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中央暦1639年4月13日 17:30
クワ・トイネ公国 マイハーク港
公国海軍第2艦隊作戦参謀のブルーアイは自身が夢を見ているのではないかと思った。彼は目の前の光景が信じられなかった。
彼はマイハークに向けて海上から進撃すると見られる、ロウリア王国の軍船の船団4400隻を迎撃予定の、オーシア海軍第3艦隊に観戦武官として派遣される予定である。
ブルーアイは、オーシア海軍第3艦隊から派遣される艦船数は補助艦艇含めて6隻だけと聞かされており、4400隻に上るロウリア艦隊相手では、まったくやる気がないのでは、と疑っていた。
ところが、マイハークに到着したオーシア海軍第3艦隊の姿を目の当たりにし、その考えが間違いであったことをブルーアイは実感した。
「で、デカ過ぎる……!!」
マイハーク沖合いに停泊するオーシアの艦船は、彼の常識からすればどれも見たことないほどにとてつもなく大きかった。
オーシアとの接触の際に、マイハークに300メートルクラスの超巨大船が入港したという話をブルーアイも聞いていたが、その時ブルーアイはマイハークにおらず、誇張されたホラ話だと思っていた。
しかし遠くの沖合いに停泊しているにも関わらず、オーシアの艦船は信じられないほど大きく、本当だったということを実感せざるをえない。
やがて一際大きな船から、頭に風車を載せたかのような奇妙な飛行物体が飛来してくる。事前に迎えが来るという連絡は受けていたのだが、ワイバーン以外に空を飛ぶ手段を実際に見たブルーアイは言葉を失う。
「オーシア海兵隊のバジリスク隊です! クワ・トイネ公国の観戦武官殿一名、お迎えに参上しました!」
広場にその物体が降りると、胴体横の扉が開いて中から男が下りてくる。ブルーアイはそれに大きな声で叫び返す。
「初めまして、私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊の作戦参謀をしております、ブルーアイと申します!」
「事前連絡をしていたかと存じますが、乗船準備は整っていますか?」
「はい、よろしくお願いします!」
物体が生み出す合成風により大きな声で会話せざるをえないなか、ブルーアイは荷物を抱え、オーシア海兵隊のHH-9Bヘリに乗り込んだ。奇妙な浮遊感と共にHH-9Bは飛行を開始する。
数分の飛行を経て沖合に停泊している母船に近付くと、遠目で見ていた時とはとても比べ物にならない程の大きさに圧倒されていく。
(なんなんだ、この大きさは……!?)
ブルーアイの理解の範疇を超えるそれに、最早それがどう言った運用方法で造られたのか、彼には一切の見当も付かない。
それは、今回の旗艦を努めるオーシア海軍の航空母艦『アドミラル・アンダーセン』である。2年前の灯台戦争終戦時にユージア大陸で座礁していたこの艦は、離礁の後に修理を施され、現在オーシア海軍の空母戦力の一翼を担っている。
航空母艦『アドミラル・アンダーセン』
スペック
満載排水量:10万1000トン
全長:333メートル
全幅:77メートル
兵装:
近SAM発射機2機
シーRAM近接防御システム2機
ファランクス20mmCIWS2機
カタパルト4基
搭載機数:70機
空母アンダーセンの四方には護りを固めるようにイージス艦が展開し、その後方には1万6000トンの弾薬や燃料を搭載した大型補給艦が随伴していた。艦隊編成は以下の通りである。
ヒューバートⅡ級空母:アドミラル・アンダーセン
タイコンデロガ級巡洋艦:エクスキャリバー
アーレイ・バーク級駆逐艦:イースタンキャトル、ジャックスナイプ、ウィムブレル
トワダ級補給艦:ブルースロート
艦載機のF/A-18F、F-14D、ラファールM、F-35Cが並べられた、騎馬戦が出来そうなほど広いフネの甲板にブルーアイが降り立ったとき、彼はこんな巨大船を相手に戦うこととなるロウリア軍に、むしろ哀れみすら感じ始めた。
ブルーアイは空母アンダーセンの甲板に降り立った後、乗員の案内で艦内を歩き艦橋に入る。艦橋に入るとブルーアイはアンダーセンの艦長と対面し、ブルーアイは艦長に敬礼する。
「クワ・トイネ公国海軍観戦武官のブルーアイです。この度の援軍、感謝いたします」
