異世界に、日本国現る    作:護衛艦 ゆきかぜ

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 祝『10000UA突破』

 晶彦様、いつも誤字報告ありがとうございます。
 評価をしてくださった、道化太郎様、ランス様、sx2様、ありがとうございます。
 感想をくださった方々もありがとうございます。
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 この時期になってもかき氷が未だにおいしい。主はメロンシロップが好きです。皆さんは何が好きですか?
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(宇宙戦艦ヤマト 無限に広がる大宇宙2199版)

 日本国は異世界列強ムー共和国へ使節団を派遣した。ムー共和国統括軍と外務省はマイラス・ルクレールへ日本国を探るように命じる。そしてフェン王国に派遣されていた艦隊が、ついに演習を開始し、その実力の一端を各国武官に見せることとなる。


列強ムー共和国 その2

 中央歴1636年 西暦2050年 3月12日 ムー共和国 アイナンク空港

 

「「あの時の............」」

 

 マイラスの視線の先には、黒の軍服を着て、ブラウンの髪を切り揃え、ブルーの瞳を持つこんごうがいた。

 

「「..................」」

 

 2人の間に沈黙が走る。周りはヒソヒソと話している。

 

(何があったんですかね?)

 

(さぁ.........?)

 

「こんにちは。日本国ムー特派使節団随行人、こんごうと申します」

 

 今までの事を無かったと言わんばかりにスラスラと自己紹介するこんごう。

 

「申し遅れました、日本国ムー共和国特別派遣団団長の『芹沢 輝』と申します」

 

 他の面々も自己紹介をする。

 

「どうも、これから皆様をご案内をするマイラス・ルクレールと申します」

 

 マイラスは激しい動揺を表情から消す。

 

「では、本日は長旅のお疲れを癒すために、首都にあるホテルへと移動します。私についてきてください。ですがその前に、お見せしたい物があります」

 

 マイラスは空港の駐車場へ行く前に、空港の空軍基地の一角にある格納庫へと使節団を案内する。

 格納庫には、1機のマリンが格納されておりマイラスは、日本の技術関係に探りを入れるため、マリンについての説明に入る。

 

「これが我が国の主力戦闘機マリンであります。最大速度はワイバーンよりも速い360km、航続距離850km、武装は7・7㎜機銃を2基備えています」

 

「「「「...............」」」」

 

 日本国使節団の全員が沈黙する。一部を除いて、『何これ?何で翼が2枚?』という状態であった。

 

「............イギリス軍のソードフィッシュにそっくりですね..........」

  

 こんごうが発した言葉にマイラスは反応する。

 

(そっくり............それにイギリス軍?)

 

 マイラスは探りを入れる。

 

「そのイギリスというのは?」

 

 それにこんごうが答える。

 

「言っても理解していただけないでしょうから............機会を見てお話しします」

 

「そうですか..........芹沢団長らが乗ってこられた飛行機械ですが、あれは魔法を使用しているのですか?それとも純科学製ですか?」

 

 マイラスはコスモシーガルの事を聞く。

 

「魔法は一切使用していません。科学と魔法を組み合わせれば、かなり相性がいいと、学会などで提唱されているのですが............如何せん未知の技術ですからね。難航を極めています」

 

 マイラスはコスモシーガルのエンジンが純科学製であることに、知っていたとはいえ驚く。

 

「全て科学で............他にも種類はあるのですか?」

 

「えぇ、ですが理解していただけないと思います」

 

 こんごうの答えにマイラスは『やはり』と言った表情となる。

 

「成る程、貴国にも航空機向きのエンジンがあるのですね。是非ともその構造や性能を見てみたいです」

 

「我が国と国交を結んで頂ければ、法律が許す限り貴国に対して技術に関する輸出が出来ますよ」

 

 マイラスは更に探りを入れるため、こんごうと芹沢にカマを掛ける。

 

「ところで貴国の航空機は一番速い物でどれくらいの速度が出るのですか?」

 

 その質問に関して芹沢とこんごうは目を合わせた。芹沢が『ご自由にどうぞ』と視線を送り、『了解です』と答えるこんごう。

 

「我が国の主力戦闘機の最高速度はマッハ7です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.................は?」

 

「マッハ7です」

 

「.........................」

 

 マイラスは絶句を通り越して発狂寸前だった。

 

(マッハ7だって!?、一撃離脱戦法どころの話じゃ無い!)

 

「そ、そうなんですか...........」

 

 マイラスはもう少し探りを入れるつもりだったが流石にこれ以上の事を聞くと、ショックが大きいとして、聞くのはやめた。

 

「では、オタハイトにあるルーズトゥーホテルへ案内します。どうぞこちらへ」

 

 空港の駐車場へ向かい、そこで迎えの車に分かれて乗る。

 滞りなく乗る使節団を見てマイラスは、

 

「やはり貴国にも車はあるのですね」

 

「一世帯に一台はあると思ってもらって結構です」

 

 どれだけの車があるのだと想像するマイラス。

 

「それだと結構な数がありそうですね」

 

「まぁ、想像を絶する数値です」

 

 具体的な数を聞きたいと思ったが、プライドがズタボロにされると思ったマイラスだった。

 

(それにしても極東の文明圏外にこんな国がいきなり現れるのか?)

