オーシア連邦召喚   作:スカイキッド

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第15話「奇妙な世界、航空機の墓場」

 

中央暦1639年5月15日 15:00

アルタラス王国 王都ル・ブリアス

 

 

 フィルアデス大陸の南西にある島国、アルタラス王国。人口は1500万人と文明圏外国ながら多く、魔石資源に富んでいる。魔石輸出で莫大な富を築き、国力と人口ともに文明国に匹敵する程の力を持つ文明圏外の大国である。

 

 そんなアルタラスの王都ル・ブリアス。南国特有の温暖な気候が広がるこの都市には、円を基調とした丸みのある建築物が多く見られる。その丸い建物のひとつ、とある商館では見慣れぬ異国の人間の姿があった。

 

 彼らはフェン王国と同様にアルタラスへと派遣されてきたオーシア外交団である。フェンのときと同じくアルタラスとも国交を開くべく、アルタラスの外交関係者らとの間で国交開設の交渉に取り組んでいた。

 

 

「――それでは通商条約の内容に関してはこれで決定で良さそうですね」

「ええ。ではほかの条約についても話を煮詰めていきましょう」

 

 

 今のところ交渉は比較的順調に進んでいる。アルタラス側の外交関係者には、この国の王女であり外交官でもあるルミエス王女までも参加していたが、彼女の温厚な性格もあってか会議が荒れたりすることもない。

 

 交渉の傍ら、ルミエス王女はふと思う。オーシアという国はただ者ではないらしい、と。それは彼女らアルタラス側の外交関係者らが今回の交渉でオーシア外交団の出してくる情報の節々から伺うことが出来た。

 

 まずオーシアは、アルタラスよりも圧倒的に国力があることが、ロウリアに勝ったという情報などからすでに分かっていたが、にも関わらずパーパルディア皇国とは異なって国と国との対等な交渉を要求してきたのである。

 

 強国が必要以上に他国を見下さないというオーシアの姿勢は、パーパルディアの傲慢な方法に慣れていたアルタラス側にとって衝撃的だった。また国交締結に伴い提示してきた彼らの条件もアルタラス側を驚愕させた。

 

 オーシアが提示した要求は、企業進出や船舶への補給などの主に貿易に関するあれこれを認めてもらえれば、アルタラス国内の港湾の拡張や浚渫、電気水道インフラの整備を安価で行うという破格の条件である。

 

 オーシアはアルタラスをフェン同様に交通の要衝にしたかったし、またアルタラスは裕福なので購買力もあるとオーシアは踏み、大規模な貿易を計画していた。貿易相手とするのにオーシアは支援を惜しまないようだ。

 

 これ程の見返り、まず普通の第3文明圏内国であれば冗談でしかあり得ないだろう。しかしそれほどの見返りを提示できるほどオーシアが国力を持っているのはすでに知っていることであるし、今さら信じないわけでもない。

 

 

 ひとまずこの交渉は上手く進めねば――ルミエスは会談に集中した。

 

 

 後日、アルタラス王国とオーシア連邦は国交を樹立し、友好条約と通商条約を結んだ。またオーシアはこれと同時期にシオス王国やトーパ王国など周辺国にも外交団を派遣。アルタラスとほぼ同じ条件で国交を開いている。

 

 なお、オーシアの国力を知ったアルタラスやシオスやトーパが、フェン王国のシハン剣王が口にしたのと同様に安全保障条約の締結を求めたのは言うまでもない。そしてオーシアも、周辺国との安保条約締結を考え始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1639年5月20日 15:00

オーシア連邦 某国立研究所/バーナ学園都市

 

 

「この世界は訳が分からん。まるで何かのファンタジーだ」

 

 

 とある国立の研究所にて、科学者が頭を抱えている。とにかくこの世界には訳の分からないものが沢山ある。例えば、この世界の『魔法』のような存在だ。この世界には現実に魔法が存在することがわかっている。

 

 また、種族に関しても訳が分からない。この世界の人種はとにかく多種多様であり、ファンタジー映画や空想小説に登場するようなエルフ、ドワーフ、獣人といったような種族の存在が確認されているのである。

 

