――ああ、まいったなあ。
お腹が痛い、腰が重い、足も重いし、気持ちが悪い。完全にただの生理痛で、お腹が痛く気分が悪いものの、我慢が出来てしまうというのが質が悪い。月に一度必ず襲われる痛みにムラがあるのも、今回の手落ちの原因ははっきりしている。まあ、ようするに痛み止めの薬をポーチの中へ仕込んでおくのを忘れ、ただひたすら我慢しなければならないという状況に陥っていたのだった。
「……はあ」
自然と口から出た溜息は随分と長かった。お昼ご飯を食べようと、適当なベンチを探して座ったものの食べる気力も湧かないし、痛みの所為でお腹が空いているのかどうかも分からない。母が作ってくれたお弁当は私の膝の横にちょこんと置かれたまま、手を付けることはなく昼休みの時間が過ぎていくだけ。残すのは勿体ないけれど母に詫びて、痛んでいないのなら夕飯にでも食べようかと考えていた。
「どうしたの、貴女がぼーっとしているだなんて珍しい」
眼は開けていたものの、映る光景を脳内へと流し込む作業なんて億劫だったので声を掛けられ、ようやくその作業が再開された。きょろきょろと周りを見た後に視線を前に戻すと、数歩分先に私の様子をうかがうような蓉子さまとあまり表情が読めない聖さまが二人そろって立っていた。
「こんに……――ごきげんよう」
どうやら痛みのせいで頭も回っておらず、慣れたはずの『ごきげんよう』という台詞が一度で私の口からでてはこず、言いなおす羽目になってしまう。数度頭を振ってみるものの、回復の見込みはなく。どうにか無理矢理に笑って誤魔化してみるものの、勘の鋭い目の前の人たちに通用するかどうかは謎である。
「ごきげんよう。樹ちゃん、本当にどうしたの?」
「あー、いえ……生理痛で」
リリアンに編入してから半年あまり、女子ばかりのクラス編成だというのにナプキンが飛び交ったり、『ヤバい血が垂れてきた』なんて台詞が飛ぶ所を一度も見たり聞いたりしたことがない。時折、調子を悪そうにしている子がいるけれど、空気を読んで黙っているのが淑女の嗜みのようで、なにかあるようならば、陰でこっそりとやり取りをするのがこの学園での風景らしい。
男子生徒の眼はないというのに、ほんとうにお嬢さまなのだなあと感心していたけれど、こうして自分の身に起こると、周囲に言い出し辛い状況になってしまうのは如何なものか。いいんちょ辺りは気が付いた雰囲気を見せてくれていたけれど、聞くか聞くまいか迷っていた様子だったから、若いなあと微笑ましい姿を見ながら痛みを紛らわせていたのだった。
「あら、大丈夫なの?」
「はい、どうにか」
はい、と言い切ればよかったのに、どうにかなんて口にしてしまったものだから、蓉子さまの片眉が一瞬上がる。
「本当に?」
「ええ」
ふいに私の弁当箱を持った蓉子さまは、更に顔をしかめて盛大に溜息を吐いた。
「樹ちゃん、お弁当全然食べていないのではなくて?」
「お腹痛いし、食欲もわかなくて」
「痛み止めの薬は飲んだの?」
「それが忘れちゃって」
あはは、と空笑いをして場を誤魔化したつもりが、どうにも蓉子さまの琴線に触れたらしく。
「立てるかしら」
有無を言わさぬ声で私を立ち上がらせて『ついていらっしゃい』とだけ言って、私のお弁当箱を持ったまますたすたと歩き始める。まるでついてこないことを確信して、後ろを振り返る様子もない。
「あー、えっと……」
「蓉子のお節介はいつものことだから、行きなよ。悪いようにはならないし」
蓉子さまと私のやり取りを黙ってみていた聖さまが、苦笑いをしながら蓉子さまの方を指差す。いや、お昼を一緒に食べるか、何か用事があったのではと聞いてみると、もう食べ終わって教室に戻る所だからと言われてしまい。
「ほら、行っておいで――樹ちゃん」
私の後ろに回り込んだ聖さまは、両肩に手を置いて私が歩き出すようにと促す。後ろを振り返って聖さまを見ると、笑いながら小さく手を振っていたので、軽く会釈をして先を行く蓉子さまに追いつく。
