オーシア連邦召喚   作:スカイキッド

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連日投稿するって言ったのにいきなり1日遅れてしまった……

 


第18話「打ち上げ、皇国の扱い」

 

中央暦1639年6月24日 19時30分

クイラ王国 王都バルラート

 

 

 クイラ王国。

 

 かつてこの国は、不毛の地が広がるだけの貧しい国家でしかなかった。国内を見回しても緑はほとんど生えておらず、川も湖も池も少なく水に飢えている。乾いた風が吹きすさび、砂漠だけが広がる。それがクイラ王国だった。

 

 砂漠だけのこの国では農業や林業など出来るはずもなく、これといった特産品もない。砂漠に水などあるはずがなく、使い道の少ない燃える石や、全く使えない燃える黒い水が地下から噴き出てくるくらいである。

 

 クイラが他の国に輸出できるようなものはほとんどなく、大半の人々は明日を生きていけるかも分からぬほどに暮らしが貧しいため、緑に溢れた豊かな隣国、クワ・トイネ公国へと出稼ぎに向かうしかない。

 

 クイラ王国そのものも富に乏しいため、国家規模の人材派遣や、他国への傭兵稼業などの手段で外貨を稼ぎ、公国から食料を輸入してなんとか食い繋いでいる。いつ滅んでもおかしくない貧国、クイラというのはそんな国だ。

 

 

「この国も変わったものだ……」

 

 

 クイラ王国の貴族メツサルは、短期のうちに変化してしまった自国の王都を見て呟く。かつて貧国と呼ばれていたクイラであるが、それはクイラがオーシア連邦との交流を始めてから瞬く間に変わってしまった。

 

 クイラがオーシアと最初に接触したのは、隣国クワ・トイネによる仲介を受けてオーシアが国交開設の交渉を求めてきたのが最初だ。そしてオーシアの外交団は、クイラの砂漠に溢れる燃える水や燃える石を見つけた。

 

 オーシア外交団はそれらの水や石を見つけると目の色を変えてそれらをウチの国に輸出しろとクイラに迫った。しかも輸出の対価に恐ろしいほどの見返りを用意し、さらに輸出のために港湾拡張などインフラ整備までするという。

 

 クイラからすればゴミに等しいものに固執するオーシアは理解できなかったが、ゴミがマネーに変化してさらに国内の開発もしてもらえるということでオーシアの提案に乗った。それからクイラの変化は始まった。

 

 

「我々からするとゴミでしかないものを売るだけでこれほど国が富むとは……今となっても全くもって信じられん」

 

 

 燃える石や燃える水――石炭と石油というものであることが後に分かった――を輸出し始めてから信じられないほど多額のオーシア通貨が、オーシアの人と物と文化と共にクイラ国内へと瞬く間に入ってきた。

 

 クイラ王とクイラ政府は、ゴミの対価に渡されたその多額の外貨に驚愕しつつ、貧しい国土を変えるためにインフラをオーシアから更に輸入することで決定。さらにその外貨を用いてオーシアとの貿易も始めた。

 

 急速に港湾、鉄道、道路、水道、送電塔、パイプラインなどのインフラが整備され、自動車や家電などのオーシア製工業製品が次々とクイラに入ってきて、貧国と呼ばれたクイラの生活水準を急速に向上させた。

 

 クイラ王国はオーシア連邦との交流で瞬く間に変化してしまった。しかしそれは決してクイラだけの話ではない。当然のことながらオーシアが接触を図った国はクイラだけではないし、そして恩恵を受けた国もまた然りだ。

 

 オーシアは、最初に接触したクワ・トイネ公国と次に接触したクイラ王国、戦争後に国交を結んだロウリア王国の他に、フェン、ガハラ、アルタラス、シオス、アワン、トーパ、ムー、その他多数の国々と国交を締結した。

 

 クイラと同様にオーシアと国交を結んだそれらの国々でも、オーシア政府主導で行われるインフラ開発事業や、民間企業が盛んに行ってる製品の輸出とそれらの流入を受け、急速に生活が変わりつつある。

 

 

「今後も彼らと上手くやっていかねば」

 

 

 メツサルはクイラの外交を担当する外交担当貴族である。必然的にオーシアと直接交渉を行うのは彼であり、この()貧国クイラを瞬く間に富ませてしまったオーシアと上手く交流していこうと、彼は決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1639年6月25日 14時10分

オーシア連邦 バセット国際宇宙基地

 

 

 バセット国際宇宙基地は、オーシア連邦とユークトバニア共和国の二大超大国の共同計画のもとで建設された国際宇宙基地である。十何年も前に平和主義者の大統領が削減した軍事予算を投入して作り上げた施設だった。

 

 基地には全長12kmの単段式シャトル(SSTO)打ち上げ用のマスドライバーが存在する。言うなれば宇宙船を投げ飛ばすための電磁カタパルトであり、斜めに宙へと伸びる巨大な射出橋は宇宙への掛橋と言われている。

 

 

「秒読み20秒」

「SSTO、射出用意」

 

 

 そのマスドライバーの始点で、1機の宇宙往還機が待機していた。内部には偵察衛星や通信衛星など複数の人工衛星が搭載されており、オーシアが活動できる場を広めるための衛星をこの星の軌道に投入するのが目的である。

 

 

「秒読み10秒――5、4、3、2、1、ゼロ! リフトオフ!」

「リフトオフ!」

 

 

 ゆっくりと加速を始める宇宙往還機。マスドライバーにより次第に速度を上げるそれは、すぐに超音速へと突入し、後半に至るときには地上のあらゆる航空機を凌駕する速度となる。終端に到達すると速度は第1宇宙速度に達した。

 