 

 マイラスは日本の起源について聞こうとしたが、

 

「そろそろ到着です」

 

 と、運転手に言われ、口を閉じたマイラス。

 

「よいしょ」

 

 最後の1人が降車する。

 

「ではこちらへどうぞ」

 

 マイラスについていく傍、使節団は周りをキョロキョロと見ていた。

 

「.............厳重な警備ですな。極東の僻地から来た国の使節団なのに...........」

 

「ロデニウス大陸統一戦争後に我が国の存在はムーに知られたと推測しています。彼らが、自分たちから接触するか、来るのを待つかの時に、私達が来たのでしょう」

 

 ホテル周辺を警備していたのは、ムー共和国陸軍だった。

 

「安心できませんね............」

 

 列強たるムーが国軍を動員してまで警護する使節団はどこの国かと、野次馬が集まり始める。

 

「人が集まっていますね............」

 

 その後、部屋へと案内され、礼儀作法などを一通りマイラスから教えられた使節団は、今後の交渉に備えて英気を養った。

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 同日 ムー共和国 オタハイト ルーズトゥーホテル 深夜

 

 

 こんごうは充てがわられた部屋で誰かと話していた。

 

「ねぇ!どういう事!?」

 

『バレた?』

 

「バレたじゃ無いわよ!」

 

 こんごうは声を抑えながら怒鳴る。

 

「どう考えてもおかしいよね!?」

 

『まぁ頑張れ』

 

「あちょっ!—ブツッ!」

 

 こんごうは衛星電話をしまうと、大きくため息を吐く。

 

「あの野郎..............」

 

 こんごうは祖国がある方向を睨みながら寝た。

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 翌日 ルーズトゥーホテル ロビー

 

 

 使節団が服装などを整えてロビーに着いた時には、既にマイラスがいた。

 

「あ、おはようございます。昨晩はゆっくり休めたでしょうか?」

 

「えぇ、とても快適に過ごさせて頂きました」

 

 芹沢が代表して答える。

 

「そうですか。では早速今日の予定を説明します」

 

 マイラスは使節団に今日の予定を話した。

 

「—です。何か質問はございますか?...............無いようですね。では早速向かいましょう」

 

 使節団は車に乗り、海軍基地へ向かう。

 

 48分後

 

 ムー共和国首都防衛隊所属艦艇が停泊している港へ到着した。

 

「綺麗ですね」

 

 使節団の1人が岸壁から海を見て言う。

 

「見えてきました。あれが我が国の最新鋭戦艦のラ・カサミ級一番艦『ラ・カサミ』です」

 

「「「「おぉぉーー!」」」

 

 使節団の一部が『ラ・カサミ』を見るなり声を上げる。

 

「記念艦『三笠』そのものですな」

 

「あの方が見たら何というか」

 

「本人の目の前で言わないでくださいね」

 

「「分かっています」」

 

 こんごうから注意され、頷きながら答える団員。

 

「外部から見る限り、大きな違いはありませんね」

 

 こんごうが言う。

 

「素人から見ても違いはありませんね...........」

 

 使節団の話にマイラスが付いていけず、芹沢に質問する。

 

「あのー、その記念艦『ミカサ』?というのは..........?」

 

「おっと、失礼しました。三笠は我が国にある記念艦です」

 

「記念艦............どれほど前に建造されたのですか?」

 

「えーと............」

 

 芹沢がこんごうに視線を送る。

 

「三笠............敷島型戦艦4番艦の三笠は、イギリスのヴィッカース社で建造されました。竣工したのは1902年の3月1日です。今私達の時代で言えば、148年前になりますね」

 

「148年前............」

 

 マイラスは、日本国との技術格差はそれなりにあると思っていたが、その数十倍の数百倍も差はあると、認識を改める。

 

「あの、こんごうさん...........」

 

 芹沢とこんごうが何かを話すとこんごうが頷く。

 

「マイラスさん。貴国の最新鋭兵器を見せてくれたので、私達も貴官の望む艦艇の搭乗を許可します」

 

「え!?よろしいのですか!?」

 

「えぇ、貴国の最新鋭兵器を見せさせて頂きましたからね」

 

「ありがとうございます!」

 

 マイラスは気分が高揚し始めた。

 

「では、次にマイカル市内にある、歴史資料館へ移動しますが、よろしいでしょうか?」

 

「はい、構いません」

 

「では移動します」

 

 マイカル市内にある歴史資料館へと移動した。

 使節団はマイラスから説明を受けながら資料館内で展示されている資料や展示品を見て回る。

 

「では我が国の歴史についてのご説明に入ります。まず、各国には神話とか言い伝え程度としか信じて貰えていないのですが、我が国は元々この世界の住民では無いのです」

 

「え?」

 

「つまりどう言う事なのですか?」

 

「実は我が国は、12000年程前に、この星に大陸ごと転移してきた転移国家なのです」

 

 マイラスの言葉に耳を疑う使節団。

 しかしその疑いもマイラスの次の言葉で消える。

 

「そして、今私の手元にあるこの地図は、我が国が元居た惑星を表した物であります」

 

 マイラスが資料館の職員が資料室から持ってきた『ある物』を取り出す。

 

「これは、惑星にある大陸を示すための.............」

 

「地球、ですね」

 

「え?.............芹沢殿、今なんと?」

 

「地球です。この地図に記されている大陸は間違いなく地球の物です」

 

