用期限はまだまだだったので在庫処分も兼ねて投下されたのだ。

 

「だがな..........10万は辛い..........」

 

 副長が機長の手が震えてることに気付く。

 

「カウンセリングを受けないとダメだな」

 

「機長..........」

 

 それ以上は何も話さず、基地へ帰投した。

 

 

  ロウリア軍.......................戦死者 40万...................

 

  国連軍・日本国国防軍・クワ・トイネ公国軍・クイラ王国軍...............戦死者 0 負傷者 2056人

 

 クワ・トイネ公国侵攻軍約40万は、日本国国防軍、国連軍と交戦、侵攻軍40万は全滅した。

 

 

 一方.............

 

 

「はぁはぁはぁ」

 

「はぁはぁはぁ」

 

 森の中を走り抜ける影が2つあった。その影の正体はジューンフィルアとアデムであった。

 

「アデム君、ありがとう。おかげで助かったよ」

 

「いえいえ、当然のことですよ..........ん!?」

 

 アデムが視界の端で何か動いたの感じた。

 

「どうした?」

 

「何かあそこで動きました」

 

 アデムが指差した方向を見るジューンフィルア、だが、何もいない。

 

「気のせいじゃないのか?それより急ごう、追手が来るかもしれん」

 

「.............はい」

 

「しかし、奴ら、一体どこであんな力を..........?」

 

 ジューンフィルアはなぜか視界が斜めになっていることに気付いた。(あれ?)と、ジューンフィルアが思った時、そこでジューンフィルアの意識は消えた。

 

「なっ!」

 

 アデムは剣の柄に手を掛けようとしたとき

 

「ゴフッ!!!」

 

 右手に激痛が走り、そこを見ると手首から先がなくなっていた。

 

「うっ..........」

 

 常人なら発狂ものだがアデムは気合と根性で耐える。

 

(一体誰が.........)

 

 プスッ!!

 

「グハッ!!!」

 

 背中に鋭い痛みが走る。するとそこからぶくぶくと膨れていった。

 

「な、なんなんだこれは!!!」

 

 バァァァァァーーーン!!!!

 

 まるで風船が割れる音のようにアデムは弾け散った。

 

「golf01、逃亡兵を排除しました。1人は生かしてます」

 

『了解。帰投せよ』

 

「う..........うーん」

 

 唸るジューンフィルアを抱えて男は何処かへ消えた。

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 マイハーク人工島 統合司令部

 

 

「敵侵攻軍40万。全滅させたとのことです」

 

 参謀が小野に報告する。

 

「そうか........少しイレギュラーが発生したが第1段階前段は終了か..........」

 

「はい。後は海でケリを付けるだけです」

 

「ギム防衛隊はエジェイまで後退中です」

 

「承知した」

 

「日が暮れるか........」

 

 小野の言葉につられて窓の外を見る。水平線に沈もうとする太陽の姿があった。

 するとラッパの音が聞こえてくる。港に停泊している第1戦隊、第3護衛艦隊の各艦が君が代ラッパを鳴らしているのだ。

 

「うん。さすがだ..........」

 

「小野司令。リーパーからの映像です」

 

 参謀が映像を見せる。

 

「「「「おぉ..........」」」」

 

 統合司令部要員らがどよめく。数えるのが嫌になる程のガレオン船が確認できたのだ。

 

「ざっと4000隻はいますね」

 

 頭逝かれてる。と誰かが言った。

 

「第1戦隊を含めた理由はこれか..........」

 

 小野は戦艦を擁する第1戦隊を派遣部隊に含められたのが解せなかったが、この大艦隊を見て納得した。

 

「5インチ速射砲だけじゃ弾切れを起こすのは間違いない」

 

「速度は5ノット。敵速はこのままですと、3日後にクワ・トイネ公国領海に侵入します」

 

「了解した。第1戦隊、第1駆逐隊、国連第7艦隊の第5駆逐隊を遊撃に向かわせろ。空母あかぎ、ロナルド・レーガンは上空エアカバー、遊撃隊の背後を取ろうとする船を撃滅させろ」

 

「はっ!!」

 

「Yes sir!!」

 

 〜1時間後〜

 

 

『出港用意!!!!』

 

 停泊していた第1戦隊各艦から錨が巻き取られ、港から離れていく。6隻の戦艦はロウリア艦隊を迎撃するため出航した。

 

 その頃、日本では.........

