ーー竜郷交路は恨んでいた。
何も出来ない自分を。
子供を見殺しにするしかない自分を。
立ち上がる事が出来ない自分を………。
遠くから、何かが爆ぜる音が響く。
人々はその音を「起こした」者から逃げ惑う人々の群れを目にし、同じく逃げ惑い始める。
「ワァ···ナハァ······デストロン···シュ······ョウ······シ···ガミィ······ダァァァ········!」
「「「「「「「イィー!」」」」」」」
声にならない声を発し、白と黒の不気味なタイツスーツを着た戦闘員達を引き連れ現れたのは、まさしく「怪人」と言えた。
胴体と頭は白く太ましい骸骨型のような形状で、ネアンデルタール人に似た牙を持っている。
左腕は剣と盾が歪な形に融合したような形状であり、対する右腕は真っ赤で巨大なハサミが唸りを上げている。
脚はマンモスのように太ましい。
背中に蝙蝠のような不気味な翼。
両目と口からは不気味な赤い閃光が煌めき、さながら獲物を狙う獣ーー否、まさしくその通りであった。
ショッカー·アヴェンジャーが人々に恐怖と絶大な力を知らしめるため送り出した、第一の尖兵。
······かつて「仮面ライダーV3」によって葬られたデストロンの首領と幹部の力を併せ持つ、「デストロンアヴェンジャー」である。
その赤い閃光を伴う両目がーー
「うええん······おがあさああん·········!」
ーー無情にも、逃げ遅れて母親に救いを求める小さな子供を捉える。
「シィ······ネェェ······!」
デストロンリベンジャーはその獣の如き俊足で、子供を喰らわんと襲いかかる!
「······俺は······あんな子供すら···満足······に···!」
交路は今この瞬間に、襲われている子供を守るためにデストロンアヴェンジャーの攻撃を受けた背中を赤く染めつつ、か細く呟く。
「教師であった自分が、子供一人満足に守れない」
その事実を再確認した時、視界がぼやけ始める。
それは目を濡らす涙のせいか、自身の意識が今まさに天へと昇ろうとしているせいか······。
······瞼が重くのしかかり、ぼやける視界の中で、交路はある事に気づく。
男がいる。
それもただの逃げ惑う男ではない。
子供を抱えている。
怪人に襲われた、あの子供を。
自分が救う事が出来なかった、あの子供を。
······守っている。
同時に、身体がフワッと浮き上がる感覚が襲った。
······気が付けば、意識ははっきりとし始めていた。
背中は依然として赤く染まっているが、痛みは無い。
「······治ってる···?」
疑問が口を突く。
「そうだ、俺が治した」
後ろから声がする。
振り返ると、フレンチコートを羽織り、ちょび髭を生やしたいかにも怪しい男が立っている。
「誰だ?」
「『大門 錨』、お前を『英雄』へと導く者」
「······はっ?」
交路はあ然とする。
「(『英雄へと導く者』?何言ってんだよコイツ?)」
「お前は、世界を救う『英雄』にならなきゃならない·········まあ、突然言われても混乱するのは分かる。だが、とにかく話を聞いてくれ。」
錨はそう言うと、懐からレバーがついた機械のような物と、上部にボタンがある、二つの小さいアイテムーー一方は緑主体のカラーリング、もう一方は赤と青が主体のカラーリングの物を取り出す。
「これが、お前を『英雄』へと導く」
「······どういう事だ」
「これを使えば、お前が大切な物を守る事が出来る······」
今の交路の頭の中を一言で表すならば、「疑問」であろう。
当然の事である。
傍目から見れば、いかにも怪しい男が「お前を『英雄』に導く者」だの「お前の大切な物を守る事が出来る」だの言っているのだから。
「······はっ?いやいやいやいや、ちゃんと説明しろよ!」
「今は時間がない。あの怪人共を倒せるのはお前だけだ!」
錨はそう言いながら、デストロンアヴェンジャーを指差す。
「······せめて言えるのは、これを手にしたが最後、『英雄』となるために戦いを続けていく事となる。それだけの覚悟はあるか?」
交路に対し、非常に強い気迫を伴い問いかける。
「覚悟」、それはいつの時代も、様々な人に与えられた、一種の心の「試練」。
そして今、この怪人が人々に襲いかかる中、交路はその「覚悟」を求められた。
様々な敵と「戦い続ける覚悟」。
「英雄」への「『道』を進む覚悟」。
戦い続けた事で起きた悲劇を「受け止める覚悟」。
その「問い」に対する交路の「答え」はーー
ーー「······『英雄への覚悟』···か·····
その覚悟で、俺の大切な物を守る事が······
出来るようになるんだよな?」
