生徒指導室へと召喚されてから数日。流れる噂が消えることはなく、なんでか一躍時の人となっている。人の噂も七十五日と言われて久しいけれど、長すぎるというのが正直なところ。そのことわざを根拠にすると二か月半近く、噂が蔓延しているのだから三学期開始あたりまで、この辱めを受けなければならないのだから憂鬱である。
クラスメイトには取り囲まれて、一から十まで事細かに内容を問いただされ、困りながらどう答えたものかと思案する私をいいんちょが助け出してくれたりと、この数日忙しかった。噂が流れ切ったようなので、視線は感じるけれど取り囲まれる事態はなくなったので、ソレを気にしなければ随分と平穏であり、日常が流れている。
「えっ!」
「きゃあっ!」
「紅薔薇さまと黄薔薇さまよっ!!!」
……日常が、日常が流れている筈だったのに。急に騒がしくなった我が一年藤組の教室内は、全校生徒の憧れの象徴である三人のうちの二人が現れたことで、にわかに色めき立っている。
たらりと嫌な予感が走る額から流れる汗を感じ、鞄の中へと仕舞い込んでいた教科書を机の上に放り出して、こっそりと教室を抜け出そうと試みたのだけれど、その様子を目敏く見ていたトップの子たちが私の行動を阻んだ。退路が塞がれた、と頭を抱えて上級生二人の方に視線を向けると、そこには随分とにーこりと笑った二人が見えてしまった。その姿にクラスの子たちは更に黄色い声を上げるけれど、私の頭の中では某人気SF作品の黒い仮面を被ったラスボスがシュコーシュコーと鳴らす荒い息の音と半端ない威圧感を吐き出しながら登場する超有名なBGMが流れ始める。
「面白いことをしているわね、樹ちゃん」
「どこに行くのかしら?」
「……お二人とも、ごきげんよう」
つかつかと歩みを揃えて私の前に立つラスボ――……薔薇さまの登場である。がっくりと項垂れている私を面白そうに見つめる江利子さまに苦笑いをしている蓉子さま。さて二人が私の教室に現れた理由は分からないけれど、無駄な行動は起こさない人たちなので何かしらの意味はあるに違いない。
「ごきげんよう。ここだと落ち着かないから薔薇の館に行きましょうか」
「ごきげんよう。さ、行きましょう」
江利子さまが私の右腕に左腕を絡ませ、蓉子さまは蓉子さまで私の背中に手を充てるものだから、逃走は不可能となってしまった。私たちのやり取りを見た子たちがまた黄色い声を上げる。この様子を見るに、この二人から逃げ出すと、周囲から何を思われるのか考えるのが怖い。そして今現在突き刺さっている視線も痛い。由乃さんや志摩子さんが迎えに来た時の視線の質が全然違うのは、私の気のせいだろう、そうだろう。さて仕事はないと聞いていたのに何故薔薇の館へと連行されるのか考えるのも億劫になり、腕に当たっている江利子さまの胸は柔らかいなあと現実逃避をしながら、電光石火のごとく私は二人に拉致されたのであった。
「ごきげんよう」
薔薇の館の会議室へと三人同時に入ると、そこには聖さまが窓際の桟に腰かけていた。ようやく来たかと言わんばかりの顔で、そこから降りて椅子に座る聖さまに助けを求めようとしたけれど、今の今まで助けられたことはない。こりゃ諦めて観念した方が楽かもしれないと、私は勝手に流し台の前に立っていつものように三人の分のお茶を淹れ始める。どうやら今日は薔薇さま方三年生だけが集まったようで、他の人たちが来る気配がない。
「貴女も随分とここに馴染んだものね」
そんな私の姿を見て、蓉子さまが椅子に座り声を上げる。
「そうねえ。最初はどうなることかと思っていたけれど、良い拾い物をしたものだわ」
私の返答を待つことがないまま、蓉子さまの言葉を継いだのは江利子さまで。私はそこらの石ころですかい、と心の中で突っ込みをせざるを得ない。口に出すと更に江利子さまはからかってくるので、切り返しのタイミングは見図らないと。
「まあ、頑張っている方じゃないの」
珍しく二人の会話に入る聖さまに驚きを感じて、つい振り返ってしまう。
