――私の妹にならない?
突然に声を掛けられ、突然にあり得ないことを口にした三歩ほど前に立つ人はにっこりと笑っているが、私は困惑するばかりで。驚きと動揺で動かない頭で考える。その言葉振りから上級生であるとわかるけれど、何故に面識も付き合いもない私を妹にしようとしているのか、理解が出来ずにどう返答したものかと黙り込んでいた。
「貴女にお姉さまが居ないことは確認済みなの。時期も時期なのだしこの機を逃すと更に難しくなるわ。いい機会だと思わない?」
「……はあ」
あまりにも現実味のない言葉に気のない声が漏れ出る。
聞いた話ではあるけれど、この時期に姉を持っていない一年生は『行き遅れ』と揶揄されることがあるという。気にしなければそれで構わないが、純粋培養の子たちは気にするようで。私はいいんちょからの助言で、あまり気にしないで自然に任せていれば良いと言われていた為に、今日までのほほんとしていたのだけれど。
まさか自分の身に降りかかるとは思ってもみなかったから、少し動揺しつつ考える。
流石に見も知らずの人と姉妹の絆を交わすのはどうだろうか。ちなみに初対面で絆を結んだクラスメイトを四月の中頃に見たのだけれど、その子の勇気には感服するものがあった。だって、相手の情報などほとんどない状態で判断したのだから。もしかすればお姉さまの方から強制的にという可能性もあるけれど、喜んでいたのだからそれはあるまい。奇麗で優し"そう"な方、と顔をほころばせて手を合わせていた彼女とお姉さまとの関係が、今どうなっているのかは知る由もないけれど。私ならば怖くてそんな無謀なことは出来ない。もしかすれば絆を結んだのは良いけれど、馬が合わず関係が希薄になったり疎遠になったりしそうだ。結んだ絆を解く――ちなみにその前例はほとんど無いらしい――ことは、掟破りとなりかなり評判を落としてしまうらしいから。
「あら、興味がないのかしら。それとも山百合会のお二方どちらかの妹の席を貴女はお望み?」
「何故、そうなるんです……」
同じことを何度も聞かれているけれど、妹の席が空いている例の二人は志摩子さんを気にかけているのだからあり得ない。山百合会の仕事を手伝っていると、二人は私を見ていない。いや、違うか。一定の距離を保ったまま近づこうとはしていない、という表現の方が的確かも知れない。
山百合会の中ではなく、外から見ることしかできない目の前の人や私の周囲の人からすれば、私が二人のどちらかの妹にという考えを持っても仕方ないのかもしれないけれど、少し考えれば済むことだろうに。四月から手伝いを行っている志摩子さんと新参者の私では信頼度が全く違うだろうし、過ごした時間もまた然り。
そもそも私には姉なんてものを持つ気はないのだから、話として成立しない。ああ、そうか二人が私と距離を保っているのは、きっと優しさなのだ。仲良さげにしていればこうして勘違いをする人が増えて、厄介ごとも増えてしまうだろうから。
「だってそうでしょう。貴女は随分とあの方たちと仲良くされているんだもの」
「普通ですよ。ただの先輩後輩の関係です」
えらく食い下がるなと目の前の人を見る。ふと彼女から視線を外せば、視界の片隅に私たちのやり取りを物陰に隠れながら見ている人が四人ほど居た。
そのうちの二人は顔見知りで、一人は同じクラスのトップの子にもう一人はトップの子の姉だったはずだ。入学早々に姉妹の絆を交わした二年生の彼女は、度々ウチの教室を訪れて羨望の眼差しを集めていたから、その光景が記憶に残っている。ふう、と小さく目立たないように息を吐いて力を抜いた。
「へえ……、そう」
「はい。それにお二人も私を妹にだなんて考えていないでしょうし」
「それならば余計に私の妹になればいいでしょう? 肩身が狭くないの?」
自信ありげにそう口にする上級生に少しばかりげんなりする。肩身が狭いのは貴方もではと、質問を質問で返したくなるけれどぐっと堪える。
もしかしてこの人以外にもこうして私の下を訪ねてくる人が今後出てくるのだろうか……。そんなことはあり得ないと言い切りたいところだけれど、何故か不安になる所がある。新聞部の子やクラスメイトにも言われていることだし、上級生がそう勘ぐっても仕方ないのは理解できるが。
ただ私を妹にしてメリットがあるとすれば、小さいものだけれど山百合会との繋がりだろうか。私をこんな方法で妹にしなくても、薔薇さまたちと友人になりたければ話しかければ良いだけの事で、チャンスは一年生よりも機会がありそうなものだけれど。
「肩身が狭いと思ったことはありませんし、姉が欲しいと思ったこともありませんから」
「なら、この話はなかったことに、と?」