 マイラスは、自分達しか知らない故郷の惑星の名前と地図を芹沢が、使節団全員が知っている事に、驚きで表情が固まってしまった。

 

「これは.............大陸の配置に少し差異があるが、間違いなく地球の物に間違いない!」

 

「見てください芹沢さん。ここに知らない大陸がありますよ..........こんな大陸、前世界にありましたか?」

 

 オーウェンが見覚えのない大陸を指差す。

 

「マイラスさん、この大陸は一体............」

 

「.............あ、ここは我が国がある、いや、あったムー大陸で、南にあるこの大陸はアトランティス大陸です。前の世界ではこのアトランティス大陸にあったアトランティス帝国は我が国と世界を2分する程の国力を持っていました。しかし我が国が居なくなって、前世界はアトランティスが支配しているでしょうね。因みに、ここにある小さな列島はヤムートと言って、我が国唯一の同盟国でありました」

 

 マイラスが指差したのは、ユーラシア大陸の下に位置する小さな列島だった。

 

「これは...........間違いない!日本列島..........我が国だ!」

 

「確かに...........間違いありません、日本です」

 

 芹沢ら使節団の驚きようにマイラスは疑問の表情を浮かべる。

 

「芹沢殿、このヤムートについて御存じなのですか?」

 

「えぇ.............マイラスさん、突然ですが我が国の説明をさせて頂くと、貴方が指差したこのヤムートと呼ばれる列島は、我が国............つまりこれは日本国なのです」

 

「えっ!?」

 

 芹沢の説明にマイラスは全身が固まるような衝撃が走った。こんごうが手にしていたバックから端末を取り出し、世界地図を表示して机の上に乗せる。

 

「ありがとうございます。これが前世界における我が国が居た地球を示す世界地図です。ご覧ください、貴方がヤムートと言ったこの小さな列島は我が日本国なのです」

 

「.................」

 

「そして先程説明して頂いたアトランティス大陸は、陸地の形状から今は南極大陸と見て間違いありません。おそらく貴国が消えた事で地軸が相当ずれて、今の位置に動いたのでしょう」

 

 マイラスは興奮し驚いていた。

何せ、いま目の前に居る芹沢の話が本当なら、これは国を揺るがす程の歴史的大発見であるので、嫌でもそうなる。

 

「もしお二人の話が本当なら.............これは............歴史的な............時空を越えての大発見になりますよ!!日本国がかつてのヤムートなら、我々の出会いは12000年振りの再会となります!」

 

 マイラスは芹沢の手を取る。

 

「この事を直ぐ上に報告いたします! かつての友好国と再会できたとなれば、政府は貴国との国交開設に前向きとなるでしょう!」

 

 直ちにマイラスは外務省へ直通電話にてこの事を報告し、外務省を通じてムー国王や議会にもこの事実が伝えられ、政府は直ちに使節団が国王と会談するための準備を始める事となった。

 使節団はアイナンク空港に戻ってきていた。

 

「ではマイラスさん、国王陛下や政府上層部との会談はまだまだあるので、早速ですが見に行きますか?」

 

「是非!」

 

「ではこんごうさん、時間ギリギリまで案内をよろしくお願いします」

 

「わかりました」

 

 格納庫へ向かう2人。

 マイラスは移動中こんごうの事をずっと見ていた。

 

(綺麗だな...........何というか、人間離れしている..........)

 

「マイラスさん。何か考えていません?」

 

「ひゃい!?い、いえ何も..........」

 

 声が裏返りながら答えるマイラスだったが、こんごうは気にも留めず、真っ直ぐ格納庫に向かい、格納庫の入り口に到着した。

 

「あれ?機体が変わってる?」

 

「あ、班長」

 

「どうも。コスモ01と交代しました」

 

「あ、そういう事...........早速だけど、あかぎに向かって飛ぶわよ」

 

「.............なるほど、分かりました」

 

 こんごう艦載機の機長がマイラスを見て察したように話した。

 

「よし、飛ばすぞ!」

 

 ムーの整備士に協力してもらい、格納庫の扉を開ける。

 

「艦長」

 

「はい。いくわよ..........1、2、3!!」

 

 人力でSH-60Kを格納庫の外の駐機場まで押す。

 

「はぁぁーーー。お疲れ」

 

「ありがとうございます...........いちいち格納庫に人力で出し入れするのは面倒ですな」

 

「まぁ文句言わないの」

 

 不満げな機長を宥めるこんごう。

 

「はい。おし!準備に入るぞ!」

 

「「「「うし!!!」」」」

 

 エンジン始動の準備に入る。

 と言っても、ボタン1つ押すだけで起動できるが、舵の確認、アビオニクスの確認などをする必要がある。

 

「右、左、前、後、問題なし............アビオニクス確認よし。エンジンをスタートする!周囲確認!」

 

『問題なし!』

 

 外にいる整備士妖精から返事がくる。

 

「エンジンスタート!」

 

 ボタンを押す。

 APUの起動音が鳴り、しばらくしてコスモターボシャフトエンジンの独特の音を鳴り響かせる。

 

「近づくな!!」

 

 ムーの整備士が不用意に近づこうとしたのを制止する。

 

「テスト項目チェック終了。離陸する」

 

 パイロットがコレクティブピッチをゆっくりと上げていく。

 アイナンク空港に管制塔が存在しない為、ほぼ勝手に飛ぶことができるが、離陸した後の管制はあかぎが担当している。

 

『This is Akagi Air Traffic Control. No aircraft fly around. Allow any navigation.(こちらあかぎ航空管制。周辺を飛行する航空機はありません。任意の航行を許可します。)」

 

「Roger」

 

 マイラスはパイロットのやり取りに聞き耳を立てていたが、未知の言語を使用している為、聞くのをやめて、窓の外を見た。

 

「デカイ............400m以上はあるか?それになんだ?あの斜めの甲板は............

