オーシア連邦召喚   作:スカイキッド

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連日投稿するといったが連分投稿しないとは言ってない(なお3話目は無い模様)。

新年2話目です。
 


第14話「フェン王国」

 

中央暦1639年5月6日 18:00

フェン王国 首都アマノキ/王城

 

 

 フェン王国。オーシアとフィルアデス大陸の間にある勾玉状の島を国土とした人口70万人ほどの小さな島国。この国に魔法は存在せず、代わりに全国民が剣を学ぶ。剣を極めた者は尊敬され、逆は軽蔑されるという独特な文化を持っていた。

 

 その国の首都であるアマノキには、アマノキ城と呼ばれる王城がある。その城は木と石などを組み合わせた造りで、本来召喚される筈だった日本国の人間が見たら姫路城や大阪城みたいだと思うことだろう。

 

 そのアマノキ城内の応接間、オーシア国務省の外交団の姿はそこにあった。オーシアにとってこの国はフィルアデス大陸との貿易の中継拠点に使えると判断されたことにより、外交団はフェンに派遣されていた。

 

 

「この国って、どこか変な国だな」

「あぁ。なんだか、まるでノースポイントの時代劇の世界に来たみたいだ。ちょっと前にやったゴーストオブなんちゃらってゲームの世界によく似てる」

 

 

 外交団のメンバーらは、アマノキ城の応接間で待っている間話し合う。フェンは不思議な国だ。オーシア人からすると、和風な木造建築や刀など、まるで大昔のノースポイントのような文化を持った国だからだ。

 

 

「お待たせしました。剣王が入られます」

 

 

 待つことしばし、剣王の側近と見られる男が外交団のいる応接室の襖を開く。開かれた襖の先から、あまり目立たないシンプルな和装を身に付けた、長い顎鬚が特徴的な白髪交じりの壮年男性が現れた。

 

 この壮年男性こそが、このフェン王国の王であるシハン剣王だ。剣王というだけあり彼の剣技は素晴らしいもので、実際に外交団らはシハンからどこかオーラとか覇気とかに類いするような何かを感じた気がした。

 

 

「そなた達がオーシアの使者か」

 

 

 シハンの問い掛けに、外交団らは早速本題に入ることにする。

 

 

「はい、その通りです。我々はオーシア連邦より貴国との間に国交を結ぶための交渉をしたく参りました」

「遠路はるばるご苦労であった。さて単刀直入に聞かせてもらうが、交渉というからには貴国は何を求めている?」

「そちらにつきましては、こちらの文書をご覧下さい」

 

 

 外交官が大陸共通語で書かれた文書をシハンに手渡す。シハンがそれに目を通したところ、そこに書かれていた言葉をすべて信じるのであればそれはフェンにとって破格ともいえるような条件だと思えた。

 

 オーシアは、フェンにほぼ無償で港湾整備やインフラ整備といった事業をするというらしい。オーシアがフェンを交通の要衝にしたいのが原因のようだ。少なくともこれを呑み込めば、フェンは恩恵を受けることとなろう。

 

 

(オーシアか……スゴいな)

 

 

 またオーシアに関することも別の文書に記述されていた。写真も添付されたその文書は、シハンから見ても驚愕に値する。オーシア曰く彼らは別世界から転移してきた国家で、列強を超える国力を有しているようだ。

 

 文書の内容を全て信じるなら、オーシアはそれこそ列強を上回るほどの国力を持った国家であることが察せられる。その文書に至ってもあまりに紙質が上質すぎて、文書の内容には余計なほどの信憑性があった。

 

 

「……なるほど、大体のことは分かった。貴国の提案、もしこれが本当ならば、すさまじい国力を持つ国と対等な関係が築けるし、我が国としては申し分ない」

「それでは――」

「いや、少し待たれよ」

 

 

 話を進めようとする外交団。それに対してシハンは待ったをかける。

 

 

「失礼だが、私は貴国のことをあまり詳しく知らない。この文書以外で貴国の力を――力を直接、私に見せて欲しいのだ」

「と言いいますと?」

「そうだな。軍祭は……4ヶ月後だからまだ早すぎるな」

 

 

 シハンは『軍祭』でオーシアの軍隊を国内に誘致して力を確かめようと思ったが、軍祭は開催がまだまだ先なので諦める。『軍祭』とはフェンのイベントで、文明圏外の各国軍が参加して武技を競う共同演習みたいなものだ。

 

 2年ごとに開催され、各国軍が自慢の装備と兵士を見せつけ、戦争せずお互いを高めあうイベントである。各国が互いの軍事力の高さを見せつける事にで互いをけん制するという意味合いも持つ重要なイベントだ。

