異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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(宇宙戦艦ヤマト 無限に広がる大宇宙2199版)


 日本国は異世界初の戦争を圧倒的勝利を収めた そしてロウリア王国と講和が開催される一方 日本国の存在は周辺国にすぐに知れ渡った そして クワ・トイネ公国にある『太陽神の使い』の遺産があるとされる リーン・ノウの森に調査団を派遣する そこで驚愕の事実が明らかになる 


講和 忍び寄る魔の手

 ハーク・ロウリア34世の逮捕から3週間後

 

 中央歴1935年 西暦2049年 9月10日

 クワ・トイネ公国 マイハーク文化会館

 

 

 ここ、マイハーク文化会館は、日本国の出資により、建造された建物だ。そんな文化会館で講和会議が始まる。

 講和会議議長を務めるバリー・ネルソンが登壇する。

 

(佐山の野郎..........仕事を押し付けやがって.........)

 

 バリーの顔には微かに笑みを浮かんでいたが、それとは裏腹に、心の中では煮えくり返っていた。

 

(俺がいくら日本支部の長だからといって押し付けるのはやめてくれよ........!!)

 

 バリーは、何を言っても仕方ないと諦めて気を引き締める。

 眼前には、日本国、クワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国の全権大使が座っていた。

 

「では、これより講和会議を始めます。まず最初に私は、国連日本支部局局長バリー・ネルソンと言います。本講和会議議長を拝命いたしました。それでは、本講和会議を開始します、すでに任命状などの交換は終了しているので、最初に各国の要求事項の提示をお願いします」

 

 クワ・トイネ公国リンスイ全権大使が手を挙げる。

 

「リンスイ殿、どうぞ」

 

「はい、我が国はロウリア王国に対して何らの要求をするつもりはありません。一応理由を述べますと、今回の戦争で負傷者、死者が一切出ていないのと、日本国によるハーク・ロウリア34世の事情聴取によって、我が国とクイラ王国との戦争は避けられなかったという話を聞きました。そしてハーク・ロウリア34世はその事を十分に反省しており、そして裏では亜人保護のために動いていたという証拠を日本国からいただきました、そして今回のロウリア王国への対応は日本国へ一任します」

 

「わかりました。次にクイラ王国メツサル全権大使、お願いします」

 

「はい、クイラ王国はクワ・トイネ公国と同様、ロウリア王国に対して何らの要求をしません。以上です」

 

 ロウリア王国パタジン全権大使の顔が驚愕に包まれるのと同時に心の中では、葛藤が激しく渦巻いていた。

 

(日本国が賠償権放棄を迫ったのか.........だとすると、日本国は我が国に法外な要求を..........)

 

 しかし、パタジンの懸念はすぐに無くなる。

 

「では、日本国全権大使宇治和殿、お願いします」

 

(来た.........)

 

 パタジンは身構える。

 

「はい、我が国の要求事項はこれです」

 

 宇治和がプロジェクターを操作し、項目を見せる。

 

「なっ!」

 

 そこには..........。

 

・ロウリア王国は過去の行いを、クワ・トイネ公国、クイラ王国両国に公式に謝罪すること。

・ロウリア王国への内政に日本国が5年は関与できることにすること。

・ロウリア王国はロデニウス連邦構想に参加すること。

 その他諸々..............

 

 パタジンは要求事項の少なさにずっこける。

 

「驚きますよね............なぜ賠償金を要求しないのか?と..........貴国に支払い能力がないことはハーク・ロウリア34世の事情聴取で確認済みです。法外な借金を抱えてるようですね.............賠償金は後世に恨みを残すだけ、かと言って貴国には鉱物資源が乏しい。それに、必要な資源は全てクイラ王国から輸入できていますがね...........ですが、貴国はある資源があります。何かわかりますか?」

 

 宇治和がパタジンに聞く。

 

「............人...........ですか?」

 

「そう、人。これは最大限の強みになります。おそらく我が国の支援で貴国はかなりの経済大国になるでしょう。そこに農産物のクワ・トイネ公国、鉱物資源のクイラ王国、人的資源のロウリア王国が連邦を形成すれば........悪い話ではないと思いますが?」

 

 日本国、クワ・トイネ公国、クイラ王国の3ヶ国は会談を行い、今後のロウリア王国への対応や動向を決めた。

 クワ・トイネ公国、クイラ王国はロウリア王国への賠償請求は一切しないことを決めた。

 そして、そこに日本国が、ロデニウス大陸各国構成される、『ロデニウス連邦構想』を提案したのだ。

 ロデニウス大陸は、各種資源のチート大陸—ボーキサイトとか........石油、普通、気が遠くなるほどのボーリング調査をやって油田を当てるのに、湧き水の如く湧き出てくるって...........後、クワ・トイネ公国も似たり寄ったり—であるため、すでにクイラ王国、クワ・トイネ公国は科学を取り込んでいるため、基礎技術はほぼ習得している。日本国がそこに僅かな支援をすれば化けるであろうと、日本国経済界、政治界はそう読んだ。

 

「それに、連邦に参加すれば、貴国はロウリアであって、ロウリアでなくなる。まあ、払う払わないは貴国の自由ですが、もし払うのであれば多少の支援はしましょう」

 

 パタジンは息を飲む。あまりにもこちらに有利すぎる内容。内政に干渉など、よほど理不尽でなければ、5年耐えればいいだけだ。

 

「どうですか?まぁ、連邦参加は規定路線ですがね」

 

 こんなもの、『はい』しかない。

 

「............わ、わかりました。ロウリア王国は、日本国の要求を受け入れます」

 

 講和設立。後は、公文書に署名を残すだけだ。

 

「それでは、こちらの公文書に署名をお願いします」

 

 パタジンが憲兵に誘導され、机に置かれた公文書を見る。

 『ロデニウス条約』と書かれていた。

 すでに、ロウリア王国以外の大使は署名済みであった。

 『パタジン・セウス』と書いた。

 