「顔色が悪くなるまで我慢だなんて。貴女らしくもない」
横に並ぶとそんな苦言が飛んできたけれど、怒っているというよりは無理をしていたことに対してだろう。どこに行くんですか、と聞く前に『保健室』と書かれたプレートがある扉の前に立っていたのだった。
「失礼します」
扉を開けてつかつかと蓉子さまは入室していき、養護教諭といくらかやり取りをすると、二人して苦笑いをしながら扉の前に立ちすくんでいた私を見た。
「鵜久森さん、こっちへいらっしゃい」
手招きされ、言われるがままに保健室に足を踏み入れると、独特の薬品の匂いとシーツにかかった糊の匂いが鼻をくすぐる。この匂いは何時まで経っても慣れないなあと感慨深くきょろきょろと周りを見やる。並べられた二つのベッドには誰もおらず、室内は静かで。立ち上がった先生は、薬品棚から小さな箱を取り出してPTP包装シートに包まれた錠剤を二錠手渡してくれた。
「ありがとうございます」
「無理なんてせずに、ここに来ればよかったのに」
そう言いながら、やんわりと早く飲みなさいと言わんばかりにせかされ、包装シートのプラスチック部分を強く押すとアルミが割ける音が鳴ると同時、水が入ったコップを手渡してくれた。蓉子さまも蓉子さまで、仕方ないなという顔をして苦笑している。そんな二人に気恥ずかしさを覚えて、さっさと錠剤を口の中に放り込んで水を含み、飲み込んだ。
「調子が悪ければ、ベッドで休ませてもらいなさい。担任の先生には私から伝えておくから」
「あ、いえ。薬も飲んだし暫くすれば効いてくると思うので、授業には出ます」
現金なもので薬を飲んだら少し楽になった気がするのだから不思議なものだ。プラシーボ効果があるのかどうかは知らないけれど。
「本当に?」
「本当です」
私の言葉を聞いて先生に確認を取る蓉子さま。どうやら休ませるほどではないだろうと判断したらしく、私の言葉を選んでくれた。それでも調子が悪ければ保健室にもう一度来るか、担任の先生と相談して早退しなさいと告げられると、さっさと出ていきなさいとばかりに保健室から追い出されたのだった。
「すみません、蓉子さま、ご迷惑をおかけして」
「いいのよ、これくらい。お節介かもしれないけれどあの場で貴女を放っておいて後から気になるくらいなら、声を掛けてこうした方が良いでしょう?」
「それはそうかもしれませんが、面倒ごとに巻き込まれたりしませんか?」
変に首を突っ込むと、厄介ごとが訪れたりするものだ。蓉子さまは真面目な人なので、そういうものから逃げたりする人ではないだろうから、苦労をするのではないだろうかと聞いてみた。
「そうね。そういうこともあるけれど、貴女も私と同じようなものじゃない」
曰く、ぶつかって拾った紙をついでに運んだり、バスで倒れた人を助けたりしたでしょうと。確かに手助けをしたりはするけれど、嫌な時は逃げるし断るし。それをしなさそうな蓉子さまが言える台詞ではないだろうに。
「いえ、私より蓉子さまの方が周りをよく見てますよ」
本当に。困っている生徒を見つけると、その子に声を掛け手助けしている。薔薇さまという立場もあるのだろうけれど、それは中々できることではないし、真似できるものでもない。どうにも彼女のお節介は、パッシブスキルのような気がするけれど、口に出すと嫌な顔をされそうなので言わないでおく。
「褒めてもなにも出てこないわ」
「ありゃ、残念です」
照れ隠しなのか、冗談そうに言うものだから私も冗談で返すと、くすりと笑う蓉子さま。階段へ辿り着くと、そこが別れる場所となる。三年生と一年では教室のある階が違う為だ。
「樹ちゃん、今日の山百合会の手伝いはいいから帰ってゆっくり休んで頂戴ね」
「ですが、昨日は仕事があると言ってましたよね」
学園祭の開催日が近づくにつれて、山百合会での仕事が忙しくなってきているのは目に見えて明らかだった。