 エルフは長寿で魔法が得意、ドワーフは低身長で器用な手先と強い腕力を持ち、獣人は身体能力が高く動物の頭や耳や尾を有する。竜人や有翼人等の種族も存在しており、まるでファンタジーのような世界だ。

 

 

「しかもただのファンタジーな世界、という訳でもないようだし……」

 

 

 この世界は確かにファンタジー()世界なのだが、完全なるファンタジー世界と言い切れる訳でもない。その例として、つい最近クワ・トイネにあるものが保管されてることが判明した、というニュースがある。

 

 クワ・トイネに保管されてたのは、なんとノースポイント製の零式艦上戦闘機(A6M)である。なぜ前世界のノースポイントが開発したレシプロ戦闘機がクワ・トイネで見つかったのか、全く意味が分からない。

 

 ゼロ戦の存在は、この世界の神話に出てくる『太陽神の使い』を調査する中で見つかった。クワ・トイネ国内の神森という場所に太陽神の使いが残した天の浮舟なるものが保管されており、それを撮した魔写が存在する。

 

 クワ・トイネ側から提供されたその魔写をオーシアの研究者らが見たところ、ゼロ戦21型が撮影されてたという。詳しく調査したいが神森は部外者の侵入を断っているので、今のところその魔写くらいしか調査材料がない。

 

 ただ零戦にはミートボールのような赤い円の紋章が国籍マークとして描かれており、零戦を開発したノースポイントとは関係ないのではと言われてる。いずれにせよ現物調査が出来ない以上、詳しいことは分からない。

 

 

「そういえば、西の方で産業革命以降の科学技術の国が見つかったんだったか」

 

 

 彼は先日、政府が遥か西方の地域にて1900年代レベルの技術水準を持った国の存在を確認し、その国に外交団を派遣したとの話題を思い出した。噂ではその国は飛行機や自動車まで持っているらしい。

 

 それにしてもファンタジー風な世界かと思えば自動車や飛行機を持った国が存在しているとは一体何事だろう。ファンタジーなようで完璧なファンタジーではない、まったくもって奇妙極まる世界である。

 

 各国に派遣された外交団や諜報員、クワ・トイネ経由でこの世界の情報が次々と政府に入ってきているのだが、同時に情報が集まるにつれてこの世界がいったいどんな世界であるのか余計に分からなくなりそうだった。

 

 

「全くもって訳の分からない世界だ」

 

 

 魔法や民族以外にも、なぜオーシアの言語がこの世界の住民にも通じるのか、なぜメートル法などの単位がこの世界にも存在するのか、そしてなぜ、オーシアは転移したのか、などなど不明なことは多数あった。

 

 本当に奇妙な世界だ、と科学者は思う。まだまだ調べることは沢山だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1639年5月26日 11:00

オーシア連邦 ソロ島

 

 

 ソロ島はオーシア北西の小さな島である。島の大半は火山性の切り立った山々と渓谷からなり、かつて平地部には軍施設が建設されたが、火山活動に由来する強力な地磁気の乱れにより軍施設は破棄されていた。

 

 破棄された軍施設は、今は航空機の墓場(スクラップヤード)として利用されている。主に損傷したり機体寿命の限界で使えなくなった軍用機や、軍縮などの理由で退役した機体をモスボール保存したり野ざらしにしてるのである。

 

 

「オーライ! オーライ!」

「機体を慎重に運べよ。再生して再配備させるんだからな」

 

 

 だがこの日、航空機の墓場(スクラップヤード)に保管されていた軍用機たちは引っ張り出され、島の小さな港湾に停泊した輸送船に次々と載せられていく。廃棄された筈の航空機たちは、再び仕事を与えられたのである。

 

 先日、オーシア首脳部の意向で軍事予算の増額が決定し、オーシア軍の軍拡が決定した。灯台戦争で喪失した戦力の回復と、オーシアが転移後のこの世界で生き延びるための戦力を整えるためである。

 

 その過程でスクラップヤードに眠らされてた飛行機たちも叩き起こされた。軍拡によりオーシア空軍は戦闘機や爆撃機や攻撃機を増やすことが決定したが、それらを生産して数を整えるのにはそれなりの時間がかかる。