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 日本国 市ヶ谷 国防省 防衛装備庁オフィス

 

 

 旧自衛隊時代に設立された防衛装備庁の会議室で会議が行われていた。出席者の中にはピンク色の髪色に癖っ毛を擁する者もいた。(防衛装備庁で会議に参加、しかもピンクの癖っ毛など1人しかいないよなぁ?)

 

「えー。まず........技術格差が時代錯誤を超えてる件についてだ」

 

 司会役が言った通り、日本はこの世界で隔絶していることを知ったのだ。現在行われてる『ロデニウス大陸統一戦争』—ネットでそう付けられ、政府関係でもそう呼ばれるようになった—で、ジェット戦闘機と時速200km程度のワイバーンとの空戦に於いて各種戦闘機の稼働率が下がることが懸念されていた。そのため、装備庁では新世界の情勢、任務に対応できる戦闘機の新規開発案を有識者を交えて部内検討中だった。

 

「最優先課題は戦闘機の新規開発だ。ちなみに現時点で考えてる要求項目は........」

 

 課長が端末を見ながら読み上げる。

 

・ターボフロップエンジンを採用すること。

・時速800kmから900kmであること。

・多目的機として運用できるようにすること。

・固定武装は30mm機関砲1門を採用すること。

・直線翼であること。

 

 

最重要

 

・西暦2049年から西暦2050年までの開発成功を目指す。

 

 とデカデカと書かれていた。まだ企画事案だが、たったの1年で新規開発を成し遂げなければいけないのである。

 他にも多々あるが、目玉は上記の通りだ。

 

「あのー。これ鬼畜すぎません?」

 

 技官の1人が言った。

 

「あぁ、それは百も承知だ。しかし、機体稼働率は必ず落ちる。だからこそだ」

 

「しかし.........これだけの項目.........1年で出来ますかね?」

 

 そう聞かれた課長は笑みを浮かべながら答える。

 

「問題ない。そうだろ?あかし」

 

 課長の視線が端にいる女性に向けられる。

 

「問題あらへんで。総隊司令の許可と自由にやらせてもらえるなら」

 

 ピンク色の髪の女性はそう答えた。

 

「総隊司令の許可は絶対に取り付ける。任せろ」

 

「了解。すぐに取り掛かるよ」

 

「恩に着る」

 

「で、次にこれを見てくれ」

 

 机の全てを使い切り世界地図を広げる。

 

「この惑星の直径は2.5倍、表面積は6.3倍.........何食ったらこんなにでかくなるんだよ..........」

 

 課長が説明を放棄する。

 

「えー。陸地と海の比率は3:7と前世界と変わりませんが、惑星の大きさが前世界と違うので..........海洋面積は比較にならないほど増えました」

 

「それで?」

 

「それで問題は、異世界国家と交易することなった場合、シーレーン防衛戦力がとても足りません。船団護衛なんて非効率なことはできません」

 

「仮に船団護衛をするとして..........第1から第3護衛艦隊を全て充てたとしても足りなさすぎる............」

 

「どうします?」

 

「裏技を使うか、真面目にやるかだ.........どうぞ」

 

 司会役が手を上げた技官を指名する。

 

「はい。当面は裏技でいいと思います。真面目の方は異世界情勢を鑑みてからの結論で良いと思います」

 

「うん。確かにそうだ。じゃあ皆、一応案を考えといてくれ。後で使うかもしれん」

 

「「「「うい」」」」

 

「まぁ、検討すべきはこれだけだ。他にもあるが今議論するには早い。しばらく経ってからにする。ではこれで解散」

 