「では、一度確認します」

 

 バリーが、しっかりと書かれているか、漏れがないかを確認する。

 

「.............確認しました」

 

 バリーがそう言うと、『バリー・ネルソン』と書いた。

 

「ゴホン..........本講和会議が成立した事を宣言します。そしてロデニウス条約の締結が決定いたしました」

 

 周りで拍手が上がる。

 

「では、これにて閉会します」

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 日本国 市ヶ谷 国防省

 

 

「—現地部隊の撤退作業は順調に進んでいます。ロウリア王国に駐屯するのは、第7機甲師団から分派する、第21普通科連隊、第51ヘリコプター中隊を考えています」

 

 ロデニウス大陸統一戦争終結を受け、国防軍は派遣した師団を順次撤退させていた。

 

「ロデニウス大陸に関しては以上です。次に..........フェン王国軍祭です...........どうします?」

 

 統合幕僚幹部が全員に聞く。

 

「どうって言われてもな.........あんなところに艦隊を派遣するには多すぎるし、単艦だとね〜」

 

「やはり、第3駆逐隊に第7艦隊のタイコンデロガ級か、大湊にいる、国連海軍第4艦隊所属のピョートル・ヴェリーキイを旗艦として、同行をお願いしましょうかね?250mの巨体ですし、良いのでは?」

 

 宇宙海軍参謀がそう言った。

 

「待て、核燃料棒は後どれくらいだ?」

 

 そう聞かれた参謀は端末を操作しながら答える。

 

「えーー。転移の1ヶ月前にモスボールを終えて、試験を兼ねて世界一周航海の際、大湊に寄港していました、しばらくは余裕で持ちます。すでに乗組員は国連海軍第7艦隊編入を了承していますので、問題はありません」

 

 ピョートル・ヴェリーキイはロシア北方艦隊の前旗艦であったが、艦齢の高齢化、艦艇の更新に伴い、退役間近であったところを、国連が買収、日本国へ回航し、寿命延長工事、装備転換を行った。そして、国連海軍第4艦隊の重巡枠として所属している。

 

「そうか............では、その方針で進めてくれ」

 

「はい」

 

「それで、次に、今戦争において拘束された諜報員、ムー共和国と、グラ・バルカス帝国の情報ですが、まずムー共和国はWW1のイギリスレベルであることが判明しています。ただ、一部技術はWW1を超えています。見てください」

 

 参謀が、全員の端末に写真を送る。

 そこに映っていたのは..........。

 

「「「三笠!?」」」

 

「いや、でも敷島型を建造したのはイギリスだから...........」

 

「そうか...........待て、一部技術が超えてると言ったな、まさか金剛擬きが—」

 

「それについては、今の所確認されていません」

 

「そうか.......」

 

「ただ、金剛擬きだと........」

 

 再び端末を操作し、写真を映す。

 

「「「金剛!?」」」

 

「いや、待て、これは回転レーダーだ。回転レーダーがあるということは、PPIスコープを開発している..........だが、金剛そのものだな.........」

 

「...........断定まではいきませんが、日本的な思想設計を持ち、電子技術は太平洋戦争末期の米軍ですかね..........」

 

「まさか........大和.........」

 

 財前副幕長が内神田空間幕僚長を見る。

 

「そのまさかですよ。これを見てください」

 

 内神田が手元の端末を操作し、画像を映す。

 

「すげー!、まじの大和じゃないすか..........しかも最終決戦仕様ですよ!しかも21号電探じゃなくて回転レーダー..........ん?砲塔に棒が.........まさかレーダー測距儀.........レーダー射撃ができるのか...........」

 

 今言った参謀........陸軍の参謀なのだが.........。

 

「本郷、海行ったらどう?」

 

 と、白峰陸上幕僚長が聞くと、本郷陸軍参謀が勘弁してくださいと懇願する。

 

「船酔いしやすいって言ったでしょう.........」

 

 なんとなしに幕僚会議の空気ではなくなっているが、白井が参加した際、『何でこんな堅苦しいの?国の滅亡が迫ってるわけじゃないんだからさ........こう、のんびりとした空気というか、そういう空気にしよう』と、鶴の一声でそうなった。

 

「あら、そうだっけ?」

 

「はい、船酔いが酷いので..........仕方なく陸軍に...........」

 

 その後も、新世界の日本国へ脅威となる国の戦力評価が行われ、『引き続き、要注意国家への監視を続ける』と、財前副統合幕僚長がいい、統合幕僚会議は終了した。

 各参謀、幕僚、関係者らが退出していく中、財前副統合幕僚長と、内神田空間幕僚長の2人が残った。

 

「で、今日、なぜ総隊司令が来なかったんだ?」

 

 そう、統合幕僚会議に白井が参加しなかったのである。

 

「理由は聞いてるんだろ?」

 

 内神田が財前に問う。

 

「.............呉に行ったと言う噂は聞いた」

 

 財前の答えに内神田は大体を察した。

 少し話した後、2人もそれぞれの持ち場へ戻った。

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 市ヶ谷で幕僚会議が行われていた時。

 

 呉 某所

 

 

 空調が効いた室内に白井と、大和がいた。

 しかし、快適な室内なはずなのに空気はピリピリしている。大和が、その膨大な艦霊力を解き放っているからだ。

 

「それで、なぜこんな所に国防軍の現場司令官たるあなたが来たのですか?」

 

「なぜ俺は艦娘に会うたびに艦霊力をぶつけられなきゃいけないんだ?」

 

 この男の過去が原因である。

 

「まあ、今日はあの話じゃない、世間話に来ただけだ。それに.........」

 

 白井が床に置いていた風呂敷を取り、それを解く。中には—

 

「どうだ?間宮羊羹。好きだろ?」

 

 旧日本海軍給糧艦『間宮』。

 その艦の存在は連合艦隊の士気維持のための重要な艦であった。

 その間宮羊羹を無言で受け取る大和。

 

「..............ありがとうございます」

 