「こういう日くらい構わないから、気にせずに休みなさい。それに学園祭が近くなると忙しくなるのだし、今のうちだもの」
「すみません、そうさせて頂きます。みなさんにも手伝いに行けなくて申し訳ありませんとお伝えください」
せっかくこう言って貰っているのだから、あまりしつこいのも無礼だろうと蓉子さまの気遣いをありがたく受け取っておく。
「わかったわ。それじゃあ、ごきげんよう」
そう言い残して背を向けた蓉子さまに小さく礼をして私も教室へと戻ると、さっそく蓉子さまと一緒に保健室へと赴いたことを、クラスメイト数人に取り囲まれて質問攻めにあう中。現実逃避と言わんばかりに違うことを考えていて、ふと思い出した。さっき聖さま私のことを何てよんだのだっけ、と。
◇
――秋麗な日曜日。
由乃さんと交わした以前の約束を叶える為に、私は両親から高校入学祝いとして贈られたマウンテンバイクに乗り、一路リリアン女学園を目指し、軽快にペダルをこいでいる。私のズボンのポケットの中には、由乃さんが書いてくれた地図が一枚忍ばせてある。リリアンからほど近いと聞いていたので、学園を起点に地図を書いてもらったのだ。ようやく見えてきた背の高いリリアン女学園の校門前で一旦停車して、地図を取り出す。可愛らしく丁寧な字は読みやすく、きっちりと引かれている線も彼女の性格が所以なのかも知れないと、自然と笑みが零れた。
「さて」
地図を頼ればここからそう時間はかからないはずだ。
時間には十分に間に合うなと、腕時計の文字盤を見てゆっくりとまたペダルをこいで閑静な住宅街を突っ切っていくと『島津』と書かれた表札を見つけ、地図と照らし合わせてここが由乃さんの家だと確信。邪魔にならないようになるべく壁際にマウンテンバイクを停め、背負っていた荷物の中から母から預かったものを取り出して。立派な門扉の前に立ち、呼び鈴を押すと暫くして聴き慣れた声が聞こえてきた。
「いらっしゃい、樹さん」
「由乃さん、お招きありがとう。――お邪魔します」
玄関に通され靴を脱ぎ一旦上がらせてもらい、振り返り隅へと靴を揃えて置く。そんな私の様子を由乃さんは楽しそうに見ながら、自室へと案内しようとしてくれているけれど、少しばかり用があった。
「由乃さん、ご家族の方は?」
「今日は出かけていて誰も居ないの」
「そっか。これ母が持たせてくれて、ありきたりなものだけれどみなさんで食べてくださいって」
それじゃあ仕方ないかと先ほど用意しておいた紙袋から、中身を取り出して由乃さんに差し出す。以前にも友人の家を訪れる際は、母がこうして用意してくれていた。しかも、状況や立場によって変わる渡し方まで手ほどきしてくれて、色々とマナーを教えてくれたのだ。この辺りの心遣いは良家のお嬢さま出身の母らしいなあと感心していたのだけれど、またこうして役に立つ日がくるとは。
「ありがとう。でも、そんなに気を使わなくてもよかったのに」
「あはは。私もそう思うんだけれど、母に友達の家に遊びに行くって伝えるといつも用意してくれるから」
手渡した菓子箱を抱えて、由乃さんが苦笑いをしていた。友人の家に遊びに行くときなんて、何も考えずにお邪魔していたものだけれど、こうして親同士のネットワークを広げるためでもあるのだろう。これを切っ掛けに、声を掛けやすくなったりするものなあ。直ぐに繋がることのできない時代の努力なのだろう。
「そうなんだ」
ふふ、と小さく笑いながら自室へと案内してくれる由乃さん。
「女の子の部屋だねえ」
「それだと樹さんは女の子じゃないみたいよ」
部屋に入るなり漏れた声に、口元に手を添えながら笑って私をみている由乃さん。本棚の中は奇麗に出版社や作家ごとにわかれて並べられているし、そのうえには可愛らしい縫いぐるみがいくつか置かれ。カーテンの色や家具の色調も私の部屋とは大違いで、なんと表現すればいいのかわからないが、色が多いとでも言うべきだろうか。