 

 軍祭であれば、オーシアの軍事力を直接測れそうだったのだが、開催が4ヶ月後なので諦めるしかなかった。さてどうやってオーシアの力を確かめるべきだろうかとシハンは考えたところで、ふとあることを思いついた。

 

 

「そういえば、貴国は空飛ぶ鉄竜を使ってロウリアの大軍を撃破したそうだな」

「鉄竜? ああ、飛行機のことですね。その通りでございます。ちなみに我が国は航空産業も非常に活発でして――」

「では――」

 

 

 外交団の言葉を遮り、シハンは提案する。

 

 

「それをここに招いてもらいたい」

「え?」

 

 

 シハンの提案の意味が理解できず、硬直する外交団員たち。

 

 

「まぁ要するに、このアマノキの空を貴国の空飛ぶ鉄竜……それも出来ることなら戦闘用の型に一度飛んで貰いたい。私はそれをこの目で直接、見てみたいのだ」

 

 

 提案に唖然とするオーシア外交団。つまりこの男は、この王は、オーシアの力を見てみたいからというだけで軍用機を自国の空に飛ばして来いと言っているのだ。こんな提案、少なくとも転移前なら絶対に聞くことは無かった。

 

 どう対応したものか困ったオーシアの外交団らはシハンの求めをそのまま無線で本国に報告、だが本国は「それも国交締結のためなら致し方なし」としてこのシハンの提案を受け入れたことを外交団らに通知した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー2時間後ー

同日 12:00

 

 

 シハンは王城のバルコニーにいた。外交団らによると、空飛ぶ鉄竜をアマノキの上空に飛ばすという求めは受け入れられたらしい。また噂を聞き付けた野次馬のフェン国民やフェン駐在の各国大使までもアマノキに集まっていた。

 

 

「間もなく我が国の戦闘機……空飛ぶ鉄竜が到着します」

 

 

 オーシア外交団員の一人がシハンに告げる。シハンの目は、彼の動作を読み取り、彼が武官の類いであると判断した。

 

 

「オーシアの使者殿、鉄竜はどちらから来る?」

「南東より参りますので、我々から見たら左の空になりますね」

「ふむ、こっちか」

「さてそろそろ……エアショーの始まりです」

 

 

 シハンは南東の空を見る。南東方向から線状の白い雲を引きながら、3つの飛行物体が音もなく近づいてきた。飛行物体がかなり近づいてからようやく音がし始め、空気を切り裂く甲高い爆音がシハンの鼓膜を震わせる。

 

 シハンは、アマノキ上空に現れたその物体を彼自身の鋭い双眼で凝視した。

 

 それは鏃のように鋭く、どこか狂暴な昆虫のような見た目をしていた。高速で空を駆け抜けた3つの飛行物体は急上昇を始める。鉄竜はそのまま上昇を続けてループを描き、180度旋回を決めて蒼空の彼方へと消えていった。

 

 戦闘機が繰り広げる空中戦闘機動(マニューバ)の一種である、インメルマンターン。急上昇による180度ループ、180度ロールを行い縦方向にUターンするそれを3機のオーシア機は編隊を組んだまま見事に行いどこかへ飛んでいった。

 

 

「うおおッ!」

 

 

 思わずシハンは声を上げる。彼は目の前に現れた戦闘機を興奮しながら凝視した。アマノキ上空に飛来したその3つの飛行物体は、オーシア海軍航空隊に所属するF/A-18Fスーパーホーネット艦上戦闘攻撃機3機だ。

 

 彼らはオーシア海軍の空母『ヴァルチャー』の所属機で、たまたまフェンの近海で訓練中だったところを、シハンの依頼を受けた政府からの要請を受けて、急遽フェン王国首都アマノキの上空でエアショーを行ったのだ。

 

 

「あれが空飛ぶ鉄竜か!」

「間もなく2機が戻ってきます」

「あっちに飛んで行ったばかりなのにもう戻ってきたのか!? 速いな!」

 

 

 アマノキの空に今度は2機がそれぞれ東西方向から戻ってくる。2機は今度は急降下し、そのまま180度旋回して2機は交差、アマノキ沖合の海面とぶつかる寸前に超低空で水平飛行へと移り、低空飛行で離脱する。

 

 スプリットSと呼ばれる機動だ。インメルマンターンの逆で、急降下で縦方向にUターンする。急降下していた機体が海に衝突する寸前に水平飛行に移るというのはシハンにとっては中々に見ごたえのある光景だった。

 

 

「おおッ! 速いだけでなく機動力もとてつもないようだな!」

 