「まだ、あのことを?」

 

 あのこと

 坊ノ岬沖海戦で、大和が救助、いや、生き延びたことである。

 大和は自分の船体が沈んでいく中、伊藤整一と共に最後まで残ろうとしたが、複数の妖精が伊藤整一の命令を受けて、大和を船外へ連れ出し、駆逐艦『雪風』に救助された。

 当時、大和は雪風に戻るように言ったが、雪風は拒否した。

 伊藤整一は、自分が死んでも大和だけでも残そうとしたのである。

 

「...........私はあそこで..........あそこで..........」

 

 大和の言いたいことが白井にはよく分かった。

 

「もうこの話はやめるか..........さて、羊羹を食いながらでも話そう」

 

 包装を剥がす。

 

「おっ!間宮の奴..........」

 

 羊羹を見た白井がぼやいたので、大和も気になり、羊羹の包装を剥がす。

 そこには

 

「菊花紋章.........」

 

 そこには菊花紋章に刻んだ栗を中央に埋めた羊羹があった。

 白井が丸かじりする。

 

「うん........チマチマ食べるよりこっちがいいな」

 

 しかし、大和はそれを皿に乗せて、切り分けて食べる。

 

「今日ここに来た理由だが..........まず艦霊力収めてくれない?」

 

 そう言われて艦霊力を収める大和。

 7万t級の艦を操る艦霊力を耐える白井とは一体...........?

 

「で、これ.........」

 

 白井が大和前に端末を出し、写真を投影する。

 

「え?」

 

 大和がその写真に見入る。

 

「これ..........」

 

「間違いなく大和の船体だ。ただ、日本から3万km以上も離れている所で確認された」

 

 つまり、確証はないが、大和ではないということである。

 

「話はこれだけだ。長居するとお前に突き出されそうだがらもう帰るな」

 

 白井が立ち上がり、玄関に向かおうとした時、何かを思い出したように止まった。

 

「あ、そうそう、巫女が横須賀に遊びに来たら?と言っていたぞ。じゃあな」

 

 ブーツを履き、戸を開けて出て行く白井を見送る大和。

 遠ざかる白井の背を見ながら大和は、

 

「横須賀か............」

 

 と、言った。

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 ムー共和国 アイナンク空港

 

 

 空港応接室に20代くらいの男がソファーに座っていた。

 

「地獄だった...........」

 

 この男、マイラス・ルクレールは、日本国の調査をしにロデニウス大陸へと渡ったが、その調査対象である日本国国軍、日本国国防軍に拘束されて、思い出すのも嫌になる程あれこれと聞かれて、つい先日解放されたのだ。

 そして、アルタラス王国へ渡り、民間路線を使用し、アイナンク空港へと戻った。

 

「しかし...........日本国の技術体系が全く分からなかった..........他の調査員が撮ってきた魔写だと...........」

 

 マイラスが胸ポケットから魔写を取り出す。

 そこに映っていたのは、国連海軍第7艦隊駆逐艦『カーティス・ウィルバー』であった。

(日本国の国旗は白地に赤の丸だったはず........だが、これは全く違う..........)

 

「120mmちょいの砲が1基に.........機銃がたったの2門、それになんだかこのマスは?そしてこの目のような物..........」

 

 訳のわからない装備、用途不明の装備、そして何より主砲がたったの1基、しかも120mmちょいしかない...........戦車は120mmの大口径を搭載しているのだから、艦砲も大きくていいはずなのだが.........。

 

「それにしても..........」

 

 マイラスはそう言いながら頬をさする。

 

「まだ痛い........」

 

 マイラスの右頬が微かに腫れていた。

 

 ガチャッ

 

 扉を開く音が聞こえ、反射的に席を立つマイラス。

 

「立たなくていいよ、かけたまえ」

 

 応接室に入ってきたのはマイラスの上司ウルゲン大佐だった。

 

「息災だったな。すでに概要は聞いてるが詳しく聞かせてくれ」

 

「はい.........まず日本国の技術レベルですが..........」

 

「結構開いてるだろうな.........30年ってところか?」

 

 ウルゲンがそう予想したが.........

 

「いえ、私の私見ですが、100年以上は離れているはずです」

 

 予想を超えるレベルの違いに絶句するウルゲン。

 そこまで行くと、文明圏外と、列強の差までいく。

 

「しかし、日本国の技術ですが、これを見てください」

 

 ウルゲンの前に先程マイラスが見ていた魔写を差し出す。

 それを見るウルゲン。

 

「120mm級の艦砲がたったの1門!?...........マイラス、お前はどう見る?」

 

「まずこれを見てください。私が見た戦艦の目測です」

 

 マイラスから渡された概要を見るウルゲンだが、次第にその目が開かれていく。

 

「なっ!!これはデタラメではないのか!?」

 

 そこに書かれていたのは、

 

船体

全長250m

全幅50m

 武装

主砲と思われる物 41cm

副砲と思われる物 20cm

対空機銃 4門

 スペック

速度不明

 

「こんなもの..........最近建造を終えたばかりのラ・カサミ級のスペックを上回るではないか!?」

 

 自国の最新鋭艦が東の果ての国家がそれを上回るものを作っていることに震えるウルゲン。

 

「だが.........証拠がない」

 

 マイラスは下唇を噛む。

 

「はい、小官もそう考えていました」

 

「我が国の兵器を全て上回る可能性のある国がある.........重大な脅威にも関わらず、証拠がないとなると.........」

 

 上層部は恐らく信じないだろう。

 上申書が上層部で嘲笑割れるのを容易に想像できた両名。

 

「とりあえず、証拠があるものだけを報告しよう」

 

「はい..........」

 

 裏が取れた事実のみを報告した情報部だったが、この報告書が後に『日ムー友好のきっかけの始まりの報告書』としてムーの歴史に残ることを、彼らは知る由もない。

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 同日 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 情報部 通信室

 

 

 通信室に電子音が鳴り響く。

 