「……何?」
「いえ、聖さまが私のことについて会話に加わるのは珍しいな、と思いまして……」
怪訝そうな顔をして私を見る聖さまに、馬鹿正直に話すのもどうかと考えたけれど、ここ最近纏う雰囲気が随分と変わってきた今の聖さまになら、少しくらいの冗談は通じそうな気がする。賭けになってしまうけれど、怒られたらその時は腹を括るしかないかとそう口にした。
「まあ、確かに否定できないけどね」
両腕を後ろに回して頭に添えて椅子の背もたれに体を預ける聖さまの姿に、二人は苦笑いを零してる。深く追求することもないだろうとそれ以上は聞かず、電気ポットに手を掛けて給湯スイッチを押し込むのだった。
「どうぞ」
「ありがとう、樹ちゃん」
「ありがとう」
「ん」
同じ三年生の薔薇さまという立場の三人ではあるけれど、返答一つでもこうして違いが出ているし、飲んでいるものもそれぞれに違いがあるのだから。お茶を淹れなければならない立場の私からすれば、面倒なので統一して欲しいけれど、みんな割と自由にしているので私も持参した緑茶やら煎茶を勝手に淹れて飲んでいるので文句が言えない、
ちなみに蓉子さま、江利子さま、聖さまの順であり、江利子さまと聖さまに関しては日々の機嫌やら気分やらで返事が変わるのだ。私がここに訪れた初期の頃、聖さまなんて無言だったから随分と進歩したのだけれど、これを喜んでいいのかよく分からない。
「それで、なんで私をここに?」
私の指定席となっている場所に置かれている椅子を引いて、ゆっくりと座りながらここへ連れてこられた理由を聞いた。仕事も何もないのに、こうして呼ばれるのは初めてのような気がするし、三年生である彼女たちが直接私のクラスまで迎えに来たことは一度もなかったのだから、何かあるはず。
「山百合会を通して新聞部が取材の依頼を貴女に申し込んできたのよ」
「樹ちゃん、新聞部の子にインタビューを申し出されたけれど、断っていたでしょう?」
「それで私たちの方にって訳」
蓉子さまからの言葉を切っ掛けに息の合った継ぎ方に三人とも仲が良い。そんなことより、この連日バスの件を聞き込みに来た新聞部の一年生を煙に巻いて逃げていたのだけれど、まさか山百合会を通す手もあったとは。手法を変えてきたことに驚きを感じながらも、選択肢が存在するのならば私の出す答えは一択である。
「お断りします」
「――そう」
短く言葉を零した蓉子さまは江利子さまと聖さまに視線を向け、少し呆れたような顔をしていた。
「やはり、賭けは成立しなかったわね」
「なんだ面白くない」
どうやら何かやらかそうとしていたようで、蓉子さまはストッパーとして諫めたけれど止まらなかった、そんなところだろうか。
「気を悪くしないで頂戴ね。江利子が面白がって聖と賭けをしようとしてたのよ」
「私が新聞部の取材を受けるか、受けないかでですか……」
「結局どちらも受けない方に賭けたから成立はしなかったのだけれどね」
馬鹿よねえ、と言いたげに二人に視線を向ける蓉子さまに二人は何食わぬ顔で笑ってる。賭けは成立しなかったようなので構わないのだけれど、江利子さまは完全に私を面白い物体くらいに考えていないだろうか。時折、江利子さまと私のやり取りを見ていた山百合会メンバーに、ご愁傷様とか諦めてとか小声で言われるから、これからまだ何か起こりそうな気もするけれど、気にしたら負けだ。
「賭けが成立しないのが分かっているなら、わざわざ私を呼び出すまでもなく断ってもらっても良かったのですが……」
「流石にそれは不味いでしょう。貴女の意見をきちんと聞いておかないと」
「どうにか逃げられた、と思っていたんですが……まさかこっちに話が来てるなんて」
とはいえはっきりと断っているのだから、この話はこれで終わりである。今流れている噂をこれ以上広める気なんてないし、記事になんてされれば二年生や三年生からの視線も集めることとなる。
「拒んだ樹ちゃんには悪いのだけれど、この話――受けてもらえないかしら?」