 

 今度は3機が編隊を組み、先ほどインメルマンターンを決めたときのように低空から急上昇、そのまま一回転を決めた。初歩的な曲技飛行のための航空機操作とも言われるループ機動、それを3機編隊で繰り広げる。

 

 エアショーはシハンを興奮させるのには十分であった。フェン王国軍の軍人は顔一面を蒼白にしてしまっていたが、それでもシハンを、そして王城に集まった人々やアマノキの住民たちを興奮させられるだけの光景だった。

 

 あらゆる機動を3機の戦闘機は行う。遠雷のような轟きを響かせながら、互いに回り込みあい複雑なループを描く戦闘機を、シハンも含めた人々は飽くことなく、むしろ興奮しきった様子でずっと眺め続けていた。

 

 

「オーシアの鉄竜というのはすごいな! これほどのものとは思っていなかったぞ、流石だ! ハッハッハッハ!」

 

 

 顔面を喜色満面に染めながらシハンが興奮している一方、シハンと共にエアショーを眺めていた、フェン王国の軍務を司っている騎士長マグレブは顔面蒼白であり、今にも気絶して崩れ落ちそうな様子である。

 

 彼は列強であるパーパルディア皇国にも行ったことがあるが、あのオーシアの空飛ぶ鉄竜は皇国の飛竜のそれを明らかに凌駕する性能を有していた。オーシアは列強であるパーパルディアを凌駕しているに違いないだろう。

 

 列強国を凌駕する存在が現れたことに、近いうち周辺諸国の軍事情勢が一変するのではないか、とマグレブは思った。軍事情勢が変化したなかで、一体今後、この国はどう動くべきなのか、とマグレブは胃を痛めた。

 

 やがてエアショーが終了し、3機のスーパーホーネット戦闘攻撃機は元来た方向へと帰っていく。だがそれでも王城やアマノキの人々の興奮は全く冷める様子を見せようとしていない。もちろんシハンも含める。

 

 

「いやはやオーシアの方々よ、素晴らしいものを見せてもらった! まさかあれほどの物とは思っていなかったぞ!」

「お褒めの言葉、光栄でございます」

 

 

 シハンは喜色満面の笑みでオーシアの武官へと話し掛ける。武官の方も、自国の軍隊のショーを他国の人間に誉めて貰えたと言うこともあってか自然と笑みが浮かんでいた。

 

 

「あれほどの鉄竜、確かに貴国は中々の力を持っているようだな。よし決めた! 貴国オーシアとは友好な関係でやっていこうと思う」

「ありがとうございます」

「ま、あれほどの鉄竜を持つのであれば、どうせなら安全保障条約も合わせて結んで貰いたいほどだがな、ハハハ!」

 

 

 後日、オーシア連邦とフェン王国は正式に国交を締結した。また安全保障条約に関しても、将来的な締結に向けた協議が行われることとなった。

 

 

 

 




・F/A-18F
オーシア海軍の主力マルチロール艦上戦闘機。
防空能力特化のF-14戦闘機を補佐する軽戦闘機かつ艦上攻撃機として開発されたF/A-18戦闘機の改良型である。
攻撃機に匹敵する重武装能力や低速域での高い格闘戦能力を持ち、海軍機としてはかなりの高性能を発揮する。
灯台戦争の開戦直前にはグランダーIG社経由でエルジアにも同機が輸出されてたため、オーシア海軍のF/A-18Fとエルジア空軍のF/A-18Fが対峙することさえあった。
現実世界のF/A-18Fに相当する。

・空母ヴァルチャー
オーシア海軍に所属しているヒューバートⅡ級空母の1隻。
最初はヒューバートⅡ級の前級にあたるヒューバート級として2000年代に就役したが、2010年の環太平洋戦争では開戦直後に潜水空母シンファクシの弾道弾攻撃で大破着底した。
戦後、浮揚修理を受け、その際にかなりの大改装を受けたことでヒューバートⅡ級へと艦級を変更、オーシア海軍に復帰し、2019年の灯台戦争にも参加した。
環太平洋戦争では即座に無力化されたが、灯台戦争では艦載機を喪失しつつも縦横無尽の活躍を見せ、さらに灯台戦争を生き延びた数少ないオーシア空母の1隻となった。
同じオーシア空母のアドミラル・アンダーセンとは準姉妹艦にあたる。

――
ロウリア戦を早く終わらせたせいでフェン軍祭奇襲イベントが発生してません。というか軍祭そのものが開催されてません。

ちなみにオーシア機のやってることはまんまVRモードのエアショーなのでそれを想像してもらえば
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