エレベーターが側舷に3つと密閉式が1つ? 側舷にエレベーターなんかつけたら波で海水が入っちゃうじゃ無いか............」

 

 ムーでも、パーパルディア皇国が数年前、竜母を開発開始の報を受けて、新型空母の開発を開始。つい最近、最新空母が竣工したばかりだが、この空母を見る限り、自国の空母の数世代は先を進んでいる。

 パイロットが再び無線で交信する。

 少しやり取りした後、巨大空母に向かってアプローチに入る。

 SH-60Kは、斜めの甲板へ着艦した。

 

「マイラスさん、外に出たら、頭を低くして歩いてください。じゃないとミンチになりますよ」

 

「わ、分かりました」

 

「開けます!」

 

 デッキクルーが近づいてきたのを確認すると、扉を開ける。

 マイラスは指示通りに頭を低くして安全範囲まで待避した。

 

「デカイ艦橋だ..............これだけの船体だとせいぜい18ノットか...........?」

 

 マイラスがあかぎの細部を見ていると、男が1人近づいてくる。

 

「お疲れ様です!こんごう艦長」

 

(ん!?艦長!?)

 

 その男がサラッと言ったことに驚くマイラス。

 

「お疲れ様。副長、副司令あかぎから聞いているだろうけど、この人の案内をよろしく。できる範囲でいいから彼の質問に答えて」

 

「了解です!それと、あかぎ艦長から艦長室へ来るようにと............」

 

「分かったわ」

 

 そう言うと、こんごうは艦長室へ向かった。

 

「ではマイラスさん。どこから見たいですか?」

 

 マイラスは暫く考えて答える。

 

「まずこの艦のスペックを教えて頂きたいのですか............」

 

「いいですよ。ただ、ここだと作業の邪魔になるので中の食堂へ向かいましょう」

 

 食堂へ移動した2人。

 

「ではこちらをご覧ください」

 

 副長がそう言いながらマイラスの前にタブレットを差し出す。

 

「これは............?」

 

 マイラスがタブレットを指さす。

 

「これは............そうですね...........無線が進化したものだと思ってください」

 

「はぁ」

 

「これが我が艦のスペックです」

 

 副長が自身の端末を操作し、マイラスに差し出したタブレットにスペックを表示させる。

 

「............なっ!?」

 

 マイラスは目を見開く。

 そこに表示されていたのは。

 

 

 

 船体

・全長 444m

・全幅 114m

・全高 56m

 

 機関

・次元波動エンジン 1基

・ケルビンインパルスエンジン 2基

 

 速力

・水上航行時、機関全力運転の場合、128ノット

・水上航行時、普通航行の場合、45ノット

 

 搭載機

・F-4B 98機

・E-8J 9機

・SH-60K 12機

・MCH-101K 3機

 合計122機

 

 武装

・CIWS 42基

・重力子スプレッドランチャー 2基

・多目的ミサイル発射管 複数

 

 

 

「何なんだこれは.............」

 

 そこにあったのは信じられない数値と、理解不能な単語が複数あった。

 ただこれだけは言える。

 

 

 

 

『ムーはどう足掻いても日本には勝てない』と言うことである。

 

 

 

 

「信じられない............」

 

「まぁそうでしょうな。自分達でさえ頭が逝かれてる数値だと思っておりますから..............」

 

「...............戦艦も見せてくれますか?」

 

「いいですよ」

 

 副長が再びタブレットを操作して表示させる。

 

「.................」—ドサッ!!

 

 マイラスが倒れてしまった。

 

「え!?マイラスさん!!マイラスさん!!」

 

 マイラスは医務室へ運び込まれたのであった。

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 あかぎ 艦長室

 

 

「失礼します」

 

 こんごうが艦長室へ入る。 

 

「来てくれてありがとう。早速だけど、彼はどう?」

 

「その前に質問よろしいでしょうか?」

 

「いいわよ」

 

「あれはどういうことですか!?絶対仕組みましたよね!?」

 

 思わず耳を塞ぐあかぎ。

 

「ねぇどういうこと!?ねぇ!ねぇ!?」

 

「何のことかワカリマセン」

 

「.................」

 

 こんごうは顔を更に真っ赤にしながらまくしたてる。

 

「絶対司令か総隊司令の入れ知恵でしょ!?」

 

「サァーナンノコトカナー」

 

「もういいです!」

 

 そう言うと艦長室から出て行ったこんごう。

 

「まさかあそこまでいくとはねぇ〜」

 

 これ以上からかうと自分の身を滅ぼすと思ったあかぎだった。

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『こ、ここは..........』

 

 マイラスの目が覚めると、そこには燃え盛る王城があった。

 

『陛下!うっ!!』

 

 マイラスが王城へ走ろうとした時、何かにつまづく。

 

『............!?』

 

 マイラスがそれを見た時、体が震えた。

 

『へ、陛下!?』

 

 そこには見るにも無残なラ・ムー国王がいた。

 

 ピカッ!!!!!!!!!