どうぞ、と言われてふかふかのカーペットが敷かれた床へと腰を下ろして、お茶を用意してくるから少し待っていてと部屋を出ていった由乃さん。もう一度、本棚に目を向けると彼女から以前に聞いていた、とある作家の小説がずらりと並んでいて。他にも時代小説に、漫画や文庫本が。
「面白いものでもあった?」
「あ、ごめん。勝手に覗いてた」
「本棚を見るくらい構わないわ。それよりも、気になるものでもあれば手に取って読んでもらっても良いのだし」
お盆に紅茶とケーキを乗せて運んできた由乃さんは、静かに小さなテーブルにへと移して座る。
「これ、令ちゃんが作ったケーキなの」
「令さまが?」
そう聞いてつい首を傾げてしまった。背が高く、学園内では『ミスターリリアン』なんて呼ばれる令さまが。
「意外でしょう?」
「そうだね。でも、令さまのこと一つ知ることができたから。あとの問題は味かなあ」
人は見かけによらないし、見かけで判断してはいけないという例でもあった。私の目の前に置かれたケーキは見栄えも良く、かなり凝ってるように見えるから味もきっと美味しいはず。
「味は私が保証するわ」
何故か嬉しそうににっこりと笑う由乃さん。小さい頃からの幼馴染だから、きっとこうして何度も令さまが作ったものを食べたことがあるのだろう。期待に胸を鳴らしながら手を合わせて、添えられていたフォークを手に取って小さく切り取り、口へと運ぶ。
「美味しい」
「でしょう?」
「――うん」
こくこくと由乃さんの言葉に頷いて、何度もフォークを口に往復させる。美味しくて、つい無言になってしまうけれど由乃さんは何も言わないから、もう少しだけとケーキを堪能していた。少し食い意地を張りすぎたかなと反省するけれど、由乃さんには生徒指導室に弁当箱を持ち込んでいたりと、私が食べることに少々執着していることはバレているから、黙ってくれている。
「幸せそうに食べるのね、樹さんは」
「あ、ごめん。美味しくて、つい」
「いいのよ、気にしないで。それに令ちゃんが喜ぶもの」
「そうなの?」
「令ちゃんはあんな見た目でしょう。お菓子作りや料理が趣味だなんて、学園だと言い出せないみたいで」
気にしなければいいと思ってしまうけれど、令さまは優しい人だから周囲が持ってしまったイメージを崩さないようにと心がけているのだろうか。そうなってしまうと話題として出しづらくなるし、相手も言わないだろう。山百合会の人たちならば知って良そうだけれど、そういう話が出たこともないから私が今まで知らなかったのは仕方のないこと。
「――由乃、いいかな」
ふいに扉越しにくぐもった令さまの声が聞こえてきた。
「……どうぞ」
少し間をおいて令さまの声に反応した由乃さんは、頬を膨らませている。
「紅茶のお替りどうかな?」
ひょっこりと顔を出した令さまに『こんにちは』と挨拶をすると、一瞬呆けた顔をして『こんにちは』と返してくれた。おそらく私が『ごきげんよう』と言わなかったことに驚いたのだろう。学園外だと使い辛いし、慣れの問題もあるのだろう。純粋培養組と俗世の毒が抜けきっていない養殖組である私との差が出ていたのだった。隣どうしで家族ぐるみの付き合いだと聞いていたから、令さまが由乃さんの部屋に現れたことに違和感は全くない。
「令ちゃん、邪魔しないでって言ったのに……」
「これ淹れたら直ぐに出ていくから」
「もうっ」
怒る由乃さんに、苦笑いをしながら紅茶を淹れてくれる令さま。二人の微笑ましいやり取りを見ながら、またケーキを一口放り込む。――うん、美味しい。せっかくシェフは目の前にいるのだから、素直な気持ちを伝えるのは今だろう。
「令さま、ケーキありがとうございます。上手く言えなくて申し訳ないのですが、すごく美味しいです」
「口に合ったみたいで良かったよ。それじゃあ樹ちゃん、由乃の相手は大変だけれど、ゆっくりしていってね」
「余計なこと言わないでよ、令ちゃん」
「はいはい」