「................閣下、ロデニウス大陸にいる諜報員からの報告です」

 

 スッキリとした黒い制服の男が通信士からの紙を受け取り、報告を始める。

 

「ロウリア王国のクワ・トイネ公国並びにクイラ王国への侵攻は、日本国の介入により、失敗に終わり、王家は失脚し、民主主義に移行したとの事です」

 

「何!?」

 

 いつもは概要を聞くだけで納得し、仕事は部下に任せ、責任は自分がとるという—有能なのか分からない—閣下と呼ばれた男の片眉がつり上がる。

 

「情報部の分析では、ロウリア王国の圧勝で、ロデニウス大陸全てがロウリアになるはずだったが............日本という国は聞いたことが無いが...........詳細は?」

 

「実は、その日本軍を調査していた諜報員が拘束されたようなので—」

 

 拘束、という単語の反応する閣下。

 

「馬鹿な!蛮族如きに我が帝国の優秀な諜報員が拘束される訳がないだろうが!!」

 

 あまりの剣幕に耳を閉じる黒い制服の男。

 

「ですが、デタラメなことを報告してくるとは思いません」

 

「うっ............そうだな............その日本国の情報は?」

 

「その調査をしていた諜報員が拘束されたことで、情報の精度は怪しいですが、日本国の参戦によって、ロウリア王国の4400隻の大艦隊は、日本の隊に一方的に撃破されました。地上でも、ロウリア兵は日本に傷を負わせる事無く敗れています」

 

 報告は続く

 

「なお、日本の兵装ですが、ロウリアの首都ジン・ハークでの目撃情報を分析するに、9000t級の重巡洋艦を目撃し、各巡洋艦には80から130mm程度の砲が、たったの1門しか付いていません。しかし、重巡の艦載機はすべて回転翼機とのことです」

 

「固定翼機とか、空母の確認は?」

 

「固定翼機、空母の目撃情報はありません」

 

「豆鉄砲が1門か、随分と歪な発展をした軍だな。今までの敵は、これで十分だったのだろう。回転翼機は我が軍でもまだ開発中どころか、構想段階だから、部分的には帝国の技術を超えているのか。だとしたら、戦闘機はそれなりに強力な可能性があるが、アンタレスの敵ではないな。しかし、砲の数と大きさから考えて、軍の運用面を考慮すると、随分と平和な世界に住んでいた国のようだな」

 

 閣下の考察は正しい。ただ、それが自分達と同じ土俵にいるならば、という条件がつくが。

 話が続く

 

「しかし、技術がこの世界の国から比べると、隔絶しているな。この国も、我が帝国のように転移国家だろうが............主砲が1門、しかも豆鉄砲の艦を作るようでは、日本国は恐れるに足りんな。多少の被害が出るかもしれんが、大局に影響は無いだろう」

 

 男は日本軍に興味を無くすが、諜報員が拘束されたことには危機感を持った。

 

「だが、こんな失態を知られるわけにはいかない」

 

 男は諜報員が拘束された事実を抹消し、その諜報員名簿から名前を消した。

 この行動が、後に帝国の衰退の原因の一つになることを、男は知らない。

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 パーパルディア皇国 国家戦略局 局長室

 

 

「この大馬鹿者がッ!!!」

 

「申し訳ありません!!!」

 

 パーパルディア皇国国家戦略局の局長室で叱責を受けてる男がいた。

 

「なぜ早々にその存在を伝えなかった!!おかげでこの独断先行が知られるではないか!!は〜」

 

 一頻り喚き散らした後、局長がため息を吐く。

 

「それで、その日本国の兵力についての情報は?」

 

「はっ...........現地諜報員からの連絡が途絶えておりまして、戦闘に巻き込まれて死亡したかと..........」

 

「民間人から情報を聞いたんだろう?」

 

「はい、入港したロウリア王国の商船などから情報を収集したのですが」

 

 曰く 日本国のワイバーンは音の速さを超える

 曰く ワイバーンを1撃で落とす

 曰く 鉄の獣がブレスで騎兵をなぎ払い、1撃で城門が粉微塵になった

 

「ふむ...........」

 

 局長が少し思案した後、答える。

 

「それは情報操作されたと見ていいだろう。それに現地諜報員が死んでいるなら好都合だ」

 

 意味が分からずに聞き返す局員。

 

「は?」

 

 局長が暖炉に書類を放り投げる。

 

「日本国の情報とロウリア王国への支援を記した書類は、一切残さず処分しろ。国家戦略局、自分自身、家族の為にもな」

 

「は」

 

 礼をしながら退出する局員。

 1人残された局長は呟く。

 

「日本国.........一体どういう国なんだ?」

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 日本国 市ヶ谷 国防省

 

 

 大臣室に広瀬と白井がいた。

 

「—魔法を利用すべき..........か........」

 

「魔法は全ての過程を無視できる技術だ。メリットは大きい」

 

 2人が話しているのは、魔法の軍事利用だった。ロデニウス各国の魔法技術指導で国防軍関係者は、『あれ?科学と魔法組み合わせたら最強じゃね?』という考えに至り、上に上申、今に至る。

 

「そして、科学要素を一切排除した物だから、文科省の方で、基礎研究が始まってる............まあ、異世界各国の協力で比較的早く進んでいるらしいがな........」

 

「工学艦娘が聞いたら喜んでやりそうな話だな。実際、絡んでるだろうけど」

 

 佐山の予想通り、明石家総員が関わってると言っていい。

 

「夕張もです」

 

「あ、そうだったな..........なあ、今夜飲みにいかん?」

 

「お前休みは?」

 

「これでも暇なんだよ、秘書と次官と誰かさんがほとんど捌いてるからな」

 

 佐山の公設秘書と私設秘書、防衛事務次官が広瀬の元に届く書類を選別していて、広瀬の認証が必要じゃないものは白井が認証しているという仕組みだ。

 

「その誰かさんはさぞ優秀なんだろうね〜」

 