 

 ゴォォォォォーーーーーーーーーォォォン!!!!!!!!!!

 

 突然、目を覆うほどの光が発生し、巨大な火球、キノコ雲が出現した。

 

『あれはなんだ............』

 

 すると、猛烈な衝撃波が到達した。

 

『グッ!!』

 

 何とか耐えたマイラス。

 だが次の瞬間、想像を絶する暑さに見舞われる。

 

『あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!』

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!」

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 マイラスが周囲を見渡す。

 

「こ、ここは?」

 

 ガチャ

 

「あ、起きたんですね」

 

 部屋に1人の女性が入ってくる。

 

「あれ?汗が...........」

 

 そう指摘されて初めて気付いたマイラス。

 

「うわ............」

 

 服が肌に張り付いて気持ち悪い。

 

「シャワーを浴びます?」

 

「はい、お願いします」

 

 マイラスは個人室へ案内され、そこでシャワーを浴びる。

 浴びながらマイラスは先ほどの事を考えていた。

 

(さっきの夢............夢にしては現実的過ぎた...........オタハイトが壊滅的な被害を受け、そして謎の巨大な爆発.............)

 

 マイラスは自分の手を見る。

 

(どうなっているんだ..............)

 

 シャワーを浴び終え、着替えて外に出ると、あかぎがいた。

 

「こんにちは。副司令兼艦長のあかぎと申します」

 

「あぁ、この艦の..........何かご用でしょうか?」

 

「いやね、副長が案内していた所、突然倒れてそのまま2日間寝込んでいらしたのでね。そのお見舞いに。これ、どうぞ」

 

 あかぎがマイラスに紙袋を差し出す。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「では、お大事に」

 

 そう言うとあかぎは持ち場に戻っていた。

 

「2日も.............2日も!?」

 

 マイラスはようやく現実に戻る。

 

「まずい!!帰ったら処罰ものだ!!」

 

 使節団を政府中枢との会談の案内をしなければならないのに、あろうことか2日も寝込んでいたのだ。

 

「除隊確定だな.............いや!せめて有用な情報を持ち帰らないと!」

 

 自らの軍人生命の危機に全力で任務に当たると決めたマイラスだった。

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 後日 ムー共和国 オタハイト 議会

 

 

 ムー共和国議会で、日本国との条約締結について議論されていた。

 

「あの国は我が国より遥かに先を進んでいる技術を有している!確かに『技術流出防止法』が制定されておるが、少なくとも国交だけでも締結すべきだ!」

 

 そう言ったのはムー共和国政府与党の筆頭、『ハイリフォン・サーモ』である。

 彼は日本国との友好派閥の筆頭である。

 

「そう言うが!仮に国交を締結し、通商を開始したら、我が国の産業が軒並み倒産するぞ!!」

 

 そう日本国との国交締結を反対したのは、日本国との国交締結反対派筆頭の『アルゲイン・クラーク』である。

 

「確かに、日本国と国交を締結すれば、我が国の産業は壊滅的な被害を受けるだろう。しかし!日本国との国力・技術力の差は、この資料によれば、150年近くの差がある!そして、ムー統括軍情報局局員の『マイラス・ルクレール』の報告によると、あの『神聖ミリシアル帝国』の全てを上回るという報告が入っている!つまり、日本国と国交を締結すれば、あのミリシアルを上回れるということだ!」

 

 日本が『技術流出防止法』の緩和をする可能性は限りなく低いが、それでも国交を締結しといて損はない(得はある)という考えである。

 

「それは将来的には我が国の技術レベル、国力は上昇するだろうが、それは民心を失うものになるぞ!」

 

 日本の国会と違うのは、()()()()()()()()()()()()()()()()ことである。

 議会が白熱を増してきたところで、議長が、

 

 カンッカンッ!!

 

「そこまで!両者の意見は分かりました。なら直接日本国に使節団を派遣しましょう。幸いにも、日本国の使節を乗せてきた艦隊はまだオタハイトで停泊中。すぐにでも使節団を編成し、彼らの帰国と一緒に使節団を派遣すべきだと、私は思いますが、いかがでしょう?」

 

 議長が、日本国の情報が圧倒的に足りないと判断し、使節団をすぐにでも派遣する事を提案した。

 その後、賛成が過半数を占めて、日本国へ使節団を派遣することが決定し、日本国使節団へ通知した。

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 西暦2050年 3月18日 日本国 東京都 八王子市

 

 

「ここにくるのは............何十年ぶりかな............」

 

「敗戦後から来た覚えがないな。それにしても、崩御日に来なかったとは何事じゃ」

 

「すんません。どうしても仕事が片付けられなくて............」

 

 東京都 八王子市 昭和天皇 武蔵野陵にいたのは、白井と大巫女、そして三笠であった。

 しかし、白井はいつもの姿でなく、髪が微かに白みがかっていた。そして瞳は深青だ。

 

「さぁ、参ろうか」

 

 大巫女の言葉に無言で頷く白井と三笠。

 道中、一般参拝客に容赦なく視線を浴びせられたが、大巫女と三笠はかの海戦を生き延び、そして大戦を過ごした強者である。

 そして白井もほぼ同じである。

 3人は皇族拝所へ行く。

 