それじゃあ、と言って立ち上がり部屋を出ていく令さま。由乃さんはその後姿を見ながら、ぷんぷんと少し怒ったオーラを出していた。
「笑わなくても良いじゃない」
「だって、二人のやり取り見てると楽しいんだもん」
「樹さんの意地悪っ」
その言葉にごめんごめんと平謝りをして、どうにか由乃さんを宥めて、しばらく他愛のない話をする。学園のこと、山百合会のこと、私たちを取り巻く状況や、これからのこと。そういえばと最初に話していた本のことに話が戻って、私の家にも来てみないと誘ってみると、由乃さんが今日一番の笑顔で『絶対行くっ』と前のめりに約束をしたのだった。
「――由乃」
「…………どうぞっ」
また扉の前からくぐもった令さまの声が聞こえ、由乃さんが先程よりも雑な返事で部屋へと招き入れる。
「樹ちゃん、ケーキのおかわりどうかな?」
「いいんですか?」
「うん。沢山作ったから食べてもらえると嬉しいな」
にっこりと笑って私に語り掛ける令さまは、どうやら中の様子が気になるらしくケーキや紅茶を理由にして覗きに来ているようだ。切り分けたケーキをよそう令さまをしり目に、由乃さんは私の横でぷるぷるしている。あれ、これ大丈夫かなあと心配になってきたその時だった。
「――令ちゃん」
低く唸る声。今まで聞いたことのない由乃さんの声に、数度部屋の温度が下がった気がした。
「よ、由乃? 怒ってる?」
「当たり前じゃない、邪魔しないでよっ」
「……っ」
あまり無理が聞かない所為なのか叫んだり大声を出すことは無かったけれど、由乃さんの本心が込められていた言葉で。それでも私は令さまの気持ちもわかってしまうから、出しゃばるのもどうかと思いつつ、二人の会話に割って入る。
「由乃さん、私は気にしないから」
「樹さんが良くても、私が気にするものっ」
「どうして?」
「だって二人で遊ぶ約束をしたのに、令ちゃんが邪魔するんだもの……」
トーンダウンした由乃さん。子供じみた理由に苦笑をしながら折衷案を出してみる。
「なら、さっきも約束した通り家においでよ。それに、まだ三年もあるんだよ? 何度でも遊びにいくし、遊びにきてよ、ね?」
だから今は令さまが側に居ることを許して欲しい、と付け足して。言葉に出すのは恥ずかしいけれど、二人の事をもっと知りたいからと懇願したのだった。
「……分かったわ。――令ちゃん、今回だけだからね?」
「う、うん。ありがとう由乃」
なんだか力関係が学園と逆のような気がするけれど、こちらが彼女たち本来の姿なのだろう。――女三人寄れば姦しい、という言葉通りに令さまが加わったことで、会話のテンポが上がる。由乃さんと令さまの会話は、慣れたもののようで遠慮のない口ぶりだし、私も私で必要なところ以外は畏まる必要もないという人間だから、学園外ということである程度気が抜けている状態だ。
令さまもどうやら本好きなのだけれど、由乃さんと傾向が合わないと愚痴を零している。ならばとおすすめや好きなものはと聞くと、意外にも恋愛小説や少女漫画のタイトルが上がり、『快感〇レーズ』や『MA〇S』『風〇る』などを勧めてみる。期待の眼差しで由乃さんから視線を受けたので、由乃さんには『BAS〇RA』『天は赤い河の〇とり』。あと少年誌になってしまうけれど、最近掲載されたばかりの『MIND AS〇SSIN』を勧めておいた。勧めるだけでは申し訳ないので、読みたければ家に来ればいつでも読めるし、持ってくることも可能だと伝えて。
こうして初めての島津家訪問は日の沈む幾分か前に終わり、私は元来た道を自転車に乗りゆっくりと家へと帰るのだった。
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お腹の痛みでオリ主は『さっきの手紙のご用事なあに』状態になってしまい、直ぐに気付くことが出来ずw ちょと由乃さんが子供過ぎたかもしれません。力不足を感じる。うーん難しい。