「本当助かる」

 

「死ね」

 

「え?」

 

「すまん。口が滑った」

 

「え?」

 

 それから暫く黙る2人。

 

「そういえば、学術調査団を派遣するとか言ってたな。確かリーン・ノウの森とか言ったか?」

 

「そういえばそうだな、うちからもかなり派遣された筈だが.........」

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 リーン・ノウの森

 

 

 森の入り口前の開けた平野に男女2人のエルフがいた。しかし、この2人はただのエルフではない。ハイエルフと呼ばれる、普通のエルフよりも長生きし、魔力量も桁違いに大きい。

 そんな2人が森の入り口で雑談しながら待っていた。

 

「聖地に人族を入れるのは嫌だな」

 

 ウォルが呟く。別に彼は人間が嫌いという訳ではない、ただ聖地に人間を入れるのが嫌なのだ。

 

「ウォル!そんなこと日本国の皆様の前で言っちゃダメだよ!相手は人族とはいえ、ロウリア王国からクワ・トイネ公国、クイラ王国を救ったんだからね!」

 

 ミーナがウォルを注意する。

 

「そんなこと言ったてねぇ〜」

 

 ウォルはどこか納得しない様子だった。

 

「その日本国が本当に『太陽神の使い』と『星の戦士』達と繋がりがあるとは思えないんだよなぁ〜」

 

「本当だって!マイハーク沖にある人工島で、軍艦のマストに掲げられていた旗と、ロウリア戦で活躍した日本国の飛行機械に描かれていた太陽の印は、古文書に記されていた古代絵に描かれている太陽神の旗印と同じだったんだからね!それに噂だと日本国と共同作戦を行なってる軍も存在したらしいんだけど、それが伝承の星の戦士の旗印だったんだからね!」

 

「偶然じゃないのか?だって魔王との戦争があったのは一万年も昔の事だし、太陽神の使いと星の戦士達に関する事も大まかにしか記されていないんだし」

 

 ウォルが言う『魔王』『太陽神の使い』『星の戦士達』とは、かつてこの世界の神話として語り継がれている、ラヴァーナル帝国が残した『魔王ノスグーラ』と、この世界の種族が連合を組んで戦争を繰り広げていたという伝承の事である。

 伝承では、種族間連合が魔王率いる魔族にフィルアデス大陸を奪われ、当時は神森と言われ、特殊な力を有するエルフ達が住んでいるこの森に追い詰められた際に、長老達は、エルフ達が崇めていた緑の神に救いを求め、それを受けた緑の神が創造主『太陽神』に祈りを捧げた。

 彼らの願いを受けた太陽神は、自分の存在と引き換えに異世界から『太陽神の使い』とその盟友の『星の戦士達』と言う二つの戦士達を召喚。

 彼等は、ラヴァーナル帝国が保有していたような神の船を使って大地を魔物ごと焼き払い、水中を魚のように進む鉄の鱗を持つ水獣を操り、魔王軍をグラメウス大陸へと押し戻した後に、この世界から去っていたとされる。

 今二人が住んでいるこの森は、この時以来、自分達以外の人を森に入れた事は無く、彼らにとっては、これからロデニウス大陸の歴史調査でやって来る日本国の人間達は一万年振りのお客様となる。

 二人が話していると、目の前の林道の向こうから微かに音が聞こえてきた。

 

「なんだ?」

 

 暫くしていると、音が大きくなっていき、段々近づいてくるのが分かる。

 

「おい!あれっ!」

 

 林道の奥から見えてきたのは、緑色に塗られた軽機動装甲車と高機動車、31式特大型トラック、8つの車輪を装着している32式装甲兵員輸送車が車列を形成してやって来る。

 

「まさか...........伝承にあった、太陽神と星の戦士達が使っていた鉄鋼馬車っ!?」

 

 二人が驚くなか、さらに驚く原因がやってくる。

 

「ん?」

 

 空気を叩くような音が聞こえてくる。

 それを見た2人は、

 

「まっ!まさか!!!空飛ぶ船!?」

 

 『太陽神の使い』の伝承が彼らの脳裏によぎる。

 車両隊やヘリコプターは入り口直前で停車、着陸し、自動車から継ぎ接ぎの作業服を来た大学の考古学部と科学部を専攻する名誉教授や、国防軍関係者、国連軍関係者から派遣されてきた21人、クワ・トイネ政府から派遣された立会人が降りてくると2人の前に立つ。

 

「日本国より参りました、学術調査団代表、日本国内閣府異世界調査部第2課所属、国連大学日本キャンパス考古学教授、インディアナ・ジョーンズと申します。本日はお忙しい中、我々の突然の申し出と来訪、そして神森の調査へのご協力を我々一同、感謝の念に絶えません」

 

 長ったらしい所属名に困惑する2人。

 

「は、はい..........」

 

 ウォルとミーナは予想していた日本人の控えめな姿勢に再び困惑する。2人とも、最初は日本人達が横柄な態度をとってくるかと予想していただけに、その意外性に驚きを隠せなかった。

 

「では..........神森へご案内致しますので、こちらへどうぞ」

 

 ウォルとミーナの案内で、考古調査団と護衛の日国連合小隊20人は森に入っていく。

 

 そして2時間が経過し、調査団一行は森の奥地にまで足を進めていた。

 

「はぁ..........はぁ..........しかし、この森は不思議ですな。方位磁石は狂ったまま様々な方角を示しますし、どの方向を見ても同じような景色が続いて、目がチカチカしてしまいます」

 

「ここは神話の時代に、魔王軍の侵攻を食い止めるための最後の砦でしたから、神の加護の1つである、森の声が聞こえる我々でないと迷ってしまうのですよ」

 

「なんと!神の.......加護が実際に........はぁ.........働いているなんて........」

 

 インディアナの言葉にミーナが答え、インディアナは驚きつつも納得する。

 

「しかし、これ程の森を2時間近く歩いているのに、護衛の方々は全く疲れが出ていないみたいですね」

 