交路はしばらく黙った後、錨から機械と二つのアイテムを奪い取る。
錨は一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに肯定の頷きを送る。
「······だったら······
···俺の大切な物を守れるんだったら、『英雄』にでも何でもなってやる。
それが、今の俺の『覚悟』······
俺の信じる『道』だ!!」
その瞬間、交路の目が金色に一瞬「煌いた」。
「『英雄』の道を、駆け抜けてやるよ!」
今の交路には、デストロンアヴェンジャーを前にしても怯える事の無い「勇気」を宿していた。
「······んで、どうやればあいつと戦える?」
と意気揚々と言い放ったのも束の間、交路がデストロンアヴェンジャーを指差し錨からの指示を煽ぐ。
「お前はもう既にその方法を知っているはずだ」
「はぁ?分からないから聞い······!?」
直後、交路の頭の中に「ビジョン」とでも言うべき光景が映し出される。
「機械」の使い方、「二つのアイテム」の使い方、そして······戦い方。
「······ああ、どうやら知っていたらしい。」
交路はそう言いながら、機械を腰に装着する。
《『CRO−SS DRIVER』!》
直後、装着した機械ーー「クロスドライバー」から、起動のアナウンスが流れる。
続き、二つのアイテムーー右手の「1号ライダーレジェンドコア」、左手の「ビルドライダーレジェンドコア」ーーの上部のボタン「リキュレイトリミッター」を押し込み、起動させる。
《『1−GOU』!
『ライダー···変身!』》
《『BUILD』!
『勝利の法則は決まった!』》
同時に起動のアナウンスが流れた後、ドライバー左右にある装填口ーー「オーバーフロースロット」に右、左の順にそれぞれ装填する。
装填後、レジェンドコアをスロットごと同時に押し込むと、ドライバー側から音声が流れ始めた。
《LET'S GO!RIDER!
LET'S CRO−SS!LEGEND POWER!
LET'S CRO−SS!LEGEND POWER!》
待機音声が流れ出した直後、交路の両横に二人の「ライダー」が現れる。
一人は、明るめの緑の装甲に、黒いボディスーツ、赤い複眼とマフラーを持った戦士ーー全ての仮面ライダーの原点にして頂点、不死鳥の如く蘇り、かつての子供達に正義と憧れを抱かせた戦士、「仮面ライダー1号」。
もう一人は、赤と青の斜め割りの装甲を持ち複眼と一体化した触覚や太腿、爪先、正面から見て右側の肩部のマフラーと言ったところに「ウサギ」と「戦車」の意匠が入った戦士ーー科学が創る「LOVE&PEASE」を信じ、人々のために闘い続けた天才物理学者、「仮面ライダービルド」であった。
そんな事態に気をとめずに腰を少し降ろし、右腕を左側、左腕を右側に伸ばしてクロスさせる。
その後、それぞれの腕を反時計回りに回し、左腕は胸の正面で肘を直角に曲げつつ横へ伸ばし、右腕を上へ伸ばす。
そのまま右腕を勢いよく降ろし、レバーを倒す。
同時に、左腕は右腕を降ろす直後にガッツポーズのような形に固定する。
そして、己を「戦士」へと変える「言葉」を叫んだ!
時空を越え、世界を越え、様々な仮面ライダーに受け継がれてきた「言葉」を!!
「······変身!!」
《CRO−SS!RIDER!》
レバーを倒した直後、ドライバー中心から風車が現れ、疾風を巻き起こす。
両脇にいた二人のライダーのエネルギー体はーー1号は嵐とも形容出来る風に、ビルドは彼自身の変身時に展開される「スナップライドビルダー」にーーそれぞれ姿を変え、交路の周りに展開される。
そして交路の身体に、黒いボディスーツ「クロッサインナースーツ」が装着された。
風がドライバーに吸収され、同時に展開されていた「スナップライドビルダー」が交路の身体を挟み込む!
そしてドライバーが、新たなる「仮面ライダー」に「変身」した事を告げた!ーー
《輝け、その未来!
『CYCLONE BUILDER』!》
ーー軽快な音声と共に現れたのは、Xのラインが走る緑色のボディスーツの上に、胸や腕部、脚部にXを模した装甲と赤と青で彩られた装甲が混同、所々に「ウサギ」と「戦車」の意匠の造形がある、赤い複眼とマフラーを持つ戦士だった。
姿を現した直後、右腕を左側へ45度伸ばし、左腕を腰の辺りに固定。
続いて右腕を反時計回りに回し、右側で手を「フレミングの左手の法則」の形に変える。
最後に右手をもう一度反時計回りに回しつつ、今度は左腕を右側45度伸ばし、右腕を腰の辺りに固定する。
今この瞬間、歴代ライダーの魂を受け継ぎ、正義と勇気の道を駆け抜ける、新たな仮面ライダーが誕生した!