「初めまして。私が艦長のリーアムです。早速ですが、今後の我々の行動についてここで説明させていただきます」
リーアム艦長がブルーアイに説明を始める。
「まず、我々はロウリア艦隊の位置を既に把握しています。ロウリア艦隊は我々の現在地より西1500キロの位置、まぁ出港したばかりな訳ですが、現在およそ5ktの速力で接近中です。我々第3艦隊は夜中に出航し、明後日の早朝、ロウリア艦隊に先制攻撃を加える予定です。そのあとに、我が艦隊はロウリア王都の沖合いに移動するつもりですが、それまでは艦内でごゆっくりおくつろぎ下さい」
予想通りというか、彼らはクワ・トイネ海軍の協力を得ず自分たちだけで4400隻の大艦隊に挑むつもりなのだ。確かに艦は大きく、切り込み用水夫を大人数を収容できるだろう。
バリスタや火矢を防ぐ木盾は見当たらないが、どうにもこのフネは鉄で出来てるようであり、先ほど来たばかりのブルーアイですら絶対このフネは沈まないとさえ思ってしまった。
翌日 07:30
マイハーク市郊外/オーシア空軍前線基地
「それではブリーフィングを開始する。ロデニウス大陸北方洋上にロウリア王国軍の木造帆船からなる大艦隊を警戒飛行中だったAWACSが捉えた。この大艦隊は、クワ・トイネ公国のマイハーク港に向かって現在接近中である。敵の目的はマイハーク港への上陸およびマイハーク市制圧であると推測される。我が海軍第3艦隊がこれと交戦予定であり、上陸部隊によるマイハークへの被害を阻止するため、貴隊は味方艦隊と共同で敵を排除せよ。諸君らの健闘を祈る。以上だ」
マイハークのオーシア前線飛行場、臨時でブリーフィングルームとして利用されている天幕で、オーシア空軍ロングレンジ部隊の面々はブリーフィングを受けていた。
ロウリア王国の大船団迎撃にはギム付近での制空戦闘に参加したロングレンジ部隊も参加予定であり、今から彼らは出撃である。
ブリーフィングが終わると同時にロングレンジ部隊の面々は天幕から飛び出し、各々の乗機のもとへと向かっていった。
昨日大量の敵ワイバーンを墜としたトリガーもまた、自身の乗機のもとへと向かっていったが、乗ろうとした直前、乗機の整備をしていたエイブリルに止められる。
「おい、本当にこれに乗るのか?」
エイブリルはスクラップ同然の機体すら修理してさらに魔改造までするその腕前から、整備に関してはスクラップ・クイーンという異名を持つほどの腕前を持つ。
そんな彼女は、機体の整備なら完璧のさらに上まで機体の状態を整えてくれるのだが、彼女がトリガーに機体への搭乗を止めたのは、乗機の整備状態が悪いから、とかそういうことではない。
トリガーが乗ろうとしている機体の種類が問題であった。トリガーはエイブリルの問いに首肯する。
「大馬鹿野郎、お前いつから攻撃機乗りになった?」
トリガーが乗ろうとしてるのは明らかに戦闘機ではない。A-10CサンダーボルトⅡ――バリバリの対地専用攻撃機である。
しかも翼下には燃料気化爆弾(FAEB)を搭載しており、明らかに戦闘機乗りが乗るべき機体ではない。
確かにロングレンジ部隊の中でもトリガーはF-15CだったりF-15J、F-22、タイフーン、ミグとよく機体を乗り換えている。
それに今回の任務は対艦ミッション(といっても敵は木造帆船)だから攻撃機は最適だが、戦闘機乗りがわざわざ攻撃機に乗る必要なんてないだろう。
「……まァ、いいさ。大暴れしてこいよ大馬鹿野郎」
しかしながらこのような無茶苦茶な事を灯台戦争中もトリガーはよくやっており、呆れつつも、エイブリルは結局トリガーに機体への搭乗を許した。
少なくともサンダーボルトⅡの状態は、スクラップ・クイーンの腕により完璧のさらに上の状態にまで整えられていた。
しばらくして、7機のF-15Cイーグル戦闘機と1機のA-10CサンダーボルトⅡ攻撃機は空に舞い上がっていった。
同日
07:45
13日の深夜のうちにマイハークを出港していたオーシア海軍第3艦隊は、ロウリア艦隊目指して海上を20ノットで高速巡航していた。
クワ・トイネ公国の観戦武官ブルーアイは、空母アンダーセンの甲板に出ていた。
(デカいと思ってたが、その上速いとは……我が国の帆船の最大戦速、いやもしかしたら騎馬よりも速いのではないか?)