「変わらんな............」

 

 二礼二拍一礼をする。

 しばらくして、陵へ向かう。

 

「あの時は、ありがとうございました」

 

 白井が言う。

 

「はぁ〜。いつもそれだけか...........」

 

 三笠がため息を吐きながら言う。

 

「これしか言うことがないので」

 

「まぁ、良いではないか三笠」

 

「この天命が尽き果てるまで見守らさせていただきます」

 

「ふっ、抜かしおる」

 

 そして一通りの作業を終えた3人。

 帰り道、三笠が白井に思い出したかのように聞く。

 

「そういえば、お主はここに来ていいのか?政治的な問題もあろうが.............」

 

「ご心配無く。問題はありません」

 

「そうか...........」

 

「白井は昼を食べたか?」

 

「いや、まだです」

 

「では、どこか食べに行こうか?」

 

「いいですね。大巫女の支払いで」

 

「食えん奴め」

 

 3人の笑い声が周囲に響いた。

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 フェン王国 

 

 

 使節団がマイラスの案内でムーの各所を見ている時、フェン王国では軍祭が始まっていた。

 最初は各国の木造船による艦隊運動の披露。そして陸戦の模擬戦。そして最後の、今年の軍祭の目玉と言える日本国による海上標的への攻撃だ。

 ガハラ神国風竜騎士団長スサノウは、隣国、フェン王国の首都上空を飛行していた。

 今日は、フェン王国が3年に1回開催する『軍祭』が行われるため、その親善の代表として、3騎で上空を飛ぶ。

 軍祭は、文明圏外の各国の武官も多数参加し、武技を競い、自慢の装備を見せる。各国の、軍事力の高さを見せる事により、他国をけん制する意味合いもある。

 文明圏の国も呼びたいが、『蛮国の祭りには興味が無い』のが本音らしく、『力の差を見せ付けるまでもない』といった考えもある。

 そこまで文明圏国家と文明圏外国家は国力が隔絶しているのだ。

 スサノウは、上空から下を見た。

 常軌を逸した大きさの灰色の船5隻がいて、そのうち1隻は周りの船よりもデカい。

 

『やはりまぶしいな』

 

 相棒の風竜が話しかけてくる。

 

「大丈夫か?」

 

『大丈夫だ。支障はない』

 

 上空では、このような会話が行われていた。

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 ピョートル・ヴェリーキイ 艦橋

 

 

「時代錯誤にも程がある..........」

 

 艦長のミハイルが呟く。

 周りにはピョートル・ヴェリーキイを近くで見ようと、小型船や大型船で近づこうとしていた。

 

「警告汽笛、拡声器、魔信にて警告を」

 

 近づかれて接触事故でも起こされたらたまらない。

 

『本艦へ接近する船舶へ。接触の危険性あり、直ちに回頭、進路を変更されたし』

 

 それを受け、すべての船が距離を取る。

 

「信号旗、こちらの世界では意味がないのでは?」

 

「その通りだな」

 

「艦長。時間です」

 

 ミハイルが腕時計を見る。

 

「うむ。教練対水上戦闘用意!」

 

「正面砲戦。CIC指示の目標!」

 

「Стреляй!(撃て!)」

 

 ピョートル・ヴェリーキイのAK-130からF-44調整破片弾が毎分90発の速度で発射される。

 5隻あった廃船はわずか数秒で全てが粉微塵になった。

 

「全弾命中!標的の沈没を確認!」

 

 全弾命中の報告がはいっても、ミハイルは表情を変えなかった。

 

「つまらん」

 

 ミハイルはそう呟いた。

 しかし、このつまらない訓練を覆す事態が起こる。

———————————————————————————————————

 あきづき ソナー室

 

 

 水測員が海中の音に気を配っていた。

 

「.................」

 

 海中には様々な音が聞こえる。

 海流の音、鳴き声などなど。

 そこでは機械的な音が目立つ。

 

「.............水測長。本艦右舷90°。微かな機関音、スクリュー音を探知」

 

「潜水艦と思われる」

 

「了解。未確認音源をαとする。以降警戒を厳となせ」

 

「了解」

 

「こちらソナー室。本艦右舷90°報告に潜水艦らしき音源を探知。距離不明」

 

『了解。そのまま追跡を続行せよ』

 

 あきづきが得た情報は直ちに艦隊へ共有された。

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 ピョートル・ヴェリーキイ 艦橋

 

 

「どう考える?」

 

「間違いなくグラ・バルカス帝国の潜水艦かと」

 

「だよなぁ................司令部からの通知はなんだったっけ?」

 

 副長が端末を操作する。

 

「『艦隊が攻撃を受けた場合、国籍の確認、警告なしでの反撃を許可する』と来ています」

 

「なるほど............このつまらん演習を本物に変えてやろう」

 

 ミハイルが笑みを浮かべながら言った。 

 いくら国連海軍の所属となったからといっても、ミハイルは北の厳しい寒さに耐え、そして地獄のような訓練を全て達成してきた優秀な人物であった。そしてミハイルが求めていたもの。それは『実戦』である。

 ロシア海軍は実戦経験、小型艦艇などの実戦はあったが、ピョートル・ヴェリーキイのような大型艦の実戦はほぼなかったのである。

 