にっこりと笑って組んだ両手の上に顎を乗せ、蓉子さまがそんなふざけたことを言い出した。それにしても何故新聞部の取材を私が受けなければならないのだろうか。面倒極まりないし、これ以上に目立ちたくはない。『リリアンかわら版』と銘打って発行される高等部限定の新聞は、インターネットがあまり発達していない今だと貴重な情報源であり、学園内の流行り廃りを感知するための一つのアイテムでもある。そんなものにバスの一件が載ろうものなら、噂にさらに拍車が掛かり平和な日常が謳歌できなくなってしまう。一時的なものであれ注目を浴びてしまうのだから、なるべく避けたい。だからこそ新聞部の子たちから逃げていたというのに。
「嫌です、と言いたいところですが何か理由でもあるんですか?」
新聞部のネタとして山百合会は重宝されていると聞いたことがある。学園内での人気や影響力が強いから、何かあると新聞部が駆けつけて記事にしようと躍起になっていて、目の前の三人は新聞部に苦手意識があるとかないとか。江利子さまは面白がりそうだけれど、真面目な蓉子さまが興味本位で記事を組もうとしている新聞部の取材を許す人に思えないから、もしかすれば何かあるのかもしれない。理由を問いただした私に、蓉子さまの顔が笑みから真顔に変化する。ああ、これは確実に何かあるのだろうと悟った私は、姿勢を正すのだった。
「今、この学園で流れている主な噂は全部で三つ。それは知っていて?」
この学園について疎い私ではあるけれど、流れている噂を把握できていないこともない。山百合会の動向はみんな気になるようで、真相を知りたいクラスメイトの子たちに質問されるのだ。その時は私はただのお手伝いだからよく知らない、と言って逃げているけれど。流石に当事者でもないのに見たり聞いたりしたことを勝手に喋って憶測を広げる訳にはいかないから。
「聖さまと志摩子さんが姉妹の絆を結んだ、祥子さまがフラれた、私が人助けをした、ですかね」
「その通り」
「てか、それなら新聞部も私の事より山百合会のことを優先的に記事……――まさか」
断ったのか。それしか考えられない。蓉子さまが妹である祥子さまのある意味不名誉な噂に拍車をかけるようなことはしないだろうし、聖さまと志摩子さまの一件も、喜んでみんなに報告するような人でもない。教室前で祥子さまと問答を起こしたのは、おそらく聖さまなりの周囲への牽制だろう。志摩子さんに何かあれば、姉である私が出てくるよ、という意味の。
「その依頼も同じタイミングで来ていたのだけれど、断ったのよ。これ以上騒ぎを大きくする訳にはいかないもの」
「私は生贄ですか……」
丁度良いタイミングで私がネタを提供したということか。かなりの偶然であり奇跡でもあるけれど。
「生贄って訳じゃないんだけれどね」
唐突に聖さまが蓉子さまと私との会話に割り込んできた。いつもつまらなそうに仕事をこなしている聖さまが割と真面目な顔で私をみている。珍しいと思いつつ、話の続きを聞くために何も言わず聖さまを見る。
「君の精神的な強さを頼りたいって言えばいいのかな。全てを話せるわけじゃないから悪いとは思うけれど、今回の一件に協力して欲しいのよ」
「協力、というか生贄にされるのは構いませんが……」
「腑に落ちない?」
「ええ、まあ」
「そりゃ、そうだよねえ」
苦笑いを零す聖さまに、困ったような顔をする蓉子さま。江利子さまは珍しくだんまりを決め込んでいて、どうやらこの話にはあまり関わらないつもりらしい。カーテンを揺らす風が心地いいけれど、これから先の話は一体どうなるのやら。仮に私が受けたとして、今流れている噂がかき消えるわけでもないだろうに。それが分からない人たちじゃないだろうし、こうして私を説得しているのが不思議なのだけれど。
「少し内情を話すことになるから、これから話すことは他の人には黙っていて欲しいのだけれど」