 司会役が解散を宣言すると、皆椅子を立ちそれぞれの仕事に戻る。

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 マイハーク港

 

 

 マイハーク港の開けた広場で3人の男が立っていた。

 

「パンカーレ提督!時間です」

 

「うむ.........ブルーアイ、頼むぞ」

 

「はっ!!」

 

 ブルーアイはこれから日本国艦隊の観戦武官として搭乗するのである。

 

「来た」

 

 竹とんぼのような金属で出来た物が飛んできた。

 事前に連絡は受けていたが、どうやら乗り物らしい。それが近づくにつれ、大きな風を受ける。

 

「こちらへ!!頭を低くしてください!!」

 

 ヘルメットを被った人物に案内される。

 乗り物に乗り、沖合いへ移動した。

 フワフワのシートに座り、ほとんど揺れずに「それ」は進んだ。ワイバーンよりも遥かに快適で、人が大量に運べる。

 やがて、母船が見えてくる。

 その大きさにブルーアイは何度も見たとはいえ驚愕する。

 

「本当に大きいですね」

 

「444mはありますからね」

 

 やがてSH-60Jは飛行甲板に着艦する。ブルーアイは案内に従って艦橋に入った。

 ブルーアイの元に1人の女性が近づいてくる。

 

「こんにちは。本艦艦長のあかぎと申します。本日からよろしくお願いします」

 

「こんにちは。私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊参謀、ブルーアイと申します。今回は援軍ありがとうございます」

 

 ブルーアイは、あかぎに礼をする。

 

「こんにちは、話は聞いています。では早速.........」

 

 あかぎはディスプレイにレーダー情報を出す。

 

「現在、ロウリア艦隊はここから600km地点にいます。相対速度はおよそ40ノットなので1.5日後には会敵しますね」

 

 ちなみに航空攻撃は一切しない。遊撃隊のエアカバーをロナルド・レーガンと共同で行うだけだ。

 

「そうですか.........あの、これに映ってる戦艦に乗ることはできますか?」

 

 ブルーアイは、ディスプレイに映っているこんごうを指した。

 

「問題ありませんよ。むしろこれに搭乗してもらう予定でした。明朝に移動します」

 

「ありがとうございます」

 

『艦長!こちら砲雷長』

 

 あかぎのインカムに砲雷長の声が聞こえてくる。

 

「どうしました?」

 

『はるなスワローより通報がありました。艦隊より東方50km、MADに反応があったと』

 

 あかぎのオルタナにソナー情報が出される。

 

「わかりました。フライトコマンダー、あかぎスワロー01から03を向かわせてください」

 

『了解です』

 

「何を発見したのですか?」

 

 ブルーアイが突然の動きに訳がわからずあかぎに聞く。

 

「この地点で潜水艦........水中に潜る艦ですね。の尻尾を掴みましたが..........」

 

「潜水艦ですか........本国でも科学の基礎研究は進んでいますがそこまではまだたどり着けそうにもないですが.........どうしました?」

 

 あかぎがずっと黙っているのでブルーアイが心配する。

 

「この世界に潜水艦は存在しないはず.............たくみスワロー、聞こえる?」

 

『感度問題なし。どうしましたか?』

 

 はるなのSH-60Kパイロット妖精の声が聞こえてくる。

 

「音紋は拾えた?」

 

『はい。馬鹿でかい音を発してますので母艦でも探知できると思います』

 

 (馬鹿でかい?)。あかぎは気になりどれくらいかを聞き、すぐに返事がくる。

 

『そりゃあ、素人でもわかるレベルです。すいません。燃料がビンゴになります。あかぎスワローと交代します』

 

「悪いわね。邪魔しちゃって』

 

『いえいえ、それでは』

 

 通信が切れる。

 

『こちらあかぎスワロー01。ポイント到達、捜索に入ります』

 

 

「よし、降ろせ!』

 

 ディッピングソナーが降ろされる。ソナーマンの手元のディスプレイに情報、ヘッドセットに海中の音が入ってくる。

 