 

 そこで、オーシア空軍はスクラップヤードに保管された状態の良い機体を引っ張り出し、これを再生して配備することにした。中古品とはいえこれなら生産するよりも早く配備できるし費用も安く済ませられる。

 

 

「すごい数の戦闘機と爆撃機だな……あそこのあれはF-14、あっちは分解されたB-52か。コイツら全部持ってくのか?」

「あっちも見てみろよ。ファントムⅡまで引っ張り出されてるぜ。使えるものなら何でも使うつもりらしいな」

「あそこに見えるのはB-2か……? あんなものまで保管されてたのか」

 

 

 保管されてた機体を輸送船に載せる作業に従事する作業員たち、その中でも軍用機に詳しい人間らは引っ張り出された機体の種類の多さに驚く。とにかくここにある機体は根こそぎ持ってくようだった。

 

 新しいのはF-22Aラプター、古いのはF-4EファントムⅡまで、スクラップヤード内に置かれていたほぼ全ての機体が持っていかれる(F-22Aのような比較的新しい機は環太平洋戦争後のユークトバニアとの軍縮条約で退役し保管された)。

 

 西の砂漠にあるスクラップヤードでも同じように機体を引っ張り出しており、中古機だろうと関係なく引っ張り出して、すぐにでも航空戦力を整えようとしているオーシア空軍やオーシア海軍航空隊の執念が窺えた。

 

 

「ん? あれは……」

 

 

 機体の中には変わり種もあり、作業員の一人がそれに気づいた。

 

 

「……モルガン?」

 

 

 ADFX-01 モルガン。ベルカ公国の南ベルカ国営兵器産業廠が開発した前進翼エンテ型のマルチロール戦闘機。1995年のベルカ戦争後、オーシアがベルカより接収した機体で、オーシア空軍の技術検証後に保管された機体だった。

 

 運ばれるモルガンの姿を見つけた作業員は、あんなものまで再生して使うつもりなのか、とオーシア空軍の意地に感心すると共に呆れの感情を抱かざるをえなかった。オーシア軍はあらゆる戦力を欲してたのだ。

 

 

 




・零式艦上戦闘機21型
1940年代、ノースポイントが開発したゼロ戦の略称で知られるレシプロ艦上戦闘機。
当時のノースポイントは海を隔ててユークトバニアと戦争状態にあり、本機は同戦争に実戦投入された軍用機の一種である。
両国間ではユージア洋での艦隊決戦が度々起きており(ノースポイントもユークトバニアも艦隊決戦至上主義)、洋上の空母で運用できる戦闘機が必要だった。
その結果、長大な航続能力と運動性を重視して圧倒的な格闘戦能力を持つ機体として生まれたのがゼロ戦である。
21型はゼロ戦のバリエーションの1つである。
このタイプが主力として運用されていた頃のゼロ戦はユークトバニア軍戦闘機に対して無類の強さを見せていた。

・ADFX-01モルガン
ベルカ公国の南ベルカ国営兵器産業廠(後のノースオーシア・グランダーIG社)が試験開発した全天候マルチロール戦闘機。
究極の第4世代ジェット戦闘機である。
TLS戦略レーザーシステム、MPBM多用途炸裂弾頭ミサイル、ECMP内蔵型ECMポッドなどの特殊兵器を多数種運用可能であり、既存の戦闘機を遥かに凌ぐ高性能機となっている。
姉妹機のADFX-02含めて実機は2機しかなく、ベルカ戦争においても公式記録上は両機とも実戦投入が間に合わなかったとされる。
ベルカ戦争後、ADFX-01は連合軍によって回収され、オーシアにて各種試験を行った後、航空式典でたまに空を飛ぶとき以外はオーシア国内でモスボール保管されるようになった。

――
オーシア軍は直接エルフを助ける場面がなかったので、神森に入れてもらえません。

それとつい先日気付きましたが、2020年に開示予定の環太平洋戦争(ベルカ事変)の機密文書、公式の方で公開されましたね。
まさか5のエンディングの続きを見られることになるとは……感動しました。

ていうかグランダーIG社、国連から制裁食らったのかよ……当然といえば当然ではあるが……
 
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