「出来ることならば」
姉妹の絆とは割と面倒なものらしく、断る場合は穏便に済ませなければならないらしい。何故なら上級生のメンツが立たないし、断った側の悪評も流れてしまうからと。
「それはどうしてかしら?」
「流石に初対面の上級生といきなり姉妹の絆を交わすのは、躊躇われます。私は貴女がどんな方なのか、名前すらも知らないのですから」
「正論ではあるけれど、上級生に対して失礼ではなくて? それにこれから知ればいい事でしょう?」
いきなり声を掛けてきて妹になれという方が不味いと思うのだけれど。さっきも思ったけれど、面識のない人と絆を結んで上手くいく可能性って薄そうだけれども。表面上だけ取り繕うこともできるけれど、そういうことを目的とはしていないだろうし。まあ、それぞれに事情や形の在り方があるだろうから、あまり野暮なことを言う気もないが、心の中で思うのは自由だろう。
「断る権利が私にはあるというのに、どうしてですか?」
選択肢はあるのだから断ろうが断るまいが私の自由ではあるけれど、制約の為に随分と遠回りをしなければならなかった。すっぱりと『すみません、お断りします』で終われるのなら簡単な話だというのに。
「どうしてって……それはそうでしょう。こうして貴方の下を訪れてお願いしているんだもの。断る方が失礼じゃないっ」
少し語気を荒げた彼女。話が平行線で終わりそうもないなと、少しばかりげんなりする。このままでは問答を続けることになるだろうし、終わりが見えない。彼女の主張と私の主張が交わることがないのだから。
仕方ないか。
ケンカを売ってしまうような形になるけれど、はっきりと断るしかないのだろう。心配な要素があるから困りものではあるけれど、これできっぱりと目の前の上級生が諦めてくれれば話はそれで決着が付く。
「分かりました。――私は失礼な人間で構いません。申し訳ありませんが、この話はなかったことして、失礼ついでに出来れば先輩後輩の関係で最初からやり直しをお願いしたいのですが……」
「無理、ね。断っておいて図々しいのではなくて?」
譲歩案はきっぱりと却下され、不機嫌さを隠さないまま上級生は去っていった。スカートのプリーツを乱さない程度に早足で去る彼女を、隠れて見ていた子たちが慌てて追いかけている。
――はあ、疲れた。
深く溜息を吐いて、心を落ち着かせる。
ふらふらと当てもないまま歩いていれば、いつの間にか中庭の隅へと辿り着いていた。人気のないそこにはポツリとベンチが設置されていたので、乙女の嗜みなど皆無な私は誰にも憚られることなく、腰を落とした。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。私が周囲に聖さまと祥子さまの妹候補――盛大な勘違いだし、人から聞いた話だけれども――だと思われているのに、こうして声を掛けてきたことは謎である。色々と頭の中で考えてみるけれど、リリアンに疎い私が答えを得る訳はなく。
嗚呼、面倒なことになったかもしれないと肘を膝の上に置いて屈みこみ両手で顔を塞いだ。本当にどうしてこうなってしまったのか。ここに入学したことが間違いだったのか、四月の初めにみんなに倣うように姉を作らなかったことが問題だったのか。
はたまた山百合会の手伝いをしたことが発端だったのか。それとも体育祭で目立ったのが不味かったのか。それとも全てが原因で塵も積もって山となってしまったのか。自分の行動に後悔などないけれど、出来れば平穏で楽しい学生生活を送りたいものである。顔を覆ったまま、また溜息が一つ漏れ私にしては珍しく憂鬱な気分に陥る。
「あの、お体の具合が悪いなら――」
保健室に、という言葉は目の前の彼女の口から出ることはなかった。
「へ」
ふと降りかかった陰に間抜けな声を出しながら顔を上げれば、ツインテールが特徴の小柄な少女が立っていた。
「大丈夫ですか?」
小さく首を傾げれば、ツインテールも一緒に揺れた。眉を八の字にさせながら心配そうに私を見つめる瞳に苦笑を漏らす。紛らわしい姿を見せて申し訳ないと思いつつ言葉を口にした。
「すみません、体調が悪いわけじゃないんです。紛らわしかったですね。申し訳ないです」
「い、いえっ! 勘違いをして声を掛けてしまった私も悪いですしっ!」
声を掛けてくれた子に頭を下げると、表情を変えながら目を真ん丸にしているツインテールの子は、少し驚きながら私に謝る。心配で声を掛けてくれたのならば、それは彼女の優しさで何の問題もないというのにだ。
「いえいえ、声を掛けて頂いてありがとうございます」
「そんな、大袈裟ですよ」
少しささくれていた心が癒され、笑みが零れる。そんな私の顔を見たのか、困っていた顔から一転して彼女も笑う。