「うっ!!」

 

 ソナーマンがヘッドセットを取り外す。

 

「どうした!?」

 

「煩すぎて鼓膜が破れかけた.........」

 

 ソナーマン妖精はそう言いながら、ドラッグボールを動かし、ソナー感度を下げて、恐る恐るヘッドセットを付け直した。

 

「ふー。さっきは本当に鼓膜が破れるかと思ったよ.........さて」

 

 ソナーマン妖精が気を引き締める。

 

「やっぱりデカいな.........」

 

『そんなにか?』

 

 戦術士官妖精が聞いてくる。

 

「あぁ。素人でもわかるぞ」

 

『うへぇ』

 

「音紋取れました。母艦で解析してもらってます」

 

『了解。こちらあかぎスワロー01。潜水艦への対応はどうしますか?』

 

 しばらくして返事がくる。

 

『こちらあかぎCIC、unknown alphaをボギーとし、強制浮上措置をとります』

 

「............ですが、最悪撃沈させてしまう可能性も」

 

『対潜弾を頭上にばら撒いて艦橋に傷を入れればいいです。責任は私がとります』

 

「.....................了解。機長!そっちに航路を送る!」

 

『了』

 

「全機、潜水艦の頭上に対潜弾をばら撒く」

 

 やがて潜水艦の真上に到達する。

 

「全機!投下!」

 

 戦術士官妖精がボタンを押す。胴体横に設置されてるウエポンベイから対潜弾が切り離される。

 少しして高い水柱がいくつも発生する。

 

「どうだ!?機関音拾えるか?」

 

「待ってください.........浸水音とともに排水音。緊急浮上しているようです」

 

「ドアガン!レディー!!」

 

 機体横の扉が開かれ24式機関銃が浮上予想地点を指向する。

 やがて海面が盛り上がると、そこから黒い鯨、否、潜水艦が浮上してきた。

 

「全周波数、拡声器で直接警告だ!」

 

『こちらは日本国宇宙海軍である。直ちに投降されたし。繰り返す。こちらは日本国宇宙海軍である。直ちに投降されたし』

 

 すると、ハッチが開き銃座、砲座に人が乗り込む。

 

「うおっ!!」

 

 機体横を銃弾が掠めた。

 

「全機、離れろ!!」

 

 あかぎスワロー01の命令で全機が距離を取る。

 

「こちらあかぎスワロー01、潜水艦がこちらに向け発砲してきた!繰り返す、こちらに向け発砲してきた!」

 

『全機退避せよ。現在ながとが急行中』

 

「全機退避するぞ!」

 

 その場から退避する3機のSH-60K。

 その間、潜水艦は20ノット近くまで増速していた。

 

 

 ながと CIC

 

 

「座標入力よし」

 

 潜水艦の位置の諸元入力が終わる。

 

「第1副砲。CIC指示の目標。撃ち方始め」

 

 ながとが号令をかける。

 

「撃ち方始め」

 

 砲雷長が復唱し、砲術長がトリガーを引く。

 副砲から1発の砲弾が放たれる。

 

「ターゲットalpha周辺着弾まで、5、4、3、2、弾着、今」

 

 潜水艦の付近に水柱が立つ。

 

「全手段で投降を呼びかけろ。白旗を上げるようにな.........」

 

 発光信号、無線、手旗信号、音響通信、その他諸々で潜水艦に投降するように呼びかける。

 すると、突然現れた戦艦に恐怖したのか、こちらの指示通り白旗を掲げて投降した。

 

「本艦では大きすぎる、後続の駆逐艦に接触させたい」

 

『わかりました。『まきなみ』を急行させます』

 

 しばらくすると、まきなみが海域に到達した。

 

「内火艇降ろせ!」

 

「砲雷長。主砲を潜水艦に向けて」

 

『了解です』

 

 まきなみに搭載されてる200mm単装速射砲が潜水艦に指向される。

 その間にも、内火艇が降ろされて潜水艦に近づく。

 

『こちら立入検査隊。潜水艦乗組員と接触。ロシア語を話しています』

 

「了解。気を付けて」

 

 プレストークボタンが2回押されて、了解の意が来る。

 まきなみはディスプレイに映る、立入検査隊隊員の目線カメラを見る。

 

 暫して...........

