オーシア連邦召喚   作:スカイキッド

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投稿がめちゃくちゃ遅れた気がする……
 


第10話「ロデニウス沖大海戦・上」

 

中央暦1639年4月14日

ロウリア王国/北部海域 

 

 

 そこには密集して行動する大船団がいた。ロウリア王国海軍東方征伐艦隊4400隻は、クワ・トイネ公国の経済都市マイハークに向けて悠々と大海原を突き進んでいた。

 

 

「壮観な光景だ。実に美しい」

 

 

 艦隊旗艦の船楼で、艦隊司令のロウリア軍の提督シャークンは艦隊を眺めながら満足そうに呟く。帆船の群れは帆いっぱいに潮の風を受けて大海原を突き進む。

 

 その数なんと4400隻、14万にも及ぶ大量の水夫を乗せて彼らはクワ・トイネ公国を目指していた。見渡す限り船ばかりである。俗に言う船が七分に海が三分とはまさにこのことだろう。

 

 六年をかけた準備期間、列強であるパーパルディア皇国からの軍事援助を経てようやく完成した大艦隊。この艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸の国には無いだろう。

 

 いや、もしかしたらパーパルディア皇国でさえ制圧できるのではなかろうか。この大陸最大かつ最強の大艦隊、これならば支援元にも余裕で勝てるであろう気がしてきた。

 

 

「……いや待て、パーパルディアには砲艦なるものが存在するのだったな………」

 

 

 彼は一瞬出てきた野心の炎を理性で打ち消す。第三文明圏の列強国に挑むのは今のロウリアではリスクが大きい。気を紛らわすため、彼は正面の海を眺める。そのとき彼の視界に何かが入る。

 

 

「ん?……何かが飛んでいる?」

 

 

 遥か遠くの空、遠すぎて点にしか見えないが何かが複数飛んでいる。クワ・トイネのワイバーンでは明らかに航続距離が足りない、ロウリア軍ワイバーンも近辺にはいない。――とするとあれは何であろうか?

 

 

 艦隊上空を『それ』はおそろしく凄まじい速度で通り過ぎた。矢じりのような形、灰色に塗られた機体、後ろから炎を吐きながら、通り過ぎる直前にキーンという轟音が彼らの元へ届く。

 

 

「は、速すぎる!!」

「なんだ今のは!!」

 

 

 彼らが見たのはマッハ0.9という猛烈な速度で艦隊上空をフライパスした、オーシア海軍第7空母航空団のF-35C、F/A-18F、ラファールMからなる戦闘機隊の姿だった。

 

 オーシア海軍戦闘機隊はロウリア北部を航行している艦隊がロウリア王国のものかを確認すべく、一度艦隊上空をフライパスする。パイロットらはすぐに艦隊がロウリア王国の国旗をはためかせていることを確認した。

 

 

≪目標艦隊はロウリア王国のものと確認した。全機攻撃を開始せよ≫

 

 

 翼を翻らせ、次々と急降下し始める戦闘機には大量の様々な対地兵装が満載されていた。対艦攻撃に最適な長射程空対艦ミサイル(LSM)は帆船相手では費用対効果が低いと判断されたため、どのオーシア機も搭載していない。逆を言えばLSMも必要ない相手である。

 

 

≪攻撃開始! クワトイネ旅行に来たロウリアのお客さん達に海水浴を教えてやれ!≫

≪全機エンゲージ!≫

≪ターゲットロック! フォックス2、フォックス2!≫

 

 

 攻撃開始の指示と共に、一斉に全機が搭載するありとあらゆる火器を目標のロウリア帆船に向けて発射し、投射する。

 

 解き放たれた大量の爆弾が、ミサイルが、クラスター爆弾が、重力とシーカーの誘導管制に従いロウリア艦隊の頭上に降り注ぐ。何百発もの破壊の嵐がロウリア艦隊を襲った。

 

 オーシア軍機から投下されたありとあらゆる対地兵装は、ロウリア軍に対してその威力を確実に解放した。何十隻もの帆船が爆発に呑まれ、何隻もの帆船が水柱に揉まれ転覆する。

 

 木っ端微塵となって吹き飛んだ木片や船の部品が血肉と共に周囲に撒き散らされ、海上にバラバラと降り注ぐ。

 

 ロウリア船団は密集隊形で航行していたことが仇となり、あっという間に何十隻という船達が爆発に呑み込まれて木っ端微塵となり、ただの残骸と化して海上を漂う。

 

 

≪命中、命中!≫

≪いいぞいいぞ、もっと爆弾を落とせ!!≫

≪目を閉じても当たるぞ!≫

 

 

 上空のオーシア機からも、多数のロウリア船舶が吹き飛ぶのが確認できた。また燃え尽きなかったナパーム弾の油が炎上しながら残留し、海上を燃やしている。

 

 やがて凪いだ海にいくつもの破片や肉片が浮かび、海面は様々な物体によって埋め尽くされる。遅れて聞こえてくる悲鳴、怒号、断末魔の混声合唱が海上で木霊して地獄さながらの光景をさらに過激に際立たせていた。