 護衛の合同小隊は、重い小銃と装備を担ぎながら平然と着いてくる。

 

「今回は政府が我々の護衛として、軍の中から精鋭を着けてくれましたが.........護衛なんていらないのに........」

 

「成る程...........練度の高さがよく分かります」

 

 2人に褒められ、内心嬉しさがある軍人達は表情に出さず、無表情で周囲を見回しながら歩き続ける。

 

「見えました、あれです」

 

 そうしているうちに目的地へとたどり着いた。

 先頭に居たウォルが指差した先にあったのは、森の中に不自然に開かれた平地に、草で覆われた石造りのドーム状の建物だった。

 

「石造りのドーム状の建物か.........これを作った奴は建築技術の天才だぞ。」

 

「見た所、石の表面には多少のヒビはあるが、殆ど劣化していない。基礎もしっかりしてるぞ。WW2に匹敵する技術だな..........」

 

 建物を見ながら調査団の面々は手にしていたメモに初見による建物の感想を書き綴る。

 

「では皆さん、こちらへどうぞ」

 

 建物前にある、鋼鉄製の扉の前にミーナが調査団を集めると、建物についての説明を始める。

 

「この中には、私達エルフにとっては無くてはならない大切な宝物なのです。既にご存じかと思いますが、魔王軍の侵攻により、この森に追い詰められた我々の祖先達は緑の神と創造主に祈りを捧げ、遂に魔王軍に対抗できる二つの戦士達が呼び出されたのです。それが、『太陽神の使い』と『星の戦士達』なのです。彼等はその持てる魔導でロデニウス大陸内に居た魔王軍をフィルアデス、最終的にはグラメウス大陸まで押し返し、役目を終えてこの世界から去っていきました」

 

 ミーナの次にウォルが説明に入る。

 

「しかし彼等には、役目を終えて動かなくなった神の船と鉄の鱗に覆われた水獣が居ました。彼等はこの世界を去る時に、それをこの建物の先と地下にある地下湖に残していきました。祖先達は、今では失われてしまった時間遅延魔法を使い代々それを大切に受け継いでいました」

「伝承では、神の船と鉄の鱗の水獣は共に戦いで自らの血を使い果たし、動かなくなったとあります」

 

 その説明を聞いて調査団と護衛の軍人達の心拍数は緊張感と期待感によって徐々に上がっていく。

 

「ワクワクしますね」

 

「あぁ.........何せこの世界の貴重な歴史を目にできるんだからな。考古学者としてこの時程のワクワクするものはない」

 

 教授達は子供のようにはしゃいでいるが、技術者達は先程の説明に()()()()()を感じつつも、それを口に出す事はなかった。

 

「それでは扉を開けますが、その儀式のため少しお時間を頂けますか?」

 

 調査団達はふたつ返事で了承し、ミーナとウォルは両手を合わせながら神に祈るような仕草で呪文を唱えると扉を覆っていた草木が、まるで生きているかのように動き出した。

 

「草木が...........」

 

「まるで生きてるみたいだ..........」

 

 調査団達は目の前の光景に目を見開く。

 

「おぉ..........扉が開くぞ。」

 

 草木が扉から離れると、扉が音を立てながらゆっくりと開く。 

 

「では行きましょう」

 

 調査団一行は護衛の小隊数人を入り口に残してドームの中へと入っていく。

 そして調査団の目の前にエルフ達が宝物と崇める、宝物の一つ目である神の船が現れる。

 

「これって!?」

 

「「「「ライトニング(F-35C)!?」」」」

 

 軍事関係者が声を上げる。

 目の前の格納庫のように広い場所の左右に置かれた神の船はF-35の他に複数存在した。

 まず最初に目に入ったのは、F-35だった。

 その隣には、迷彩を施されたヘリコプターがあった。AH-1S、AH-1Z、MV-22etc..........

 それらの機体に書かれていたのは.........

 

「陸上自衛隊!?」

「アメリカ海兵隊!?」

「アメリカ海軍!?」

 

 国防軍関係者、国連軍関係者が漢字を、英語を読むと、ミーナが驚きの声を上げる。

 

「この文字が読めるのですかっ!?この文字は太陽神の使いと星の戦士達が使っていた異界の文字なのです。我々にとっては未知の文字なので誰も読めなかったのですが...........」

 

 そこへ、奥へ先に行こうとして居た国連軍関係者が慌てた様子でインディアナに叫ぶ。 

 

「教授っ!!こっちにもありました!」

 

「何っ!?」

 

 そしてこちらにも同じく胴体には、この世界には無い文字と星の国籍マーク、白に赤丸の国籍マークが書かれている。

  

 先ほどと同じく、この世界には存在しない英語で『US NAVY』『US MARINE』と描かれている。

 

「なぜここに自衛隊と米軍の装備品があるんだ?」

 

 調査団一行の空気が重くなる中、ミーナが調査団に話し掛ける。

 

「あの............実はこの奥にも太陽神の使いと星の戦士達が使っていた火を吐く鉄の地竜があるのですが、ご覧になりますか?」

 

「「「「「是非っ!!!」」」」」

 

 彼らが更に奥に進んだ場所には、衝撃的な物があった。

 

「これは...........10式戦車じゃないかっ!!」

 

「こっちにはM1A1があるぞ!」

 

 そこには、鉄製の車輪に履帯を備えた車体の上に亀のような形をした砲塔から伸びる長い砲身を持った戦車や、前者よりも箱のように角張った砲塔とより強力な砲を備えた一回り大きな戦車などが4台程鎮座していた。

 回りには、陸上自衛隊の87式RCV、10式戦車。

 そして米軍のM1A1、M2A3。

 

「教授............」

 

「うむ。太陽神の使いと星の戦士達は間違いなく、国防軍の前身組織の自衛隊と、米軍だろう。装備から見て、西暦2030年よりまえの米軍だと見ていいだろう」 

 