 

『こちら立入検査隊隊長。潜水艦の国籍はグラ・バルカス帝国と判明。目的は本艦隊の偵察だったようです』

 

 隊長妖精から報告が入る。

 

「グラ・バルカス...........あかぎ、聞こえる?」

 

 まきなみは無線を取り、あかぎへ連絡する。

 

『聞こえますよ』

 

「潜水艦はどうします?。マイハーク人工島へ曳航するか、このまま帰すか、どっちかになりますが.........」

 

 考えているのか、少しの間黙るあかぎ。

 

『たかなみにマイハークまで行かせます。まきなみはそのまま対潜指揮を続行してください』

 

「わかりました」

 

 ロウリア艦隊との海戦を前に思いがけない事態が発生してしまったことにまきなみは軽く舌打ちをする。

 

「チッ。ドン亀が邪魔しやがって」

 

「ロウリア艦隊と前衛遊撃隊との距離、190km!」

 

 とっくにミサイルのSSM、ASMの射程に入っているが、4000を超える相手にミサイルを撃ったら間違いなく足りない。よって砲撃をすることになっている。

 

「合戦準備!対水上戦闘用意!!」

 

 

 ながと CIC

 

 

「合戦準備!対水上戦闘用意!!」

 

 ながとが号令をかけ、副長がそれを復唱する。

 

「航海長聞こえる?」

 

『はい、バッチリ聞こえます』

 

 航海長の元気な声が聞こえてくる。

 

「敵艦隊と同航進路をとって」

 

『了解です。最大戦速!黒40!』

 

 41ノットまで加速する。

 

『こちら右ウイング!敵艦隊を確認!』

 

「来たな」

 

 前衛遊撃隊はながと後方20kmで待機している。

 

『面舵20°!』

 

 操舵員が舵を右に傾ける。遠心力で艦が右に傾くがスタビライザーのおかげで傾きは僅かだ。

 

『敵艦隊の右に付きます。取舵一杯!!!』

 

「右舷砲戦!全砲門発射準備!』

 

 回頭終了し、敵艦隊の右に付く。回頭終了と同時に全主砲副砲が艦隊に向け指向される。

 

「敵最右翼をalphaとする。第1副砲、砲撃目標ターゲットalpha!」

 

「砲撃目標ターゲットalpha!第1副砲発射用意!!」

 

 砲雷長がターゲットの指定を行い、砲術長がそれを復唱する。

 

「発射準備よろし.........撃て!!」

 

 副砲から200mm榴弾砲が放たれる。

 

「目標着弾」

 

『こちら艦橋、爆発閃光を確認』

 

 CICで報告が入るのと同時に艦橋からも報告が入る。

 

「うん.........威力過剰だ」

 

「ですね」

 

 ながとの言葉に同意する砲雷長。

 

 ロウリア艦隊では...........

 

 ロウリア東方征伐艦隊提督『シャークン』は、混乱していた。

 突然小島のような長巨大船が現れたかと思うと、その船体に搭載されている馬鹿でかい魔導砲から放たれた砲弾が一番右にいた船に直撃したかと思うと、着弾した味方船は木っ端微塵に吹き飛んだ。

 そして高いマストに掲げられた旗を見ると、白に赤い丸が描かれた国旗があった。シャークンの記憶が正しければ、宰相が門前払いした新興国『日本国』だったと記憶してる。

 

「日本国の仕業か.........全艦!あの巨大船に向かって突撃せよ!」

 

 幸いにもあのでかい魔導砲は装填が遅いようである。撃ってきた砲よりも、さらに大きい砲があるが未だに撃ってくる気配がない。物量で押せばなんとかなるだろう。

 全船が巨大船に向かって突撃する、が.........。

 

