アスナ体験   作:のっちっの

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誤字脱字報告ありがとうございます。


私のパソコンはポンさんでまともに動かないのでスマホで書いてるのですが、そのため元の文章力以外に誤字等でも見づらくなることがあります。許して。





おいしいって素敵

 

 

 

迷宮区の最寄りの町である《トールバーナ》は始まりの街を除くと一層で最も栄えている。とは言っても巨大な風車塔が立ち並ぶ、のどかでゆったりとしたこの町は端から端まで200mぐらいであるが。

 

町...というには少し小さい気がするがゲーム内の町と思えば納得できる。

 

 

そんな町にある細剣使いと盾なし片手剣使いが到着したのは周囲がすで暗くなってからだった。

 

 

(失敗した失敗した失敗したっ!)

 

 

無事に町に着きホッとした片手剣使い(キリト)の後ろでトボトボ歩くアスナ()は負の感情に苛まれていた。

 

 

原作アスナは事情がどうあれ自らの生命を(かえり)みない自暴自棄じみた行為(攻略)を後悔していたが、今のアスナ()はそんなレベルではない。

 

 

(...よりにもよって主人公(キリト)に攻撃を仕掛けるなんて!!)

 

 

まだ限界ではなかった...はずだ。誤って攻撃してしまったのが他プレイヤーであればすぐ謝罪をして狩りに戻っただろう。

 

吐き気を催すほどの睡眠欲も、腹が痛むほどの空腹感も、身体を蝕むありとあらゆることは偽りの電気信号であり、点滴に繋がれているであろう現実世界の身体に異常をきたすものではないと認識すれば、数日我慢すれば後はなにも感じなくなっていた。

 

意識は朦朧としていなかった。逆にこれ以上ないほど冴え渡っていたと思う。今の自分(アスナ)ならなんでも出来る気がしていたのだ。

 

 

 

 

............実際にはこの状態はランナーズハイという結構危険な状態だったのだが。

 

 

 

 

 

いくら薄暗いからといえ、そんなことは理由にならない。

 

俺の1つの、しかし重大なミスのせいで原作が壊れてしまった。

 

 

最初から全く同じ展開にはできないとは思っていた。アスナとアスナ()は違う。だが劣化版だとしても精一杯やり抜き、それでもクリアできないのなら仕方がない...と若干の諦めを感じていた。

 

 

 

しかし、......考えうる中で最悪の事態だ。キリトと敵対関係になってしまう可能性も充分にある。

 

 

 

キリトであれば仮にアスナ()がいなくともどうにかするかもしれない。

 

だが.........だが万が一、原作とは大きく異なったことで主人公(キリト)の身に何かあれば...

 

 

 

「……………サーさん?」

 

 

 

1万人の命も、止められるはずのある男の陰謀も、硝煙舞う世界のある少女の未来も、その先もその先もその先も、俺のせいで...

 

細剣使い(フェンサー)さん!」

 

 

「っ!?」

 

 

誰かに肩を掴まれる。キリトが心配そうにこちらを覗いていた。

 

 

「...どうかしましたか?」

 

動揺をなるべく隠して尋ねる。

 

 

「......何か考えてたようだけど、町に着いたから声を掛けたんだが...」

 

 

...いつの間にか《トールバーナ》の門の前にいた。考えるのに夢中で気づかなかったようだ。

 

 

「...そうですか、案内ありがとうございました」

 

 

「会議は2日後の午後4時から中央広場で開かれるらしい」

 

 

「わかりました...」

 

 

「会議に向けてこの町にかなりのプレイヤーが集まってるだろうけど、あんたは宿のアテはあるのか?」

 

 

 

 

 

............

 

 

「えぇ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 

今できる渾身の笑顔を見せて答える。

 

 

 

...アテなんかない。これ以上迷惑を掛けたくない。

 

 

 

「...そうか、なら一つだけ、いくら避けるのが上手くても最低限の防具はつけたほうがいいぜ」

 

 

「...ご忠告感謝します」

 

 

攻撃してきた相手にも助言をする優しい主人公が、アスナ()をどんな目で見ているか知るのが怖くて......頭を下げすぐさま(きびす)を返す。

 

 

「......」

 

その小さな後ろ姿を見る片手剣使いの眼差しは、憂いを帯びていた。

 

 

 

 

×××××××××××××××××

 

 

 

 

 

この世界(SAO )は現実の四季や気候が反映されており、今日は比較的暖かい日といえど、日が暮れた12月前後はかなり寒くなる。

 

 

 

白い息を吐きながらアスナ()は街灯の光が辛うじて届いている路地裏のある街路樹の下に腰を下ろした。

 

その手にはこの町で買った道具屋の最安の黒パンを持っていた。

 

 

 

(...寒い)

 

パンを買った道具屋で一緒に毛布でも買えばよかったと少し後悔しながら、無意識に白い息を手に吐き掛け擦り合わせる。

 

 

この数日の狩りで出たモンスターの不要なドロップ品を道具屋で売ってかなりの金額(コル)を稼げた。

 

それはゲーム序盤の1層といえども、かなり良い食べ物を買っても懐は痛まないほどであったが、他の食べ物を探す気力がなかった。

 

 

 

数日ぶりの食事だというのに手が進まない。

 

始まりの街にいた頃とは比べものにならないほど上がったステータスを持ってしても固い黒パンを、苦労して一口大にちぎり無理矢理にでも口に運ぶ。

 

ゴワゴワした食感の酸味のあるパンは口の水分を急激に吸っていく。

 

 

(...空腹は最高の調味料とは言うけど、美味しくないものは美味しくないんだな)

 

 

 

こんなものでも現実なら美味しいのだろうか...?