 調査団の謎が深まる中、ミーナとウォルの案内で、今度は鉄の鱗を備えた水獣が安置されている地下湖へと通される。

 調査団一行はドーム状となっている神殿の更に奥、地下へと通じる入り口から入って行く。

 

「不気味ですね...........」

 

 地下へと続く石の階段を下りながら、インディアナは辺りを見回す。天井からは地下水の水滴が滴り落ち、地下独特の湿気により壁や地面は濡れており、滑らないように慎重に降りていく。

 

「ここは神話の時代には地下道により海と繋がっていたのです。太陽神の使い達は、出現した北の海岸からこの奥にある窪地に目をつけて、水獣の棲みかを作ったと言われています」

 

「今はどうなっているのですか?」

 

「神話の時代から現代に至るまでに起きた自然現象による土砂崩れと、地震による地殻変動で今は海との繋がりは完全に断たれています。そのため水獣の棲みかは巨大な地底湖となっているのです」

 

「成る程..........,」

 

 インディアナ達は水獣の正体について大方の検討は付いていたのだが、まだそう判断するのは早計として、敢えて口には出さずに居た。

 

「あれです..........あの扉の向こうに水獣が安置されています。」

 

 やがて最下部にたどり着き、大きな鋼鉄製の扉が現れる。

 

「ウォルさん、この扉は金属で出来ているようですが、あまり錆が見られませんね。それに最近、開けたような形跡が見られますが..........」

 

「はい。我々は毎年、水獣に祈りを捧げるために年に一度はこの扉を開けているのです。それにこの扉も時間遅延魔法によって作られた当時の状態を保っているのです」

 

 ウォルの言う通り扉の表面には錆は殆ど見られず、鍵となっている鎖を繋いでいる南京錠も同様である。

 

「ではこの扉の鍵を開けます」

 

 ウォルは懐から、木箱を取りだし、蓋を開けて中から一つの鍵を取り出し、南京錠に差し込んで回す。

 

「開きました。では扉を開けます」

 

 南京錠を開錠し鎖を退けると、扉を開ける。

 扉の向こうに広い空間が有るのは判るが、真っ暗で殆ど何も見えない。

 

「皆様、手にしている松明の火で中を照らしてみてください。」

 

 言われた通り、松明の火で辺りを照らしてみる。

 

 すると……………

 

「!?」

 

 ぼんやりと、辺りを青白い、人工の物とは異なる自然に近い光が照らし出した。

 

「これは我が国の地下において湿気が多い場所に生息する、ヒカリゴケと呼ばれる植物が放つ光です。これは暗闇において僅かな光に反応し青白い光を放つ特徴を持つ我が国独特の植物なのです」

 

 空間内の天井や壁に自生していたヒカリゴケは徐々に光量を強めていき、数分で広い空間を照らすのに充分な光量に達し、広い空間に幻想的な光景を写し出した。

 

「おい!あれをっ!!」

 

 インディアナが指差した所には、透明な淡水で湖底まで見える地底湖にひっそりと浮かんでいる、黒く巨大な影があった。

 それは誰が見ても明らかに潜水艦だった。

 

「これは間違いない!潜水艦です!」

 

「成る程...........鉄の鱗を持つ水獣とはよく言ったものだ」

 

「なみしお!?」

 

 潜水艦を見た女性の国防宇宙海軍関係者、元海上自衛隊潜水艦艦娘『おやしお』だった。

 護衛小隊の軍人2人とおやしおが先に安全確認のため、セイルに備えられた梯子を伝ってセイル上へと昇っていき、見張り所へと入る。

 

「どこかに中へ行くためのハッチがある筈だが..........」

 

「これです」

 

 『なみしお』は『おやしお』と同型艦だ。おやしおにとって自分の家に等しい。

 ハッチを開けて下に降りる。

 

「あ!ちょっと待て!」

 

 おやしおが急に走り出した。

 

「急げ!」

 

 おやしおが向かった先は艦長室だった。

 

「どうかしましたか?」

 

「これ..........なみしおではありません..........有人艦です...........おやしお型は全て艦娘運用艦、つまりこれは私たちの次元のなみしおではありません..........」

 

「あの.........その根拠は?」

 

「これです」

 

 おやしおが紙を差し出す。

 ライトでそれを照らし、読む。

 

「第2潜水隊群第2潜水隊所属おやしお型潜水艦『なるしお』艦長.......曽根崎裕介2等海佐...........間違いなく有人艦ですね..........」

 

「はい、とりあえずエンジンルームへ行きましょう」

 

 時々足を止めながらエンジンルームへ案内するおやしお。

 そしてエンジンルームへ着いた。

 

「僅かですが燃料が残ってますね」

 

 機関室に向かった3人が、僅かだが燃料タンクに燃料が残っているのを確認し、機関室に残されていたエンジン始動手順が書かれたプレートを頼りにエンジンを始動させると、艦内にディーゼルエンジンの独特なエンジン音が響き渡る。

 それはまるで、一度は失われていた命が再び吹き込まれ、息を吹き返したかのようだった。

 

「す、水獣が!」

 

「生き返ったっ!?」

 

 今まで目の前の潜水艦が動いているのを見た事が無かったウォルとミーナは、ディーゼルエンジン音がまるで心臓の音のように聞こえ、排気口から出てくるディーゼルエンジンの白い排気煙が水獣が息をしているかのように見える。

 

「お!」

 

 暫くして、ディーゼルエンジンにて発電された電気が蓄電池を通じて電気系統を動かし、今まで真っ暗だった艦内の照明灯が光りだした。

 

「1万年ぶりの復活だな」

 

「よく動きましたね、1万年も経てば電気回路などが腐食される筈ですが.........これもあの人達が魔法を使用したのと手入れをしたのでしょうね」

 

 だが残っていた燃料ではそれも数分しか保たず、エンジンは停止し、蓄電池にも蓄えられる程の電気が作れず、照明も消えてしまった。

 