「提督!!進んでも進んでも近づきません!!」

 

 部下が報告してくる。

 

「あの船........想像以上に早いのか.........」

 

 不意に煙が巨大船から発生する。

 

「!?」

 

 すると先導していた船が消える。

 

「なっ!!」

 

 さらに不運は続く。シャークンが装填速度が遅いと読んだ魔導砲が猛烈な速度で撃ってくるのである。

 

「まずい!通信士!!ワイバーン部隊に上空支援を要請しろ!!敵主力船団と交戦中と!!」

 

「はい!!」

———————————————————————————————————

 ロウリア王国 ワイバーン本陣

 

「ロウリア王国東方征伐艦隊より魔伝が入りました。『敵主力艦隊と思われる船と現在交戦中、敵船は巨大であり、国籍は日本国と判明。航空支援を要請する』と............」

 

「ほう、敵主力か.............よろしい。350騎全騎を差し向けよ」

 

「し、しかし、先遣隊に150騎ほど分けてあるため、本隊からワイバーンがいなくなりますが...........」

 

 この時すでに先遣隊、つまりギム攻略部隊が全滅していることを知らなかった。

 

「聞こえなかったか?全騎だ。敵主力なら、大戦果となろう。戦力の逐次投入はすべきではない」

 

 戦力の逐次導入

 それは戦争をする上で最もやってはいけないことである。米軍は1993年、ソマリアへ派兵したが所詮は民兵と高を括っていた.........結果は言うまでもない。

 

「..........了解しました」

 

 ワイバーンは次々と大空に飛び上がった。

———————————————————————————————————

 

 ワイバーンが離陸を始めた瞬間、空飛ぶ目に捕らえられたことを知る由もないワイバーン隊。

 

 あかぎ搭載機、早期警戒偵察機E-100はロナルド・レーガン搭載機E-2Fと共同で警戒飛行していた。

 レーダーに次々と光点が映り始める。

 レーダー監視員はそれにナンバーを振っていく。その数、350。

 

「トカゲ共が350匹も出てきたか.........」

 

「ふざけてないで、艦隊に通報だ」

 

「はい」

 

 E-100が得た情報は、データリンクでリアルタイムで共有される。

 

 

 あかぎ 

 

 

「ワイバーン350騎、ながとに向かいつつあります」

 

「スクランブル!」

 

 即応体制にあった機体。既に発艦準備を整えていた機体。CAPとして出撃していた機体がながとに飛来するワイバーンに向かう。その数、44機。

 各機は編隊を組み、トリガーを連結する。

 

「whisky01、FOX2!!」

 

 ミサイル発射の符丁を叫ぶ。

 whisky01パイロット妖精が発射ボタンを押すと、各機からもミサイルが発射される。発射されたミサイルの数は352発。うち6発が不調を起こしたが全て正常に飛行する。

———————————————————————————————————

  

 ロウリアのワイバーン隊は地獄を見ていた。

 

「くそっ!!敵はどこだ!!」

 

 全員が周りを探しているが見つけられない。

 

『隊長!!正面!何か来ます!!』

 

 部下から報告を受けて正面に目を凝らす隊長。

 

「!?」

 

 こちらに真っ直ぐ突っ込んでくる黒い点が見えた。

 

「回避!!!」

 

 愛騎を操り、回避しようとするが、それはこちらの動きを追ってくる。

 

「ついてくる!!」

 

 そう思った時、隊長はワイバーンもろとも爆散した。

 

 あれから何分経ったかわからない。350騎いたワイバーンは残り24騎。目標は重複することはなかったが、あまりにも数が多すぎたため、回避運動する他のワイバーンに当たるなどして24騎が残っていた。

 

「いた!!!」

 

 遠くに灰色の巨大船を確認したワイバーン隊はそれに向かって突撃する。

 

「仲間の仇!!!」

 

 すると灰色の巨大船から煙が発生する。

 