「いっちょやったりますか」

 

「旗艦より全艦に通達。対潜戦闘用意!」

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 すずつき CIC

 

 

『旗艦より全艦に通達。対潜戦闘用意!』

 

 ピョートル・ヴェリーキイより命令が下る。

 

「合戦準備、対潜戦闘用意」

 

 砲雷長の号令を発令員が復唱する。

 

「合戦準備、対潜戦闘用意」

 

 対潜戦闘の電子音がなる。

 

「各部配置よし」

 

「ピョートル・ヴェリーキイが艦隊前衛に入るのか............ミハイル艦長は自分で殺るつもりみたいね...........」

 

「あの人はかなりの武闘派と聞いています。血が騒ぐのでしょう」

 

 先日、あきづきに見せた姿から想像はできまい。

 

「それにしても、この大東洋だけでも4隻以上の潜水艦の存在が確認されています。鹵獲した潜水艦の調査の結果、見た目は『伊号400型潜水艦』であり、防音設備は潜水艦登場時レベルということです。伊号400型だと、航空機が格納されているはずですが、格納庫らしきものは確認されたが、そこには何もなかったということです」

 

「未だに世界の情勢、構成国家が不明な状況なのよ。その中で予想するのは困難だわ。もうここまでにしましょう」

 

「はい。航空機は発艦させなくていいのですか?」

 

「出さなくていいわ。いざとなったらあれを使います」

 

 すずつきの言葉に帽子を目深に被り直す副長。

 

「できれば使わない事を祈ります」

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 ???

 

 

「それにしても馬鹿でかい艦だ。グレード・アトラスター並の大きさはあるかもしれん」

 

 男が潜望鏡を覗きながら言う。

 

「しかし、宣戦布告していない相手の軍艦を撃沈するのはいかがなのでしょうか?」

 

「副長。この私に逆らうのか?」

 

「いえ...........決してそのつもりでは..........」

 

「確かに副長の言う通りだ。だが、今帝国では蛮国諸島を併合し、パカンダ王国と言ったか?その国との交渉は決裂寸前だという。それが失敗すれば、皇帝陛下はすぐにでも世界征服を命じるだろう。だから今のうちに撃沈し、それを後々報告すれば大手柄になるぞ」

 

 副長は帽子かぶり直す。

 

(馬鹿だ............もはや帝国軍人としての意義がない............)

 

 そう思いながらも表面には一切出さない副長。

 

「魚雷発射用意!」

 

 破壊の槍を発射する準備を始めたのであった。

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 ピョートル・ヴェリーキイ CIC

 

 

 ゴボポポォォォ

 

 扉が開く音と、気泡が弾ける音が聞こえてくる。

 

『こちらソナー室。潜水艦は魚雷発射管に注水をした模様』

 

 ソナー室より、淡々とした報告が入る。

 

「取舵一杯、右の腹を敵に見せるぞ。主砲発射用意」

 

 ピョートル・ヴェリーキイの艦橋が右に傾く。

 

『魚雷発射音探知。数8』

 

 ミハイルは自分の手元に表示されている、航走データを見る。

 

「角度5°で8線か...........本艦を仕留めるには過剰だが..........」

 

「2本が命中コースです」

 

「主砲発射用意!目標、本艦へ接近する魚雷」

 

「え?対魚雷用魚雷は使わないのですか?」

 

「相手の腰を抜かしてやろう」

 

「了解です」

 

「命中まで、20秒!」

 

「砲術長」

 

「はい!」

 

「外すなよ」

 

 砲術長は笑みを浮かべる。

 

「お任せを」

 

 砲術長がディスプレイを見て、タイミングを図る。

 

「Стрелять!(撃て!)」

 

 砲術士がトリガーを引く。

 艦首にあるAK-130より2発のF-44調整破片弾が放たれ、1つの魚雷に命中する。

 

「艦尾主砲、Стрелять!」

 

 艦尾にある主砲からもF-44調整破片弾が放たれ、これも魚雷に命中する。

 

「排除成功!」

 

「第2目標、敵潜水艦!」

 

「艦首、艦尾主砲、目標補足!」

 

「全力射撃!」

 

 AK-130の連装砲から毎分90発×2の速度で発射される。

 次々と、海面に水柱が乱立される。

 

「射撃やめ!」

 

 砲撃が止まり、砲身から冷却用に取り込んだ海水が出る。

 

「ソナー、どうだ?」

 

 しばらくして報告が入る。

 

『圧壊音と共に、着底音.........あっ、爆発音を探知』

 

『こちら艦橋。海面に油膜、何かの部品を確認しました』

 

「撃沈、ですな」

 

 砲雷長がそう言いながらミハイルを見ると、今まで見たことがない笑みを浮かべていた。

 

「うむ。ご苦労」

 

 満足そうに頷きながらそう言うのだった。

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「すごい............」

 

 ピョートル・ヴェリーキイが潜水艦を始末するのを見ていた観客、各国武官、軍人は身を震わせる。

 

「なんだあの魔導砲の連射速度は...........」

 

「それにあの速度、そして旋回性能。日本国恐るべし」

 