10万トン近くにもなる鉄の塊が20ノットで航行するということは、ブルーアイに少なからぬ衝撃を与えた。これでは敵の攻撃を避けつつ動き回って一方的に攻撃を叩き込めるし、何よりすぐに戦場に行けて、敵の追撃を受けることなく離脱できる。
ブルーアイは上層部へこれをどのように伝えようか悩んでいたが、答えが出るよりも先に敵は姿を現してしまった。飛行甲板から次々と艦載機のF/A-18FとF-35Cが飛び立ち、やがて水平線の向こう側にロウリア王国艦隊が姿を現した。
後に「ロデニウス大海戦」と呼ばれる事となる海の戦いが始まろうとしていた。
・空母アドミラル・アンダーセン
オーシア海軍第3艦隊に所属するヒューバートⅡ級航空母艦の1隻。
艦名には環太平洋戦争で活躍した空母ケストレルの艦長ニコラス・A・アンダーセン大佐の名を冠している。
灯台戦争時、アンダーセンは友軍基地への航空機輸送任務中に座礁、洋上の航空基地として使用された後、終戦を迎えた。
灯台戦争後、オーシア海軍の手元に残された数少ないオーシア空母だったため、修復工事を受けて復帰した。
現在のオーシアで有数の大型空母であるため、オーシア海軍では常に第一線にて活躍させられている。
・タイコンデロガ級巡洋艦
オーシア海軍の主力イージス艦。
精強で知られるベルカ空軍の味方艦隊への航空攻撃を阻止すること、水上戦闘重視のユークトバニア海軍艦からのミサイル飽和攻撃から艦隊を防空することを念頭に対空艦として開発された。
1番艦はベルカ戦争の開戦直前に就役、その後改良を施しつつ多数の同型艦が現在に至るまで建造され就役している。
艦隊防空システム「イージスシステム」の高性能レーダーと情報処理能力により、同時に100機以上の戦闘機、対艦ミサイルを瞬時に判断し、脅威の大きな順に迎撃が可能。
ベルカ戦争には参加できなかったが、エルジアとユージア諸国に輸出された同型艦が大陸戦争にて実戦投入、イージスシステムによる高い防空戦闘能力を示した。
またオーシア海軍でも環太平洋戦争、つづく灯台戦争において使用されており、大半の同型艦の沈没と引き換えに防空戦闘において多大な戦果を上げている。
現実のタイコンデロガ級巡洋艦に相当。
・トワダ級補給艦
ノースポイント製の艦隊補給艦。オーシア海軍がノースポイントより購入して運用してる。
現実世界の とわだ型補給艦に似ている。
――
あんまし文字数多いと読みにくくなるのでは、と思って一話あたりの文字数を抑え、そのせいで展開が遅くなるというジレンマ