「でも、どうしてこんな所に?」
誰も居ないし、この時間に人が訪れるような場所でもないのだけれど。
「たまたま貴女が塞ぎこんでいる所が見えたので。もし体調がすぐれないのならばと来てみたんです」
「なるほど。迷惑を掛けたついでに少し私の話を聞いて頂いても良いですか?」
「構いませんよ。もう帰るだけですので、時間はいくらでもありますから」
にへらと笑う少女は随分と人懐っこいようだ。失礼しますね、と言って私の隣に座った。面識もないというのに良いのだろうかと思うけれど、同じ学園の生徒であるしこうして話す機会を持てたのだから身構える必要もないのだろう。
普通ならば何か裏があるのではと疑いそうなものだけれど、純粋培養で育った彼女は擦れていないようだった。そのことをありがたく思いながら、先ほどの出来事をかいつまみながら彼女に伝えた。
「うぇっ!? 上級生からの姉妹宣言を断ったんですか!?」
瞳が零れ落ちそうなほど見開いた目は驚きに満ちていて。膝の上に置いていた両手は、驚きのあまりかスカートを握りしめていた。しわになるよ、と指を指せば慌てて解いて直していたけれども。なんだか小動物のような彼女を見ていると微笑ましい気分になる。不思議な感じを持つ子だった。
「ええ。駄目でしたかね?」
「いえ、その……初対面の上級生と絆を結んだ子も居るそうなので……駄目ということはないと思いますが、あまり聞いたことがありませんし……」
驚きながらも、言葉を選びながら答えてくれる。
「そうなんですね。今年からここに編入したので、どうしてもこういう事に疎くて馴染めなくて。遠まわしにお断りの空気を醸し出したつもりだったんですが、怒られてしまいまして」
「ええっ!!」
ぴょこんと内側にはねているツインテールを揺らして、さらに驚く。だって仕方なかったのだ。あの場合ストレートに断ってもやんわりと断っても上級生は怒っていただろうから。ひえええ、と青ざめた顔をしながら苦笑している私の顔を見ているツインテールの子はまるで自分のことのように動揺している。
「まあ、もう終わった話ですし、これ以上どうしようもないんですけれどね」
「そう、ですが……。何かもっと上手くいく方法ってなかったのでしょうか」
「あはは。あの場で上級生の言葉を飲んでいれば丸く収まったのでしょうが、私には無理でしたね」
「でも、羨ましいです。そうしてはっきりとお姉さま方に意見を言えるのは」
「?」
「上級生とお話をしていると緊張してしまいますから」
「ああ、なるほど」
この辺りは慣れと経験だろう。まだ目の前の彼女は高校一年生で、おそらくリリアン以外を知らないだろうから。これから大学を経て社会人になって色々と経験を積めば、慣れるはずだ。年上というだけで威張り散らす人も居れば、腰の低い人も居るし、人との付き合い方は社会人になってからも学ぶことが多いし。
というかむしろ社会人になってからの方が、人付き合いを考えていたように思う。頼れる上司、頼れない上司の選別をしなきゃならないし、自分の下に就いた子の面倒を見て教え方をそれぞれに工夫をしたり、何を任せるか考えたりと色々と大変だ。
まあ、彼女にはまだ先の未来だし、少し頼りない雰囲気のある子ではあるけれど、もしかすれば何かの才能に目覚める可能性だってあるのだから。
「そのうち慣れてしまいますよ」
「そうだと良いのですが」
「話、聞いて頂いてありがとうございます」
「いえ、本当に聞いていただけなので、何の助力にもなってませんし」
ベンチから立ち上がるとそれに倣ってツインテールの彼女も立ち上がり、笑いあう。やはり一人で抱え込むよりも、誰かにこうして話を聞いてもらえるだけでも随分と気が晴れるものだ。大袈裟に背伸びをして彼女に時間を取らせてしまったことの謝罪と、話を聞いてもらったお礼を述べると彼女は校舎へと戻っていった。名前も何も聞かなかったけれど、縁があればきっとまた再会するだろうと願いを込めながら、私はまたベンチに座り込む。
何故上級生は私を妹にと選んだのか、物陰でこちらを見ていた人たちは何の目的があったのか。色々と疑問は残っているけれど。
――考え込んでも仕方ないか。
そう、なんとかなるさ。ケセラセラである。もう一度ベンチで背伸びをして、ふうと息を吐く。
「こんな所でどうしたの、樹ちゃん」
「ごきげんよう。蓉子さま、祥子さま」
おや、と顔を上げればそこには紅薔薇姉妹が揃って立っていた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
中庭には薔薇の館があるから仕事をしに来た際に私の姿を見つけて、わざわざ此処まで赴いてくれたのだろう。