 各国武官は、本国に帰った後、すぐに日本国と国交締結するように求めるのであった。

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 フェン王国軍祭も最終日を迎えた。

 各国は軍の装備品を展示などをしているが、日本艦隊は、あきづきの公開。そして、各艦の給食員がブースを出して、手作り輪投げや食事などを全て無料で提供した。

 

「うまい............」

 

 トーパ王国武官のサイモンがカレーを食べてそう評する。

 

「程よく辛味が効いている.............それにしてもこれだけの量をタダで配るとは............」

 

 サイモンは別のブースを見る。

 そこでは輪投げが行われていた。

 輪が入った場所の得点に応じて景品がグレードアップする仕組みだ。

 

「このような、国民に対してこのようなことができるなど..........」

 

 この世界の軍隊は基本的に国民の相手は下手である。

 

(我がトーパ王国軍は陛下などの接待はできるが、国民に対してここまですることができない。それに逸れた子供をフェン王国の軍と協力..........異国同士だと言うのにスムーズに対処が進んでいる)

 

「凄い............」

 

 サイモンの口から本音が漏れた。 

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 フェン王国 沖合

 

 

 フェン王国沖合にある離島に“それ”はあった。

 

「おーーーし。上げるぞーーーー!!!!」

 

(花火音源はYouTubeにて各自よろしくお願いします)

 

「「「「「「「「「「おおおぉぉぉぉーーーー!!!」」」」」」」」」」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 一斉に声を上げる。

 

「綺麗ですね〜!」

 

 親善艦隊の甲板などから乗組員が自身の携帯、ビデオをなどで写真、動画を撮る。

 花火の光で時折船体が色とりどりに照らされる。

 それから10分以上花火が打ち続けられた。

 そして翌朝、フェン王国軍祭の閉会が宣言された。

 この軍祭は日本国のイメージを各国に強烈に植え付けることとなった。

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 日本国 首相官邸 総理執務室

 

 

 ムー共和国政府が使節団へ通知した内容が政府へ伝えられた時の話。

 

「—とのことです」

 

「想定外、でいいのか?」

 

「まさかすぐに使節団を派遣してくるとは...........」

 

「目的はやはりうちの超技術だろうな」

 

 官僚があれこれ言い合う。

 

「しかし、ムー共和国と通商をすることができれば、我が国の物品は飛ぶように売れますぞ」

 

 経産相が言う。

 

「まぁそれは置いといて、国防省。何か言いたいことがあるんじゃないか?」

 

 佐山は広瀬を見る。

 

「えぇ、実はロデニウス大陸通商ルートにクラーケンの存在が確認されました」

 

「「「「「...................は?」」」」」

 

「クラーケンです」

 

「あのイカ?タコ?がいると?」

 

「えぇ、間違いなく確認されています。今のところ被害は出ていませんが、のさばらさせていると被害が出るかもしれません」

 

「草案は?」

 

「白井............白井?」

 

 広瀬が白井に合図を送ったが返事がないので後ろを見ると、居眠りしていた。

 

 ブチブチ

 

 誰かの血管が切れる音が聞こえたが気のせいだろう。

 

「凄いですな。会議中に寝れるなど」

 

 閣僚、官僚は別の意味で感心する。

 隣に座っている参事官が揺するが反応なし。

 

「爆睡ですね」

 

「............ん?髪が白くなってません?」

 

 1人の言葉で白井の髪に注目する。

 

「本当だ」

 

「どうして白になっていくんだ?」

 

 ガツッ!

 

「ヘッ!?」

 

 広瀬に叩き起こされた白井。周りを見てすぐに状況を把握する。

 

(やべ..........寝てたし、姿が昔に戻りかけてる.........)

 

 髪の色が黒に戻る。

 部屋の注目が白井に集まる。

 しかし何人かは素知らぬ顔を続けている。

 

「...........なんでそんなに俺を見る?」

 

「なんで髪の色が変わるんですか?」

 

 官僚の1人が代表して聞くが、

 

「ゴホン、話を戻そう。白井、クラーケン対策の草案を」

 

「はい、現在は応急処置として船団護衛を行なっていますが、それでは根本的な解決にはならないので、クラーケンの駆除を検討しています。そうすれば、船団護衛をわざわざ組む必要がなくなり、隊員の疲労軽減、そして各国への貢献へと繋がると考えています」

 

「有害鳥獣駆除を適用するのか...........」

 

「もはや害獣ではなく()()ですな」

 

 官僚の言葉に笑う閣僚、官僚ら。

 

「なら、旧自衛隊時代から続く伝統、怪獣退治を頼む。法整備は後ほどやる」

 

「「はい」」

 

 国防省関係者が頷く。

 後に、『怪獣対策法案』が施行され、ネットでは、『()()()法案』と呼ばれるようになったのは後の話である。




 挿絵
https://www.pakutaso.com/20120818216post-1791.html より引用。
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 えぇ〜。フェン王国の軍祭はあっさり味で終わってしまいました............すいません。
 この話で納得できないところが多々あると思いますが、それはいずれ判明するでしょう(多分)。
 そして前回の投稿から空きが空いてしまいすいませんでした。
 では次回予告、どうぞ
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 次回予告

 ムー共和国は使節団を日本へ派遣した。そしてそこで日本国の真の姿が明らかになる。そしてフェン王国の軍祭で注目を浴びた日本国は文明圏外国家を中心として接触を求められる。

 次回『列強ムー共和国 その3』

 

パラレルワールド その1


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