 

 

「な、何が……一体、何が起こったのだ!!?」

 

 

 シャークンは突然すぎる出来事に狼狽えた。謎の未確認騎の編隊が一度こちらに向かってきたかと思うと、それらは直後に大量のなにかを艦隊に向けて投下し、次の瞬間には海が爆発したのだ。

 

 こんな光景をシャークンは見たことがない。狼狽えるのも仕方のないことであった。だが先ほどの未確認騎の編隊が再び艦隊に向かい、またまた大量に何かを投下して海が艦隊ごと爆ぜる。

 

 シャークンが思考の海に潜っている間にも、艦隊の船が何隻も何隻も秒間隔でまとめて沈められて行く。

 

 

「いかん、このままでは全滅してしまう!通信士、ワイバーン部隊に上空支援を要請だ!ここならまだ味方ワイバーンが届く距離、敵主力と交戦中と伝えろ!」

 

 

 シャークンは通信士に向けて命じる。未確認騎の数は20騎にも満たない、おそらく空を飛ぶワイバーンの大群であれば、きっと勝てる筈だと信じて。それが無駄だということを彼はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

同時刻

ロウリア王国 王都ジン・ハーク/王国軍総司令部

 

 

「ロウリア王国東方討伐海軍より通信。本艦隊は現在敵主力航空戦力と現在交戦中、航空支援を要請するとのことです」

「ほう、敵主力か……」

 

 

 パタジンはシャークンからの通信を聞き、すぐさま指示を飛ばす。

 

 

「竜騎士団に命令。直ちにワイバーン250騎をロウリア王国艦隊の航空支援に差し向けろ」

「250騎もですか? それでは本隊からワイバーンがいなくなりますが……」

「聞こえなかったのか? 250だ。少数を逐次投入するのは用兵においては愚の骨頂、大戦力で一気に畳みかけるのだ」

「はっ!」

 

 

 命令は竜騎士団に伝えられる。もしこの時点でパタジンの下に、地上から進撃予定の東方征伐軍40万が消滅したことが伝えられていれば、こんなこともなかったであろう。

 

 だがあまりにも短期間のうちに東方征伐軍は消滅していたため、通信による報告が上げられる事もなかった。そのためパタジンは東方征伐軍が消滅したことを知らないし、ワイバーンを飛ばしたのもむしろ当然と言えた。

 

 パタジンの命令により、王国精鋭の象徴である竜騎士達は軽装の鎧を身に纏い、次々とワイバーンに跨る。ワイバーンは翼をはためかせると、次々に大空に舞っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロウリア王国沖合い/オーシア艦隊

 

 

 オーシア艦隊はもしもに備えて艦隊上空にE-2C早期警戒機を滞空させていた。そんなE-2Cの搭載する円盤状のAN/APS-145レーダーが艦隊に接近してくる大編隊を捉えていた。

 

 

「レーダーコンタクト! ロウリア王国軍に動きあり、王都よりワイバーン250騎の出撃を確認、ロウリア艦隊に向かってくる模様」

 

 

 ロウリア王国軍の動きを逐一監視していたE-2Cに乗り組むオペレーターは、この動きをすぐさまオーシア海軍艦隊旗艦の空母アンダーセンへ伝える。

 

 同時にデータリンク・システムによってE-2Cのレーダー情報も送信していた。これを受けて、アンダーセンほか第三艦隊各艦の戦闘指揮所(CIC)は慌ただしくなる。

 

 アンダーセンの艦長職と派遣艦隊司令を兼任する艦長リーアムはすぐに指示を飛ばす。

 

 

「攻撃隊に一時待避命令、制空権確保にトムキャットを出そう。他の艦も戦闘に備えよ。総員、対空戦闘用意!」

 

 

 空母アンダーセンの飛行甲板で出撃準備が完了していたF-14Dスーパートムキャット艦上戦闘機12機が蒸気カタパルトによって次々と発艦していき、上空で編隊を組む。

 

 

「リーアム艦長!」

「なんだ?」

「朗報ですよ、空軍のロングレンジ部隊が間もなくこの空域に到着します!」

 

 

 F-14Dが発艦を進ませていくなかで飛び込んできたロングレンジ部隊が間もなく到着するとの報告は、リーアムにとってラッキーそのものだった。あのエース、三本線の部隊だ。

 

 きっと派手に暴れてくれるに違いない、リーアム艦長はそう信じていた。そしてそれが間違っていなかったのだと証明される時間は、刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

 

 

艦隊上空

 

 

 A-10C攻撃機1機、F-15C戦闘機7機からなるオーシア空軍ロングレンジ部隊は、洋上にてロウリア艦隊と対峙するオーシア海軍第3艦隊の上空に到達しつつあった。

 

 

≪見えてきた、ロウリア艦隊だ≫

 

 

 それと同時にロウリア艦隊の大船団の姿も見えてくる。海を埋め尽くすほどの大群だ。地球よりも水平線が遠く、かつ上空のため遠くのロウリア艦隊の姿も見ることができた。

 