「!?、誤爆か?」

 

 すると、こちらに向かって光の矢が飛んできた。

 

「回避!!!」

 

 愛騎を操り、回避しようとするが、それはこちらの動きを追ってくる。

 

「ついてくる!!」

 

 そう思った時、竜騎士はワイバーンもろとも爆散した。

 

 

 ながと CIC

 

 

「SM-2全弾命中。対空目標確認できず」

 

「対空警戒配置へ変更、油断するな」

 

「はい」

 

 F-4Bが半分以上減らしてくれたおかげでながとが対応する目標は少なくて済んだ。

 

「全砲塔五月雨弾式統制弾。発射準備よろし」

 

「砲雷長、最大レートで撃つぞ」

 

「Yes」

 

「撃ち方始め!!」

 

「発砲!!」

 

 砲術長がピストルトリガーを引く。

 3基の主砲、2基の副砲から榴弾が放たれる。

 距離にして19km。それだけの近距離目標を外すわけがない。

 

「全弾命中!」

 

「各砲塔、振り分け目標を交互射撃!」

 

 装填が終わり、各砲塔で交互射撃される。

 え?装填時間はどれくらいかって?一回しか言いませんよ。主砲は毎分12発、副砲は毎分45発というキチガイレート。そして全て3連装砲なため12×3=36発。45×3=135発撃てるという..........誰だこんなの作ったやつ。

 

「くそっ!!」

 

 シャークンは水飛沫を浴びながらも指揮を続ける。

 

「何もできないというのか..........」

 

 たかが一隻に何もできない。

 

「提督!!右舷側より8隻の灰色の船が!!!」

 

 先程の船とほぼ同じ大きさの船が5隻とそれより2回りほど小さい3隻の船がこちらに近づいてくる。

 

『撃ち方始め!』

 

『Fire!!』

 

 かげろう型護衛艦、アーレイバーク級イージス駆逐艦から砲弾が放たれる。

 

「味方船被弾!轟沈!!!」

 

 次々と轟沈報告が入ってくる。

 そして羽虫からも光弾が浴びせられる。

 

 何もできない

 何もできない

 何もできない

 何もできない

 何もできない

 何もできない

 何もできない

 

 作戦すら思いつかない。

 その間にも味方は次々と沈んでいく。

 なら司令官としてできることは1つ。

 

「全軍に通信。『撤退せよ』」

 

 旗艦から撤退の連絡が入った途端全船が反転し、撤退していく。

 

「撃ち方やめ!」

 

 敵艦隊が撤退していくのをレーダー上で確認したながとは射撃中止を命じる。

 

「味方は置いてったか..........飛行班長」

 

『はい。救助ですね。許可をもらえればすぐに発艦できます」

 

 ながとが要件をいうより早く飛行班長は準備していた。

 

「艦長。確か敵兵を救助する理由は........えーと..........」

 

「ジュネーブ条約」

 

「そうジュネーブ条約でした。その条約に基づいてるんでしたっけ?」

 

「えぇ。我が国の捕虜保護規定は日本国の法律、旧世界の条約を基にしています」

 

 ブルーアイの疑問にながとが答える。

 その後、第7艦隊駆逐艦、第7機動部隊駆逐艦に捕虜が収容された。

 

 

 ながと 戦闘詳報 一部抜粋

 

 

本海戦に置いて本艦はワイバーン迎撃に24発のSM-2を使用。撃ち漏らしなし。その後の艦隊決戦おいての戦果は、合計2470隻を撃沈したことを確認した。尚、捕虜収容人数は合計で273人を収容、敵艦隊司令のシャークンと名乗る男を確保した。

 

 ロデニウス沖での海戦は日本国と国連海軍の圧勝で終わった。

———————————————————————————————————

 マイハーク人工島 統合司令部

 

 

「海戦は当方の被害なしで勝利しました」

 

「うむ。ご苦労」

 

「森の盾、第1段階は終了しました。第2段階後段発動まであと1日後です」

 