「教授。この潜水艦は間違いなくおやしお型潜水艦なみしおです」

 

「やはり。太陽神の使いの正体は間違いなく日本人、星の戦士達はアメリカ人だ。それも、我々の前時代のな........」

 

 調査団はたった一日目で、この世界の考古学者の誰もが突き止められなかった太陽神の使いと星の戦士達の正体を突き止めたのである。

 これはこの世界、ひいてはクワ・トイネ公国にとっては歴史的な大発見とも言える。

 

「他にこの潜水艦について分かった事はあったか?」

 

「艦内の資料と表示板、そしておやしおさんの話だとおやしお型なみしおだそうです.........ただ.........」

 

「ただ?」

 

 話すかどうか悩んだ教授の助手だったが話すことにした。

 

「おやしおさんの話だと、これは我々の次元のなみしおではないそうです」

 

 潜水艦を指で指しながらそう言った助手。

 

「その根拠は?」

 

「これを」

 

 教授に紙を渡す。

 それはおやしおが艦長室で見つけたものだった。

 

「艦娘艦ではなく有人艦か........うん、納得した。日本の艦娘は旧世界でも世界1位なのに、これは有人艦..........別次元の自衛隊であることは明白だ。

 

 インディアナは、ウォルとミーナに顔を向ける。

 

「お2人とも、ここにある戦士達の遺産は我が国にとっても貴重な歴史遺産になるやもしれません。今後は調査の規模を拡大し、調査にご協力願いないでしょうか?」

 

 インディアナの問いに2人は互いに顔を合わせ暫く黙り込むと、中村に顔を合わせる。

 

「インディアナ殿、そして日本の皆様。私たちはここに置かれている歴史遺産のお陰で、こうして再びこの国とそして我々エルフ族が太陽神の戦士達と深い繋がりを持つ貴国と出会えた事を嬉しく思います。」

 

「貴殿方は間違いなく太陽神の使い達の住んでいた異界の国の方達です。今後の遺跡の調査は我々エルフ族が全面的に支援致します」

 

 2人はインディアナ達と固い握手を交わす。

 

 こうして、今まで謎とされてきた古代遺跡の真相に近づいたクワ・トイネ公国リーン・ノウの森には日本の軍民技術者や考古学者達が集まり、遺跡の更なる調査が開始された。

 そしてこの情報は日本国政府へともたらされた。

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 日本国 首都東京 首相官邸

 

 

 学術調査団の報告書を読んだ佐山はため息を吐く。

 

「は〜。この情報だと、別次元の自衛隊と米軍がこの世界での役目を果たした後、燃料の消耗と損傷が激しい装備品を残して帰還したと...........この装備品が異世界に出回ったら大変な事になるな..........」

 

 自衛隊と米軍が残した装備品はこの世界に置いて隔絶している。それがこの辺境の国にあるのだ、列強が知ったとしたら我先にと接収に来るだろう。その事態は望まなかった。

 

「しかし、重要なのは別次元の自衛隊と米軍は、元の世界に帰っているということです。それは我々も帰れる可能性が高いということです」

 

 茂木文科相が言う。

 

「仮にこの情報が本当だとしたら、我々は何かしらの役目を果たせば帰還できる可能性が高いということです」

 

 その後各省庁官僚らがあれこれ言い合う。

 佐山は何を言うでもなく、目を閉じて瞑目していた。

 

(一歩間違えれば国民に犠牲が出てしまう。その中で手に入れた帰還の可能性..............今後のことを考えると、この世界の列強、ムー共和国と接触すべきか............)

 

「みんな」

 

 佐山の一言で全員が話をやめて佐山を見る。

 

「この情報は国家最重要機密とし、世間には時期を見て公表する、いいな?」

 

 全員が頷く。

 

「それと、ロデニウス連邦の設立支援を急いでくれ」

 

 外務省関係者が頷く。

 

「そして本題だ...............この世界の列強、パーパルディア皇国とムー共和国と接触しよう」

 

 閣僚、官僚らががざわめく。

 国防軍がムー共和国諜報員の尋問によってムー共和国は比較的温厚な国家であることは判明しており、ムー共和国と接触するのはまだ分かる。

 しかしパーパルディア皇国はその諜報員、そして周辺国の情報提供によって、帝国主義であることが判明している。

 

「パーパルディア皇国に関しては、消極的な交渉でいい、無理はするな。ただ、ムーは艦隊を派遣しよう」

 

「積極的な交渉でいいですね?」

 

「あぁ、ただし、相手は異世界列強序列第2位の国家だ。国力はこちらが上だとしても、国際的地位は圧倒的に向こうの方が上だ。十分気をつけるように」

 

「は」

 

日本国の異世界列強との接触、吉と出るか凶となるか、誰にも分からない。  

 そして、過去、自衛隊と米軍がこの世界に来ていて、帰還しているという事実は、日本国政府の空気を重くした。

 

 

 

 

 




 明日をユメミル様の『後世日本国召喚 新世界大戦録』の閑話休題2、閑話休題3を参考、引用させて頂きました。
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 前話から間が空いてしまいました。1日100字程度でちょこちょこと書いていたんですがね〜。これ、話分割しようかと友人に話したのですが、『そのままでいいんじゃね?どうせあまり読まれないんだし』
と言われて納得。
 このまま1話1万字程度で進みます。
 では次回予告どうぞ。
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 次回予告

 講和会議が開かれ、『ロデニウス条約』締結した日本、クワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国。そしてその条約により、ロウリア王国は生まれ変わろうとしていた。ロデニウス大陸は少しの混乱があったが、一時の平和を謳歌していた。そして日本国政府は列強であるムー共和国とパーパルディア皇国に外交官を派遣することを決定する。そして、国防軍はピョートル・ヴェリーキイを旗艦とした国際親善艦隊をフェン王国に派遣、軍祭に参加する。しかし、その様子を見る黒い影がいた。

 次回『列強ムー共和国 その2』

パラレルワールド その1

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