 

仮想世界の中で不味いという情報が入力されている黒パンを食べているから、美味しいと感じないだけなのだろうか...?

 

 

口の中のパンを強引に飲み込む。

少量腹に入れても忘却した空腹感は戻ってこなかった。

 

アスナ()は壊れてしまったのだろうか。

 

 

...それもいいのかもしれない。全てを削ぎ落としたら最強に並べるだろうか。

 

 

 

 

食べるのを忘れ、そんなことをぼんやり考えていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっこう美味いよな、それ」

 

 

背後から声がかかった。かなりびっくりしてしまった。

 

 

「隣、座っていいか?」

 

 

「ッ!?............ストーカーなの?......なんですか?」

 

びっくりしすぎて素で恩人(キリト)に毒を吐いてしまった。

 

 

「無理に敬語にしなくていいよ。......あと状況的にはそう思っても仕方ないけど全力で否定させてくれ...」

 

キリトは少し傷ついた顔で苦笑しながら隣に勝手に座る。

 

 

 

「このパン、毎日一個は食べてるよ」

 

 

「......」

 

 

「...信じてないな?まあ、ちょっとは工夫するけど」

 

 

「...?」

 

 

キリトってこんなにコミュ力あったっけ?俺が知るキリトはコミュ障でかなり親しくならないと気軽に話しかけてこないような人物だった気がするが。

 

 

 

 

 

 

.........実際は心配でこっそりとついてきたキリトが、細剣使いがパンを一口食べた後動かなくなったから、話題振りに手頃な食べ物の話を振っただけなのだが、キリト以上にコミュ障の細剣使い(ポンコツ)には凄く思えた。失礼な言い方をすれば小学生の低学年が高学年の生徒に憧れるようなものである。

 

 

 

 

 

 

 

キリトはおもむろにメニューからアイテムを取り出し使用した。

出てきた小さな壺型のアイテムを見たときに思い出す。

 

 

 

 

(これって...クリームパンイベント...!)

 

 

 

クリームパンイベントとは原作でも味気ない黒パンで一人飯していたアスナさんの元に来たキリト君が提供した、クエスト報酬の食材アイテムであるクリームを付けたパンをアスナさんがめちゃくちゃ気に入るイベントのことである。

 

 

 

 

 

 

 

キリトは指先に纏った仄かな紫色の光を新たに取り出した黒パンに付ける。

 

すると付けたところから見るからに濃厚なクリームが現れ、たっぷりとクリームが付いたパンを大きな口でかぶりついた。

 

もっぎゅもっぎゅと音が出ているかのような食べっぷりに...

 

 

「......使ってもいい...?」

 

 

「ん?はあ(ああ)ひいほ(いいよ)

 

 

 

俺は置かれた壺型アイテムをタップして、指先に纏った光を手元の食べかけの黒パンに付ける。その一回で使用限度に達したのかアイテムが粉々に砕け散る。

 

 

手の中のどっしりとしたクリームが乗ったパンを見ると懐かしい感覚を覚えた。

 

脳が命じるままに小さな口を懸命に開け頬張る。

 

 

 

 

 

 

その瞬間、身体が震えた。

 

 

 

 

 

このときに初めて生を実感する。...流石に大袈裟すぎたかもしれないが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ、フェンサーさん?!」

 

キリトが驚きの声を上げた。

 

 

 

 

気づくと両眼から溢れんばかりの涙が流れた。慌てて拭うもの拭いた側から溢れる。

 

 

「...っ!あれ?...っ......おか...しいな......止まらなっ......どうして...」

 

 

 

 

 

その姿を見たキリトは咄嗟に前々から考えてたことを口に出す。

 

「...............なぁ、フェンサーさん。泊まるとこないんだろ?もし......もしも...嫌じゃなければ......うちに来るか?」

 

 

「......っ...」

 

 

それはコミュ障の精一杯の勇気。見るからに誘い慣れていない感丸出しであった。

 

 

さて、その結果は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......っ...それって...ナンパ...?」

 

 

 

「ち、違っ「アスナ」...え?」

 

 

 

「私の名前、フェンサーさんじゃない。アスナ」

 

 

 

「......俺は...キリトだ、...よろしく..........?」

 

 

 

「うん、よろしく......キリト君」

 

 

 

 

その慣れておらずキョドってる姿が、なんだかおかしくて、可愛らしくて、

 

 

 

 

 

 

 

 

久々に笑えた気がした。

 

 

 

 




アスナ「こんなぼっそぼそのかったいパンに多少クリームつけたぐらいで美味しくなるわけないやろがい!.........は?なにこれうっま」


原作のクリームパン即堕ちアスナかわいいよね

今作のアスナさんはかなりマイナス思考のめんどくさいおとk...女の子です




昨日の夜に急に閲覧者数が増えていたので???と思ったら日刊ランキングに見たことある文字が...

これです。大混乱です。すぐ消えたのでバグ説ありますが、皆様ありがとうございました。

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