 第1段階はロウリア王国軍の侵攻阻止を目的とした作戦。

 第2段階

 前段 第7艦隊艦載機による航空優勢確保の後、駆逐艦が砲撃を行いロウリア海軍を完全に殲滅する。

 中段 第7艦隊艦載機と国防空軍が敵航空基地を完全に破壊、制空権を確保する。

 後段 第7機甲師団によるロウリア王国首都ジン・ハークに向かい進撃し、後続の第2重機械化師団の援軍を以て首都を包囲する。

 第3段階 国連軍事裁判所日本支所のハーク・ロウリア王逮捕委託任務に基づき、王城を強襲、同人の逮捕を目指す。

 

「本城1佐、頼むぞ」

 

「自衛隊時代から続く最強の機動力打撃力です。お任せを........」

 

 第7機甲師団参謀『本城秀吉』が恭しく礼をする。

 

 

 壇上に第7機甲師団団長『西郷正志』が登壇する。西郷の眼前には整列した隊員達に整列した車両が並んでいた。

 

「えー。頑張ってくれ、以上!!」

 

「「「おし!!!」」」

 

「え?これだけですか?」

 

 ノウ将軍が西郷の話にずっこける。もっと壮大な事を話すかと思ったが、『頑張ってくれ!』たったそれだけである。

 ノウ将軍の疑問にそばにいた隊員妖精が答える。

 

「えぇ。これだけです」

 

「...........」

 

 驚きの余り、声が出ないノウ。

 

「総員!!乗車!!!」

 

 号令と共に車両などに乗り込む隊員や妖精達。

 

「さっさとこの時代錯誤戦争を終わらせるぞ」

 

 西郷はそう言った。

 第7機甲師団第8戦車大隊、第21特化連隊はジン・ハークを目指した。

 

———————————————————————————————————

 国連海軍第7艦隊駆逐艦 カーティス・ウィルバー CIC

 

 

「はい。我々は日本の戦艦と共同で敵軍事港湾施設、敵船を全て壊滅させる予定になっています。ただし、港に接近するのは我々で戦艦は後方で精密砲撃をするようです」

 

 海図を見ながらそう言ったのはカーティス・ウィルバーの副長だ。

 

「まあ、戦艦の長距離射撃等を考えたら普通だな。後、あの巨体で港湾に突入させたら身動きが取れなくなるだろうしな」

 

 〜30分後〜

 

「旗艦より入電。『第15駆逐隊所属のカーティス・ウィルバーとバリーは国防宇宙海軍第1戦隊と合流せよ』とのことです」

 

「了解。両舷最大戦速!艦隊より離れる!」

 

「ミサイル駆逐艦の本領を見せてやる」

 

 アーレイバーク級イージス駆逐艦2隻は第1戦隊と合流し、敵港湾施設を破壊するために進む。

———————————————————————————————————

 上空 

 

 

 上空には国防空軍のF-4Aファルコンと空母ロナルド・レーガン艦載機F-18E/Sスーパーホーネット合わせて30機が編隊を組んで周回飛行していた。

 彼らの目的は『森の盾』第2段階の敵航空基地—飛竜基地—を破壊するために全機対地ミサイルを搭載していた。

 

「作戦開始まで後20分か.........」

 

『暇ですね』

 

「暇すぎてアメリカ人は歌ってるよ........」

 

 そう、先程無線から『星条旗よ永遠なれ』が聞こえてくるのである。

 

『俺らも歌います?』

 

「遠慮する」

 

『ウェーキー。こちらスカイアイ。全機に通達する、作戦開始、繰り返す、作戦開始。各機は所定の行動を取れ』

 

 AWACSより作戦開始が伝えられる。

 

「よっしゃ、行きますか」

 

『『『了解』』』

 

 F-4AとF-18E/Sは敵飛行場へ進路を変えた。

 

 ロウリア王国を破滅へと誘う矢は放たれた。

 




 次回『Operation Forest shield 2nd stage』

パラレルワールド その1


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