追記.なぜか13話が二つあったので片方消したら両方消えてしまったので再投稿しました。
中央暦1639年4月25日 17:30
オーシア連邦 大統領官邸ブライトヒル/首都オーレッド
首都オーレッドでは現在、往来するスーツ姿の人間がちらほらと見られた。彼らは戦後処理に追われる官僚らである。軍の行動による経済的損失の補填、講和条約の内容の決定作業などなど、彼らは書類作業に忙殺されていた。
オーシアにとって、ロウリアとの戦争はあまりにも短いものだった。オーシアは短期決戦を目指して参戦したものの、ロウリア侵攻による開戦からロウリアの降伏まで、戦争はわずか3日で終結したのだから当然である。
あまりにも戦争が終わるのが早すぎて、戦争の戦後処理をどうするのかが全く決まっていないうちに戦争が終わったのも、官僚らを過労死させかねない勢いで書類作業に没頭させる原因の1つとなっていた。
「なんとか戦争が終わりましたね」
「あぁ。正直どうなるか不安だったが、こんなに早く終わるとは思ってなかったよ」
官僚らが戦後処理に忙殺されている中、大統領官邸にオーシア首脳部のメンバーらは集まって会議をしていた。
「例の『魔法』もそこまで脅威ではなかったのも幸いだな。もしファンタジーと同じような魔法をロウリアが使ってたらもっと大変なことになっていただろう」
大統領の言葉に、閣僚らは首肯する。この世界には現実に『魔法』が存在しており、オーシア首脳部もクワトイネから輸入した情報によりで存在だけは把握していた。しかしこれがどのように脅威となるのかが分からなかった。
ロウリアは中世程度の科学水準であり、現代科学を駆使するオーシアには手も足も出ないだろうことは当然だ。しかし、もし魔法が攻撃手段として使用された場合、ロウリア軍がどれほど脅威となるか把握できてなかったのだ。
だがいざフタを開けてみれば、銃や通信機の代わりにこそなれど、野砲やミサイルに匹敵する程の能力はない事が分かった。もしこれがファンタジー映画に出てくるレベルの魔法であれば、オーシア軍は苦戦を強いられただろう。
「ロウリアは文明水準に見合う程度の戦力でしかなかったが、統合参謀本部議長、君は今回の戦争をどう評価する?」
大統領は、執務室にいる1人、エドワード統合参謀本部議長に質問する。灯台戦争時はオーシア国防軍参謀本部の副議長だったが、戦後に議長となった男だ。今回の戦争の作戦立案を担当した男でもある。
「はっ、率直に言ってしまえばギリギリだったと思います」
「ギリギリとは?」
エドワードの感想に大統領は聞き返す。
「はい、今回の戦争はオーシア軍の派遣戦力を最小限に留めましたが、最小限故に戦力は少なく、もしもロウリアがもっと強ければ派遣軍は出血を強いられたでしょう」
「なるほどな……」
「しかし我々には最小限の派遣しか方法がなかった。灯台戦争後の縮小された軍事予算では軍は本気を出せません。せめて予算があれば大規模派兵もできるのですが」
今回のロウリアとの戦争、オーシア軍は最低限の戦力しか派遣しなかった。100機にも満たぬ空軍の戦闘機と爆撃機、それと空母1隻と護衛艦艇4隻だけの小規模な機動艦隊。それが今回の派遣戦力の全容である。
海兵隊だけは戦後、治安維持を名目にロウリアへと輸送ヘリで進駐したが、他の地上戦力は皆無に等しい。これほど小規模な派遣に留めたのは転移前の灯台戦争が原因である。2年前の灯台戦争でオーシア軍は大損害を被った。
開戦直後のエルジア軍の奇襲攻撃で、停泊中の全オーシア海軍艦艇が損傷、無人機を大量動員したエルジア軍との消耗戦、衛星通信網の崩壊による混乱と同士討ち、そして軌道エレベータでの有志連合と急進派の決戦――
半年以上も続いたこの戦争で、オーシア軍は海軍艦艇の半数以上が無力化され、陸軍と海兵隊はいまだ再編のまっただ中である。空軍だけは戦力としてある程度は機能するものの、オーシア軍全体の戦力はかなり低下した。
そしてこれに拍車を掛けたのが、軍事予算の削減である。戦後に必要なのは軍備を整えるための軍事予算よりも、戦争以前の状態に回復させるための復興予算である。軍は復興に予算を取られ、大幅に活動を制限されたのだ。
以上が、オーシアがロウリアに大規模な戦力を送れなかった原因である。そもそも灯台戦争でオーシアという国自体が疲弊し、近いうち発展の著しい多国籍企業が国家を超すのではとまで囁かれるようになったほどだ。
少なくともオーシアの転移で多国籍企業は弱体化し、クイラから大量の資源を得たオーシア連邦はむしろ再興を果たしたのでその噂は杞憂に終わったが、いずれにせよオーシア軍が大規模派兵できないのは問題だろう。
「確かに、今後この世界で大規模な派兵をする可能性もあるだろう。財務大臣、軍事予算の大幅な増額についてだが……」
「……仕方ないでしょうな」