「お二人は山百合会の仕事ですか」
「少し雑用があるものだから捌いてしまいましょうって祥子と話していたの、ね?」
「ええ、お姉さま」
そう言って蓉子さまは祥子さまの方を見る。互いに目を細めて笑いあうのは、信頼の証なのだろうか。仮に私が祥子さまの妹になったとして、この中に混ざる姿を想像してみる。――圧倒的に不釣り合いというか違和感が半端ない。私がこの中に混じれば似合わないことこの上ないのだけれど。ついでに聖さまと姉妹になった姿を夢想してみる。…………うーん更に合わない。というか聖さまが妹を従えている姿を想像できないという方が正しいだろうか。それに私が二人のどちらかを『お姉さま』だなんて呼んでる姿を想像すると、気持ち悪いの一言に限る。
何故、周囲の人たちは勘違いしているのか、本当に謎だ。
「それで、貴女はどうしてこんな所に?」
少し呆れたような顔をした祥子さまは先ほどはぐらかした質問を再度問いかけてきた。上手くかわせたと思ったのだけれどそうは問屋が卸してくれないようだ。
「いえ、まあ、色々とありまして……」
「それは私たちが聞いてもいい事なのかしら?」
「問題はない、筈です」
こうして私が言いふらすことに不快に思う人が居るかもしれないが、相手の名前も知らないのだし問題は少ないはず。それに目の前の二人が吹聴するような人ではないのは知っているし、聞いてもらうには丁度良いのかも知れない。
「なら薔薇の館に行きましょうか。そのついでに仕事を手伝ってくれると助かるわ」
「了解です」
どうやらタダで話を聞くつもりは無いようで、仕事を対価で求めてくるとは、蓉子さまはちゃっかりしている。片眉を上げて苦笑をしながら薔薇の館に向かい、いつもの様にいつもの席へと座る。
取り合えずお茶を淹れるのは下っ端の仕事となっているので、紅茶を用意して二人の目の前にカップとソーサーを置いた。蓉子さまからの仕事は本当に雑用で簡単に終わるものだったので、作業をしながら事のあらましを語れば、蓉子さまは苦笑いを、祥子さまは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「……樹さん、その上級生のお名前は知っていらして?」
「いえ、それが全く」
「そう。――なら顔は覚えていらっしゃるでしょう?」
少し怒りのオーラを携えている祥子さまの視線は厳しいものだった。真面目な人で道理を弁えない人間を毛嫌いする質だから、突然私に姉妹を迫った人に怒りを覚えるのは理解できるけれど。
「そりゃ、見ればわかると思いますが、断った手前あまり会いたくはないですし……」
私が知っている上級生といえば、山百合会に所属する人たちとその仕事上で知り合った人くらい。しかも部活関係の人は私の名前を知っていても、私は相手の名前を知らないという状況だ。どこそこの部長さん、副部長さんで覚えておけば仕事に支障はなかったし、覚える気もあまりなかったというのもあるけれど。
「祥子、犯人捜しをしている訳じゃないのだし止めておきなさい」
「ですがお姉さま。今後も今回のように樹さんにロザリオを渡そうと躍起になる方がいらっしゃるでしょうし、野次馬をする方までいらしたなんて……」
野次馬していた人は知っているけれどあえて伏せて、知らない人だったと伝えている。バレると私が嘘をついていたことになるけれど、まあその時は泥を被ろうと覚悟している。
「確かに感心はしないけれど、樹ちゃん本人がどうしたいかでしょう?」
「ですがっ! ……樹さんはどうされたいの?」
いつもならそのまま怒りを継続していそうな祥子さまが長い息を一つ吐きだしてぐっと堪えた。珍しいこともあるのだなと目をひん剥いていると、ジト目で祥子さまに睨まれる。大体いつも何か私がやらかして祥子さまに怒られるパターンが常だったから、こうして喋るのは滅多になかったのだし。
「どうもこうも終わった事ですし、先輩後輩の関係を望んだら怒って去っていきましたから、その方と友人関係を築くのも無理ですよね」
プライドが高そうな人だったし、関係継続は無理と判断したのだ。
「なるほど。樹ちゃんは姉を持つ気はあって?」
祥子さまと私のやり取りを静かに聞いていた蓉子さまが、随分と真剣な眼差しで私を見て問うた。
「ないですね。誰かをお姉さまだなんて呼んでる自分の姿を想像すると気持ち悪いですから」
嗚呼もう本当に。お姉さまと呼びながら戯れる自分の姿なんて想像したくない。
「あら、残念。聖か祥子の妹に納まってくれると助かったのだけれど」
「お姉さまっ! 勝手に話を進めないで下さい!!」