小さく頷いて、先を促した。曰く、普段は気の強い祥子さまであるが、今回のことで傷ついていない筈はないこと、志摩子さんも聖さまの妹になったことでそれなりに負担があるだろうから、今はそっとしておいて欲しいこと。それらを加味して私が都合のいい存在――流石に言葉は濁していたけれど――だったこと。
「あとだんまりを決め込むよりも、ある程度情報を渡した方が噂の鎮静化は早いわよ、樹ちゃん」
だそうだ。あまりにも私にメリットがなさすぎるような気もするけれど、蓉子さまには今まで世話になっていることもあるし、志摩子さんにも色々と迷惑を掛けたこともある。祥子さまにもこの学園のルールを沢山教えて貰っている。
そう思えば、新聞部の取材に答えるくらい、なんともないかと腹をくくった。ただ、なんとなく目の前の三人に踊らされているような気がして、余計な一言を言ってしまうのは私の悪い癖なのかもしれない。
「そりゃそうかもしれませんが、私って損しただけじゃありませんか?」
「それを言われると、反論しづらいわね」
「見返りを要求します」
はいはーいと右手を上げると、それは何かしらと蓉子さまが聞いてきた。
「三年生にとって大事な時期だとは分かっていますが、私に勉強を教えて下さると大変嬉しいのですが」
大変、を誇張して伝える。目の前の人たちは頭脳明晰なのだから教えを乞ういい機会だ。私の頭の出来はあまり良くないので、気を抜くとすぐ駄目になる。今はまだついていけているけれど、いつ落とし穴に嵌るかわからない。なら予防策を講じていてもいいはずだ。
「樹ちゃん、編入組なんだからそんなの必要ないでしょう?」
きょとんと呆けた蓉子さまと聖さまをしり目に、だんまりを決め込んでいた江利子さまが、アンニュイな表情のまま首を傾げて聞いてきた。
「今のところついていけていますが不安があるので、教えてもらえる人が増えるならお得ってもんです」
「お得って……」
「人のことを生贄扱いしたじゃないですか」
「そうは言ってないでしょう」
私の発言に三人は苦笑いを零してるけれど、そのくらいの見返りでもなければやってられないし、出来の悪い一年坊に勉強を教えるくらい、良いじゃないかと開き直る。
「まあいいわ。私は構わないから、分からないところがあればいつでも聞きにいらっしゃい――全く。私たちにそんなことを強請るなんて貴女くらいのものよ」
祥子にも言われたことないのに、と小さく零す蓉子さま。いや祥子さまも頭脳明晰なんだし、お姉さまにご迷惑を掛ける訳にはいかないって人だから、言わないだろう。そんなことなど分からない筈はないのに口に出てしまったのは、蓉子さまの願望なのだろうか。完璧な人のように見えて、こうしたところで人間臭さが垣間見えることに、少しばかり嬉しさを覚える。
「それじゃあ私は蓉子の横で邪魔をしようかしら」
「いや、普通に教えてくださいよ」
「あら、それじゃあつまらないじゃない」
アンニュイな表情から、面白そうに目を輝かせて江利子さまがそう言い放つけれど、いつものことで平常運転だ。さて、あとは聖さまのみだけれどと視線を向ける。
「気が向けばね」
がしがしと頭を掻きながら仕方ないかとありありとそんな雰囲気を醸し出して、曖昧な答えをくれたのだった。条件は飲んでくれたのだし、おそらく蓉子さまが無理やりにでも聖さまを引っ張って巻き込んでくれるだろうと、想像してしまう。三人でのヒエラルキーの頂点は蓉子さまだから、はっきりとしない返事でも心配はない。
「あ、もう一つ条件をだしてもいいですか?」
「構わないけれど、内容にもよるわね」
志摩子さんや蔦子さんから『新聞部には気を付けて』という警告されていたことを思い出して、保護者役と牽制役に三人のうちの誰かに新聞部の取材を立ち会って欲しいと願い出た。少し考えた様子を見せた蓉子さまが、そんなことならばと快諾してくれたのはいいけれど、興味本位で江利子さまの参加も決まり、それなら聖さまもついでにと薔薇さま三人参加という贅沢極まりない保護者役が出来上がってしまった。