「そうか、では軍拡に関しても……」
「……ここは異世界です。何が起きるか分かりません。予算なら出しましょう」
「それは良かった」
大統領の言葉を財務大臣は渋面で答える。財務大臣としても、あまり受け入れたくはないが、軍事予算の増額や軍拡に関しては仕方ないだろうと思っていた。財務大臣の返答を聞いたところで、大統領は話題を切り替える。
「ロウリアはどうする予定だ?」
「基本的に王は退位させず、ロウリア軍も解体しない予定ではいます。しかしそれ以外は、民間企業の大幅な進出、政治顧問の派遣、駐留軍の派遣等を認めさせる予定です」
まるで植民地化である。しかしこのくらいしなければ、最悪の場合はまた歯向かってくる可能性もある。それにロウリアは市場として魅力があり、ならば力は弱めても完全に排除しない程度がちょうど良いだろう。
「ところで……今回の戦争、裏でロウリアを支援してた国がいるんだって?」
「えぇ、クワ・トイネによれば、パーパルディア皇国という国がロウリアに対して軍事支援をしていたようです」
「パーパルディアか……確か、相当ヤバそうな国じゃなかったか?」
国務大臣の口から出てきたパーパルディア皇国という単語に、オーシア首脳陣の一同は一斉に顔をしかめる。すでに彼らはクワ・トイネから届けられた情報でパーパルディアの悪い噂を聞き及んでいた。
パーパルディア皇国は、オーシアから見て西に位置するこの世界の大国である。周辺の72ヵ国を併呑してフィルアデス大陸の大半を支配しており、技術水準も産業革命直前のレベルと、周辺国よりは比較的高い。
しかしクワ・トイネ公国から入手した情報によると、最近のパーパルディア皇国はすさまじい拡張政策をとっており、周辺国に理不尽な要求を送っては拒否されると問答無用で侵略を行い、属領を増やしているという。
ロウリアに対しても軍事支援を行うことで間接的にクワトイネやクイラを占領し、ロデニウス大陸を支配しようとしていたらしい。オーシアが一方的にロウリアを蹴散らしたためその目論みは潰えたようだったが。
またパーパルディアは『列強』と呼ばれるこの世界の大国の一角で、それ故に国民のプライドは高く、基本的に他の4カ国の列強以外を相手にせず見下している。オーシア首脳部は集められた情報からそのように認識してた。
「すでにクワ・トイネからの情報経由や航空偵察を含め、あらゆる手段でかの国の情報を収集していますが、かの国とは関わらない方がよいでしょうな」
「最悪の場合、かの国と戦争をすることも想定しておいた方がいいかもしれん……統参本部議長、対パーパルディア戦を見据えた作戦計画を考えておいてくれ」
「はっ!」
ロウリアでの戦争は終わらせたが、まだまだこの世界でオーシアが平和に過ごせるという訳ではなさそうだった。
「国務大臣、パーパルディアと付き合いたくないのは山々だが、他にどこか国交を結ぶ予定の国はあるのか?」
「クワ・トイネの情報を元に友好的かつ近場の国を優先して、近隣のフェン、ガハラ、シオス、アルタラスを中心に接触を図り、近いうち列強の1つとも接触する予定です」
「ロウリアと初めて接触したときは追い返されたが、くれぐれも同じ事を繰り返さないようにしてくれよ?」
「分かってますとも。いざとなれば砲艦外交すら辞さずの方針で行きます」
そこまでする必要はないと思うがな、と大統領は思った。
・多国籍企業
ゼネラルリソース社のこと。
重工業、建設、都市開発、エレクトロニクスを得意としている多国籍企業、本社はユージア大陸に存在している。
小惑星と大陸戦争で被害を受けたユージア大陸での復興整備事業で業容を拡大し、2010年代以降急速に力を増していた。
正史では、ゼネラルリソース社は国家を超える規模を持つ巨大企業にまで成長するが、転移に伴い本社との連絡が絶え、オーシア支店のみとなったために弱体化、逆にオーシア連邦は国家としての力を回復させてしまった。
転移後はオーシア支店のみで今まで通りの事業を異世界にて展開しており、弱体化したとはいえ現在もオーシアに対してそれなりの影響力を持っている。
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すごい久々の投稿となってしまいました……
今まで生存報告もせず、本当に申し訳ない限りです……
今まで何してたのかと言えば、リアルが忙しかった(テンプレ言い訳)ので、中々書く機会がありませんでした……
他にも話の展開にいろいろと悩んだのと、あとはオーシア陸軍のAPCってどんな感じなんだろ?→エスコン5やる→久々にやってハマる
で、執筆しなかったのが遅れた原因です。
お詫びと言ってはなんですが、ある程度書き溜めしたので、書き溜めが続く限りですが、しばらくの間は連日投稿したいと思います。では、お楽しみに!