 宇宙への掛橋を超高速で上りきった宇宙往還機は勢いそのままに宇宙空間を目指してかけ上る。宇宙往還機はみるみるうちに地上から遠ざかり、その姿を小さくしていくとやがて地上からは完全に見えなくなってしまった。

 

 

「状況確認。SSTO、全システム良好」

「SSTOは順調に上昇中だ。おめでとう諸君!」

 

 

 バセット宇宙基地のコントロールセンターにオペレーター達の歓声が沸き起こる。転移して初の宇宙機の打ち上げは問題なく成功した。その後、宇宙往還機は問題なくこの星の衛星軌道に到達し、人工衛星を軌道上に無事乗せた。

 

 この後も、オーシアはGPS衛星や気象衛星等も含めて宇宙空間へと投入する予定である。人工衛星は現代において無くてはならない存在であり、そのためオーシアは人工衛星を大量に打ち上げる必要があった。

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1639年6月27日 12時00分

オーシア連邦 大統領官邸ブライトヒル/首都オーレッド

 

 

「まったくもって今のところ順調だ」

 

 

 オーシア大統領は各方面から届けられた報告書を満足げ眺めていた。オーシア連邦の転移からおよそ半年が経とうとしているが、今のところこの国がこの世界で行ってる行動は比較的順調であると言えた。

 

 先日のバセット国際宇宙基地での人工衛星打ち上げは成功裏に終わり、今後もオーシアでは官民共に大量の衛星を打ち上げる予定である。オーシア航空宇宙局によれば、あと2ヵ月すればGPS網の整備も完了予定だそうだ。

 

 また、外交に関してもオーシアはこの世界の他国との交流を広げつつある。すでに周辺の30ヵ国とは国交を締結し、さらに貿易も開始、転移後に不安定となっていたオーシア経済もゆっくりではあるが右肩上がりになりつつあった。

 

 この世界では色んなものが売れる。日用品に家具、加工食品、医薬品、美術工芸品といったものから、自動車、工作機械、インフラ、各種工業製品、建築物まで、技術格差を生かして外貨が各地から手に入る。

 

 もちろん、関わりを持つことは危険と判断されたパーパルディア皇国は避けるようにして国交を広げてるため、前述の30ヵ国に皇国は含まれてない。それほどに皇国はオーシア政府により危険と認識されている。

 

 

「あとはパーパルディア皇国の扱いだが……」

 

 

 大統領はパーパルディアをどのように扱うかで悩んでいる。人口は7000万であり経済力もあるので市場としては魅力的である。だがそれを阻害するほどあの国はプライドが高過ぎる上、あの国の拡張政策が非常に邪魔だ。

 

 国交を結んだ国々から得た情報、そしてパーパルディア本国に送られたOIA――Ocean Intelligence Agency、オーシア中央情報局のスパイや諜報員らからのレポートからその危険さはより判明してきている。

 

 また一つ分かったこととして、皇国と対等の立場を認めるのは列強国のみで、他の国には皇国民に対する治外法権を認めさせてるそうだ。オーシアも一応文明圏外国であるため、オーシアも国交を結べば治外法権を要求されるだろう。

 

 砲艦外交で力を示して国交締結を行うことも考えられたのだが、皇国民と皇国首脳部のプライドの高さが、皇国が文明圏外の国に劣ってるという事実を認めやしないだろうと悲観的に判断されたために却下されている。

 

 

「いっそ滅ぼせないかな、あの国……」

 

 

 ついつい過激なことを呟く大統領。まだ皇国の軍隊に関する情報は少数程度しか集まっていないが、おそらくオーシア国防軍はパーパルディアの軍隊には勝てるだろう。いや、負けないだろうと評せられる。

 

  まだオーシア軍の軍拡――いや、戦力の回復は始まったばかりであり、まだまだ途上段階であるが、それでもかなりの国防予算が追加されたため、ロウリアとの戦争の時よりはそれなりに強くなっている。

 

 だがオーシアには戦争を始めるための大義名分がない。「邪魔だから」なんて理由でいきなり皇国を攻撃すれば、まだこの世界の国との繋がりが薄いオーシアは完全に信用を喪失することとなるだろう。それはいけない。

 

 

「あっちから仕掛けてくれれば何とかなるんだがなぁ」

 

 

 こちらから仕掛けるのではなく、皇国の方から仕掛けてくれば、国土防衛という大義名分で皇国軍を撃退し、将来的な安全の確保という名目や、戦争賠償を行わせる等の理由で皇国本土に逆侵攻を仕掛けることもできる。

 

 皇国に潜伏させた諜報員を用い、皇国側から無理矢理仕掛けさせることもできる。そしてそれをオーシアが撃退し、皇国に逆襲する。完全なる猿芝居だがこうすれば簡単に皇国へ侵攻することができるだろう。

 

 皇国は第3文明圏の周辺の国々に無理な要求もしていたようであるし、逆侵攻ついでに周辺国に恩も売れれば万々歳だ。周辺国と安保条約を先に締結しておき、その国が侵攻を受けたら援軍と名ばかりに侵攻するのもいいだろう。

 

 もっとも 皇国を避けるために今のような政策をとってるわけで、皇国に仕掛けさせたら完全に本末転倒だ。逆侵攻は皇国が戦争を仕掛けてきたときで十分なので、わざわざ皇国に戦争を仕掛けさせる必要はないだろう。

 

 

「今は皇国を無視するしかないか」

 

 

 関わる必要のない国に、わざわざ関わる必要などない。もし皇国が仕掛けてくればそのときはそのときである。大統領はそのような判断をするに至った。だがまさか、そんな事態がすぐに訪れるとは今の彼は微塵も思ってない。

 

 

 




間もなくパ皇戦です。
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