こうなったので薔薇の館で取材を受けることとなり、私の後ろには三人が控えるという異様な光景が広がり、新聞部の部長さんが笑みを引きつらせてかなり気を使いながら私にインタビューを行うという珍事が発生したのだった。
あの時は寿命が縮むかと思ったと新聞部の部員たちに愚痴を零した部長がいた、らしい。
◇
――し、視線が痛い……。
新聞部のインタビューから数日、『リリアンかわら版』がどうやら発行されたようで昼休みに廊下を歩いていると、視線が刺さること刺さること。
今までの視線のメインは一年生からのものがほとんどだったのだけれど、二年生、三年生と追加されたのだから当然である。それでもまあ、悪意や敵意が含まれているものではないから、ただただ刺さる視線が気になるだけで、なにか問題が起こるという訳でもないから無視を決め込むだけだ。
「樹さんも随分と有名になったものね」
山百合会の仕事があるからと、放課後に由乃さんが藤組の教室まで迎えに来てくれた所まではいつも通りだったというのに。にっこりと笑いながら廊下をしずしずと歩く由乃さんは随分と嬉しそう。
「不本意なんだけどね」
「悪名で噂が広がるより良いでしょう?」
「それはそうなんだけど。私が山百合会に出入りしてなきゃここまで注目されなかったんじゃないかなあ」
「樹さんは、私たちと過ごすのは嫌?」
少し寂しそうな顔をしてそんな質問をしないで欲しい。
「嫌じゃないよ。でも……」
「でも?」
「周りが騒ぎ過ぎるから、それがちょっと苦手かな」
ああ、と思い至った顔をして暫く苦笑いをする由乃さん。由乃さんにも覚えがあるのか、返答に困っているようだ。
「神格化されてるでしょ。ただの生徒会なのに」
「確かに。幼稚舎からずっと過ごしていると、いつの間にかそうなってしまうのよ」
不思議よね、と小さく零して笑う由乃さんに私も笑う。仮に私が初等部からリリアンに通っていれば、彼女たちと同じような考え方になっていたのだろうか。
「私も初等部からここに通ってたら、みんなと馴染んで山百合会の人たちを憧れの対象として見てたのかなあ」
「どうかしら。樹さんだもの、案外今と変わっていなさそう」
気になって聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「というか、お嬢さまみたいな自分が想像できない……」
「ふふ、そうね。ちょっとおかしいかも」
そうして何気ないやり取りをしながら、薔薇の館へと辿り着く。私が初等部からリリアンに通っていれば、もしかしたらこうして手伝いとしてここを訪れることはなかったかもしれない。本当、人生なにが起こるのか分からないものだから、こうして繋がった縁を更に良いものへと変えていけば、きっと手放せない大切なものへと実っていくのだろう。
「行きましょう、樹さん」
薔薇の館を何気なく見上げていると、由乃さんが私を呼ぶ。さあ今日も下っ端として頑張りますか。
「うん」
ビスケット型の扉を開けて、ひどく軋む階段を上り会議室のドアを開けば。
――ごきげんよう。
そう、声が響いた。
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誤字報告を毎回くださる方、ありがとうございます! この場を借りてお礼申し上げます。情けない話になりますが、気を付けてはいるもののどうしても無理な所があるので本当にありがたいです。
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なんだか最終回みたいになってしまいましたが、まだまだ続きます、ハイ。アニメの一話にも辿り着いてないので(苦笑 あと聖さまがオリ主の呼び方を変えるタイミングが切り出せない。もう変わっても良いのですが……。しれっと変えるのもありですが、なにかイベント的なものを起こそうか起こすまいか。祥子さまも『さん』付けのままなので、いつかは『ちゃん』付けに変わって欲しい。何か考えないとなあ。