 

≪わーお、すごい数だ≫

≪海が船と船だけで埋まってる。一体何隻用意したんだ?≫

≪国に帰ったら息子への土産話に出来そうだ≫

 

 

 口々に感想を漏らすロングレンジ部隊の面々。そこにはこれほどの船を用意したことに対する驚嘆と、そのすべてが時代錯誤な木造帆船であることに対する呆れが含まれていた。

 

 

≪こちらロングキャスター。悪い知らせだ≫

 

 

 敵艦隊向けて飛行するロングレンジ部隊の面々にAWACSからの通信が入る。

 

 

≪今日は海軍の連中と木造船の大食い競争かと思われたが、どうやら我々の食事を邪魔したい者がいるらしい。ロウリア王国軍のワイバーン250騎が西方より接近している。これを海軍機と共に迎撃せよ≫

 

 

 まさかの敵航空戦力の出現である。もっとも灯台戦争中は、対地ミッションと聞かされて飛んできた筈が、実は対空ミッションだった……のようなことはザラにあったが。

 

 何せ、部隊の大半は空戦に強いF-15Cイーグルだが、残る一機は明らかに対空に不向きな機体であるA-10CサンダーボルトⅡだからだ。

 

 

≪どうするトリガー。お前の機体は攻撃機だ、空戦には向かねェ≫

 

 

 そしてそれが隊長機ともなれば尚更だ。今、ロングレンジ部隊を率いるトリガーの操る機体はA-10CサンダーボルトⅡ、長距離対空ミサイルも無ければ空戦機動も弱い攻撃機だった。

 

 普通ならこの場合、隊長機のみ後方待機して他の機のみで戦闘すべきだろうが、問題はこの隊長機に乗るパイロットが度々無茶をやらかすことと、その隊長機のカスタムにあった。

 

 結論から言ってしまえば、トリガーは空戦をすべくA-10を()()()()()させて突っ込んでいった。

 

 

≪ま、そうだったな。お前ならその機体でも戦闘するか≫

 

 

 そう部隊のメンバーから言われてもトリガーはお構い無しである。トリガーの乗るA-10はスクラップ・クイーンの魔改造により超音速飛行が可能となってしまっているのだ。

 

 それに余り強くないワイバーン相手なら最低限の空戦も可能である。かなり無茶苦茶だが、その無茶苦茶を今までしてきたのがこのエースパイロット、トリガーであった。

 

 

≪こちら海軍のトムキャット隊、我々も貴隊と共同で敵ワイバーンの迎撃に向かう。……まさかA-10で来るとは思ってなかったな≫

 

 

 やがて空母アンダーセンから発艦してきた海軍のF-14Dの編隊とロングレンジ部隊は合流する。半ばA-10が含まれてることには呆れてるようだが、仕方のない事だ。

 

 

≪気にしないでくれ、元々対艦任務だけのつもりだったからな。それにこのA-10はマッハで飛べるから大丈夫だ、問題ない≫

≪……は?≫

 

 

 そんな感じでロングレンジ部隊とトムキャット編隊のメンバーが無線越しに会話をしている最中にも、敵ワイバーンは迫り、やがて全機のミサイルの射程に入った。

 

 

≪ほら、そろそろだ。存分に暴れてやろう≫

 

 

 そうしてロデニウス大陸の海上上空で、大規模な空戦は開幕した。

 

 




・A-10サンダーボルトⅡ
オーシアが開発した重武装と高耐久性を備えた近接航空支援用の対地攻撃機。
専用装備とも言えるGAU-8アヴェンジャー30mmガトリング砲を始めとする対地装備、速度を犠牲に獲得した安定した機動性、航空機にあるまじき重装甲を持っている。
元はユーク陸軍の戦車部隊を殲滅すべく開発されたものの、対地に特化しすぎた弊害で航空攻撃に脆弱であり、長らく活躍の機会に恵まれず、一部はベルカ含む他国に売却された。
しかし1995年のベルカ戦争にてオーシアとベルカの双方がA-10を戦闘に投入、30mm機関砲を始め各種の対地兵装を用いてA-10は両軍の戦車約500両の撃破を含む圧倒的な戦果を挙げた。
これを受けてオーシア始めA-10を持つ各国の空軍はA-10を主力攻撃機として運用するようになり、オーシア空軍のA-10Cのようにアビオニクス等の改修が施されている。
一部には魔改造により超音速飛行を可能とした機体までもある。
現実世界のA-10に相当する。

・E-2Cホークアイ
オーシア海軍の早期警戒機(AEW)。
艦隊上空をレーダーで防空監視することを目的に開発されており、空母艦上に搭載するため小型に設計されている。
現在は改良型のE-2Dへと更新中。
現実世界のE-2Cに相当。


――
A-10を超音速飛行させるエスコン世界マジヤバい(小並感)

実はこのシーンもともとロングレンジ部隊いれる予定なかったんですけど、トリガーが超音速A-10を飛ばせる機会がこれだけな気がして無理やり改編したら投稿間隔に支障が起きてる()
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