その名も······
「仮面ライダークロス」!
交路/クロスは、姿の変わった自身の姿を、建物のガラスの反射を通してまじまじと見ていた。
クロスは錨を見る···
「······ん?あれ!?あいつどこ行った!?」
···のだが、錨はいつの間にかその場から姿を消していた。
直後、デストロンアヴェンジャーの周りにいた戦闘員達が、クロスを新たな標的と認識して飛びかかって来る。
「ん···?···あっ!?お、おうよっしゃ!怪人共!相手してやるよ!!」
正面から飛んで来た戦闘員に対し、戸惑いながらも腹に思いっきり拳を入れる。
そのまま、腹パンを決めた戦闘員は地面にひれ伏し爆発した。
間髪入れずに飛びかかって来た戦闘員達に対し、回し蹴りを食らわせる!
こちらも例外なく地面にひれ伏したまま爆発する。
あっという間に戦闘員全員をなぎ倒してしまった。
ーー戦闘経験などない一般人であるにも関わらず。
「······分かるぞ······!」
クロスが小さく呟く。
「分かるぞ!戦い方が!」
クロスは、驚きの感情を込めた声を発した。
直後、デストロンアヴェンジャーがクロスに向かって突進し始める。
対応が一瞬遅れたクロスは、その自慢の脚で蹴られてしまい、近くの木製ベンチを巻き込みながら吹き飛ばされて壁にめり込んだ。
「ウガァ!!···痛った·········完璧油断してたぜ······」
クロスは多少の痛みを堪えながら立ち上がる。
「よし!気合入れ直して···!」
そう呟いたクロスは頬部を叩き、デストロンアヴェンジャーに向かい、こう言い放つ。
「怪人共!よく聞いとけ!
俺は『仮面ライダークロス』!
風と共に、未来を創る者だ!」
威風堂々に言い放つと、ドライバー正面から左側に装填されている「1号ライダーレジェンドコア」の「リキュレイトリミッター」を素早く押す。
《『1−GOU』!UN·LIMIT!》
するとどうだろうか、ボディスーツに輝きが灯り始めた!
その状態で、さっきのお返しと言わんばかりに、脚部に力を溜め、一気に突進していく!
その状態のまま、真下にある棄てられた車の上へ落下させた!
これこそがクロスの能力「変身に使ったライダーレジェンドコアに秘められた特殊能力の発動」である。
ライダーレジェンドコアには、歴代のレジェンドライダー達の力を変換したエナジー「ライドエナジー」が宿っている。
ライドエナジーを一時的にドライバーへ過剰供給する事で、レジェンドライダー達の能力の一部を再現する事が可能なのだ!
「仮面ライダー1号」の能力は「身体能力の強化」、この能力を発動し、車の上から更に地べたへ落ちたデストロンアヴェンジャーに肉弾戦を仕掛ける。
デストロンアヴェンジャーは、自身の鋭い剣を突き立てようとするが、先を読んだクロスによるくぐり抜けで難なく躱される。
負けじと今度はハサミで応戦しようとするが、今度は強烈なアッパーカットを食らい、上へと吹き飛ばされる。
更に落下地点を予測していたクロスによるサマーソルトキックにより、地べたへ逆戻りした。
しかし、背中の翼を広げて羽ばき、街中へと戻ってしまった!
だが、そんな心配はご無用。
今度は、ドライバー正面から右側に装填されている「ビルドライダーレジェンドコア」の「リキュレイトリミッター」に手をかける。
《『BUILD』!UN·LIMIT!》
赤と青で彩られた装甲が、輝きを灯す。
「仮面ライダービルド」の特殊能力は、「様々なエレメントの能力発動」。
かつてビルドは、闘いの中で様々な物質の特性を持つボトル「フルボトル」を使った「実験」を繰り返し、様々な敵に立ち向かってきた。
例えば、即死効果のある大質量パンチを繰り出したり、相手の攻撃時のエネルギーを吸収して自身のエネルギーに変換したり······。
···その中には、「空を飛ぶ」事が出来る特性もあった。
その特性を発揮し、クロスは今大空へと舞う!