「もしも、の話よ、祥子。現状で妹を持っていないとなると、この先に出会う可能性も低いでしょうから」
「ちょっと樹さん、そんな目で私を見ないで頂戴!」
祥子さまに睨まれてしまったので視線を逸らす。また祥子さまが自分の姉になった姿を想像してみたのだけれど、あり得ないと心が否定してそれが目に出てしまったようだ。
「樹ちゃんは、祥子をどう思っているの?」
「ん? どう、どうですか……学校の先輩、ですかね」
どうもこうも、それしか言いようがない。育ちが良すぎて近寄りがたい雰囲気があるし短気な所もあるけれど、困っていると助けてくれるし今回だって動いてくれようとしてくれたのだから、良い人なのだろう。
「そう」
机に肘をついてその手を頬に充ててにっこりと笑う蓉子さまに、その姿を見て顔を赤くしている祥子さま。なんだか甘い空気が流れているような気がするけれど、姉妹でいちゃつくなら他所でやって欲しいのだが、そんなことを言えない下っ端は仕事の手を動かす。
「でも樹ちゃんがああやって悩んでいるなんて珍しいわね」
「悩んでいるように見えましたか?」
ベンチに座って考え込んではいたけれど、あの時は外に出してるつもりはなかった。目敏く見てる人だなあと感心するし、こうして話を聞いてくれるのはありがたいことだ。
「ええ」
小さく苦笑いをして蓉子さまは頷いた。
「人間ですからね。悩むことも愚痴や弱音なんていくらでもありますから、溜め込んでも仕方ないですし吐けるときには吐き出さないと。それにこうして話を聞いてくれる人が居るんですから、恵まれています」
「貴女らしい言い方ね。祥子もそのくらいになってくれれば可愛げがあるのだけれど」
「お、お姉さま!?」
「だって貴女は弱い所を隠そうとするでしょう。姉の立場である私からすれば、頼って欲しいし、甘えて欲しいもの」
横に座っている祥子さまの頬をつんつんと人差し指で突く蓉子さま。そんなことを祥子さまに出来るのは目の前の人しか居ないよなあと感心しながら、改めて姉妹の絆というものは不思議なものだと思いなおす。また流れ始めた甘い空気にご馳走様、できれば誰も居ないところでお願いしますと心の中で念じて、私は薔薇の館を後にした。
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さてオリ主はヘイトを順調に(一部勢力から)稼いでいるようで。
もちろんツインテールの子はマリみて主人公の祐巳ちゃんです。ただ名乗るまでには至らず(笑) 面識を持って欲しかったので、ここで出演してもらいました。
上級生から妹にならないかと言われて断る人って珍しいのでは、と思います。祐巳ちゃんと志摩子さんはもちろん例外で。てか穏便に断る方法って面倒そうですね。上下関係の厳しいリリアンならば上級生のメンツを立てないといけなさそうですし、断ったら断ったで噂が流れそうで……。まあ普通は初対面でこんなことは言わないでしょうが、モブキャラの間で色々と思惑が交錯している感じです。
作中でオリ主以外の視点で語るべきかもしれませんが、さてどうしたものか……。所詮モブなのだし……。
お気に入り登録が1000↑を超えました。拙作を読んでくださる皆様ありがとうございます。何故だか話の進みが凄く遅いので、まだしばらくお付き合いよろしくお願いします。これが終われば久保栞氏に憑依転生したオリ主モノを書きたいのですが、まだまだ先。うっ、そもそも需要……まあ気にするまいて。
【追記】残業をしていたので報告が遅くなりましたが、設置していたアンケートを締めました。
①:ちゃん付け :155+4=159
②:呼び捨て :135+5=140
③:作者が考えて:67+ 2=69
④:どちらでも :105+0=105
結果は1番となりました。計472票という沢山の票を入れて頂き有難うございました。前にも言いましたが30票が精々だろうと思っていたので、感無量です。どこかのタイミングで聖さまからオリ主の名前の呼び方が『君』から『ちゃん』付けになります。……いつになるやらorz (2020/08/29:なんだか色々と書き間違っていたのでサイレント修正しておきますテヘッ)
聖さまは今後オリ主をどう呼ぶと思いますか?
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ちゃん付け
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呼び捨て
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作者がきちんと考えて!
-
どちらでもOK