オレンジ色のメタルチックな翼をはためかせ、上空へ逃げたデストロンアヴェンジャーを追う。
ものの数分で見つかり、そのままデストロンアヴェンジャーへ突撃!
空中で殴る殴られるの応酬を演じながら落下。
落下地点には、直径10mはありそうなクレーターが出来ていた。
「······はあ······はあ······」
クロスとデストロンアヴェンジャー、お互い息を荒らげながら、相手が動くのを待つ。
「これで決める!」
先に動いたのはクロスだった。
無論、デストロンアヴェンジャーも黙って見るはずも無く、全身から黒いオーラを纏い、ドリルが如く身体を回転させながら飛翔する。
クロスもまた、装填されているライダーレジェンドコアを押し込む。
同時に全身から、赤、青、緑のオーラが吹き上がる。
《RIDE CHARGE!》
ドライバーが必殺待機状態になった事がアナウンスされる。
そのアナウンスを聞いてデストロンアヴェンジャーは危機を感じたか、翼を広げて飛行スピードを更に高める。
鈍い音が響く。
音の源はーー
《RIDE ATTACK!》
ーーデストロンアヴェンジャーだった。
直撃の寸前に右脚を肩部へめり込ませたのだ。
そしてこのタイミングで、必殺待機状態終了のアナウンス。
クロスは有無を言わさぬスピードで左脚に力を乗せ、デストロンアヴェンジャーを上空へ蹴り飛ばす。
直後、どこからかともなく数式のようなものが現れ、デストロンアヴェンジャーの周りに球体状の空間を創る。
ドライバーの風車が高速回転し旋風を取り込んだ瞬間、クロスはデストロンアヴェンジャーよりもはるか高くへと飛ぶ。
そのまま空中で一回転し、右脚を伸ばす。
すると、クロスの両脇に「仮面ライダー1号」と「仮面ライダービルド」のビジョンらしき者が出現する。
輝きを帯びたクロスら三人は球体状の空間を蹴りつける。
三人の輝きが最高潮に達し、威力も比例して最高潮に達した瞬間、三人は一体化しーー
《『VORTEX RIDER KICK』!》
ーー無情なるアナウンスが流れたと同時に、デストロンアヴェンジャーは空間ごと爆発四散した。
クロス/交路はそのまま地上へ降り立ち、爆発を背景に佇む。
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···かくして、彼の闘いの日々が幕を開ける。
ショッカーが復活した理由は?
何故交路は「英雄」として、「仮面ライダークロス」として選ばれたのか?
謎は尽きない。
···ところで、謎と言えばだが、この闘いをジッと見つめていた者がいた。
その人物は、ピンク···失礼、「マゼンタ」色のYシャツの上に、さながらホストスーツのような黒いズボンを履き、また黒いジャケットを羽織っている。
首筋からはこれまたマゼンタ色の「トイカメラ」がぶら下がっており、そのふてぶてしい顔には興味の色が現れている。
「···自分が呼んだとはいえ、よく来たものだな」
後ろから声をかけられる。
見れば、例の男······錨が現れていた。
「『巻き込んだ』の間違いじゃないのか?おまけに長いことこの世界に縛り付けておいてな」
マゼンタの男は皮肉げに笑う。
「見たところ、お前は自分の意思でこの世界に留まっているようだがな」
錨が反論を返すと、マゼンタの男はバツが悪そうに顔をしかめた。
「それが『この世界での役割』だっただけだ······で、遅刻魔のあんたは何が望みだ?」
「···受け取れ」
突然、錨は二つの機械を投げつける。
マゼンタの男はぶっきらぼうに受け取る。
見れば、一方の機械は交路に渡したものとはまた違ったものの、本質的には同じもの····「ドライバー」であった。
そしてもう一方は···
「『ショッカーを潰せ』···それだけだ」
「ほぅ···『ショッカー』か、どの世界でも···」
マゼンタの男は面倒くさそうな、かと言って放ってもおけないような···二つの感情に揺れる微妙な顔を浮かべた。
が、整理がついたのか、マゼンタの男は錨を睨み、そっぽを向いた。
マゼンタの男が向いている方向では、太陽がまさに沈まんとしているところであった。
「『大体分かった』」
マゼンタの男に握られたもう一方の機械ーーマゼンタ色の「レジェンドコア」が、静かに夕陽を映し出していた。
いかかがでしたでしょうか?
汚い文章ですが、そこら辺も含めてご感想·ご意見くださるとありがたいです
追記:(名前A)/(名前B)は、(変化前)/(変化後)と捉えてください
···最後ノ男ハ誰ナンダローナー謎ダナー